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明細書 :グリセロール-3-ホスホコリン(GPC)などのグリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6063207号 (P6063207)
公開番号 特開2014-082990 (P2014-082990A)
登録日 平成28年12月22日(2016.12.22)
発行日 平成29年1月18日(2017.1.18)
公開日 平成26年5月12日(2014.5.12)
発明の名称または考案の名称 グリセロール-3-ホスホコリン(GPC)などのグリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素及びその製造方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/16        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/16 C
請求項の数または発明の数 10
全頁数 31
出願番号 特願2012-234401 (P2012-234401)
出願日 平成24年10月24日(2012.10.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 2012年9月25日 公益社団法人日本生物工学会発行の「創立90周年記念 第64回日本生物工学会大会講演要旨集 第125頁(3Cp10)」に発表 2012年9月25日 公益社団法人日本生物工学会発行の「創立90周年記念 第64回日本生物工学会大会講演要旨集 第125頁(3Cp11)」に発表
審査請求日 平成27年8月24日(2015.8.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505089614
【氏名又は名称】国立大学法人福島大学
発明者または考案者 【氏名】杉森 大助
【氏名】小笠原 準季
【氏名】奥田 航輝
個別代理人の代理人 【識別番号】100087767、【弁理士】、【氏名又は名称】西川 惠清
【識別番号】100155745、【弁理士】、【氏名又は名称】水尻 勝久
【識別番号】100143465、【弁理士】、【氏名又は名称】竹尾 由重
【識別番号】100155756、【弁理士】、【氏名又は名称】坂口 武
【識別番号】100161883、【弁理士】、【氏名又は名称】北出 英敏
【識別番号】100167830、【弁理士】、【氏名又は名称】仲石 晴樹
【識別番号】100162248、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 豊
審査官 【審査官】千葉 直紀
参考文献・文献 特開平05-168498(JP,A)
Gallazzini, Morgan, ET. AL.,GDPD5 is a glycerophosphocholine phosphodiesterase that osmotically regulates the osmoprotective organic osmolyte GPC,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2008年 8月 5日,vol. 105, no. 31,pp. 11026-11031
RecName: Full=Glycerophosphodiester phosphodiesterase domain-containing protein 5; AltName: Full=Glycerophosphodiester phosphodiesterase2,UniProtKB/Swiss-Prot,2012年10月 3日,AC:Q640M6, Ver. 65
Sakagami, Hideki, ET. AL.,Biochemical and Molecular Characterization of a Novel Choline-specific Glycerophosphodiester Phosphodiesterase Belonging to the Nucleodide Pyrophosphatase/Phosphodiesterzase Family,The Journal of Biological Chemistry,2005年 3月23日,Vol. 280, No. 24,,pp. 23084-23093,originally published online
Oshima, Noriyasu, ET. AL.,Escherichia coli Cytosolic Glycerophosphodiester Phosphodiesterase(UgpQ) Requires Mg2+, Co2+, or Mn2+ for Its Enzyme Activity,Journal of Bacteriology,2007年12月14日,Vol. 190, No. 4,pp. 1219-1223,Printed on 2008/02, published ahead of print on 14 December 2007
RecName:Full=Glycerophosphoryl diester phosphodiesterase; Short=Glycerophosphodiester phosphodiesterase; EC=3.1.4.46,UniProtKB/Swiss-Prot. AC:P10908;P22633;Q2M7B2,2012年10月 3日,entry version 102
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ
UniProt/SwissProt/GeneSeq

特許請求の範囲 【請求項1】
グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む、酵素:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
【請求項2】
グリセロール-3-ホスホコリンを基質としたときに、pH7.2で40℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、20℃から60℃の範囲内で40%以上の加水分解活性を示す、請求項1に記載の酵素。
【請求項3】
グリセロール-3-ホスホコリンを基質としたときに、pH7.2で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH5からpH8の範囲内で10%以上の加水分解活性を示す、請求項1又は2に記載の酵素。
【請求項4】
グリセロール-3-ホスホコリンを基質としたときに、pH7.2で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、グリセロール-3-ホスホエタノールアミンに対して90%以上、グリセロール-3-リン酸に対して20%以下、グリセロール-3-ホスホグリセロールおよびグリセロール-3-ホスホイノシトールに対して1%以下、グリセロール-3-ホスホセリンに対してほぼ0%、リゾホスファチジルコリンに対して40%以下、リゾホスファチジルエタノールアミンに対して3%以下、リゾホスファチジン酸に対して1%以下、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルグリセロールに対してほぼ0%、コリン型リゾプラズマローゲンに対して5%以下、エタノールアミン型リゾプラズマローゲンに対して1%以下、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲンに対してほぼ0%、ホスファチジルエタノールアミンに対して0.5%以下、ホスファチジルセリンに対して0.1%以下、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸およびスフィンゴミエリンに対してほぼ0%である基質特異性を有する、請求項1から3のいずれかに記載の酵素。
【請求項5】
SDS-PAGEで測定した場合の分子量が60,000~70,000の範囲内である、請求項1から4のいずれかに記載の酵素。
【請求項6】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項1から5のいずれかに記載の酵素。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の酵素をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
以下の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを含む、請求項7に記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(b)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
【請求項9】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する、請求項7または8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素を製造する方法であって、
請求項7から9のいずれかに記載のポリヌクレオチドを有する微生物から該酵素を産生させる工程を含む、酵素の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する新規な酵素およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リン脂質、リゾリン脂質およびグリセロール-3-ホスホジエステルに様々な生理作用があることがわかり、これら化合物とこれらに関連のある酵素が注目されている。グリセロール-3-ホスホジエステルは、ホスホリパーゼA1、A2、Bなどの酵素の作用によって、リン脂質から生成する化合物で、細胞内で代謝に深く関わっていると考えられる。例えば、グリセロール-3-ホスホコリン(以下「GPC」ともいう)は母乳に含まれる安全な成分で、門脈を通過できるため、ホスファチジルコリンに比べて遙かに体内吸収量が高い。また、GPCは中枢作用と末梢作用を有する。中枢作用としては、アルツハイマー型認知症患者の認知機能の改善、学習能力の向上(ラット弁別学習)、及び、ストレスホルモンの分泌を抑制する効果があることがわかっている。末梢作用としては、成長ホルモン分泌促進作用、肝機能障害改善作用、血圧低下作用があることがわかっている。また、GPCはアセチルコリンと同様に血管弛緩作用により、血管を拡張し血圧を下げることがわかっている。さらに、激しい運動後、GPCによって血清コリン濃度減少を抑制することで、競技パフォーマンス低下を改善させる効果が期待できる。また、GPCは、傷害時の修復能向上が期待され、激しい運動により傷ついた筋肉細胞の修復を促進するといった優れた効果を示すことがわかっている(非特許文献1)。また、グリセロール-3-ホスホコリンは、認知症予防などが期待されている(特許文献1)。このように、グリセロール-3-ホスホコリンは多くの生理活性を有する物質である。そして、グリセロール-3-ホスホコリンを含め、グリセロール-3-ホスホコリン以外にもグリセロール-3-ホスホジエステルには多くの生理活性があることが予想される。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2007/010892号
【0004】

