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明細書 :接木植物体及びその生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6222720号 (P6222720)
登録日 平成29年10月13日(2017.10.13)
発行日 平成29年11月1日(2017.11.1)
発明の名称または考案の名称 接木植物体及びその生産方法
国際特許分類 A01G   1/06        (2006.01)
A01H   1/00        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
FI A01G 1/06 Z
A01H 1/00 Z
A01H 5/00 Z
請求項の数または発明の数 16
全頁数 31
出願番号 特願2016-554113 (P2016-554113)
出願日 平成27年10月15日(2015.10.15)
国際出願番号 PCT/JP2015/079118
国際公開番号 WO2016/060189
国際公開日 平成28年4月21日(2016.4.21)
優先権出願番号 2014212889
優先日 平成26年10月17日(2014.10.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年7月25日(2017.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】野田口 理孝
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】門 良成
参考文献・文献 特開平2-42920(JP,A)
特開2007-135572(JP,A)
中国特許出願公開第101743820(CN,A)
特開平6-253680(JP,A)
特開平7-143820(JP,A)
調査した分野 A01G 1/06
A01H 1/00
A01H 5/00
G01N 33/46
特許請求の範囲 【請求項1】
ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む、異科植物間の接木媒体。
【請求項2】
異目植物間の接木媒体である、請求項1に記載の接木媒体。
【請求項3】
前記植物組織がナス科に属する植物の植物組織である、請求項1又は2に記載の接木媒体。
【請求項4】
前記植物組織がタバコ属に属する植物の植物組織である、請求項1~3のいずれかに記載の接木媒体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の接木媒体を介して、2種の異科植物組織が接木されてなる植物組織。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の接木媒体を介して、2種の異科植物組織を接木する工程を含む、植物組織を製造する方法。
【請求項7】
ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織と異科植物組織とが接木されてなる植物組織。
【請求項8】
請求項5又は7に記載の植物組織を含む、植物体。
【請求項9】
栽培品種の植物組織を含む、請求項8に記載の植物体。
【請求項10】
請求項9に記載の植物体から作物を収穫する工程を含む、作物の生産方法。
【請求項11】
工程(a)~(c)を含む、接木不和合植物間の接木媒体のスクリーニング方法:
(a)被検植物組織を異科植物組織と接木する工程、
(b)工程(a)で得られた植物体を栽培する工程、及び
(c)工程(b)後に植物体が枯死していない場合に、被検植物組織を接木不和合植物間の接木媒体として選択する工程。
【請求項12】
工程(d)~(f)を含む、接木不和合植物間の接木媒体のスクリーニング方法:
(d)被検植物組織を介して、2種の互いに異科に属する植物の植物組織を接木する工程、
(e)工程(d)で得られた植物体を栽培する工程、及び
(f)工程(e)後に植物体が枯死していない場合に、被検植物組織を接木不和合植物間の接木媒体として選択する工程。
【請求項13】
ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む、異科植物への有用成分送達媒体。
【請求項14】
請求項13に記載の送達媒体が異科植物組織に接木されてなる植物組織。
【請求項15】
請求項14に記載の植物組織を含む、植物体。
【請求項16】
請求項15に記載の植物体に、該植物体が含む請求項13に記載の送達媒体を介して、有用成分を送達することを含む、有用成分が送達された植物体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本明細書は、接木植物体及びその生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接木とは2つ以上の植物を外科的に一つに融合する技術である。接木は、一般に裸子植物、被子植物を対象に施され、園芸、農学的に広く利用されている。一般的には、接木は、根部を構成する台木と地上部をなす穂木とを備えており、それぞれの優れた能力を共に発揮させる植物体を作製する技術である。接木の目的及び手法は多岐にわたる。例えば、果樹全般の枝変りや新品種は、接木によってクローン繁殖されることが多い。また、ナス科やウリ科をはじめとする蔬菜類では、有用な根系システムを接木により利用することで病害耐性獲得や果実等の品質・生産性の向上が果たされている。
【0003】
接木は、あらゆる組み合わせで適用できる方法ではなく、一般的に、系統関係が近いほど接木が成立しやすいとされている。接木は、少なくとも二つの植物体が接木面を介してこれら植物体が生きている状態をもって接木成立とする。概して、同種間、同属間、同科間の順に接木が成立しにくくなり、例外的に特定の異科植物間の接木が報告されている(非特許文献1、2)ものの、一般的に異科植物間では接木は成立しないとされている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Simon, S.V. Jahrb. wiss. Bot., 1930. 72, 137-160.
【非特許文献2】Nickell L.G., Science, 1948. 108. 389.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接木は、様々な側面において、有効な技術であるが、近縁植物において接木和合する目的に応じた植物が見出されなければこうした有用性を享受できないという制約があった。
【0006】
また、組合せによっては接木できない現象を接木不和合という。特定の組合せに関し、接木の和合は明確に判断できる。しかしながら、接木不和合は、その定義も不明確であって、長年の経験に依らざるをえず、短期的に判定する方法もない。また、接木不和合は、そのメカニズム自体科学的にほとんど解明されていない。
【0007】
本明細書は、接木不和合が回避又は抑制された新たな植物体を利用した植物体及びその生産方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ある種の植物の植物組織が、異科に属する植物体との間で接木不和合を回避又は抑制して異科接木を成立させうることを見出した。さらに、この種の植物の植物組織が、広く異科の植物体との間でも接木不和合を回避又は抑制して異科接木を成立させうることを見出した。さらにまた、この種の植物組織は、接する他の植物組織に対して各種成分を輸送できることも見出した。これらの知見に基づき、本発明は、以下の手段を包含する。
【0009】
項1. ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む、異科植物間の接木媒体。
項2. 異目植物間の接木媒体である、項1に記載の接木媒体。
項3. 前記植物組織がナス科に属する植物の植物組織である、項1又は2に記載の接木媒体。
項4. 前記植物組織がタバコ属に属する植物の植物組織である、項1~3のいずれかに記載の接木媒体。
項5. 項1~4のいずれかに記載の接木媒体を介して、2種の異科植物組織が接木されてなる植物組織。
項6. 項1~4のいずれかに記載の接木媒体を介して、2種の異科植物組織を接木する工程を含む、植物組織を製造する方法。
項7. ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織と異科植物組織とが接木されてなる植物組織。
項8. 項5又は7に記載の植物組織を含む、植物体。
項9. 栽培品種の植物組織を含む、項8に記載の植物体。
項10. 項9に記載の植物体から作物を収穫する工程を含む、作物の生産方法。
項11. 工程(a)~(c)を含む、接木不和合植物間の接木媒体のスクリーニング方法:
(a)被検植物組織を異科植物組織と接木する工程、
(b)工程(a)で得られた植物体を栽培する工程、及び
(c)工程(b)後に植物体が枯死していない場合に、被検植物組織を接木不和合植物間の接木媒体として選択する工程。
項12. 工程(d)~(f)を含む、接木不和合植物間の接木媒体のスクリーニング方法:
(d)被検植物組織を介して、2種の互いに異科に属する植物の植物組織を接木する工程、
(e)工程(d)で得られた植物体を栽培する工程、及び
(f)工程(e)後に植物体が枯死していない場合に、被検植物組織を接木不和合植物間の接木媒体として選択する工程。
項13. ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む、異科植物への有用成分送達媒体。
項14. 項13に記載の送達媒体が異科植物組織に接木されてなる植物組織。
項15. 項14に記載の植物組織を含む、植物体。
項16. 項15に記載の植物体に、該植物体が含む項13に記載の送達媒体を介して、有用成分を送達することを含む、有用成分が送達された植物体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、異なる植物組織間などを媒介して接木を成立させうる接木媒介性を有する植物組織を用いることで、異科に属する植物など接木不和合性を回避又は抑制して、また、高い自由度で台木及び穂木などの接木要素を選択しうる接木植物体及びその生産方法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本開示の接木媒介性植物組織(第1の植物組織)によって接木不和合性を回避又は抑制して接木を成立させる形態の一例を示す図である。
【図1B】本開示の接木媒介性植物組織(第1の植物組織)によって接木不和合性を回避又は抑制して接木を成立させる形態の他の一例を示す図である。
【図2】本開示の接木植物体の概念の一例を示す図である。
【図3】タバコ属に属する植物組織と接木が成立した植物を被子植物の系統樹上に示す図である。
【図4】アポプラスティック輸送の確認結果を示す図である。
【図5】シンプラスティック輸送の確認結果を示す図である。
【図6】シンプラスティック輸送の他の確認結果を示す図である。
【図7】シンプラスティック輸送の他の確認結果を示す図である。
【図8】道管要素の組織学的観察結果を示す図である。
【図9】篩管要素の組織学的観察結果を示す図である。
【図10】原形質連絡のde novo形成の細胞形態学的観察結果を示す図である。
【図11】タバコ属植物とシダ植物との組織の癒着を示す図である。
【図12】タバコ属植物とシダ植物との間のシンプラスティック輸送の確認結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の開示は、接木媒体、植物体、その生産方法、接木媒体のスクリーニング方法等に関する。本発明者は、タバコ属に属する植物を穂木及び台木としてそれぞれ利用して、広範な植物との接木和合性を評価した。さらに、タバコ属の同属近縁種、同科近縁種植物を穂木及び台木としてそれぞれ利用して、同様にして、接木和合性を評価した。さらに、これらの結果に基づいて、タバコ属植物組織を中間台木として、この植物を台木又は穂木として接木可能であった植物を接木したところ、互いに接木不和合性の異科植物であっても接木を成立させることができた。すなわち、タバコ属植物組織が多様な植物の植物組織と接木不和合を回避又は抑制して接木できることを見出した。そして、この結果、こうした植物組織を介在させることで、互いに接木不和合性である植物であっても、その接木不和合性を回避又は抑制して接木できるという媒介性を見出した。また、他の植物組織についても、こうした媒介性を見出した。

