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明細書 :環状ペプチド誘導体とその製造方法および組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6182274号 (P6182274)
登録日 平成29年7月28日(2017.7.28)
発行日 平成29年8月23日(2017.8.23)
発明の名称または考案の名称 環状ペプチド誘導体とその製造方法および組成物
国際特許分類 C07K   5/12        (2006.01)
A23L  31/00        (2016.01)
A61K  36/068       (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12P  21/04        (2006.01)
FI C07K 5/12
A23L 31/00
A61K 36/068
A61K 38/00
A61P 25/28
A61P 43/00
C12P 21/04
請求項の数または発明の数 10
全頁数 35
出願番号 特願2016-550326 (P2016-550326)
出願日 平成27年9月18日(2015.9.18)
国際出願番号 PCT/JP2015/076797
国際公開番号 WO2016/047638
国際公開日 平成28年3月31日(2016.3.31)
優先権出願番号 2014194509
優先日 平成26年9月24日(2014.9.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年5月10日(2017.5.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
【識別番号】507148456
【氏名又は名称】学校法人 岩手医科大学
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
発明者または考案者 【氏名】鈴木 幸一
【氏名】石黒 慎一
【氏名】苅間澤 真弓
【氏名】江幡 真規子
【氏名】シラパコング・ピヤマース
【氏名】平賀 貴志
【氏名】対馬 正秋
【氏名】品田 哲郎
【氏名】西村 栄治
【氏名】寺山 靖夫
【氏名】安田 英之
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】川口 裕美子
参考文献・文献 特開2013-184923(JP,A)
特開2012-056867(JP,A)
特開平07-101983(JP,A)
TSUSHIMA M, et al.,Hot-water extract of Paecilomyces tenuipes from the silkworm pupae improves D-galactose-induced brai,Journal of insect biotechnology and sericology,2010年 6月30日,Vol.79,pp.45-51
JOULLIE, M M et al.,Structure-activity relationships of ustiloxin analogues,Tetrahedron Letters,2011年 4月27日,Volume 52, Issue 17,2136-2139
調査した分野 C07K 5/12
A23L 31/00
A61K 36/068
A61K 38/00
A61P 25/28
A61P 43/00
C12P 21/04
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(1)で示される環状ペプチド誘導体。
【化1】
JP0006182274B2_000012t.gif

(式中、mは0~3、n≧1であり、R~Rは、水素原子、もしくは炭化水素基、R、Rは、カルボキシル基またはその塩、もしくはアルコキシカルボニル基、Rは、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、もしくはアルキルカルボニルオキシ基、R10、R11は、水素原子、炭化水素基、もしくはアルキルカルボニルオキシ基、R12~R16は、水素原子、もしくは炭化水素基である。)
【請求項2】
請求項1に記載された環状ペプチド誘導体であって、一般式(1)において、R、R、R、Rがアルキル基であって、n=2~4、R、Rが水素原子、R、Rがカルボキシル基であることを特徴とする環状ペプチド誘導体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状ペプチド誘導体をハナサナギタケから採取することを特徴とする環状ペプチド誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記ハナサナギタケが、カイコの蛹を培地として人工培養されたものである、請求項3に記載の環状ペプチド誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記ハナサナギタケ粉末の熱水抽出工程を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の環状ペプチド誘導体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の環状ペプチド誘導体またはその塩を有効成分とする医薬組成物。
【請求項7】
アストロサイト増殖活性を有することを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
NGF遺伝子およびVGF遺伝子の発現量を増加させることを特徴とする請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
脳機能改善活性を有することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
毛質改善活性を有することを特徴とする請求項6または7に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチド誘導体とその製造方法および組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無脊椎動物である昆虫は、脊椎動物とは異なる代謝経路や免疫系を備えており、生体内で合成した種々の生理活性物質による強力な自然免疫で病原菌やウイルスへの抵抗性を発揮している。また、昆虫は、その生態として、外部との、例えば、他の生物、病原菌、ウイルス等との特異な相互関係を形成してもいる。このため、近年、昆虫やその生態由来の生理活性物質に関する研究が進められており、従来知られていなかった新規の構造を有する化合物が多数発見されている。
【0003】
本発明者らは、このような背景の一環として、これまで、冬虫夏草の薬理効果などに関する研究を進めてきた。
【0004】
冬虫夏草の分類と名称については、従来より伝統的に形態を中心として交配能、生態、病原性、化学分類などの表現を指標とし、総合的に系統関係が論じられ、命名されてきた。現在では、遺伝子型を指標とした分子系統分類によって、Cordyceps属とバッカクキン科における系統関係を見直し、形態的特徴も加味して新しい分類体系が構築、提唱されている。そこで、以下の説明のおいては、冬虫夏草生態図鑑(2014年、誠文堂新光社刊)の記載に基づく冬虫夏草の和名を記載し、初出のものについては、括弧内には従来種名と、新分類種名を併記する。
【0005】
このような冬虫夏草は、昆虫にとりつく昆虫病原菌類の一つであり、狭義の解釈では、昆虫網(Insecta)、チョウ目(Lepidoptera)、コウモリガ上科(Hepialoidea)、コウモリガ科(Hepialidiae)に属するコウモリガを宿主とした中国のチベット自治区、青海省、四川省、貴州省、甘粛省、雲南省をはじめ、ネパールやブータンの標高3,000から4,000メートルの高山地帯に棲息するシネンシストウチュウカソウ(Cordyceps sinennsis, Ophiocordyceps sinennsisともいう)をいう。宿主昆虫の種類も多種多様で,カメムシ目(Hemiptera),チョウ目(Lepidoptera),コウチュウ目(Coleoptera),ハチ目(Hymenoptera),バッタ目(Orthoptera),トンボ目(Odonata),ハエ目(Diptera)など多岐にわたる。
【0006】
一方、広義の解釈では、このような昆虫の成虫や幼虫に寄生する菌全体が冬虫夏草と呼ばれてもいる。
【0007】
そして、冬虫夏草について、漢方薬の材料や健康補助食品素材としての科学的知見はまだ少ない段階であるが、これまでの冬虫夏草の生理活性に関する研究例として、シネンシストウチュウカソウとその生産物が糖尿病、心血管疾患やがんや代謝病を防ぎ、または、それらの疾病の進行を遅延させるのに有効な栄養剤として広く利用されている(非特許文献1)。このほかにも、サナギタケ(Cordyceps militaris)の水抽出物による抗酸化作用(非特許文献2)、免疫調節作用(非特許文献3)、in vivoでのインシュリン抵抗性の減少とインシュリン分泌物の増加作用(非特許文献4)、チベット産の冬虫夏草であるシネンシストウチュウカソウの熱水抽出による抗高脂血症効果(非特許文献5),抗腫瘍活性(非特許文献6)、抗炎症作用(非特許文献7)などが報告されている。また、ごく最近においても、シネンシストウチュウカソウから単離されたコルジセピン等の生理活性物質について、従来報告されていなかった新規の生理活性を有すること等が報告されている(非特許文献8~10)そして、このような冬虫夏草の知名度の高まりによる急激な需要増加による乱獲などによって、チベット産のシネンシストウチュウカソウは高価で入手が困難になっている。
【0008】
また、広義の解釈としての冬虫夏草の1種であるハナサナギタケ(Paecilomyces tenuipes, Isaria japonica Yasudaともいう)は、子嚢菌類のコルジセプス科のCordyceps属に属し、カイコ(Bombyx mori, 以下B. moriと記載する)の幼虫や蛹に寄生する菌であることから、カイコ蛹との組み合わせによる冬虫夏草の人工栽培が近年日本で商業化されている。しかしながら、市販されているCordyceps属やPaecilomyces属およびIsaria属の冬虫夏草の多くの商品は無性種の菌糸培養から調製されたものが多く、さらには、ハナサナギタケの薬理効果に関する研究報告はシネンシストウチュウカソウに比べ圧倒的に少ない。
【0009】
これまで、ハナサナギタケの生理活性成分としては、穀類、または穀類および酵母もしくはその抽出物を添加した培地で栽培したハナサナギタケの子実体を乾燥粉末化し、70%メタノール抽出、酢酸エチル-水で分配、水相をn-ブタノール-水で分配、n-ブタノール相をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、酢酸エチルで溶出して得られるスピロテヌイペシンA、Bが知られている(特許文献1)。また、宿主(カイコ蛹)と子実体の混合粉末の酢酸エチル抽出物中から単離された環状ヘキサデプシペプチドBeauvericinがラット肝がん細胞増殖抑制効果を有すること(非特許文献11)や、宿主(カイコ蛹)から分離した子実体を材料とし、60%エタノール抽出、5%メタノール抽出、熱水抽出の過程を経て得られたハナサナギン(3,4-ジグアニジノブタノイル-DOPA)が、フリーラジカル(DPPH)消去活性やスーパーオキシドアニオン消去能を有すること(非特許文献12、13)などが知られている。
【0010】
そして、本発明者らは、シネンシストウチュウカソウに比べて入手が容易であり、コスト面、安定供給の面で優れているハナサナギタケに関する研究を進める中で、ハナサナギタケ粉末に由来する抽出画分に、哺乳動物の脳機能改善効果や、顕著なアストロサイト増殖促進活性があることを見出している(特許文献2、3)。そこで、本発明者らは、引続き、アストロサイト増殖活性とハナサナギタケとの関連性について、さらに鋭意研究を進めてきた。
【0011】
グリア細胞の一種であるアストロサイト(星状膠細胞)は、脳の全細胞の約半数を占める。従来は、情報処理機能は神経細胞が担うという観点から、神経細胞の周囲に存在するアストロサイトの機能としては、神経細胞の支持・保護・栄養供給などが考えられてきた。
【0012】
一方、近年、アストロサイトは、神経回路形成機能(非特許文献14-17)、伝達物質濃度調節機能(非特許文献18、19)という間接的な神経回路形成補助機構だけでなく、神経細胞からの入力とそれに続くアストロサイト間におけるカルシウム伝播(非特許文献20-22)、シナプス小胞様小胞を含み神経細胞へ出力できること(非特許文献23、24)などが報告され始め、アストロサイト自身が細胞情報処理の一翼を担うことが示唆されている。
【0013】
さらに、記憶の形成に対するアストロサイトの役割に関する研究も行われ始めており、記憶などの脳の高次機能は、ニューロンとアストロサイトとの間の相互作用を介して制御されているのではないかと考えられている。例えば、記憶形成ののちに海馬においてアストロサイト数が増加することや(非特許文献25)、アストロサイトの機能を抑制すると記憶形成が阻害されること(非特許文献26)などが報告されている。
【0014】
また、従来、統合失調症や双極性障害、うつ病などの精神疾患において脳神経解剖学的に共通に見られる異常として、マクロなレベルでは脳室肥大、海馬、大脳皮質サイズの縮小がみられ、ミクロなレベルでは神経細胞体サイズの縮小、樹状突起spine密度の減少、樹状突起長の短縮、シナプス関連タンパク質量の減少などが知られていた。これらは神経細胞の直接的な異常と考えられてきた。だが、最近では、アストロサイト数の減少も共通して見られることが報告されており、アストロサイト数の減少に基づく間接的な神経細胞状態の異常の可能性も検討されている(非特許文献27)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の特許文献2、3以降においても、その生理活性が注目される哺乳動物の脳機能改善効果やアストロサイトの増殖活性の本体である化合物をハナサナギタケから単離、同定するには至っていなかった。
【0016】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、アストロサイト増殖活性を有する新規な化合物とその製造方法および組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、ハナサナギタケ乾燥粉末の熱水抽出物の二相分配、フラッシュカラムクロマトグラフィー、逆相HPLCによる精製の結果、新規な環状ペプチド誘導体の単離精製に成功し、その化学構造を特定するとともに、更にこの化合物が初代培養および継代培養した仔マウス由来のアストロサイトに対し、顕著な増殖活性を有することを見出し、これらの知見をもとに本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明の新規化合物は、次の一般式(1)で表わされる環状ペプチド誘導体であることを特徴としている。
【0019】
【化1】
JP0006182274B2_000002t.gif

