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明細書 :炭化ケイ素のコーティング方法、炭化ケイ素コーティング基材の製造方法、及び炭化ケイ素コーティング基材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-100930 (P2017-100930A)
公開日 平成29年6月8日(2017.6.8)
発明の名称または考案の名称 炭化ケイ素のコーティング方法、炭化ケイ素コーティング基材の製造方法、及び炭化ケイ素コーティング基材
国際特許分類 C01B  32/97        (2017.01)
B01J  23/745       (2006.01)
B01J  23/755       (2006.01)
B01J  23/75        (2006.01)
B01J  23/72        (2006.01)
C23C  16/32        (2006.01)
C23C  16/02        (2006.01)
FI C01B 31/36 601H
B01J 23/745 M
B01J 23/755 M
B01J 23/75 M
B01J 23/72 M
C23C 16/32
C23C 16/02
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-237783 (P2015-237783)
出願日 平成27年12月4日(2015.12.4)
発明者または考案者 【氏名】村川 紀博
【氏名】巽 宏平
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
4G169
4K030
Fターム 4G146MA14
4G146MA19
4G146MB03
4G146MB07
4G146MB19A
4G146MB20B
4G146MB26
4G146MB27
4G146MB28
4G146NA05
4G146NA06
4G146NA12
4G146NA21
4G146NA24
4G146NB07
4G146NB10
4G146NB15
4G146NB18
4G146QA01
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA08B
4G169BB04B
4G169BC31B
4G169BC66B
4G169BC67B
4G169BC68B
4G169BD04B
4G169CB81
4G169DA05
4G169EA08
4G169EC21Y
4G169FA03
4G169FB24
4G169FB34
4K030AA01
4K030AA09
4K030AA14
4K030BA37
4K030BB03
4K030CA05
4K030CA12
4K030DA02
4K030FA10
4K030JA10
要約 【課題】複雑形状の物体の表面にも容易に炭化ケイ素コーティングを生成させることができ、炭化ケイ素の生成速度が極めて高く、原料からの炭化ケイ素の生成収率が高い炭化ケイ素のコーティング方法を提供する。
【解決手段】酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させる、ことを特徴とする炭化ケイ素をコーティングする方法である。好ましくは、前記気相混合物を1200~1600℃の温度で前記触媒成分に接触させ、前記炭素化合物がC~C16化合物から選択され、前記炭素化合物が、CO、CH、C、C、C、C、C、及びこれらの混合物から選択される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させる、ことを特徴とする炭化ケイ素をコーティングする方法。
【請求項2】
前記気相混合物を1200~1600℃の温度で前記触媒成分に接触させる、請求項1に記載の炭化ケイ素をコーティングする方法。
【請求項3】
前記炭素化合物がC~C16化合物から選択される、請求項1又は2に記載の炭化ケイ素をコーティングする方法。
【請求項4】
前記炭素化合物が、CO、CH、C、C、C、C、C、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の炭化ケイ素をコーティングする方法。
【請求項5】
酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させて炭化ケイ素コーティング基材を得る、ことを特徴とする炭化ケイ素コーティング基材の製造方法。
【請求項6】
酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に接触させて得られた炭化ケイ素コーティング基材であって、炭化ケイ素の結晶形状が立方晶である、ことを特徴とする炭化ケイ素コーティング基材。
【請求項7】
前記周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属を10ppm~10重量%含む、請求項6に記載の炭化ケイ素コーティング基材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な炭化ケイ素のコーティング方法に関し、より詳しくは、気相の酸化ケイ素と気相の炭素化合物を原料として、特定の触媒成分がコーティングされた箇所に炭化ケイ素のコーティングを形成することができる、新規な炭化ケイ素のコーティングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素コーティングは、ガスタービン翼の耐摩耗性の向上、炭素繊維強化炭素複合材料の耐酸化性の向上、黒鉛材料の発塵防止などの用途が期待されている。
こうした炭化ケイ素コーティングを形成するための技術としては化学蒸着(CVD)による方法が知られている。このCVD法は、原料としてのプロパンなどの炭素化合物とモノシランなどのケイ素化合物、及び水素を気相で反応させる方法である。