【0013】
本開示の概要を図1に例示する。図1Aに示すように、こうした接木不和合を回避又は抑制できる接木媒介性の植物組織によれば、当該植物組織を介在させることで、異科又は本来的に接木不和合性であるが接木を意図する植物組織A、Bの接木が可能となる。さらに、図1Bに示すように、本来的に接木不和合性であるが接木を意図する植物組織A及び植物組織B’についても、接木媒介性植物組織と植物組織Bを介在させることにより、これらを容易に接木が可能となる。例えば、接木媒介性植物組織と植物組織B’とが接木しにくい場合であっても、接木媒介性植物組織の接木媒介性に基づいて当該植物組織と接木可能であってかつ植物組織B’と接木可能な植物組織Bを容易に準備できる。このため、結果として植物組織Aと植物組織B’とを接木することができるようになる。このように、本開示の接木媒介性植物組織によれば、直接にあるいは段階的に接木することで広い範囲で多様な植物の植物組織を接木できるようになる。

【0014】
図1Bには、同様にして植物組織A’と植物組織Bについても、また、植物組織A’と植物組織B’とについても、同様の手法で接木が可能であることを例示している。

【0015】
接木は、特定の植物組織の組み合わせであっても、環境、接木部位やその処置により、成立の可否が分かれる。そのため、接木は、接木を意図する植物組織に適した環境、接木部位やその処置を選択することで可能となり、それにより、種々の植物組織間で実現されるものである。こうした背景、本開示の接木媒介性植物組織により確認できた広範な植物(維管束植物と分類されるシダ植物、裸子植物、被子植物)に対する媒介性及び既述のごとくの種々の態様での接木成立態様を考慮すると、維管束植物と分類されるシダ植物、裸子植物、被子植物の範囲で本開示の接木媒介性植物組織によって接木できない植物の存在を肯定することが困難といえる。

【0016】
さらに、こうした媒介性を有する植物組織は、植物個体に接木することで、この植物組織を介して植物体に有用な成分を送達することができることができた。すなわち、接木不和合性植物を媒介できる植物組織は、上記した媒介性に基づいて植物体に有用な成分等の輸送媒体又は導入媒体としても機能できることがわかった。

【0017】
以下、本開示の各種の実施形態について詳細に説明する。

【0018】
1.定義
本明細書において、植物とは、主として維管束植物をいうものとし、好ましくは維管束植物をいう。

【0019】
本明細書において、植物組織というときには、植物体の一部をいうものとし、植物体というときには、植物個体全体(種子をのぞく)をいうものとする。

【0020】
本明細書において、「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「からなる(consist of)」という意味をも包含する。

【0021】
2.接木媒体
本発明は、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む、異科植物間の接木媒体(本明細書において、「本発明の接木媒体」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0022】
本発明の接木媒体によれば、通常であれば接木不可能な異科植物間を媒介することによって、該異科植物間の接木を成立させることができる。これにより、意図した後述の本発明の植物組織1及び本発明の植物体1を、効率的に得ることができる。また、本発明の接木媒体は、本発明の植物組織1を1つ含む植物体において、さらに追加の植物組織を付与する場合の媒体としても機能する。したがって、本発明の接木媒体は、各種態様の本発明の植物体1を容易に得ることができる。

【0023】
ナス科植物としては、特に限定されず、例えば、タバコ属、アントケルキス属(Anthocercis)、アントツロケ属(Anthotroche)、クレニディウム属(Crenidium)、キファンテラ属(Cyphanthera)、ドゥボイシア属(Duboisia)、グラムモソレン属(Grammosolen)、シモナンツス属(Symonanthus)、ペチュニア属、ベンタミエラ属(Benthamiella)、ボウケティア属(Bouchetia)、バンマツリ属(Brunfelsia)、コムベラ属(Combera)、ファビアナ属(Fabiana)、フンジケリア属(Hunzikeria)、レプトグロッシス属(Leptoglossis)、アマモドキ属(Nierembergia)、パンタカンタ属(Pantacantha)、カリブラコア属(Calibrachoa)、プロウマニア属(Plowmania)、トウガラシ属、リキアンテス属(Lycianthes)、ナス属、ヤルトマタ属(Jaltomata)、チョウセンアサガオ属、キダチチョウセンアサガオ属、ホオズキ属、イガホオズキ属、ハダカホオズキ属、ハシリドコロ属、ヒヨス属、ベラドンナ属、マンドラゴラ属、クコ属、カリブラコア属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、タバコ属、アントケルキス属(Anthocercis)、アントツロケ属(Anthotroche)、クレニディウム属(Crenidium)、キファンテラ属(Cyphanthera)、ドゥボイシア属(Duboisia)、グラムモソレン属(Grammosolen)、シモナンツス属(Symonanthus)、ペチュニア属、ベンタミエラ属(Benthamiella)、ボウケティア属(Bouchetia)、バンマツリ属(Brunfelsia)、コムベラ属(Combera)、ファビアナ属(Fabiana)、フンジケリア属(Hunzikeria)、レプトグロッシス属(Leptoglossis)、アマモドキ属(Nierembergia)、パンタカンタ属(Pantacantha)、カリブラコア属(Calibrachoa)、プロウマニア属(Plowmania)、トウガラシ属、リキアンテス属(Lycianthes)、ナス属、ヤルトマタ属(Jaltomata)等が好ましく、タバコ属、ペチュニア属、トウガラシ属、ナス属等がより好ましく、タバコ属がさらに好ましい。

【0024】
タバコ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Nicotiana benthamiana、Nicotiana tabacum、Nicotiana umbratica、Nicotiana rustica、Nicotiana acuminata、Nicotiana alata、Nicotiana attenuata、Nicotiana clevelandii、Nicotiana excelsior、Nicotiana forgetiana、Nicotiana glauca、Nicotiana glutinosa、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana longiflora、Nicotiana obtusifolia、Nicotiana paniculata、Nicotiana plumbagifolia、Nicotiana quadrivalvis、Nicotiana repanda、Nicotiana suaveolens、Nicotiana sylvestris、Nicotiana tomentosa等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Nicotiana benthamiana、Nicotiana tabacum、Nicotiana umbratica、Nicotiana rustica等が好ましく、Nicotiana benthamianaがより好ましい。

【0025】
ペチュニア属(ツクバネアサガオ属)に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Petunia × atkinsiana(ペチュニア)、Petunia alpicola、Petunia axillaris、Petunia bajeensis、Petunia bonjardinensis、Petunia exserta、Petunia guarapuavensis、Petunia inflata、Petunia integrifolia、Petunia interior、Petunia ledifolia、Petunia littoralis、Petunia mantiqueirensis、Petunia occidentalis、Petunia patagonica、Petunia reitzii、Petunia riograndensis、Petunia saxicola、Petunia scheideana、Petunia villadiana等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Petunia × atkinsianaが好ましい。

【0026】
トウガラシ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Capsicum annuum L.(例えば、'Grossum'(ピーマン)、'Abbreviatum'、'Acuminoum'、'Cerasiforme'、'Conoides'、'Fasciculatum'、'Longum'、'Nigrym'、'Parvo-acuminatum'等)、Capsicum baccatum、Capsicum cardenasii、Capsicum chinense Jacq. Heser & Smith、Capsicum frutescens L. 、Capsicum pubescens Ruiz & Pav.等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Capsicum annuum L.が好ましく、Capsicum annuum L. 'Grossum'(ピーマン)がより好ましい。

【0027】
ナス属に属する植物としては、特に限定されず、例えばSolanum lycopersicum L(トマト)、Solanum melongena L(ナス)、Solanum tuberosum L、Solanum acaule Bitt、Solanum aethiopicum L、Solanum betaceum Cav、Solanum jasminoides Paxt、Solanum mammosum L、Solanum muricatum Aiton、Solanum nigrum L、Solanum pseudocapsicum L、Solanum ptychanthum Dunal等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Solanum lycopersicum L(トマト)、Solanum melongena L(ナス)等が好ましい。

【0028】
アブラナ科植物としては、特に限定されず、例えば、シロイヌナズナ属、アブラナ属、ナズナ属、タネツケバナ属、タイリンミヤコナズナ属、アマナズナ属、セイヨウワサビ属、ヤマガラシ属、オランダガラシ属、イヌガラシ属、マメグンバイナズナ属、カラクサナズナ属、クジラグサ属、ミヤマナズナ属、イワナズナ属、ニワナズナ属、キハナハタザオ属、エダウチナズナ属、キバナスズシロ属、ダイコン属、ダイコンモドキ属、シロガラシ属、ミヤガラシ属、オオアラセイトウ属、タイセイ属、ワサビ属、グンバイナズナ属、ヤマハタザオ属、ムラサキナズナ属、イヌナズナ属、ハクセンナズナ属、タカネグンバイ属、マガリバナ属、トモシリソウ属、ヒメアラセイトウ属、アラセイトウ属、ハナダイコン属、ツノミナズナ属、ゴウダソウ属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、シロイヌナズナ属、アマナズナ属、アブラナ属、エダウチナズナ属、キバナスズシロ属、ダイコン属、ダイコンモドキ属、シロガラシ属、ミヤガラシ属、オオアラセイトウ属、ナズナ属、タネツケバナ属、セイヨウワサビ属 、ヤマガラシ属、オランダガラシ属、イヌガラシ属等が好ましく、シロイヌナズナ属、アブラナ属、ナズナ属、タネツケバナ属等がより好ましく、シロイヌナズナ属、アブラナ属等がさらに好ましく、シロイヌナズナ属がよりさらに好ましい。