【0020】
(式中、mは0~3、n≧1であり、R~Rは、水素原子、もしくは炭化水素基、R、Rは、カルボキシル基またはその塩、もしくはアルコキシカルボニル基、Rは、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、もしくはアルキルカルボニルオキシ基、R10、R11は、水素原子、炭化水素基、もしくはアルキルカルボニルオキシ基、R12~R16は、水素原子、もしくは炭化水素基である。)
上記の環状ペプチド誘導体としては、前記一般式(1)において、R、R、R、Rがアルキル基であって、n=2~4、R、Rが水素原子、R、Rがカルボキシル基であること等が好ましい。
【0021】
本発明の環状ペプチド誘導体の製造方法においては、ハナサナギタケから採取することが好ましく考慮される。
【0022】
そして、ハナサナギタケが、カイコの蛹を培地として人工培養されたものであることや、ハナサナギタケ粉末の熱水抽出工程を含むことも好ましく考慮される。
【0024】
本発明の医薬組成物は、環状ペプチド誘導体またはその塩を有効成分とすることが好ましい。
【0025】
また、本発明の医薬品組成物では、アストロサイト増殖活性を有することが好ましい。
【0026】
さらに、本発明の医薬品組成物では、NGF遺伝子およびVGF遺伝子の発現量を増加させることが好ましい。
【0027】
また、本発明の医薬品組成物では、脳機能改善活性を有することが好ましい。
【0028】
そしてまた、本発明の医薬品組成物では、毛質改善活性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、優れたアストロサイト増殖活性をはじめとする生理活性機能を有することにおいて有用な新規環状ペプチド誘導体が提供される。そしてその製造方法においては、入手が容易であり、コスト面、安定供給の面で優れているハナサナギタケを原料とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の環状ペプチド誘導体の単離精製工程の概要を示した図である。
【図2】本発明の実施例でのハナサナギタケからの単離精製工程を示した図である。
【図3】HILICカラムを使用したHPLCによる環状ペプチド誘導体の分離結果を例示した図である。
【図4】本発明の環状ペプチド誘導体の1H-NMRによるHMBC分析の結果を例示した図である。
【図5】本発明の環状ペプチド誘導体の1H-NMRのスペクトルを示している。
【図6】環状ペプチド誘導体によるアストロサイト増殖活性の濃度依存性を示すグラフである。
【図7】本発明の環状ペプチド誘導体、ゾニサミドを培養したアストロサイトに添加した場合のアストロサイト増殖活性を示す図である。
【図8】環状ペプチド誘導体および既存医薬品を培養したアストロサイトに添加した場合のアストロサイト増殖活性を示す図である。
【図9】環状ペプチド誘導体および既存医薬品を培養したアストロサイトに添加した場合のアストロサイト増殖活性を示す図である。縦軸にアストロサイトに取り込まれたBrdU濃度をとっている。
【図10】環状ペプチド誘導体を、培養したヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)、ヒト肝臓がん細胞(HepG2)およびヒト白血病細胞(K562)に添加した場合の細胞増殖活性を示す図である。
【図11】環状ペプチド誘導体および塩酸ドネペジルを添加した場合のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性を示す図である。
【図12】環状ペプチド誘導体を添加した培養アストロサイトにおける神経栄養因子関連遺伝子の発現解析の結果を示すグラフである。どの処理区の細胞でも発現が一定と考えられているGAPDH遺伝子(ハウスキーピング遺伝子、内部標準)についても定量をおこない、それをもとに調べたいターゲット遺伝子の定量結果を補正した。下段は、なにも添加していない培養アストロサイトにおける遺伝子の発現量を示している。上段は、環状ペプチド誘導体添加後の培養アストロサイトにおける遺伝子の発現量を示している。
【図13】環状ペプチド誘導体を投与した正常老化マウスおよび老化促進モデルマウスのステップスルー型受動的回避実験の結果を示すグラフである。
【図14】環状ペプチド誘導体を投与した正常老化マウスおよび老化促進モデルマウスのモリス水迷路実験の結果を示すグラフである。
【図15】環状ペプチド誘導体を投与した正常老化マウスおよび老化促進モデルマウスの体毛の摩擦係数および損傷面積比を示したグラフである。
【図16】A~Fは、それぞれ、産地、種類、培養方法の異なる冬虫夏草および宿主であるカイコ蛹抽出物によるアストロサイト増殖活性の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
前記のとおり本発明の環状ペプチド誘導体は、次の一般式(1)で表わされる。

【0033】
【化2】
JP0006182274B2_000003t.gif

【0034】
(式中、mは0~3、n≧1であり、R~Rは、水素原子、もしくは炭化水素基、R、Rは、カルボキシル基またはその塩、もしくはアルコキシカルボニル基、Rは、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、もしくはアルキルカルボニルオキシ基、R10、R11は、水素原子、炭化水素基、もしくはアルキルカルボニルオキシ基、R12~R16は、水素原子、もしくは炭化水素基である。)
ここで、炭化水素基としては、直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和、もしくは脂環式のもので、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4のものを示している。アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基における炭化水素部分も同様である。

【0035】
好ましい例としては、炭化水素基、炭化水素部分は、炭素数1~4のアルキル基であることが考慮される。

【0036】
、Rが、カルボキシル基の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の金属塩やアンモニウム塩、アミン塩等が例示される。

【0037】
前記一般式(1)においては、例えば、R、R、R、Rがアルキル基、特に、メチル基およびエチル基のいずれかであって、n=2~4で、R、Rが水素原子、R、Rがカルボキシル基、m=0で、R10、R11が水素原子、R12
13が水素原子、R14、R15が水素原子およびアルキル基、特に、メチル基のいずれかであるもの等が具体的に例示される。

【0038】
本発明の環状ペプチド誘導体の製造においては、ハナサナギタケから各種の抽出、分離方法を用いて採取することが好ましい。

【0039】
また、環状ペプチド誘導体の製造方法においては、ハナサナギタケが、カイコの蛹を培地として人工培養されたものであることが好ましい。カイコ蛹は、生蛹であってもよいし、乾燥蛹であってもよい。乾燥蛹を用いる際には、蛹としての形状を保ったまま使用してもよいし、乾燥蛹を粉末化して得られるサナギ粉をキノコ類の公知の人工栽培用培地に添加して使用することも可能である。

【0040】
さらに、環状ペプチド誘導体の製造方法においては、ハナサナギタケから採取するだけではなく、ペプチド合成等の各種の公知の化学合成方法を組み合わせることによって作製することも可能である。

【0041】
また環状ペプチドの誘導体化は、誘導体ペプチド合成、その他の公知の方法で作製することができる。環状ペプチドの誘導体化には、公知の酵素法や化学的手法を適用することができる。

【0042】
次に、図1に沿って一般式(1)に記載した本発明の環状ペプチド誘導体をハナサナギタケから採取する方法について説明する。

【0043】
本発明の環状ペプチド誘導体は、以下の工程:
(1)ハナサナギタケ粉末の熱水抽出液を乾燥させて熱水抽出物を得る工程;
(2)前記工程(1)で得られた熱水抽出物を含む水溶液と有機溶媒とによる二相分配を行って水抽出画分と有機溶媒抽出各分とに分離させ、水抽出画分の乾燥体を得る工程;
(3)前記工程(2)で得られた水抽出画分の乾燥体を含む溶液を担体にチャージした後、この担体に水と有機溶媒の混合液を接触させて固相抽出し、抽出液を乾燥させて固相抽出物を得る工程;
(4)前記工程(3)で得られた固相抽出物を含む溶液を、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによって分離し、環状ペプチド誘導体を単離精製する工程
を含む製造方法によって単離精製される。

【0044】
以下、各工程についてさらに説明する。なお、以下の各工程では、得られた各画分について後述の実施例に記載のとおりの方法でアストロサイト増殖活性試験をおこない、アストロサイト増殖活性を有する成分が得られた画分のいずれかに含有されていることを確認しながら単離精製を進めることができる。

【0045】
工程(1)では、ハナサナギタケの熱水抽出液を乾燥させて熱水抽出物を得る。

【0046】
ハナサナギタケは、日本、台湾、中国、ネパール等に広く分布し、ガの蛹、幼虫、カイコ蛹、幼虫などに寄生して、養分を摂取して増殖して、虫の死骸より淡黄色の子実体を発生する。本発明の環状ペプチド誘導体の材料として使用されるハナサナギタケは、自生するものであってもよいが、好ましくは、宿主をカイコとして人工栽培されたものである。ハナサナギタケは、シネンシストウチュウカソウと比較して入手が容易であるため、製造コストを抑えることができるとともに、安定に環状ペプチド誘導体供給することができる。

