TOP > 国内特許検索 > 植物系材料の成形体の製造方法及びその成形体 > 明細書

明細書 :植物系材料の成形体の製造方法及びその成形体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5500541号 (P5500541)
公開番号 特開2010-052426 (P2010-052426A)
登録日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
発明の名称または考案の名称 植物系材料の成形体の製造方法及びその成形体
国際特許分類 B27N   5/00        (2006.01)
B27K   5/00        (2006.01)
B27M   3/00        (2006.01)
FI B27N 5/00 C
B27K 5/00 F
B27M 3/00 J
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2009-178319 (P2009-178319)
出願日 平成21年7月30日(2009.7.30)
優先権出願番号 2008196362
優先日 平成20年7月30日(2008.7.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年2月24日(2011.2.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】神代 圭輔
【氏名】金山 公三
【氏名】三木 恒久
【氏名】杉元 宏行
個別代理人の代理人 【識別番号】100102004、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 政彦
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 特開2008-36941(JP,A)
特開平7-256611(JP,A)
特開2000-317696(JP,A)
特開昭62-164536(JP,A)
特開平2-261623(JP,A)
調査した分野 B27N 1/00 - 9/00
B29D 9/00
B32B 1/00 - 35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
シリンダー、該シリンダー内に挿入して材料を加圧するためのポンチ、及びコーン形状金型部から構成される複動のプレス成形手段と、これに付属する加圧手段及び加熱手段を配設した成形装置を用いた前方押出し及び圧縮成形法を適用して、該材料に圧力を加えることにより成形して成形体を製造する方法であって、
1)原材料の植物系材料を、シリンダー部及び金型の一箇所ないし複数箇所に供給し、加圧手段で該材料を直接的に加圧することにより、材料を構成する細胞間に剪断力を作用させて該細胞の位置関係を変化させて材料を変形させ、それによって、材料を金型内の所定の自由空間に移動させ、金型内の該自由空間に充填する、
2)その際に、記複動のプレス成形手段の上下に配置された金型を同じ軸上に沿って複動させて、金型の材料に間接的に圧縮力を加えて該材料を構成する細胞の変形、流動を生じさせることで繊維配向を制御する、
3)その後、金型を加圧することで材料に更に圧縮力を加えて該材料を賦形して一体化する、
4)上記1)~3)の工程により、成形過程において、シリンダー部及び金型に供給された材料が細胞レベルで乖離し、成形後に賦形されて一体化した組織から構成されていて、かつ、原材料の構成成分の熱分解が抑えられている所望の成形体とする、
ことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
植物系材料を、単一ないし複数のバルク体として、金型内に供給する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
金型内に供給する植物系材料の配置及び/又は供給量を調整することにより、得られる成形体の繊維配向を制御する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
成形の温度、圧力、時間及び/又は原材料の含水率を調整することにより、成形体の構成成分の熱分解を抑制する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
植物系材料が、竹、又は木材である、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
薄肉の三次元形状を有する成形体を作製する、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