【非特許文献1】BIO INDUSTRY、29巻、2号、2012
【非特許文献2】Glycerylphosphocholine phosphocholine phosphodiesterase activity is reduced in multiple sclerosisplaques, Janzen, L.; Tourtellotte, W.W.; Kanfer J.N.; Exp. Neurol. 109, 243-246(1990)
【非特許文献3】Properties of aZn(2+)-glycerophosphocholine cholinephosphodiesterase from bovine brain membranes,Sok D.E.; Neurochem. Res. 21, 1193-1199 (1996)
【非特許文献4】Somecharacteristics of sn-glycero 3-phosphocholine diesterases from rat brain,Abra, R.M.; Quinn, P.J.; Biochim. Biophys. Acta 431, 631-639 (1976)
【非特許文献5】Aphosphodiesterase in rat kidney cortex that hydrolysesglycerylphosphorylinositol, Dawson, R.M.C.; Hemington, N.; Biochem. J. 162,241-245 (1977)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グリセロール-3-ホスホジエステル類のうち、GPC(グリセロール-3-ホスホコリン)やグリセロ-3-ホスホエタノールアミン(以下「GPE」ともいう)は、生理活性や疾患との関連などにおいて重要な分析対象物質である。したがって、これらの物質を選択的に、簡便かつ迅速に定量測定できれば、非常に有効な測定法となる。しかしながら、従来の技術では、煩雑な前処理をともなうHPLCやLC-MSなどを用いた分析法しかなく、分析に時間とコストを要していた。さらに、正確な定量も困難な状況であった。そして、これまでにこの目的に適した酵素は見出されていなかったため、従来の技術ではGPCやGPEを定量する方法が無かった。
【0006】
グリセロール-3-ホスホジエステルに作用し、グリセロールと、リン酸又はホスホコリン、ホスホエタノールアミンなどのリン酸エステル化合物とを生成する酵素は、ホスホリパーゼCと呼ばれる触媒作用を示す酵素と類似する酵素である。ホスホリパーゼC(以下「PLC」ともいう)は、リン脂質又はその加水分解物(リゾリン脂質など)におけるリン酸基のグリセロール側の結合を加水分解する作用を有する。そのような酵素のなかでも、基質特異的に作用する酵素は、分析など、産業上の利用に特に有用である。そして、グリセロホスホコリンに特異的に作用することによって種々の可能性が期待される。
【0007】
ホスホリパーゼCに似たような触媒作用を示す酵素として、glycerophosphocholine cholinephosphodiesterase(EC 3.1.4.38)とglycerophosphoinositol inositolphosphodiesterase(EC3.1.4.43)が知られているが、GPEなど、GPC以外のグリセロ-3-ホスホジエステルに作用する酵素の存在は知られていない(酵素データベース「BRENDA」より)。また、非特許文献2にはヒト由来の酵素、非特許文献3にはウシ由来の酵素、非特許文献4にはドブネズミ(英語名ラット)由来の酵素、非特許文献5にはハツカネズミ由来の酵素が開示されている。また、非特許文献5では、ドブネズミ(英語名ラット)Rattus norvegicus由来glycerophosphoinositol inositolphosphodiesteraseが報告されている。しかしながら、これらの酵素はGPCあるいはGPIに選択的に作用するが、すべて動物臓器由来のもので、得られる酵素の力価や生産量が低いことや倫理上の問題などの課題が多く、産業利用は極めて困難である。さらに、金属イオン要求性のため使用において限定的となる(制約を受ける)可能性もある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する新規な酵素およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような新規な酵素を得ることを目的として、該酵素を生産する微生物を検索した結果、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物から新規な性質を有する酵素を見出した。
【0010】
[酵素]
本発明に係る酵素は、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含む。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。
【0011】
上記の酵素の好ましい形態は、グリセロール-3-ホスホコリンを基質としたときに、pH7.2で40℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、20℃から60℃の範囲内で40%以上の加水分解活性を示す。
【0012】
上記の酵素の好ましい形態は、グリセロール-3-ホスホコリンを基質としたときに、pH7.2で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH5からpH8の範囲内で10%以上の加水分解活性を示す。
【0013】
上記の酵素の好ましい形態は、グリセロール-3-ホスホコリンを基質としたときに、pH7.2で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、グリセロール-3-ホスホエタノールアミンに対して90%以上、グリセロール-3-リン酸に対して20%以下、グリセロール-3-ホスホグリセロールおよびグリセロール-3-ホスホイノシトールに対して1%以下、グリセロール-3-ホスホセリンに対してほぼ0%、リゾホスファチジルコリンに対して40%以下、リゾホスファチジルエタノールアミンに対して3%以下、リゾホスファチジン酸に対して1%以下、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルグリセロールに対してほぼ0%、コリン型リゾプラズマローゲンに対して5%以下、エタノールアミン型リゾプラズマローゲンに対して1%以下、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲンに対してほぼ0%、ホスファチジルエタノールアミンに対して0.5%以下、ホスファチジルセリンに対して0.1%以下、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸およびスフィンゴミエリンに対してほぼ0%である基質特異性を有する。
【0014】
上記の酵素の好ましい形態は、SDS-PAGEで測定した場合の分子量が60,000~70,000の範囲内である。
【0015】
上記の酵素の好ましい形態は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
【0016】
[ポリヌクレオチド]
本発明に係るポリヌクレオチドは、請求項1から6のいずれかに記載の酵素をコードする。
【0017】
上記のポリヌクレオチドの好ましい形態は、以下の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを含む。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(b)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
【0018】
上記のポリヌクレオチドの好ましい形態は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物に由来する。
【0019】
[酵素の製造方法]
本発明に係る酵素の製造方法は、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素を製造する方法であって、上記のポリヌクレオチドを有する微生物から該酵素を産生させる工程を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する基質特異性の高い新規な酵素を提供することが可能になる。特に、グリセロ-3-ホスホコリン及びグリセロ-3-ホスホエタノールアミンに対して高い基質特性を発現する酵素を提供することができる。さらに、該酵素を微生物によって効率よく生産する方法を提供することができる。また、グリセロール-3-ホスホジエステルを効率よく分析することができる。また、グリセロール-3-ホスホジエステルの分解反応を産業的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)培養液から得られた精製画分(GPC-CP)についてのSDS-PAGE解析の結果を示す電気泳動写真である。
【図2】GPCを基質とした場合の酵素活性を基準(100%)とした、GPC-CPの基質特異性(加水分解活性の相対比較)を示すグラフである。
【図3】反応温度が40℃である場合の酵素活性を基準(100%)とした、種々の温度でのGPC-CPの相対活性を示すグラフである。
【図4】pHが7.2である場合の酵素活性を基準(100%)とした、種々のpHでのGPC-CPの相対活性を示すグラフである。
【図5】pHが7.2、30分間の条件で種々の温度で処理した後のGPC-CPについての相対活性を示すグラフである。
【図6】温度が4℃、3時間の条件で種々のpHで処理した後のGPC-CPについての相対活性を示すグラフである。
【図7】金属イオン又はEDTAを添加したときのGPC-CPについての相対活性を示すグラフである。
【図8】化学物質を添加したときのGPC-CPについての相対活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[酵素]
本明細書において、酵素とは、精製酵素に限定されず、粗精製物、固定化物なども含む。酵素の精製は、例えば、微生物の培養液を用いて、硫安沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーなどの、当業者に周知の方法を用いて行われる。それにより、種々の精製度の酵素(ほぼ単一までに精製された酵素を含む)が得られ得る。

【0023】
本明細書において、微生物とは、野性株、変異株(例えば、紫外線照射などにより誘導されたもの)、あるいは、細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝子工学的手法により誘導される組換え体などのいずれの株であってもよい。組換え体などの遺伝子操作された微生物は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第2版(Sambrook,J.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されるような、当業者に公知な技術を用いて容易に作成され得る。微生物の培養液とは、微生物菌体を含む培養液、および遠心分離などにより微生物菌体を除いた培養液の両方を意味する。

【0024】
[GPC-CP]
グリセロホスホコリン コリンホスホジエステラーゼ(Glycerophosphocholine cholinephosphodiesterase [EC 3.1.4.38]、以下「GPC-CP」ともいう)は、ホスホリパーゼCに類似した酵素活性を示す酵素である。本発明によれば、新規なGPC-CPが得られる。ホスホリパーゼCは、リン脂質及びその加水分解物(リゾリン脂質、グリセロホスホジエステル)に作用し、ホスホジエステル部位におけるグリセロール側のホスホエステル結合を加水分解する作用を有するものである。本発明によるGPC-CPでは、リン脂質やリゾリン脂質に対する活性は高くなく、それらが加水分解したグリセロホスホジエステル化合物に対して特異的に加水分解活性を有する。グリセロホスホジエステルに対してGPC-CPが作用すると、グリセロールと、リン酸又はホスホコリン、ホスホエタノールアミンなどのリン酸エステル化合物とを生成する。そして、さらに、本発明によるGPC-CPは、グリセロール-3-ホスホジエステルのうちでもGPCに特異的に作用する。

【0025】
GPC(グリセロール-3-ホスホコリン)の化学式を以下に示す。なお、グリセロホスホコリンは、グリセロール-3-ホスホコリンの略称である。また、グリセロール-3-ホスホコリンは、別称として、グリセロ-3-ホスホコリン、sn-グリセロ-3-ホスホコリン、sn-グリセロール-3-ホスホコリンがある。

【0026】
【化1】
JP0006063207B2_000002t.gif

【0027】
GPC-CPは、以下の反応を触媒することができる酵素である。すなわち、GPCは、GPC-CPにより加水分解されて、グリセリンとホスホコリンとが生成する。

【0028】
【化2】
JP0006063207B2_000003t.gif

【0029】
本発明における酵素は基質特異的な作用を有する。本発明では、GPC(グリセロール-3-ホスホコリン)に対して特異的に作用する酵素(GPC-CP)が得られる。また、本発明におけるGPC-CPは、GPE(グリセロール-3-ホスホエタノールアミン)に対しても高い活性を示す。そして、このGPC-CPは、それ以外のグリセロホスホ化合物(グリセロホスホジエステル)に対する活性はそれほど高くない。ところで、GPEに作用する酵素は、グリセロホスホエタノールアミン エタノールアミンホスホジエステラーゼ(GPE-EP)とも呼ぶことができる。したがって、本発明における酵素は、GPC-CPとGPE-EPの両方の性質を有する。なお、GPEのみに作用する酵素はGPE-EPとなる。