【0047】
なお、ハナサナギタケの宿主は、カイコ蛹であってもよいし、カイコ幼虫であってもよい。また、カイコ蛹は、生蛹であってもよいし、乾燥蛹であってもよい。乾燥蛹を用いる際には、蛹としての形状を保ったまま使用してもよいし、乾燥蛹を粉末化して得られるサナギ粉をキノコ類の公知の人工栽培用培地に添加して使用することも可能である。ハナサナギタケの抽出物は、宿主として生蛹と乾燥蛹を使用した場合のいずれにおいても、後述の実施例におけるアストロサイト増殖活性試験において、同等の生理活性が認められる。

【0048】
冬虫夏草の人工栽培方法は種々の方法が提案されているが、例えば、特許第3865735号に記載された方法、すなわち、繭を形成する前のカイコの幼虫を煮沸してから乾燥させ、このカイコ幼虫乾燥粉末50~90質量パーセント、残部が豆類、穀類、海藻類またはキノコ類の乾燥粉末の1種または2種以上からなる食物乾燥粉末を混合して、これに培養液を加えて混練し、これを育成箱の底部に敷き詰めて培地を作成し、この培地を、植菌袋に封入して加熱滅菌処理した後、培地に冬虫夏草の菌を接種して、育成する方法を例示することができる。

【0049】
そして、本発明では、例えば、上記の方法で栽培されたハナサナギタケを凍結乾燥させた後、粉砕して得たハナサナギタケ粉末を使用することが好ましい。ここで、本発明に使用されるハナサナギタケ粉末は、ハナサナギタケの子実体のみを粉末化したものであってもよいが、好ましくは、子実体および宿主(例えば、カイコ)を含めて粉末化したものである。

【0050】
さらに、このハナサナギタケ粉末の熱水抽出方法は特に限定されないが、例えば、このハナサナギタケ粉末に水を加え、オートクレーブなどで加熱する固液抽出によって、熱水抽出液を得ることができる。加熱条件は、適宜設計することができるが、例えば、80~120℃で、およそ60分程度加熱することで、ハナサナギタケ粉末の熱水抽出液を得ることができる。さらに、この熱水抽出液を遠心分離し、上清を濾過して濾液を回収し、前記の抽出工程を繰り返し行うことによって、ハナサナギタケ粉末からの熱水抽出液をより高い収量で得ることができる。そして、このハナサナギタケ粉末の熱水抽出液の上清の濾液を回収し、凍結乾燥することによってハナサナギタケ粉末の熱水抽出物(PTE)を得ることができる。

【0051】
工程(2)では、図1に示すように、前記工程(1)で得られた熱水抽出物を含む水溶液と有機溶媒とによる二相分配を行って水抽出画分と有機溶媒抽出画分とに分離させ、水抽出画分の乾燥体を得る。

【0052】
この工程では、水と有機溶媒を用いた二相分配(液液抽出)を行うことでハナサナギタケ粉末の熱水抽出物(PTE)を水抽出画分と有機溶媒抽出画分とに分離させることができる。具体的には、例えば、ハナサナギタケ粉末の熱水抽出物を水に溶解し、この溶液と有機溶媒とを分液漏斗に入れて振盪させることで、2つの液の界面において物質交換を生じさせ、水層に含まれる有機物などを取り除くことができる。この場合、有機溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、酢酸エチル、アセトンなどの有機溶媒を例示することができ、なかでも、酢酸エチルを使用することが好ましい。

【0053】
そして、このような方法で得られた水抽出画分を、例えば、窒素風乾処理や、凍結乾燥処理など行うことによって、水抽出画分の乾燥体を得ることができる。

【0054】
工程(3)では、(3)前記工程(2)で得られた水抽出画分の乾燥体を含む溶液を担体にチャージした後、この担体に水と有機溶媒の混合液を接触させて固相抽出し、抽出液を乾燥させて固相抽出物を得る。

【0055】
この工程では、従来公知の精製方法を採用することができる。例えば、カラム(シリカゲル)クロマトグラフィーを例示することができ、なかでも、逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーを好ましく例示することができる。逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーは、目の細かいカラム(シリカゲル)を用い、カラム内部に圧力をかけて展開を行うため精製能に優れている。

【0056】
好ましい形態としては、例えば、前記工程(2)で得られた水抽出画分の乾燥体を含む溶液がチャージ(添加)された担体に、水(超純水)を流して固相抽出して抽出液を得て、その後、水と有機溶媒の混合液の濃度を順次上げながら、複数回抽出する逐次抽出を行う方法を例示することができる。前記工程(2)で得られた水抽出画分の乾燥体を含む溶液がチャージ(添加)された担体に、水(超純水)を流して固相抽出することで、水抽出画分中に含まれる糖を溶出させることでき、その後の水と有機溶媒の混合液による固相抽出による有効成分の抽出をより確実に行うことができる。

【0057】
工程(3)において、混合液中の有機溶媒の濃度は、20%~80%であることが好ましく、より好ましくは40%~70%、特に好ましくは60%程度である。混合溶液中の有機溶媒の濃度がこのような範囲であることで、アストロサイト増殖活性を有する成分を確実に精製することができる。また、逐次抽出を行う場合には、水(超純水)を流して固相抽出した後、例えば、混合液中の有機溶媒の濃度を、10%、20%、40%、60%・・・・と順次上げながら抽出を行うことで確実に有効成分を抽出することができる。この場合、混合液中の有機溶媒の濃度が、40%~70%、特に60%程度の抽出液にアストロサイト増殖活性を有する成分が含まれる。

【0058】
また、工程(3)で使用する有機溶媒は、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコールなどを例示することができ、なかでも、メタノール、エタノールを好ましく使用することができる。メタノール、エタノールを使用することで、確実に有効成分を抽出することができる。

【0059】
また、工程(3)を経て得られた抽出液は、適宜、凍結、乾燥などの処理を行って濃縮乾燥させ、固形の抽出物とすることが可能である。このような固形の抽出物はそのままでも利用することが可能であるが、次の精製工程に供することによって、単一の環状ペプチド誘導体またはその塩まで精製することが可能である。

【0060】
工程(4)では、前記工程(3)で得られた固相抽出物を含む溶液を、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによって分離し、環状ペプチド誘導体を単離精製する。

【0061】
この工程では、従来公知の精製方法を採用することができる、使用する逆相カラムとしては、C18、C30カラム等を例示することができ、なかでも、C30カラムを好ましく例示することができる。C30カラムは、担体の表面に炭素数30の修飾基が設けられており、担体の極性が低いため、低極性の化合物の分離能に優れている
工程(4)で使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコールなどを例示することができ、中でも、高極性溶媒であるメタノール、エタノールを好ましく使用することができる。メタノール、アセトニトリルを使用することで、確実に有効成分を抽出することができる。

【0062】
また、工程(4)で使用する水系の溶離液としては、MQ、二炭酸ジエチル緩衝液などを例示することができる。

【0063】
図2は、後述の本発明の実施例でのハナサナギタケからの単離精製工程を示した図である。図2に示すように、工程(1)から(4)を経ることで、例えば図3に示すような、後述の実施例において得られた本発明の環状ペプチド誘導体を含有するピーク(F-3-10-4-5-3)を分取することができる。

【0064】
実施例での、このF-3-10-4-5-3画分については、後述の実施例に記載のとおりの方法でNMRおよびMS解析をおこなった結果、得られた環状ペプチド誘導体の構造は、次の式(2)で表わされるものと決定される。

【0065】
【化3】
JP0006182274B2_000004t.gif

【0066】
この環状ペプチド誘導体は、次の式(3)で表わされる、N-メチル-βヒドロキシドーパ、バリン、β-ヒドロキシロイシン、グルタミン酸の4種のアミノ酸からなるペプチドが環状構造をとっている。

【0067】
【化4】
JP0006182274B2_000005t.gif

【0068】
NMR解析とMS解析の結果、この環状ペプチド誘導体は、分子量が566.2588で水溶性の環状ペプチド誘導体であることが明らかになっている。また、この環状ペプチド誘導体の構造について化学物質の化学構造データベースであるScifinderを用いて、検索をおこなったところ新規化合物であることが確認されている。

【0069】
本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、医薬組成物の有効成分として用いることが可能である。

【0070】
また、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、食品組成物に含有させることが可能である。

【0071】
in vivoまたはin vitroにおいて、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩を脳細胞に作用させることで、アストロサイトを増殖させることができる。したがって、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、各種の疾患や障害の治療、予防などに利用することができる。

【0072】
アストロサイトは、ヒトの脳の全細胞の約半数を占めることから、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、例えば、脳挫傷などの治療薬として利用することができる。また、アストロサイトは、神経回路形成機能などを有することから、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、認知機能障害を引き起こす脳疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病などの治療薬として利用することができる。さらに、アストロサイトは記憶形成に関与していることから、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、空間パターンや情報の補充などの記憶能力や学習能力の向上のために利用することができる。そしてまた、統合失調症や双極性障害、うつ病などの精神疾患においてアストロサイト数の減少が共通して見られることから(非特許文献28)、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、これら精神疾患の治療薬としても利用することができる。

【0073】
本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、経口または非経口投与が可能である。

【0074】
経口投与の場合、例えば、錠剤、丸剤、粉剤、トローチ剤、分包包装、オブラート剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ、エアロゾル剤、および無菌包装粉剤などの形をとることができる。この場合、添加剤として、慣用の賦形剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味剤、芳香剤なども適宜加えることができる。例えば、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール澱粉、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースなどが例示される。経口投与する場合、投与量は、製剤化方法、投与方式、投与対象者の年齢、体重などを考慮して適宜決定することができる。さらに、本発明の環状ペプチド誘導体は、医薬品のみならず健康補助食品などに利用することもできる。

【0075】
また、非経口投与の場合は、静脈内投与、皮下投与、経皮吸収等の他、脳内への直接投与が可能である。脳内への直接投与の場合、治療、改善すべき症状等に応じて、脳内の領域を適宜選択することができる。

【0076】
さらに、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、ヒトのみならず各種の動物などにも投与することができる。なお、ここでいう動物には、ヒトを含む哺乳類動物、家禽など食肉となる鳥類等が含まれる。哺乳動物としては、ヒトの他に、例えば、サル、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ等の実験動物、ブタ、ウシ、ウマ等の家畜、イヌ、ネコ等のコンパニオンアニマル等が例示される。また、鳥類としては、例えば、ニワトリ、ウズラ等が例示される。