金型を冷却した後又は冷却せずに、該金型から成形体を取り出す、請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載された製造方法でシリンダー、該シリンダー内に挿入して材料を加圧するためのポンチ、及びコーン形状金型部から構成される複動のプレス成形手段と、これに付属する加圧手段及び加熱手段を配設した成形装置を用いた前方押出し及び圧縮成形法を適用して作製された三次元形状を有する成形体であって、
植物系材料を原料とし、植物系材料のバルク体を構成する細胞がコーン形状金型部で流動後、該金型部のコーン形状に賦形されて一体化した組織構造を有し、成形過程において、シリンダー部及び金型に供給された単一又は複数のバルク体の材料が細胞レベルで乖離し、成形後に賦形されて一体化した組織から構成されていて、かつ、該原材料の構成成分の熱分解が抑えられていることを特徴とする成形体。
【請求項9】
植物系材料が、竹、又は木材である、請求項8に記載の成形体。
【請求項10】
成形体が、薄肉の三次元形状の成形体である、請求項8に記載の成形体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物系材料の成形体の製造方法及びその成形体に関するものであり、更に詳しくは、植物系材料を、型に供給して直接的に加圧し、型内の所定の自由空間に材料を移動させ、該材料を構成する細胞に剪断力を作用させて、その位置関係を変化させて流動させ、型内の上記自由空間に充填し、該材料に間接的に圧縮力を加え、賦形して一体化することにより、所望の薄肉形状の成形体を作製する、該成形体の製造方法及びその製品に関するものである。本発明は、再生産可能な資源として、その活用が高く期待されている木材や竹等の植物系材料を、化学薬品等を使用することなく、簡便な装置及び工程により、三次元形状の薄肉成形体を作製することを可能とする、植物系材料の成形体の新規製造技術及びその製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
木材や竹等の植物系材料は、再生産が可能であり、埋蔵資源である石油を原料として作られるプラスチックに替わる材料として、最近、注目されている材料である。該植物系材料を、所定の三次元形状に成形するために、先行技術として、例えば、圧縮成形木材及びそれを用いた電子機器の外装材に関して、板状の木材を金型で加圧して成形する方法(特許文献1)、が提案されている。
【0003】
また、他の先行技術として、例えば、圧縮木材の成形方法として、棒状の木材を金型で加圧して成形する方法(特許文献2)、木質系の熱硬化性樹脂成形材料の成形方法として、粉末化した木材に樹脂を混入して流動性を持たせ、これを金型に流し込み、冷却・固化させる方法(特許文献3)、等が提案されている。
【0004】
しかしながら、板状の木材や棒状の木材を、金型で加圧して成形する方法では、材料を構成する細胞が、加圧により圧縮されることを利用して木材を変形させるため、その変形量に制約があり、製作可能な形状が限定されるという問題がある。また、木材粉末を原材料とする方法では、木材の粉末化に多大な時間とエネルギーを要し、更に、混入する樹脂の使用によって、環境負荷が増大するという問題がある。
【0005】
これまで、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を解決するとともに、木材や竹等の植物系材料を、特殊な装置及び工程、化学薬品等を用いることなく、簡便な手段及び方法で、効率よく所望の形状に成形することを可能とする新しい植物系材料の成形体の製造技術の開発を行って来た。
【0006】
その過程で、本発明者らは、植物系材料を金型に供給し、プレス手段で加圧し、金型内の所定の自由空間に材料を移動させ、構成細胞間に剪断力を作用させ、細胞の位置関係を変化させて変形させ、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加え、賦形して一体化し、例えば、深底構造等を有する成形体とすることにより、簡便な装置及び工程により、三次元形状の所望の形状に成形する方法を既に提案している(特許文献4、非特許文献1)。
【0007】
しかし、先に提案した、深底構造等を有する成形体の成形技術には、作製可能な成形体の形状及び繊維配向の制御が制限されるという問題点があり、当技術分野においては、成形体の形状及び繊維配向の制御が制限されることがなく、上記諸問題を解決することを可能とする新しい植物系材料の成形体の製造技術及びその製品を開発することが強く要請されていた。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2006-076055号公報