【0030】
グリセロール-3-ホスホジエステル(以下「GPX」ともいう)は、リン脂質(グリセロールリン脂質)やリゾリン脂質の加水分解によって得られる化合物である。グリセロールリン脂質中のグリセロール基のα位(sn-1位)の脂肪酸エステル結合を加水分解する酵素をホスホリパーゼA1(PLA1)と称し、グリセロール基のβ位(sn-2位)の脂肪酸エステル基を加水分解する酵素をホスホリパーゼA2(PLA2)と称する。また、ホスホリパーゼA1活性及びホスホリパーゼA2活性を併有する酵素をホスホリパーゼB(PLB)と称する。すなわち、PLBは、α位とβ位の両方に酵素活性を有する。したがって、GPC-CPは、ホスホリパーゼA1、A2、Bを利用して、あるいは化学反応等により得られたグリセロ-3-ホスホジエステルに反応し得る。

【0031】
本発明における酵素は、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素であって、以下の(a)から(c)のいずれかに記載のポリペプチドを含むものである。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失および/または付加されたアミノ酸配列を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有し、かつ該加水分解活性を示すポリペプチド。

【0032】
上記の酵素は、例えば、上記のようにGPCと酵素との反応条件下においては、約4~70℃の範囲内で作用し得る。至適温度は、この範囲内にあり得る。好ましくは約20~65℃の範囲内であり、より好ましくは30~60℃の範囲内であり、さらにより好ましくは約40℃である。

【0033】
上記の酵素は、例えば、GPCを基質としたときに、pH7.2で40℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、20℃から60℃の範囲内で40%以上の加水分解活性を示すことが好ましい。また、30℃から60℃の範囲内で70%以上の加水分解活性を示すことがさらに好ましい。

【0034】
上記の酵素は、例えば、緩衝液として、HEPES緩衝液(pH7.2)を用い、37℃の温度条件にて、上記のグリセロ-3-ホスホコリンと酵素とを反応条件下におくと、GPC-CP活性を示し得る。緩衝液としては、Tris-HCl、Bis-Tris、酢酸-酢酸Na、Glycine-NaOHなども使用することができる。

【0035】
上記の酵素は、例えば、GPCを基質としたときに、pH7.2で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、pH5からpH8の範囲内で10%以上の加水分解活性を示すことが好ましい。また、pH6からpH8の範囲内で20%以上の加水分解活性を示すことがさらに好ましい。至適pHは、pH7.2付近(例えばpH6.5~7.5の範囲内)とすることができる。

【0036】
上記の酵素は、例えば、上記のようにグリセロール-3-ホスホコリン(GPC)を基質としたときに、pH7.2で37℃にて5分間の条件での加水分解活性を100%とした場合に、該条件での加水分解活性が、グリセロール-3-ホスホエタノールアミン(GPE)に対して90%以上、グリセロール-3-リン酸(GPA)に対して20%以下、グリセロール-3-ホスホグリセロール(GPG)およびグリセロール-3-ホスホイノシトール(GPI)に対して1%以下、グリセロ-3-ホスホセリン(GPS)に対してほぼ0%、リゾホスファチジルコリン(LPC)に対して40%以下、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)に対して3%以下、リゾホスファチジン酸(LPA)に対して1%以下、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾホスファチジルセリン(LPS)およびリゾホスファチジルグリセロール(LPG)に対してほぼ0%、コリン型リゾプラズマローゲン(Lyso-PlsPC)に対して5%以下、エタノールアミン型リゾプラズマローゲン(Lyso-PlsPE)に対して1%以下、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲン(PlsPE、PlsPC)に対してほぼ0%、ホスファチジルエタノールアミン(PE)に対して0.5%以下、ホスファチジルセリン(PS)に対して0.1%以下、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)およびスフィンゴミエリン(SM)に対してほぼ0%である基質特異性を有する。また、好ましくは、さらに大豆由来のホスファチジルコリン(PC(soy))に対して0.5%以下、PAFに対してほぼ0%である基質特異性を有する。ここで、加水分解活性がほぼ0%とは、例えば1%以下、0.1%以下、あるいは検出限界以下を意味するものであってよい。また、PCの一例はDPPCであり、PAの一例はDMPAであり、PSの一例はPOPSであり、PGの一例はPOPGであり、PEの一例はDPPEである(略称については後述の表3参照)。上記の酵素では、このような基質特異性を有することが好ましいものである。

【0037】
上記の酵素は、電気泳動条件などにより若干変化し得るが、SDS-PAGEにおける分子量が60,000~70,000(Da)の範囲内を示すことが好ましい。例えば、ストレプトマイセス属由来の天然の酵素では、SDS-PAGEにおける分子量が約66kDaを示すものが得られている。

【0038】
上記の酵素、すなわちGPC-CPの一態様は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるものである。

【0039】
上記の酵素は、GPC-CP活性を有する限り、配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は、配列番号2に記載内のアミノ酸配列に対して、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有する酵素であってもよい。当業者であれば、例えば、部位特異的変異導入法(NucleicAcid Res.,1982年,10巻,pp.6487;Methods inEnzymol.,1983年,100巻,pp.448;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,ColdSpring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.1989年;PCR:APractical Approach,IRL Press,1991年,pp.200)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより、タンパク質の構造を改変することができる。本明細書において、置換、欠失、挿入、および/または付加することができるアミノ酸残基数は、通常50以下、例えば30以下、あるいは20以下、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは0~3である。また、アミノ酸の変異は、人工的に変異させた酵素のみならず、自然界において変異した酵素も、同様の活性を有する限り、上記の酵素(GPC-CP)に含まれる。

【0040】
配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド(タンパク質)も、GPC-CP活性を有する限り、上記の酵素(GPC-CP)に含まれる。GPC-CPは、好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。

【0041】
タンパク質の相同性の(ホモロジー)検索は、例えばUniprot、SWISS-PROT、PIR、DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベース、またはDDBJ、EMBL、あるいはGenBankなどのDNAデータベースなどを対象に、BLASTなどのプログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。タンパク質の活性の確認は、上記に記載の手順を利用して行い得る。

【0042】
GPC-CPの供給源は特に限定されるものではないが、GPC-CPは、微生物などの生体細胞から得ることができる。そのような微生物としては、例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が挙げられる。好ましくは、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)が挙げられる。また、近縁の菌株、例えば、ストレプトマイセス・アトラタス(Streptomyces atratus)なども、GPC-CP活性を有する酵素が得られる可能性がある。また、Streptomyces sindenesis、Streptomyces badius、Streptomyces globisporus、Streptomyces pluricolorescens、Streptomyces rubiginosohelvolus、Streptomyces albovinaceus、Streptomyces anulatus、Streptomyces flavofuscus、Streptomyces microflavus、Streptomyces griseorubiginosus、Streptomyces puniceus、Streptomyces floridae、Streptomyces griseolus、Streptomyces halstedii、Streptomyces flavovirens、Streptomyces flavogriseus、Streptomyces pulveraceus、Streptomyces gelaticus、Streptomyces albus subsp. albusなども、GPC-CP活性を有する酵素が得られる可能性がある。また、ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)、ストレプトマイセス・チャッタノゲンシス(Streptomyces chattanoogensis)およびストレプトマイセス・リディカス(Streptomyces lydicus)なども、GPC-CP活性を有する酵素が得られる可能性がある。これらの菌株は近縁であることから同種の活性のGPC-CPが得られやすいものと考えられる。

【0043】
例えば、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株(受託番号:NITE BP-1392)は適当な栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理したものをGPC-CP酵素製剤として製造することができる。

【0044】
GPC-CP酵素製剤の製造に用い得る微生物はストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株に限られるものではなく、ストレプトマイセス属に属し、かつ、GPC-CPを生産し得る微生物であってもよい。また、それらの生物種の天然または人為的変異株や、GPC-CP活性の発現に必要な遺伝子断片を人為的に取り出し、それを組み入れた他の生物種であってもGPC-CPの製造に用いることができる。また、ストレプトマイセス属に属さなくても、上記のGPC-CPを生産し得る微生物であれば、それを用いることもできる。

【0045】
ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株を用いたGPC-CP酵素製剤を例に挙げて、その製造について説明する。

