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明細書 :マラリアワクチン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年7月27日(2017.7.27)
発明の名称または考案の名称 マラリアワクチン
国際特許分類 A61K  39/12        (2006.01)
A61K  39/015       (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61P  33/06        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/445       (2006.01)
C12N   7/04        (2006.01)
FI A61K 39/12
A61K 39/015
A61K 39/00 H
A61P 33/06
C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/445
C12N 7/04
国際予備審査の請求
全頁数 32
出願番号 特願2016-554013 (P2016-554013)
国際出願番号 PCT/JP2015/075275
国際公開番号 WO2016/059911
国際出願日 平成27年9月6日(2015.9.6)
国際公開日 平成28年4月21日(2016.4.21)
優先権出願番号 2014213247
優先日 平成26年10月17日(2014.10.17)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】吉田 栄人
出願人 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C085
4H045
Fターム 4B065AA86Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA25
4B065BC03
4B065BC09
4B065BC11
4B065BD09
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA02
4C085BA51
4C085CC08
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA22
4H045DA02
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
要約 従来のマラリアワクチンと比較して、高い感染防御効果を示すマラリアワクチンを提供することを課題とする。
マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロウイルス以外の組換えウイルス、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA、又は該マラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質を患者に投与した後に、該患者に投与することにより高い感染防御効果を示すことを見出して、本発明を完成した。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下を含む組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチンであって、
(1)マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子、又は、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子、
(2)該遺伝子を発現可能なプロモーター、
さらに、該組換えバキュロウイルスは、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロウイルス以外の組換えウイルス、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA、又は該マラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質を患者に投与した後に、該患者に投与することを特徴とする、
該組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチン。

【請求項2】
前記組換えバキュロウイルスは、以下のいずれか1の組換えバキュロウイルスと併用投与することを特徴とする、請求項1に記載のマラリアワクチン、
(1)IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス、
(2)IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーター。

【請求項3】
以下の2つの組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチン、
(1)マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子若しくはマラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子、並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス、
(2)IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子若しくはIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子、並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス。

【請求項4】
前記マラリア抗原が、CSPである請求項1~3のいずれか1に記載のマラリアワクチン。

【請求項5】
前記バキュロウイルス以外の組換えウイルスは、組換えアデノウイルスである請求項1~4のいずれか1に記載のマラリアワクチン。

【請求項6】
以下のいずれか1に記載のマラリアワクチン組成物。
(1)請求項1~5のいずれか1に記載のマラリアワクチン、並びにマラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えアデノウイルス
(2)請求項1~5のいずれか1に記載のマラリアワクチン、並びにIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス
(3)請求項1~5のいずれか1に記載のマラリアワクチン、並びに、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチンに関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2014-213247号優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
(マラリア)
マラリアは、マラリア原虫に感染したハマダラカによって伝播される感染症で、毎年2億人が感染し、60万人以上の人が死亡している。マラリア感染症に対する理想的な対策は、効果的なワクチンの接種である。しかし、ワクチン開発に多大な努力が払われてきたにも関わらず、未だ実用化されていない。マラリアは、複雑な生活環を持ち、さらに1つの生活ステージの中でも多様な抗原性がある。これらがワクチン開発を非常に困難なこととしている。
現在、効果のあるマラリア対策は、殺虫剤を施した蚊帳で眠ること及びアルテミシニンベース混合治療(ACT: artemisinin-based combination therapy)である。
しかし、殺虫剤耐性蚊、アルテミシニン耐性原虫の出現の報告もあり、早急にマラリアワクチンの開発が必要とされている(参照:非特許文献1)。
【0003】
(マラリアの治療方法)
マラリアの治療方法、特にマラリアワクチンに関して、下記の報告がある。
【0004】
(特許文献1)
特許文献1は、「一方が脊椎動物プロモーターで、他方がバキュロウイルスのプロモーターである連結したデュアル・プロモーターの下流に、少なくとも一つのウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質をコードする遺伝子と、少なくとも一つの免疫原性外来遺伝子とを含む融合遺伝子を連結することを特徴とする、デュアル・プロモーターと融合遺伝子が組み込まれた構造体を含むトランスファーベクターの製造方法」を開示している。
しかし、特許文献1は、「本発明のマラリアワクチンの構成並びに組換えバキュロウイルスが、decay accelerating factor (DAF)又はインターロイキン12(IL-12)を担持していることを」を開示又は示唆していない。
【0005】
(特許文献2)
特許文献2は、「組換えオートグラファ核多角体病ウイルス(AcNPV)を有効成分とする医薬組成物であって、該組換えAcNPVが、少なくともポリヘドリンプロモーター及びCAGプロモーターが連結したデュアルプロモーターの制御下に以下のいずれかの融合遺伝子を含有することを特徴とする、医薬組成物」を開示している。
しかし、特許文献2は、「本発明のマラリアワクチンの構成並びに組換えバキュロウイルスが、DAFを担持していること」を開示又は示唆していない。
【0006】
(特許文献3)
特許文献3は、「(a)ウイルスの外来エンベロープ蛋白質をコーディングするヌクレオチド配列と、(b)前記エンベロープコーディング配列に作動的に連結された第1プロモーターと、(c)抗原蛋白質をコーディングするヌクレオチド配列と、(d)前記抗原コーディング配列に作動的に連結された第2プロモーターとを含む組換えバキュロウイルス」を開示している。
しかし、特許文献3は、「本発明のマラリアワクチンの構成並びに組換えバキュロウイルスが、DAF又はIL-12を担持していることを」を開示又は示唆していない。
【0007】
(非特許文献2)
非特許文献2は、「Priming-boosting法により、アデノウイルスワクチン (ChAd63)接種後にワクチニアウイルスワクチン(MVA)を接種することによりマラリア感染防御効果が40%に達したこと」を開示している。
しかし、非特許文献2は、「本発明のマラリアワクチンの構成並びに組換えバキュロウイルスが、DAF又はIL-12を担持していること」を開示又は示唆していない。
【0008】
(非特許文献3)
非特許文献3は、「FP9-CS(鶏痘ウイルスにCSPを組込んだ組換えウイルス)接種後にMVA-CS(ワクチニアウイルスにCSPを組込んだ組換えウイルス)を接種することによりマラリア感染防御効果が90%に達したこと」を開示している。
しかし、非特許文献3に記載の方法では、アジュバントを使用しており、該アジュバントを使用しなかった場合には、マラリア感染防御効果が35%まで低下する。
さらに、非特許文献3は、「本発明のマラリアワクチンの構成並びに組換えバキュロウイルスが、DAF又はIL-12を担持していることを」を開示又は示唆していない。
【0009】
以上により、現状のマラリア感染防御効果は不十分であり、さらに向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】Review Article Malaria in developing countries, (2007), 2-5. doi:10.3855/jidc.4610
【非特許文献2】Infection and Immunity, March 2014 Volume 82 Number 3, p.1277-1286
【非特許文献3】Human Vaccine volume 6 Issue 78-83
【0011】