【特許文献2】特開2004-009567号公報
【特許文献3】特開2002-146195号公報
【特許文献4】特開2008-036941号公報
【0009】

【非特許文献1】山下 修、横地秀行、三木恒久、金山公三:塑性と加工、第48巻 第555号、(2007-4)、334-338
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を確実に解決し得るとともに、木材や竹等の植物系材料から、特殊な装置及び工程、化学薬品等を用いることなく、簡便な手段及び方法で、効率よく所望の形状に成形することを可能とする新しい植物系材料の成形体の製造技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた。
【0011】
その結果、本発明者らは、植物系材料を、その繊維配向を考慮して、金型内の一箇所又は複数箇所に供給し、複動のプレス成形手段[以下、複動(の)プレス手段と記載することがある。]で直接的に加圧し、金型内の所定の自由空間に材料を移動させ、該材料を構成する細胞間に剪断力を作用させて、細胞の位置関係を変化させて流動させ、金型内の上記空間に充填し、間接的に圧縮力を加え、賦形して一体化することにより、簡便な装置及び工程により、例えば、薄肉成形体等の任意の三次元形状及び繊維配向を有する成形体を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、繊維配向の制御が可能で、任意の三次元形状の成形体の作製が可能な、竹、木材等の植物系材料の新規成形体の製造方法及びその成形体を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記成形体の製造方法により、木材、竹等の植物系材料が本来的に有する繊維構造を成形体の内部及び表面に反映させた構造を有する成形体製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)シリンダー、該シリンダー内に挿入して材料を加圧するためのポンチ、及びコーン形状金型部から構成される複動のプレス成形手段と、これに付属する加圧手段及び加熱手段を配設した成形装置を用いた前方押出し及び圧縮成形法を適用して、該材料に圧力を加えることにより成形して成形体を製造する方法であって、
1)原材料の植物系材料を、シリンダー部及び金型の一箇所ないし複数箇所に供給し、加圧手段で該材料を直接的に加圧することにより、材料を構成する細胞間に剪断力を作用させて該細胞の位置関係を変化させて材料を変形させ、それによって、材料を金型内の所定の自由空間に移動させ、金型内の該自由空間に充填する、
2)その際に、記複動のプレス成形手段の上下に配置された金型を同じ軸上に沿って複動させて、金型の材料に間接的に圧縮力を加えて該材料を構成する細胞の変形、流動を生じさせることで繊維配向を制御する、
3)その後、金型を加圧することで材料に更に圧縮力を加えて該材料を賦形して一体化する、
4)上記1)~3)の工程により、成形過程において、シリンダー部及び金型に供給された材料が細胞レベルで乖離し、成形後に賦形されて一体化した組織から構成されていて、かつ、原材料の構成成分の熱分解が抑えられている所望の成形体とする、
ことを特徴とする成形体の製造方法。
(2)植物系材料を、単一ないし複数のバルク体として、金型内に供給する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(3)金型内に供給する植物系材料の配置及び/又は供給量を調整することにより、得られる成形体の繊維配向を制御する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(4)成形の温度、圧力、時間及び/又は原材料の含水率を調整することにより、成形体の構成成分の熱分解を抑制する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(5)植物系材料が、竹、又は木材である、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(6)薄肉の三次元形状を有する成形体を作製する、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(7)金型を冷却した後又は冷却せずに、該金型から成形体を取り出す、前記(1)に記載の成形体の製造方法。
(8)前記(1)~(7)のいずれか1項に記載された製造方法でシリンダー、該シリンダー内に挿入して材料を加圧するためのポンチ、及びコーン形状金型部から構成される複動のプレス成形手段と、これに付属する加圧手段及び加熱手段を配設した成形装置を用いた前方押出し及び圧縮成形法を適用して作製された三次元形状を有する成形体であって、
