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明細書 :高いゼ—ベック係数と高い電気伝導度を有する複合酸化物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3069701号 (P3069701)
登録日 平成12年5月26日(2000.5.26)
発行日 平成12年7月24日(2000.7.24)
発明の名称または考案の名称 高いゼ—ベック係数と高い電気伝導度を有する複合酸化物
国際特許分類 C01G 51/00      
H01L 35/22      
FI C01G 51/00 A
H01L 35/22
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願平11-239123 (P1999-239123)
出願日 平成11年8月26日(1999.8.26)
審査請求日 平成11年8月26日(1999.8.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000001144
【氏名又は名称】工業技術院長
発明者または考案者 【氏名】舟橋 良次
【氏名】松原 一郎
【氏名】袖岡 賢
個別代理人の代理人 【識別番号】220000323、【氏名又は名称】220000323 工業技術院大阪工業技術研究所長
審査官 【審査官】大工原 大二
参考文献・文献 特開 平6-163080(JP,A)
特開 平4-292904(JP,A)
特開 平4-111369(JP,A)
調査した分野 C01G 51/00
H01L 35/22
要約 【課題】毒性が少なく、存在量の多い元素により構成され、耐熱性、化学耐久性等に優れ、高い熱電変換効率を有する材料を提供する。
【解決手段】一般式:Ca3-xBixCo4y(0≦x≦1、8.5≦y≦10)で表され、ゼーベック係数90μV/K以上、電気伝導度5.0×103S/m以上であることを特徴とする複合酸化物。
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式:Ca3-xBixCo4y0<x≦、8.5≦y≦10)で表され、ゼーベック係数90μV/K以上、電気伝導度5×103S/m以上であることを特徴とする複合酸化物。

【請求項2】
請求項1に記載された一般式において、0.2≦x≦0.8である請求項1に記載の複合酸化物。

【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合酸化物からなるP型熱電変換材料。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、高いゼーベック係数と高い電気伝導度を有する複合酸化物、及び該酸化物を用いた熱電変換材料に関する。

【0002】

【従来の技術】我が国では、一次供給エネルギーからの有効なエネルギーの得率は30%程度しかなく、約70%ものエネルギ-を最終的には熱として大気中に廃棄している。また、工場やごみ焼却場などにおいて燃焼により生ずる熱も他のエネルギーに変換されることなく大気中に廃棄されている。このように、我々人類は非常に多くの熱エネルギーを無駄に廃棄しており、化石エネルギーの燃焼等の行為から僅かなエネルギーしか獲得していない。

【0003】
エネルギーの得率を向上させるためには、大気中に廃棄されている熱エネルギーを利用できるようすることが有効である。そのためには熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電変換は有効な手段である。この熱電変換とは、ゼーベック効果を利用したものであり、熱電変換材料の両端で温度差をつけることで電位差を生じさせて発電を行うエネルギー変換法である。この熱電発電では、熱電変換材料の一端を廃熱により生じた高温部に配置し、もう一端を大気中(室温)に配置して、それぞれの両端に導線を接続するだけで電気が得られ、一般の発電に必要なモーターやタービン等の可動装置は全く必要ない。このためコストも安く、さらに燃焼等によるガスの排出も無く、熱電変換材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる。

【0004】
このように、熱電発電は今後心配されるエネルギー問題の解決の一端を担う技術として期待されているが、熱電発電を実現するためには、高い熱電変換効率を有し、耐熱性、化学的耐久性等に優れた熱電変換材料が必要となる。現在、高い熱電変換効率を有する物質として知られているものは、金属間化合物であり、その中でも最も高い変換効率を有する材料は、Bi2Te3である。しかしながら、Bi2Te3の熱電変換効率は高々10%程度であり、また200℃以下の温度でしか利用できない。しかも、Teが稀少元素であり、毒性を有することを考慮すると、実用材としての応用には限界がある。このため、毒性が少なく、構成元素の存在量が多く、さらには耐熱性、化学的耐久性等に優れ、高い熱電変換効率を有する材料の開発が期待されている。

【0005】
耐熱性や化学的耐久性に優れた材料としては金属酸化物が考えられるが、金属酸化物の熱電変換効率は、Bi2Te3と比較して一桁低いのが現状である。これは、1×103S/m以上の電気伝導度を有する酸化物では、ゼーベック係数が数十μV/K程度の低い値しか示さないためである。