【特許文献1】国際公開2007/091624号公報
【特許文献2】国際公開2009/020236号公報
【特許文献3】国際公開2009/088256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明では、従来のマラリアワクチンと比較して、高い感染防御効果を示すマラリアワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究した結果、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えウイルス(特に、バキュロウイルス以外の組換えウイルス)、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA、又はマラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質を患者に投与した後に、該患者に投与することにより、さらには、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス(特に、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス)を該患者に併用投与することにより 高い感染防御効果を示すことを見出して、本発明を完成した。
【0014】
本発明は以下の通りである。
1.以下を含む組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチンであって、
(1)マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子、又は、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子、
(2)該遺伝子を発現可能なプロモーター、
さらに、該組換えバキュロウイルスは、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロウイルス以外の組換えウイルス、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA、又は該マラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質を患者に投与した後に、該患者に投与することを特徴とする、
該組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチン。
2.前記組換えバキュロウイルスは、以下のいずれか1の組換えバキュロウイルスと併用投与することを特徴とする、前項1に記載のマラリアワクチン、
(1)IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス、
(2)IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーター。
3.以下の2つの組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチン、
(1)マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子若しくはマラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子、並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス、
(2)IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子若しくはIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子、並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス。
4.前記マラリア抗原が、CSPである前項1~3のいずれか1に記載のマラリアワクチン。
5.前記バキュロウイルス以外の組換えウイルスは、組換えアデノウイルスである前項1~4のいずれか1に記載のマラリアワクチン。
6.以下のいずれか1に記載のマラリアワクチン組成物。
(1)請求項1~5のいずれか1に記載のマラリアワクチン、並びにマラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えアデノウイルス
(2)請求項1~5のいずれか1に記載のマラリアワクチン、並びにIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス
(3)請求項1~5のいずれか1に記載のマラリアワクチン、並びに、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス
【発明の効果】
【0015】
本発明のマラリアワクチンは、従来のマラリアワクチンと比較して、下記の効果を有する。
(1)高い感染防御効果。
(2)感染しても、発症が遅い発症遅延効果、それに伴う治療猶予期間の延長効果。
(3)アジュバントが不要、より詳しくはアジュバントなしでも高い感染防御効果。
(4)高い安全性。
バキュロウイルスは、カイコに感染する昆虫ウイルスで、ヒトには感染しない。日本の長い養蚕業の歴史からその駆除法のノウハウを蓄積されている。また、現在、タンパク質の高発現ベクターとして広く世界中で使用されている。これらにより、安全性・汎用性が高く、技術的にも確立されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】sPfCSP2の概要図
【図2】PfCSPの塩基配列及びアミノ酸配列
【図3】sPfCSP2の塩基配列及びアミノ酸配列
【図4】本実施例で使用した各ワクチンコンストラクトの構成模式図
【図5】本実施例で使用した各ワクチンコンストラクトの構成模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明のマラリアワクチン)
本発明の「マラリアワクチン」は、必須成分として、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び/又はIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルスを含み、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えウイルス(特に、バキュロウイルス以外の組換えウイルス)、該マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA、又はマラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質を患者に投与した後に、該患者に投与すること、さらには、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えウイルス(特に、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えバキュロウイルス)を該患者に併用投与することを特徴とするマラリアワクチンである。
以下で、本発明のマラリアワクチンを説明する。

【0018】
(遺伝子)
本明細書において、遺伝子(DNA分子)とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖という各1本鎖DNAを包含する趣旨であり、またその長さに制限されるものではない。
従って、本発明のマラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)には、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNA及びcDNAを含む1本鎖DNA(センス鎖)並びに該センス鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(アンチセンス鎖)及び合成DNA、それらの断片のいずれもが含まれる。

【0019】
(マラリア抗原)
本発明の「マラリア抗原」とは、マラリア原虫のスポロゾイト期の抗原CSP(Circumsporozoite Protein)、TRAP(Thrombospondin-Related Adhesive Protein:トロンボスポンジン関連接着タンパク質)、メトロゾイト期抗原のMSP (Merozoite Surface Protein)1, 2, 3, 4, 5、AMA1(Apical Membrane Antigen 1)マラリア感染赤血球から分泌されるS抗原、マラリア感染赤血球のノブに存在するPfEMP1、SERA、TRAMP、伝播阻止ワクチン抗原 Pfs25, Pvs25等を例示することができるが、特に好ましいのはCSPである。

【0020】
(マラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質)
本発明で使用する「マラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質」は、バキュロウイルスが提示する(提示可能な)マラリア抗原のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列又は同じ機能を有しかつ相同性が90%以上、95%以上、98%以上、99%以上であれば、特に限定されない。さらに、自体公知の方法により、該アミノ酸配列に修飾等をしても良い。