植物系材料を原料とし、植物系材料のバルク体を構成する細胞がコーン形状金型部で流動後、該金型部のコーン形状に賦形されて一体化した組織構造を有し、成形過程において、シリンダー部及び金型に供給された単一又は複数のバルク体の材料が細胞レベルで乖離し、成形後に賦形されて一体化した組織から構成されていて、かつ、該原材料の構成成分の熱分解が抑えられていることを特徴とする成形体。
(9)植物系材料が、竹、又は木材である、前記(8)に記載の成形体。
(10)成形体が、薄肉の三次元形状の成形体である、前記(8)に記載の成形体。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、木材、竹等の植物系材料に、金型内で圧力を加えることにより成形し、成形体を製造する方法であって、植物系材料を金型内の一箇所又は複数箇所に、植物系材料の繊維配向を考慮して供給し、複動プレス手段により金型の動作を制御しつつ加圧し、金型内で所定の自由空間に材料を移動させ、材料を構成する細胞間に剪断力を作用させて、該細胞の位置関係を変化させて変形、流動させ、金型内の上記空間に充填し、間接的に圧縮力を加え、賦形して一体化することにより、所望の三次元形状の成形体とすることを特徴とするものである。
【0015】
本発明では、成形前の原材料の植物系材料が、単一又は複数のバルク体として金型に供給されること、また、金型に供給する成形前の原材料の植物系材料の配置を調整することにより、得られる成形体の繊維配向を制御して所望の繊維配向を有する成形体とすること、を好ましい実施の態様としている。
【0016】
また、本発明では、成形時の材料の流動化による材料の流れを制御することにより、得られる成形体の繊維配向を制御すること、また、植物系材料を常温又は加熱下で加圧すること、また、成形の温度、圧力、時間及び原材料含水率を調整することにより、成形体の熱分解を抑え、材料の繊維構造を成形体に反映させること、また、植物系材料が、竹、又は木材であること、また、薄肉の任意形状を有する成形体を作製すること、更に、金型を冷却することなく金型から成形体を取り出すこと、を好ましい実施の態様としている。
【0017】
本発明では、上述のように、上記植物系材料を、金型に供給して、複動プレス手段で金型の動作を制御しつつ加圧し、金型内で所定の自由空間に材料を移動させ、材料を構成する細胞に剪断力を作用させて、該細胞の位置関係を変化させ、全体形状を大きく変形、流動させて、金型内の上記空間に充填し、圧縮力を加えて、賦形して一体化することにより、所望の三次元形状の成形体とする。
【0018】
本発明では、植物系材料に圧力を加えることにより成形して、薄肉の任意形状の成形体を作製するが、この場合、成形法としては、材料を加圧方向と同一方向へ移動させて成形する前方押し出し成形法及び圧縮成形法使用される。しかし、これらと同等ないし類似の成形法であれば、同様に使用することができる。
【0019】
ここで、材料の構成細胞に剪断力を作用させて、該細胞の位置関係を変化させるとは、細胞間に剪断力を加え、細胞と細胞をその界面でずらし、細胞間の位置関係を変化させて流動させ、全体として大きな変形を与えることを意味する。本発明において、植物系材料とは、太陽エネルギーと、水、土、及び空気を使って植物が合成した再生可能な有機性資源を意味する。本発明の原材料である、植物系材料としては、特に限定されるものではなく、本発明は、植物系材料全般に対して適用可能である。植物系材料として、具体的には、例えば、木材、竹、草本、農業廃棄物が、特に好適な材料として例示される。
【0020】
本発明の植物系材料の成形体の製造方法によると、金型内で、所定の自由空間に材料を構成する細胞を移動させて、該細胞の位置関係を変化させて流動させるため、材料は、金型に投入できる大きさであれば、その形状は、特に制限されるものではない。また、成形前の植物系材料が、金型内の一箇所又は複数箇所において、複数に分割、分離していても、成形過程において、材料が細胞レベルで乖離し、成形後には一体化するため、成形前の植物系材料は、単一又は複数のバルク体として金型に供給することが可能である。
【0021】
本発明の成形体の製造方法では、植物系材料が、単一である場合も、複数に分割、分離している場合も、同様に適用可能である。本発明の成形体の製造方法を、所定の繊維構造を持つ植物系材料に適用した場合、成形過程で、繊維がほとんど破壊することがないため、成形体の内部及び表面に、繊維構造を反映させた成形体製品とすることが可能である。また、成形前の材料の配置が、成形後の繊維配向に影響を与えるため、成形前の材料の配置を調整することにより、成形体の繊維配向を制御することが可能である。
【0022】