【0046】
この菌は栄養培地で液体培養することにより該酵素を菌体外に分泌するので、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理する、あるいはこの処理物を固定化するなどして酵素製剤を製造することができる。さらに具体的に説明すると、まず、この菌を適当な培地、例えば適当な炭素源、窒素源、無機塩類を含む培地中で培養し、該酵素を分泌させる。ここで炭素源としては、澱粉および澱粉加水分解物、グルコース、シュークロースなどの糖類、グリセロールなどのアルコール類、および有機酸(例えば、酢酸およびクエン酸)またはその塩(例えば、ナトリウム塩)などが挙げられる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉などの有機窒素源および硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの無機窒素化合物挙げられる。無機塩類としては、塩化ナトリウム、リン酸1カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、塩化カルシウム、硫酸第1鉄などが挙げられる。炭素源の濃度は、例えば0.1~20%(w/v)、好ましくは0.4~10%(w/v)の範囲である。窒素源の濃度は、例えば0.1~20%(w/v)、好ましくは0.4~10%(w/v)の範囲である。好ましい培地組成として、具体的には、麦芽エキス1%、グルコース0.4%が挙げられるが、これに限定されるものではない。培養温度は、上記の酵素が安定であり、そして培養される微生物が十分に生育できる温度であることが好ましく、例えば、20~40℃であることが好ましい。培養時間は、上記酵素が十分に生産される時間であることが好ましく、例えば、1~7日間程度であることが好ましい。培養は、好ましくは、好気的な条件下で、例えば、通気攪拌または振とうしながら行うことができる。

【0047】
GPC-CPは、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈殿や硫安などによる塩析など);陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィー;キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適当に組み合わせることにより精製することができる。例えば、上記微生物の培養上清を回収した後、硫安沈殿、さらに陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、及び/又は、陽イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより精製することができる。これにより、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)において、ほぼ単一バンドにまで精製することができる。すなわち、上記酵素(GPC-CP)は、HPLC分析およびゲル濾過クロマトグラフィー分析により、単量体と推定できる。

【0048】
[GPC-CPをコードするポリヌクレオチド]
本発明におけるポリヌクレオチドは、上記のGPC-CPをコードするものである。このポリヌクレオチドは、好ましくは、以下の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを含む。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(b)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。

【0049】
上記のポリヌクレオチドは、DNA、RNAなどの天然のポリヌクレオチドに加え、人工的なヌクレオチド誘導体を含む人工的な分子であり得る。また、ポリヌクレオチドは、DNA-RNAのキメラ分子であり得る。上記のGPC-CPをコードするポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1の1位から1941位までの塩基配列を有する。配列番号1に記載の塩基配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードすることができ、このアミノ酸配列を含むタンパク質は、GPC-CPの好ましい形態を構成する。

【0050】
上記のGPC-CPをコードするポリヌクレオチドとしては、上記のような配列番号2に記載のアミノ酸配列に1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸を含み、かつGPC-CP活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた挙げられる。当業者であれば、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに部位特異的変異導入法(上述)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することによりポリヌクレオチドのホモログを得ることが可能である。

【0051】
ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載した塩基配列情報に基づいて、目的とする遺伝子を、上記の微生物、好ましくは、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物、さらに好ましくは、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)から取得することができる。遺伝子の取得には、PCRやハイブリダイズスクリーニングを用いることができる。あるいは遺伝子の取得には、次世代シーケンスなどによるゲノム解析により得られた情報からインシリコスクリーニングにてORF、遺伝子を探索する手法を用いることができる。

【0052】
また、ポリヌクレオチドは、DNA合成によって遺伝子の全長を化学的に合成して得ることもできる。また、上記の塩基配列情報に基づいて、上記以外の生物に由来する上記GPC-CPをコードするポリヌクレオチドを取得することもできる。例えば、上記塩基配列もしくはその一部の塩基配列を用いてプローブを設計し、他の生物から調製したDNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行うことにより、種々の生物由来のGPC-CPをコードするポリヌクレオチドを単離することができる。

【0053】
さらに、上記の塩基配列情報に基づいて、DNA Databank of Japan(DDBJ)、EMBL、GenBankなどのDNAに関するデータベースに登録されている配列情報を用いてホモロジーの高い領域からPCR用のプライマーを設計することもできる。このようなプライマーを用い、染色体DNA、プラスミドDNAを含むすべてのDNA(ゲノムDNA)もしくはcDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記GPC-CPをコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。同様に、環境中から抽出したDNAあるいはRNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記GPC-CPをコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。

【0054】
ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号1に記載の塩基配列中の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、40個、60個、または100個の連続した配列を1つまたは複数選択してプローブを設計し、例えばECL directnucleic acid labeling and detection system(GE Healthcare社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、洗浄条件:42℃、0.5×SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。より具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1% SDSの条件であり、さらに好ましくは65℃、0.1×SSC、0.1% SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されるものではない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては、温度や塩濃度など複数の要素があり、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。

【0055】
さらに、上記のGPC-CPをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつGPC-CP活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。タンパク質の相同性(ホモロジー)検索は、上記で説明したとおりである。

【0056】
また、上記のGPC-CPをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、なおより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつGPC-CP活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドもまた挙げられる。塩基配列の配列同一性の決定および検索についても、上記で説明したとおりである。

【0057】
上記のGPC-CPをコードするポリヌクレオチドは、遺伝子組換え技術を用いて、同種もしくは異種の宿主中で発現され得る。

【0058】
[酵素の製造方法]
本発明では、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する酵素を製造する方法が提供される。酵素の製造方法においては、上記で説明したポリヌクレオチドを有する微生物から該酵素を産生させる工程を含んでいる。本発明による方法では、上記で説明したGPC-CPが得られる。上記のポリヌクレオチドを有する微生物は、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)のように微生物自体が天然に有するものであってもよく、あるいは、変異してポリヌクレオチドを有するものであってもよく、あるいは、ポリヌクレオチドが導入されて有するものであってもよい。

【0059】
ポリヌクレオチドの導入においては、ベクター、形質転換体などが利用され得る。このベクターは、上記のポリヌクレオチドを含むものである。また、ポリヌクレオチド又はベクターを宿主に導入することにより、グリセロール-3-ホスホジエステルに対して加水分解作用を有する能力を保有する形質転換体を作製することができる。

【0060】
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:ALaboratory Manual第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1989年参照)。特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、John Innes Foundation、2000年)」を参照して行うことができる。

【0061】
微生物中で、GPC-CPをコードするポリヌクレオチドを発現させるためには、まず微生物中で安定に存在するプラスミドベクターやファージベクターにこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる。そのために、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターをDNA鎖の5’側上流に組み込むことが好ましい。また、転写・翻訳を制御するユニットにあたるターミネーターをDNA鎖の3’側下流に組み込むことが好ましい。より好ましくは、上記プロモーターとターミネーターの両方をそれぞれの部位に組み込む。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用される微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターが用いられる。これらの各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターなどに関しては、「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版」、特に放線菌に関しては、「PRACTICAL STREPTOMYCES GENETICS(Kieserら、JohnInnes Foundation、2000年)」などに詳細に記述されており、その方法を利用することが可能である。また、必要に応じてシグナル配列を用いることで細胞外に効率的に分泌生産させることができる。この時使用するシグナル配列は上記のGPC-CPのものでもその他のものでもよい。

【0062】
形質転換の対象となる宿主は、上記のGPC-CPをコードするポリヌクレオチドを含むベクターにより形質転換されて、GPC-CP活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。例えば、細菌、放線菌、枯草菌、大腸菌、酵母、カビなどが挙げられる。より具体的には、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発がされている細菌;ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発がされている放線菌;サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発がされている酵母;ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主・ベクター系の開発がされているカビなどが挙げられる。遺伝子組換えの操作の容易性からは大腸菌が好ましく、遺伝子の発現の容易性からは放線菌が好ましい。

【0063】
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、例えば、蚕などの昆虫(Nature315,592-594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種蛋白質を発現させる系が開発されており、これらを利用してもよい。また、小麦胚芽由来の無細胞たんぱく合成系などインビトロ発現系を用いてもよい。

【0064】
得られた形質転換体は、上記のように酵素製剤(GPC-CP)の製造に用いることができる。具体的には、形質転換体を適当な栄養培地で液体培養して、発現したGPC-CPを細胞外に分泌させ、その培養上清を凍結乾燥、塩析、有機溶媒などにより処理してGPC-CP酵素製剤を製造することができる。

【0065】
宿主細胞に依存して培養条件は変動し得るが、培養は、同業者が通常用いる条件下で行われ得る。例えば、ストレプトマイセス(Streptomyces)属のような放線菌を宿主として用いる場合、チオストレプトンなどの抗生物質を含むトリプチックソイ培地(例えば、ベクトン・ディッキンソン社製)が用いられ得る。形質転換体により産生された酵素は、上述のようにしてさらに精製され得る。

