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明細書 :色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年7月13日(2017.7.13)
発明の名称または考案の名称 色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法
国際特許分類 H01G   9/20        (2006.01)
FI H01G 9/20 111C
H01G 9/20 113B
H01G 9/20 109
H01G 9/20 307
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 18
出願番号 特願2016-552048 (P2016-552048)
国際出願番号 PCT/JP2015/077460
国際公開番号 WO2016/052482
国際出願日 平成27年9月29日(2015.9.29)
国際公開日 平成28年4月7日(2016.4.7)
優先権出願番号 2014203872
優先日 平成26年10月2日(2014.10.2)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】吉門 進三
【氏名】佐藤 祐喜
【氏名】川上 亮
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
要約 所定の平均粒径を有する第1の半導体粒子群のコロイド中に、一方が透光性導電基板からなる一対の電極を挿入し、透光性導電基板を陰極として電気泳動を行い、透光性導電基板の透明導電膜上に第1の半導体微粒子を積層する。第1の半導体粒子群よりも平均粒径が大きい第2の半導体粒子群のコロイド中に、一方が第1の半導体微粒子を積層した透光性導電基板からなる一対の電極を挿入し、透光性導電基板を陽極として電気泳動を行い、透光性導電基板の第1の半導体微粒子層上に第2の半導体微粒子を積層する。得られた透光性導電基板を熱処理した後、色素を溶解した溶液中に浸漬し、透光性導電基板の第1の半導体微粒子層のみに色素を吸着させる。
特許請求の範囲 【請求項1】
色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法であって、
(1)容器中において、所定の平均粒径を有する第1の半導体微粒子群を分散媒中に混ぜることで第1のコロイドを形成するステップと、
(2)前記第1のコロイド中に、透光性導電基板が一方の電極をなす一対の電極を挿入し、この一対の電極間に、前記透光性導電基板が陰極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の透明導電膜上に前記第1の半導体微粒子を積層するステップと、
(3)容器中において、前記第1の半導体微粒子群の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する第2の半導体微粒子群を分散媒中に混ぜることで第2のコロイドを形成するステップと、
(4)前記第2のコロイド中に、ステップ(2)で得られた前記透光性導電基板が一方の電極をなす一対の電極を挿入し、この一対の電極間に、前記透光性導電基板が陽極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の第1の半導体微粒子層の上に前記第2の半導体微粒子を積層するステップと、
(5)ステップ(4)で得られた前記透光性導電基板を熱処理するステップと、
(6)容器中において色素を分散媒中に溶解させ、この溶液中に、前記熱処理後の透光性導電基板を浸漬することによって、この透光性導電基板の前記第1の半導体微粒子層にのみ前記色素を吸着させるステップと、
(7)ステップ(6)で得られた前記透光性導電基板を乾燥させるステップと、を含んでいることを特徴とする製造法。
【請求項2】
色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法であって、
(1)容器中において、所定の平均粒径を有する第1の半導体粒子群と、第1の半導体粒子群の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する第2の半導体粒子群を分散媒中に混ぜることでコロイドを形成するステップと、
(2)前記コロイド中に、透光性導電基板が一方の電極をなす一対の電極を挿入し、この一対の電極間に、前記透光性導電基板が陰極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の透明導電膜上に前記第1の半導体微粒子を積層するステップと、
(3)前記一対の電極間に、前記透光性導電基板が陽極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の第1の半導体微粒子層の上に第2の半導体微粒子を積層するステップと、
(4)ステップ(3)で得られた前記透光性導電基板を熱処理するステップと、
(5)容器中において色素を分散媒中に溶解させ、この溶液中に、前記熱処理後の透光性導電基板を浸漬することによって、この透光性導電基板の前記第1の半導体微粒子層のみに前記色素を吸着させるステップと、
(6)ステップ(5)で得られた前記透光性導電基板を乾燥させるステップと、を含んでいることを特徴とする製造法。
【請求項3】
前記第2の半導体微粒子群の平均粒径が前記第1の半導体微粒子群の平均粒径の5~40倍であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
前記第1の半導体微粒子群の平均粒径が5~20nmであり、前記第2の半導体微粒子群の平均粒径が100~200nmであることを特徴とする請求項3に記載の製造法。
【請求項5】
前記分散媒が、アルコールまたは水であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