【0003】
しかしながら、かかる方法では、温度や原料濃度などの生成条件が満たされる空間にも炭化ケイ素が生成するため、特定の箇所にのみ炭化ケイ素を生成させることが実質的に不可能であり、このため複雑形状の物体の表面にのみ炭化ケイ素を生成させることができないという問題があった。
また、炭化ケイ素の生成速度が遅く、さらに、原料からの炭化ケイ素の生成収率が低いという問題もあった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平05-001380号公報
【特許文献2】特開平06-239609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、炭化ケイ素コーティングの新規な形成方法であって、複雑形状の物体の表面にも容易に炭化ケイ素コーティングを生成させることができる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、炭化ケイ素の生成速度が極めて高く、原料からの炭化ケイ素の生成収率が高い、という特長を有する炭化ケイ素のコーティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させる、ことを特徴とする炭化ケイ素をコーティングする方法によって達成される。
【0007】
即ち、本発明は、酸化ケイ素及び炭素化合物を炭化ケイ素の原料として用い、基材上にコーティングされた金属又は金属化合物を含む触媒成分の存在箇所に炭化ケイ素を生成させる、炭化ケイ素コーティングの形成方法である。
【0008】
上記の触媒成分は、複雑形状の物体の表面にも容易に存在させることができるため、その複雑形状の物体の表面にも炭化ケイ素コーティングを容易に形成することができる。また、かかる触媒成分を用いた方法においては、炭化ケイ素は実質的に触媒成分の存在箇所にのみ生成させることができるため、炭化ケイ素コーティングを形成する収率を極めて高くすることができる。
【0009】
好ましくは、前記気相混合物を1200~1600℃の温度で前記触媒成分に接触させる。かかる温度範囲においては、炭化ケイ素コーティングを高い生成速度で意図する箇所に効率良く形成することができる。
【0010】
好ましくは、前記炭素化合物が、1つの分子の中に1~16個の炭素原子を有する化合物、即ち、C~C16化合物から選択される。かかるC~C16化合物を炭素化合物として選択することにより、炭化ケイ素コーティングを高い生成速度で効率良く形成することができる。
【0011】
好ましくは、前記炭素化合物が、CO、CH、C、C、C、C、C、及びこれらの混合物から選択される。かかる化合物を前記炭素化合物として選択することにより、炭化ケイ素コーティングをより一層高い生成速度で効率良く形成することができる。
【0012】
もう一つの局面において、本発明は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させて炭化ケイ素コーティング基材を得る、ことを特徴とする炭化ケイ素コーティング基材の製造方法である。
【0013】
即ち、本発明は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた前記金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させて、前記炭化ケイ素コーティング基材を得る。かかる構成の炭化ケイ素コーティング基材の製造方法においては、炭化ケイ素は実質的に触媒成分の存在箇所にのみ生成されるため、収率が極めて高い炭化ケイ素コーティングが形成されることによって、機械的特性や電気的特性に優れた炭化ケイ素コーティング基材を得ることができる。
【0014】
もう一つの局面において、本発明は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に接触させて得られた炭化ケイ素コーティング(炭化ケイ素コーティング基材)であって、炭化ケイ素の結晶形状が立方晶である、ことを特徴とする炭化ケイ素コーティングである。
【0015】
即ち、本発明におけるコーティングは、特定の金属成分を含む立方晶の炭化ケイ素からなる。かかる構成の炭化ケイ素は、特有の機械的特性や電気的特性を有することができることから、炭化ケイ素コーティングの個々の用途により適合させることができる。
【0016】
好ましくは、本発明に係る炭化ケイ素コーティング(炭化ケイ素コーティング基材)は、前記周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属を10ppm~10重量%含む。かかる含有率となる金属により、さらに機械的特性や電気的特性に優れた炭化ケイ素コーティングを形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、複雑形状の物体の表面にも炭化ケイ素のコーティングを形成することができ、かつ炭化ケイ素の生成速度が極めて高く、さらに炭化ケイ素の生成収率が高い、という特長を有する炭化ケイ素のコーティング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の方法に用いる炭化ケイ素コーティング装置を模式的に例示する断面図
【図2】本発明の方法に用いる別の態様の炭化ケイ素コーティング装置を模式的に例示する断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させる方法である。
ここで、本発明における酸化ケイ素は、好ましくは一酸化ケイ素であるが、SiOxで表わしたときに必ずしもx=1である必要はない。即ち、本発明における酸化ケイ素は、SiOxで表わしたときに0.7<x<1.5であって、1600℃以下の温度で気体になることができる酸化ケイ素である。