【0066】
[GPC-CPの利用]
以上のようにして生産され得るGPC-CPは、グリセロール-3-ホスホコリン及びグリセロホスホエタノールアミンと特異的に反応する酵素である。そのため、グリセロール-3-ホスホコリン及びグリセロホスホエタノールアミンの分析に用いることができ、定量などを行うことができる。

【0067】
また、PLA1(ホスホリパーゼA1)、PLA2(ホスホリパーゼA2)、及び、PLB(ホスホリパーゼB)から選ばれる1種以上の酵素と組み合わせることにより、リン脂質やリゾリン脂質から、リン酸、ホスホコリンやホスホエタノールアミンなどを生成することが可能である。これらは、肥料や生理活性物質となり得るもので、これらを積極的に生産させることにも利用可能である。さらには、モノグリセリド、グリセリンを生成させることも可能である。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)由来酵素の精製]
ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株を培養し、その培養上清について、硫安分画、陰イオン交換、疎水相互作用、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。以下に詳細を示す。
【実施例】
【0070】
(a)培養
ISP2培地「1%麦芽エキス(べクトン・ディッキンソン社製)、0.4%酵母エキス(日本製薬(株)製)、0.4%グルコース(和光純薬工業(株)製)、pH7.2」500mLを調製し、500mL容三角フラスコに100mlずつ分注して、さらに0.1~1mM 程度のTween 80などの生化学用界面活性剤を添加した後、121℃で15分間蒸気殺菌を行った。予め平板培地に生育したストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株のコロニーを適当量とり、ISP2培地5mLを入れたφ18試験管(18×180mm)に接種し、28℃で良好な生育が得られるまで振とう培養した。この培養液を先の滅菌した培地100mLに1mlずつ接種し、28℃で48時間振とう培養した。遠心分離機を用いて、この培養液から上清(Supernatant)を回収した。
【実施例】
【0071】
(b)硫安分画
上記(a)で回収した培養上清に、30%飽和量となるように硫酸アンモニウムを添加し、生じた沈殿を遠心分離(10,000rpm、30分、4℃)により回収、除去した。得られた上澄み液に硫酸アンモニウムを80%飽和量となるように加え、生じた沈殿を遠心分離(10,000rpm、30分、4℃)により回収した。この沈殿を可溶化し、20mMトリス-塩酸緩衝液(pH9.0)で透析し、粗酵素液を得た。
【実施例】
【0072】
(c)DEAE-Sepharoseカラムクロマトグラフィー
上記(b)で得られた粗酵素液を、20mM トリス-塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「DEAE-Sepharose」にアプライした。同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【実施例】
【0073】
(d)HiTrap Butyl FF カラムクロマトグラフィー
上記(c)で得られた活性画分を集め、Viva spin(ザルトリウス社製)を用い濃縮脱塩した。これに、20mMTris-HCl緩衝液と、1M 硫安(pH8.0)とを加えた。これを、同緩衝液で予め平衡化した「HiTrap Butyl FF」(5ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、硫安(1Mから0Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【実施例】
【0074】
(e)HiTrap Q HP カラムクロマトグラフィー
上記(d)で得られた活性画分を集め、Viva spin(ザルトリウス社製)を用い濃縮脱塩した。これに、20mM トリス-塩酸緩衝液(pH9.0)を加えた。これを、20mMトリス-塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「HiTrap Q」(5ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【実施例】
【0075】
(f)Mono Q カラムクロマトグラフィー
上記(e)で得られた活性画分を集め、Viva spinを用い濃縮脱塩した。これに、20mMトリス-塩酸緩衝液(pH9.0)を加えた。20mM トリス-塩酸緩衝液(pH9.0)で予め平衡化した「Mono Q」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、塩化ナトリウム(0Mから1Mまで)のリニアグラジェントにより、活性画分を溶出させた。
【実施例】
【0076】
(g)Superdex200 10/300GL カラムクロマトグラフィー
上記(f)で得られた活性画分を集め、Viva spinを用い濃縮した。これに、20mMトリス-塩酸緩衝液と、0.15M 塩化ナトリウム(pH8.0)とを加えた。同緩衝液で予め平衡化した「Superdex200 10/300GL」(24ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液で溶出させた。
【実施例】
【0077】
(h)Mono P カラムクロマトグラフィー
上記(g)で得られた活性画分を集め、Viva spinを用い濃縮脱塩した。これに、25mMビス-トリス緩衝液(pH6.3)を加えた。25mM ビス-トリス緩衝液(pH6.3)で予め平衡化した「Mono P」(1ml)カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)にアプライし、同緩衝液でカラムを洗浄した後、Poly Buffer(pH4.0)(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のpHリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。この時、溶出位置から酵素の等電点は4.8~5付近と予想された。
【実施例】
【0078】
以上のようにして、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株より、精製酵素を得た。なお、精製酵素が単一であることは、分子量測定において単一のバンドが測定されたことで確認した。また、この酵素は、HPLC分析およびゲル濾過クロマトグラフィー分析によっても単量体と推定された。
【実施例】
【0079】
表1に、GPC-CP精製における収量、収率等を示す。
【実施例】
【0080】
【表1】
JP0006063207B2_000004t.gif

