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明細書 :酸化物超電導バルクマグネット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年8月31日(2017.8.31)
発明の名称または考案の名称 酸化物超電導バルクマグネット
国際特許分類 H01F   6/00        (2006.01)
H01B  12/00        (2006.01)
C01G   1/00        (2006.01)
C01G   3/00        (2006.01)
FI H01F 6/00
H01B 12/00 ZAA
C01G 1/00 S
C01G 3/00
国際予備審査の請求
全頁数 40
出願番号 特願2016-559127 (P2016-559127)
国際出願番号 PCT/JP2015/082044
国際公開番号 WO2016/076433
国際出願日 平成27年11月13日(2015.11.13)
国際公開日 平成28年5月19日(2016.5.19)
優先権出願番号 2014231388
2015022384
優先日 平成26年11月14日(2014.11.14)
平成27年2月6日(2015.2.6)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】森田 充
【氏名】手嶋 英一
【氏名】三木 基寛
【氏名】和泉 充
出願人 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100113918、【弁理士】、【氏名又は名称】亀松 宏
【識別番号】100187702、【弁理士】、【氏名又は名称】福地 律生
【識別番号】100126848、【弁理士】、【氏名又は名称】本田 昭雄
【識別番号】100140121、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 朝幸
審査請求
テーマコード 4G047
5G321
Fターム 4G047JA02
4G047JB04
4G047JB06
4G047JC03
4G047KA01
4G047KA18
4G047KB01
4G047KB04
4G047KB14
4G047KB17
4G047LA02
4G047LB01
5G321AA02
5G321AA04
5G321BA03
5G321CA02
5G321CA06
5G321CA13
5G321CA48
5G321CA52
要約 超電導バルク体を複数組み合わせた超電導バルクマグネットにおいて、超電導バルク体の破損を防止し、強磁場を発生できる超電導バルクマグネットを提供する。
単結晶状RE1Ba2Cu3Oy(REはY又は希土類元素から選ばれる1種以上。6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCUO5が分散し、上面と下面と側面とを備える超電導バルク体を複数組み合わせた超電導バルクマグネットであって、超電導バルク体とその側面を覆うように配置されたバルク体補強部材とからなるバルク体ユニットが、同一方向を向き、互いに接するように配置されて集合体を形成し、集合体の側面は集合体側面補強部材により覆われ、集合体の上面および下面は集合体上部補強部材および集合体下部補強部材により覆われ、集合体側面補強部材と集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とが一体化された構成を有することを特徴とする超電導バルクマグネット。
特許請求の範囲 【請求項1】
単結晶状のREBaCu(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。6.8≦y≦7.1)中にREBaCuOが分散した組織を有し、上面と下面と側面とを備える柱状の酸化物超電導バルク体を複数個組み合わせてなる酸化物超電導バルクマグネットであって、
前記酸化物超電導バルク体と、前記酸化物超電導バルク体の側面を覆うように配置されたバルク体補強部材と、からなるバルク体ユニットが、同一方向を向き、かつ互いに接するように配置されて集合体を形成し、
前記集合体の側面は、集合体側面補強部材により覆われており、
前記集合体の上面および下面は、それぞれ、集合体上部補強部材および集合体下部補強部材により覆われており、
前記集合体側面補強部材と前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが一体化された構成を有することを特徴とする酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項2】
前記バルク体補強部材は、肉厚が5.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項3】
前記集合体上部補強部材を構成する材質と、前記集合体下部補強部材を構成する材質とが異なり、前記集合体上部補強部材は前記集合体下部補強部材よりも300Kにおける降伏強度が高く、前記集合体下部補強部材は前記集合体上部補強部材よりも熱伝導率が高いことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項4】
前記集合体上部補強部材を構成する材質が非磁性であり、かつ、300Kにおける降伏強度が200MPa以上であり、
前記集合体下部補強部材を構成する材質の熱伝導率が50W/m・K以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項5】
前記集合体側面補強部材の高さは、前記集合体の高さ以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項6】
前記集合体側面補強部材と、前記集合体上部補強部材または前記集合体下部補強部材と、が一体構造であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項7】
前記集合体側面補強部材と前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが、固定手段により一体化されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項8】
前記バルク体ユニットを、同一方向を向きかつ互いに接するように配置することにより、前記集合体内部に生じた空間を通じて、前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが一体化されていることを特徴とする請求項7に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項9】
前記酸化物超電導バルク体には、上面および下面を貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔を通じて、前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが一体化されていることを特徴とする請求項7または8に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項10】
前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が多角形であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項11】
前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が、多角形の頂点が丸み加工された形状であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項12】
前記酸化物超電導バルク体は、前記多角形が四角形、六角形、又は、八角形であることを特徴とする請求項10または11に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項13】
前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が円であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【請求項14】