【0029】
シロイヌナズナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)、Arabidopsis arenicola、Arabidopsis arenosa、Arabidopsis cebennensis、Arabidopsis croatica、Arabidopsis halleri、Arabidopsis lyrata、Arabidopsis neglecta、Arabidopsis pedemontana、Arabidopsis suecica等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)が好ましい。

【0030】
アブラナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Brassica Oleracea(例えば、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ等)、Brassica Napus(例えば、セイヨウアブラナ等)、Brassica Barrelieri、Brassica carinata 、Brassica elongata、Brassica fruticulosa、Brassica juncea、Brassica narinosa、Brassica nigra、Brassica nipposinica、Brassica rapa、Brassica rupestris、Brassica Tournefortii等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Brassica Oleracea、Brassica Napus等が好ましく、Brassica Oleraceaがより好ましく、ブロッコリーがさらに好ましい。

【0031】
ナズナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Capsella rubella(ルベラナズナ)、Capsella abscissa、Capsella andreana、Capsella australis、Capsella austriaca、Capsella bursa-pastoris、Capsella divaricata、Capsella draboides、Capsella gracilis、Capsella grandiflora、Capsella humistrata、Capsella hybrida、Capsella hyrcana、Capsella integrifolia、Capsella lycia、Capsella mexicana、Capsella orientalis、Capsella pillosula、Capsella pubens、Capsella puberula、Capsella schaffneri、Capsella stellata、Capsella tasmanica、Capsella thomsoni、Capsella thracica、Capsella viguieri、Capsella villosula等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Capsella rubella(ルベラナズナ)が好ましい。

【0032】
タネツケバナ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Cardamine hirsuta(ミチタネツケバナ)、Cardamine anemonoides、Cardamine appendiculata、Cardamine arakiana、Cardamine dentipetala、Cardamine dentipetala var. longifructa、Cardamine fallax、Cardamine impatiens、Cardamine kiusiana、Cardamine leucantha、Cardamine lyrata、Cardamine niigatensis、Cardamine nipponica、Cardamine pratensis、Cardamine regeliana、Cardamine schinziana、Cardamine scutata、Cardamine tanakae、Cardamine torrentis、Cardamine valida等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Cardamine hirsuta(ミチタネツケバナ)が好ましい。

【0033】
シソ科植物としては、特に限定されず、例えば、シソ属、ラベンダー属、ムラサキシキブ属、ハマゴウ属、チーク属、ハマクサギ属、キランソウ属、クサギ属、カリガネソウ属、ルリハッカ属、ニガクサ属、シモバシラ属、ナギナタコウジュ属、ヤマジソ属、カワミドリ属、イヌハッカ属、オレガノ属、ハッカ(メンサ)属、ムシャリンドウ属、カキドオシ属、ヤナギハッカ属、ウツボグサ属、シロネ属、ラショウモンカズラ属、セイヨウヤマハッカ属、ヤグルマハッカ属、アキギリ属、キダチハッカ属、ローズマリー属、イブキジャコウソウ属 、トウバナ属、ヤマハッカ属、イガニガクサ属、メボウキ属、タツナミソウ属、イヌゴマ属、スズコウジュ属、オドリコソウ属、チシマオドリコソウ属、ジャコウソウ属、ミズトラノオ属、テンニンソウ属、メハジキ属、マネキグサ属、ヤンバルツルハッカ属、ニガハッカ属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、シソ属、ラベンダー属、シモバシラ属、ナギナタコウジュ属、ヤマジソ属、カワミドリ属、イヌハッカ属、オレガノ属、ハッカ属、ムシャリンドウ属、カキドオシ属、ヤナギハッカ属、ウツボグサ属、シロネ属、ラショウモンカズラ属、セイヨウヤマハッカ属、ヤグルマハッカ属、アキギリ属、キダチハッカ属、ローズマリー属、イブキジャコウソウ属、トウバナ属、ヤマハッカ属、イガニガクサ属、メボウキ属等が好ましく、シソ属、ラベンダー属等がより好ましく、シソ属がさらに好ましい。

【0034】
シソ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Perilla frutescens(例えば、シソ、エゴマ等)が挙げられる。中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Perilla frutescensが好ましく、シソがより好ましい。

【0035】
ラベンダー属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Lavandula angustifolia(ラベンダー)、Lavandula latifolia、Lavandula stoechas、Lavandula multifida、Lavandula × intermedia等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Lavandula angustifolia(ラベンダー)が好ましい。

【0036】
ハマウツボ科植物としては、特に限定されず、例えば、コシオガマ属、Castilleja属、Orthocarpus属、Agalinis属、Aureolaria属、Esterhazya属、Seymeria属、Lamourouxia属、Cordylanthus属、Triphysaria属、ナンバンギセル属、オニク属、ホンオニク属、ハマウツボ属、キヨスミウツボ属、コゴメグサ属、ヤマウツボ属、ママコナ属、クチナシグサ属、セイヨウヒキヨモギ属、シオガマギク属、ヒキヨモギ属、ストライガ属等に属する植物が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、コシオガマ属、シオガマギク属、Castilleja属、Orthocarpus属、Agalinis属、Aureolaria属、Esterhazya属、Seymeria属、Lamourouxia属、Cordylanthus属、Triphysaria属等が好ましく、コシオガマ属がより好ましい。

【0037】
コシオガマ属に属する植物としては、特に限定されず、例えば、Phtheirospermum japonicum(コシオガマ)、Phtheirospermum glandulosum、Phtheirospermum muliense、Phtheirospermum parishii、Phtheirospermum tenuisectum等が挙げられる。これらの中でも、接木媒体として利用することによって異科植物間の接木をより効率的に成立させることができるという観点からは、Phtheirospermum japonicum(コシオガマ)が好ましい。

【0038】
本発明の接木媒体の形態は、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む限りにおいて、特に限定されない。本発明の接木媒体は、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物体であってもよいし、該植物体から派生した接木成立を促す形態(植物組織等)であってもよい。また、本発明の接木媒体は、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を1つのみ含んでいてもよいし、2つ以上含んでいてもよい。

【0039】
本発明の接木媒体の形態としては、例えば、両端(根側及び地上部先端側)に接木のための面を有する植物体の切片(植物組織)や、任意の(根側及び地上部先端側の)2ヶ所に接木のための面を有する植物体が挙げられる。接木のための面としては、公知の各種の形態、例えば平坦状、V字状等の凹状、突起状の凸状等、必要に応じて良好な接触が得られるような切断面が挙げられる。

【0040】
本発明の接木媒体の形態として、より具体的には、両端に接木のための面を有する(例えば幼苗の)茎部や葉柄部等や、(例えば幼苗の)茎部や葉柄部の任意の2ヶ所に接木のための面を有する植物体が挙げられる。本発明の接木媒体は、細胞分裂など細胞活動が活発な組織、例えば、前形成層などを含む柔組織を含むことが好ましい。柔組織が良好な接木を媒介することができると考えられるからである。柔組織は、柔細胞からなる植物の組織をいう。柔組織としては、例えば茎・根の皮層・髄,葉の柵状組織・海綿状組織、維管束の木部柔組織・篩部柔組織、果実の果肉、塊茎・塊根その他の貯蔵組織などが挙げられる。

【0041】
本発明の接木媒体は、互いに異なる科に属する2つの植物組織の間(異科植物組織間)に介在してこれらの植物組織を媒介して接木を成立させることができる。また、本発明の接木媒体は、異科植物間のみならず、異目植物間の接木をも成立させることができる。

【0042】
なお、本明細書において、異科植物組織間の接木成立の成否は、接木しようとする2つの異科植物組織が由来する植物体に適した接木作製法及び栽培法によって判定することができる。例えば、2つの異科植物組織を台木及び穂木として(場合によっては、台木と穂木の間に中間台木を介在させ)、接木の栽培試験を行うことで判定することができる。原則として接木後4週間台木及び穂木がいずれも生存する場合、これらの植物組織間に接木が成立したと判定できる。上記条件を充足しない場合には、接木が成立していないと判定できる。なお、接木の作製及び栽培試験は、例えば、以下のようにして行うことができる。

【0043】
温室あるいは人工気象器で、培養土を用いて育成した植物を接木の台木及び穂木に供する。接木処置(割り接ぎ)は、茎あるいは葉柄に施す。台木は、茎あるいは葉柄を真横に切断し、切断面中央部に1~2cm程度の切れ込みを入れて用意し、茎に施す場合は、なるべく節間を利用する。他に、茎の節の位置で割り接ぎを行った場合、台木は主茎と側枝あるいは葉柄の間を割るように1~2cm程度の切れ込みを入れて用意する。穂木は、茎を切断して上部を切り離し、さらに切り口の部位を台木とフィットするようV字型に切削して用意する。一連の切削は片刃のカミソリを用いて行うことが好ましい。台木の茎あるいは葉柄に入れた切れ込みに、穂木の茎をダメージを与えぬよう静かに差し込み、穂木がその位置から動かぬようにパラフィルムで固定する。支持棒を台木及び穂木に添え、水を霧吹きしたプラスチックバックを穂木全体が覆われるように被せ、最後にプラスチックバックのジップを台木の茎が位置する側まで閉じる。その状態で27℃、弱光、連続恒明条件下のインキュベーター内、あるいはガラス温室内で7日間育成し、7日目にプラスチックバックに切れ込みを入れ、下のジップも空け、さらに1日置く。翌日、中の水が揮発したことを確認して、プラスチックバックを取り外す。その後、24℃、連続恒明条件下のインキュベーター内あるいはガラス温室内で育成を続け、接木後4週間の時点で穂木が枯れずに生存している場合、接木成立とする。また、台木と穂木の間に中間台木を介在させる場合も、上記に準じた方法によって、接木の作製及び栽培試験を行うことができる。

