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明細書 :測定装置およびセンサシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年8月31日(2017.8.31)
発明の名称または考案の名称 測定装置およびセンサシステム
国際特許分類 G01D   5/353       (2006.01)
FI G01D 5/353 B
G01D 5/353 C
国際予備審査の請求
全頁数 44
出願番号 特願2016-560248 (P2016-560248)
国際出願番号 PCT/JP2015/082318
国際公開番号 WO2016/080415
国際出願日 平成27年11月17日(2015.11.17)
国際公開日 平成28年5月26日(2016.5.26)
優先権出願番号 2014232898
2014245101
優先日 平成26年11月17日(2014.11.17)
平成26年12月3日(2014.12.3)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】田中 洋介
【氏名】黒川 隆志
【氏名】塩田 達俊
【氏名】柏木 謙
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000877、【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 2F103
Fターム 2F103BA37
2F103BA43
2F103CA04
2F103CA07
2F103EB02
2F103EB05
2F103EB14
2F103EB15
2F103EC09
2F103EC10
2F103EC14
2F103EC16
2F103FA02
要約 誘導ブリルアン散乱光利用した測定装置において、周波数の線形掃引を必要としない。被測定対象における誘導ブリルアン散乱光の利得スペクトルを測定する測定装置であって、第1のコム光を生成して被測定対象の一端に入力する第1のコム光発生器と、第1のコム光に対して、基準周波数が被測定対象のブリルアンシフト周波数だけシフトしており、且つ、周波数間隔が異なる第2のコム光を生成して被測定対象の他端に入力する第2のコム光発生器と、被測定対象から出力される誘導ブリルアン散乱光のスペクトルを測定する測定器とを備える測定装置を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定対象に周波数間隔の異なる2つのコム光を入射するコム光源と、
前記被測定対象から出力される光を測定する測定部と
を備える
測定装置。
【請求項2】
前記被測定対象における誘導ブリルアン散乱光の利得スペクトルを測定する測定装置であって、
前記コム光源は、
第1のコム光を生成して前記被測定対象の一端に入力する第1のコム光発生器と、
前記第1のコム光に対して、基準周波数が前記被測定対象のブリルアンシフト周波数だけシフトしており、且つ、周波数間隔が異なる第2のコム光を生成して前記被測定対象の他端に入力する第2のコム光発生器と
を有し、
前記測定部は、
前記被測定対象から出力される誘導ブリルアン散乱光のスペクトルを測定する測定器である
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記第1のコム光と基準周波数が同一であり、且つ、周波数間隔が異なる第3のコム光を生成する第3のコム光発生器を更に備え、
前記測定器は、前記誘導ブリルアン散乱光と前記第3のコム光とのビート信号を測定する
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第1のコム光発生器、前記第2のコム光発生器および前記第3のコム光発生器は、同一の種光源から生成される単一波長のレーザ光を元に、それぞれ前記第1のコム光、前記第2のコム光および前記第3のコム光を生成する
請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第1のコム光発生器は、時間軸における波形がパルス状の前記第1のコム光を生成し、前記第2のコム光発生器は、時間軸における波形がパルス状の前記第2のコム光を生成する
請求項2から4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記第1のコム光の2以上のパルスをそれぞれ含む2以上のパルス群間の周期を調整する第1のパルス変調器と、
前記第2のコム光の2以上のパルスをそれぞれ含む2以上のパルス群間の周期を調整する第2のパルス変調器と
を更に備える請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記第1のパルス変調器および前記第2のパルス変調器は、前記第1のコム光の前記2以上のパルス群間の周期と前記第2のコム光の前記2以上のパルス群間の周期とを異ならせて、前記第1のコム光のパルス群と前記第2のコム光のパルス群とが重なる前記被測定対象における位置を順次変化させ、
前記測定器は、前記被測定対象の各位置における前記誘導ブリルアン散乱光のスペクトルの分布を測定する
請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記第1のコム光および前記第2のコム光の周波数間隔の差は、前記被測定対象のブリルアン利得スペクトルの幅よりも小さい
請求項2から7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記第1のコム光および前記第2のコム光の周波数間隔は、いずれも前記被測定対象のブリルアン利得スペクトルの幅の2倍よりも大きい
請求項2から8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記被測定対象は、前記被測定対象の歪み変化および温度変化を測定するために用いられる第1の光ファイバと第2の光ファイバとを有する
請求項1から9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の測定装置と、
前記被測定対象と
を備えるセンサシステム。
【請求項12】
前記コム光源は、互いに同期し、かつ、周波数間隔が異なる第1のコム光および第2のコム光を生成するデュアルコム光源部を有し、
前記被測定対象は、周囲環境によって分光特性が変化する1以上の反射点を有し、前記第1のコム光および前記第2のコム光が入射する光ファイバであり、
前記測定部は、前記1以上の反射点から反射または透過された前記第1のコム光および前記第2のコム光のビート信号を測定する測定器であり、
前記測定装置は、多点型光ファイバセンサとして機能する
請求項1に記載の測定装置。
【請求項13】
前記1以上の反射点は、1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングである、請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングの各々の反射帯域幅は、前記第1のコム光の複数の周波数ピークが収まる幅を有する、請求項13に記載の測定装置。
【請求項15】
前記第1のコム光および前記第2のコム光は、
第1のファイバー・ブラッグ・グレーティングで反射する周波数ピークと、
前記第1のファイバー・ブラッグ・グレーティングとは異なる第2のファイバー・ブラッグ・グレーティングで反射する周波数ピークと
を有する、請求項13または14に記載の測定装置。
【請求項16】
前記1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングの各々において、反射光の周波数スペクトルの中心周波数は互いに異なり、
前記1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記第1のコム光が入射する位置から離れるに従い前記中心周波数が大きくなるように前記光ファイバ中に配置される、請求項13から15のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項17】
前記1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングの各々において、反射光の周波数スペクトルの中心周波数は互いに異なり、
前記1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記第1のコム光が入射する位置から離れるに従い前記中心周波数が小さくなるように前記光ファイバ中に配置される、請求項13から15のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項18】
前記1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングの各々において、反射光の周波数スペクトルの中心周波数は互いに異なり、
前記1以上のファイバー・ブラッグ・グレーティングは、前記第1のコム光が入射する位置から離れるに従い前記中心周波数が常に小さくまたは常に大きくならないように前記光ファイバ中に配置される、請求項13から15のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項19】
互いに同期し、かつ、周波数間隔が異なる第1のコム光および第2のコム光を生成するデュアルコム光源部と、
周囲環境によって分光特性が変化する2以上の反射点を有し、前記第1のコム光が入射する光ファイバと、
前記2以上の反射点から反射または透過された前記第1のコム光と、非偏光状態の前記第2のコム光とのビート信号を測定する測定器と
を備え、
多点型光ファイバセンサとして機能する測定装置。
【請求項20】
前記デュアルコム光源部は、
単一波長のレーザ光を出射する種光源と、
前記種光源の前記レーザ光から前記第1のコム光を生成する第1のコム光発生器と、
前記種光源の前記レーザ光から前記第2のコム光を生成する第2のコム光発生器と
を有する、
請求項12から19のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項21】
前記種光源の前記レーザ光の周波数を変化させる、請求項20に記載の測定装置。
【請求項22】
前記第1のコム光発生器は、少なくとも第1の位相変調器および第1の強度変調器のいずれかを有し、
前記第2のコム光発生器は、少なくとも第2の位相変調器および第2の強度変調器のいずれかを有し、
少なくとも前記第1の位相変調器および前記第1の強度変調器のいずれかと、少なくとも前記第2の位相変調器および前記第2の強度変調器のいずれかとは同期制御される、請求項20または21に記載の測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置およびセンサシステムに関する。
【0002】
図20は、従来のセンサシステムを示す図である。半導体レーザは、単一の周波数の光を連続的に出射する。半導体レーザから出射された光は、分波用カプラでプローブ光とポンプ光とに分岐する。周波数シフタは、プローブ光の周波数をポンプ光の周波数に対してずらす。パルス変調器は、ポンプ光をパルス状の光に変調する。周波数シフトされたプローブ光とパルス状に変調されたポンプ光とは、対向して光ファイバに入射する。光ファイバの材料および構造によって決まる特定の周波数だけ互いに周波数がずれた光が対向して入射した場合、誘導ブリルアン散乱光が発生することが知られている。
【0003】
特に、プローブ光の周波数とポンプ光の周波数とがブリルアンシフト周波数νだけ異なる場合に、誘導ブリルアン散乱光は最大のブリルアン利得を得る。νは、光ファイバの材料にも依るが、例えば約11GHzである。誘導ブリルアン散乱光は、光電変換素子で電気信号に変換され、信号処理部でブリルアン利得スペクトルが算出される。なお、プローブ光はパルス状であるので、プローブ光が光ファイバ中のどの位置で散乱されたかを特定することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ブリルアンシフト周波数νは、光ファイバの歪みおよび温度変化に起因して変化することが知られている。それゆえ、トンネル、橋、ガス管および下水道等の大型かつ長尺の構造物に沿って光ファイバを敷設して、光ファイバの歪みまたは温度変化から上記構造物の歪みまたは温度を検知することができる。
【0005】
図21は、ブリルアン散乱を利用した光ファイバセンサの従来例である。コム光発生器から出力されるコム光の間隔をブリルアン周波数シフト量の2倍とすることにより、100kmのシングルモードファイバに渡ってブリルアン散乱光を取得できることが報告されている(非特許文献1参照)。なお、SSB変調器は、図20の例の周波数シフタとして機能する。オシレータおよびコンピュータは、図20の例の信号処理部として機能する。
【0006】
図20の従来のセンサシステムでは、プローブ光の周波数をブリルアンシフト周波数νに相当する約11GHzからさらに100MHz程度の範囲、例えば時間に対して精密に線形掃引する必要がある。図21のブリルアン散乱を利用した光ファイバセンサの従来例においても、プローブ光の周波数を掃引する必要がある。周波数掃引の線形性は、測定精度に影響する。線形掃引を実現するためには、複雑かつ精密な制御系が必要となる。それゆえ、装置コストが高くなる。また、周波数掃引は非線形になりがちであるので、これを補償するために、信号処理部および周波数シフタにおける複雑な信号処理が必要となる。
【0007】
トンネル、橋、ガス管および下水道等の大型かつ長尺の構造物に沿って光ファイバを敷設して、光ファイバの歪みまたは温度変化から上記構造物の歪みまたは温度を検知する光ファイバセンサが知られている。当該光ファイバは長手方向において、複数のファイバー・ブラッグ・グレーティング(以下、FBGと略記する)を有する。
【0008】
図22の従来技術に示す様に、複数のFBGを有する光ファイバに広帯域スペクトルを有する光源の光を入射させて、各FBGからの反射光スペクトルを光スペクトル解析装置で直接観測する、多点型光ファイバセンサが知られている。また、図23の従来技術に示す様に、単一周波数を有する光源の周波数を周波数軸上で掃引するとともに、複数のFBGを有する光ファイバに当該光源の光を入射させて、各FBGからの反射光の光パワーを測定する、多点型光ファイバセンサが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
図24は、多点型FBGセンシングシステムの従来例である。この例では5つのFBGを用いている。この例では、1つのコム光発生器から出力されるコム光の周波数間隔を変化させることにより、コヒーレンスピークを掃引して、各FBGの位置を特定している(非特許文献2参照)。
【0010】
図22の従来技術では、波長当たりの光パワーが小さいので、各FBGからの反射光の光パワーが小さくなるという問題がある。また、図23の従来技術では、時間に対して光周波数の線形掃引が困難であるので、これを補正するべく反射光の測定後に複雑な信号処理が受信側において必要となる。加えて、広範囲にわたって光周波数を掃引する場合、周波数の不連続な変化が必ず生じるので、光源側においても複雑な補正処理が必要となる。図24の例では、1つのコム光発生器から出力されるコム光をFBGに入射するコム光とFBGに入射しないコム光とに分離させ、かつ、当該1つのコム光発生器から出力されるコム光の周波数間隔を変更しているに過ぎない。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特許第2589345号明細書
[特許文献2] 特開2008-014934号公報
[非特許文献]
[非特許文献1] 光周波数コムを光源としたブリルアンセンサ長距離化の検討 第60回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集(2013年春)、27a‐A2‐5、東京農工大学、澤口 光 et.al
[非特許文献2] 周波数間隔可変コム光源を用いた多点型FBGセンシングシステム、2011年電子情報通信学会エレクトロニクスソサエティ大会、エレクトロニクス講演論文集1、第194頁、2011年9月13日~16日、何 祖源 et.al
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書においては、コム光を利用するに当たり、周波数掃引の必要が無い新規な測定装置およびセンサシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様においては、被測定対象に周波数間隔の異なる2つのコム光を入射するコム光源と、被測定対象から出力される光を測定する測定部とを備える測定装置を提供する。
【0013】
本発明の第2の態様においては、第1の態様の測定装置と被測定対象とを備えるセンサシステムを提供する。
【0014】
本発明の第3の態様においては、互いに同期し、かつ、周波数間隔が異なる第1のコム光および第2のコム光を生成するデュアルコム光源部と、周囲環境によって分光特性が変化する2以上の反射点を有し、第1のコム光が入射する光ファイバと、2以上の反射点から反射または透過された第1のコム光と、非偏光状態の第2のコム光とのビート信号を測定する測定器とを備え、多点型光ファイバセンサとして機能する測定装置を提供する。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態における被測定対象50と測定装置100とを備えるセンサシステム200を示す図である。
【図2】第1のコム光発生器22、第2のコム光発生器32および第3のコム光発生器42の詳細を示す図である。
【図3】第1のコム光の中心周波数、第2のコム光の中心周波数および誘導ブリルアン散乱光の関係を示す図である。
【図4】(a)第1のコム光、(b)第2のコム光、(c)誘導ブリルアン散乱光スペクトル、(d)第3のコム光および(e)ビート信号を示す図である。
【図5】第1のコム光の2以上のパルス群間の周期τと第2のコム光の2以上のパルス群間の周期τとの関係を示す図である。
【図6】第2の実施形態における被測定対象50と測定装置110とを備えるセンサシステム210を示す図である。
【図7】第3の実施形態における被測定対象50と測定装置120とを備えるセンサシステム220を示す図である。
【図8】被測定対象50として、光ファイバ150を用いる例を示す図である。
【図9】被測定対象50として、光ファイバ150を用いる他の例を示す図である。
【図10】第4の実施形態における多点型光ファイバセンサ400を示す図である。
【図11】第1のコム光、光ファイバ360および各FBGから反射された第1のコム光の反射スペクトルを示す図である。
【図12】第1のコム光と第2のコム光との関係を示す図である。
【図13】FBG#1から反射された第1のコム光の反射スペクトルと、FBG#1から反射された第2のコム光の反射スペクトルと、第1のコム光と第2のコム光とのビート信号との関係を示す図である。
【図14】第5の実施形態における多点型光ファイバセンサ500を示す図である。
【図15】第6の実施形態における多点型光ファイバセンサ600を示す図である。
【図16】第7の実施形態における多点型光ファイバセンサ700を示す図である。
【図17】第8の実施形態における多点型光ファイバセンサ500を示す図である。
【図18】FBG#1を透過した第1のコム光の透過スペクトルと、FBG#1を透過した第2のコム光の透過スペクトルと、第1のコム光と第2のコム光とのビート信号との関係を示す図である。
【図19】第9の実施形態における多点型光ファイバセンサ600を示す図である。
【図20】従来のセンサシステムを示す図である。
【図21】ブリルアン散乱を利用した光ファイバセンサの従来例を示す図である。
【図22】広帯域スペクトルの光源を用いた、従来の多点型光ファイバセンサを示す図である。
【図23】周波数掃引光源を用いた、従来の多点型光ファイバセンサを示す図である。
【図24】多点型FBGセンシングシステムの従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。