前記半導体微粒子が、酸化チタンの微粒子または酸化アルミニウムの微粒子または酸化亜鉛の微粒子であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の製造法。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の製造法によって製造された色素増感型光電変換素子の光入射側電極であって、
前記透光性導電基板と、
前記透光性導電基板の透明導電膜上に形成された前記第1の半導体微粒子層と、
前記第1の半導体微粒子層上に形成された前記第2の半導体微粒子層と、
前記第1の半導体微粒子層に選択的に吸着された前記色素と、からなり、
前記第2の半導体微粒子層を形成する前記第1の半導体微粒子群の平均粒径が、前記第1の半導体微粒子層を形成する前記第2の半導体微粒子群の平均粒径よりも大きいものであることを特徴とする光入射側電極。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型光電変換素子、特に色素増感型太陽電池の光入射側電極の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン系太陽電池に代わる新たな太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。
従来の色素増感型太陽電池として、例えば、透光性導電基板(透明導電膜を有する透明基板)と、透光性導電基板の透明導電膜上に形成され、色素を吸着した多孔質半導体層と、多孔質絶縁層と(以下では、透光性導電基板、多孔質半導体層および多孔質絶縁層を纏めて「光入射側電極」という。)、光入射側電極に対向して配置された対極とを含み、多孔質絶縁層に電解質が含浸された構成を備えたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
そして、この色素増感型太陽電池の光入射側電極の製造は、次のようにしてなされる。(1)多孔質半導体層形成用の半導体微粒子のコロイド溶液またはペーストを作製し、このコロイド溶液またはペーストを透光性導電基板の透明導電膜上に塗布した後、透光性導電基板を乾燥および焼成する。
(2)多孔質絶縁層形成用の半導体微粒子のコロイド溶液またはペーストを作製し、このコロイド溶液またはペーストを透光性導電基板の多孔質半導体層上に塗布した後、透光性導電基板を乾燥および焼成する。
(3)多孔質半導体層および多孔質絶縁層を積層した透光性導電基板を、色素を溶解した溶液中に浸漬させる。
(4)色素を吸着させた透光性導電基板を酸性溶液中に浸漬させることにより、多孔質絶縁層から色素を除去し、色素除去後の透光性導電基板を乾燥させる。
【0004】
しかしながら、この従来の色素増感型太陽電池の光入射側電極の製造法によれば、多孔質半導体層および多孔質絶縁層の形成時に、それぞれ、塗布、乾燥および焼成の工程を実行しなければならず、さらには、多孔質半導体層への色素の吸着に際しても、一旦多孔質絶縁層に吸着した色素を除去しなければならない。そのため、光入射側電極の製造に手間と時間がかかり、製造コストが高くつくという問題があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-18809号公報
【特許文献2】特開2010-21102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、色素増感型光電変換素子の光入射側電極を低コストで製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1発明は、色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法であって、(1)容器中において、所定の平均粒径を有する第1の半導体微粒子群を分散媒中に混ぜることで第1のコロイドを形成するステップと、(2)前記第1のコロイド中に、透光性導電基板が一方の電極をなす一対の電極を挿入し、この一対の電極間に、前記透光性導電基板が陰極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の透明導電膜上に前記第1の半導体微粒子を積層するステップと、(3)容器中において、前記第1の半導体微粒子群の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する第2の半導体微粒子群を分散媒中に混ぜることで第2のコロイドを形成するステップと、(4)前記第2のコロイド中に、ステップ(2)で得られた前記透光性導電基板が一方の電極をなす一対の電極を挿入し、この一対の電極間に、前記透光性導電基板が陽極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の第1の半導体微粒子層の上に前記第2の半導体微粒子を積層するステップと、(5)ステップ(4)で得られた前記透光性導電基板を熱処理するステップと、(6)容器中において色素を分散媒中に溶解させ、この溶液中に、前記熱処理後の透光性導電基板を浸漬することによって、この透光性導電基板の前記第1の半導体微粒子層にのみ前記色素を吸着させるステップと、(7)ステップ(6)で得られた前記透光性導電基板を乾燥させるステップと、を含んでいることを特徴とする製造法としたものである。
【0008】
上記課題を解決するため、また、第2発明は、色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法であって、(1)容器中において、所定の平均粒径を有する第1の半導体粒子群と、第1の半導体粒子群の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する第2の半導体粒子群を分散媒中に混ぜることでコロイドを形成するステップと、(2)前記コロイド中に、透光性導電基板が一方の電極をなす一対の電極を挿入し、この一対の電極間に、前記透光性導電基板が陰極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の透明導電膜上に前記第1の半導体微粒子を積層するステップと、(3)前記一対の電極間に、前記透光性導電基板が陽極となるように電流を流して電気泳動を行い、前記透光性導電基板の第1の半導体微粒子層の上に第2の半導体微粒子を積層するステップと、(4)ステップ(3)で得られた前記透光性導電基板を熱処理するステップと、(5)容器中において色素を分散媒中に溶解させ、この溶液中に、前記熱処理後の透光性導電基板を浸漬することによって、この透光性導電基板の前記第1の半導体微粒子層のみに前記色素を吸着させるステップと、(6)ステップ(5)で得られた前記透光性導電基板を乾燥させるステップと、を含んでいることを特徴とする製造法としたものである。