【実施例】
【0081】
なお、上記の表中、「30-80%硫安分画」は(b)硫安分画における遠心分離による回収後、「透析」は(b)硫安分画における透析後の値である。
【実施例】
【0082】
[GPC-CPの分子量の測定]
(分子量)
上記によって得た精製酵素(GPC-CP)について、SDS-PAGE(12%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)により分子量を解析した。
【実施例】
【0083】
図1は、この溶出画分のSDS-PAGEによる解析の結果を示す電気泳動写真である。図の左側のレーンは、分子量マーカー(M)であり、図の右側のレーンは、溶出画分(GPC-CP)のバンドを示す。図1に示すように、溶出画分において、単一のバンドが観察され、精製酵素(ポリペプチド)の分子量は約66,000であった。なお、分子量の単位はDa(ダルトン)である。よって、kDa表記では、この酵素の分子量は約66kDaとなる。
【実施例】
【0084】
ここで、既知のGPC-CP酵素の分子量はSDS-PAGE分析により、ウシ脳由来が110kDa、ラット脳由来が230kDa、マウス脳由来が74kDaであることが知られている。したがって、既知のGPC-CPとは異なる酵素であることが確認された。
【実施例】
【0085】
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)由来酵素(GPC-CP)の性質の測定]
(酵素活性(GPC-CP活性):基質特異性)
本実施例において、酵素活性の測定は、基本的には、以下のように行った。この方法を、以下、「酵素活性標準測定方法」という。この方法では、GPC(グリセロホスホコリン)を基質として用いた場合を例示する。
【実施例】
【0086】
基質(GPC)0.8mM、HEPES緩衝液(pH7.2、温度37℃)50mMの溶液に、精製酵素(GPC-CP)を10%(v/v)となるように加え、合計量50μLとなる反応液を調製した。「酵素活性標準測定方法」では基質量を0.8mMとしている。ただし、GPC以外の基質の場合(GPXなど)は、可溶化のため、TritonX-100を0.5%(w/v)、反応液に加えた。この反応液を5分間(又は10分間)、37℃の温度条件にて撹拌し、酵素反応を行った。酵素反応の時間は酵素活性の度合に応じて適宜選択した。その後、アルカリホスファターゼ処理(AP処理)として、酵素反応液5μLに、APを1μL、AP緩衝液(pH9.6、温度56℃)を94μL加え、合計100μLにし、10分間、56℃の温度条件にて撹拌し、酵素反応を停止させた。次に、呈色反応として、酵素反応停止後の液(AP反応液)にBiomol Green (BMG)を加えて呈色液を調製し、20分、室温で撹拌することにより、呈色反応を行った。BMGの呈色液は、AP反応液25μLにBMG225μLを加えて合計250μLにする呈色液、又は、AP反応液75μLにBMG150μLを加えて合計225μLにする呈色液、のいずれかを、酵素活性の度合に応じて適宜選択した。そして、BMGによる呈色液について波長620nmでの吸光度を吸光度測定機により測定した。BMGでは、遊離したリン酸が呈色し、定量される。
【実施例】
【0087】
表2(表2A~表2E)に、上記の各反応における反応液組成を示す。
【実施例】
【0088】
【表2A】
JP0006063207B2_000005t.gif
【実施例】
【0089】
【表2B】
JP0006063207B2_000006t.gif
【実施例】
【0090】
【表2C】
JP0006063207B2_000007t.gif
【実施例】
【0091】
【表2D】
JP0006063207B2_000008t.gif
【実施例】
【0092】
【表2E】
JP0006063207B2_000009t.gif
【実施例】
【0093】
グラフ中の基質の詳細
DPPC: 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)
PC(soy): 大豆ホスファチジルコリン(L-α-phosphatidylcholine)(シグマアルドリッチ社製)
DPPE: 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine
PI: L-α-ホスファチジルイノシトール(L-α-Phosphatidylinositol)
POPS: L-α-ホスファチジルセリン(L-α-Phosphatidylserine)
POPG: 1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1-rac-グリセロール)(1,2-Diacyl-sn-glycero-3-phospho-(1-rac-glycerol))
DMPA: 1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール-3-ホスフェート(1,2-Dimyristoyl-sn-glycerol-3-phosphate)
PAF: β-Acetyl-γ-O-hexadecyl-L-α-phosphatidylcholine
SM: 卵黄由来スフィンゴミエリン(Sphingomyelinfrom chiken egg yolk)
PlsPC: コリン型リゾプラズマローゲン
PlsPE: エタノールアミン型リゾプラズマローゲン
LPC: PCのリゾ体(表3参照)
LPE: PEのリゾ体(表3参照)
LPI: PIのリゾ体(表3参照)
LPS: PSのリゾ体(表3参照)
LPG: PGのリゾ体(表3参照)
LPA: PAのリゾ体(表3参照)
Lyso-PlsPC: 上記PlsPCのリゾ体
Lyso-PLsPE: 上記PlsPEのリゾ体
GPC: グリセロ-3-ホスホコリン
GPA: グリセロ-3-リン酸
GPS: グリセロ-3-ホスホセリン
GPG: グリセロ-3-ホスホグリセロール
GPE: グリセロ-3-ホスホエタノールアミン
GPI: グリセロ-3-ホスホイノシトール
なお、相対活性が低いもの(1%以下)は、酵素反応を10分間行い、それ以外は酵素反応の時間を5分間とした。
【実施例】
【0094】
表3に、基質の正式名称及び入手先、酵素反応における相対活性の結果の詳細を示す。
【実施例】
【0095】
【表3】
JP0006063207B2_000010t.gif
【実施例】
【0096】
具体的には、GPC-CPの加水分解活性は、グリセロール-3-ホスホコリン(GPC)を基質としたときの活性を100%とすると、グリセロール-3-ホスホエタノールアミン(GPE)に対して90%以上、グリセロール-3-リン酸(GPA)に対して20%以下、グリセロール-3-ホスホグリセロール(GPG)およびグリセロール-3-ホスホイノシトール(GPI)に対して1%以下、グリセロ-3-ホスホセリン(GPS)に対してほぼ0%であった。また、リゾホスファチジルコリン(LPC)に対して40%以下、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)に対して3%以下、リゾホスファチジン酸(LPA)に対して1%以下、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾホスファチジルセリン(LPS)およびリゾホスファチジルグリセロール(LPG)に対してほぼ0%、であった。また、コリン型リゾプラズマローゲン(Lyso-PlsPC)に対して5%以下、エタノールアミン型リゾプラズマローゲン(Lyso-PlsPE)に対して1%以下、エタノールアミン型およびコリン型プラズマローゲン(PlsPE、PlsPC)に対してほぼ0%、であった。また、ホスファチジルエタノールアミン(PE)に対して0.5%以下、ホスファチジルセリン(PS)に対して0.1%以下、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)およびスフィンゴミエリン(SM)に対してほぼ0%であった。また、大豆由来のホスファチジルコリン(PC(soy))に対して0.5%以下、PAFに対してほぼ0%であった。なお、PCの一例はDPPCであり、PAの一例はDMPAであり、PSの一例はPOPSであり、PGの一例はPOPGであり、PEの一例はDPPEであり、これらがグラフで示されている。
【実施例】
【0097】
ここで、表3において、「自作」とあるのは、自作で基質を作製したものである。自作で作製した基質は、いわゆるグリセロホスホジエステル(以下「GPX」ともいう)である。このグリセロホスホジエステルは、sn-1に脂肪酸を有するリゾリン脂質に、ホスホリパーゼA1を作用させることにより得られる。グリセロホスホジエステルは、次の化学式に示す構造を有する。
【実施例】
【0098】
【化3】
JP0006063207B2_000011t.gif
【実施例】
【0099】
上記のグリセロホスホジエステル(GPX)における置換基Xは、表4に示される構造のものである。
【実施例】
【0100】
【表4】
JP0006063207B2_000012t.gif
【実施例】
【0101】
上記のグリセロホスホジエステル(GPX)の調製は次のように行った。まず、8mMのリゾリン脂質(LPX)に、20mMのTris塩酸緩衝液(pH7.2)を加え、1%(v/v)でホスホリパーゼA1を添加し、終夜(over night)で酵素反応を行って、基質を100%反応させた。その後、100℃に加熱して酵素を失活させ、遠心分離(15krpm、5min)を行って、上清液を回収した。これをクロロホルム・メタノール(2/1、体積比)抽出し、水層を回収した。これを乾燥により水分を除去後、反応液と等量の20mMのTris塩酸緩衝液(pH7.2)を加えて溶解させた。
これにより、GPX含有液が得られた。酵素活性測定には10%(体積比)のGPX含有液を用いた。表5に、PLA1による酵素反応の反応組成を示す。
【実施例】
【0102】
【表5】
JP0006063207B2_000013t.gif
【実施例】
【0103】
(酵素学的性質)
上記の精製酵素(GPC-CP)の酵素学的性質について検討した。
【実施例】
【0104】
(1)作用温度
基質(GPC)8mMと、Tris-HCl(pH7.2、各温度)50mMとの溶液に、精製酵素(GPC-CP)を10%(v/v)となるように加え、合計量50μLとなる反応液を調製した。この反応液を各温度条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
【実施例】
【0105】
図3は、種々の反応温度での酵素活性を、反応温度が40℃である場合の活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図3のグラフに示されるように、この酵素は、20~65℃で活性を発揮し、そして反応の至適温度は40℃付近(例えば35~60℃)であった。
【実施例】
【0106】
(2)作用pH
基質(GPC)8mMと、Tris-HCl、酢酸-酢酸Na、Bis-Tris、又は、Glycine-NaOHから選ばれる緩衝液(各pH)50mMとの溶液に、精製酵素(GPC-CP)を10%(v/v)となるように加え、合計量50μLとなる反応液を調製した。この反応液を各pH条件にて温度37℃、5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
【実施例】
【0107】
各pH条件は次の通りである。
酢酸-酢酸Na緩衝液:pH4.1、pH4.4、pH5、pH5.6。
Bis-Tris緩衝液:pH5.6、pH6、pH6.5、pH7.2。