【0018】
図1は、第1の実施形態における被測定対象50と測定装置100とを備えるセンサシステム200を示す図である。測定装置100は、被測定対象50における誘導ブリルアン散乱光の利得スペクトルを測定する。被測定対象50は、本例では光ファイバである。ただし被測定対象50は、光ファイバ以外であってもよい。被測定対象50は、誘導ブリルアン散乱光を用いたセンシングの対象となる固体、液体および気体の少なくとも1以上を含んだ物体でもよい。なお、センサシステム200において、被測定対象50と測定装置100とは分離可能である。

【0019】
測定装置100は、種光源10、第1の分波用カプラ12、第2の分波用カプラ14、制御部15を有する。また測定装置100は、第1のコム光発生器22、第1のパルス変調器29、周波数シフタ31、第2のコム光発生器32、光バンドパスフィルタ30(以下、光BPF30)、第2のパルス変調器39、第3のコム光発生器42を有する。さらに測定装置100は、サーキュレータ60、合波用カプラ70、測定器90を有する。

【0020】
種光源10は、単一波長λのレーザ光を出射する。本例では、λ=1.55μm(対応する周波数ν=約1.94×10THz)であってよい。種光源10から出射された光は、第1の分波用カプラ12で分岐して周波数シフタ31と第2の分波用カプラ14とにそれぞれ入射する。

【0021】
第2の分波用カプラ14で分岐した光の一方は、第1のコム光発生器22に入射する。第1のコム光発生器22は、制御部15により制御されて、種光源10から生成される単一波長のレーザ光を変調する。第1のコム光発生器22は、種光源10から生成される単一波長のレーザ光を元に、第1のコム光を生成する。コム光とは、周波数軸上において等間隔に並んだ複数の光周波数モード(複数の周波数ピーク)を有する光である。本明細書においては一貫してコム光と称するが、一般的には光コムまたは光周波数コムとも称される場合がある。

【0022】
第1のコム光は、いわゆるプローブ光である。第1のコム光は、中心周波数νであり、周波数間隔fであるコム光である。すなわち、周波数νを中心に低周波数側および高周波数側に周波数間隔fで複数の周波数のピークを有する。本例において、周波数間隔fは25.0000GHzである。第1のコム光発生器22は、第1のコム光を第1のパルス変調器29に入射させる。

【0023】
第1のコム光は時間軸における波形がパルス状である。第1のパルス変調器29は、第1のコム光の2以上のパルスをそれぞれ含む2以上のパルス群間の周期を調整する。第1のコム光は周波数ピークの間隔が25.0000GHzであるので、時間軸において40psのパルス周期を有する。第1のパルス変調器29は、第1のコム光の周波数間隔よりも遅い周波数で第1のコム光を変調することにより、2以上のパルスを含むパルス群同士の間隔を調整する。例えば、第1のパルス変調器29は、第1のコム光を100kHzで変調することにより、第1のコム光のパルス周期を10μsとしてよい。また、第1のパルス変調器29は、第1のコム光のパルス群の形状を調節してもよい。変調されたパルス光の周期は、1つのパルス光が被測定対象50を伝搬するのに必要な時間としてよい。第1のパルス変調器29は、サーキュレータ60を介して変調した第1のコム光を被測定対象50の一端52に入力する。

【0024】
第1の分波用カプラ12で分岐した光の他方は、周波数シフタ31に入射する。周波数シフタ31は、レーザ光の周波数を被測定対象50のブリルアンシフト周波数νだけずらす。本例の周波数シフタ31は、レーザ光の周波数をブリルアンシフト周波数νだけ高周波側にずらす。

【0025】
第2のコム光発生器32には、ブリルアンシフト周波数νだけ高周波側にずれた光が周波数シフタ31から入射する。周波数シフタ31から第2のコム光発生器32に入射する光は種光源10で生成された光である。第2のコム光発生器32は、種光源10から生成される単一波長のレーザ光を元に、第2のコム光を生成する。

【0026】
第2のコム光は、いわゆるポンプ光である。第2のコム光は第1のコム光に対して、基準周波数が被測定対象50のブリルアンシフト周波数だけシフトしており、且つ、第2のコム光は第1のコム光に対して、周波数間隔が異なる。本例の基準周波数は、第1のコム光の1つの周波数ピークに対してブリルアンシフト周波数νだけ高周波数側にシフトした第2のコム光の1つの周波数ピークの周波数である。本例の第2のコム光は、中心周波数ν+ν+Δνおよび周波数間隔f-Δfのコム光である。本例では、fは25.0000GHzであり、Δfは0.0115GHz(=11.5MHz)であり、周波数間隔f-Δfは24.9885GHzである。なお、Δνについては後述する。第2のコム光発生器32は、第2のコム光を光BPF30に出射する。