【0009】
第1および第2発明において、好ましくは、前記第2の半導体微粒子群の平均粒径が前記第1の半導体微粒子群の平均粒径の5~40倍であり、さらに好ましくは、前記第1の半導体微粒子群の平均粒径が5~20nmであり、前記第2の半導体微粒子群の平均粒径が100~200nmである。
また好ましくは、前記分散媒はアルコールまたは水であり、また、前記半導体微粒子は酸化チタンの微粒子または酸化アルミニウムの微粒子または酸化亜鉛の微粒子である。
【0010】
そして、本発明の製造法によれば、前記透光性導電基板と、前記透光性導電基板の透明導電膜上に形成された前記第1の半導体微粒子層と、前記第1の半導体微粒子層上に形成された前記第2の半導体微粒子層と、前記第1の半導体微粒子層に選択的に吸着された前記色素と、からなり、前記第2の半導体微粒子層を形成する前記第1の半導体微粒子群の平均粒径が、前記第1の半導体微粒子層を形成する前記第2の半導体微粒子群の平均粒径よりも大きいものであることを特徴とする光入射側電極が製造される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気泳動法によって、透光性導電基板の透明導電膜上に粒径の小さい第1の半導体微粒子を積層し、続いて、この第1の半導体粒子層上に粒径の大きい第2の半導体微粒子を積層し、次いで、これらの半導体微粒子層を積層した透光性導電基板を熱処理した後、色素を分散媒中に溶解した溶液中に浸漬する。
【0012】
このとき、色素分散溶液中においては、ゼータ電位に基づき、粒径が小さい方の半導体微粒子は正に帯電する一方、粒径が大きい方の半導体微粒子は負に帯電する。また、色素は負に帯電している。そのため、色素は、クーロン力によって透光性導電基板の第1の半導体層に選択的に吸着され、第2の半導体微粒子層に吸着されることは殆どない。
色素の吸着が完了した後、透光性導電基板を乾燥させることによって、色素増感型光電変換素子の光入射側電極が出来上がる。
【0013】
この光入射側電極の第1の半導体微粒子層は、色素を保持する半導体多孔質層として機能する。また、第2の半導体微粒子層は、第1の半導体微粒子層の構成粒子よりも大きい粒径の粒子から構成され、多孔質半導体層(第1の半導体微粒子層)を透過した光を多重反射させて多孔質半導体層に返すとともに、色素増感型光電変換素子中の光入射側電極とその対向電極との短絡を防止する多孔質絶縁層として機能する。この場合、多孔質絶縁層は色素を吸着していないので、多孔質絶縁層における光吸収は殆ど生じない。
また、多孔質絶縁層中には十分大きな空隙が生じるので、色素増感型光電変換素子中において、電解液が多孔質絶縁層内に浸透し、電解液中のイオンおよび色素間の電子のやり取りが効率的に行われる。
そして、本発明によって製造された光入射側電極を組み込んだ光増感型光電変換素子においては、従来よりも高い光-電気エネルギー変換効率(PCE)が得られる。
【0014】
こうして、本発明によれば、多孔質半導体層と多孔質絶縁層の2層構造を、電気泳動工程を2回繰り返した後、1回の熱処理を行うだけで形成することができる。
さらには、熱処理後の多孔質半導体層および多孔質絶縁層が積層された透光性導電基板を色素分散溶液中に浸漬するだけで、多孔質半導体層に選択的に色素を吸着させることができ、従来法のように多孔質絶縁層に吸着された色素を除去する必要がない。
よって、塗布、乾燥および焼成の工程を繰り返す場合と比較して、光色素増感型光電変換素子の入射側電極の製造を効率的に低コストで行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1実施例による色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法のフロー図である。
【図2】図1に示した製造法の電気泳動プロセスを説明する概略図である。
【図3】図1に示した製造法で作製した光入射側電極の1例の断面SEM画像である。
【図4】図1に示した製造法で作製した光入射側電極の別の例の断面SEM画像である。
【図5】(A)は図1に示した製造法で作製した光入射側電極を光入射面側から撮影した写真画像であり、(B)は同光入射側電極を第2の半導体微粒子層(多孔質絶縁層)側から撮影した写真画像である。
【図6】図1に示した製造法で作製した光入射側電極を用いた色素増感型太陽電池の構成を示す断面図である。
【図7】図6の色素増感型太陽電池と、第2の半導体微粒子層(多孔質絶縁層)を有しない色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を比較したグラフである。
【図8】本発明の別の実施例による色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、本発明の1実施例による色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法のフロー図である。
図1を参照して、本発明によれば、まず、容器中において、所定の平均粒径を有する第1の半導体微粒子群を分散媒中に混ぜることで第1のコロイドを形成する(図1のステップS1)。第1の半導体微粒子群としては、平均粒径が5~20nmの酸化チタンナノ粒子群または酸化アルミニウムナノ粒子群または酸化亜鉛ナノ粒子群を使用することが好ましい。また、分散媒としては、水またはアルコールを使用することが好ましい。