前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が、対向する一対の平行な直線と、対向する一対の曲線と、が接続されたレーストラック形状であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物超電導バルクマグネットに関する。特に、酸化物超電導バルク体を複数個並列して使用する構造を有する酸化物超電導バルクマグネットに関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶状のREBaCu7-x(REは、希土類元素)相中にREBaCuO相が分散した酸化物超電導材料は、高い臨界電流密度(以下、「J」と示すこともある。)を有するために、磁場中の冷却やパルス着磁により励磁され、強力な磁場を発生できる超電導バルクマグネットとして使用可能である。
【0003】
超電導バルクマグネットは非常に強力な磁場をコンパクトな空間に発生できるという優れた特長を有するが、コンパクトな空間に非常に強力な磁場を閉じ込めることになるので、酸化物超電導バルク体内部に大きな電磁応力が作用することになる。この電磁応力は、閉じ込められた磁場が広がるように作用するのでフープ応力とも呼ばれる。5~10T級の強磁場の場合には、作用する電磁応力が超電導バルク体自身の材料機械強度を超えることもあり、その結果、酸化物超電導バルク体が破損するおそれがある。酸化物超電導バルク体が破損すると、超電導バルク体は強磁場を発生することができなくなる。
【0004】
電磁応力による超電導バルク体の破損を防止することができれば、コンパクトで強磁場という超電導バルクマグネットの特長を活かし、船舶用モータや風力発電用発電機、磁気分離などマグネットを利用する応用において、機器の高性能化や機器の小型軽量化に役立つことが期待されている。
【0005】
電磁応力による酸化物超電導バルク体の破損を防止するために、例えば特許文献1では、円柱状の酸化物超電導バルク体とこれを囲む金属リングとにより構成された超電導バルクマグネットが提案されている。このような構成にすることにより、冷却時に金属リングによる圧縮応力が酸化物超電導バルク体に加わり、その圧縮応力が電磁応力を軽減する効果を有するため、酸化物超電導バルク体の割れを抑制することができる。
【0006】
また、特許文献2には、超電導バルク体の側面全体を金属リング等で補強し、さらに、超電導バルク体の上下面も補強体で補強された構成を有する超電導バルクマグネットが開示されている。このような構成にすることにより、大きな超電導バルク体の場合でも高磁場を発生させることが可能となっている。
【0007】
ところで、一般的に、単結晶状の酸化物超電導材料の大きさは小さく、これを加工して得られる超電導バルク体を比較的大面積に磁場を発生させる必要のあるもの(例えば、大型回転機器、大型マグネット等)へ応用することは難しい。したがって、複数個の超電導バルク体を組み合わせて一体とされた超電導バルク体の集合体を用いて、比較的大面積に磁場を発生させる必要がある。
【0008】
ところが、上記特許文献1および2には、円柱状の1個の酸化物超電導バルク体の破損が防止できることが示されているのみであり、超電導バルク体を複数組み合わせた構成については開示されていない。
【0009】
超電導バルク体を複数組み合わせた構成に関して、例えば特許文献3の図3には、六角形の超電導バルク体を7個組み合わせて、その周囲に繊維強化樹脂等からなる補強部材を配置し、さらにその外周にステンレスやアルミ等の金属からなる支持部材が配置された超電導磁場発生素子が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、貫通路を有する超電導バルクマグネットの周囲を高強度材料で覆われたことを特徴とする酸化物超電導バルクマグネットが開示されている。特に、矩形の外周および内周を有する複数のバルク状高温超電導体がそれぞれ矩形の外周支持用高強度材で覆われた超電導バルクマグネットが開示されている。
【0011】
さらに、特許文献5には、複数の高温超電導体セルを接着剤で接着させて一つにまとめて超電導セル集合体を形成した超電導マグネット装置において、隣接する高温超電導体セル間に絶縁体または高電気抵抗物(ステンレス、銅、ニッケル)を介装した例が開示されている。特に、矩形の高温酸化物超電導バルク体の外周側に補強部材を被覆または被着させた超電導マグネット装置が示されている(特許文献5の明細書段落0009及び図6)。
【0012】
また、特許文献6には、超電導バルク体を複数個並列に配置した磁極を有する超電導永久磁石装置が開示されている。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開平11-335120号公報
【特許文献2】特開2014-146760号公報
【特許文献3】特開平11-284238号公報
【特許文献4】特開平7-182934号公報
【特許文献5】特開2001-307916号公報
【特許文献6】特開2004-349276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記特許文献2に記載の超電導磁場発生素子では、各酸化物超電導バルク体は補強されていない。本願発明者らの実験では、特許文献2に開示された構成では、酸化物超電導バルク体の集合体の周囲を補強する効果はあるが、各酸化物超電導バルク体の補強はされていないため、強磁場を印加した場合、各酸化物超電導バルク体が破損する結果となった。また、上記特許文献3、4では、個々の超電導バルクマグネットの破損を防止できるものの、複数のバルク状高温超電導体の集合体として、十分な総磁束量を得ることができなかった。
【0015】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、必要とされる磁場領域を確保するために、酸化物超電導バルク体を複数組み合わせてなる超電導バルクマグネットにおいて、高い磁場強度条件下でも、超電導バルク体の破損を防止し、かつ、十分な総磁束量を得ることができる酸化物超電導バルクマグネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題の解決のため、本願発明者らは、個々の酸化物超電導バルク体を金属製の補強枠を嵌合したうえで、複数個組み合わせ、この集合体の側面外周に補強枠を配置し、さらに、この集合体の上下面を補強部材で固定することによって、強磁場下でも超電導バルク体の破損を防止できることを見出した。本発明は、以下に要約される。
【0017】
(1)単結晶状のREBaCu(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。6.8≦y≦7.1)中にREBaCuOが分散した組織を有し、上面と下面と側面とを備える柱状の酸化物超電導バルク体を複数個組み合わせてなる酸化物超電導バルクマグネットであって、
前記酸化物超電導バルク体と、前記酸化物超電導バルク体の側面を覆うように配置されたバルク体補強部材と、からなるバルク体ユニットが、同一方向を向き、かつ互いに接するように配置されて集合体を形成し、
前記集合体の側面は、集合体側面補強部材により覆われており、
前記集合体の上面および下面は、それぞれ、集合体上部補強部材および集合体下部補強部材により覆われており、
前記集合体側面補強部材と前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが一体化された構成を有することを特徴とする酸化物超電導バルクマグネット。
(2)前記バルク体補強部材は、肉厚が5.0mm以下であることを特徴とする(1)に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(3)前記集合体上部補強部材を構成する材質と、前記集合体下部補強部材を構成する材質とが異なり、前記集合体上部補強部材は前記集合体下部補強部材よりも300Kにおける降伏強度が高く、前記集合体下部補強部材は前記集合体上部補強部材よりも熱伝導率が高いことを特徴とする(1)または(2)に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(4)前記集合体上部補強部材を構成する材質が非磁性であり、かつ、室温(300K)における降伏強度が200MPa以上であり、