【0027】
光BPF30は、予め定められた周波数帯域の光のみを通過させるフィルタである。光BPF30は、第2のコム光の複数の周波数ピークを通過させる。本例の光BPF30は、第2のコム光の基準周波数を含む複数の周波数ピークを透過させる。また、本例の光BPF30は、最低周波数ν+ν+Δνから最高周波数ν+ν+Δν+150GHzまでの幅の第2のコム光を通過させる。ここで、第2のコム光の基準周波数は、当該最低周波数と最高周波数との間に位置する。第2のコム光の基準周波数は、本例ではν+ν+Δν+3(f-Δf)である。なお、本例の光BPF30は150GHz(=25GHz×6)の帯域幅のみを通過させるとしたが、光BPF30の通過帯域幅は、測定に用いる第2のコム光の周波数ピークの数に応じて適宜定めてよい。また、光BPF30の通過帯域幅の最低周波数もまた、第1のコム光の中心周波数との相対的関係から適宜定めてよい。光BPF30を通過した第2のコム光は、第2のパルス変調器39に出射する。

【0028】
第2のコム光は、時間軸における波形がパルス状である。第2のパルス変調器39は、第2のコム光の2以上のパルスをそれぞれ含む2以上のパルス群間の周期を調整する。第2のパルス変調器39は、第1のパルス変調器29と同様に、第2のコム光の周波数間隔よりも遅い周波数で第2のコム光を変調することにより、2以上のパルスを含むパルス群同士の間隔を調整する。また、第2のパルス変調器39は、第2のコム光のパルス群の形状を調節してよい。第2のパルス変調器39は、変調した第2のコム光を被測定対象50の他端54に入力する。

【0029】
プローブ光としての第1のコム光が一端52から被測定対象50に入射され、ポンプ光としての第2のコム光が他端54から被測定対象50に入射される。第1のコム光に対して第2のコム光の基準周波数は丁度νだけずれており、かつ第1のコム光と光BPF30を透過した基準周波数以外の第2のコム光とは約νだけずれているので、比較的強度の高い誘導ブリルアン散乱光が発生する。

【0030】
誘導ブリルアン散乱光は、第1のコム光の各周波数において、ブリルアン利得スペクトルの強度に比例する。つまり、誘導ブリルアン散乱光は、第1のコム光と同様に、中心周波数νおよび周波数間隔fのコム光である。誘導ブリルアン散乱光は、サーキュレータ60を経て、合波用カプラ70に入射する。

【0031】
第2の分波用カプラ14で分岐した光の他方は、第3のコム光発生器42に入射する。第3のコム光発生器42は、種光源10から生成される単一波長のレーザ光を元に、第3のコム光を生成する。

【0032】
第3のコム光発生器42は、第1のコム光と基準周波数としての中心周波数νが同一であり、且つ、周波数間隔が異なる第3のコム光を生成する。本例の第3のコム光は、中心周波数νおよび周波数間隔f+Δfのコム光である。Δfは、非ゼロであればよく、本例では0.001GHz(=1MHz)である。Δfは、誘導ブリルアン散乱光と第3のコム光とが干渉した結果であるビート信号の周波数間隔となる。Δfは、測定器90で検出可能な周波数であればよく、1MHzの値でなく任意に定めてもよい。第3のコム光は、いわゆるローカル光である。第3のコム光発生器42は、第3のコム光を合波用カプラ70に出射する。

【0033】
合波用カプラ70は、誘導ブリルアン散乱光と第3のコム光とを測定器90に出射する。誘導ブリルアン散乱光および第3のコム光における周波数間隔の相違に起因して、ビート信号が発生する。

【0034】
測定器90は、誘導ブリルアン散乱光と第3のコム光とのビート信号を測定する。測定器90は、ビート信号の測定結果に基づいて、間接的に被測定対象50から出力される誘導ブリルアン散乱光のスペクトルを測定することができる。誘導ブリルアン散乱光のスペクトルとビート信号の測定結果との関係については、図3の説明において詳しく述べる。

【0035】
測定器90は、光電変換素子80およびスペクトル解析器82を有する。光電変換素子80はビート信号を光電変換する。つまり、光電変換素子80は受信するビート信号の強度に応じた電気信号を生成する。例えば光電変換素子80は、ビート信号の強度が大きい場合には大きい信号値の電気信号を生成する。なお、光電変換素子80は、イメージセンサであってもよい。本件出願時点の技術において、イメージセンサにおける1回の測定時間は最速で30msである。

【0036】
スペクトル解析器82は、光電変換素子80が生成した各時間における電気信号を高速フーリエ変換する。これによりスペクトル解析器82は、ビート信号の周波数成分毎の信号強度を算出する。本例では、ビート信号の周波数は、最大でもΔfと2500(=ν以上の第1のコム光の周波数ピークの数)との積の値程度としてよい。つまり、ビート信号の周波数は、最大でも1MHz×2500=2.5GHzとしてよい。この場合、ビート信号は、種光源10の周波数である約1.94×10THzに比べて格段に小さい。従って、ビート信号の測定は、誘導ブリルアン散乱光を直接測定するために用いる光スペクトル解析装置ではなく、高速フーリエ変換等の信号処理が可能な電子回路を実装したスペクトル解析器82により実行できる。

【0037】
図2は、第1のコム光発生器22、第2のコム光発生器32および第3のコム光発生器42の詳細を示す図である。第1のコム光発生器22は、第1の位相変調器23、第1の強度変調器24、増幅器25、信号発生器26、分散補償用ファイバ27、高非線形ファイバ28を有する。本例の信号発生器26は、変調周波数f=25.0000GHzの変調信号を発生する。

【0038】
変調信号は、増幅器25を介して第1の位相変調器23および第1の強度変調器24に伝達される。第1の位相変調器23および第1の強度変調器24は、変調周波数f=25.0000GHzでもって単一波長λのレーザ光の位相を変調する。これにより、単一波長λのレーザ光は、変調周波数f=25.0000GHzに等しい周波数間隔を有する種コム光に変調される。第1の位相変調器23および第1の強度変調器24は、例えばLiNbOの結晶を用いたLN光変調器であってよい。

【0039】
なお、本例の第1のコム光発生器22は、第1の位相変調器23および第1の強度変調器24を有するが、第1のコム光発生器22は、第1の位相変調器23および第1の強度変調器24のいずれかだけを有してもよい。第1のコム光発生器22は、少なくとも第1の位相変調器23および第1の強度変調器24のいずれかを有してよい。

【0040】
種コム光は、周波数軸において複数の周波数ピークを有する。種コム光は、周波数νを中心に25.0000GHzだけ離れた複数の周波数ピークを有する。ただし、周波数軸における種コム光の周波数ピークの数は、第1のコム光の周波数ピークの数よりも少ない。

【0041】
種コム光は、時間軸において相対的に長い光パルスを有する。分散補償用ファイバ(Dispersion Compensated Fiber:DCF)27は、種コム光の波長分散特性を補償する。これにより、分散補償用ファイバ27は、種コム光の光パルス幅を分散補償用ファイバ27に入射する前よりも短い光パルス幅に変える。分散補償用ファイバ27から出射された種コム光は、高非線形ファイバ28に入射する。

【0042】
高非線形ファイバ28は、種コム光の周波数帯域を拡大する。高非線形ファイバ28は、種コム光の周波数ピークよりも多い周波数ピークを有する第1のコム光を生成する。第1のコム光は、周波数νを中心に周波数間隔25.0000GHzの複数の周波数ピークを有する。高非線形ファイバ28は、HNLF(Highly-Nonlinear Fiber)とも称される。高非線形ファイバ28は、GeO等を添加した石英系光ファイバ、または、断面内に空孔が周期配列して存在するフォトニッククリスタルファイバであってよい。

【0043】
第2のコム光発生器32は、第2の位相変調器33、第2の強度変調器34、増幅器35、信号発生器36、分散補償用ファイバ37、高非線形ファイバ38を有する。各部材の機能および構成は、基本的に第1のコム光発生器22と同様である。ただし、信号発生器36は、変調周波数f-Δf(=25.0000-0.0115GHz=24.9885GHz)の変調信号を発生する点が異なる。第2のコム光発生器32もまた、少なくとも第2の位相変調器33および第2の強度変調器34のいずれかを有してよい。

【0044】
第3のコム光発生器42は、第3の位相変調器43、第3の強度変調器44、増幅器45、信号発生器46、分散補償用ファイバ47、高非線形ファイバ48を有する。各部材の機能および構成は、第1のコム光発生器22と同様である。ただし、信号発生器46は、変調周波数f+Δf(=25.0000+0.001GHz=25.001GHz)の変調信号を発生する点が異なる。第3のコム光発生器42もまた、少なくとも第3の位相変調器43および第3の強度変調器44のいずれかを有してよい。

【0045】
制御部15は、信号発生器26と、信号発生器36と、信号発生器46とを同期して動作させる。これにより、第1の位相変調器23と、第2の位相変調器33と、第3の位相変調器43とは互いに同期制御される。したがって、第1のコム光と第2のコム光と第3のコム光とは、互いに同期する。

【0046】
図3は、第1のコム光の中心周波数、第2のコム光の中心周波数および誘導ブリルアン散乱光の関係を示す図である。横軸は周波数であり、縦軸は強度を示す。なお、ブリルアン利得スペクトルを破線にて示す。

【0047】
第1のコム光の中心周波数νである。第2のコム光の中心周波数ν+ν+Δνである。なお、本例ではΔν=34.5MHzである。ブリルアン利得スペクトルの強度のピークを与える周波数はν+Δνであり、第2のコム光の中心周波数ν+ν+Δνよりもνだけ小さい。

【0048】
ブリルアン利得スペクトルは、ローレンツ型の関数と相似である。つまり、ブリルアン利得スペクトルは、周波数xに対して強度f(x)=c/{1+a(x-b)}と相似である。ここで、a,bおよびcはそれぞれ正の実数である。f(x)の最大値fmaxは、x=bにおけるfmax(b)=cである。f(x)は、x=b±a‐1/2において、fmax/2となる。また、f(x)は、x=b±3a‐1/2において、fmax/10となる。