【0017】
次に、図2Aに示すように、容器1内の第1のコロイド2中に、透光性導電基板3が一方の電極をなす一対の電極3、4を挿入し、この一対の電極3、4間に、透光性導電基板3が陰極となるように電流を流して電気泳動を行い、図2Bに示すように、透光性導電基板3の透明導電膜3a上に第1の半導体微粒子層5を積層する(図1のステップS2)。

【0018】
その後、容器中において、第1の半導体微粒子群の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する第2の半導体微粒子群を分散媒中に混ぜることで第2のコロイドを形成する(図1のステップS3)。第2の半導体微粒子群としては、第1の半導体微粒子群の平均粒径の5~40倍の平均粒径の、より好ましくは平均粒径が100~200nmの酸化チタン微粒子群または酸化アルミニウム微粒子群または酸化亜鉛微粒子群を使用することが好ましい。なお、第1および第2の半導体微粒子は、同じ種類のものでもよいし、互いに異なる種類のものでもよい。
また、分散媒としては、水またはアルコールを使用することが好ましい。

【0019】
そして、図2Cに示すように、容器1内の第2のコロイド6中に、ステップS2で得られた透光性導電基板3が一方の電極をなす一対の電極3、4を挿入し、この一対の電極3、4間に、透光性導電基板3が陽極となるように電流を流して電気泳動を行い、図2Dに示すように、透光性導電基板3の第1の半導体微粒子層5の上に第2の半導体微粒子層7を積層する(図1のステップS4)。