Tris-HCl緩衝液:pH7.2、pH8、pH8.8、pH9。
Glycine-NaOH緩衝液:pH9、pH9.5、pH10.5。
【実施例】
【0108】
図4は、種々の反応pHでの酵素活性を、反応pHが7.2である場合の酵素活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図4のグラフから分かるように、この酵素は、pH4からpH9という広い範囲で活性を発揮し、そして、反応の至適pHは、7付近(例えば6.5~7.2)であった。
【実施例】
【0109】
(3)温度安定性
Tris-HCl(pH7.2、各温度)50mMに、精製酵素(GPC-CP)を20%(v/v)となるように加え、各温度で30分間保温した。基質(GPC)8mMと、HEPES(pH7.2)50mMとの溶液に、各温度での処理後の酵素(GPC-CP)を10%(v/v)となるように加え、合計量50μLとなる反応液を調製した。この反応液をpH7.2、温度37℃の条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
【実施例】
【0110】
図5は、pH7.2、各温度での処理後の酵素の活性を、温度処理を行わずに37℃で酵素反応したときの活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図5のグラフに示されるように、この酵素は、4℃から60℃までの温度での処理後では、活性が確認された。特に55℃以下の処理後では、処理前の40%以上の活性が維持されていた。
【実施例】
【0111】
(4)pH安定性
Tris-HCl、HEPES、酢酸-酢酸Na、Bis-Tris、又は、Glycine-NaOHから選ばれる緩衝液(各pH)50mMに、精製酵素(GPC-CP)を20%(v/v)となるように加え、各pHで4℃条件下、3時間処理した。その後、基質(GPC)8mMと、HEPES(pH7.2)50mMとの溶液に、各pHでの処理後の酵素(GPC-CP)を10%(v/v)となるように加え、合計量50μLとなる反応液を調製した。この反応液をpH7.2、温度37℃の条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
【実施例】
【0112】
図6は、種々のpHでの処理後の酵素の活性を、pH10.2でpH処理を行って酵素反応したときの活性を基準(100%)とする相対活性として示したグラフである。図6のグラフに示されるように、この酵素は、少なくともpH4から10.2までのpH処理後においても活性が確認された。
【実施例】
【0113】
(5)金属イオンおよびEDTAの影響
基質(GPC)8mMと、HEPES(pH7.2)50mMとの溶液に、精製酵素(GPC-CP)を10%(v/v)となるように加え、さらに各種金属イオン又はEDTAを2mM添加して、合計量50μLとなる反応液を調製した。この反応液をpH7.2、温度37℃の条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
【実施例】
【0114】
図7は、添加物(金属イオン及びEDTA)を添加していない条件(control)を100%としたときの、各種添加物を添加した相対活性の結果である。上記の酵素は、Ca2+、Mg2+、Na、K、EDTA、の存在下では、金属イオンを添加していない場合(control)とほぼ同等の活性を示した。また、Mn2+の存在下では、若干活性が低下する傾向が見られ、Fe2+ではその傾向が大きくなった。また、Co2+の存在下では、活性の低下がさらに見られた。また、Zn2+、Cu2+の存在下では活性が大きく低下し、活性阻害が見られた。
【実施例】
【0115】
ここで、既知のGPC-CP酵素(ウシ脳由来、ラット脳由来、マウス脳由来)は、イオン要求性であることが分かっている。これに対し、上記の酵素はイオン非存在下においても活性を有しており、さらにEDTA存在下でも活性を維持している。よって、上記の酵素は金属イオン非要求性と考えられる。
【実施例】
【0116】
(6)化学物質の影響
基質(GPC)8mMと、HEPES緩衝液(pH7.2)50mMとの溶液に、精製酵素(GPC-CP)を10%(v/v)となるように加え、さらに各種化学物質を2mM添加して、合計量50μLとなる反応液を調製した。この反応液をpH7.2、温度37℃の条件にて5分間、酵素反応させた。その後のAP処理、呈色反応は、「酵素活性標準測定方法」に従って行い、酵素活性を測定した。
【実施例】
【0117】
図8は、化学物質を添加していない条件(control)を100%としたときの、各種化学物質を添加した相対活性の結果である。上記の酵素は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、2-ME(2-メルカプトエタノール)、DTT(ジチオトレイトール)の存在下では、化学物質を添加していない場合(control)とほぼ同等の活性を示した。IAA(ヨードアセタミド)の存在下では、わずかながら活性が低下する傾向が見られた。また、PMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)の存在下では活性低下の傾向が大きくなった。
【実施例】
【0118】
(7)等電点
Genetyxを用いて酵素のアミノ酸配列に基づいて酵素の等電点を予測した結果、酵素の等電点は5.8であった。
【実施例】
【0119】
[精製酵素のN末端アミノ酸配列の解析]
上記の精製酵素について、SDS-PAGE後、エレクトロブロッティングを行い、目的とする酵素をPVDF膜に転写した。これをプロテインシーケンサーによりN末端アミノ酸配列の解析を行った。解析から、この精製酵素のN末端アミノ酸配列は、配列番号3に示すものであることが確認された。
【実施例】
【0120】
[精製酵素の内部アミノ酸配列の解析]
上記の精製酵素について、SDS-PAGE後、目的とする酵素を切り出し、トリプシンを用いてゲル内消化を行った。そして、得られたペプチドサンプルについて質量分析計(nanoLC-MS/MS)により内部アミノ酸配列の解析を行った。これにより、内部アミノ酸配列は、配列番号4、5、6に示すものであることが確認された。
【実施例】
【0121】
ここで、配列番号4は、配列番号2の482位からに示される配列となっている。また、配列番号5は、配列番号2の576位からに示される配列となっている。また、配列番号6は、配列番号2の466位からに示される配列となっている。なお、nanoLC-MS/MSによるデノボアミノ酸配列解析ではLeuとIleとが判別できないため、これらのアミノ酸が一部一致していない箇所がある。
【実施例】
【0122】
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株の染色体DNAの分離]
ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株を、2.5M塩化マグネシウム50μl、20%グリシン0.625mlYEME培地(トリプトン0.5%、酵母エキス0.5%、麦芽エキス0.3%、グルコース1%、スクロース34%)50mlを用いて28℃で3日間培養し、集菌した。
【実施例】
【0123】
次いで、この菌体を、75mM NaCl、25mM EDTA、20mM トリス-塩酸(pH7.5)および1mg/mlリゾチームからなる溶液5mlに懸濁し、37℃で一晩処理した。これに、10%(w/v)SDSを750μl、proteinase Kを5mg添加し、55℃で2時間処理した。この溶液にクロロホルム7.5mlを加えて攪拌し、遠心分離により水相を5ml分取した。
【実施例】
【0124】
この水相に3mlのイソプロパノールを添加混合してDNA画分を回収し、10mM トリス-塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液500μlに溶解した。これに、RNaseAを20μg/mlとなるように加え、37℃で1時間処理した後、0.8MのNaClを含む13%PEG溶液を500μl加え攪拌し、遠心分離により、水相を500μl分取した。これにフェノール/クロロホルム混合液500μlを加えて攪拌し、遠心分離により、水相を500μl分取した。
【実施例】
【0125】
この水相に3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)50μLおよびエタノール1mlを添加混合し、DNAを回収した。
【実施例】
【0126】
このDNAを70%(v/v)エタノールに10分間浸漬した後、10mM トリス-塩酸緩衝液(pH8.0)および1mM EDTAからなる溶液200μlに溶解した。
【実施例】
【0127】
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPC-CP遺伝子のコア領域のクローニング]
GPC-CPのN末端および内部アミノ酸配列とストレプトマイセス属の使用コドンに基づいて、プライマーを設計した。
【実施例】
【0128】
プライマー(primer)の作製にあたっては、上記の3つの内部アミノ酸配列(配列番号4~6)をピックアップした。これらの内部アミノ酸配列(ペプチド)の一文字表記を下記に示す。
【実施例】
【0129】
配列番号4のペプチド: LTFSAGDQAGAAF
配列番号5のペプチド: HLTVTNAY
配列番号6のペプチド: APYVDGAADLSTGK
配列番号4のペプチドについては「GDQAGAAF」の配列を基にプライマーを設計した。また、配列番号5のペプチドについては「TVTNAY」の配列を基にプライマーを設計した。また、配列番号6のペプチドについては「PYVDGAAD」の配列を基にプライマーを設計した。
【実施例】
【0130】
N末端アミノ酸配列情報を「Sense primer」とし、内部アミノ酸配列情報を「Antisense primer」とした。縮重コドンに関しては、Streptomyces属におけるコドン使用頻度が高いコドンを選択し、プライマー設計を行った。また、コドン使用頻度が同等のものに関しては、混合塩基プライマーとした。また、質量分析では分別が難しいLeuとIleを除外した。これにより、センスプライマー(Sense primer)として、PCR用の縮重オリゴヌクレオチドプライマーS1(配列番号7)を設計した。また、3種のアンチセンスプライマー(Antisense primer)として、配列番号4から設計した「primer A1-1」(配列番号8)と、配列番号5から設計した「primer A1-2」(配列番号9)と、配列番号6から設計した「primer A1-3」(配列番号10)とを設計した。ここで、配列中のsはcまたはgを表している。
【実施例】
【0131】
次に上記のプライマーを用いて、PCRを行った。PCRの反応液組成は次のとおりである。
【実施例】
【0132】
上記[ストレプトマイセス・サングリエリA14株の染色体DNAの分離]で得た鋳型染色体DNA100ng、2×KOD FX Buffer 25μL、プライマー各300nM、およびKOD FX DNA Polymerase 1ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。
【実施例】
【0133】
PCR反応条件は次のとおりである。
【実施例】
【0134】
ステップ1:94℃、2分;
ステップ2:98℃、10秒;
ステップ3:68℃、90秒;
ステップ2からステップ3を30サイクル繰り返す;
ステップ4:68℃、2分。
【実施例】
【0135】