繊維は、流動化による流動の方向に配向し易いため、成形時の、金型内での材料の流動方向(流れる方向)を制御することにより、得られる成形体の繊維配向を制御することができる。例えば、材料を配置する際に、流動の方向は、繊維に直行する方向に流れやすいということを考慮し、材料を配向させる、あるいは、繊維を縦に配向させたい場合は、材料を上下に充填させることにより、繊維を縦に配向させることができる。この場合、例えば、金型に、成形時の材料の流れ方を制御するための、突條等の任意の制御手段を配置することが好ましい。
【0023】
次に、本発明の植物系材料の成形体の製造方法について詳しく説明する。本発明は、植物系材料を、金型に供給して、複動のプレス手段で金型の動作を制御し、植物系材料に、常温又は加熱下で圧力を加えることにより、金型内で、所定の自由空間に材料を移動させて、材料を構成する細胞に剪断力を作用させて、該細胞の位置関係を変化させて流動させ、金型内の上記自由空間に充填し、圧縮力を加え、賦形して一体化することにより、所望の三次元形状の成形体とすることを特徴としている。
【0024】
本発明の成形体の製造方法では、材料の変形は、材料を構成する細胞の圧縮に加え、細胞間に剪断力を加え、細胞と細胞をその界面でずらし、細胞を移動させ、細胞間の位置関係を変化させることによっても引き起こされる。そのため、本発明では、従来、通常の板状木材や、棒状木材で行われていた、細胞の内腔の空隙の圧縮のみを利用した成形法と比較して、非常に大きな変形が可能となる。
【0025】
植物系材料として、竹を用いて成形を行うには、例えば、図1に示される、複動のプレス手段により、金型の動作を制御する装置及びコーン形状の金型を使用し、竹材料を、180℃前後に加熱したシリンダー部及びコーン形状金型部に供給し、約150MPa程度で加圧する方法が好適な方法として例示される。圧力を受けた竹材料は、材料を構成する細胞の位置関係を変化させて変形し、金型内の所定の自由空間に充填される(図1)。
【0026】
図2に、金型内の複数箇所に竹材料が供給される場合の材料の配置例、及びその時の成形品を例示する。成形に際して、細胞の圧縮による変形のみならず、材料を構成する細胞の位置関係が変化することによる変形、流動が起こり、例えば、3個の材料バルク体と放射状及び放射状と直交方向に交互に配置された8個の短冊型材料とが、金型内で最終的に賦形され一体化して、コーン形状の成形品が作製されることが分かる。この場合、金型内に配置する材料バルクの個数及び配置形態は、任意に設定することができる。
【0027】
本発明の成形体の製造方法は、成形温度、成形圧力、材料含水率、成形時間を設定することにより、成形体の性状等を任意に制御することができる。例えば、低温、高荷重、短時間の成形では、成形体の熱分解を抑え、植物系材料が本来的に持つ繊維構造を成形体に反映させることが可能となる。また、本発明では、より高温条件での成形で、材料をある程度熱分解させることにより、材料を軟化させ、成形に必要な荷重を低減することも適宜可能である。
【0028】
従来の植物系材料の成形法では、竹、木材等の植物系材料を、金型に供給して、熱分解を抑制して、材料が本来的に有する繊維構造を成形体に反映させて、任意の三次元形状の薄肉の成形体に成形加工することは困難であった。これに対し、本発明は、植物系材料を、複動のプレス手段で、金型の動作を制御しつつ加圧し、植物系材料を構成する細胞の位置関係を変化させて変形させ、金型の所定の自由空間に充填し、圧縮圧を加え、賦形して一体化することで、成形体の熱分解を抑え、材料の繊維構造を成形体に反映させて、薄肉でコーン形状等の、所望の形状を有する成形体を製造し、提供することを可能とするものである。
【0029】
本発明では、植物系材料に圧力を加えることにより、例えば、薄肉のコーン形状を有する構造体を製造するため、好適には、例えば、図1に示される、シリンダー、該シリンダー内に挿入して材料を加圧するためのポンチ、及び材料を加圧する金型から構成される、複動のプレス成形手段と、これに付属する加圧手段及び加熱手段を配設した装置が用いられる。しかし、これらの大きさ、具体的な形状、構造及び金型の自由空間の形状等は、その目的製品に応じて、任意に設計することができる。
【0030】
また、本発明では、植物系材料の種類、金型に供給する材料バルク体の形状及び大きさ、その含水率、成形の圧力、温度時間等の条件は、植物系材料の種類、成形体の形状及び構造、要求される材料の風合い等に応じて任意に設定することができる。本発明では、例えば、図2に示されるような、コーン形状を有する成形体は、室温~300℃の範囲、1~500MPaの範囲、好適には、例えば、180~200℃の加熱、150MPa以上の圧力の条件で、熱分解を抑制して、数秒から数十秒の短時間で、成形体を製造することが可能である。本発明は、従来法と比べて、高品質の薄肉のコーン形状を有する成形体を数十秒程度の短時間で製造することができる利点を有する。