【0020】
そして、ステップS4で得られた透光性導電基板を熱処理(乾燥および焼成)し(図1のステップS5)、その後、容器中において色素を分散媒中に溶解させ、この溶液中に、熱処理後の透光性導電基板を浸漬することによって、この透光性導電基板の第1の半導体微粒子層に選択的に色素を吸着させる(図1のステップS6)。
このとき、色素分散溶液中においては、ゼータ電位に基づき、粒径が小さい方の半導体微粒子は正に帯電する一方、粒径が大きい方の半導体微粒子は負に帯電する。また、色素は負に帯電している。そのため、色素は、クーロン力によって透光性導電基板の第1の半導体層に選択的に吸着され、第2の半導体微粒子層に吸着されることは殆どない。
その後、ステップS6で得られた透光性導電基板を乾燥させ(図1のステップS7)、それによって、光増感型光電変換素子の光入射側電極を得る。

【0021】
この光入射側電極の第1の半導体微粒子層は、色素を保持する半導体多孔質層として機能する。また、第2の半導体微粒子層は、第1の半導体微粒子層の構成粒子よりも大きい粒径の粒子から構成され、多孔質半導体層(第1の半導体微粒子層)を透過した光を多孔質半導体層側に多重反射させるとともに、色素増感型光電変換素子中の光入射側電極とその対向電極との短絡を防止する多孔質絶縁層として機能する。この場合、多孔質絶縁層は色素を吸着していないので、多孔質絶縁層において光吸収は殆ど生じない。
また、多孔質絶縁層中には十分大きな空隙が生じるので、色素増感型光電変換素子中において、電解液が多孔質絶縁層内に浸透し、電解液中のイオンおよび色素間の電子のやり取りが効率的に行われる。
そして、本発明の製造法によって製造された光入射側電極を組み込んだ光増感型光電変換素子においては、従来よりも高い光-電気エネルギー変換効率(PCE)が得られる。

【0022】
以上のように、本発明によれば、多孔質半導体層(第1の半導体微粒子層)と多孔質絶縁層(第2の半導体微粒子層)の2層構造を、電気泳動工程を2回繰り返した後、1回の熱処理を行うだけで形成することができ、さらに、熱処理後の多孔質半導体層および多孔質絶縁層が積層された透光性導電基板を色素分散溶液中に浸漬するだけで、多孔質半導体微粒子層に選択的に色素を吸着させることができ、従来法のように多孔質絶縁層に吸着された色素を除去する必要がない。
こうして、本発明によれば、塗布、乾燥および焼成の工程を繰り返す従来法と比べて、色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造を短時間かつ低コストで行える。

【0023】
次に、本発明による色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法を評価するために実験を行った。実験の内容は次のとおりである。
[実験1]
(i)TiOナノ粒子(TNP)の合成
チタン酸テトライソプロピル(TTIP)と、水熱分解反応速度を遅延させるアセチルアセトン(ACAC)をモル比1:1で混合し、TTIP溶液とした。次いで、このTTIP溶液に、水溶性界面活性剤として0.1モルのラウリルアミン塩酸塩(LAHC)水溶液をモル比4:1で混合し、沈殿を生じさせた。
そして、この混合液を恒温槽中においてマグネットスターラによって40℃で3~5日間撹拌することで沈殿物をすべて溶かし、その後、80℃で加水分解および重縮反応を進行させることで、アナターゼ型TNP(平均粒径5nm)のゲル状の固形物を得た。

【0024】
(ii)TiO微粒子の分級
合成されたTNPから界面活性剤を取り除くため、分散媒(2-プロパノール)中にTNPを分散させて遠心管に封入し、10000rpmで遠心分離を行い、TNPを分離沈殿させ上澄み液を除去した。この洗浄操作を数回繰り返すことにより、粒子径の揃ったTNP粒子群(平均粒径5nm)を得た。
また、市販のP25微粒子(デグッサ製:アナターゼ型とルチル型の混合比が4:1、平均粒径20nm)を水に分散させて遠心管に封入し、前と同様に遠心分離を行うことによって、粒子径の揃ったP25微粒子群(平均粒径20nm)を得た。