【0044】
本発明の接木媒体は、2つの異科植物組織間に介在してこれらの植物組織と合着することができる。これにより細胞内外における各種植物体の成分等の有用成分の輸送が可能となる。

【0045】
本発明の接木媒体と2つの異科植物組織との合着は、これらの組織、特に、互いの柔組織が癒合(癒着)した状態を顕微鏡等で形態学的に観察して確認できる。形態学的な観察は、例えば、接木面を含む切片を樹脂切片観察により確認できる。

【0046】
柔組織の合着は、上記した形態学的観察に替えて、あるいは上記した形態学的観察とともに、以下に示すような植物体の道管機能及び篩管機能のいずれかを評価することによっても確認できる。例えば、道管機能は、トルイジンブルー等の水溶性色素を含む水が台木側から穂木側へ接木面を超えて移送されることを検出することによって確認できる。また、例えば、篩管機能は、原形質連絡を介したシンプラスティックな輸送の指標となる蛍光色素(Carboxyfluorescein)などが、台木側から穂木側へ接木面を超えて移送されることを検出することによって確認できる。また、篩管機能は、内生mRNAやGFPタンパク質が、台木側から穂木側へ接木面を超えて長距離移行することを検出することによって確認できる。さらにまた、篩管の篩板には蓄積する多糖カロースがアニリンブルーによって染色できて可視化できることを利用して、カロースのスポットが接木面を超えて連続して存在することを検出することによって確認できる。また、接木面における電子顕微鏡観察によって植物組織の境界領域に置いて原形質連絡がde novoに形成された痕跡を検出することによって確認することもできる。

【0047】
本発明の接木媒体が接木を介在する植物は、特に限定されない。本発明の接木媒体によって接木が成立した植物を示す表1~11及び図3から明らかなように、本発明の接木媒体はシダ植物、裸子植物、被子植物のモクレン類、単子葉類、真正双子葉類(バラ類I、バラ類II、キク類I、キク類II及びそれらの外群)を含む広い範囲の植物の植物組織の接木を成立させることができる。本発明の接木媒体が接木を介在する植物として、より具体的には、例えば、アオイ科、アブラナ科、キク科、ヤナギ科、キンポウゲ科、クスノキ科、センリョウ科、ドクダミ科、サトイモ科、シソ科、スミレ科、セリ科、ツゲ科、ツツジ科、タデ科、ヒユ科、ヒルガオ科、バラ科、ビャクダン科、フウチョウソウ科、フウロソウ科、ブドウ科、ブナ科、スイカズラ科、マツムシソウ科、マメ科、ミカン科、ムクロジ科、ヤマモガシ科、ユキノシタ科、キョウチクトウ科、リンドウ科、オシダ科、ヒノキ科、ウリ科、ナス科、ゴマ科、オオバコ科、ハマウツボ科、アゼナ科、フウチョウボク科、カリケラ科、クサトベラ科、ミツガシワ科、スティリディウム科、ヒメハギ科、スリアナ科、ムンティンギア科、キティヌス科、フタバガキ科、サルコラエナ科、ハンニチバナ科、ベニノキ科、スファエロセパルム科、テトラメレス科、ベゴニア科、ダティスカ科、メギ科、ツヅラフジ科、ヒブリス科、スチルベ科、ゴマノハグサ科、サギゴケ科、ハエドクソウ科、キリ科、コショウ科、ディディメラ科、キンモウワラビ科、ツルキジノオシダ科、タマシダ科、ナナバケシダ科、ツルシダ科、ウラボシ科、シノブ科、キンモウワラビ科、ツルキジノオシダ科、タマシダ科、ナナバケシダ科、ツルシダ科、ウラボシ科、シノブ科等に属する植物が挙げられる。これらの科に属する植物としては、例えば実施例にて評価した属種の植物が挙げられる。

【0048】
本発明の接木媒体としてナス科タバコ属植物の植物組織を用いた場合、接木を介在する植物としては、好ましくは食用とされる植物である58科620種に及ぶ双子葉類、20科213種に及ぶ単子葉類、シダ類16種が挙げられる。

【0049】
前記食用とされる植物のうち、双子葉類では、ダイズ、アズキ、エンドウ、ササゲなど68種のマメ科植物、キュウリ、メロン、スイカ、カボチャなど57種のウリ科植物、タバコ、ナス、トマト、ピーマンなどの63種のナス科植物、シュンギク、フキ、ゴボウ、レタスなどの57種のキク科植物、ニンジン、パセリ、ミツバ、セロリなど24種のセリ科植物、スイバ、タデ、ダイオウルバーブ、ソバなど23種のタデ科植物、ホウレンソウ、オカヒジキ、フダンソウ、ビートなど44種のヒユ科植物が挙げられる。

【0050】
また、前記食用とされる植物のうち、単子葉類では、50種のユリ科植物、22種のサトイモ科植物、26種のヤマノイモ科植物、40種のイネ科植物が挙げられる。さらに、ミカン科、ヤシ科などの木本植物と、31科149種の香辛料類が含まれる。

【0051】
本発明の接木媒体としてナス科ペチュニア属、トウガラシ属、ナス属等の植物の植物組織を用いた場合、接木を介在する植物としては、好ましくはアブラナ科、フウチョウソウ科、フウチョウボク科、キク科、カリケラ科、クサトベラ科、ミツガシワ科、スティリディウム科、キョウチクトウ科、リンドウ科、マメ科、ヒメハギ科、スリアナ科等が挙げられ、より好ましくはアブラナ科、キク科、キョウチクトウ科、マメ科等に属する植物が挙げられる。これらの科の属する植物については、例えば実施例にて評価した属種の植物が挙げられる。

【0052】
本発明の接木媒体としてシロイヌナズナ属植物などのアブラナ科植物の植物組織を用いた場合、接木を介在する植物としては、好ましくはキク科、カリケラ科、クサトベラ科、ミツガシワ科、スティリディウム科、アオイ科、ムンティンギア科、キティヌス科、フタバガキ科、サルコラエナ科、ハンニチバナ科、ベニノキ科、スファエロセパルム科、ウリ科、テトラメレス科、ベゴニア科、ダティスカ科、キンポウゲ科、メギ科、ツヅラフジ科、アゼナ科、ヒブリス科、スチルベ科、オオバコ科、ゴマノハグサ科、シソ科、サギゴケ科、ハエドクソウ科、キリ科、ナス科、ヒルガオ科、マメ科、ヒメハギ科、スリアナ科、キョウチクトウ科、リンドウ科、ハマウツボ科等が挙げられ、より好ましくはキク科、アオイ科、ウリ科、キンポウゲ科、アゼナ科、オオバコ科、シソ科、ナス科、ヒルガオ科、マメ科、キョウチクトウ科、ハマウツボ科に属する植物が挙げられる。これらの科の属する植物については、例えば実施例にて評価した属種の植物が挙げられる。

【0053】
本発明の接木媒体としてシソ属植物などのシソ科植物の植物組織を用いた場合、接木を介在する植物としては、好ましくは、アブラナ科、フウチョウソウ科、フウチョウボク科、マメ科、ヒメハギ科、スリアナ科、キク科、カリケラ科、クサトベラ科、ミツガシワ科、スティリディウム科、ウリ科、テトラメレス科、ベゴニア科、ダティスカ科、ナス科、ヒルガオ科、ドクダミ科、コショウ科、キョウチクトウ科、リンドウ科、ツゲ科、ディディメラ科、ハマウツボ科、サギゴケ科、ハエドクソウ科、キリ科等が挙げられ、より好ましくはアブラナ科、マメ科、キク科、ウリ科、ナス科、ドクダミ科、キョウチクトウ科、ツゲ科、ハマウツボ科等に属する植物が挙げられる。これらの科の属する植物については、例えば実施例にて評価した属種の植物が挙げられる。

【0054】
本発明の接木媒体としてコシオガマ属植物などのハマウツボ科植物の植物組織を用いた場合、接木を介在する植物としては、好ましくは、キョウチクトウ科、リンドウ科、キク科、カリケラ科、クサトベラ科、ミツガシワ科、スティリディウム科、マメ科、ヒメハギ科、スリアナ科、ツゲ科、ディディメラ科、ドクダミ科、コショウ科、オシダ科、キンモウワラビ科、ツルキジノオシダ科、タマシダ科、ナナバケシダ科、ツルシダ科、ウラボシ科、シノブ科、ウリ科、テトラメレス科、ベゴニア科、ダティスカ科、ナス科、ヒルガオ科、アブラナ科、フウチョウソウ科、フウチョウボク科等が挙げられ、より好ましくはキョウチクトウ科、キク科、マメ科、ツゲ科、ドクダミ科、オシダ科、ウリ科、ナス科、アブラナ科等に属する植物が挙げられる。これらの科の属する植物については、例えば実施例にて評価した属種の植物が挙げられる。

【0055】
3.植物組織及び植物体
本発明は、
本発明の接木媒体を介して、2種の異科植物組織が接木されてなる植物組織(本明細書において、「本発明の植物組織1」と示すこともある。)、
本発明の植物組織1を含む植物体(本明細書において、「本発明の植物体1」と示すこともある。)、
ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織と異科植物組織とが接木されてなる植物組織(本明細書において、「本発明の植物組織2」と示すこともある。)、及び
本発明の植物組織2を含む植物体(本明細書において、「本発明の植物体2」と示すこともある。)
に関する。以下、これらについて説明する。