【0020】
こうした本発明における気相の酸化ケイ素は、例えば、シリカと金属ケイ素とを等しいモル量で混合し、減圧下で約1300~1600℃に加熱することによって生成させることができる。好ましくは、かかる気相の酸化ケイ素は、シリカと金属ケイ素との等モル量の混合物を加熱して得られる実質的にx=1の一酸化ケイ素を挙げることができる。このような一酸化ケイ素を発生させる先行技術は、特開2002-97567号公報、特開2005-225690号公報、特開2009-78949号公報などに開示されている。

【0021】
また、こうした本発明における気相の酸化ケイ素は、上記の先行技術などに記載の方法によって得られた固体の一酸化ケイ素を約1300~1800℃に加熱して昇華させることによって生成させることもできる。

【0022】
本発明における炭素化合物は、好ましくは、1つの分子の中に1~16個の炭素原子を有する化合物、即ち、C~C16化合物から選択され、より好ましくは、CO、CH、C、C、C、C、C、及びこれらの混合物から選択される。また、加熱により気相を形成する揮発性の有機化合物、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、キシレン、トルエン、スチレン、酢酸エチル、ノルマルヘキサン、石油ベンジン、ミネラルスピリットなども好適に使用可能である。

【0023】
本発明における触媒成分は、周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含んでなる。即ち、本発明の触媒成分は、かかる金属又はその化合物を含んでなり、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物からの炭化ケイ素の生成を促進する物質を指称する。
かかる金属又はその化合物は、具体的には、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Geなどの金属、並びに、これら金属の酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及び各種の有機金属化合物が挙げられる。

【0024】
こうした金属又は金属化合物は、基材上にコーティングされて本発明における触媒成分を構成することができる。なお、こうした金属又は金属化合物は、基材上に予めコーティングされたものをそのまま使うことが可能であり、この他にも、未処理の基材を先ず用意し当該基材上に対してコーティングして使うことも可能である。

【0025】
そのような未処理の基材を原料として使用するという観点においては、本発明は、周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分を基材上にコーティングし、当該基材に酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させる、ことを特徴とする炭化ケイ素をコーティングする方法である。

【0026】
即ち、この観点においては、本発明は、コーティング対象物の基材上に、周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を基材被覆材(コーティング材料)として付着させる付着工程と、当該基材被覆材を触媒成分として、当該基材に酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を加熱状態で接触させる反応工程とを含み、前記基材上に前記基材被覆材が炭化ケイ素コーティングとして生成される、ことを特徴とする炭化ケイ素をコーティングする方法である。

【0027】
このコーティングの方法としては、これら金属又は金属化合物の粒子又は微粒子からなる固体物質を基材上に堆積させる種々の方法が挙げられる。

【0028】
好ましいコーティングの方法として、これら金属又は金属化合物の酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、又は各種の有機金属化合物を水、又はメタノール、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの溶媒に分散又は溶解させ、得られた懸濁液又は溶液を基材上に噴霧や浸漬により層状に堆積させ、次いで溶媒を乾燥・除去してこれら金属又は金属化合物を基材の表面に実質的に一定の厚みの層状に堆積させる方法が例示される。

【0029】
より好ましいコーティングの方法として、上記の周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属の化合物を水、又はメタノール、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの溶媒に溶解させ、得られた溶液を基材上に噴霧や浸漬により実質的に一定の厚みの層状に堆積させた後、溶媒を乾燥などにより除去し、例えば、酸化性又は還元性雰囲気下で500~1000℃の温度に加熱することにより、触媒成分を基材上にコーティングする方法が例示される。
かかる溶液を用いる方法においては、三次元的に複雑な形状をした基材であっても、その基材の表面に密着した金属又は金属酸化物を含む触媒成分を容易に得ることができる。

【0030】
炭化ケイ素をコーティングされる基材は、本発明においては特に限定する必要はなく、炭化ケイ素の特徴である耐熱性、耐酸化性、耐摩耗性、電気伝導性などを付与することが有益な特性向上となる材料であればよい。こうした基材としては、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニアなどの各種セラミック材料、黒鉛、炭素繊維強化炭素複合材料などの炭素材料、及びケイ素、タングステン、各種の耐熱金属合金などの金属材料が挙げられる。