【0021】
(CSP)
CSPは、蚊からヒトに侵入するスポロゾイト期原虫の主要膜タンパク質である。約50kDaの分子量で、中央部には高い抗原性を有するアスパラギン-アラニン-アスパラギン-プロリンの4つのアミノ酸配列(NANP)の約40回の繰り返し配列が存在する。NANPに対するモノクローナル抗体をスポロゾイトと混ぜて肝細胞に振りかける侵入阻害実験により非常に高い侵入阻害を示すことから、CSPは肝細胞への侵入に重要な役割を果たしていると考えられている。
数あるマラリアの抗原の中でもCSPは、特にワクチン候補抗原として期待されており長年研究されている。マラリアのワクチンとして最も開発の進んでいるRTS,SもCSPを抗原としている。また、熱帯熱マライア原虫に発現しているPfCSPは4つのシステインで、立体構造を維持しており、この立体構造がマラリア原虫の肝臓侵入機構に重要な働きをしているという報告もある。
なお、本発明で使用するCSPは、好ましくは、原虫由来の塩基配列であるPfCSP(参照:図2、配列番号1)又は哺乳類に塩基配列を最適化し更に4つめのシステインを含んだsPfCSP2(参照:図1、図3、配列番号2)を用いる。

【0022】
加えて、本発明で使用するCSPは、以下も含む。
(1)上記いずれか1に記載のCSPの保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、又はアセチル化誘導体。
(2)上記いずれか1に記載のCSPと90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ該CSPと実質的同質の作用を持つタンパク質。
(3)上記いずれか1に記載のCSPにおいて、100~10個、50~30個、40~20個、10~5個、5~1個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつ該CSPと実質的同質の作用を持つタンパク質。
さらに、本発明で使用するCSPの遺伝子は、以下を含む。
(1)上記いずれか1以上のCSPのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子。
(2)上記いずれか1以上のCSPのアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつCSPと実質的同質の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
(3)上記いずれか1以上のCSPのアミノ酸配列と90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつCSPと実質的同質の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。

【0023】
(IL-12)
IL-12は、微生物感染を受けたマクロファージから産出されるサイトカインであり、互いに相同性のない分子量各40,000(p40)と35,000(p35)の2個のサブユニットから成り、免疫反応において重要な役割を果す。例えば、ヒトIL-12のアミノ酸配列を配列番号6に例示するが、特に限定されない。
本発明者らは、p40とp35の遺伝子を連結したp40-p35遺伝子が、生理活性を保持したp40-p35タンパクを発現する事に成功している(参照文献:Kita et al., Vaccine 23 (2005) 2132-2135, Okada et al., Vaccine 25 (2007) 2990-2993)。
本発明で使用する「IL-12のアミノ酸配列を有するタンパク質」は、バキュロウイルスが提示する(提示することができる)IL-12のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列又は同じ機能を有しかつ相同性が90%以上、95%以上、98%以上、99%以上であれば、特に限定されない。さらに、自体公知の方法により、該アミノ酸配列に修飾等をしても良い。

【0024】
加えて、本発明で使用するIL-12は、以下も含む。
(1)上記いずれか1に記載のIL-12の保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、又はアセチル化誘導体。
(2)上記いずれか1に記載のIL-12と90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ該IL-12と実質的同質の作用を持つタンパク質。
(3)上記いずれか1に記載のIL-12において、100~10個、50~30個、40~20個、10~5個、5~1個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつ該IL-12と実質的同質の作用を持つタンパク質。
さらに、本発明で使用するIL-12の遺伝子は、以下を含む。
(1)上記いずれか1以上のIL-12のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子。
(2)上記いずれか1以上のIL-12のアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつIL-12と実質的同質の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
(3)上記いずれか1以上のIL-12のアミノ酸配列と90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつIL-12と実質的同質の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。

【0025】
(ウイルス表面に提示させるタンパク質)
本発明の組換えバキュロウイルスでは、マラリア抗原タンパク質及び/又はIL-12タンパク質以外のタンパク質(例えば、マラリア防御効果を向上させる作用を有するタンパク質)を、ウイルス表面に、マラリア抗原と同一又は別々に発現させることもできる。
例えば、補体制御因子であるDAF(decay accelerating factor)、TRAP等を例示することができるが、好ましくはDAF、より好ましくはヒトDAF(hDAF:配列番号3)を例示することができるが、特に限定されない。

【0026】
加えて、本発明で使用するDAFは、以下も含む。
(1)上記いずれか1に記載のDAFの保護化誘導体、糖鎖修飾体、アシル化誘導体、又はアセチル化誘導体。
(2)上記いずれか1に記載のDAFと90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ該DAFと実質的同質の作用を持つタンパク質。
(3)上記いずれか1に記載のDAFにおいて、100~10個、50~30個、40~20個、10~5個、5~1個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつ該DAFと実質的同質の作用を持つタンパク質。
さらに、本発明で使用するDAFの遺伝子は、以下を含む。
(1)上記いずれか1以上のDAFのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子。
(2)上記いずれか1以上のDAFのアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が置換、欠損、挿入及び/又は付加しており、かつDAFと実質的同質の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。
(3)上記いずれか1以上のDAFのアミノ酸配列と90%以上の相同性を有し、かつDAFと実質的同質の作用を有するポリペプチドをコードする遺伝子。

【0027】
上記変異を有するタンパク質は、天然に存在するものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する)などを単独でまたは適宜組合せて使用できる。
例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(ウルマー(Ulmer, K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666-671)を利用することもできる。ペプチドの場合、変異の導入において、当該ペプチドの基本的な性質(物性、機能、生理活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される