【0049】
本例では、ブリルアン利得スペクトルの半値幅は23MHzである。つまり、ブリルアン利得スペクトルは、ν+Δνを中心に11.5×2MHzの幅を有する。また、ブリルアン利得スペクトルの最大値の1/10となる周波数は、ν+Δνを中心に11.5×3×2(=69MHz)の幅を有する。

【0050】
本例では、ブリルアン利得スペクトルの最大値の1/10となる2つの周波数のうち低周波数側の周波数を、第1のコム光の中心周波数νと一致させるようにする。つまり、周波数シフタ31は、第2のコム光の中心周波数を、νからν+ν+34.5MHzにずらす。それゆえ、本例では、Δν=34.5MHzとする。

【0051】
図4は、(a)第1のコム光、(b)第2のコム光、(c)被測定対象50からの誘導ブリルアン散乱光、(d)第3のコム光および(e)ビート信号を示す図である。(a)から(e)において、横軸は周波数であり、縦軸は強度を示す。

【0052】
(a)は、第1のコム光を示す。特に、第1のコム光の中心周波数ν以上における、中心周波数νを含む7つの周波数ピークを示す。上述の様に、第1のコム光は中心周波数νであり、周波数間隔が25.0000GHzである。

【0053】
(b)は、第2のコム光を示す。上述の様に、第2のコム光は中心周波数ν+ν+Δνであり、周波数間隔がf-Δf=24.9885GHzである。上述の様に、第2のコム光の基準周波数(左から4番目の周波数ピーク)は、第1のコム光の左から4番目のピークに対してνだけずれている。上述の様に、本例の第2のコム光の基準周波数は、ν+ν+Δν+3(f-Δf)である。なお、説明の便宜上、(b)にはブリルアン利得スペクトルを破線にて付記した。ただし、ブリルアン利得スペクトルは、第2のコム光そのものではない。

【0054】
ブリルアン利得スペクトルの半値幅は、23MHz(=0.023GHz)である。また、ブリルアン利得スペクトルの最大値の1/10となる周波数の幅は、34.5×2=69MHz(=0.069GHz)である。それゆえ、ブリルアン利得スペクトルの幅は、第2のコム光の周波数間隔24.9885GHzに比べて十分に小さい。説明の便宜上、(b)ではブリルアン利得スペクトルの幅は故意に拡大されて描かれており、ブリルアン利得スペクトルの幅と第2のコム光の周波数間隔との相対的なスケールは、図面上は正確ではないことに留意されたい。

【0055】
(c)は、誘導ブリルアン散乱光スペクトルを示す。ブリルアン散乱光スペクトルは、第1のコム光と同じ周波数間隔を有する。第1のコム光および第2のコム光の周波数間隔の差であるΔfは、被測定対象50のブリルアン利得スペクトルの幅よりも小さい。第1のコム光と第2のコム光との周波数間隔差はΔfであるので、誘導ブリルアン散乱光は、ブリルアン利得スペクトルをΔfだけずれた複数の周波数でサンプリングすることができる。本例では、誘導ブリルアン散乱光は、ブリルアン利得スペクトルの最大値の1/10となる周波数の幅69MHzにおいて、ブリルアン利得スペクトルをΔf(=11.5MHz)の間隔で7点だけサンプリングする。

【0056】
第1のコム光および第2のコム光の周波数間隔は、いずれも被測定対象50のブリルアン利得スペクトルの幅の2倍よりも大きい。本例では、第1のコム光および第2のコム光の周波数間隔はそれぞれf=25.0000GHzおよびf-Δf=24.9885GHzであり、ブリルアン利得スペクトルの幅は半値幅が23MHzである。よって、第1のコム光および第2のコム光の周波数間隔は、ブリルアン利得スペクトルの半値幅の約1000倍である。なお、νは11GHzであるので、ブリルアン利得スペクトルの最大値は、第2のコムの各周波数ピークの低周波数側近傍に位置する。

【0057】
(d)は、第3のコム光を示す。第3のコム光の中心周波数はνで第1のコム光の中心周波数と一致する。ただし、第3のコム光の周波数間隔はf+Δfであり、誘導ブリルアン散乱光の周波数間隔fとはΔfだけ異なる。

【0058】
(e)は、(c)誘導ブリルアン散乱光スペクトルと(d)第3のコム光とのビート信号を示す。ここで、ビート信号の周波数は周波数νに比べて格段に小さく、かつ、ビート信号の形状はブリルアン利得スペクトルの形状と相似である。それゆえ、ビート信号の強度に応じた電気信号を測定することにより、ブリルアン利得スペクトルを間接的に測定することができる。本例では0Hzから6・Δf(=6MHz)までの各ビート信号により、ブリルアン利得スペクトルを間接的に再現できる。これにより、被測定対象50の任意の各点における歪みまたは温度変化に応じたブリルアンシフト周波数νの変化を検知することができる。

【0059】
本例の測定装置100は、ポンプ光の周波数を時間に対して精密に線形掃引する必要がない。それゆえ、線形掃引を実現するための、複雑かつ精密な制御系が不要である。また、周波数掃引の非線形性を補償するために、従来のように信号処理部および周波数シフタにおいて複雑な信号処理をする必要もない。また、1回の測定が1秒以内に行われるので、被測定対象50に加わった歪みまたは温度の高精度な測定を少なくとも1秒ごとに行うことができる。

【0060】
上述の例では、ブリルアン利得スペクトルの最大値の1/10となる周波数の幅69MHzを、11.5MHz間隔で7点サンプリングする例を示した。変形例として、周波数の幅69MHzを1MHz間隔で69点サンプリングしてもよい。この場合第2のコム光は、Δf=1MHzとする。加えて、第2のコム光において、周波数ν+ν+Δνから高周波側に位置する69個の周波数ピークを用いればよい。また、半値幅23MHzを7点でサンプリングしてもよい。この場合、第2のコム光は、Δf=3.87MHzとしてよい。加えて、周波数ν+ν+Δν以上の高周波側に位置する第2のコム光の7個の周波数ピークを用いればよい。ブリルアン利得スペクトルをサンプリングする間隔Δfは、サンプリング数に応じて任意に定めてもよい。

【0061】
図5は、第1のコム光の2以上のパルス群間の周期τと第2のコム光の2以上のパルス群間の周期τとの関係を示す図である。上述の様に、第1のパルス変調器29は、第1のコム光のパルス群間の周期τを調節する。また、第2のパルス変調器39は、第2のコム光のパルス群間の周期τを調節する。本例の測定装置100において、第1のパルス変調器29および第2のパルス変調器39は、第1のコム光の2以上のパルス群間の周期τと第2のコム光の2以上のパルス群間の周期τとを異ならせることができる。それゆえ、被測定対象50において第1のコム光のパルス群と第2のコム光のパルス群とが重なる位置を順次変化させることができる。

【0062】
なお、第1のコム光発生器22と被測定対象50の一端52との間に制御ゲート56を設け、かつ、第2のコム光発生器32と被測定対象50の他端54との間に制御ゲート58を設けてもよい。本例では、第1のパルス変調器29と被測定対象50の一端52との間に制御ゲート56を設け、第2のパルス変調器39と被測定対象50の他端54との間に制御ゲート58を設ける。

【0063】
コム光は、時間軸上ではパルス光である。例えば、2.5THzの帯域のコム光は、1psの短パルス光となる。制御ゲート56および制御ゲート58は、パルス光が出力されるタイミングを制御することができる。これにより、被測定対象50中におけるパルス光の衝突位置を制御することができる。それゆえ、パルス群間の周期は固定して、制御ゲート56および制御ゲート58により、被測定対象50中におけるパルス光の衝突位置を制御してもよい。

【0064】
例えば、パルス光の繰り返し周波数が25GHzである場合、時間軸上においてパルス光の間隔(すなわち、パルス周期)は0.04nsとなる。0.04ns周期でパルス光を出力するためには、25GHZよりも高い周波数で動作する機器を用いて、制御ゲート56および制御ゲート58を実現すればよい。例えば、40GHz帯域で動作するLN強度変調器により制御ゲート56および制御ゲート58を実現することができる。

【0065】
本例の第1のパルス変調器29は、第1のコム光のパルス群間の周期を、1つのパルス光が被測定対象50を伝搬するのに必要な時間とすることができる。被測定対象50(一例として、光ファイバ)の長さが2kmであり、かつ、当該光ファイバ内での光速が2×10m/sである場合、第1のコム光のパルス群間のパルス周期を10μsとしてよい。つまり、2km=10μs×2×10m/sを満たすように、第1のコム光のパルス群間の周期τを調節してよい。なお、屈折率nの媒質中での光速c'は、c'=c/nとなる。また、周期τを固定して、周期τを周期τよりも大きいまたは小さい値で固定することにより、第1のコム光のパルス群と第2のコム光のパルス群との衝突位置を被測定対象50の異なる任意の位置とすることができる。なお、変調後のパルス群の持続時間が10nsである場合、空間分解能は2m(=10ns×2×10m/s)であってよい。

【0066】
光ファイバの長さLが2kmであり、空間分解能ΔLが2mであり、イメージセンサを用いた一回の測定時間τが30ms(=30×10-3s)である場合を想定する。この場合、光ファイバの全長を測定するために要する全測定時間Tは、T=(L/ΔL)τ=30sとなる。

【0067】
測定器90は、被測定対象50の各位置における誘導ブリルアン散乱光のスペクトルの分布を測定してよい。これにより、被測定対象50の異なる任意の位置において、ブリルアンシフト周波数νの変化を測定することができる。なお、周期τと周期τとを等しくして、被測定対象50の同一位置だけのブリルアンシフト周波数νを測定してもよい。

【0068】
なお、本例では、ΔfおよびΔfを相対的に小さくしても、1回の測定時間は変わらない。上述の様に、本例の1回の測定は1秒以内に行なわれる。これに対して、周波数を掃引する例は数分程度の時間が必要となる。また、周波数掃引の例では、周波数間隔を小さくするほど、測定時間が長くなる。このように本例の手法では、周波数を掃引する例よりも測定時間を短くすることができる。また、それゆえに本例では、周波数を掃引する例では困難であった数Hz程度の振動をも検知することができる。