前記集合体下部補強部材を構成する材質の熱伝導率が50W/m・K以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(5)前記集合体側面補強部材の高さは、前記集合体の高さ以上であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【0018】
(6)前記集合体側面補強部材と、前記集合体上部補強部材または前記集合体下部補強部材と、が一体構造であることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(7)前記集合体側面補強部材と前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが、固定手段により一体化されていることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(8)前記バルク体ユニットを、同一方向を向きかつ互いに接するように配置することにより、前記集合体内部に生じた空間を通じて、前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが一体化されていることを特徴とする(7)に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(9)前記酸化物超電導バルク体には、上面および下面を貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔を通じて、前記集合体上部補強部材と前記集合体下部補強部材とが一体化されていることを特徴とする(7)または(8)に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【0019】
(10)前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が多角形であることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(11)前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が、多角形の頂点が丸み加工された形状であることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(12)前記酸化物超電導バルク体は、前記多角形が四角形、六角形、又は、八角形であることを特徴とする(10)または(11)に記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(13)前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が円であることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
(14)前記酸化物超電導バルク体は、平面視形状が、対向する一対の平行な直線と、対向する一対の曲線と、が接続されたレーストラック形状であることを特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の酸化物超電導バルクマグネット。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、超電導バルク体を複数個組み合わせてなる超電導バルクマグネットにおいて、超電導バルク体の破損を防止し、強磁場を発生することが可能な超電導バルクマグネットを提供することができる。また、本発明の一形態においては、更に、回転方向に対し磁極内の磁場分布が均一であり、より滑らかに回転する回転機器を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る超電導バルクマグネットの一例を示す概略分解斜視図である。
【図2A】従来の酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す概略斜視図であって、各酸化物超電導バルク体が補強体により周辺部が嵌合されている構成を示す。
【図2B】従来の酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す概略斜視図であって、複数のバルク体の周辺部に補強体が嵌合されている構成を示す。
【図3A】本発明の一実施形態に係るバルク体補強部材を嵌合したレーストラック型超電導バルク体を示す斜視図である。
【図3B】図3Aに示すレーストラック型超電導バルク体のサイズを説明する説明図である。
【図4】本実施形態に係る酸化物超電導バルクマグネットの他の一例を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る面取り加工を施した八角形状超電導バルク材を示す平面図である。
【図6】本実施形態に係る酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。
【図7】レーストラック型バルク超電導体の捕捉磁束密度分布例を示す説明図である。
【図8】有穴のレーストラック型バルク超電導体の捕捉磁束密度分布例を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係るバルク体補強部材が配置された六角形状の酸化物超電導バルク体の集合体を示す平面図である。
【図10】本実施形態に係るバルク体補強部材が配置された円柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を示す平面図である。
【図11】レーストラック型の酸化物超電導バルク体を有する酸化物超電導バルクマグネットを磁極として用いた回転機器の回転子の一構成例を示す概略斜視図である。
【図12】本実施例において、バルク体補強部材が配置されていない円柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。
【図13】本実施例において、バルク体補強部材および集合体側面補強部材が配置されていない円柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。
【図14】本実施例において、集合体側面補強部材が配置されていない円柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。
【図15】本実施例において、バルク体補強部材および集合体側面補強部材が配置された円柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。
【図16】本実施例において、バルク体補強部材および集合体側面補強部材が配置された円柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットであって、集合体内部に形成された隙間を通じて、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とを結合する例を示す分解斜視図である。
【図17】本実施例において、バルク体補強部材が配置されていない六角柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。
【図18】本実施例において、バルク体補強部材および集合体側面補強部材が配置された六角柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。
【図19】本実施例において、バルク体補強部材および集合体側面補強部材が配置された六角柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットであって、酸化物超電導バルク体に貫通孔が形成され、集合体内部に形成された隙間を通じて、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とを結合する例を示す分解斜視図である。
【図20】本実施例において、バルク体補強部材および集合体側面補強部材が配置された六角柱状の酸化物超電導バルク体の集合体を有する酸化物超電導バルクマグネットであって、集合体側面補強部材の集合体側の縁部を、集合体の側面と接するように延在させた例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。