【0077】
本発明の環状ペプチド誘導体は、in vitroの実験系においてアストロサイト増殖活性を示す濃度として、例えば、0.1μM以上50μM以下、好ましくは1μM以上50μM以下、より好ましくは1μM以上25μM以下の範囲の濃度が例示される。また、in vivoにおける、本発明の環状ペプチド誘導体のアストロサイト増殖剤としての経口摂取濃度としては、例えば、ヒトを含む哺乳動物に対し、1日あたり0.1μg/kg以上50μg/kg以下、好ましくは1μM以上50μM以下の範囲、より好ましくは1μM以上25μM以下の範囲が例示される。

【0078】
また、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、NGF遺伝子およびVGF遺伝子の発現量を増加させることができる。

【0079】
さらに、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、脳機能改善剤として用いることができる。

【0080】
また、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、毛質改善剤として用いることができる。

【0081】
本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、優れたアストロサイト増殖効果を有し、上記の通りの各種の用途に有効利用することができる。また、本発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、シネンシストウチュウカソウに比べて入手が容易なハナサナギタケを材料としているため、コスト面、安定供給の面で優れている。

【0082】
アストロサイトを含むグリア細胞の機能を制御したり、グリア細胞に強く発現している分子群を標的とする「グリア創薬」は、今後の創薬研究上重要であることが示唆されている(非特許文献29)。本願発明の環状ペプチド誘導体またはその塩は、「グリア創薬」の一つの好例となる可能性がある。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
I.アストロサイト増殖活性を有する成分の単離精製
<1>単離精製の工程
図2は、本発明の実施例でのハナサナギタケからの単離精製工程を示した図である。環状ペプチド誘導体の単離精製工程は、(1)ハナサナギタケからの熱水抽出工程、(2)熱水抽出物(PTE)の二相分配による分画工程、(3)逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによる分画工程、(4)逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)による精製工程の4工程を含む。これら(1)から(4)の各工程は、図1の概要図に示した工程(1)から(4)とそれぞれ対応するものである。
【実施例】
【0085】
〔A〕方法
以下に、図2に沿って(1)から(4)の各工程における操作を詳述する。
【実施例】
【0086】
(1)ハナサナギタケ粉末からの熱水抽出
アストロサイト増殖活性を有する化合物の単離精製と構造決定に用いたカイコ冬虫夏草ハナサナギタケ粉末は、福島県の東白農産企業組合より提供されたものを使用した。
【実施例】
【0087】
ハナサナギタケ粉末(42g)に10倍量(w/v)(420ml)の蒸留水(以下、MQと記載する)を加え、120℃、20分間オートクレーブで加熱することで熱水抽出物を得た。その後、熱水抽出物を定性ろ紙(No. 2 ADVANTEC)でろ過し回収(A液)、ろ過後の残渣に再び10倍量(420ml)のMQを添加し、同条件で2回目の抽出、ろ過をおこなった(B液)。A液とB液は混合した後に再度ろ過し、凍結乾燥機(EYELA FDU-2100、東京理化器機)で凍結乾燥し、得た粉末をハナサナギタケ熱水抽出物(以下、PTEと記載する)とし、使用するまで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0088】
得られたPTEについては、後述のアストロサイト増殖活性試験によって、生理活性を確認し、PTE中にアストロサイト増殖活性を有する成分が含有されていることを確認した。
【実施例】
【0089】
(2)PTEの二相分配による分画
前記の工程(1)で得られたPTE粉末6gに50倍量の(w/v)(300ml)のMQを加え溶解し、分液漏斗中に移した。分液漏斗を振盪することでPTEの濃度勾配を均一にし、そこに酢酸エチル300mlを加えた。その後、振盪とガス抜きを10分間繰り返した後、分液漏斗を60分間静置し、二層に分離させた。下層のMQ層(MQ-1)を回収し、酢酸エチル層の残った分液漏斗中に新たに蒸留水を300ml加え、同様の操作を繰り返した。下層の水層(MQ-2)と上層の酢酸エチル層(EA-1)を回収し、分液漏斗に1度目に回収したMQ-1と酢酸エチル300mlを入れ、再び同様の操作を繰り返した。下層のMQ層(MQ-1)と上層の酢酸エチル層(EA-2)を回収した。MQ-1とMQ-2を混合し二相分配のMQ画分、EA-1とEA-2を混合したものを二相分配の酢酸エチル画分とした。それぞれの画分をロータリーエバポレーター一式(CCA-1100、DPE-1220、SB-1000、N-1000、EYELA DTU-20、ULVAC)と凍結乾燥機(EYELA FDU-2100)を用いて濃縮乾燥し、得られた粉末を二相分配MQ層抽出物および二相分配酢酸エチル層抽出物とし、使用するまで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0090】
得られた二相分配MQ層抽出物および二相分配酢酸エチル層抽出物については、後述のアストロサイト増殖活性試験によって生理活性を確認し、二相分配MQ層抽出物中にアストロサイト増殖活性を有する成分が含有されていることを確認した。
【実施例】
【0091】
(3)逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによる分画
1)逆相フラッシュカラムの作製
前記の工程(2)で得られた二相分配MQ層抽出物をさらに精製するため、逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーをおこなった。カラムは乾式充填法により作製した。担体であるシリカゲル(Wakosil 40C18、和光純薬工業)を、カラム体積が160cm3になるようにフラッシュクロマト管に入れ、メタノールにより膨潤させた後、最初の展開溶媒であるMQを500mlクロマト管上部まで入れ、ポンプ(HIBLOW AIR POMP、型式SPP-6EBS、テクノ高規株式会社)加圧により溶媒と担体内の気泡を押し出して置換した。
【実施例】
【0092】
2)逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによる分画
二相分配MQ層抽出物3.5mgを14mlのMQに溶かし、作製したカラムの担体表面にチャージした。ポンプ加圧しながら、MQを500ml、10%メタノール(メタノール/MQ (1/9、v/v))、20%メタノール(メタノール/MQ (1/4、v/v))、40%メタノール(メタノール/MQ (2/3、v/v))、60%メタノール(メタノール/MQ (3/2、v/v))、80%メタノール(メタノール/MQ (4/1、v/v))、100%メタノールを300ml順次流した。溶出したそれぞれの画分はロータリーエバポレーター一式(CCA-1100、DPE-1220、SB-1000、N-1000、EYELA DTU-20、ULVAC)と凍結乾燥機(EYELA FDU-2100)を用いて濃縮乾燥した。得られた各画分を、F1:MQ抽出画分、F2:10%メタノール抽出画分、F3:20%メタノール抽出画分、F4:40%メタノール抽出画分、F5:60%メタノール抽出画分、F6:80%メタノール抽出画分、F7:100%メタノール抽出画分とし、使用するまで-80℃の超低温槽で保存した。
【実施例】
【0093】
得られたF1からF7の各画分については、後述のアストロサイト増殖活性試験によって生理活性を確認し、F3画分にアストロサイト増殖活性を有する成分が含有されていることを確認した。
【実施例】
【0094】
(4)逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)による精製
前記の工程(3)で得られたF3画分について、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用い、Develosilカラムを用いたStep 1~3の3段階の精製と、HILICカラムを用いた精製の合計4段階で精製をおこなった。
【実施例】
【0095】
1)分析条件
Step 1~3で用いたDevelosilカラムによる精製は、以下の分析条件でおこなった。
【実施例】
【0096】
(Step 1)カラム:Develosil RPAQUEOUS (20.0 ID×250 mm) (野村化学)、カラム温度:40℃、移動相:MQ、メタノール、流速:時間によって変化、タイムプログラム(%は移動層中のメタノールの割合を示す):(0min-60min)1.0%、5.0ml/min、isocratic →(60min-180min)1.0%-30.4%、2.0ml/min、gradient →(180min-212min)30.4%-100.0%、5.0ml/min、gradient →(212min-292min)100.0%、5.0ml/min、isocratic、終了、検出波長:254nm。
【実施例】
【0097】
(Step 2および3)カラム:Develosil RPAQUEOUS (20.0 ID×250 mm) (野村化学)、カラム温度:40℃、移動相:0.01%酢酸を含むMQ、0.01%酢酸を含むメタノール、流速:5.0ml/min、タイムプログラム(%は移動層中の0.01%酢酸を含むメタノールの割合を示す):(0min-30min)1.0%、isocratic →(30min-70min)1.0%-40.0%、gradient →(70min-100min)100.0%、isocratic、終了、検出波長:254nm。
【実施例】
【0098】
(HILIC)カラム:HILIC (4.6 ID×250 mm) (COSMOSIL)、カラム温度:28℃、移動相A: 20 mM Et2NH-CO2buffer (pH 7.0)、移動層B: CH3CN(A : B = 90 : 10) isocratic、流速:1.0ml/min、検出波長:210nm。
【実施例】
【0099】
2)分取回収