【0069】
図6は、第2の実施形態における被測定対象50と測定装置110とを備えるセンサシステム210を示す図である。本例では、第1のパルス変調器29とサーキュレータ60との間にデポラライザ65を備え、第3のコム光発生器42と合波用カプラ70との間にもデポラライザ65を備える。測定装置110の光経路が、伝搬特性に偏波依存性が無いシングルモードファイバである場合に、デポラライザ65が必要となる。それゆえ、測定装置110の光経路を偏波保持光ファイバで構成し、かつ、種光源10から出射された光を偏波コントローラにより、偏波保持光ファイバ内で偏波が保持される直線偏波にしておけば、デポラライザ65は不要である。勿論、第1の実施形態の測定装置100は、偏波保持光ファイバおよび偏波コントローラを備えてもよい。第2の実施形態の測定装置110は、シングルモードファイバおよびデポラライザ65を備える点において第1の実施形態と異なる。他の点は、第1の実施形態と同様である。

【0070】
デポラライザ65は、第1のコム光および第3のコム光の偏波状態をランダムにする。つまり、デポラライザ65は、第1のコム光および第3のコム光を非偏波状態にする。測定器90は、誘導ブリルアン散乱光と非偏波状態の第3のコム光とのビート信号を測定する。

【0071】
本例では、誘導ブリルアン散乱光と第3のコム光とは、合波されるまでの過程において光路長が異なり得る。それゆえ、デポラライザ65が無い場合には、誘導ブリルアン散乱光と第3のコム光とは、偏波状態が異なる場合がある。誘導ブリルアン散乱光と第3のコム光との偏波状態が異なる場合には、十分なビート信号の強度が得られない可能性がある。本例においては、第3のコム光はデポラライザ65により非偏波状態にされている。つまり、第3のコム光はあらゆる状態の偏波を均等に含んだ光であるので、ブリルアン利得スペクトルの偏波状態と一致する偏波を必ず含む。それゆえ、シングルモードファイバを用いた場合であっても、ビート信号の強度は最低限度担保される。

【0072】
なお本例では、第1のパルス変調器29とサーキュレータ60との間にデポラライザ65を備えるとしたが、これに代えて、第2のパルス変調器39と被測定対象50の他端54との間にデポラライザ65を備えてもよい。これによっても同様の効果が得られる。

【0073】
図7は、第3の実施形態における被測定対象50と測定装置120とを備えるセンサシステム220を示す図である。本例では、第2の分波用カプラ14と第1のコム光発生器22との間に周波数シフタ21を設け、第2の分波用カプラ14と第3のコム光発生器42との間に周波数シフタ41を設ける。周波数シフタ21および周波数シフタ41は、レーザ光の中心周波数νをν+Δνだけ低周波数側にずらす。これにより、第1のコム光および第3のコム光の中心周波数は、ν-(ν+Δν)となる。当該構成によっても、第1の実施形態と同様の測定を行うことができる。

【0074】
図8は、被測定対象50として、光ファイバ150を用いる例を示す図である。なお、相対位置を説明することを目的として、光ファイバ150の長手方向はZ方向であるとし、光ファイバ150の長手方向に垂直な断面はX‐Y平面であるとする。本例の光ファイバ150は、クラッド154内に、光ファイバコア153と、X‐Y平面において当該光ファイバコア153を挟む2つの応力付与部156とを有する。なお、光ファイバ150は、クラッド154の外側に被覆部をさらに有してもよい。

【0075】
本例の光ファイバ150は、PANDA(Polarization‐maintaining AND Absorption‐reducing)ファイバである。PANDAファイバにおいては、非軸対象な応力が予め付与されている。それゆえ、PANDAファイバにおいては、光の偏光が、光ファイバ中でのランダムな複屈折に起因して変化しない。本例において、応力付与部156‐1は光ファイバコア153に-Y方向の応力を付与し、応力付与部156‐2は+Y方向の応力を付与する。これにより、光ファイバコア153のX方向とY方向とで偏波状態を異ならせることができる。

【0076】
ブリルアン利得スペクトルは、光ファイバ150の温度に起因して変化し、光ファイバ150が受ける歪みに起因しても変化する。それゆえ、ブリルアン利得スペクトルを測定しても、周波数が温度に起因して変化しているのか、歪みに起因して変化しているのか判別することが困難である場合がある。

【0077】
本例の光ファイバ150はPANDAファイバであるので、互いに独立なX方向の偏波とY方向の偏波とが光ファイバ150中を伝搬すると見なすことができる。すなわち、1本の光ファイバ150でありながら、2つの異なる光が光ファイバ150中を伝搬すると見なすことができる。

【0078】
X方向の偏波をνとし、Y方向の偏波をνとし、被測定対象50の特定位置における温度をTとし、被測定対象50の特定位置における歪みをεとする。νのブリルアンシフト周波数の変化であるδνB1およびνのブリルアンシフト周波数の変化であるδνB2は、下記の数式1および数式2で表される。
[数1]
δνB1=A・δT+B・δε
[数2]
δνB2=C・δT+D・δε

【0079】
上述のブリルアン利得スペクトルを測定することにより、δνB1およびδνB2を特定することができる。また、A、B、CおよびDは、各光ファイバ150に固有の値である。それゆえ、温度Tの変化量であるδTと、歪みεの変化量であるδεとは、数式1および数式2の連立方程式から算出することができる。これにより、光ファイバ150における温度および歪みの変化量を得ることができる。

【0080】
なお、本例の光ファイバ150は、母材作成工程およびその後の紡糸工程により形成することができる。一例であるが、光ファイバコア153はGeOおよびSiOを有してよく、クラッド154はSiOを有してよく、応力付与部156はBおよびSiOを有してよい。

【0081】
図9は、被測定対象50として、光ファイバ150を用いる他の例を示す図である。本例の光ファイバ150は、第1の光ファイバ151および第2の光ファイバ152の2つの光ファイバを有する。この2つの光ファイバは、光ファイバ150の歪み変化および温度変化を測定するために用いられる。上述の様に、2つの光ファイバのブリルアンシフト周波数の変化を測定し、数式1および数式2からδTおよびδεを算出する。

【0082】
図9(a)の例において、光ファイバ150‐1は、同じ直径を有するが屈折率の温度依存性が異なる、第1の光ファイバ151と第2の光ファイバ152とを有する。屈折率の温度依存性が異なる2つの光ファイバは、異なる元素からなる材料を有してよく、同じ元素であるが組成比が異なる材料を有してもよい。第1の光ファイバ151と第2の光ファイバ152とは、同じ直径を有するが屈折率の歪み依存性が異なってもよい。

【0083】
図9(b)の例において、光ファイバ150‐2は、外側に被覆部155を有する第1の光ファイバ151と被覆部155を有しない第2の光ファイバ152とを有する。これにより、第1の光ファイバ151と第2の光ファイバ152とにおける屈折率の温度依存性を異ならせてよい。したがって、図9(b)の例では、2つの光ファイバ屈折率の温度依存性が同じであってもよい。

【0084】
図9(c)の例では、光ファイバ150‐2は、直径が異なる2つの光ファイバを有する。本例では、第1の光ファイバ151の直径が第2の光ファイバ152よりも大きい。なお、第2の光ファイバ152の直径が第1の光ファイバ151よりも大きくてもよい。これにより、2つの光ファイバにおける屈折率の温度依存性を異ならせることができる。

【0085】
図10は、第4の実施形態における多点型光ファイバセンサ400を示す図である。多点型光ファイバセンサ400は、デュアルコム光源部340と、サーキュレータ350と、光ファイバ360と、測定器390とを有する。

【0086】
デュアルコム光源部340は、種光源310、分波用カプラ312、制御部315、第1のコム光発生器320、および、第2のコム光発生器330を有する。種光源310は、単一波長λのレーザ光を出射する。本例では、λ=1.55μm(対応する周波数ν=約1.94×10THz)である。種光源310から出射された光は、分波用カプラ312で分岐して第1のコム光発生器320と第2のコム光発生器330とにそれぞれ入射する。

【0087】
第1のコム光発生器320は種光源310のレーザ光から第1のコム光を生成し、第2のコム光発生器330は種光源310のレーザ光から第2のコム光を生成する。コム光とは、周波数軸上において等間隔に並んだ複数の光周波数モード(複数の周波数ピーク)を有する光である。

【0088】
第1のコム光発生器320は、第1の位相変調器322および第1の強度変調器323、増幅器324、信号発生器326、分散補償用ファイバ328、高非線形ファイバ329を有する。本例の信号発生器326は、変調周波数f=2.500GHzの変調信号を発生する。変調信号は、信号発生器326から増幅器324を介して第1の位相変調器322および第1の強度変調器323に伝達される。第1の位相変調器322および第1の強度変調器323は、変調周波数f=2.500GHzで単一波長λのレーザ光の位相を変調する。これにより、単一波長λのレーザ光は、変調周波数f=2.500GHzに等しい周波数間隔を有する種コム光に変調する。第1の位相変調器322および第1の強度変調器323は、例えばLiNbOの結晶を用いたLN光変調器であってよい。

【0089】
種コム光は、周波数軸において複数の周波数ピークを有する。種コム光は、周波数νを中心に2.500GHzだけ離れた複数の周波数ピークを有する。ただし、周波数軸における種コム光の周波数ピークの数は、第1のコム光および第2のコム光の周波数ピークの数よりも少ない。

【0090】
種コム光は、時間軸において相対的に長い光パルスを有する。分散補償用ファイバ(Dispersion Compensated Fiber:DCF)328は、種コム光の波長分散特性を補償する。これにより、分散補償用ファイバ328は、種コム光の光パルス幅を分散補償用ファイバ328に入射する前よりも短い光パルス幅に変える。分散補償用ファイバ328から出射された種コム光は、高非線形ファイバ329に入射する。

【0091】
高非線形ファイバ329は、種コム光の周波数帯域を拡大する。高非線形ファイバ329は、種コム光の周波数ピークよりも多い周波数ピークを有する第1のコム光を生成する。第1のコム光は、周波数νを中心に周波数間隔2.500GHzの複数の周波数ピークを有する。高非線形ファイバ329は、HNLF(Highly-Nonlinear Fiber)とも称される。高非線形ファイバ329は、GeO等を添加した石英系光ファイバ、または、断面内に空孔が周期配列して存在するフォトニッククリスタルファイバであってよい。高非線形ファイバ329において生成された第1のコム光は、サーキュレータ350を介して光ファイバ360に入射する。