【0006】

【発明が解決しようとする課題】本発明の主な目的は、毒性が少なく、存在量の多い元素により構成され、耐熱性、化学的耐久性等に優れ、高い熱電変換効率を有する材料を提供することである。

【0007】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した熱電変換材料の現状に鑑みて種々の研究を重ねた結果、Bi、Ca、Co及びOを構成元素として含む特定組成の複合酸化物が、高いゼーベック係数と電気伝導度を有するものであり、熱電変換素子における熱電変換材料として有用であることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。

【0008】
即ち、本発明は、下記の複合酸化物及び熱電変換材料を提供するものである。
1.一般式:Ca3-xBixCo4y(0≦x≦1、8.5≦y≦10)で表され、ゼーベック係数90μV/K以上、電気伝導度5×103S/m以上であることを特徴とする複合酸化物。
2.上記項1に記載された一般式において、0<x≦1である上記項1に記載の複合酸化物。
3.上記項1に記載された一般式において、0.2≦x≦0.8である上記項1に記載の複合酸化物。
4.上記項1~3のいずれかに記載の複合酸化物からなるP型熱電変換材料。

【0009】

【発明の実施の形態】本発明の複合酸化物は、一般式:Ca3-xBixCo4y(0≦x≦1、8.5≦y≦10)で表されるものである。

【0010】
この様な複合酸化物は、酸素欠損ペロブスカイトであるCa2Co25と同様のペロブスカイト型結晶構造を有するものである。この点を明確にするために、後述する実施例1で得た複合酸化物についての粉末X線回折パターンを図1に示す。このX線回折パターンによれば、不純物相によるピークが観察されないことから、該複合酸化物は、Ca2Co25のCaサイトに欠損が生じたものであることが判る。図2に本発明の複合酸化物の結晶構造の模式図を示す。

【0011】
上記特定の組成を有する複合酸化物は、90μV/K以上のゼーベック係数と5×103S/m以上の電気伝導度を有するものである。この様に高いゼーベック係数と高い電気伝導度を同時に有することにより、本発明の複合酸化物を熱電変換素子の熱電変換材料として用いた場合に、高い熱電変換効率を発揮することができる。更に、該複合酸化物は、耐熱性、化学的耐久性等が良好であり、しかも構成元素は、毒性が少なく、存在量が多いことから、熱電変換材料として実用性の高いものである。

【0012】
本発明の複合酸化物では、上記一般式において、xの値は0以上、1以下であるが、特に、0<x≦1であって、複合酸化物中にBiが必須の構成成分として含まれる場合には、高いゼーベック係数を示すものとなる。更に、0.2≦x≦0.8の場合には、ゼーベック係数が非常に高く、熱電変換材料として特に有用性の高いものとなる。

【0013】
上記一般式において、y=9の場合に、酸素量が化学量論量となるが、8.5≦y≦10程度の範囲においても、目的とする複合酸化物を得ることができる。

【0014】
本発明の複合酸化物は、原料物質を所定の配合比率で混合し、酸化性雰囲気中で焼成することによって得ることができる。

【0015】
原料物質は、焼成により目的とする複合酸化物を形成し得るものであれば特に限定されず、金属単体、酸化物、各種化合物(炭酸塩等)等を使用できる。例えばBi源としては、酸化ビスマス(Bi23,Bi25)、硝酸ビスマス(Bi(NO33)、塩化ビスマス(BiCl3)、水酸化ビスマス(Bi(OH)3)、トリプロポキシビスマス(Bi(OC373)等を使用でき、Ca源としては、酸化カルシウム(CaO)、塩化カルシウム(CaCl2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO32)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、ジメトキシカルシウム(Ca(OCH32)、ジエトキシカルシウム(Ca(OC252)、ジプロポキシカルシウム(Ca(OC372)等を使用でき、Co源としては酸化コバルト(CoO,Co23,Co34)、塩化コバルト(CoCl2)、炭酸コバルト(CoCO3)、硝酸コバルト(Co(NO32)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、ジプロポキシコバルト(Co(OC372)等を使用できる。