【0023】
まず、本実施形態に係る酸化物超電導バルクマグネット(以下、単に「超電導バルクマグネット」ともいう。)について説明する。

【0024】
本実施形態に係る酸化物超電導バルクマグネットで用いる酸化物超電導バルク体(以下、単に「超電導バルク体」ともいう。)は、単結晶状のREBaCu7-x中にREBaCuO相(211相)等に代表される非超電導相が微細分散した組織を有するバルク材(所謂QMG(登録商標)材料)が望ましい。ここで、単結晶状というのは、完璧な単結晶である必要はなく、小傾角粒界等の実用に差支えない欠陥を有するものも包含するという意味である。REBaCu7-x相(123相)及びREBaCuO相(211相)におけるREは、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる希土類元素及びそれらの組み合わせで、La、Nd、Sm、Eu、Gdを含む123相は1:2:3の化学量論組成から外れ、REのサイトにBaが一部置換した状態になることもある。また、非超電導相である211相においても、La、Ndは、Y、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luとは幾分異なり、金属元素の比が非化学量論的組成であったり、結晶構造が異なっていることが知られている。

【0025】
前述のBa元素の置換は、臨界温度を低下させる傾向がある。また、より酸素分圧の小さい環境においては、Ba元素の置換が抑制される傾向にある。

【0026】
123相は、211相とBaとCuとの複合酸化物からなる液相との包晶反応、
211相+液相(BaとCuの複合酸化物) → 123相
により形成される。そして、この包晶反応により、123相ができる温度(Tf:123相生成温度)は、ほぼRE元素のイオン半径に関連し、イオン半径の減少に伴いTfも低くなる。また、低酸素雰囲気及びAg添加に伴い、Tfは低下する傾向にある。

【0027】
単結晶状の123相中に211相が微細分散した材料は、123相が結晶成長する際、未反応の211粒が123相中に取り残されるために形成される。すなわち、上記バルク材は、
211相+液相(BaとCuの複合酸化物) → 123相+211相
で示される反応により形成される。

【0028】
バルク材中の211相の微細分散は、臨界電流密度J向上の観点から極めて重要である。Pt、Rh又はCeの少なくとも一つを微量添加することで、半溶融状態(211相と液相からなる状態)での211相の粒成長が抑制され、結果的に材料中の211相が約1μm程度に微細化される。添加量は、微細化効果が現れる量及び材料コストの観点から、Ptで0.2~2.0質量%、Rhで0.01~0.5質量%、Ceで0.5~2.0質量%が望ましい。添加されたPt、Rh、Ceは123相中に一部固溶する。また、固溶できなかった元素は、BaやCuとの複合酸化物を形成し、材料中に点在することになる。

【0029】
また、マグネットを構成するバルク酸化物超電導体は、磁場中においても高い臨界電流密度(J)を有する必要がある。この条件を満たすには、超電導的に弱結合となる大傾角粒界を含まない単結晶状の123相である必要がある。さらに高いJ特性を有するためには、磁束の動きを止めるためのピンニングセンターが必要となる。このピンニングセンターとして機能するものが微細分散した211相であり、より細かく多数分散していることが望ましい。先に述べたように、Pt、RhやCeは、この211相の微細化を促進する働きがある。また、ピンニングセンターとして、BaCeO、BaSiO、BaGeO、BaSnO等の可能性が知られている。また、211相等の非超電導相は、劈開し易い123相中に微細分散することによって、超電導体を機械的に強化し、バルク材料として成り立たせる重要な働きをも担っている。