上記の各分析条件による分離精製では、クロマトグラムの波形を確認し、ピークごとに分取して回収した。Step1では、前記の工程(3)で得られたF3画分について、F-3-1からF3-10まで10個のフラクションに分画し、後述のアストロサイト増殖活性試験によって生理活性を確認し、アストロサイト増殖活性を有する成分が含有されているF-3-10画分を分取して回収した。Step2では、前記のStep1で得られたF-3-10画分について、F-3-10-1からF3-10-4まで4つのフラクションに分画し、後述のアストロサイト増殖活性試験によって生理活性を確認し、アストロサイト増殖活性を有する成分が含有されているF-3-10-4画分を分取して回収した。Step3では、前記のStep2で得られたF-3-10-4画分について、F-3-10-4-1から画分にF-3-10-4-9まで9つのフラクションに分画し後述のアストロサイト増殖活性試験によって生理活性を確認し、アストロサイト増殖活性を有する成分が含有されているF-3-10-4-5画分を分取して回収した。HILICでは、前記のStep3で得られたF-3-10-4-5画分について、F-3-10-4-5-1からF-3-10-4-5-3まで3つのフラクションに分画し、後述のアストロサイト増殖活性試験によって生理活性を確認し、アストロサイト増殖活性を有する成分が含有されているF-3-10-4-5-3画分を分取して回収した。回収した各画分はロータリーエバポレーター一式(CCA-1100、DPE-1220、SB-1000、N-1000、EYELA DTU-20、ULVAC)と凍結乾燥機(EYELA FDU-2100)を用いて濃縮乾燥し、最終精製物をジエチルアミン塩として得た。
【実施例】
【0100】
得られた最終精製物については、後述のアストロサイト増殖活性試験によって生理活性を確認し、最終精製物中の図3に示したF3-10-4-5-3画分にアストロサイト増殖活性を有する成分が含有されていることを確認した。
【実施例】
【0101】
〔B〕結果
以上詳しく説明したとおり、カイコ冬虫夏草ハナサナギタケ乾燥粉末42gを抽出材料として、7段階の工程(熱水抽出、二相分配、逆相フラッシュクロマトグラフィー、C30RPAQUEOUSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の3回の繰り返し(Step 1~3)、HILICカラムを用いたHPLC)を経た結果、前記のとおり図3に示すように最終段階のHPLCで分離したF3-10-4-5-1からF3-10-4-5-3の3つの画分のうち、顕著なアストロサイト増殖活性を有する成分としてF3-10-4-5-3画分が得られた。上記の7段階の各精製工程における抽出物の収率(%)を表1に示す。
【実施例】
【0102】
【表1】
JP0006182274B2_000006t.gif
【実施例】
【0103】
単離精製物の収量は1.2mgであり、その収率は0.03%であった。なお、各工程における生物活性検定においては、以下のアストロサイト増殖活性を指標にしておこなった。
【実施例】
【0104】
<2>アストロサイト増殖活性試験
1)供試材料
妊娠ICR♀マウスを日本SLC株式会社より購入し、生後24~48時間の新生児を実験に使用した。
【実施例】
【0105】
2)新生児マウス大脳神経細胞初代培養
ICRマウス新生児(生後24~48時間)を70%エタノールで十分に消毒した後、細胞培養用100mm dish(直径100mm, Orange Scientific)内のPBS(-)30mlに浸し、クリーンベンチ内に運び入れた。このマウス新生児をピンセットを用いて頸椎脱臼し、安楽死させた。マウス新生児を開頭して脳全体を摘出し、得られた脳を高グルコースダルベッコ変法イーグル培地(HG-D-MEM、和光純薬)15mlが入った細胞培養用100mm dishに移し、ピンセットを用いて培地中で嗅球、正中隆起、髄膜を取り除き海馬を含む大脳のみとした。次いで、得られた大脳を10mlのHG-D-MEMが入った細胞培養用100mm dishに移し、メスを用いて1mm2以下となるように細かくカットした。カットした大脳を培地ごと50mlコニカルチューブ(TPP)に移し、2分間静置した後、上清を取り除いた。次いで、カットした大脳に4mlの新しいHG-D-MEMを加え、さらに2.5%トリプシン(SIGMA)400μl、1% DNase I(SIGMA)40μlを加えた後に、37℃ウォーターバスにて、時々撹拌しながら10分間インキュベートした。次いで、カットした大脳にHG-D-MEM(10%FBS)を10ml加え、トリプシンの反応を停止させた後に、遠心分離機(H-9R、コクサン)で1,000 × gで3分間遠心分離した。電動ピペッターで上清を吸い取り、沈殿している細胞塊にHG-D-MEM(10%FBS)を10ml加え、滅菌ピペットで細胞塊が見えなくなるまで、数回ピペッティングした。この細胞分散液から余分な細胞塊を取り除くために、細胞分散液をセルストレイナー(孔径100μm、BD FalconTM)に通した後、細胞計数板でセルストレイナーを通過した細胞分散液中の細胞数を計数し、細胞数が6.0×105cells/mlになるようにHG-D-MEM(10%FBS)で調整した。細胞数を調整後、Poly-D-Lysine Cellware 100 mm Dish(PDL 100 mm dish,BD FalconTM)に7mlずつ細胞分散液を播いた。播種後96時間後にアスピレーターで培地を一度除去し、PBS(-)10mlでPDL 100 mm dish内を軽く洗浄し、7mlのHG-D-MEMを新しく加えて培地の交換をおこなった。以上の方法と以下のアストロサイトの調整は、McCarthy and de Vellis (1980、非特許文献30)の方法に準じておこなった。
【実施例】
【0106】
3)アストロサイトの調整
培地交換から72時間後に細胞液を播種したPDL 100 mm dishをインキュベーター内から取り出し、パラフィルムを用いて蓋を密閉し、3~4 dishを重ねて固定した。これを、37℃、100 rpm、20時間の条件でバイオシェーカー(MULTI SHAKER MMS , INCUBATOR FMS / EYELA)で振盪培養し、神経細胞や細胞片、死細胞等を遊離させた。この時PDL 100 mm dish内には、ニューロン以外の中枢神経系におけるグリア細胞であるアストロサイトのみが接着している(以下、培養アストロサイトと記載する)。振盪後、PDL 100 mm dishをクリーンベンチ内に移し、アスピレーターで上清を取り除き、PBS(-) 10 mlで洗浄し、パスツールピペットで2.5%トリプシン(SIGMA)を1 ml加え、インキュベーター内で10分間静置した。PDL 100 mm dishを再びクリーンベンチ内に戻し、ダルベッコ変法イーグル培地(D-MEM、和光純薬)(10% FBS)を10 ml加え、トリプシンの反応を止め、細胞液を50 mlコニカルチューブに集めた。その後、細胞計数板で細胞数を計数し、1.5 × 105 cells/mlになるようにD-MEM(10% FBS)で調整し、このアストロサイト細胞液をPDL 100 mm dishに7 mlずつ播種した。
【実施例】
【0107】
4)培養アストロサイトの継代
前記3)で調整した培養アストロサイトは、播種後72~96時間ごとに培地交換を行い2週間培養した。操作は上記の実験での培地交換と同様だが、培地としてD-MEM(10% FBS)を使用した。14日後、バイオシェーカーによる振盪培養はおこなわず、その後は前記3)の調整方法に従って、培養アストロサイトの細胞数を調整し、継代をおこなった。
【実施例】
【0108】
5)活性試験
このようにして得られた継代後の培養アストロサイト(2継代目)を使用して、前記のとおりのアストロサイト増殖活性試験をおこなった。その結果、前記のとおり、図3に示すように、F3-10-4-5-3画分がアストロサイト増殖活性を示す成分を含有していることが確認された。
【実施例】
【0109】
6)初代培養アストロサイトの識別試験と得られた細胞の特性の検討
初代培養アストロサイトまたは2継代アストロサイトにおいて、神経細胞またはグリア細胞由来のミクログリアやオリゴデンドロサイトのコンタミネーションの可能性を排除するために、上記のそれぞれの細胞に特異的な抗体を使用して免疫組織化学的な解析をおこなった。
【実施例】
【0110】
すなわち、まず、2継代目アストロサイトを用い、前記3)と同様の手順で、細胞濃度が3×104cells/mlとなるように細胞懸濁液を調整した。培地としてはLG-D-MEM(10%FBS)を用いた。ラミニン(SIGMA-Aldrich、1μg/cm2培養面積)とフィブロネクチン(SIGMA-Aldrich、3μg/cm2培養面積)で培養面をコーティングした35mmディッシュ(BD Falcon)に、調整した培養アストロサイトの細胞懸濁液を2ml/dish播種し、37℃、5.0% CO2の条件下でインキュベートして培養した。培養開始から24時間後、アストロサイトの細胞増殖を抑えるため、ディッシュ内の培地をLG-D-MEM(0%FBS)に置換した。さらに、37℃、5.0% CO2の条件下で24時間培養後、ディッシュ内の培地を、あらかじめ環状ペプチド誘導体濃度が25μMになるように、前記のとおりの、単離精製されて構造決定された環状ペプチド誘導体を溶解したLG-D-MEM(0%FBS)に置換し、アストロサイトを37℃、5.0% CO2の条件下で0時間および24時間環状ペプチド誘導体に暴露した。対照群としては、環状ペプチド誘導体を加えていないLG-D-MEM(0%FBS)を用いた。
【実施例】
【0111】
各処理区のディッシュからすべての培地を吸引除去し、4%パラホルムアルデヒド(Wako)を含むPBS溶液を添加し、15分間室温振盪して細胞を固定した。次に、0.1% Triton(R) X-100(SIGMA-Aldrich)を含む PBS溶液を添加し、5分間振盪し浸透処理をした。浸透処理後に、Image-iT FX Signal Enhancer(life technologies)を添加し、1時間室温で振盪しブロッキング処理をおこなった。
【実施例】
【0112】
次いで、細胞を識別するため、ブロッキング処理した細胞に表2に示す各々の抗体を1次抗体として添加し、1時間室温で振盪した。1次抗体の検出には、蛍光色素としてAlexa Fluor 488- またはAlexa Fluor 546- を結合させた2次抗体(Invitrogen)を用い、2次抗体の添加後30分間室温で振盪した。蛍光画像は蛍光顕微鏡IX71(Olympus)を用いて観察、撮影した。観察結果を表3に示す。
【実施例】
【0113】
【表2】
JP0006182274B2_000007t.gif
【実施例】
【0114】
【表3】
JP0006182274B2_000008t.gif
【実施例】
【0115】
表3に示したように、実施例で使用したアストロサイトは、ミクログリア細胞に特異的なAnti-NG2、オリゴデンドロサイト細胞に特異的なAnti-MBP、そして神経細胞に特異的なAnti-MAP2にはネガティブな反応であり、グリア型グルタミン酸トランスポーター(EAAT2、またはGLT-1と呼ばれている)に対してのみポジティブな反応を示した。EAAT2は、中枢神経系の細胞の中でアストロサイトにのみ発現することから、脳由来の培養アストロサイトは、99%以上の純度のアストロサイトから構成されていることが確認された。