【0028】
(組換えバキュロウイルス)
本発明に用いるバキュロウイルスは、昆虫に感染を起す昆虫病原ウイルスで環状の二本鎖DNAを遺伝子として保有するDNAウイルスの一群(バキュロウイルス科)である。その中で、核多角体病ウイルス(Nuclear Polyhedorosis Virus: NPV)といわれる一群のウイルスは感染後期には感染細胞の核内に多角体と呼ばれる封入体を作る。多角体遺伝子の代わりに発現したい外来遺伝子を挿入してもウイルスは問題なく感染、増殖し、所望の外来遺伝子産物を大量に産生することから、所望のタンパク質の製造に利用されている。
本発明に用いられるバキュロウイルスとしては、オートグラファ核多角体病ウイルス(Autographa Californica Nuclear Polyhedorosis Virus: AcNPV)、及びカイコガ核多角体病ウイルス(Bombyx mori Nuclear Polyhedorosis Virus: BmNPV)、オルギア・シュードツガタ核多角体病ウイルス(Orgyia pseudotsugata Nuclear Polyhedorosis Virus: OpNPV)、マイマイガ核多角大病ウイルス(Lymantria disper Nuclear Polyhedorosis Virus: LdNPV)を例示できるが、特に好ましいのがAcNPVである。
なお、野生型、変異型、及び組換えバキュロウイルスDNAのいずれであってもよい。コトランスフェクトされる宿主細胞として、例えばヨトウガ細胞(Spodoptera frugiperda)などの昆虫細胞等が挙げられる。

【0029】
(プロモーター)
本発明で使用可能なプロモーターは、組換えバキュロウイルス(特に、組換えバキュロウイルスの表面)にマラリア抗原(マラリア抗原のアミノ酸配列)及び/又はIL-12(IL-12のアミノ酸配列)を発現させることができれば特に限定されない。
特に、本発明者である吉田博士が開発したディアルプロモーター{哺乳類細胞内で働くプロモーター(例、CMVプロモーター)と昆虫細胞内で働くプロモーター(例、ポリへドリンプロモーター、pPolh)の2つのプロモーター制御下に、所望のタンパク質をコードする遺伝子を導入することを特徴とするプロモーター}が好ましい。

【0030】
1つの実施形態において、一方が脊椎動物プロモーターで他方がバキュロウイルスのプロモーターである連結したデュアル・プロモーターの制御下に、一つのマラリア抗原をコードした遺伝子と昆虫細胞で発現可能なウイルス膜タンパク質をコードする遺伝子とを含む融合遺伝子、DAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子、及び/又はIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子が組み込まれた構造体を含むトランスファーベクターを提供する。
このトランスファーベクターを、昆虫細胞中でバキュロウイルスDNAとコトランスフェクトすることにより、相同組換えを誘発し、バキュロウイルスのプロモーターの制御下にあり、昆虫細胞で発現し、発芽したウイルス粒子の構成成分となり得る融合タンパク質を産生することが可能な前記融合遺伝子をバキュロウイルスに組み込んだ組換えバキュロウイルスを得ることができる。

【0031】
本発明に用いられるトランスファーベクターの構成成分の一つである哺乳動物プロモーター(哺乳動物細胞で機能し得るプロモーター)としては、サイトメガロウイルスプロモーター、SV40プロモーター、レトロウイルスプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロテインプロモーター、CAGプロモーター、エロンゲーションファクター1αプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター、アルブミンプロモーター、MHCクラスIIプロモーター等を例示できる。
鳥類のプロモーター(鳥類細胞で機能し得るプロモーター)としては、アクチンプロモーター、ヒートショックプロテインプロモーター、エロンゲーションファクタープロモーター、ユビキチンプロモーター、アルブミンプロモーター等を例示できる。
魚類のプロモーター(魚類細胞で機能し得るプロモーター)としては、アクチンプロモーター、ヒートショックプロテインプロモーター、エロンゲーションファクタープロモーター等を例示できる。
バキュロウイルスプロモーター(昆虫細胞で機能し得るプロモーター)としては、ポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター、IE1プロモーター、p35プロモーター、p39プロモーター、gp64プロモーター等を例示できる。

【0032】
(ウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質)
前記ウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質のアミノ酸をコードする遺伝子としては、例えば、gp64タンパク質(GenBank Accession No. L22858)、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質G(VSVG:GenBank Accession No. M21416 )、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質(KOS:GenBank Accession No. K01760)、1型ヒト免疫不全ウイルスgp120 (GenBank Accession No. U47783)、ヒト呼吸器合胞体ウイルス膜糖タンパク質(GenBank Accession No. M86651)、A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンタンパク質(GenBank Accession No. U38242)などの遺伝子、或いはバキュロウイルスに近縁のウイルスエンベロープタンパク質などの遺伝子を例示できる。本発明においては、下記実施例に示されるVSV-G TM (VSVGのトランスメンブレン領域) 遺伝子を好ましく例示できる。

【0033】
本発明において、組換えバキュロウイルスを脊椎動物に投与するとバキュルウイルス表面に提示されたマラリア抗原タンパク質がコンポーネントワクチンとして機能する。さらにマラリア抗原タンパク質及びIL-12タンパク質が哺乳動物の細胞内で産生され、その免疫賦活作用により、マラリア感染症の予防ないし治療剤として機能する。また、組換えバキュロウイルスを脊椎動物に投与するとバキュルウイルス表面に提示されたDAFタンパク質が、血清中に含まれる補正成分による攻撃からバキュロウイルスを保護し、ワクチン効果を向上させる。

【0034】
(バキュロウイルス以外の組換えウイルス)
本発明で使用する「バキュロウイルス以外の組換えウイルス」は、バキュロウイルスが保有するマラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子(及び/又はバキュロウイルスが保有するIL-12若しくはDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子)と同じ遺伝子(又は実質的に同じ遺伝子)を含み、バキュロウイルス以外のウイルスを意味する。
例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクチニアウイルス、鶏痘ウイルスレンチウイルス等を例示することができるが、好ましくはアデノウイルスである。

【0035】
(マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA)
本発明で使用する「マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA」は、バキュロウイルスが保有するマラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子と同じ遺伝子(又は実質的に同じ遺伝子をプラスミドDNAに導入さえていれば、特に限定されない。
なお、プラスミドDNAは自体公知の方法により作製することができる。