【0030】
123相中の211相の割合は、J特性及び機械強度の観点から、5~35体積%が望ましい。また、材料中には、50~500μm程度のボイド(気泡)を5~20体積%含むことが一般的であり、さらにAg添加した場合、添加量によって1~500μm程度のAg又はAg化合物を0体積%超25体積%以下含む。

【0031】
また、結晶成長後の材料の酸素欠損量(x)は、0.5程度で半導体的な抵抗率の温度変化を示す。これを各RE系により350℃~600℃で100時間程度、酸素雰囲気中においてアニールすることにより酸素が材料中に取り込まれ、酸素欠損量(x)は0.2以下となり、良好な超電導特性を示す。この時、超電導相中には双晶構造ができる。しかしながら、この点を含めここでは単結晶状と呼ぶことにする。

【0032】
以下に、本発明の実施形態に係る超電導バルクマグネットについて、図1に沿って説明する。図1は、超電導バルクマグネットの一例を示す概略分解斜視図である。

【0033】
本実施形態に係る超電導バルクマグネットを説明するにあたり、比較のため、図2Aおよび2Bを用いて従来の超電導バルクマグネットの構成例を説明する。図2Aおよび図2Bは、どちらも、従来の酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す概略斜視図である。まず、図2Aに示す超電導バルクマグネット10では、個々の矩形の超電導バルク体12は、それぞれ厚肉の金属製補強体14で囲われている。このような構成にすることによって超電導バルク体12の破損は防止できるが、超電導バルク体12が離散的な配置になり、複数個の超電導バルク体12を一体化する効果は小さい。

【0034】
一方、図2Bに示す超電導バルクマグネット20では複数個の超電導バルク体22は密に配置され、その集合体の外周が厚肉の金属製補強体24で囲われている。このような構成にすることによって、図2Aに比べて全体的な磁場強度や単位面積当たりの総磁束量を大きくすることが期待できるが、着磁する過程において集合体を構成する超電導バルク体22の中には破損するものが生じるという問題がある。

【0035】
本願発明者らが破損の原因を鋭意調査した結果、複数個の超電導バルク体を用いて超電導バルクマグネットを構成した場合、着磁の過程において個々の超電導バルク体間に非常に大きな反発力が作用する。また、個々の酸化物超電導バルク体の間には形状及び性能のバラツキがあり、応力の局所的な掛かり方にもバラツキが生じることが分かった。反発力により、個々の超電導バルク体の間に僅かな隙間が生じることがあるが、上記のようなバラツキが生じているため、隙間の生じ具合が均等でなく、一部の超電導バルク体に局所的に過度な力が作用することがある。その結果、図2Bのように複数個の酸化物超電導バルク体で超電導バルクマグネットを形成した場合に、集合体を構成する超電導バルク体の中に破損するものが生じることが分かった。

【0036】
従って、このような超電導バルク体の破損を防ぐためには、複数の超電導バルク体から構成される集合体の側面に配置される集合体側面補強部材だけでなく、個々の超電導バルク体の周囲(側面)にそれぞれ補強部材(補強枠)を設置して、上記のようなバラツキを吸収する必要がある。なお、超電導バルクマグネットの全体的な磁場強度や単位面積当たりの総磁束量を確保するために、各超電導バルク体の側面に設けられる補強枠の肉厚は5.0mm以下であることが好ましく、3.0mm以下がより好ましく、1.0mm以下がさらに好ましい。しかし、単に補強枠を配置した場合であっても、超電導バルク体の破損を防ぐことはできなかった。上述したように、超電導バルク体間には反発力が作用する。このため、超電導バルク体を組み合わせた集合体の側面に集合体側面補強部材を配置しても、集合体には局部的に応力が集中する点が生じてしまう。このとき、集合体の上面あるいは下面がフリーになっていると、応力の開放により超電導バルク体の破損が生じるものと考えられる。

【0037】
そこで、本実施形態に係る超電導バルクマグネットは、個々の超電導バルク体の側面にそれぞれバルク体補強部材を設置し、超電導バルク体の集合体の側面に集合体側面補強部材を配置するとともに、さらに超電導バルク体の集合体の上面、下面全体を覆う補強部材を設置して構成する。すなわち、図1に示すように、本実施形態に係る超電導バルクマグネット100は、個々の超電導バルク体110の側面にバルク体補強部材120を嵌合し、これを複数個ならべた集合体の側面に集合体側面補強部材130を配置し、集合体の上面及び下面に集合体上部補強部材140および集合体下部補強部材150をあてがい、周囲の複数箇所に結合部材(図示せず。)を通して締結して、集合体側面補強部材130と集合体上部補強部材140と集合体下部補強部材150とを一体化するように固定する構造となっている。