【0031】
基材上にコーティングされる金属又は金属化合物を含む触媒成分の厚さは、所望とする炭化ケイ素コーティングの厚さなどによって決定することができ、例えば、1~50μmの炭化ケイ素コーティングを形成する場合は、触媒成分の厚さは0.1~5μmとすることが好ましい。

【0032】
好ましくは、こうした基材上にコーティングされた触媒成分に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を1200~1600℃の温度で接触させる。それにより、基材上にコーティングされた触媒成分の存在箇所に炭化ケイ素を生成させることができ、その結果、基材上に炭化ケイ素をコーティングすることができる。

【0033】
ここで、基材表面や空間の温度が1600℃を超える温度であれば、触媒成分が存在してもしなくても、上記の酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物から、その基材表面や空間にも炭化ケイ素が生成し得ることから、特定の箇所にのみ炭化ケイ素を生成させることが実質的に不可能である。

【0034】
これに対し、本発明における触媒成分が存在すれば、1200~1600℃の温度であっても、上記の酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物から、その触媒成分が存在する箇所に炭化ケイ素が生成することができ、この結果、その触媒成分がコーティングされた箇所に炭化ケイ素コーティングを形成することが可能となる。

【0035】
即ち、本発明における触媒成分は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物から炭化ケイ素が生成する温度を低下させることができ、それにより、意図する特定箇所にのみ炭化ケイ素コーティングを生成させることが可能となる。

【0036】
この触媒成分が炭化ケイ素の生成温度を低下させる理由は必ずしも明らかではないが、触媒成分に含まれる金属が、炭素化合物が存在する還元雰囲気下で酸化状態と還元状態を繰り返すことができ、それにより、酸化ケイ素を還元してその移動を制限すると同時に、還元された酸化ケイ素と炭素化合物が反応して炭化ケイ素を生成する温度を低下させるものと推察される。

【0037】
上記の気相混合物と触媒成分との接触は、気相の酸化ケイ素と気相の炭素化合物とを、基材上にコーティングされた金属又は金属化合物を含む触媒成分の存在箇所に供給することで達成することができる。例えば、上述のように、気相の酸化ケイ素は、シリカと金属ケイ素とを等しいモル量で混合し、減圧下で約1300~1600℃に加熱することによって生成させることができるが、このようにして生成させた酸化ケイ素の流路に炭素化合物の流路を接続し、気相の酸化ケイ素と気相の炭素化合物とを上記の触媒成分の存在箇所に流通させることでよい。

【0038】
この気相の酸化ケイ素と気相の炭素化合物とを触媒成分の存在箇所に接触させる状況下において、触媒成分を、好ましくは1200~1600℃、より好ましくは1300~1550℃に、さらに好ましくは1350~1500℃に維持することで、炭化ケイ素を効率よく生成させることができる。

【0039】
この気相の酸化ケイ素と気相の炭素化合物とを触媒成分に接触させる時間、即ち、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、上記の基材上の1200~1600℃に維持された触媒成分に接触させる時間は、触媒成分の種類や温度によっても異なるが、10時間以下が一応の目安であり、より好ましくは5時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。即ち、本発明の方法においては、従来のCVD法に比較して格段に短い時間で炭化ケイ素コーティングを生成させることができる。

【0040】
本発明の方法が適用される上記の基材としては、例えば、ジルコニアのコーティングを施されたガスタービン翼や、炭素繊維強化炭素複合材料などの耐熱材料で形成された各種の構造材料であることができ、これらの複雑形状物の表面に炭化ケイ素コーティングを形成することにより、耐熱性、耐酸化性、耐摩耗性などの特性をより一層高めることができる。

【0041】
ここで、炭化ケイ素コーティング(炭化ケイ素コーティング基材)が、周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属を含み、炭化ケイ素の結晶形状が立方晶である場合、固有の機械的特性や電気的特性を有することができ、それにより個々の用途に応じた炭化ケイ素コーティングの特性改良をもたらす方策が可能となる。

【0042】
さらに、好ましくは、炭化ケイ素コーティング(炭化ケイ素コーティング基材)が、周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された前記金属を10ppm~10重量%含む場合であり、この配合率によりさらに優れた機械的特性や電気的特性を奏することができる。

【0043】
このような優れた特性の炭化ケイ素コーティング基材を得る方法(製造方法)については、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を、基材上にコーティングされた周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を含む触媒成分に加熱状態で接触させ、前記基材上に炭化ケイ素コーティングを生成させて炭化ケイ素コーティング基材を得ることができる。