【0036】
(組換えトランスファーベクターの製造)
本発明では、昆虫細胞と脊椎動物細胞(特に哺乳動物細胞)の両細胞においてマラリア抗原、DAF及び/又はIL-12を発現可能な構造を有するトランスファーベクターを利用することができる。本発明において、作製されるトランスファーベクターの構造は、一方が脊椎動物のプロモーター(特に哺乳動物プロモーター)で、他方がバキュロウイルスのプロモーターが連結されたデュアルプロモーターの下流に所望のマラリア抗原タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNA配列とウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質のアミノ酸配列をコードするDNA配列とが連結した構造を有し、別の遺伝子カセットとしてバキュロウイルスのプロモーターの下流にDAFのタンパク質のアミノ酸配列をコードするDNA配列、及び/又は脊椎動物のプロモーター(特に哺乳動物プロモーター)の下流にIL-12タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNA配列を有することを特徴とする。
連結される脊椎動物のプロモーター(特に哺乳動物プロモーター)とバキュロウイルスプロモーターの2つのプロモーターのDNA配列を含むDNA領域は、直接連結してもよいし、互いのプロモーターのDNA配列の間に介在DNA配列が存在してもよい。

【0037】
前記構造において、ウイルス粒子の構成成分になり得る遺伝子のタンパク質をコードする遺伝子と、所望のマラリア抗原遺伝子含む融合遺伝子は、これらの2つの遺伝子を直接連結したDNA配列からなるものであってもよいし、これらの間に介在DNA配列が存在していてもよい。
所望のマラリア抗原遺伝子のタンパク質の抗原提示領域が、ウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質と融合されることが好ましい。
また、これらの2つの遺伝子を含む融合遺伝子を、予め形成し、これをベクターに組み込んでも良いし、先にいずれか一方の遺伝子をベクターに組み込み、次いで、他の遺伝子をベクターに組み込んでベクター内で融合遺伝子を形成してもよい。

【0038】
上記操作は、哺乳動物プロモーターやバキュロウイルスプロモーター等のプロモーター領域やウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子領域を既に有する市販の発現ベクターをそれぞれ使用し、任意に制限酵素で切り出し、別のプロモーターを組み込むなどして、該ベクターのクローニング領域に所望のマラリア抗原遺伝子とウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子とが融合した遺伝子、DAF遺伝子及び/又はIL-12遺伝子を挿入するか、或いは所望のマラリア抗原遺伝子、DAF遺伝子及び/又はIL-12遺伝子を既にプラスミドに組み込まれているウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子のDNA領域のN末端側に挿入するなどして、必要な構成要素を挿入することができる。
以上により、所望のマラリア抗原をコードした遺伝子及びDAF遺伝子をバキュロウイルス粒子中(ウイルス表面)に発現可能なウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子が融合した形態で、発現可能なトランスファーベクターを製造することができる。

【0039】
(組換えバキュロウイルスの製造)
組換えバキュロウイルスの製造は、所望のマラリア抗原遺伝子とウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子とが融合した遺伝子、DAF遺伝子及び/又はIL-12遺伝子が組み込まれたトランスファーベクターを製造する工程、該トランスファーベクターとバキュロウイルスDNAとを宿主細胞にコトランスフェクションする工程、組換えバキュロウイルスを分離する工程を含む。

【0040】
上記組換えバキュロウイルスの製造方法において、トランスファーベクターの宿主細胞への導入法及びこれによる形質転換法としては、特に限定されず一般的なこの分野で周知慣用技術となっている各種方法を採用することができる。
得られる組換えバキュロウイルスは、常法に従い培養でき、該培養によりマラリア抗原タンパク質がウイルス粒子の構成成分に融合した融合タンパク質及びDAFタンパク質がウイルス粒子上に提示され、及び/又はIL-12遺伝子を含むウイルス粒子が、昆虫細胞の細胞内、細胞外又は細胞膜上に発現、生産(蓄積、分泌)される。

【0041】
(組換えバキュロウイルスをワクチンとしての使用例)
本発明の組換えバキュロウイルスをワクチンとしての使用方法としては、Priming-boosting法により、最初に、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロイルス以外の組換えウイルスタンパク質、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA、又はマラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質を脊椎動物、特にヒトを含む哺乳動物に筋肉内、経鼻的、又は経気道的に1回又は複数回投与した後、次に、本発明の組換えバキュロウイルスを1回又は複数回投与する。さらに、必要に応じて、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えウイルス、又は、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えウイルス(特に、組換えバキュロウイルス)を併用投与(混合投与)しても良い。
下記の実施例2により、マラリア抗原(特に、CSP)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを、該マラリア抗原(特に、CSP)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロウイルス以外の組換えウイルス(特に、アデノウイルス)を患者に投与した後に、該患者に投与することにより高い感染防御効果を示すことを見出している。
より詳しくは、ヒトへの投与方法は、すでに知られている投与方法も採用することができ、以下を例示することができるが、特に限定されない。
GSKのRTS,S/AS01ワクチンの第三相臨床試験 (N Engl J Med 367 (2012) 2284-95)を基にして行う。
1回目免疫:6-12週の乳児に筋肉注射 ChAd63-CS (5x1010 vp) (オックスフォード ジェンナー研究所作製、参考文献:J Infect Dis 211 (2014) 1076-86)
2回目免疫:1-3ヶ月後に筋肉注射 本発明のワクチン(1x109 pfu)