【0038】
なお、図1では、バルク体補強部材120が嵌合された超電導バルク体110(以下、このまとまりを「バルク体ユニット」ともいう。)が6個の場合を示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、バルク体ユニットが5個や7個等の場合も、本発明の作用効果は同様に有効である。

【0039】
バルク体補強部材120は、超電導バルク体110の側面形状に沿った中空の部材であり、各超電導バルク体110の側面にそれぞれ設けられている。バルク体補強部材120の熱膨張係数と超電導バルク体110の熱膨張係数との違いを利用して、冷却時に、このバルク体補強部材120が各酸化物超電導バルク体110の側面を圧縮・補強することで、個々の酸化物超電導バルク体110のフープ応力に対抗し、割れを抑制する効果を奏することができる。また、各超電導バルク体110は、バルク体補強部材120が設けられても、上面及び下面はバルク体補強部材120から露出した状態となっている。

【0040】
ここで、図3Aに示すレーストラック型の酸化物超電導バルク体にレーストラック型のステンレス製の金属リング(バルク体補強部材)を嵌め込んだバルク体ユニットの着磁時における酸化物超電導バルク体中の最大応力(フープ応力)を低減させる効果を検証すべく、金属リングの肉厚と最大応力低減効果との関係を数値解析により算出した。表1に、バルク体補強部材の肉厚依存性を示す。

【0041】
【表1】
JP2016076433A1_000003t.gif

【0042】
バルク体補強部材の肉厚が5.0mmの場合における最大応力低減効果を100%とした場合、肉厚が1.0mmの場合も65%の効果があることがわかる。したがって、フープ応力を低減するには、バルク体補強部材の肉厚は厚い方が好ましい。しかしながら、上述したように、超電導バルクマグネットが発生する磁場強度および単位面積当たりの総磁束量を多くする場合、あるいは、バルク体補強部材を含む酸化物超電導バルク体の設置面積に制約がある場合には、バルク体補強部材の肉厚は薄い方が好ましい。

【0043】
バルク体補強部材120は、超電導バルクマグネット100に要求される磁場強度や単位面積当たりの総磁束量を保持するため、上述したように、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下の肉厚とされる。バルク体補強部材120の材質としては、十分な強度のあるステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金等を用いることが好ましい。バルク体補強部材120の肉厚の下限値は、これら素材の強度に応じて決められる。

【0044】
バルク体補強部材は旋盤、マシニングセンター、放電加工等の通常の金属加工によって作製できる。さらに、酸化物超電導バルク体とバルク体補強部材との接合は、樹脂接着、半田接着、グリース接着などで行うことが可能である。また、バルク体補強部材は、上述したように、隙間の生じ具合が均等でないために一部の酸化物超電導バルク体に局所的に作用する過度な力を緩和することができるため破損を防止する効果もある。

【0045】
尚、上記実施形態において、個々の超電導バルク体のバルク体補強部材を外して使用すると、超電導バルク体の破損が発生した。これは、先に述べたように、超電導バルク体の加工においては外形に有限の不均一性が生ずることが避けられず、隣接する超電導バルク体間に応力が集中する点が発生し、弾性体ではない超電導バルク体の破損に至るものと考えられる。したがって、超電導バルク体の側面に設けられるバルク体補強部材によりこのような応力を緩和する作用があるものと推測される。

【0046】
そして、バルク体ユニットを複数並べて集合体が形成される。このとき、各超電導バルク体110の上面の向きは同一方向に揃えられ、隣接する超電導バルク体110のバルク体補強部材120同士を当接させて集合体が形成される。例えば、図1に示すように、バルク体補強部材120が設けられた超電導バルク体110を6つ、2×3配列にして集合体を形成してもよい。集合体は、その側面の形状に対応する集合体側面補強部材130の内周面に集合体の側面が接することにより規制される。

【0047】
また、集合体側面補強部材130は、バルク体補強部材よりも肉厚に形成され、例えば5mm以上の肉厚であって、超電導バルクマグネット全体の大きさ等を考慮して適宜決定される。さらに、集合体側面補強部材130は、集合体上部補強部材140及び集合体下部補強部材150の両方と繋がっていることが、強度の確保において必要である。特に曲げや捻じれの応力に対応するため必要となる。但し、側面全周に亘って繋がっている必要は無く、周方向において繋がっている部分の割合が50%以上であればよく、70%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%が更に好ましい。さらにまた、集合体側面補強部材130における集合体の側面と接する部分の高さは、集合体の高さ、すなわち、バルクユニットの高さ以上であることが必要である。