【実施例】
【0116】
II.アストロサイト増殖活性を有する成分の化学構造の決定
〔A〕方法
前記アストロサイト増殖活性を有する成分の単離精製工程(4)において最終的に単離精製したF3-10-4-5-3画分を分取して凍結乾燥したサンプルを使用し、F3-10-4-5-3画分の化学構造をNMRおよびMS解析により、決定した。NMR解析にはBrucker Avance 600 を使用した。MS解析にはJEOL JMS-AX500を利用した。旋光度はJASCO P-1030 polarimeter with a sodium lamp (D line)を用いて測定された。
【実施例】
【0117】
〔B〕結果
解析によって、前記式(2)で表される環状ペプチド誘導体であることが同定された。その1H-NMRによるHMBC解析の結果を、図4に例示する。また、この環状ペプチド誘導体の1H-NMRのスペクトルを図5に例示する。さらに、この環状ペプチド誘導体の1H-NMRの各ピークの化学シフトに関しては、表4のとおりであり、13C-NMRの各ピークの化学シフトに関しては、表5のとおりである。
【実施例】
【0118】
【表4】
JP0006182274B2_000009t.gif
【実施例】
【0119】
【表5】
JP0006182274B2_000010t.gif
【実施例】
【0120】
また、MS解析として、FAB-MSによる解析をおこなった。解析条件および解析結果は以下のとおりである。
【実施例】
【0121】
MS: FAB negative, matrix: glycerol, HRMS (FAB) m/z (M-H)-, calcd for [C26H37N4O10-H]-565.2510, found 565.2512.
[α]17.4D = -21.6o(c = 0.18, H2O)
NMR解析とMS解析の結果、本発明のアストロサイト増殖活性を有する環状ペプチド誘導体は、分子量が566.2588で水溶性の新規の環状ペプチド誘導体であることが明らかになった。この環状ペプチド誘導体の構造について、化学物質の化学構造データベースであるScifinderを用いて、検索をおこなったところ新規化合物であることがわかった。
【実施例】
【0122】
III.新規環状ペプチド誘導体の機能解析
<1>培養アストロサイト増殖活性の機能解析
1.培養アストロサイト増殖促進活性
〔A〕方法
2継代目アストロサイトを用い、アストロサイト増殖活性を有する成分の単離精製工程(4)と同様の手順で、細胞濃度2.0×105 cells / mlとなるように細胞懸濁液を調整した。その際、培地はD-MEM(10% FBS)を用いた。調整した培養アストロサイトの細胞懸濁液は、マルチピペット(Eppendorf)を用いて細胞培養用96 well マイクロプレート(Tissue Culture Treated Polystyrene / IWAKI)に、100 μl / well播種し、37℃、5.0% CO2の条件下でインキュベートした。24時間後、アストロサイトの細胞増殖を抑えるため、ウェル内の培地をD-MEM(0% FBS)に置換した。さらに24時間後、ウェル内の培地をあらかじめ各種サンプルを溶解させておいたD-MEM(0% FBS)に置換し、アストロサイトをサンプルに24時間暴露した。この時、コントロール群にはサンプルを加えていないD-MEM(0% FBS)を用いた。サンプル暴露後、細胞増殖ELISA, BrdU発色キット(Roche)を用い、キットのプロトコルに準じて操作を行い、吸光度の測定にはマイクロプレートリーダー(Multi - Detection Microplate Reader / DAINIPPON SUMITOMO PHARMA)を用いて、増殖促進活性比較試験をおこなった。なお、本実験においてはBrdU標識溶液の反応時間を4時間、POD標識抗BrdU抗体反応液の反応時間を2時間、基質液の反応時間は、反応停止液を使用せずに30分間に設定した。また、実験全体を通して、各手順における細胞の脱落を防ぐため、タッピングはおこなわず、培地や試薬の除去はすべてマルチピペットを用いておこなった。
【実施例】
【0123】
〔B〕結果
図6に示すように、環状ペプチド誘導体の添加濃度を0.1、1、5、10、25および50μMと変化させたところ、アストロサイト増殖促進活性には、濃度依存性が認められた。
【実施例】
【0124】
2.既存薬とのアストロサイト増殖活性の比較検討試験
ポジティブコントロールとして使用したゾニサミド(Zonisamide)は、パーキンソン病の治療薬として使用されている。ゾニサミドの機能の1つとしてアストロサイト増殖活性が示されている(非特許文献34)。そこで、環状ペプチド誘導体とゾニサミドのアストロサイト増殖活性を比較検討した。また、既知の認知症治療薬であって、これまでにアストロサイトの増殖活性が報告されていない、塩酸ドネペジル、エゼリンおよびガランタミンについてアストロサイト増殖活性試験をおこない、本発明の環状ペプチド誘導体の活性との比較をおこなった。
【実施例】
【0125】
〔A〕方法
2継代目アストロサイトを用い、前記1.のアストロサイト増殖促進活性試験と同様の手順で、既存薬のアストロサイト増殖活性試験をおこなった。ゾニサミド(Wako)は、MQに溶解して100μMに調製し、アリセプト(登録商標)(塩酸ドネペジル、abcam)、エゼリン(SIGMA)およびガランタミン(abcam)はMQに溶解して25μMに調製して試験をおこなった。
【実施例】
【0126】
〔B〕結果
図7に示すように、対照区および100μMのゾニサミド添加区においては、アストロサイトの増殖はほとんど認められなかった。一方、25μMの環状ペプチド誘導体添加区においては、対照区と比較して約12倍のアストロサイト増殖が確認された。このことから、環状ペプチド誘導体のアストロサイト増殖活性は、ゾニサミドによるアストロサイト増殖活性よりも顕著であることがわかる。
【実施例】
【0127】
また、図8および図9に示すように、現在臨床において利用されているアルツハイマー症治療薬である塩酸ドネペジルや、エゼリンならびにガランタミンをアストロサイトに添加しても、顕著なアストロサイト増殖活性が認められないことから従来型のアルツハイマー症治療薬はアストロサイトの増殖には何ら影響を及ぼさないと考えられる。そして、アストロサイト増殖活性は、環状ペプチド誘導体の特異的な機能と考えられる。
【実施例】
【0128】
3.環状ペプチド誘導体によるアストロサイト特異的な増殖活性の確認試験
環状ペプチド誘導体によるアストロサイトの増殖促進活性が、アストロサイトだけに限定される特異的な増殖活性であるのか、普遍的な細胞増殖活性によるものかどうかについて、ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)、ヒト肝がん細胞(HepG2)とヒト白血病細胞(K562)を用いて検討した。
【実施例】
【0129】
〔A〕方法
ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)、ヒトがん細胞(HepG2)とヒト白血病細胞(K562)、の増殖に及ぼす影響はYangら(2007、非特許文献33)の方法に準じて測定した。96ウェルプレートへの各細胞の播種は、ヒト皮膚繊維芽細胞は2.5×104 cells/mlに、ヒトがん細胞とヒト白血病細胞は5×104 cells/mlに調整した細胞懸濁液を100μl添加することでおこなった。前記環状ペプチド誘導体はPBS(-)に溶かして添加することから、コントロールとしてPBS(-)のみを添加した。
【実施例】
【0130】
〔B〕結果
図10に示したように、2.5μMと25μMの何れの濃度でも環状ペプチド誘導体の添加によって強い細胞増殖抑制活性が認められた。一方、NHDF細胞においては、25μMの環状ペプチド誘導体を添加した場合には、無添加の群よりも有意に増殖が抑制されるものの、細胞増殖率は80%程度を維持しており、正常細胞に対する細胞毒性は低いと考えられる。したがって、環状ペプチド誘導体によるアストロサイト増殖作用は、普遍的な細胞増殖活性に起因するものではなく、アストロサイトに対する特異的な増殖活性であることがわかった。
【実施例】
【0131】
<2>アセチルコリンエステラーゼ阻害活性試験
既存のアルツハイマー症治療薬の多くは、神経伝達物質であるアセチルコリンの分解酵素であるアセチルコリンエステラ—ゼの阻害活性を標的機構としている。すなわち、アルツハイマー症治療薬は、アセチルコリンエステラーゼを阻害することにより、体内のアセチルコリン濃度を増加させる。そこで、代表的なアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤の塩酸ドネペジル(非特許文献31)と本発明の環状ペプチド誘導体のAChE阻害活性の比較検討をおこなった。
【実施例】
【0132】
〔A〕方法
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害活性はNairら(非特許文献31)の方法に準じて測定し、比較として用いた塩酸ドネペジル(abcam)の濃度はSugimoto ら(非特許文献32)を参考に決定した。
【実施例】
【0133】
〔B〕結果
図11に示すように、10 nMの塩酸ドネペジルでは40%程度のAChE阻害活性が認められるが、1000 nM濃度の環状ペプチド誘導体ではAChE阻害活性が全く認められなかった。
【実施例】
【0134】
この結果から、既存のアルツハイマー症治療薬である塩酸ドネペジルには、AChE阻害活性があるものの、アストロサイト増殖活性を有してはいないことが確認された。一方、本発明の環状ペプチド誘導体は、アストロサイト増殖活性を有するものの、AChE阻害活性は有していないことが確認された。したがって、アストロサイト増殖とAChE阻害の作用機序の間には、同一の作用機序は存在せず、環状ペプチド誘導体はアストロサイト増殖という特異的な作用を発揮していると考えられる。
【実施例】
【0135】
<3>環状ペプチド誘導体添加によるアストロサイトの遺伝子発現活性化作用の解析
2継代目アストロサイトに25μMの環状ペプチド誘導体を添加して、代表的な神経栄養因子NGF、GDNF、VFGF-A,BDNF,VGFの遺伝子発現に及ぼす影響を経時的に検討した。
【実施例】
【0136】
〔A〕方法
2継代目アストロサイトの細胞懸濁液を、細胞濃度が3×105cells/mlとなるように調整し、アストロサイトを25μMの前記環状ペプチド誘導体に暴露する時間を、0、1、2、4、8、12および24時間としたこと以外は、<6>と同様の手順で、アストロサイトを培養した。対照群としては、環状ペプチド誘導体を加えていないLG-D-MEM(0%FBS)を用いた。
【実施例】
【0137】