【0042】
(マラリアワクチン又はマラリアワクチン組成物)
本発明のマラリアワクチン又はマラリアワクチン組成物の組合せは、以下を例示することができるが特に限定されない。
(1)マラリア抗原とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス
(2)マラリア抗原とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス並びにマラリア抗原を発現する組換えアデノウイルス
(3)マラリア抗原を発現する組換えバキュロウイルス
(4)マラリア抗原を発現する組換えバキュロウイルス並びにマラリア抗原を発現する組換えアデノウイルス
(5)マラリア抗原とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス並びにIL-12を発現する組換えバキュロウイルス
(6)マラリア抗原とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス並びにIL-12とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス
(7)マラリア抗原を発現する組換えバキュロウイルス並びにIL-12を発現する組換えバキュロウイルス
(8)マラリア抗原を発現する組換えバキュロウイルス並びにIL-12とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス
(9)マラリア抗原、DAF及びIL-12を同時に発現する組換えバキュロウイルス
(10)マラリア抗原、DAF及びIL-12を同時に発現する組換えバキュロウイルス並びにマラリア抗原を発現する組換えアデノウイルス
(11)マラリア抗原、DAF及びIL-12を同時に発現する組換えバキュロウイルス並びにマラリア抗原とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス
(12)マラリア抗原及びIL-12を同時に発現する組換えバキュロウイルス
(13)マラリア抗原及びIL-12を同時に発現する組換えバキュロウイルス並びにマラリア抗原を発現する組換えアデノウイルス
(14)マラリア抗原及びIL-12を同時に発現する組換えバキュロウイルス並びにマラリア抗原とDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルス
本発明で使用する組換えバキュロウイルスは、たくさんの異なる遺伝子カセットを同時に入れることができる (参照文献:Kanai et al., Protein Expr Purif 91 (2013) 77-84)。よって、CSP以外のマラリア抗原、HIV、結核の抗原遺伝子を入れ込むことも可能となる。すなわち、この組換えバキュロウイルスを用いたシステム(IL12との組み合わせ)を使用すれば、細胞性免疫誘導が不可欠な感染症に対し、多価ワクチンの作製が可能となる。

【0043】
本発明のマラリアワクチン組成物は、下記の実施例2、3の結果より、アジュバントと併用することなく高い防御効果を示したので、アジュバントを必須の成分とする必要はないが、含めても良い。
本発明のマラリアワクチン組成物(マラリアワクチンも含む)は、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)又は生理食塩水等に懸濁した組換えバキュロウイルス懸濁液を局所(例えば、肺組織内、肝臓内、筋肉内及び脳内など)への直接注入、経鼻的・経気道的に吸入、又は血管内(例えば、動脈内、 静脈内及び門脈内)への投与が行われる。

【0044】
(マラリアの予防方法及び治療方法)
本発明では、マラリアの予防方法及び治療方法も対象とする。より詳しくは、本発明の組換えバキュロウイルスを、Priming-boosting法により、最初に、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロイルス以外の組換えウイルスタンパク質、マラリア抗原のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されたプラスミドDNA、又はマラリア抗原のアミノ酸配列を有するタンパク質をマラリア患者(マラリア発症前の予防対象者も含む)に筋肉内、経鼻的、又は経気道的に1回又は複数回投与した後、次に、本発明の組換えバキュロウイルスを1回又は複数回投与する。さらに、必要に応じて、IL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及び該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えウイルス又はIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子並びに該遺伝子を発現可能なプロモーターを含む組換えウイルス(特に、組換えバキュロウイルス)を併用投与(混合投与)する。