【0048】
これは、集合体側面補強部材130の高さが、全周にわたり、集合体の高さに対して低い場合は、集合体側面補強部材130は、集合体上部補強部材140及び集合体下部補強部材150と繋がることができなくなるため、十分な結合強度が得られなくなってしまうためである。そのため、集合体側面補強部材130における集合体の側面と接する部分の高さは、集合体の高さ、すなわち、バルクユニットの高さと、実質的に同じであることが好ましい。また、集合体側面補強部材130の高さが、バルクユニットの高さよりも高い場合でも構わない。その際、バルク体ユニットの上面と集合体上部補強部材140の下面との間、又は、バルク体ユニットの下面と集合体下部補強部材140の上面との間に隙間が生じるが、その隙間に半田、樹脂、グリース等を充填すれば良い。しかしながら、隙間が高すぎる場合には、バルク体ユニットを十分に固定できない場合があるため、上記いずれの隙間も、10mm以下とすることが好ましく、1mm以下がより好ましい。さらに、集合体側面補強部材の一部分の開口部等によるバルクユニットの露出等があっても構わない。

【0049】
ここで、特許文献6との違いとして、特許文献6では、集合体側面補強部材と集合体上部補強部材とは、一体化されているものの、集合体下部補強部材とが一体化されていない。また、集合体の側面のほとんどが、露出しており、集合体側面補強部材により覆われていない。

【0050】
本発明では、集合体の側面は、集合体側面補強部材により覆われており、集合体の上面および下面は、それぞれ、集合体上部補強部材および集合体下部補強部材により覆われており、集合体側面補強部材と集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とが一体化された構成を有している。

【0051】
個々の酸化物超伝導バルク体に生じるフープ応力ではなく、酸化物超電導バルク体の集合体としての酸化物超電導バルクマグネット全体に生じるフープ応力的な電磁応力に対する破損防止機能は、複数の酸化物超電導バルク体の集合体を囲う厚肉の集合体側面補強部材が担う。

【0052】
集合体側面補強部材130の材質としては、特に制限されず、例えばバルク体補強部材120と同一材質であってもよいし、異なっていてもよい。具体的には、十分な強度のあるステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金が好ましい。集合体補強体は旋盤、マシニングセンター、放電加工等の通常の金属加工によって作製できる。さらに、これらの部材とバルク体ユニットとの接合は、例えば樹脂接着、半田接着、グリース接着などで行うことが可能である。また、これらの部材とバルク体ユニットとの隙間を埋めるために、樹脂、半田、グリースなどを充填することは有効である。

【0053】
集合体側面補強部材130により囲まれ、一体とされたバルク体ユニットの集合体に対して、さらに、集合体の上面及び下面に、集合体上部補強部材140および集合体下部補強部材150が固定される。具体的には、集合体上部補強部材140および集合体下部補強部材150は、集合体に局部的に応力が集中している点から応力が開放されるのを防止するために集合体側面補強部材と一体化するように固定される。集合体上面補強部材および集合体下面補強部材の肉厚は2mm以上とするのが望ましく、バルク体補強部材の厚みよりも肉厚にすることが好ましい。集合体側面補強部材130と補強板140、150とは、一体化するように固定されていれば、固定手段は特に制限されない。たとえば、ボルト等の締結部材を用いてもよいし、半田付け等の接着手段を用いてもよい。

【0054】
また、集合体側面補強部材と集合体下部補強部材とが一体構造とされた容器に、酸化物超電導バルク体を収納して、当該容器に集合体上部補強部材を固定してもよい。当該容器と集合体上部補強部材とを固定する手段としては、上述した固定手段を用いればよい。

【0055】
あるいは、集合体側面補強部材と集合体上部補強部材とが一体構造とされた容器を、集合体下部補強部材上に配置された酸化物超電導バルク体にかぶせて、当該容器と集合体下部補強部材とを固定してもよい。当該容器と集合体下部補強部材とを固定する手段としては、上述した固定手段を用いればよい。

【0056】
図1では、ボルト等の結合部材(図示せず。)によって締結することにより集合体側面補強部材と上下面の補強部材とが一体化される。このため、集合体側面補強部材130の上面及び下面、集合体上部補強部材140および集合体下部補強部材150には、ボルトが挿入される位置に締結孔132、142、152がそれぞれ複数形成されている。ボルト径、ボルト止め配置間隔、ボルトの間隔等は設計事項であり、酸化物超電導バルクマグネット100の形状やサイズに応じて十分な強度が得られるように適宜設計すればよい。