上記の各時間環状ペプチド誘導体に暴露したアストロサイトをそれぞれ回収し、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてトータルRNAの抽出および精製をおこなった。抽出されたトータルRNAはNano Photometer(IMPLEN)を用いて定量した。逆転写反応には、GeneAmp PCR System 9600(PERKIN ELMER)を用い、500 ngのトータルRNAとPrimeScript RT Master Mix(TaKaRa)とを37℃、15分間反応させてcDNAを合成し、85℃、5秒間の加熱によって反応を停止した。
【実施例】
【0138】
合成したcDNAを鋳型とし、表6に記載された市販の各種プライマー(TaKaRa)をそれぞれ用いて、SYBR premix Ex TaqI(TaKaRa)及びリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice TP800(TaKaRa)により発現解析をおこなった。
【実施例】
【0139】
【表6】
JP0006182274B2_000011t.gif
【実施例】
【0140】
表6に記載された具体的な市販のプライマーとしては、以下のものを用いた。NGF遺伝子用のプライマーとして、Mus musculus nerve growth factor(Ngf), transcript variant 1, mRNA(MA075785, TaKaRa)を用いた。GDNF遺伝子用のプライマーとしては、Mus musculus glial cell line derived neurotropphic factor(Gdnf), mRNA(MA102345, TaKaRa)を用いた。VEGF-A遺伝子用のプライマーとしては、Mus musculus vascular endothelial growth factor(Vegfa), transcript variant 1, mRNA(MA128545, TaKaRa)を用いた。BDNF遺伝子用プライマーとしては、Mus musculus brain derived neurotrophic factorfactor(Bdnf), transcript variant 2, mRNA(MA138332, TaKaRa)を用いた。VGF遺伝子用のプライマーとしては、Mus musculus VGF nerve growth factor inducible(Vgf), mRNA(MA157656, TaKaRa)を用いた。
【実施例】
【0141】
各ターゲット遺伝子の発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子の一つであるGAPDHを内部標準として補正した後に比較した。
【実施例】
【0142】
〔B〕結果
その結果は図12に示したように、NGFとVGFの遺伝子発現が環状ペプチド誘導体の添加後8時間から24時間まで増加し、環状ペプチド誘導体の添加前と比較して、統計上の有意な差(p<0.05)が認められた。【0143】
パーキンソン病治療薬の1つであり、ドーパミンアゴニストであるRopiniroleをマウスのアストロサイトに添加すると、神経栄養因子NGF、GDNF、BDNF遺伝子が活性化されることが知られている(非特許文献35)。また、N-methyl-D-aspartate (NMDA) レセプターのアンタゴニストとして知られているifenprodilは、脳梗塞の後遺症や脳出血の後遺症に伴うめまいの改善薬として使用されている。このifenprodil によって、マウスアストロサイトのNGF、BDNF、GDNF遺伝子活性化とそれぞれのタンパク質生産が確認されている(非特許文献36)。また、抗うつ剤であるserotonin は、VGFを活性化し海馬ニューロンにおいてシナプス活動を増大し、海馬歯状回の神経形成を促進していることが明らかにされている(非特許文献37)。
【実施例】
【0144】
したがって、環状ペプチド誘導体は、アストロサイトのNGFとVGFの遺伝子活性化を誘導することから、パーキンソン病・脳機能障害によるめまい薬・抗精神薬を含めた各種の脳機能疾病の治療薬として適用することも可能である。
【実施例】
【0145】
<4>環状ペプチド誘導体の経口投与による老化促進モデルマウスの学習記憶能改善試験
1)マウス
環状ペプチド誘導体のin vivo試験に用いるマウスとして、老化に伴う初期のアルツハイマー病の認知症モデル動物として用いられる老化促進モデルマウスSAMP8を選定し、そのコントロールとして正常老化マウスSAMR1を選定した。
【実施例】
【0146】
生後19週齢のSAMR1およびSAMP8および雄マウスを日本SLC株式会社より購入し、正常老化マウス群(SAMR1)、老化促進モデルマウス群(SAMP8)、ポジティブコントロールである{P8+塩酸ドネペジル1250μg/kg/day}群、試験区である{P8+環状ペプチド誘導体2.5μg/kg/day}群および{P8+環状ペプチド誘導体25μg/kg/day}群の5群に分け、環境制御された部屋{室温:23±2℃、明暗周期:照明12時間(照明点灯時間:07:00~19:00)、消灯12時間}で1ケージに1頭ずつ個別飼育した。実験は、恒温恒湿室(気温23±2℃、湿度50±10%)で13:00から18:00の時間帯に実施した。10日間の馴化期間の後、全試験期間中、全てのマウスは標準食(MEQ、オリエンタル酵母社)を与えられ、毎日体重を記録した。水と餌、排泄量(床敷の重量)を週に2回計測した。マウスの個体識別は、ケージ番号によりおこなった。本研究は、動物愛護法並びに実験動物のケア及び使用に関するガイドラインに従うとともに、岩手大学動物実験委員会の認可を受け、おこなった。
【実施例】
【0147】
2)マウスへの環状ペプチドおよび薬物の経口投与
上記の5群に分けたマウスに対し、以下の処理をおこなった。
(1)正常老化マウス群:胃ゾンデを用いて0.9%生理食塩水を5週間投与した。
(2)老化促進モデルマウス群:胃ゾンデを用いて0.9%生理食塩水を5週間投与した。なお、すべての行動実験が終わるまで経口投与を継続し、全8週間、経口投与をおこなった。
(3){P8+塩酸ドネペジル1250μg/kg/day}群:ポジティブコントロールとして塩酸ドネペジル(株式会社三洋化学研究所)をMQに溶解し、濃度1250μg/kg(体重)に調製して、SAMP8マウスに対し、胃ゾンデを用いて5週間経口投与した。この濃度は、毎日測定した体重を元に正確に算出した。なお、すべての行動実験が終わるまで経口投与を継続し、全8週間、経口投与をおこなった。
(4){P8+環状ペプチド誘導体2.5μg/kg/day}群:試験区として前記環状ペプチド誘導体をMQに溶解し、濃度2.5μg/kg(体重)に調製して、SAMP8マウスに対し、胃ゾンデを用いて5週間経口投与した。この濃度は、毎日測定した体重を元に正確に算出した。なお、すべての行動実験が終わるまで経口投与を継続し、全8週間、経口投与をおこなった。
(5){P8+環状ペプチド誘導体25μg/kg/day}群:試験区として前記環状ペプチド誘導体をMQに溶解し、濃度25μg/kg(体重)に調製して(非特許文献39)、SAMP8マウスに対し、胃ゾンデを用いて5週間経口投与した。この濃度は、毎日測定した体重を元に正確に算出した。なお、すべての行動実験が終わるまで経口投与を継続し、全8週間、経口投与をおこなった。
【実施例】
【0148】
また、すべての行動実験が終わるまで5群のマウス全てに標準食と水を与えた。
【実施例】
【0149】
3)ステップスルー型受動的回避実験
(1)装置
装置(小原医科産業株式会社製)は、逆台形型の明室と暗室(明室:上面100×130mm、底面42×130mm、高さ90mm、暗室:上面100×160mm、底面42×160mm、高さ90mm)から構成されている。両室の床は、ともに直径2.0mmのステンレス棒が6.0mm間隔で並べられており、暗室の床だけが通電される。両室は、実験者が上下に自由に開閉できる仕切り板で隔てられている。獲得試行においては、白色蛍光灯(15W、400ルクス)で照らされた明室にマウスを入れた後に、仕切り板を開けて試験を開始した。また、暗室内の入り口の左右には、マウスの入室を検知するための赤外線センサーが備えられ、この赤外線センサーが検出したシグナルを入室時間の計測や電気刺激発生トリガーとして用いた。
(2)手順
ステップスルー型受動的回避実験の手順については、Tsushima et al.(非特許文献38)の記載に従っておこなった。本実験の前にマウスの異常個体を選別することを目的として、前獲得試行をおこなった。この前獲得試行では、仕切りドアを開けたままマウスを明室に入れ、暗室に入るまでの時間を測定した。ステップスルー型受動的回避実験は、明るい場所よりも暗い場所を好むというマウスの負の走行習性を利用したものである。このため、前獲得試行において、明室に入れられたマウスが60秒以上明室に留まるようであれば、異常個体と判断し、以下の実験には使用しなかった。
【実施例】
【0150】
実験1日目に前獲得試行をおこない、その後に獲得試行をおこなった。獲得試行においては、仕切りドアを閉めた状態でマウスを明室に入れ、30秒後に仕切りドアを開け、マウスが暗室に入るまでの時間(反応潜時)を測定した。マウスの後ろ足が暗室に入った時点、または暗室の中の赤外線センサーに反応した時点で、仕切りドアを閉め、マウスが暗室に入ってから2秒後に0.3mAの電気刺激を4秒間与えた。
【実施例】
【0151】
実験2日目(獲得試行から24時間後)には、再生試行をおこなった。再生試行では、獲得試行と異なり電気刺激を与えないこと以外は、獲得試行と同様の操作をおこなった。反応潜時は最大300秒として計測した。
(3)結果
図13に示すように、受動的回避実験では、再生試行において正常老化マウス(SAMR1)と老化促進モデルマウス(SAMP8)の反応潜時を比較すると、老化促進モデルマウスでは反応潜時が有意に短く、文脈学習能が低かった(p<0.05)。さらに、何も投与していない老化促進モデルマウスと、塩酸ドネペジルを投与した老化促進モデルマウスの反応潜時を比較すると、塩酸ドネペジルを投与した老化促進モデルマウスでは何も投与していない老化促進モデルマウスよりも反応潜時が有意に短く、文脈学習能が低かった(p<0.05)。一方、環状ペプチド誘導体を2.5 μg/kg/dayおよび25 μg/kg/day投与した老化促進モデルマウスでは、文脈学習能が正常老化マウスレベルまで回復することが確認された。【0152】
以上のことから、老化促進モデルマウスに本発明の環状ペプチド誘導体を経口投与することで、既知の認知症治療薬である塩酸ドネペジルよりも明らかに文脈学習能が改善されることが確認された。
【実施例】
【0153】
4)モリス水迷路実験
(1)装置およびそのセッティング