【0031】
本発明の方法では、材料を、金型内に供給して、加圧手段で加圧する。この場合、通常のプレス成形では、金型内で、材料に対して加圧手段を、直接的に当接させて、プレス付加を行う方式が適用され、材料は、金型及び加圧手段の間で、直接的に加圧及び圧縮されて成形される。これに対して、本発明では、複動のプレス手段で、金型の動作を制御し、材料が逃げる(移動できる)所定の自由空間を形成しておくことで、金型及び加圧手段の間の直接的な加圧及び圧縮作用と、上記所定の自由空間における、間接的な、上記原材料を構成する細胞の移動及び圧縮作用が働くので、金型及び加圧手段による材料の直接的な加圧及び圧縮と、上記所定の自由空間における間接的な材料細胞の移動及び圧縮による成形が、同時的又は段階的に行われる。
【0032】
このように、本発明では、金型及び加圧手段による材料の直接的な加圧及び圧縮作用による成形と、上記所定の自由空間における間接的な加圧による、材料の移動及び圧縮作用による成形とが、一体的に行われるため、複動のプレス手段で、金型の動作を制御すること、及び金型に予め所望の形状及び構造の自由空間を形成しておくことで、その形状及び構造に一体成形された成形体を作製することが可能となる。

【0033】
本発明の方法は、成形手法としては、従来、材料の塑性変形を利用した成形方法として知られている手法であるが、該方法は、例えば、樹脂等の可塑性の高い材料や流動性の高い材料に適用される成形手法であって、竹や木材のような植物系材料に対しては適用し得ないと考えられていた成形手法である。本発明者らは、成形の圧力、温度、原材料含水率、処理時間等の条件を種々検討した結果、これらの植物系材料であっても、過度の熱分解を抑制して、材料の風合いを付与した形で、任意の形態に成形体を製造できることを見出し、植物系材料の新しい成形技術として確立するに至ったものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)植物系材料を簡便な手法及び装置で効率よく成形して任意の三次元形状を有する薄肉成形体を作製する方法及びその成形体を提供することができる。
(2)成形前の植物系材料が、単一でも、複数に分割、分離していても、成形過程で、該材料を一体化させることができる。
(3)成形前の植物系材料の金型における配置・供給量を調整することにより、得られる成形体の繊維配向を制御することができる。
(4)本発明では、循環型資源である木材、竹等の植物系材料のみを原材料としているため、資源問題、廃棄物問題等の環境負荷がない。
(5)植物系材料が本来的に有する材料の繊維構造を反映した成形体を提供することができる。
(6)植物系材料を一箇所又は複数箇所に供給し、複動のプレス手段を用いて成形することによって、薄肉任意形状かつ繊維配向を制御した成形体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の成形体の製造方法における材料供給工程と成形工程の一例を示す。
【図2】原材料の繊維方向とそれを考慮した複数の材料の金型部配置例とシリンダー内配置例及び成形工程により得られる成形品(表側、裏側)の一例を示す。
【図3】原材料の繊維方向を考慮した複数の材料の金型部配置例とシリンダー内配置例の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
植物系材料として竹を使用し、竹の棹部から、直径25mm、厚さ約10mmの円形材料を切り出し、該円形材料を飽水状態にして、実験に供した。成形法として、ポンチ、シリンダー、コーン形状金型部から構成される成形装置を用いた、圧縮及び前方押出し成形法を適用して、上記円形材料を、複動プレス手段で加圧成形した。図1に、本発明の成形体の製造方法における材料供給と成形の一例を示す。
【実施例1】
【0038】
本実施例では、180℃に加熱したシリンダー内のみに円形材料6個を重ねて供給し、コーン形状金型部の動作をプレスで制御しつつ、上記円形材料を、ポンチにより150MPaで加圧し、変形させ、180℃に加熱したコーン形状金型部に流動させ、金型を加圧することで、コーン形状に賦形した。その後、金型を冷却せずに開圧し、成形体を取り出し、コーン形状の薄肉成形体を得た。得られた成形体は、各円形材料を構成する細胞が流動し、一体化した構造を有し、かつ竹の原材料の繊維構造を保っていた。
【実施例2】
【0039】