【0025】
(iii)コロイドの形成
・第1のコロイド
分級によって得られた2種類のTiO微粒子群(TNP、PM25)をそれぞれ0.4gづつ50ccのエタノール中に加え、マグネットスターラにより5分間撹拌後、超音波を5分間照射し、再びマグネットスターラにより5分間撹拌し、第1のコロイドを作製した。
・第2のコロイド
市販のTiO微粒子群(高純度化学製:アナターゼ型、平均粒径1μm)を0.8g、50ccのエタノール中に加え、マグネットスターラによる5分間の拡散、および5分間の超音波照射し、再びマグネットスターラにより5分間撹拌し、第2のコロイドを作製した。

【0026】
(iv)電気泳動による半導体微粒子の積層
第1のコロイド中に、透光性導電基板としてのFTOガラス基板と、アルミニウム板とを15mmの間隔をあけて挿入した後、第1のコロイドの温度を25℃に維持しつつ、FTOガラス基板を陰極とし、アルミニウム板を陽極として、泳動電流密度0.1mA/cmで60s電気泳動を行い、FTOガラス基板の透明導電膜上に第1の半導体微粒子層を積層させた。

【0027】
次いで、第2のコロイド中に、陽極として、第1の半導体微粒子層を積層させたFTOガラス基板と、陰極としてアルミニウム板を挿入し、電極板の間隔を15mmとして、第2のコロイドの温度を25℃に維持しつつ、泳動電流密度0.02mA/cmで電気泳動を行い、FTOガラス基板の第1の半導体微粒子層上に第2の半導体微粒子層を積層させた。

【0028】
(v)基板の熱処理
得られた基板の第1および第2の半導体微粒子層の粒子間のネッキングの強化および不純物の除去のため、アニーリング処理を行った。このアニーリング処理は、大気雰囲気中において、450℃で30分間行った。
(vi)色素の吸着
増感色素としてN719(Cis-di(thiocyanate)bis(2,2’-bipyridy 1-4,4’-di-carboxy-late) - ruthenium (II) bis - tetra - butylammonium)と呼ばれるルテニウム金属錯体色素を用い、これを濃度0.6mMとなるようにエタノール中に溶解させて色素分散溶液を調製した。
そして、熱処理後の基板を、この色素分散溶液中に、溶液の温度を40℃に保った状態で72時間浸漬させることによって、第1の半導体微粒子層中に選択的に色素を吸着させ、色素増感型光電変換素子の光入射側電極を作製した。

【0029】
作製した光入射側電極の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察した。図3はこのSEM画像を示したものであり、(A)は断面の全体の画像であり、(B)および(C)は、それぞれ、(A)中の領域(II)および(III)の拡大画像である。
図3(A)において、(I)はFTOガラス基板の透明導電膜であり、(II)は第1の半導体微粒子層であり、(III)は第2の半導体微粒子層である。

【0030】
[実験2]
(i)TiOナノ粒子(TNP)の合成
チタン酸テトライソプロピル(TTIP)と、水熱分解反応速度を遅延させるアセチルアセトン(ACAC)をモル比1:1で混合し、TTIP溶液とした。次いで、このTTIP溶液に、水溶性界面活性剤として0.1モルのラウリルアミン塩酸塩(LAHC)水溶液をモル比4:1で混合し、沈殿を生じさせた。
そして、この混合液を恒温槽中においてマグネットスターラによって40℃で3~5日間撹拌することで沈殿物をすべて溶かし、その後、80℃で加水分解および重縮反応を進行させることで、アナターゼ型TNP(平均粒径5nm)のゲル状の固形物を得た。