【0045】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
(マラリアワクチンの作製及び特性評価)
本実施例では、実施例2及び実施例3で使用する組換えバキュロウイルスを作製し、さらに特性を評価した。加えて、組換えアデノウイルスも作製した。詳細は、以下の通りである。
【実施例1】
【0047】
(ワクチンコンストラクトの作製)
図4及び図5に記載の各ワクチンコンストラクトの構成模式図を基にして、下記に記載のプラスミドを自体公知のプライマー及びベクターを用いて作製した。
○sPfCSP(配列番号2)を発現するバキュロウイルスで使用するプラスミド{BDES-PfCSP-WPRE-Spier (DAFなし)}。図4の遺伝子カセットをpFastBac-Dual (Life Technologies Incより購入)のKpn I/Avr IIサイトに導入し、pFast- PfCSP-WPRE-Spierを構築した。
○sPfCSPとhDAF(配列番号3)を同時に発現するバキュロウイルスで使用するプラスミド{BDES-PfCSP-WPRE-Spider (DAFあり)}。図4の遺伝子カセットをpFastBac-DualのKpn I/Avr IIサイトに導入し、pFast- PfCSP-WPRE-Spiderを構築した。
○IL-12(配列番号7:マウスIL-12、参照論文:Yoshida et al., Vaccine 24 (2006) 1191-1204))とhDAFを同時に発現するバキュロウイルスで使用するプラスミド{BES-CMV-mIL12-Spider (DAFあり)}。図4の遺伝子カセットをpFastBac-DualのKpn I/Avr IIサイトに導入し、pFast- CMV-mIL12-Spiderを構築した。
○GL3とhDAFを同時に発現するバキュロウイルスで使用するプラスミド{BES-CMV-GL3-Spider(DAFあり)}。図5の遺伝子カセットを基にして、pFast-CMV-GL3-Spiderを構築した。
○sPfCSP(配列番号2)を発現するアデノウイルスで使用するプラスミド(AdHu5-CAG-PfCSP)。図5の遺伝子カセットをpAd/PL-DEST (Life Technologies Incより購入)のRfA遺伝子カセットと置換導入し、pAd/PL-CAG-PfCSPを構築した。これをHEK293A細胞にトランスフェクションして作製した。
pCMV及びpCAGは、哺乳動物細胞で作動するプロモーターであり、pPolh及びp10はバキュロウイルスで作動するプロモーターである。
EGFPは、バキュロウイルスの発現を確かめるために導入した自体公知の蛍光タンパク質をコードする遺伝子である。
VSV-G TM(配列番号4)は、PfCSPと融合させるエンベロープタンパク質(ウイルス粒子の構成成分になり得るタンパク質)であるgp64の代わりに、バキュロウイルスの細胞侵入能力の上昇及びエンベロープのタンパクの大きさを縮めるために導入したものである。
WPRE(woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element:配列番号5)は、mRNAの核から細胞質への能動的な輸送と細胞質でのmRNAの安定性を高める役割があり、この配列をベクターに組み込むことにより、titer及び導入遺伝子の発現効率を上昇させるために導入したものである。なお、WPREは、タンパク質をコードしている配列ではない。
GL3遺伝子(プロメガ社より購入)は、ルシフェラーゼ遺伝子であり定量的な発現の確認に利用することができることが知られており、本発明では、コントロールとして使用した。
Poly(A)は、RNAを安定化するためのアデニンの繰り返し単位である。
SV40 polyは、マルチクローニングサイトに挿入される外来遺伝子(exogenous gene)用のPoly(A)である。
G2は、VSV-Gタンパク質の膜アンカーの部分配列である。
SPは、シグナルペプチドである。
SP163は、RNA転写因子である。
【実施例1】
【0048】
(バキュロウイルスへの導入と培養)
上記で作製したプラスミドを市販のBac-to-Bac(R)(ライフテクノロジーズ・ジャパン株式会社販売)を用いBacmidに遺伝子導入した。作製したBacmid 1000ngをSf900(-)に加え、さらにSf900(-)で希釈したCell fectinを加え、室温で45min静置した。
さらに、Sf900(-)を加え1mlにし、5mlフラスコに撒いたSf-9細胞に1h感染させた。その後、Sf900(+)を5ml加え、5日間培養した。培養上清をもう1度、Sf-9細胞に感染させ、5日間培養した。
次に、培養上清を回収し、作製した組換えバキュロウイルスをタイトレーションした。1.2×107cells/mlの浮遊細胞にmoi=0.5で感染させ、125rpm,27.5℃で4日間、浸透培養した。4日後に回収し、40%スクロースを用いて密度勾配遠心し、沈殿をPBSで懸濁し、4℃,暗所で保存した。
なお、Sf-9細胞は、抗生物質入りのSF900-II medium(Invitrogen,San Diego,CA)中、27℃で培養した。Sf-9浮遊細胞は、抗生物質入りのSF900-II medium中、125rpm,27.5℃で浸透培養した。
【実施例1】
【0049】
(タイトレーション)
Sf-9細胞を7.0×104cell/wellずつ撒いた96wellプレートに2倍ずつ希釈したウイルス30μlを1h感染後、5日間培養した。5日後に蛍光顕微鏡を用いて、EGFPの発現を確認した。EGFPの発現が見られた最大希釈からタイターを算出した。
タイター[PFU/ml]=1/10-2×2-n×0.03(n:希釈回数)
【実施例1】
【0050】
(バキュロウイルスの特性の確認)
バキュロウイルス上でのPfCSPとDAFの発現を、抗PfCSP抗体及び抗DAF抗体を用いて確認できた。
哺乳類細胞内でCMVプロモーターが正しく機能するかどうかを調べるために、哺乳類細胞(COS-7細胞)へのウイルス感染後の細胞表面上のPfCSPを蛍光標識して確認した。蛍光画像により、哺乳類細胞内でのPfCSPの発現を確認したことにより、哺乳類細胞内でCMVプロモーターが正しく機能していることを確認した。
ウイルス表面上でのPfCSPとDAFの発現を電子顕微鏡で確認した。電子顕微鏡の画像により、バキュロウイルスの表面上のPfCSPとhDAFの発現提示を確認した。
活性血清と非働化血清に37℃、1h晒された時のウイルスエンベロープへの影響を確認した。DAFが発現していないウイルスのエンベロープは血清に晒されることでほとんど剥げた。一方で、DAFが発現しているウイルスは幾分かエンベロープの剥離が弱かった。これにより、hDAFは、発現だけでなくウイルスのシールド効果を有していることを確認した。
以上により、本実施例で作成したバキュロウイルスは、ウイルス表面上に、PfCSPとDAFを同時に発現しておりかつタンパク質の機能を有していることを確認した。
【実施例1】
【0051】
(組換えアデノウイルスの作製)
Adeno-COE/1-373 (CSPを発現するアデノウイルス)の作製方法は、プロモーターさらにPfCSPのアミノ酸配列をコードする遺伝子又はGL3のアミノ酸配列をコードする遺伝子を公知のアデノウイルスベクターであるpAd/PL-DEST (Invitrogen,Carlsbad, CA)に導入し、さらに培養、精製して得た(参照:PLOS August 2013 Volume 8 Issue e70819)。
【実施例2】
【0052】
(マラリア抗原及びDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルスを使用した感染防御効果の確認)
本実施例では、本発明のマラリア抗原及びDAFを同時に発現する組換えバキュロウイルスを含むマラリアワクチンの感染防御効果を確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例2】
【0053】
(使用したマラリアワクチン)
使用したマラリアワクチンは、以下の通りである。
○PfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス(ウイルス表面上に、PfCSPとhDAFを同時に提示する)
○PfCSPを発現するバキュロウイルス(ウイルス表面上に、PfCSPを提示する)
○CSPを発現するアデノウイルス(ウイルス表面上に、PfCSPを提示する)
【実施例2】
【0054】
(使用した哺乳動物及び原虫)
使用した哺乳動物及び原虫は、以下の通りである。
マウス:BALB/c♀マウス6週齢を日本エスエルシー株式会社から購入し、1週間後に使用した。
マウスマラリア原虫:マウスマラリア原虫PbのPbCSPを熱帯熱マラリア原虫のPfCSPに置換導入したPfCSP-Tc/Pb組換えマウスマラリア原虫を使用した(自治医科大学より寄贈)。
【実施例2】
【0055】
(免疫スケジュール)
免疫スケジュールは、以下の通りである。
グループ1:PfCSPを発現するバキュロウイルス [108 pfu (plaque forming unit) ] をBALB/cマウス(N=10)に3週間隔で3回筋注後、さらに6週目に1回筋注した。