【0016】
焼成手段は特に限定されず、電気加熱炉、ガス加熱炉等任意の手段を採用でき、酸素気流中、空気中等の酸化性雰囲気中で焼成すればよい。

【0017】
焼成温度及び焼成時間については、目的とする複合酸化物が形成される条件とすればよく、特に限定されないが、通常、920~1100℃程度で24時間~48時間程度焼成すればよい。尚、原料物質として炭酸塩や有機化合物等を用いる場合には、焼成する前に予め仮焼して原料物質を分解させた後、焼成して目的の複合酸化物を形成することが好ましい。例えば、原料物質として、炭酸塩を用いる場合には、800~900℃程度で24時間程度焼成した後、上記した条件で焼成すればよい。

【0018】
生成する複合酸化物中の酸素量は、焼成時の酸素分圧、焼成温度、焼成時間等により制御することができ、酸素分圧が高い程、上記一般式におけるyの値を高くすることができる。

【0019】
この様にして得られる本発明の複合酸化物は、高いゼーベック係数と高い電気伝導度を同時に有するものであり、熱電変換素子の熱電変換材料として有効に用いることができる。

【0020】
本発明の複合酸化物を熱電変換材料として用いた熱電変換素子の一例の模式図を図3に示す。熱電変換素子の構造は、公知の熱電変換素子と同様であり、高温部用基板1、低温部用基板2、P型熱電変換材料3、N型熱電変換材料4、電極5、導線6等により構成される熱電変換素子において、本発明の複合酸化物をP型熱電変換材料として用いればよい。

【0021】

【発明の効果】本発明の複合酸化物は、高いゼーベック係数と高い電気伝導度を有し、耐熱性、化学耐久性等に優れた複合酸化物である。

【0022】
該複合酸化物は、従来の金属間化合物材料では不可能であった、高温での熱電変換材料としての応用が可能である。従って、本発明の酸化物材料を熱電発電システム中に組み込むことにより、これまで大気中に廃棄されていた熱エネルギーを有効に利用することが可能になると期待される。

【0023】

【実施例】以下、実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
実施例1
Bi源として酸化ビスマス(Bi23)、Ca源として炭酸カルシウム(CaCO3)、及びCo源として酸化コバルト(Co34)を用い、Ca:Bi:Co(モル比)=2.50:0.50:4.00となる様に、原料物質を十分に混合した後、アルミナルツボに入れて、電気炉中で900℃で24時間仮焼した。この仮焼物を粉砕し、加圧成形後、酸素気流中で、960℃で24時間焼成して、複合酸化物を合成した。得られた複合酸化物は、化学式:Ca2.5Bi0.5Co49.3で表されるものであった。

【0024】
得られた複合酸化物の100℃~700℃におけるゼーベック係数(S)の温度依存性を示すグラフを図4に示す。図4から、この複合酸化物が、100℃~700℃の温度範囲において、100μV/K以上のゼーベック係数を示すことが判る。

【0025】
更に、該複合酸化物について、直流四端子法により測定した電気伝導度(σ)の温度依存性を示すグラフを図5に示す。図5から、該複合酸化物の電気伝導度は、7.0×103S/mを超える高い値を示し、温度の上昇に伴って増加して、700℃では1×104S/mという高い値となることが判る。

【0026】
また、該複合酸化物について、ゼーベック係数(S)、電気伝導度(σ)、及びレーザーフラッシュ法で測定した熱伝導率(κ)から算出した性能指数Z(=S2σ/κ)に温度(T)をかけたZTの温度依存性を示すグラフを図6に示す。ZTは、一般に熱電変換材料の変換効率を評価する基準として採用されている指数である。図6から、本発明の複合酸化物は高い熱電変換効率を有することが判る。
実施例2~10
一般式:Ca3-xBixCo4yにおいて、下記表1に示すx値となる様に原料物質を混合し、仮焼温度と焼成条件を表1に記載した様に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合酸化物を製造した。

【0027】
得られた各複合酸化物について、実施例1と同様にして、700℃におけるゼーベック係数(S)、電気伝導度(σ)及びZT値を測定した結果を表1に示す。

【0028】

【表1】
JP0003069701B1_000002t.gif【0029】以上の結果から、本発明の複合酸化物は、高いゼーベック係数と高い電気伝導度を有し、熱変換効率が良好であることが判る。
図面
【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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