【0056】
本発明の植物組織1は、図1に示すように、少なくとも、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織(第1の植物組織)を含む本発明の接木媒体、並びに本発明の接木媒体を介して接木された互いに異科に属する(すなわち互いに接木不和合な)2つの植物組織(第2の植物組織及び第3の植物組織)を含む。本発明の植物体1は、本発明の植物組織1のみからなる植物体であってもよいし、図1Bに示すように、本発明の植物組織1に加えてさらに他の植物組織(植物組織A’及び植物組織B’)を含む植物体であってもよい。本発明の植物組織1及び本発明の植物体1は、本発明の接木媒体によって接木が媒介されていることによって、本来であれば接木不和合である第2の植物組織及び第3の植物組織両方の種々の機能、さらには第1の植物組織の種々の機能を備えることができる。

【0057】
本発明の植物組織2は、少なくとも、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織(第1の植物組織)、並びに第1の植物組織と接木された、第1の植物組織とは異科に属する(すなわち、従来であれば第1の植物組織とは接木不和合とされていた)1つの植物組織(第4の植物組織)を含む。本発明の植物体2は、本発明の植物組織2のみからなる植物体であってもよいし、本発明の植物組織2に加えてさらに他の植物組織(植物組織A’及び植物組織B’)を含む植物体であってもよい。本発明の植物組織2及び本発明の植物体2は、第1の植物組織の種々の機能、及び従来であれば第1の植物組織とは接木不和合とされていた第4の植物組織の種々の機能の両方を備えることができる。

【0058】
本発明の植物組織1及び2、並びに本発明の植物体1及び2は、こうした異なる植物組織の合着部位を備えるため、接木植物組織(接木植物体)ということもできる。

【0059】
本発明の植物組織1及び本発明の植物体1の典型的な態様(態様1)としては、例えば、図2に示すように、第1の植物組織が中間台木であり、第3の植物組織(又は第2の植物組織)が台木であり、第2の植物組織(又は第3の植物組織)が穂木であるという態様が挙げられる。本発明の植物組織1及び本発明の植物体1の他の態様(態様2)としては、第1~第3の植物組織のセットを台木上に備える態様、すなわち、第1の植物組織の根側に接木されている植物組織(第2の植物組織又は第3の植物組織)のさらに根側に台木を備える態様が挙げられる。本発明の植物組織1及び本発明の植物体1の他の態様(態様3)としては、第1~第3の植物組織のセット上に穂木を備える態様、すなわち、第1の植物組織の地上部先端側に接木されている植物組織(第2の植物組織又は第3の植物組織)のさらに地上部先端側に穂木を備える態様が挙げられる。なお、こうした追加の穂木又は台木は、接合する植物組織と接木和合性の高い近縁な植物の植物組織であるか、第1の植物組織であることが好ましい。本発明の植物組織1及び本発明の植物体1の他の態様(態様4)としては、第1~第3の植物組織のセットの根側及び/又は地上部先端側に、新たな第1の植物組織を介してさらに台木及び/又は穂木を備える態様が挙げられる。

【0060】
本発明の植物組織2及び本発明の植物体2の典型的な態様(態様1)としては、例えば、第1の植物組織(又は第4の植物組織)が台木であり、第4の植物組織(又は第1の植物組織)が穂木であるという態様が挙げられる。本発明の植物組織2及び本発明の植物体2の他の態様(態様2)としては、第1の植物組織及び第4の植物組織のセットを台木上に備える態様、すなわち、根側の植物組織(第1の植物組織又は第4の植物組織)のさらに根側に台木を備える態様が挙げられる。本発明の植物組織2及び本発明の植物体2の他の態様(態様3)としては、第1の植物組織及び第4の植物組織のセット上に穂木を備える態様、すなわち、地上部先端側の植物組織(第1の植物組織又は第4の植物組織)のさらに地上部先端側に穂木を備える態様が挙げられる。なお、こうした追加の穂木又は台木は、接合する植物組織と接木和合性の高い近縁な植物の植物組織であるか、第1の植物組織であることが好ましい。本発明の植物組織2及び本発明の植物体2の他の態様(態様4)としては、第1の植物組織及び第4の植物組織のセットの根側及び/又は地上部先端側に、新たな第1の植物組織を介してさらに台木及び/又は穂木を備える態様が挙げられる。

【0061】
また、本発明の植物組織1及び本発明の植物体1は、第1~第3の植物組織のセットを、植物組織の分岐部に備えていてもよい。例えば、第2の植物組織及び第1の植物組織をそれぞれ台木及び中間台木とし、第3の植物組織のみを分岐部として備えていてもよい。また、例えば、第2の植物組織を台木とし、第1及び第3の植物組織を分岐部として備えていてもよい。このセットの全て植物組織の分岐部として備えていてもよい。同様に、本発明の植物組織2及び本発明の植物体2は、第1の植物組織及び第4の植物組織のセットを、植物組織の分岐部に備えていてもよい。

【0062】
また、本発明の植物組織1及び本発明の植物体1は、同一又は異なる組合せの第1~第3の植物組織の複数のセットを、植物体に備えていてもよい。複数のセットは、相対する植物組織を接木和合性の高い近縁な植物の植物組織として互いに備えるか、第1植物組織を介して備えられうる。同様に、本発明の植物組織2及び本発明の植物体2は、同一又は異なる組合せの第1の植物組織及び第4の植物組織の複数のセットを、植物体に備えていてもよい。

【0063】
さらに、本発明の植物組織1及び2、並びに本発明の植物体1及び2は、上記した各種態様を適宜組み合わせることができる。

【0064】
第1の植物組織(ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織)としては、上述の「2.接木媒体」で挙げたものと同様の植物組織を採用できる。

【0065】
第2~4の植物組織としては、上述の「2.接木媒体」において、「本発明の接木媒体が接木を介在する植物」で挙げたものと同様の植物の植物組織を採用できる。

【0066】
第2~4の植物組織は、本発明の接木媒体又は第1の植物組織に対する合着部位を備えることができる。この合着部位は、第2~4の植物組織に付与した切断面に由来することができる。第2~4の植物組織の切断面は、接木時において、本発明の接木媒体又は第1の植物組織の切断面に当接される部位であって、当接可能な形状を備えることができる。接木のための切断面は、本発明の接木媒体又は第1の植物組織と同様、公知の各種の形態、例えば平坦状、V字状等の凹状、突起状の凸状等、必要に応じて良好な接触が得られるような切断面が挙げられる。第2~4の植物組織は、本発明の接木媒体又は第1の植物組織と同様に、柔組織を含むことが好ましい。

【0067】
第2~4の植物組織としては、例えば、根を含む植物組織である場合であれば、有用な根系システム(例えば、病害耐性、耐乾性、耐塩性、耐塩基性、耐酸性、有用な根茎部を備えるなど)を備える植物の植物組織が選択される。例えば、マメ科、ウリ科、キク科等が挙げられる。

【0068】
本発明の植物体1及び2においては、本発明の接木媒体又は第1の植物組織が含まれているが故に、従来では接木が成立しないと考えられていた種間の接木が成立している。このため、高い自由度で目的に応じて第2~4の植物組織を選択して、より有用性の高い接木植物体を提供することができる。この有用性を利用してより優れた作物のより効率的な生産が可能であるという観点から、本発明の植物体1及び2は、栽培品種の植物組織を含むことが好ましい。この場合、第1~4の植物組織が栽培品種の植物組織であってもよく、第1~4の植物組織以外に含まれる植物組織が栽培品種の植物組織であってもよい。以上より、本発明は、本発明の植物体1又は2から作物を収穫する工程を含む、作物の生産方法をも提供することができる。

【0069】
栽培品種の具体例としては、トマト、ピーマン、トウガラシ、ナス等のナス類、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ等のウリ類、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ等の菜類、セルリー、パセリー、レタス等の生菜・香辛菜類、ネギ、タマネギ、ニンニク等のネギ類、ダイズ、ラッカセイ、インゲン、エンドウ、アズキ等の豆類、イチゴ等のその他果菜類、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ等の直根類、サトイモ、キャッサバ、バレイショ、サツマイモ、ナガイモ等のイモ類、アスパラガス、ホウレンソウ、ミツバ等の柔菜類、トルコギキョウ、ストック、カーネーション、キク等の花卉類、イネ、トウモロコシ等の穀物類、ベントグラス、コウライシバ等の芝類、ナタネ、ラッカセイ等の油料作物類、サトウキビ、テンサイ等の糖料作物類、ワタ、イグサ等の繊維料作物類、クローバー、ソルガム、デントコーン等の飼料作物類、リンゴ、ナシ、ブドウ、モモ等の落葉性果樹類、ウンシュウミカン、レモン、グレープフルーツといった柑橘類、サツキ、ツツジ、スギ等の木本類等が挙げられる。

【0070】
本発明の植物組織1及び本発明の植物体1は、本発明の接木媒体を介して、2種の互いに異科に属する植物組織を接木する工程を含む接木方法によって得ることができる。より具体的には、本発明の植物組織1及び本発明の植物体1は、本発明の接木媒体の根側に第2の植物組織(又は第3の植物組織)を、本発明の接木媒体の地上部先端側に第3の植物組織(又は第2の植物組織)を接触させる工程を含む接木方法によって得ることができる。この接木方法によれば、効率的に意図した接木植物体を取得することができる。

【0071】
本発明の植物組織2及び本発明の植物体2は、第1の植物組織と、該第1の植物組織とは異科に属する1種の植物組織とを接木する工程を含む接木方法によって得ることができる。より具体的には、本発明の植物組織2及び本発明の植物体2は、本発明の接木媒体の根側又は地上部先端側に第4の植物組織を接触させる工程を含む接木方法によって得ることができる。この接木方法によれば、効率的に意図した接木植物体を取得することができる。