装置(小原医科産業株式会社製)およびそのセッティングは、以下に記載するとおりである。まず、円筒形プール(直径100cm、深さ30cm)を床上80cmにセットした。次いで、このプールに深さ20cmまで水(水温25±1℃)を入れ、透明なプラットフォーム(直径10cm、高さ19cm)が水面下1cmに沈むようにセットした。次いで、プラットフォームが水泳中のマウスに見えないように、市販の白色ポスターカラーでプールの水を白濁させ、白黒CCDカメラをプールの略中央の水面の真上100cmの位置に設置し、全てのクワドラントをカバーする写真を白黒CCDカメラによって自動撮影および自動記録した。カメラは、コンピュータと連動しており、マウスの水泳軌跡は0.5秒間隔でコンピュータに保存された。水泳軌跡の記録と画像解析は、NIH (The U.S. National Institute of Health)により開発され公開されているNIH Imageを元にしたソフトウェア、Image WMH 2.08とImage WM 2.12 (小原医科産業株式会社製) を使用した。
(2)手順
モリス水迷路実験の手順については、Tsushima et al.(非特許文献38)の方法に従った。実験は9日間、毎日同時刻から開始した。1日目には、マウスをプールに馴れさせるため、それぞれのマウスを1回ずつ1分間泳がせた。その後、プラットフォームに高さ10cmの目印をセットし、マウスにプラットフォームの存在を認識させた。また、マウスをプールに入れる際、コンピュータに指示されたマウス投入地点からプールの壁向きに入水させ、実験者は速やかにマウスから見えない位置に退避した。マウスが60秒以内にプラットフォームに到達した場合、マウスをプラットフォーム上に15秒間安置した後に、救出した。マウスが60秒間の水泳でプラットフォームに到達できなかった場合、実験者の手でマウスをプラットフォーム上に移動させ、プラットフォーム上に15秒間安置した後に救出した。
【実施例】
【0154】
2~8日目には、マウスにプラットフォームの位置を記憶させるトレーニングをおこなった。トレーニングは、マウス1頭につき連続して1日に4回連続でおこなった。トレーニングの方法は、1日目の操作と同様におこない、プラットフォームに到達した時間を記録した。なお、マウスが60秒間の水泳でプラットフォームに到達できなかった場合、実験者の手でマウスをプラットフォーム上に移動させ、プラットフォーム上に15秒間安置した後に救出し、到達時間を60秒として記録した。
【実施例】
【0155】
9日目には、プローブテストをおこなった。プローブテストは、プールからプラットフォームを取り除き、マウスを60秒間泳がせ、各クワドラント(円形のプールの四分円)の各ドメイン内での滞在率(滞在時間)を測定した。なお、プローブテストは、マウス1頭につき、1回ずつおこなった。
(3)結果
図14に示すように、実験2~8日目にプラットフォームが設置されていたクワドラント1におけるマウス滞在率(%)の値から、本発明の環状ペプチド誘導体を投与することにより、空間学習能が顕著に回復することが確認された。すなわち、正常老化マウスと老化促進モデルマウスを比較した場合、老化促進モデルマウスではクワドラント1におけるマウス滞在率(%)の値が有意に低かった(p<0.05)。一方、老化促進モデルマウスと環状ペプチド誘導体を25 μg/kg/day投与した老化促進モデルマウスとを比較すると、環状ペプチド誘導体を25 μg/kg/day投与した老化促進モデルマウスでは空間学習能が有意に回復していることがわかった(p<0.05)。【0156】
以上のことから、老化促進モデルマウスに環状ペプチド誘導体を経口投与することで、既知の認知症治療薬である塩酸ドネペジルよりも、空間学習能が明らかに改善することが確認された。
【実施例】
【0157】
<5>環状ペプチド誘導体の経口投与による老化促進モデルマウスの毛髪アンチエイジング効果
アストロサイトの神経保護作用として、神経細胞へのエネルギー供給、血液脳関門(BBB)形成、興奮性アミノ酸の取り込み能、抗酸化防御、神経幹細胞への脱分化などの多機能性が明らかになっている(非特許文献35、36)。
【実施例】
【0158】
そこで、環状ペプチド誘導体によるアストロサイト増殖が認知機能の改善や、学習記憶能の改善以外にも、in vivo試験における効果の多機能性が期待できる。特に、アストロサイト由来のシグナルによって皮膚真皮幹細胞からニューロン形成に誘導できることが知られており(非特許文献37)、アストロサイトと真皮幹細胞の間で、分子シグナルの介在を経た相互作用が考えられる。
【実施例】
【0159】
発明者らは、これまでに老化促進モデルマウス(SAMP8)を使用して体毛および毛髪のアンチエイジング効果について解析してきたことから(非特許文献40)、環状ペプチド誘導体を投与した老化促進モデルマウスについても、静動摩擦測定器と走査型プローブ顕微鏡(scanning probe microscope ; SPM)を使用して体毛及び毛髪のアンチエイジング効果について解析した。
【実施例】
【0160】
1)摩擦係数測定試験
動物の毛髪および体毛の摩擦係数は、毛髪および体毛の表面に存在するうろこ状の組織であるキューティクルの状態と密接な関係にあり、毛髪および体毛のキューティクルの損傷が大きいほど摩擦係数(Coefficient of friction; COF)の値も大きいと考えることができる(非特許文献40)。また、キューティクルの損傷が大きければ、毛髪および体毛の水分や栄養分がキューティクルの損傷部から流失することが知られている。
【実施例】
【0161】
(1)装置
装置は、静動摩擦測定器ハンディラブテスターTL701(株式会社トリニティーラボ製)を使用した。本機は、測定に際して動物やヒトの毛髪および体毛を切断して測定サンプルとする必要がなく、毛髪及び体毛が皮膚から生えている状態をそのまま測定することができる静動摩擦測定器である。すなわち、本機械は、皮膚や複雑な曲面を有する材料表面の摩擦測定も可能である。
【実施例】
【0162】
(2)方法
静動摩擦測定器の接触子を、マウスの額部分の体毛に押し当て、およそ1Nの荷重をかけたまま約10秒間かけてマウスの額から両耳の間を通って頸部まで移動させて、体毛表面の摩擦係数(COF)を測定した。摩擦係数(COF)は、マウス1頭につき5~10回計測し、その平均値を算出した。
【実施例】
【0163】
2)走査型プローブ顕微鏡による老化マウス体毛の観察試験
(1)装置
装置は、タッピングモード走査型プローブ顕微鏡 (SPM:SPA400,日立ハイテクサイエンス)を使用した。
【実施例】
【0164】
(2)方法
試料として、ピンセットを用いてマウスの頭頸部の体毛を根元から抜いて採取し、前記タッピングモード走査型プローブ顕微鏡を使用し、観察した。
【実施例】
【0165】
3)結果
図15に示すように、静動摩擦測定器を用いて測定したマウス体毛の摩擦係数(COF)をX軸、SPMを用いて測定したマウス体毛表面の損傷面積比をY軸にとり、それらの相関関係を評価した。老化促進モデルマウス体毛の摩擦係数(COF)と損傷面積比の数値は高く、これらの2つの指標は、正常老化マウスの体毛ではいずれも低かった。このことから、老化促進モデルマウスの1つの特性として体毛も老化し、その毛質が劣化していることが考えられる。一方、既知の認知症治療薬である塩酸ドネペジルを経口投与した老化促進モデルマウスでは、マウス体毛表面の損傷面積比は正常老化マウスと同じレベルであったが、マウス体毛の摩擦係数は老化促進モデルマウスと同レベルのままであって、顕著な回復は認められなかった。
【実施例】
【0166】
これに対し、老化促進モデルマウスに2.5 μg/kg/dayおよび25 μg/kg/dayの環状ペプチド誘導体を経口投与すると、マウス体毛表面の摩擦係数(COF)および損傷面積比の両方が、正常老化マウスと同じレベルにまで低下し、毛質が改善することが明らかになった。
【実施例】
【0167】
以上のことから、本願発明の環状ペプチド誘導体は、毛髪のアンチエイジングにまで効果を発揮する可能性が考えられる。
【実施例】
【0168】
<6>カイコ冬虫夏草ハナサナギタケ、及び他の冬虫夏草や培地として使用しているカイコ蛹そのものにおけるアストロサイト増殖活性の比較
代表的な冬虫夏草であるチベット産シネンシストウチュウカソウに関しては、多くの生理活性物質が同定されている(非特許文献1、2)。また、韓国、中国ではカイコ冬虫夏草ハナサナギタケも販売されているが、アストロサイト増殖活性に関する知見は見当たらないので、再度ここで比較をおこなった。
【実施例】
【0169】
1)材料
比較のための材料として、チベット産シネンシストウチュウカソウ乾燥粉末、チベット産シネンシストウチュウカソウのタンク培養液乾燥粉末、韓国産カイコ冬虫夏草ハナサナギタケ乾燥粉末、培地となるカイコ乾燥蛹のみの4サンプルと、本発明の環状ペプチド誘導体を含有するカイコ冬虫夏草ハナサナギタケ2サンプル(本実施例で使用した、カイコ乾燥蛹を宿主として培養したカイコ冬虫夏草ハナサナギタケと、カイコ生蛹を宿主として培養したカイコ冬虫夏草ハナサナギタケ)の合計6サンプルを用いた。
【実施例】
【0170】
2)方法
このような6サンプルについて、図2に示した本発明の環状ペプチド誘導体の単離精製工程における工程(1)の熱水抽出により、熱水抽出物MQ層を得た。次いで、得られた熱水抽出物MQ層を工程(2)の逆相フラッシュカラムクロマトグラフィーによって7つの画分(F1~F7)に溶離した。得られた7つの画分全てについて濃度100μg/mlにおけるアストロサイト増殖活性試験をおこない、それらの生理活性を比較した。
【実施例】
【0171】
3)結果
図16E、Fに示すように、日本産のカイコ冬虫夏草ハナサナギタケのF3における顕著な活性以外では、図16Cの韓国産のハナサナギタケのF7で若干の活性が認められるが、図16A、B、Dの何れの冬虫夏草の全画分において、アストロサイト増殖活性はほとんど認められず、環状ペプチド誘導体は存在しないか、存在するにしても量的に僅かなレベルであることがわかった。また、培地となるカイコ乾燥蛹のみでは活性が確認されないことから、カイコ蛹に寄生するハナサナギタケの代謝産物として環状ペプチド誘導体が合成されていると考えられる。このことから、ハナサナギタケの宿主としてカイコの蛹を用いることが環状ペプチド誘導体の製造には望ましいことが確認された。
【実施例】
【0172】
なお、タンク培養によって生産されたハナサナギタケであっても、培養液中におけるカイコ蛹粉末の含量を増加させることで、環状ペプチド誘導体が得られると考えられる。
【先行技術文献】
【0173】

【特許文献1】特開2003-252876号公報
【特許文献2】特開2012-56867号公報
【特許文献3】特開2013-184923号公報
【0174】

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【産業上の利用可能性】
【0175】
優れたアストロサイト増殖活性をはじめとする生理活性機能を有することにおいて有用な新規環状ペプチド誘導体を提供することができる。そしてその製造方法においては、入手が容易であり、コスト面、安定供給の面で優れているハナサナギタケを原料とすることもできる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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