【0044】
即ち、炭化ケイ素コーティング基材の製造方法としては、コーティング対象物の基材上に、周期律表IIa族からIVb族の元素より選択された金属又はその化合物を基材被覆材(コーティング材料)として付着させる付着工程と、当該基材被覆材を触媒成分として、当該基材に酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を加熱状態で接触させる反応工程とを含み、前記基材上に前記基材被覆材が炭化ケイ素コーティングとして生成されて成る炭化ケイ素コーティング基材を得ることができる。

【0045】
図1は、本発明の方法に使用する炭化ケイ素コーティングを形成するための装置の一態様を断面図で例示する。触媒成分1を基材2にコーティングし、真空チャンバー4の中に配置する。酸化ケイ素を流路5より供給し、同時に炭素化合物を流路6より供給し、酸化ケイ素と炭素化合物の比率はバルブ7で調整する。

【0046】
このようにして酸化ケイ素と炭素化合物を供給しながら基材2上の触媒成分1を所定時間にわたってヒーター3を介して加熱することで、触媒成分1の存在箇所に炭化ケイ素を生成させることができ、即ち、基材2の上に炭化ケイ素コーティングを形成することができる。

【0047】
また、図2は、本発明の方法に使用する炭化ケイ素コーティングを形成するための別の態様の装置を断面図で例示する。基材2に触媒成分1をコーティングして真空チャンバー4の中の上部に配置する。酸化ケイ素は、真空チャンバー4の中の下部に配置した原料となるシリカと金属ケイ素の混合物8を一定の温度にヒーター9を介して加熱することにより発生させる。炭素化合物は流路6より供給し、酸化ケイ素と炭素化合物の比率はバルブ7で調整する。

【0048】
このようにして酸化ケイ素と炭素化合物を供給しながら基材2上の触媒成分1を所定時間にわたってヒーター3を介して加熱することで、触媒成分1の存在箇所に炭化ケイ素を生成させることができ、即ち、基材2の上に炭化ケイ素コーティングを形成することができる。