植物系材料の竹の棹部から、直径25mm、厚さ約10mmの円形材料、及び幅約6mm、厚さ約8mm、長さ約35mmの短冊形材料を切り出し、これらの材料を気乾状態として、実験に供した。成形法として、ポンチ、シリンダー、コーン形状金型部から構成される成形装置を用いた、圧縮及び前方押し出し成形法を適用して、上記材料を、複動プレス手段で加圧成形した(図1)。本実施例では、180℃に加熱したシリンダー内に円形材料3個を、また、コーン形状金型部に短冊形材料4個を供給し、コーン形状金型部の動作をプレスで制御しつつ、上記材料を、ポンチにより150MPaで加圧し、変形させ、コーン形状金型部で流動を生じさせた。
【実施例2】
【0040】
その後、金型を加圧することで、上記材料をコーン形状に賦形した。その後、金型を冷却せずに開圧し、成形体を取り出した。シリンダー部及びコーン形状金型部に供給した材料は、一体化し、コーン形状の成形体を得た。得られた成形体は、各材料を構成する細胞が流動し、一体化した構造を有し、かつ竹材料の繊維構造及び竹材料の風合いを保っていた。
【実施例3】
【0041】
植物系材料の竹の棹部から、直径25mm、厚さ約10mmの円形材料、及び幅約6mm、厚さ約4mm、長さ約35mmの短冊形材料を切り出し、これらの材料を飽水状態にして、実験に供した。成形法として、ポンチ、シリンダー、コーン形状金型部から構成される成形装置を用いた、前方押し出し及び圧縮成形法を適用して、上記材料を、複動プレス手段で加圧成形した(図1)。
【実施例3】
【0042】
本実施例では、180℃に加熱したシリンダー内に円形材料3個を、また、コーン形状金型部に放射状及び放射方向と直行方向に交互に短冊形材料8個を、繊維方向を考慮しつつ供給し、コーン形状金型部の動作をプレスで制御しつつ、上記材料を、ポンチにより150MPaで加圧し、変形させ、180℃に加熱したコーン形状金型部に流動させ、コーン形状金型部で流動を生じさせた。
【実施例3】
【0043】
その後、金型を加圧することで、コーン形状に賦形し、金型を冷却せずに開圧し、成形体を取り出した。シリンダー部及びコーン形状金型部に供給した材料は一体化し、コーン形状の成形体を得た。得られた成形体は、各材料を構成する細胞が流動し、一体化した構造を有し、かつ材料投入時の繊維方向が、得られた成形体内の繊維の配向に影響を及ぼしている様子が観察された。図2に、原材料の繊維方向とそれを考慮した複数の材料の金型部配置例とシリンダー内配置例及び成形工程により得られる成形品(表側、裏側)の一例を示す。
【実施例4】
【0044】
植物系材料の竹の棹部から、直径25mm、厚さ約10mmの円形材料、及び幅約6mm、厚さ約4mm、長さ約35mmの短冊形材料を切り出し、これらの材料を飽水状態にして、実験に供した。成形法として、ポンチ、シリンダー、コーン形状金型部を用いた、前方押し出し及び圧縮成形法を適用して、上記材料を、複動プレス手段で加圧成形した(図1)。
【実施例4】
【0045】
本実施例では、180℃に加熱したシリンダー内に円形材料3個を、また、コーン形状金型部に放射状に短冊形材料8個を、繊維方向を考慮しつつ供給し、コーン形状金型部の動作をプレスで制御しつつ、上記材料を、ポンチにより150MPaで加圧し、変形させ、180℃に加熱したコーン形状金型部に流動させ、コーン形状金型部で流動を生じさせた。
【実施例4】
【0046】
その後、金型を加圧することで、コーン形状に賦形し、金型を冷却せずに開圧し、成形体を取り出した。シリンダー部及びコーン形状金型部に供給した材料は一体化し、コーン形状の成形体を得た。得られた成形体は、各材料を構成する細胞が流動し、一体化した構造を有し、かつ材料投入時の繊維方向が、得られた成形体内の繊維の配向に影響を及ぼしている様子が観察された。図3に、原材料の繊維方向を考慮した複数の材料の金型部配置例とシリンダー内配置例の一例を示す。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上詳述したように、本発明は、植物系材料の成形体の製造方法及びその成形体に係るものであり、本発明により、植物系材料を型内の一箇所又は複数箇所に供給し、複動プレス手段で金型の動作を制御しつつ、加圧して変形させ、型内の所定の自由空間に構成細胞を移動させて充填し、圧縮力を加え、賦形して一体化することにより、複雑な三次元形状を付与した、薄肉で、任意形状の成形体を製造し、提供することができる。本発明は、植物系材料を原材料として、特に、薄肉でコーン形状を有し、原材料の繊維構造を反映させた組織構造を有する成形体を製造し、提供することを可能とするものである。本発明は、石油を原料として作られるプラスチック製品に代替することができる、環境・資源問題に対応した、新しい植物系材料の成形体の製造技術及びその製品を提供することを可能にするものとして有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2