【0031】
(ii)TiO微粒子の分級
合成されたTNPから界面活性剤を取り除くため、分散媒(2-プロパノール)中にTNPを分散させて遠心管に封入し、10000rpmで遠心分離を行い、TNPを分離沈殿させ上澄み液を除去した。この洗浄操作を数回繰り返すことにより、粒子径の揃ったTNP粒子群(平均粒径5nm)を得た。
また、市販のP25微粒子(デグッサ製:アナターゼ型とルチル型の混合比が4:1、平均粒径20nm)を水に分散させて遠心管に封入し、前と同様に遠心分離を行うことによって、粒子径の揃ったP25微粒子群(平均粒径20nm)を得た。

【0032】
(iii)コロイドの形成
・第1のコロイド
分級によって得られた2種類のTiO微粒子群(TNP、PM25)をそれぞれ0.4gづつ50ccのエタノール中に加え、マグネットスターラにより5分間撹拌後、超音波を5分間照射し、再びマグネットスターラにより5分間撹拌し、第1のコロイドを作製した。
・第2のコロイド
市販のTiO微粒子群(高純度化学製:アナターゼ型、平均粒径1μm)を1.6g、50ccのエタノール中に加え、マグネットスターラによる5分間の拡散、および5分間の超音波照射し、再びマグネットスターラにより5分間撹拌し、第2のコロイドを作製した。

【0033】
(iv)電気泳動による半導体微粒子の積層
第1のコロイド中に、透光性導電基板としてのFTOガラス基板と、アルミニウム板とを15mmの間隔をあけて挿入した後、第1のコロイドの温度を25℃に維持しつつ、FTOガラス基板を陰極とし、アルミニウム板を陽極として、泳動電流密度0.1mA/cmで電気泳動を行い、FTOガラス基板の透明導電膜上に第1の半導体微粒子層を積層させた。

【0034】
次いで、第2のコロイド中に、陽極として、第1の半導体微粒子層を積層させたFTOガラス基板と、陰極としてアルミニウム板を挿入し、電極板の間隔を15mmとして、第2のコロイドの温度を25℃に維持しつつ、泳動電流密度0.04mA/cmで12s電気泳動を行い、FTOガラス基板の第1の半導体微粒子層上に第2の半導体微粒子層を積層させた。

【0035】
(v)基板の熱処理
得られた基板の第1および第2の半導体微粒子層の粒子間のネッキングの強化および不純物の除去のため、アニーリング処理を行った。このアニーリング処理は、大気雰囲気中において、450℃で30分間行った。
(vi)色素の吸着
増感色素としてルテニウム金属錯体色素(N719)を用い、これを濃度0.6mMとなるようにエタノール中に溶解させて色素分散溶液を調製した。
そして、熱処理後の基板を、この色素分散溶液中に、溶液の温度を40℃に保った状態で72時間浸漬させることによって、第1の半導体微粒子層中に選択的に色素を吸着させ、色素増感型光電変換素子の光入射側電極を作製した。

【0036】
作製した光入射側電極の断面をSEMによって観察した。図4はこのSEM画像を示したものであり、(A)は断面の全体の画像であり、(B)および(C)は、それぞれ、(A)中の領域(II)および(III)の拡大画像である。
図4(A)において、(I)はFTOガラス基板の透明導電膜であり、(II)は第1の半導体微粒子層であり、(III)は第2の半導体微粒子層である。

【0037】
図3および図4から、FTOガラス基板の透明導電膜(I)上に、第1の半導体微粒子層(II)(粒径5~20nm)および第2の半導体微粒子層(III)(粒径100~200nm)が順次積層されていることがわかる。

【0038】
また、作製した光入射側電極を、FTOガラス基板側および第2の半導体微粒子層側のそれぞれから目視により観察し、層構造の透明性を調べた結果、第2の半導体微粒子層には殆ど色素吸着が見られないことが確認できた。
なお、実験1で作製した光入射側電極を光入射面側から撮影した写真画像を図5(A)に、また第2の半導体微粒子層側から撮影した写真画像を図5(B)にそれぞれ示した。