【0092】
第2のコム光発生器330は、第2の位相変調器332および第2の強度変調器333、増幅器334、信号発生器336、分散補償用ファイバ338、高非線形ファイバ339を有する。各構成の機能は、第1のコム光発生器320の対応する構成とほぼ同様であるので、説明を省略する。ただし、本例の信号発生器336は、変調周波数f=2.501GHzの変調信号を発生する。これにより、第2のコム光発生器330は、周波数νを中心に周波数間隔2.501GHzの複数の周波数ピークを有する第2のコム光を生成する。

【0093】
第1のコム光の周波数間隔は2.500GHzであり第2のコム光の周波数間隔は2.501GHzであるので、第1のコム光と第2のコム光とは周波数間隔が異なる。第1のコム光および第2のコム光は、サーキュレータ350を介して光ファイバ360に入射する。

【0094】
制御部315は、第1のコム光発生器320中の信号発生器326と、第2のコム光発生器330中の信号発生器336とを同期して動作させる。これにより、第1の位相変調器322および第1の強度変調器323と第2の位相変調器332および第2の強度変調器333とは同期制御される。したがって、第1のコム光と第2のコム光とは、互いに同期する。なお、本例では、第1の位相変調器322および第1の強度変調器323を有する例を説明したが、第1のコム光発生器320は、少なくとも第1の位相変調器および第1の強度変調器のいずれかを有してもよい。同様に、第2のコム光発生器330は、少なくとも第2の位相変調器および第2の強度変調器のいずれかを有してよい。この場合、少なくとも第1の位相変調器および第1の強度変調器のいずれかと、少なくとも第2の位相変調器および第2の強度変調器のいずれかとが同期制御されればよい。

【0095】
光ファイバ360は、周囲環境によって分光特性が変化する1以上の反射点を含む。本明細書における周囲環境とは、分光特性が変化する反射点に接した領域における、温度、歪み、圧力、化学物質濃度、湿度および放射線等の少なくとも1以上の状態を指す。本明細書において分光特性が変化するとは、反射スペクトルまたは透過スペクトルが変化することを意味する。本明細書においては、反射スペクトルまたは透過スペクトルの形状は保ったままで中心周波数が変化する、分光特性の変化の例を説明する。ただし、分光特性の変化は、これに限定されず、反射スペクトルまたは透過スペクトルの形状が変化してもよい。または、分光特性の変化は、反射スペクトルまたは透過スペクトルの中心周波数は変わらず、反射率または透過率が一様に変化してもよい。

【0096】
周囲環境により分光特性が変化する反射点は、光ファイバ360内部に設けられ、かつ、特定の周波数または特定の波長の光を反射する反射体からなる。また、この分光特性が変化する反射点は、当該「特定の周波数または特定の波長」以外の光を透過させる。それゆえ、分光特性が変化する反射点における反射光および透過光を利用したスペクトル測定が可能である。本明細書において、分光特性が変化する反射点とは、光ファイバ360の長手方向に設けられた、反射スペクトルまたは透過スペクトルが変化する光学フィルタとしての機能を有する部分であればよい。反射体を構成する反射点は、光ファイバ360内部に設けられた固体、液体または気体であってよい。

【0097】
本例において、分光特性を有する1以上の反射点は、1以上のFBGである。図10においてFBG#1、FBG#2‥と図示するように、光ファイバ360は、N個のFBGを有する。Nは1以上の自然数であり、一例においてN=100である。ただし、光ファイバ360の長さに応じてNの値は適宜定めてよい。光ファイバ360が長いほど、Nの値は大きくしてよい。

【0098】
本明細書において1つのFBGは、光ファイバ360のコアにおいて周期的な屈折率の変化を設けた1つの領域を指す。周期的な屈折率の変化が設けられた1つの領域が、1つの光学フィルタに対応するとしてよい。この周期的な屈折率変化の周期をグレーティング周期と称する。例えば、ゲルマニウムを添加した光ファイバに周期的開口を有するマスクを介して紫外線を照射することにより、FBGを形成することができる。

【0099】
光ファイバ360は、入射した光のうちグレーティング周期に対応する特定の周波数の光を主に反射する。各FBGは、それぞれ異なるグレーティング周期を有する。本例において、FBG#1は周波数νの光を主に反射し、FBG#2は周波数νの光を主に反射し、同様に、FBG#Nは周波数νの光を主に反射する。反射する様子を折り返し矢印にて模式的に示す。

【0100】
本明細書において、各FBGが主に反射する光の周波数ν、ν…νを、各FBGの中心周波数と称する。各FBGはそれぞれ異なるグレーティング周期を有するので、各FBGにおいて反射光の周波数スペクトルの中心周波数は互いに異なる。各FBGの中心周波数ν、ν…νの値は光ファイバ360の製造時に予め定めることができる。

【0101】
本例における1以上のFBGは、第1のコム光が入射する位置から離れるに従い中心周波数が大きくなるように光ファイバ360中に配置される。つまり、各FBGの中心周波数はν<ν<‥<νであり、サーキュレータ350に近い順にν、ν、‥νとなるように配置する。

【0102】
光ファイバ360には、サーキュレータ350を介して第1のコム光および第2のコム光が入射する。光ファイバ360は、入射した第1のコム光および第2のコム光のうち各FBGの中心周波数に応じた光を主に反射する。反射された第1のコム光および第2のコム光は、サーキュレータ350を介して測定器390に入射する。

【0103】
第2のコム光は、第1のコム光とはΔfだけ周波数間隔が異なる。本例において、第2のコム光は第1のコム光よりもΔfだけ周波数間隔が大きい。本例のΔfは、0.001GHz(=1MHz)である。他の例においては、Δfは第1のコム光の周波数間隔の0.1%であってもよい。

【0104】
各FBGの中心周波数の大小関係はν<ν<‥<νであるので、FBG#NのNが大きいほど、第1のコム光の反射スペクトルと第2コム光との周波数差NΔfは大きくなる。1つのFBGが第1および第2のコム光の各10本の周波数ピークを反射し、かつ、N=250である場合、Δf=0.001GHzであるから、10・N・Δf=2.5GHzとなる。2.5GHzは第1のコム光の周波数間隔に一致する。そこで、第1のコム光の周波数ピークが5000本である場合には、コム光の周波数軸の中心における周波数νを含む2500本程度を反射スペクトルの測定に用いてよい。本例では、周波数ν以上の周波数帯における2500本程度の周波数ピークを反射スペクトルの測定に用いる。

【0105】
光ファイバ360における1以上のFBGから反射された第1のコム光および第2のコム光は、合波されてビート信号となる。ビート信号は、第1のコム光と第2のコム光との周波数差を有する。測定器390は、当該ビート信号を測定する。

【0106】
測定器390は、光電変換素子380とスペクトル解析装置385とを有する。光電変換素子380はビート信号を光電変換する。つまり、光電変換素子380は受信するビート信号の強度に応じた電気信号を生成する。例えば光電変換素子380は、ビート信号の強度が大きい場合には大きい信号値の電気信号を生成する。

【0107】
スペクトル解析装置385は、光電変換素子380が生成した各時間における電気信号を高速フーリエ変換する。これによりスペクトル解析装置385は、ビート信号の周波数成分毎の信号強度を算出する。本例では、ビート信号の周波数成分は、10・N・Δf程度である。つまり、ビート信号は最大でも、種光源310のν周波数である約1.94×10THzに比べて格段に小さい1GHz(=10・100・1MHz)である。これにより、ビート信号の測定は、光スペクトル解析装置ではなく高速フーリエ変換等の信号処理が可能な電子回路を実装したスペクトル解析装置385により実行できる。

【0108】
図11は、第1のコム光、光ファイバ360および各FBGから反射された第1のコム光の反射スペクトルを示す図である。上段の第1のコム光は、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。上述の様に、第1のコム光の中心の周波数はνであり、周波数間隔は2.500GHzである。本例において、第1のコム光は1.3THz程度の広がりを有してよい。

【0109】
中段の光ファイバ360は、横軸が光ファイバ360の長手方向に沿った長さである。縦軸は特定の物理量を示すものではなく、複数のFBGが光ファイバ360に設けられることを模式的に示す。

【0110】
下段の各FBGから反射された第1のコム光の反射スペクトルは、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。各FBGは各中心周波数の光を主に反射するので、反射された第1のコム光は、各中心周波数ν、ν、‥νを中心に一定の広がりを有する複数の反射スペクトルを構成する。

【0111】
各FBGから反射された第1のコム光の複数の反射スペクトルは、周波数軸上において複数の同じ反射帯域幅を有する。なお、第1のコム光を各FBGに入射した場合、各FBGのスペクトルが連続的に検出される訳ではないので、反射スペクトルを破線で示した。

【0112】
本例において、FBGの各々の反射帯域幅は、半値幅26GHz(波長換算で0.2nm)を有する。当該反射帯域幅は、第1のコム光の複数の周波数ピークが収まる幅である。本例では、第1のコム光の周波数間隔が2.500GHzであるので、1つのFBGの半値幅26GHzの範囲内に第1のコム光の周波数ピークが少なくとも10本は収まる。

【0113】
上述の様に、各FBGの中心周波数は異なる。本例において、各FBGの中心周波数は、130GHz(波長換算で1nm)だけ離れている。第1のコム光および第2のコム光は、FBG#1で反射する周波数ピークと、FBG#1とは異なるFBG#2で反射する周波数ピークとを少なくとも有する。本例の第1のコム光は、全てのFBG(FBG#1~FBG#N)で反射する周波数ピークを有する。したがって、第1のコム光は、光ファイバ360の全てのFBGからの反射光を得ることができる。

【0114】
図12は、第1のコム光と第2のコム光との関係を示す図である。第1のコム光も第2のコム光も、横軸は周波数であり、縦軸は強度である。第1のコム光および第2のコム光は、種光源310を元に同期して生成されたので、周波数軸上において中心の周波数νは一致する。ただし上述の様に、第1のコム光の周波数間隔は2.500GHzであり、第2のコム光の周波数間隔は2.501GHzである。それゆえ、周波数νよりも大きい周波数領域においては、2つのコム光は周波数が徐々にずれる。なお、周波数νよりも小さい周波数領域においても2つのコム光は周波数が徐々にずれるが、図面では省略してある。