グループ2:PfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス [108 pfu (plaque forming unit) ] をBALB/cマウス(N=10)に3週間隔で3回筋注後、さらに6週目に1回筋注した。
グループ3:Adeno-COE/1-373 [108 pfu (plaque forming unit) ]をBALB/cマウス(N=3)に1回筋注後、3週目にPfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス [108 pfu (plaque forming unit) ]を1回筋注した。
グループ4:PfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス [1010 VP (viral particle)]をBALB/cマウス(N=3)に1回筋注後、3週目にCSPを発現するアデノウイルス[1010 VP (viral particle)]を1回筋注した。
グループ5:Adeno-COE/1-373 [1010 VP (viral particle)]をBALB/cマウス(N=10)に3週間隔で2回筋注した。
最終免疫の2週後に、PfCSP-Tc/Pb組み換え原虫に感染したハマダラカ7-10匹に吸血させた。感染後、5、7、9日目に尻尾より少量採血を行い、スメアーを引き、顕微鏡で1000個の赤血球中の感染赤血球の数を数え、感染率とした。14日目に感染赤血球が確認されなかったマウスを感染防御とした。
【実施例2】
【0056】
マラリアワクチンの感染防御効果の結果は以下の表1の通りである。
アデノウイルスワクチン単独接種では、マラリア感染防御効果は0%であった。しかし、驚くべきことに、アデノウイルスワクチン接種後に、バキュロウイルスワクチン(特に、ウイルス表面上に、PfCSPとhDAFを提示するバキュロウイルスワクチン)を接種することにより100%の完全なマラリア感染防御効果を達成した。
この結果は、以前に報告されたアデノウイルスワクチン (ChAd63)接種後にワクチニアウイルスワクチン(MVA)を接種するPriming-boosting法の40%のマラリア感染防御効果を凌ぐ優れた効果を示したものである。
【実施例2】
【0057】
【表1】
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【実施例2】
【0058】
本実施例2より、マラリア抗原(特に、CSP)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを、該マラリア抗原(特に、CSP)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロウイルス以外の組換えウイルス(特に、アデノウイルス)を患者に投与した後に、該患者に投与することにより高い感染防御効果を示すことを見出した。
【実施例3】
【0059】
(IL-12を発現するバキュロウイルスを使用した感染防御効果の確認)
本実施例では、本発明のIL-12を発現するバキュロウイルスを含むマラリアワクチンの感染防御効果を確認した。詳細は、以下の通りである。
【実施例3】
【0060】
(使用したマラリアワクチン)
使用したマラリアワクチンは、以下の通りである。
○IL-12とhDAFを同時に発現するバキュロウイルス(ウイルス表面上に、IL-12とhDAFを提示する)
○PfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス(ウイルス表面上に、PfCSPとhDAFを同時に提示する)
○GL3とhDAFを同時に発現するバキュロウイルス
【実施例3】
【0061】
(使用した哺乳動物及び原虫)
使用した哺乳動物及び原虫は、以下の通りである。
マウス:BALB/c♀マウス6週齢を日本エスエルシー株式会社から購入し、1週間後に使用した。
マウスマラリア原虫:マウスマラリア原虫PbのPbCSPを熱帯熱マラリア原虫のPfCSPに置換導入したPfCSP-Tc/Pb組換えマウスマラリア原虫を使用した(自治医科大学より寄贈)。
【実施例3】
【0062】
(免疫スケジュール)
免疫スケジュールは、以下の通りである。
グループ6:ルシフェラーゼ遺伝子(GL3遺伝子)とDAFを発現するバキュロウイルス[108 pfu (plaque forming unit) ] をBALB/cマウス(N=10)に3週間隔で2回筋注した。
グループ7:PfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス [108 pfu (plaque forming unit) ] 並びにIL-12とhDAFを同時に発現するバキュロウイルス [108 pfu (plaque forming unit) ]を含む混合ワクチンをBALB/cマウス(N=15)に3週間隔で2回筋注した。
グループ8:Adeno-CAG-CSP [1010 VP (viral particle) ]をBALB/cマウス(N=15)に1回筋注後、3週目にPfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス [108 pfu (plaque forming unit) ] 並びにIL-12とhDAFを同時に発現するバキュロウイルス [108 pfu (plaque forming unit) ]を含む混合ワクチンを1回筋注した。
最終免疫の2週後に、PfCSP-Tc/Pb組み換え原虫に感染したハマダラカ7-10匹に吸血させた。感染後、4、7、10、14日目に尻尾より少量採血を行い、スメアーを引き、顕微鏡で1000個の赤血球中の感染赤血球の数を数え、感染率とした。14日目に感染赤血球が確認されなかったマウスを感染防御とした。
【実施例3】
【0063】
マラリアワクチンの感染防御効果の結果は以下の表2の通りである。
アデノウイルスワクチン接種後に、PfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス並びにIL-12とhDAFを同時に発現するバキュロウイルスを含む混合ワクチンを接種することにより高いマラリア感染防御効果を達成した。
また、PfCSPとhDAFを同時に発現するバキュロウイルス並びにIL-12とhDAFを同時に発現するバキュロウイルスを含む混合ワクチンでも高いマラリア感染防御効果を達成した。
加えて、感染しても、発症が遅いことも確認した。これは、使用しているマウスはBALB/c近郊系マウスで、ワクチン接種で誘導される免疫応答は個体差が少なく、再現性に優れている。一方、感染チャレンジ試験ではハマダラカを使用しており、保有しているマラリア原虫の数には大きなバラツキがある。その結果、優れたワクチンを接種したマウスでも、数多くのマラリア原虫が侵入すると発症してしまう。このため、発症の遅延効果は、本発明のマラリアワクチン効果が優れていることを示している。
【実施例3】
【0064】
【表2】
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【実施例3】
【0065】
本実施例3より、マラリア抗原(特に、CSP)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルス並びにIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを含む混合ワクチンを、該マラリア抗原(特に、CSP)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含むバキュロウイルス以外の組換えウイルス(特に、アデノウイルス)を患者に投与した後に、該患者に投与することにより高い感染防御効果を示すことを見出した。
さらに、マラリア抗原(特に、CSP)のアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルス並びにIL-12のアミノ酸配列をコードする遺伝子及びDAFのアミノ酸配列をコードする遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを含む混合ワクチンでも高い感染防御効果を示すことを見出した。
【実施例3】
【0066】
(総論)
上記すべての実施例の結果より、本発明のマラリアワクチンは、従来のマラリアワクチンと比較して、以下の効果を有することを確認した。
(1)高い感染防御効果。
(2)感染しても、発症が遅い発症遅延効果、それに伴う治療猶予期間の延長効果。
(3)アジュバントが不要、より詳しくはアジュバントなしでも高い感染防御効果。
(4)高い安全性。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、新規なマラリアワクチンを提供することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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