【0039】
次に、実験1で作製した光入射側電極を用いて色素増感型太陽電池を作製した。図6に、作製した太陽電池の構成を概略的に示す。なお、図6中、図2に示したものと同じ構成要素には同一番号を付した。
図6を参照して、透明導電膜8a上にPtの薄膜8bをスパッタしたFTO基板8を、光入射側電極3、5、7に対向させて配置するとともに、それらの間に、スペーサー9として、中央に開口部を有する厚さ25μmのハイミラン(登録商標)の板を挟み、熱圧着によってそれらを互いに接着した。
そして、FTO基板8に穴(直径1mm)を形成し、この穴から電解液10を注入し、その後、穴をカプトンテープによって封止することで、光入射側電極3、5、7を陰極、FTO基板8を陽極とする色素増感型太陽電池とした。

【0040】
この色素増感型太陽電池の光入射面に、標準光源として、校正されたソーラシミュレータ(SAN-EI ELECTRIC, XES-40S1)の光を照射し、太陽電池の電流密度-電圧特性を測定した。
また、比較例として、本発明の製造法中、第2の半導体微粒子層の積層プロセスを省略し、第2の半導体微粒子層(多孔質絶縁層)を有しない光入射側電極を作製した後、前と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、得られた色素増感型太陽電池の電流密度-電圧特性を同様にして測定した。

【0041】
これらの測定結果を図7のグラフに示した。図7中、XおよびYは、それぞれ、本発明の実施例、および比較例(多孔質絶縁層無し)のグラフを示している。
図7のグラフから、本発明の製造法によって製造した、多孔質絶縁層を有する光入射側電極を用いた色素増感型太陽電池によれば、大きな短絡電流密度が得られることがわかった。
なお、このグラフに基づいて算出した、光-電気エネルギー変換効率(PCE)は、本発明の実施例で8.0%、比較例で6.3%となった。

【0042】
図8は、本発明の別の実施例による色素増感型光電変換素子の光入射側電極の製造法のフロー図である。この実施例は、図1の実施例では第1および第2の半導体微粒子群のコロイドを別々に準備して電気泳動を行うのに対し、第1および第2の半導体微粒子群を混合したコロイドを用いて電気泳動を行う点で、図1の実施例と異なるだけである。
よって、以下では、図1の実施例と重複する部分の説明は省略する。

【0043】
図8の実施例では、まず、容器中において、所定の平均粒径を有する第1の半導体粒子群と、第1の半導体粒子群の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する第2の半導体粒子群を分散媒中に混ぜることでコロイドを形成する(図8のステップS1)。

【0044】
そして、コロイド中に、透光性導電基板が一方の電極をなす一対の電極を挿入し、この一対の電極間に、透光性導電基板が陰極となるように電流を流して電気泳動を行い、透光性導電基板の透明導電膜上に第1の半導体微粒子を積層する(図8のステップS2)。

【0045】
次いで、一対の電極間に、透光性導電基板が陽極となるように電流を流して電気泳動を行い、透光性導電基板の第1の半導体微粒子層の上に第2の半導体微粒子を積層する(図8のステップS3)。

【0046】
そして、ステップS3で得られた透光性導電基板を熱処理し(図8のステップS4)、その後、容器中において色素を分散媒中に溶解させ、この溶液中に、熱処理後の透光性導電基板を浸漬することによって、この透光性導電基板の第1の半導体微粒子層のみに色素を吸着させる(図8のステップS5)。そして、ステップS5で得られた透光性導電基板を乾燥させ(図8のステップS6)、色素増感型光電変換素子の光入射側電極を得る。
この実施例においても、図1の実施例と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 容器
2 第1のコロイド
3 透光性導電基板
3a 透明導電膜
4 電極
5 第1の半導体微粒子層
6 第2のコロイド
7 第2の半導体微粒子層
8 FTO基板
8a 透明導電膜
8b Ptの薄膜
9 スペーサ
10 電解液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7