【0115】
本例では、周波数νを基準にして1つ目の周波数ピークにおいて、第2のコム光は第1のコム光よりもΔf(0.001GHz=1MHz)だけ周波数が大きい。さらに、周波数νを基準にして2つ目の周波数ピークにおいて、第2のコム光は第1のコム光よりも2Δfだけ周波数が大きい。同様に、周波数νを基準にして3つ目および4つ目の周波数ピークにおいて、第2のコム光は第1のコム光よりも3Δfだけおよび4Δfだけそれぞれ周波数間隔が大きい。このように、周波数νを基準にしてM番目の周波数ピークにおいて、第2のコム光は第1のコム光よりもMΔfだけ周波数間隔が大きい。なお、Mは1以上の自然数であり、本例ではM=2500である。

【0116】
図13は、FBG#1から反射された第1のコム光の反射スペクトルと、FBG#1から反射された第2のコム光の反射スペクトルと、第1のコム光と第2のコム光とのビート信号との関係を示す図である。上段の第1のコム光は、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。FBG#1の反射スペクトルは、第1のコム光の複数の周波数ピークを反映したスペクトルを有する。本例のFBG#1の反射スペクトルは、第1のコム光の10本の周波数ピークを含む。本例において、FBG#1の反射スペクトルの最も低周波が、種コム光の周波数νとなるようにFBG#1を設定した。ただし、周波数νがどのFBGの反射スペクトルに含まれるかは任意に設定してよく、上述の例に限定した設定としなくともよい。なお本例では、周波数νを1つ目として5つ目と6つ目との間にFBG#1の中心周波数νが位置している。

【0117】
中段の第2のコム光は、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。上述したように、第2のコム光の周波数ピークの1つは周波数νであり、第1のコム光の周波数ピークと一致する。また、第2のコム光の周波数ピークは周波数νから離れるにつれて第1のコム光の周波数ピークとの差が大きくなる。

【0118】
下段の第1のコム光と第2のコム光とのビート信号は、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。ここで、ビート信号の周波数は周波数νに比べて格段に小さく、かつ、ビート信号の形状はFBG#1の反射スペクトルと相似形状である。それゆえ、ビート信号の強度に応じた電気信号を測定することにより、FBG#1の反射スペクトルを間接的に測定することができる。例えば、0Hzのビート信号は、FBG#1からの反射スペクトルにおける、第1のコム光の周波数νと第2のコム光の周波数νとのビート信号である。さらに、Δfのビート信号は、FBG#1からの反射スペクトルにおける、第1のコム光の周波数νの次に高い周波数ピークと第2のコム光の周波数νの次に高い周波数ピークとのビート信号である。

【0119】
各ビート信号を用いて、測定時の周囲環境における各FBGからの反射スペクトルおよび中心周波数を再現できる。各FBGの中心周波数は周囲環境に応じて変化する。例えば、光ファイバの歪みに応じて1pm/μεだけ変化し、光ファイバの温度変化に応じて10pm/℃だけ変化する。これは、周波数換算で130MHz/μεおよび1.3GHz/℃にそれぞれ相当する。各FBGにおける既知の中心周波数と測定時の周囲環境における中心周波数の変化により、光ファイバ360の歪みおよび温度変化等の周囲環境の変化を知ることができる。

【0120】
本例においては、従来例(図22)の広帯域スペクトルを有する光源を使用しない。つまり、本例では、広帯域スペクトルを有する光源と比較してSN比が非常に高いので、使用する光ファイバ360の長さを広帯域スペクトル光源の場合よりも長くすることができる。加えて、本例においては、従来例(図23)とは異なり、時間に対して光周波数の線形掃引を行わない。よって、反射光の測定後に測定装置において複雑な信号処理が不要である。加えて、線形掃引に伴う周波数の不連続な変化も生じない。よって、光源側において複雑な補正処理が不要となる。さらに、本例では2つのコム光発生器を用いるのに対して、従来例(図24)ではコム光発生器を1つしか用いない。また、従来例(図24)は、コム光の周波数間隔を掃引することにより各FBGの位置を特定して、その上で、各FBGに加えられた歪みに起因するブラッグ波長シフトを測定する。それゆえ、従来例(図24)においてもブラッグ波長シフトを測定するには、別途、周波数掃引が必要となるか、光ファイバからの反射光をカプラから取り出して測定するための光スペクトル解析装置(光スペクトラムアナライザ)が必要となると考えられる。光スペクトル解析装置は、FBGの中心周波数シフトに対して十分な周波数分解能を有さないので、温度測定分解能および歪み測定分解能が制限される。

【0121】
一般的に、異なる波長の光が異なる光路長を伝搬すると、光の偏光状態は互いに異なることとなる。偏光状態が完全に異なる2つのコム光を干渉させても、十分な強度のビート信号は得られない。例えば、各FBGから反射された第1のコム光と、光ファイバ360に入射させていない第2のコム光とを干渉させることを考える。この場合、各FBGから反射された第1のコム光は、各々異なる光路長を伝搬した各々異なる偏光状態の光を有する。これに対して、第2のコム光はそもそも光ファイバ360に入射させていないので、第1のコム光とは異なる光路長を伝播する。それゆえ、各FBGから反射された第1のコム光と、FBGから反射されていない第2のコム光とを干渉させても十分な強度のビート信号は得られない。

【0122】
また、各FBGから反射された第1のコム光の偏光状態を各々全て制御して、第2のコム光の偏光状態に合わせることは原理的に困難である。第2のコム光の偏光状態を制御して、各FBGから反射された第1のコム光の偏光状態の各々と合わせることもまた原理的に困難である。それゆえ、各FBGから反射された第1のコム光とFBGから反射されていない第2のコム光とを干渉させて、十分な強度のビート信号を得ることは原理的に困難である。

【0123】
これに対して本例では、第1のコム光および第2のコム光を共に、1以上のFBGを有する光ファイバ360へ入射させる。つまり、第1のコム光および第2のコム光は、同じ光路を伝搬する。また、第1のコム光および第2のコム光は、各FBGからの反射スペクトルの周波数範囲においては、ほぼ等しい波長の光であると見なすことができる。したがって、第1のコム光および第2のコム光は同じ偏光状態であると見なすことができる。

【0124】
なお、変形例として、種光源310として周波数が可変である光源を採用してもよい。これにより、種光源310のレーザ光の周波数νを変化させてよい。ただし、周波数を掃引しながら各FBGの反射スペクトルを測定するのではなく、例えば、周波数ν(=1.94×10THz)を数百MHzから1GHz程度変化させた上で、上述の反射スペクトルの測定を行う。これにより、周波数νのコム光が入射するFBGを、デュアルコム光源部340側において適宜調整することができる。

【0125】
図14は、第5の実施形態における多点型光ファイバセンサ500を示す図である。本例では、光ファイバ360におけるFBGの配置が第1の実施形態と異なる。本例では、サーキュレータ350に近い順に中心周波数がν、νN-1、‥νとなるように複数のFBGを配置する。他の点は第1の実施形態と同様である。例えば、第1の実施形態と同様に、1以上のFBGの各々において反射光の周波数スペクトルの中心周波数は互いに異なり、大小関係はν<ν<‥<νである。

【0126】
第4の実施形態の図10のように、第1のコム光および第2コム光の反射スペクトルの周波数がνの近傍であるFBGにおいては、第1のコム光の反射スペクトルと第2コム光の反射スペクトルとはほぼ等しいスペクトルとみなすことができる。それゆえ、ビート信号のスペクトルは、第1のコム光のスペクトルをほぼ正確に反映すると考えられる。

【0127】
これに対して、FBG#NのNが大きいほど、第1のコム光の反射スペクトルと第2コム光の反射スペクトルとの周波数差(10・N・Δf)は大きくなる。当該周波数差が大きくなるにつれて、第1のコム光および第2コム光の反射スペクトルの周波数差は大きくなる。周波数差が大きいほど、ビート信号は第1のコム光の反射スペクトルを正確には反映しなくなると考えられる。従って、光ファイバ360の歪みまたは温度変化の測定精度は、νよりもνの方が高いと考えられる。

【0128】
そこで、本例においては、第1のコム光が入射する位置から離れるに従い中心周波数が小さくなるように、1以上のFBGを光ファイバ360中に配置する。つまり本例では、サーキュレータ350に近い順に、中心周波数がν、νN-1、νN-2‥νとなるように複数のFBGを配置する。測定精度の高いFBGほどサーキュレータ350から遠くに配置するので、サーキュレータ350から遠くの位置の光ファイバ360の歪みまたは温度変化ほど高精度に測定することができる。

【0129】
図15は、第6の実施形態における多点型光ファイバセンサ600を示す図である。本例では、光ファイバ360におけるFBGの配置が第1の実施形態と異なる。本例では、サーキュレータ350に近い順に中心周波数がν、ν、ν、νN-1、ν‥となるように複数のFBGを配置する。他の点は第1の実施形態と同様である。例えば、第1の実施形態と同様に、1以上のFBGの各々において反射光の周波数スペクトルの中心周波数は互いに異なり、ν<ν<‥<νである。

【0130】
第5の実施形態の説明で述べたように、周波数差が大きいほど、ビート信号は第1のコム光の反射スペクトルを正確には反映しなくなると考えられる。そこで本例では、第1のコム光が入射する位置から離れるに従い中心周波数が常に小さくまたは常に大きくならないように、1以上のFBGを光ファイバ360中に配置する。本例では、サーキュレータ350に近い順に、中心周波数がν、ν、ν、νN-1、ν‥となるように複数のFBGを配置する。測定精度の高いFBGを光ファイバ360中に分散して配置するので、光ファイバ360の歪みまたは温度変化を全体に渡って高精度に測定することができる。なお、中心周波数の配置は本例のν、ν、ν、νN-1、ν‥の配置に限定されず、任意に定めてもよい。