【0049】
なお、図1及び図2は本発明の方法に用いるコーティング装置を概念的に示すものに過ぎなく、形状や各寸法の比率は実際の装置とは必ずしも一致していない。
【実施例】
【0050】
実施例1
硝酸鉄(Fe(NO・9HO)の30重量%水溶液をアルミナ板(20mm×20mm×1mm)の片方の表面に噴霧して乾燥させた後、大気中で700℃に加熱して、Fe換算で1.2mg/cmの触媒成分としての酸化鉄を、基材2としてのアルミナ板の表面にコーティングした。この酸化鉄をコーティングしたアルミナ板を、図1に示すように真空チャンバー4の中に配置し、真空チャンバー4の中を真空ポンプによって5Pa以下まで減圧した。
【実施例】
【0051】
次いで、ヒーター3を通電加熱して、真空チャンバー4の中の温度を1400℃に維持した状態で、シリカと金属ケイ素との等モル量の混合物を1450℃に加熱して発生させた一酸化ケイ素SiOを流路5より、さらにCOを流路6より、CO/SiOのモル比が3/1となるように供給した。これらのSiOとCOのガスを供給する圧力を制御することにより、真空チャンバー4の圧力を約10kPaに維持した。
【実施例】
【0052】
このようにして、真空チャンバー4の中を1400℃の温度と約10kPaの圧力に2時間にわたって維持した後、100℃以下まで放冷し、基材2としてのアルミナ板を取出した。
このアルミナ板を、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析装置、及びX線回折装置を用いて観察した結果、酸化鉄をコーティングしておいたアルミナ板の表面には、β型の炭化ケイ素が、緻密な15mg/cmのコーティング層として生成していることが確認された。
【実施例】
【0053】
実施例2
硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO)の30重量%水溶液をアルミナ板(20mm×20mm×1mm)の片方の表面に噴霧して乾燥させた後、大気中で700℃に加熱して、Ni換算で2.1mg/cmの触媒成分としての酸化ニッケルを、基材2としてのアルミナ板の表面にコーティングした。この酸化ニッケルをコーティングしたアルミナ板を、図1に示すように真空チャンバー4の中に配置し、真空チャンバー4の中を真空ポンプによって5Pa以下まで減圧した。
【実施例】
【0054】
次いで、実施例1と同様にして、基材2を、CO/SiOのモル比が3/1で圧力が約10kPaの雰囲気下で2時間にわたって1400℃に加熱した後、100℃以下まで放冷し、基材2としてのアルミナ板を取出した。
このアルミナ板を、実施例1と同様にして観察した結果、酸化ニッケルをコーティングしておいたアルミナ板の表面には、β型の炭化ケイ素が、緻密な18mg/cmのコーティング層として生成していることが確認された。
【実施例】
【0055】
実施例3
硝酸コバルト(Co(NO・6HO)の30重量%水溶液をアルミナ板(20mm×20mm×1mm)の片方の表面に噴霧して乾燥させた後、大気中で700℃に加熱して、Co換算で5.2mg/cmの触媒成分としての酸化ニッケルを、基材2としてのアルミナ板の表面にコーティングした。この酸化ニッケルをコーティングしたアルミナ板を、図1に示すように真空チャンバー4の中に配置し、真空チャンバー4の中を真空ポンプによって5Pa以下まで減圧した。
【実施例】
【0056】
次いで、実施例1と同様にして、基材2を、CO/SiOのモル比が3/1で圧力が約10kPaの雰囲気下で2時間にわたって1400℃に加熱した後、100℃以下まで放冷し、基材2としてのアルミナ板を取出した。
このアルミナ板を、実施例1と同様にして観察した結果、酸化コバルトをコーティングしておいたアルミナ板の表面には、β型の炭化ケイ素が、緻密な32mg/cmのコーティング層として生成していることが確認された。
【実施例】
【0057】
実施例4
硝酸鉄(Fe(NO・9HO)の30重量%水溶液を黒鉛板(20mm×20mm×5mm)の片方の表面に噴霧して乾燥させた後、窒素雰囲気中で700℃に加熱して、Fe換算で2.3mg/cmの触媒成分としての酸化鉄を、基材2としての黒鉛板の表面にコーティングした。この酸化鉄をコーティングした黒鉛板を、図1に示すように真空チャンバー4の中に配置し、真空チャンバー4の中を真空ポンプによって5Pa以下まで減圧した。
【実施例】
【0058】
次いで、ヒーター3を通電加熱して、真空チャンバー4の中の温度を1400℃に維持した状態で、シリカと金属ケイ素との等モル量の混合物を1450℃に加熱して発生させた一酸化ケイ素SiOを流路5より、さらにCHを流路6より、CH/SiOのモル比が2/1となるように供給した。これらのSiOとCHのガスを供給する圧力を制御することにより、真空チャンバー4の圧力を約20kPaに維持した。
【実施例】
【0059】
このようにして、真空チャンバー4の中を1400℃の温度と約20kPaの圧力に2時間にわたって維持した後、100℃以下まで放冷し、基材2としてのアルミナ板を取出した。
このアルミナ板を、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析装置、及びX線回折装置を用いて観察した結果、酸化鉄をコーティングしておいたアルミナ板の表面には、β型の炭化ケイ素が、緻密な28mg/cmのコーティング層として生成していることが確認された。
【実施例】
【0060】
実施例5
硝酸銅(Cu(NO・3HO)の30重量%水溶液を黒鉛板(20mm×20mm×5mm)の片方の表面に噴霧して乾燥させた後、窒素雰囲気中で700℃に加熱して、Cu換算で1.2mg/cmの触媒成分としての酸化銅を、基材2としての黒鉛板の表面にコーティングした。この酸化銅をコーティングした黒鉛板を、図1に示すように真空チャンバー4の中に配置し、真空チャンバー4の中を真空ポンプによって5Pa以下まで減圧した。
【実施例】
【0061】
次いで、実施例4と同様にして、基材2を、CH/SiOのモル比が2/1で圧力が約10kPaの雰囲気下で2時間にわたって1400℃に加熱した後、100℃以下まで放冷し、基材2としての黒鉛板を取出した。
この黒鉛板を、実施例1と同様にして観察した結果、酸化銅をコーティングしておいた黒鉛板の表面には、β型の炭化ケイ素が、緻密な32mg/cmのコーティング層として生成していることが確認された。
【符号の説明】
【0062】
1 触媒成分
2 基材
3 ヒーター
4 真空チャンバー
5 流路
6 流路
7 バルブ
8 原料混合物
9 ヒーター


図面
【図1】
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【図2】
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