【0072】
接触工程は、公知の接木の手法を用いて行うことができる。例えば、本発明の接木媒体又は第1の植物組織を中間台木とし、第2の植物組織を台木とし、第3の植物組織を穂木として行ってもよい。また、すなわち、適宜、接合処理を施して接木面を密着させ、接合部位を必要に応じて物理的に密着状態を形成可能に適宜フィルムや器具等で支持することができる。

【0073】
植物組織の接合順序は特に問わない。同時期に全ての植物組織を接合して育苗(栽培)してもよい。また、第2の植物組織と本発明の接木媒体との接木状態で育苗(栽培)し、その後、第3の植物組織を追加して接合して接合体としてもよい。また、本発明の接木媒体と第3の植物組織との接木状態で育苗(栽培)し、その後、第2の植物組織を追加して接合し、接木植物体としてもよい。さらには、第2の植物組織と本発明の接木媒体との接木体と、第3の植物組織と本発明の接木媒体との接木体と、をそれぞれ作製し、これらの接木体中の本発明の接木媒体同士を接木させてもよい。

【0074】
また、本発明は、本発明の接木媒体又は第1の植物組織を穂木とし、第2の植物組織を台木として備える接木体と、本発明の接木媒体又は第1の植物組織を台木として備え、第3の植物組織を穂木として備える接木体と、を含む、本発明の植物組織1及び本発明の植物体1の作製用キットも提供することができる。また、本発明は、これらのいずれかの接木体、或いは本発明の接木媒体を備える、本発明の植物組織1及び本発明の植物体1の作製用材も提供される。こうした作製用キット及び作製用材によれば、効率的に本発明の植物組織1及び本発明の植物体1を得ることができる。

【0075】
同様に、本発明は、第1の植物組織を含む穂木、台木、又は中間台木を含む、本発明の植物組織2及び本発明の植物体2の作製用材も提供することができる。

【0076】
4.スクリーニング方法
本発明は、工程(a)~(c)を含む、接木不和合植物間の接木媒体のスクリーニング方法:(a)被検植物組織を異科植物組織と接木する工程、(b)工程(a)で得られた植物体を栽培する工程、及び(c)工程(b)後に植物体が枯死していない場合に、被検植物組織を接木不和合植物間の接木媒体として選択する工程(本明細書において、「本発明のスクリーニング方法1」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0077】
本発明のスクリーニング方法1は、異なる植物間(通常、互いに異なる科に属する植物間)の接木不和合を回避又は抑制できる接木媒体のスクリーニング方法である。

【0078】
工程(a)は、例えば被験植物組織を台木(又は穂木)として、被験植物組織とは異なる科に属する他の植物組織を穂木(又は台木)として、接木苗を作製することによって行うことができる。

【0079】
被験植物組織は、中間台木としても使用可能な接木媒体、すなわち、本発明の接木媒体としての使用を意図する植物組織である。例えば、スクリーニングにあたって、既述の第1の植物組織のように接木面を処理して、台木又は穂木も同様にして、接木苗の作製工程に供する。なお、接木苗の作製は、公知の接木の手法を用いることができる。接木苗の作製工程は、被験植物組織を台木として用い、他の2以上の植物組織を穂木として用いて実施することもできる。また、被験植物組織を穂木として用い、他の2以上の植物組織を台木として用いて実施することもできる。これら双方を実施することで被験植物組織の接木和合性や好ましい使用態様をより確実に決定することができ、接木媒体を効率的にスクリーニングすることができる。

【0080】
工程(b)における栽培条件は、特に限定されず、被検植物組織及びこれと接木する植物組織の種類に応じて、適宜設定することができる。栽培期間は、接木の成否を評価できる期間であれば特に限定されず、被検植物組織及びこれと接木する植物組織の種類に応じて、適宜設定することができる。栽培期間としては、例えば2~8週間、好ましくは3~5週間が挙げられる。

【0081】
工程(c)における枯死の判断は、公知の基準に従って又は準じて行うことができる。枯死していない場合、被験植物組織は、接木不和合植物間の接木媒体として使用することができる。

【0082】
工程(a)~(c)は、より具体的には、例えば上記「2.接木媒体」において説明した「接木の作製及び栽培試験」や、実施例と同様に行うことができる。

【0083】
また、本発明は、工程(d)~(f)を含む、接木不和合植物間の接木媒体のスクリーニング方法:(d)被検植物組織を介して、2種の互いに異科に属する植物の植物組織を接木する工程、(e)工程(d)で得られた植物体を栽培する工程、及び(f)工程(e)後に植物体が枯死していない場合に、被検植物組織を接木不和合植物間の接木媒体として選択する工程(本明細書において、「本発明のスクリーニング方法2」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0084】
本発明のスクリーニング方法2は、本発明のスクリーニング方法1と同様、異なる植物間(通常、互いに異なる科に属する植物間)の接木不和合を回避又は抑制できる接木媒体のスクリーニング方法である。 工程(d)は、例えば被験植物組織を中間台木として、互いに異なる科に属する植物の植物組織を台木及び穂木として、接木苗を作製することによって行うことができる。この中間台木の接木苗の作製工程は、上記した台木/穂木の構成の接木苗の作製工程に替えて、あるいは当該工程とともに、実施することができる。中間台木の接木苗の作製工程を実施することで、被験植物組織を中間台木として用いて、より具体的に台木と穂木との接木和合性を評価することができるため、より現実的な接木構成を効率的に取得しすることができ、接木媒体を効率的にスクリーニングすることができる。

【0085】
なお、中間台木を用いた接木苗の作製は、既に説明した接木植物体の製造方法に準じて実施することができる。

【0086】
工程(e)における栽培条件は、特に限定されず、被検植物組織及びこれと接木する植物組織の種類に応じて、適宜設定することができる。栽培期間は、接木の成否を評価できる期間であれば特に限定されず、被検植物組織及びこれと接木する植物組織の種類に応じて、適宜設定することができる。栽培期間としては、例えば2~8週間、好ましくは3~5週間が挙げられる。

【0087】
工程(f)における枯死の判断は、公知の基準に従って又は準じて行うことができる。枯死していない場合、被験植物組織は、接木不和合植物間の接木媒体として使用することができる。

【0088】
本発明のスクリーニング方法1及び2によれば、接木和合性に劣る2つの植物間を媒介して意図した目的の接木植物体を効率的に取得するのに有用な中間台木等として用いることができる接木媒体を、容易に得ることができる。

【0089】
5.有用成分送達媒体
本発明は、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む、異科植物への有用成分送達媒体(本明細書において、「本発明の有用成分送達媒体」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0090】
本発明の有用成分送達媒体によれば、該媒体を介して、これとは異なる科に属する植物体に有用成分を送達することができる。これらの有用成分によって、植物体(レシピエント植物体)の成長、形態、開花、結実等の各種の特性の制御、又は植物体を宿主とする細菌やウィルスなどの微生物や昆虫などの動物の誘因や防除が可能となる。これらの効果は、元素、化合物、代謝物、タンパク質等の機能発現による場合や、siRNAやmicroRNA等のnon-coding RNAの働きによる転写後の遺伝子サイレンシング(PDGS)やゲノムDNAの修飾による遺伝子サイレンシング(TGS)などによる場合がある。また、上述の形質獲得については、当代でのみ働く効果と、次世代にも遺伝するものとが含まれる。

【0091】
本発明の有用成分送達媒体における第1の植物組織(ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織)としては、上述の「2.接木媒体」で挙げたものと同様の植物組織を採用できる。第1の植物組織は、主にシンプラスティック経路を介して輸送されるとされ、中でも長距離輸送される場合は主に篩管を介して輸送されるとされるmRNAやタンパク質などの生体高分子や水溶性化合物といった低分子物質などの有用成分や、主にアポプラスティック経路を介して輸送されるとされ、中でも長距離輸送される場合は主に道管を介して輸送されるとされる水溶性化合物といった低分子物質等の有用成分を隣接する異科植物組織に輸送できることがわかっている。これらの有用成分によれば、レシピエント植物体の各種特性の制御が可能である。

【0092】
本発明の接木媒体の形態は、ナス科、アブラナ科、シソ科、又はハマウツボ科に属する植物の植物組織を含む限りにおいて、特に限定されず、例えば任意の1箇所に接木のための面を有する植物組織又は植物体が挙げられ、好ましくは上述の本発明の接木媒体の形態に準じた形態を採用することができる。

【0093】
有用成分としては、特に限定されないで、隣接する異科植物組織へと送達可能なものであればよい。例えば、有用成分としては、主にシンプラスティック経路を介して輸送されるとされるsiRNAやmicroRNA等のnon-coding RNAやmRNAなどのRNA、タンパク質、各種植物ホルモン等、主にアポプラスティック経路を介して輸送されるとされる元素、代謝物、分泌型ペプチド、タンパク質、各種ホルモン等が挙げられる。有用成分としては、植物体由来の成分のほか、植物体に由来しないいわゆる薬剤であってもよいし栄養成分であってもよい。ある種のRNAやタンパク質が植物組織間で良好な移動性を有することが知られている。所望のRNAあるいはタンパク質に対してこうした移動性RNAあるいはタンパク質の要素を付加して融合RNAあるいは融合タンパク質とすることで、移動性を付与ないし向上させることができる。そうした融合RNAや融合タンパク質も有用成分となりうる。

【0094】
本発明の有用成分送達媒体を利用するには、これとは異なる科に属する植物体に、本発明の有用成分送達媒体を接木すればよく、その形態を問わない。接木は、既に説明したほか、公知の技術を適用できる。例えば、植物体に本発明の有用成分送達媒体を穂木のようにして接木して使用することができる。こうした形態であると、本発明の有用成分送達媒体を介して有用成分を送達することができる。また、既に説明したように、本発明の有用成分送達媒体を中間台木のように利用してもよい。