【0131】
図16は、第7の実施形態における多点型光ファイバセンサ700を示す図である。本例では、第1のコム光および第2のコム光を共に光ファイバ360に入射させず、第1のコム光のみを光ファイバ360に入射させる。また、光ファイバ360は、周囲環境によって分光特性が変化する2以上の反射点を有する。さらに、本例の多点型光ファイバセンサ700は、第2のコム光発生器330と測定器390との間にデポラライザ365および合波用カプラ370を有する。この点において、上述の第1から第6の実施形態と異なる。他の点においては第4の実施形態と同様である。

【0132】
第1のコム光は、光ファイバ360の各FBGから反射されて、光サーキュレータ350を介して合波用カプラ370に入射する。デポラライザ365は、第2のコム光の偏光状態をランダムにする。つまり、デポラライザ365は、第2のコム光を非偏光状態にする。各FBGから反射された第1のコム光と非偏光状態の第2のコム光とは、合波用カプラ370で合波される。測定器390は合波されたビート信号を測定する。

【0133】
本例では、第1のコム光と第2のコム光とは、合波されるまでの過程において光路長が異なる。ただし本例においては、第2のコム光はデポラライザ365により非偏光状態にされている。つまり、第2のコム光はあらゆる状態の偏光を均等に含んだ光であるので、第1のコム光の偏光状態と一致する偏光を必ず含む。それゆえ、第1のコム光と第2のコム光との偏光状態が完全に異なり、十分なビート信号の強度が得られないという事態を回避することができる。なお、本例においても、第2および第3の実施形態におけるFBGの配置を適用することができる。

【0134】
図17は、第8の実施形態における多点型光ファイバセンサ500を示す図である。本例は、第4の実施形態の変形例である。本例では、反射スペクトルではなく透過スペクトルを測定する。本例では、光ファイバ360における1以上のFBGから透過された第1のコム光および第2のコム光は、合波されてビート信号となる。これを実現する為に、光サーキュレータ350に代えて、光ファイバ360の一端とデュアルコム光源部340との間に合波用カプラ370および光アイソレータ395を設ける。また、光ファイバ360の他端に測定器390を設ける。その他デュアルコム光源部340等の構成は、第4の実施形態における多点型光ファイバセンサ400と同じである。

【0135】
第1のコム光および第2のコム光は、光アイソレータ395から測定器390へ進む。各FBGは、各中心周波数に対応する光を主に反射する。光アイソレータ395は、各FBGから反射された光を遮断する。光アイソレータ395は、各FBGから反射された光をデュアルコム光源部340に再度入射させず、かつ、各FBGから反射された光を測定器390へ再度反射しない。したがって、第1のコム光および第2のコム光のうち、各FBGで反射されなかったスペクトルが測定器390において測定される。

【0136】
図18は、FBG#1を透過した第1のコム光の透過スペクトルと、FBG#1を透過した第2のコム光の透過スペクトルと、第1のコム光と第2のコム光とのビート信号との関係を示す図である。上段の第1のコム光は、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。FBG#1の透過スペクトルは、第1のコム光で反射された複数の周波数ピーク以外の周波数ピークを反映したスペクトルを有する。本例において、FBG#1の透過スペクトルの最も低周波が、種コム光の周波数νとなるようにFBG#1を設定した。ただし、周波数νがどのFBGの透過スペクトルに含まれるかは任意に設定してよく、上述の例に限定した設定としなくともよい。なお本例では、周波数νを1つ目にして8つ目と9つ目との間にFBG#1の中心周波数νが位置している。

【0137】
中段の第2のコム光は、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。第2のコム光の周波数ピークの1つは周波数νで第1のコム光の周波数ピークと一致する。また、第2のコム光の周波数ピークは周波数νから離れるにつれて第1のコム光の周波数ピークとの差が大きくなる。

【0138】
下段の第1のコム光と第2のコム光とのビート信号は、横軸が周波数であり縦軸が光の強度である。ビート信号の周波数は周波数νに比べて格段に小さく、かつ、ビート信号の形状はFBG#1の透過スペクトルと相似形状である。それゆえ、ビート信号の強度に応じた電気信号を測定することにより、FBG#1の透過スペクトルを間接的に測定することができる。透過光と反射光とは表裏の関係にある。したがって、光ファイバ360の歪みおよび温度変化等の周囲環境に応じた反射スペクトルの中心周波数の周波数変化を知ることができる。

【0139】
本例においても、従来例(図22)の広帯域スペクトルを有する光源を使用しない。つまり、本例においても、広帯域スペクトル光源と比較してSN比が非常に高いので、使用する光ファイバ360の長さを広帯域スペクトル光源の場合よりも長くすることができる。加えて、本例においても、従来例(図23)とは異なり、時間に対して光周波数の線形掃引を行わない。よって、反射光の測定後に測定装置において複雑な信号処理が不要である。加えて、線形掃引に伴う周波数の不連続な変化も生じない。よって、光源側において複雑な補正処理が不要となる。さらに、本例では2つのコム光発生器を用いるのに対して、従来例(図24)ではコム光発生器を1つしか用いない。また、従来例(図24)は、コム光の周波数間隔を掃引することにより各FBGの位置を特定して、その上で、各FBGに加えられた歪みに起因するブラッグ波長シフトを測定する。それゆえ、従来例(図24)においてもブラッグ波長シフトを測定するには、別途、周波数掃引が必要となるか、光ファイバからの反射光をカプラから取り出して測定するための光スペクトル解析装置(光スペクトラムアナライザ)が必要となると考えられる。光スペクトル解析装置は、FBGの中心周波数シフトに対して十分な周波数分解能を有さないので、温度測定分解能および歪み測定分解能が制限される。

【0140】
なお本例では、第1のコム光および第2のコム光における各16個の周波数ピークを用いた。しかしながら、用いる周波数ピークの数は16個に限定されない。半値幅である26GHzの範囲に位置する、周波数νを1つ目として4つ目から13番目の周波数ピークを用いてもよい。また、透過スペクトルの強度が相対的に大きいので、周波数νを1つ目として1つ目から3つ目および14番目から16番目の周波数ピークを用いてもよい。

【0141】
透過スペクトルを測定する第8の実施形態においても、第5実施形態および第6実施形態におけるFBGの配置を適用してよい。また、種光源310のレーザ光の周波数νを変化させる構成、ならびに、第1のコム光発生器320が少なくとも第1の位相変調器322および第1の強度変調器323のいずれかを含む構成等、第4の実施形態の構成を適用してもよい。

【0142】
図19は、第9の実施形態における多点型光ファイバセンサ600を示す図である。本例は、第7の実施形態の変形例である。本例では、反射スペクトルではなく透過スペクトルを測定する。本例では、第1のコム光および第2のコム光を共に光ファイバ360に入射させず、第1のコム光のみを光ファイバ360に入射させる。また、光ファイバ360は、周囲環境によって分光特性が変化する2以上の反射点を有する。本例の多点型光ファイバセンサ600は、第2のコム光発生器330と測定器390との間にデポラライザ365および合波用カプラ370を有する。

【0143】
第1のコム光のうち各FBGを透過したコム光は、合波用カプラ370に入射する。第2のコム光は、デポラライザ365に入射する。デポラライザ365の機能は、第7の実施形態で上述した通りである。各FBGから透過された第1のコム光と非偏光状態の第2のコム光とは、合波用カプラ370で合波される。測定器390は合波されたビート信号を測定する。

【0144】
第7の実施形態と同様に本例においても、第1のコム光と第2のコム光との偏光状態が完全に異なり、十分なビート信号の強度が得られないという事態を回避することができる。また、第9の実施形態においても、第5実施形態および第6実施形態におけるFBGの配置を適用してよい。種光源310のレーザ光の周波数νを変化させる構成、ならびに、第1のコム光発生器320が少なくとも第1の位相変調器322および第1の強度変調器323のいずれかを含む構成等、第4の実施形態における特徴を適用してもよい。

【0145】
なお、上述した全ての実施形態では、第2のコム光の周波数間隔が第1のコム光の周波数間隔よりもΔfだけ大きい例を説明した。しかしながら、第1のコム光の周波数間隔を第2のコム光の周波数間隔よりもΔfだけ大きいとしてもよい。当該変更によっても、本明細書に記載の発明の原理は何ら変更されるものではない。当該変更も、本明細書に記載の発明の範囲に含まれることは自明である。

【0146】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。

【0147】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0148】
10 種光源、12 第1の分波用カプラ、14 第2の分波用カプラ、15 制御部、21 周波数シフタ、22 第1のコム光発生器、23 第1の位相変調器、24 第1の強度変調器、25 増幅器、26 信号発生器、27 分散補償用ファイバ、28 高非線形ファイバ、29 第1のパルス変調器、30 光BPF、31 周波数シフタ、32 第2のコム光発生器、33 第2の位相変調器、34 第2の強度変調器、35 増幅器、36 信号発生器、37 分散補償用ファイバ、38 高非線形ファイバ、39 第2のパルス変調器、41 周波数シフタ、42 第3のコム光発生器、43 第3の位相変調器、44 第3の強度変調器、45 増幅器、46 信号発生器、47 分散補償用ファイバ、48 高非線形ファイバ、50 被測定対象、52 一端、54 他端、56 制御ゲート、58 制御ゲート、60 サーキュレータ、65 デポラライザ、70 合波用カプラ、80 光電変換素子、82 スペクトル解析器、90 測定器、100 測定装置、110 測定装置、120 測定装置、150 光ファイバ、151 第1の光ファイバ、152 第2の光ファイバ、153 光ファイバコア、154 クラッド、155 被覆部、156 応力付与部、200 センサシステム、210 センサシステム、220 センサシステム、310 種光源、312 分波用カプラ、315 制御部、320 第1のコム光発生器、322 第1の位相変調器、323 第1の強度変調器、324 増幅器、326 信号発生器、328 分散補償用ファイバ、329 高非線形ファイバ、330 第2のコム光発生器、332 第2の位相変調器、333 第2の強度変調器、334 増幅器、336 信号発生器、338 分散補償用ファイバ、339 高非線形ファイバ、340 デュアルコム光源部、350 サーキュレータ、360 光ファイバ、365 デポラライザ、370 合波用カプラ、380 光電変換素子、385 スペクトル解析装置、390 測定器、395 光アイソレータ、400 多点型光ファイバセンサ、500 多点型光ファイバセンサ、600 多点型光ファイバセンサ、700 多点型光ファイバセンサ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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