配列番号7~10のプライマーを用いたPCRによって、約1500bpの特異的な増幅産物を得た。
【実施例】
【0136】
このPCR反応液についてアガロースゲル電気泳動を行い、目的の1500bpのバンド部分を切り出し、pGEM-T Easy Vector SystemI(Promega)を用いて、pGEM-T Easy Vectorに結合させ、大腸菌を形質転換した。形質転換株をアンピシリン50μg/mlを含むLB培地(トリプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム0.4%、pH7.2)で培養し、Miniprep DNA Purification Kit(TaKaRa製)を用いてDNAシーケンス用のプラスミドを抽出・精製した。
【実施例】
【0137】
続いて、ベクター(pGEM-T Easy Vector)に由来するT7プライマーおよびSP6プライマーを用いて自動シークエンサーによって、挿入断片の塩基配列を決定した。この塩基配列を、配列番号11に示す。
【実施例】
【0138】
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPC-CP遺伝子のコア領域下流側のクローニング]
上記[ストレプトマイセス・サングリエリA14株由来GPC-CP遺伝子のコア領域のクローニング]で決定した遺伝子配列の周辺領域の配列を明らかにするために、ゲノムウォーキングによりその下流側を含むDNA断片を増幅した。上記で得た染色体DNAをPstIで完全消化し、Ligation high Ver.2(Toyobo社製)を用いて消化断片に、Cassette, Pst 1(タカラバイオ社製、製品コード:3871)を連結させた。これを鋳型にして、GPC-CPの部分遺伝子配列(配列番号11)に基づいて作製したセンスプライマー「Sense-Gw1」(配列番号12)と「Sense2-Gw2」(配列番号13)、アンチセンスプライマー「Antisense1」(Pst 1-Cassette primer1)(配列番号14)と「Antisense2」(Pst 1-Cassette primer2)(配列番号15)を用いて、2段階のPCRを行うことでGPC-CPの下流側を含むDNA断片を増幅した。
【実施例】
【0139】
PCRの反応液組成は次のとおりである。
【実施例】
【0140】
鋳型DNA30ng、2×KOD FX Neo Buffer 25μl、プライマー各300nM、およびKOD FX Neo DNA Polymerase 1ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。
【実施例】
【0141】
PCR反応条件は次のとおりである。
【実施例】
【0142】
ステップ1:94℃、2分;
ステップ2:98℃、10秒;
ステップ3:68℃、2分;
ステップ2からステップ3を25サイクル繰り返す;
ステップ4:68℃、2分。
【実施例】
【0143】
このPCRによって、約750bpの特異的な増幅産物が得られ、これをpGEM-T Easy Vector(Promega製)にてクローニングし、塩基配列を決定した。
【実施例】
【0144】
解析によって得た塩基配列を配列番号16に示し、アミノ酸配列を配列番号17に示す。この塩基配列及びアミノ酸配列は、コア領域の下流側の配列である。
【実施例】
【0145】
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPC-CP遺伝子のコア領域上流側のクローニング]
上記[ストレプトマイセス・サングリエリA14株の染色体DNAの分離]で得た染色体DNAをSacIIで完全消化し、Ligation high Ver.2(Toyobo社製)により自己閉環化させた。これを鋳型にして、GPC-CPの部分遺伝子配列(配列番号11)に基づいて作製したセンスプライマー「primer InvN3S」(配列番号18)とアンチセンスプライマーAN1「primer InvN3A」(配列番号19)とを用いて、Inverse PCRを行った。
【実施例】
【0146】
PCRの反応液組成は次のとおりである。
【実施例】
【0147】
鋳型DNA30ng、2×KOD FX Neo Buffer 25μl、プライマー各300nM、およびKOD FX Neo DNA Polymerase 1ユニットに、蒸留水を全量50μlとなるように添加した。
【実施例】
【0148】
PCR反応条件は次のとおりである。
【実施例】
【0149】
ステップ1:94℃、2分;
ステップ2:98℃、30秒;
ステップ3:68℃、2分;
ステップ2からステップ3を25サイクル繰り返す;
ステップ4:68℃、7分。
【実施例】
【0150】
このPCRによって、約600bpの特異的な増幅産物が得られ、これをpGEM-T Easy Vector(Promega製)にてクローニングし、塩基配列を決定した。
【実施例】
【0151】
解析によって得た塩基配列を配列番号20に示し、アミノ酸配列を配列番号21に示す。この塩基配列及びアミノ酸配列は、コア領域の上流側の配列である。
【実施例】
【0152】
[ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPC-CP遺伝子の塩基配列の決定]
上記[ストレプトマイセス・サングリエリA14株由来GPC-CP遺伝子のコア領域のクローニング]で決定した塩基配列と併せて上記で決定した塩基配列に基づいて、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来GPC-CP遺伝子を含む領域の塩基配列を決定した(配列番号22)。この配列(配列番号22)からシグナル領域(配列の1位~13位)を除外し、成熟部分酵素部分を抽出した塩基配列(1941base)を決定した(配列番号23の上段)。さらに、構造遺伝子部分についてその塩基配列からアミノ酸配列を推定した(配列番号23の下段、配列番号24)。
【実施例】
【0153】
配列解析の結果から、GPC-CPをコードする構造遺伝子は1,941bpのヌクレオチドからなり、646残基のアミノ酸をコードしていることが明らかとなった。配列番号21のアミノ酸配列が分泌シグナル配列である。
【実施例】
【0154】
上記にて決定したストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来の精製酵素のN末端および内部アミノ酸配列が、上記の推定アミノ酸配列中に存在し、ほぼ完全に一致していた。
【実施例】
【0155】
すなわち、配列番号24のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列に示される配列となっている。また、配列番号4のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の482位からに示される配列となっている。また、配列番号5のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の576位からに示される配列となっている。また、配列番号6のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の466位からに示される配列となっている。
【実施例】
【0156】
また、ストレプトマイセス・サングリエリ(Streptomyces sanglieri)A14株由来の精製酵素(すなわちGPC-CP)は、この推定アミノ酸配列のアミノ酸組成に基づいて計算したところ、70,400の分子量を有することが推定された。
【実施例】
【0157】
[GCP-CP及びその発現遺伝子のシーケンス]
上記のように、GCP-CPのアミノ酸配列及びその発現遺伝子の決定を行ったが、シーケンスを2回行ったところ、若干異なる結果が得られている。配列番号25に、そのGPC-CPの発現遺伝子の塩基配列を示す。配列番号26に対応コドンを示す。配列番号27にGPC-CPのアミノ酸配列を示す。
【実施例】
【0158】
配列番号25の塩基配列は、配列番号1の塩基配列とは、1915位が異なっている(aとg)。また、配列番号27のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列とは、639位が異なっている(SerとGly)。また、配列番号26の対応コドンでも同様の位置が異なっている。なお、この解析は、配列番号16における166位の「a」が「g」に置き換わって確認されたことに起因している。
【実施例】
【0159】
したがって、本発明における酵素においては、GPC-CPの発現遺伝子が配列番号25の塩基配列であってもよく、GPC-CPが配列番号27のアミノ酸配列であってもよい。もちろん、この塩基配列及びアミノ酸配列は、一つの塩基及びアミノ酸が置換されただけのものであるため、配列番号1で表される塩基配列及び配列番号2で表されるアミノ酸配列の配列同一性及び相同性が80%以上の範囲内に含まれ、また、3個以下で置換された範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明によれば、新規なGPC-CPおよびその製造方法が提供される。このGPC-CPは、グリセロール-3-ホスホコリンと特異的に反応するため、その定量が可能である。また、グリセロール-3-ホスホエタノールアミンの定量にも用いることができる。GPC-CPを用いた定量では、比色定量が可能になり、簡単に定量を行うことができる。グリセロール-3-ホスホコリンなどのグリセロール-3-リン酸エステル化合物は、医薬品、食品および化粧品などの配合物質として有用である。なかでも、グリセロール-3-ホスホコリン(GPC)は認知症予防などが期待されている。したがって、GPC-CPは、体外診断薬用酵素、グリセロール-3-ホスホコリン定量用酵素として使用可能である。例えば、血清中などの体内液に存在するGPCなどの物質を簡単に正確に定量することが可能になる。
【受託番号】
【0161】
NITE BP-1392
【配列表フリ-テキスト】
【0162】
配列番号1:GPC-CP発現遺伝子
配列番号2:GPC-CP(ポリペプチド)
配列番号3:GPC-CPのN末端配列
配列番号4:GPC-CPの内部配列
配列番号5:GPC-CPの内部配列
配列番号6:GPC-CPの内部配列
配列番号7:プライマーS1
配列番号8:プライマーA1-1
配列番号9:プライマーA1-2
配列番号10:プライマーA1-3
配列番号11:GPC-CP発現遺伝子(解析結果)
配列番号12:プライマーGw1
配列番号13:プライマーGw2
配列番号14:カセットプライマー1
配列番号15:カセットプライマー2
配列番号16:GPC-CP発現遺伝子(解析結果)
配列番号17:GPC-CPの末端配列
配列番号18:インバースPCRプライマーSense(InvN3S)
配列番号19:インバースPCRプライマーAntisense(InvN3A)
配列番号20:インバースPCRの解析結果(塩基配列)
配列番号21:インバースPCRの解析結果(アミノ酸配列)
配列番号22:GPC-CP発現遺伝子(解析結果)
配列番号23:GPC-CP発現遺伝子(成熟酵素発現部位)
配列番号24:GPC-CP(ポリペプチド解析結果、成熟酵素部分)
配列番号25:GPC-CP発現遺伝子
配列番号26:GPC-CP発現遺伝子(コドン)
配列番号27:GPC-CP(ポリペプチド)
図面
【図2】
0
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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