【0095】
また、本発明の有用成分送達媒体を利用するには、所望の有用成分を本来的に生産するあるいは人工的(遺伝子工学的)に所望の有用成分の生産能力を付与した第1の植物組織を用いることができる。所望の有用成分の生産性の高い植物は当業者であれば適宜選択しえるし、所望の有用成分の高い生産性を遺伝子工学的に付与した植物体も、当業者であれば適宜取得することができる。

【0096】
さらに、本発明の有用成分送達媒体を利用するには、第1の植物組織に対して、植物体外部から有用成分を注入(導入)するようにしてもよい。第1の植物組織は、各種成分の送達性に優れるため、外部から注入された有用成分であっても、レシピエント植物体に送達することができる。

【0097】
このような利用形態であると、レシピエント植物体の任意の部位に本発明の有用成分送達媒体を接木して、送達手段として用いることができる。この結果、有用成分のより効果的な送達が可能となる。

【0098】
さらに、本発明の有用成分送達媒体を用いるには、植物体における第1の植物組織以外の部位に有用成分を注入(導入)するようにしてもよい。第1の植物組織は、有用成分を媒介できるため、第1の植物組織以外の部位に注入等された有用成分も第1の植物組織を介して植物体のさらに他の部位に送達できる。ここで、第1の植物組織以外の部位とは、例えば、特に限定されない。第1の植物組織の近傍であってもよいし、有用成分の注入等に適した遠隔部位であってもよい。さらには、この植物体が一般的な、台木、穂木及び中間台木のいずれかを備えるときには、そのいずれかであってもよい。

【0099】
こうした利用形態によれば、また、世代交代に時間のかかる木本類などの多年生植物に関し、有用性の高い植物体を従来に比して速やかに得ることができる。

【0100】
以上の説明によれば、本発明は、本発明の有用成分送達媒体を利用した有用成分の異科植物への送達方法も提供する。また、本発明は、本発明の有用成分送達媒体が異科植物組織に接木されてなる植物組織、及び該植物組織を含む植物体、並びにこれら植物組織及び植物体の生産方法も提供する。

【0101】
さらに、本発明は、本発明の有用成分送達媒体を介して、有用成分を送達することを含む、有用成分が送達された植物体の製造方法をも提供する。ここで、「介して」とは、植物体に注入(導入)された有用成分が、本発明の有用成分送達媒体を媒介して、植物体の他部位に有用成分が送達される限りにおいて特に限定されない。よって、本発明の有用成分送達媒体に有用成分を注入(導入)することによって、有用成分を送達してもよいし、本発明の有用成分送達媒体以外の部位に有用成分を注入(導入)することによって、有用成分を送達してもよい。或いは、有用成分を既に含んでいる植物組織(本発明の有用成分送達媒体であってもよいし、それ以外の植物組織でもよい)を接木する等して、本発明の有用成分送達媒体を含む植物体を得ることによって、有用成分を送達してもよい。
【実施例】
【0102】
以下、本明細書の開示を実施例を挙げて具体的に説明する。以下の実施例は、本開示を説明するためのものであって、本開示を限定するものではない。
【実施例1】
【0103】
(2種間の接木植物体の作製)
温室あるいは人工気象器で、培養土を用いて育成した植物を接木に供した。Nicotiana benthamianaは播種後1~2ヶ月の個体を、その他の植物は、数週~数年育成した芽生えあるいは植物苗を用いた。接木処置(割り接ぎ)は、茎あるいは葉柄に施した。台木は、茎あるいは葉柄を真横に切断し、切断面中央部に1~2cm程度の切れ込みを入れて用意した。茎に施す場合は、なるべく節間を利用した。他に、茎の節の位置で割り接ぎを行った場合、台木は主茎と側枝あるいは葉柄の間を割るように1~2cm程度の切れ込みを入れて用意した。穂木は、茎を切断して上部を切り離し、さらに切り口の部位を台木とフィットするようV字型に切削して用意した。一連の切削は片刃のカミソリを用いて行った。台木の茎あるいは葉柄に入れた切れ込みに、穂木の茎をダメージを与えぬよう静かに差し込み、穂木がその位置から動かぬようにパラフィルムで固定した。支持棒を台木及び穂木に添え、水を霧吹きしたプラスチックバックを穂木全体が覆われるように被せ、最後にプラスチックバックのジップを台木の茎が位置する側まで閉じた。その状態で27℃、弱光、連続恒明条件下のインキュベーター内、あるいはガラス温室内で7日間育成し、7日目にプラスチックバックに切れ込みを入れ、下のジップも空け、さらに1日置いた。翌日、中の水が揮発したことを確認して、プラスチックバックを取り外した。その後、24℃、連続恒明条件下のインキュベーター内あるいはガラス温室内で育成を続け、接木後4週間の時点で穂木が枯れずに生存している場合、接木成立とした。なお、植物の育成条件、接木処置(割り接ぎ)の方法、接木後の育成法、接木成立の判断は、以下の接木法においても同様とした。結果を、表1~表9に示す。また、図3に、タバコ属に属する植物組織と接木が成立した植物を被子植物の系統樹上に示す。
【実施例1】
【0104】
【表1】
JP0006222720B2_000002t.gif
【表2】
JP0006222720B2_000003t.gif
【表3】
JP0006222720B2_000004t.gif
【表4】
JP0006222720B2_000005t.gif
【表5】
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【表6】
JP0006222720B2_000007t.gif
【表7】
JP0006222720B2_000008t.gif
【表8】
JP0006222720B2_000009t.gif
【表9】
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【実施例1】
【0105】
これらの表及び図3に示すように、ナス科、アブラナ科、シソ科及びハマウツボ科に属する植物は、台木及び/又は穂木として多様な植物と接木成立が可能であった。
【実施例2】
【0106】
(中間台木を用いた2種間の接木植物体の作製)
中間台木法による接木は、台木・中間台木・穂木からなる接木であるため、台木・中間台木間及び中間台木・穂木間で接木処置を行った。接木処置を2カ所同時に行う場合、まず中間台木となる植物の茎(節間を2つ程度含む)を切り出し、本来の茎の伸長方向の先に穂木をアセンブルし、続いてその中間台木・穂木の中間台木側の茎の端と台木の茎をアセンブルした。2カ所の処置を別の日に2回に分けて行う場合、まず台木と中間台木となる植物の間で接木を行い、接木処置後1~2週間の時点で接木の状態が良いことを確認し、中間台木となる植物の上に穂木を接木した。
【実施例2】
【0107】
あるいは、台木とする植物と中間台木とする植物、中間台木とする植物と穂木とする植物の間でそれぞれ独立に接木を行い、接木処置後1~2週間の時点で接木の状態が良いことが確認されたものについて、それぞれの中間台木とする側の植物の茎において接木処置を新たに施して、台木・中間台木・中間台木・穂木とした。接木成立例を表10及び11に示す。
【実施例2】
【0108】
【表10】
JP0006222720B2_000011t.gif
【表11】
JP0006222720B2_000012t.gif
【実施例2】
【0109】
表に示すように、Nicotiana benthamianaなどのナス科タバコ属に属する植物は、互いに異なる科に属するなど、接木和合性に劣ると考えられる植物の植物組織をそれぞれ自らの植物組織を介して接木成立できることがわかった。以上の結果から、ある種の植物組織は、穂木/台木構成の接木によって2以上の植物との接木和合性を肯定できる場合に、当該植物組織を中間台木として用いることで、本来、接木和合性に劣る植物の植物組織であっても接木成立させることができることがわかった。
【実施例3】
【0110】
(アポプラスティック輸送の確認)
実施例3~9の試験は、Nicotiana benthamiana穂木・シロイヌナズナ台木の接木に対して、接木処置後3週目の時点で行った。台木の花茎を根元付近で真横に切断して、台木の花茎ごと穂木を切り取り、台木側の切断面に縦の切れ込みを2~3カ所入れ、1.5mLチューブに分注しておいた0.5% Toluidine Blue水溶液に切断した茎を挿し、吸水させた。3~6時間後に接木の接合部及び穂木の茎(接木部位に近い領域)について、それぞれ縦断あるいは横断徒手切片を作製して、実体顕微鏡あるいは光学顕微鏡を用いてToluidine Blue試薬の青色が穂木側の道管要素で観察されることを確認・撮影した。結果を図4に示す。図4のAには、接木模式図を示し、B及びCには、台木にトルイジンブルーを吸わせた結果の縦断面及び横断面の観察結果を示す。
【実施例3】
【0111】
図3に示すように、インクが台木から穂木へと輸送されることがわかった。インクは道管を介して輸送されていることがわかった。
【実施例4】
【0112】
(シンプラスティック輸送の確認1)
台木の成熟葉(ロゼット葉)5~10枚及び接木部位の下に位置する茎生葉1枚に、シンプラスティック輸送のトレーサーである0.5mg/mLの5(6)-carboxyfluorescein diacetate(CFDA)を投与した。CFDAのストック溶液は、アセトンを用いて50mg/mLで調整し、-20℃で保存しているものを実験に使用した。Carboxyfluoresceinの局在パターンを調べる際、道管を経由するアポプラスティック輸送のパターンと簡便に区別するため、アポプラスティック輸送で運ばれるpropidium iodide (PI)もCFDAと同時に投与した。PIは、最終1mg/mLとなるようにCFDA溶液に加えた。PCRチューブの先端を切り離したものを器として複数揃え、それぞれに50μL程度のCFDA溶液をアプライしたものを用意した。葉の先端に5mm程度の縦の切れ込みを3~5つ入れ、用意していたCFDA溶液入り器を切れ込みが溶液にさらされるように配置した。少量のCFDA溶液が蒸発するのを防ぐため、接木苗全体をプラスチックバックで覆った。一晩投与を続け、翌日に穂木の頂端領域(成長点から1~2cm)の横断徒手切片を作製して、共焦点顕微鏡による観察・撮影を行った。結果を図5に示す。Aは、接木部位の模式図を示し、Bは穂木の横断切片(接木部位から遠位である頂端領域)の観察結果を示す。
【実施例4】
【0113】
図5に示すように、台木の成熟葉に付与したトレーサーは、穂木の篩管から色素が検出された。この結果から、接木部位を介してシンプラスティック輸送が生じていることがわかった。
【実施例5】
【0114】
(シンプラスティック輸送の確認2)
mRNAの移動の検出は、RT-PCR法により行った。シロイヌナズナとNicotiana benthamianaを区別するシロイヌナズナに得意的なプライマーを用意した。ポジティブコントロールとして接木をしていないシロイヌナズナ、ネガティブコントロールとして接木をしていないNicotiana benthamiana、そしてシロイヌナズナ台木に接木したNicotiana benthamiana穂木を開始試料として解析を行った。それぞれの試料からTRIzol試薬(Life Technologies)を用いてトータルRNAを抽出し、SuperScriptIII(Life Technologies)を用いてcDNAを合成し、そちらをRT-PCRの鋳型とした。PCR反応は40サイクル行うか、そちらで増幅が確認されないものについては、1st PCR産物の一部を鋳型に2nd CRをさらに30サイクル行った。PCR産物はアガロースゲルを用いて電気泳動し、ゲルをエチジウムブロマイド染色してバンドパターンを確認した。Nicotiana benthamiana穂木の試料から増幅されたバンドは、ゲルを切り出して精製し、プラスミドベクターにクローニングして、シークエンス反応によりシロイヌナズナの配列が増幅されたことを確認した。結果を図6に示す。図中、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana、At)は、接木していないシロイヌナズナ、Nbは接木していないNicotiana benthamiana、Nb/Atは、シロイヌナズナ台木上に接木したNicotiana benthamiana穂木を示す。
【実施例5】
【0115】
図6に示すように、Nb/At接木の穂木からAt由来の移動性のmRNAを検出した。この結果から、mRNAが接木部位を超えて台木から穂木へとシンプラスティック輸送されていることがわかった。
【実施例6】
【0116】
(シンプラスティック輸送の確認3)
GFP蛋白質の移動の検出は、シロイヌナズナGFP過剰発現体(35S:GFP)を台木にNicotiana benthamianaを穂木として接木し、接木接合部の横断徒手切片を作製して、共焦点顕微鏡を用いた観察・撮影により行った。結果を図7に示す。Aは接木部位の模式図であり、Bは接木部位の横断切片の観察結果を示し、Cは、Bにおける点線部位の拡大観察結果を示す。
【実施例6】
【0117】
図7に示すように、GFPがシンプラスティック輸送により接木部位を超えて台木から穂木へと移送されることがわかった。
【実施例7】
【0118】
(道管要素の組織学的観察)
接木部位を切り出し、試料を固定液(2%paraformaldehyde,2%glutaraldehyde, 0.05 M cacodylate buffer pH7.4)に浸した状態で、実体顕微鏡のもとで数百μm厚の横断徒手切片を作製した。続いて、同じ組成の固定液中で脱気を数回繰り返した後、4℃で一晩固定した。翌日、0.05M cacodylate bufferで1回につき30分の洗浄を3回行い、その後に別の固定液(2% osmium tetroxide,0.05M acodylate buffer pH7.4)で4℃、3時間の固定を行った。試料は、エタノール処理によって脱水した後、Quetol-651樹脂(Nisshin EM)に包埋した。ミクロトームにより150μm厚の切片を作製し、0.5% Toluidine blue水溶液で染色して、光学顕微鏡で観察・撮影を行った。結果を図8に示す。Aは、接木部位の模式図であって点線は観察箇所を示し、Bは、接木部位の縦断切片の観察結果を示し、C、Dは、それぞれB中の点線部位の拡大観察結果を示す。
【実施例7】
【0119】
図8に示すように、穂木中の発達した柔組織内に、道管要素がランダムな方向に形成されていることがわかった。
【実施例8】
【0120】
(篩管要素の組織学的観察)
シロイヌナズナ細胞膜局在型tdTomato発現体(RPS5A:tdTomato-LTI6b)を台木にNicotiana benthamianaを穂木として接木し、接木接合部の縦断徒手切片を作製し、切片を0.1% aniline blue水溶液で染色した後、共焦点顕微鏡を用いて観察・撮影を行った。結果を図9に示す。Aは、接木部位の模式図であって点線は観察箇所を示し、Bは、接木部位の縦断像を示し、C及びDは、他の縦断像を示す。
【実施例8】
【0121】
図9に示すように、アニリンブルー染色により篩板に蓄積するカロースを染色するため、篩管の存在に応じて篩管を構成する個々の細胞の末端が染色されて連続した輝点が観察された。これらの結果から、穂木の発達した柔組織内に篩管要素がランダムな方向に形成されていることがわかった。
【実施例9】
【0122】
(原形質連絡のde novoな形成の細胞形態学的な観察)
試料の樹脂ブロックの作製は、道管要素の組織学的観察の場合と同様に行い、ウルトラミクロトームを用いて120nm厚の切片を作製して、切片を銅グリッド上にマウントした。そちらを2% uranyl acetate溶液で室温にて15分間染色し、蒸留水での洗浄後、Lead stain solution(Sigma-Aldrich)を用いて室温、3分間の二次染色を行った。試料の観察・撮影は、電子顕微鏡を用いて行った。接木の境界領域は、シロイヌナズナ及びタバコのそれぞれの植物に特徴的な形態を持つプラスチドを指標に同定した。結果を、図10に示す。Aは接木部位の模式図であって点線は観察箇所を示し、Bは、シロイヌナズナのプラスチドを示し、Cは、タバコのプラスチドを示し、Dはシロイヌナズナ及びタバコの境界領域の拡大像を示し、Eは、シロイヌナズナ及びタバコの別の境界領域の拡大像を示す。
【実施例9】
【0123】
図10に示すように、接木部位において、シロイヌナズナ及びタバコの原形質連絡が新生されていることがわかった。
【実施例9】
【0124】
以上の結果から、ナス科(タバコ属)に属する植物やアブラナ科(シロイヌナズナ属)に属する植物においては、その接木部位において柔組織が発達して合着し、柔組織内には篩管要素及び道管要素がその配向は乱れているものの発達し、細胞レベルでは原形質連絡も新たに形成されており、結果としてアポプラスティック及びシンプラスティックな輸送が果たされ、従来にない形態の接木部位が形成されていることがわかった。こうした互いの柔組織を媒介した輸送及び連絡により異科植物など一般に接木和合性に劣る植物間での接木成立を促進しているものと考えられた。
【実施例10】
【0125】
実施例10及び11の試験は、Nicotiana benthamiana穂木・シダ植物(ヤブソテツ)台木の接木に対して、接木処置後1カ月の時点で行った。接木部位を切り出し、試料を固定液(2%paraformaldehyde,2%glutaraldehyde, 0.05 M cacodylate buffer pH7.4)に浸した状態で、実体顕微鏡のもとで数百μm厚の横断徒手切片を作製した。続いて、同じ組成の固定液中で脱気を数回繰り返した後、4℃で一晩固定した。翌日、0.05M cacodylate bufferで1回につき30分の洗浄を3回行い、その後に別の固定液(2% osmium tetroxide,0.05M acodylate buffer pH7.4)で4℃、3時間の固定を行った。試料は、エタノール処理によって脱水した後、Quetol-651樹脂(Nisshin EM)に包埋した。ミクロトームにより150μm厚の切片を作製し、0.5% Toluidine blue水溶液で染色して、光学顕微鏡で観察・撮影を行った。結果を図11に示す。
図11に示されるように、タバコ属植物の組織がシダ植物の維管束に癒着している様子が観察された。
【実施例11】
【0126】
台木シダ植物(ヤブソテツ)を切断し、切断した葉柄に、シンプラスティック輸送のトレーサーである0.1mg/mLの5(6)-carboxyfluorescein diacetate(CFDA)を投与した。比較として、無処理の台木シダ植物(ヤブソテツ)に接ぎ木したN. benthamiana穂木の茎を調べた。CFDAのストック溶液は、アセトンを用いて50mg/mLで調整し、-20℃で保存しているものを実験に使用した。切断した葉柄の先端に5mm程度の縦の切れ込みを2~3つ入れ、用意していたCFDA溶液入りの1.5mLチューブを切れ込みが溶液にさらされるように配置した。少量のCFDA溶液が蒸発するのを防ぐため、溶液入りの1.5mLチューブの口をパラフィルムで覆った。8時間投与を続け、穂木の頂端領域の横断徒手切片を作製して、蛍光顕微鏡による観察・撮影を行った。結果を図12に示す。図12Aは、台木にCFDAを投与しなかった穂木の横断切片を示し、図12Bは台木にCFDAを投与した穂木の横断切片の観察結果を示す。
図12に示されるように、台木であるシダ植物に注入したトレーサーが、穂木であるタバコ属植物中で検出された。このことから、シダ植物とタバコ属植物との間で、接木部位を介してシンプラスティック輸送が生じていることが分かった。
以上の結果から、ナス科(タバコ属)に属する植物は、これとは進化上遥かに遠いシダ植物との間でも、組織の癒着、シンプラスティック輸送が起こり、接木が成立することが示された。このことから、シダ植物よりも進化上近い植物であればどのような植物であっても、ナス科(タバコ属)に属する植物と接木できることが示唆された。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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