【0057】
図1に示す例では、締結孔132は、集合体側面補強部材130の上面及び下面それぞれに、四隅と、隣接する超電導バルク体110が接する位置との合計10カ所に形成されている。また、締結孔142、152は、集合体側面補強部材130の上面及び下面の締結孔132に対応する位置にそれぞれ貫通孔として形成されている。なお、図1には、集合体上部補強部材140および集合体下部補強部材150の外周以外にも2つの貫通孔が形成されているが、この貫通孔を利用する例については後述する。

【0058】
このように、本実施形態に係る超電導バルクマグネット100は、バルク体ユニットを複数個互いに接するように配置して形成された集合体を集合体側面補強部材130により補強するとともに、集合体の上面及び下面を集合体上部補強部材140および集合体下部補強部材150により覆って集合体側面補強部材130に固定して一体化させて構成される。

【0059】
このような構成を有する超電導バルクマグネットにおいては、バルク体補強部材120及び集合体側面補強部材130により、集合体を構成する一部の超電導バルク体110に過度な力が局所的に作用することを防止できる。結果として、超電導バルクマグネットを構成するすべての超電導バルク体110の破損を防止することができる。

【0060】
また、本発明の酸化物超電導バルクマグネットを回転機器等に応用する際、集合体上部補強部材および集合体下部補強部材の構成が必ずしも上下対称にならない状況が発生する。具体的には、バルクマグネットの集合体下部補強部材側から冷却し、磁場を発生させ、集合体上部補強部材側を発生させた磁場を活用する空間とする状況などが例示される。このとき、集合体下部補強部材を、例えば熱伝導性のよい無酸素銅板で構成し、集合体上面補強部材を、磁場の妨げとならない非磁性の材料、たとえば、ステンレス板等で構成する。

【0061】
このような場合、無酸素銅とステンレスとでは熱膨張係数及び機械強度も異なることから、バルク体補強部材を外側に押し広げようとする力以外に、酸化物超電導バルクマグネット全体を曲げようとする力や捻ろうとする力が働く。

【0062】
このような曲げや捻りの力に対しても、上述したように、集合体側面補強部材130を、集合体上部補強部材140及び集合体下部補強部材150に一体化するよう強固に固定することが有効である。以下、さらに詳細に説明する。

【0063】
本実施形態に係る超電導バルクマグネットは、発電機やモータなどの回転機器の磁極への応用を重視している。このような回転機器では、回転子に取り付けられた酸化物超電導バルクマグネットが発生する磁束を、回転子の外側(集合体上面補強板側)に位置する固定子の巻き線と効率よく鎖交させる必要がある。

【0064】
このとき、酸化物超電導バルクマグネットを均一温度に速やかに冷却するため、回転子に取り付けられる面である集合体下部補強部材は熱伝導性のよい材質で構成することが求められる。

【0065】
一方、磁束を、固定子の巻き線と効率よく鎖交させるには、酸化物超電導バルクマグネットと固定子側の巻き線表面とのギャップを数mmオーダーまで小さくする必要がある。ギャップを確保するには、集合体上部補強部材の厚さも数mmに抑える必要があり、かつ酸化物超電導バルクマグネットから生じる大きな電磁応力に対向する必要があるので、高強度で非磁性の材質が求められる。

【0066】
したがって、集合体上部補強部材の材質は、集合体下部補強部材の材質とは異なっており、集合体下部補強部材は、熱伝導率が50W/m・K以上である材質から構成されていることが好ましい。具体的には、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金が好ましい。

【0067】
集合体上部補強部材は、集合体下部補強部材よりも高強度であることが求められる。具体的には、室温(300K)での降伏強度が200MPa以上であることが好ましい。具体的な材質としては、ステンレス鋼、チタン合金、銅合金、アルミ合金等が例示される。

【0068】
集合体上部補強部材および集合体下部補強部材は旋盤、マシニングセンター、放電加工等の通常の金属加工によって作製できる。さらに、これらの部材とバルク体ユニットとは、例えば樹脂接着、半田接着、グリース接着などで接合してもよい。また、これらの部材とバルク体ユニットとの隙間を埋めるために、樹脂、半田、グリースなどを充填することは有効である。

【0069】
本願発明者らは、さらに、集合体上部補強部材および集合体下部補強部材の材質が異なることに起因してバルクマグネットに作用する曲げや捻りの力の影響をより確実かつ効果的に防止するには、集合体側面補強部材に集合体上部補強部材および集合体下部補強部材を固定することに加えて、超電導バルクマグネットの平面外周部だけでなく集合体の内部を通じて集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とを固定することを考えた。具体的には、集合体内部にボルト等の締結部材を増設することを考えた。しかし、本実施形態に係る超電導バルク体の集合体は、限られた面積で十分な総磁束量を確保するために、個々の超電導バルク体間はバルク体補強部材を隔てて密に配置されており、集合体側面補強部材の内側(集合体の内側)にはボルトを通すスペースがない。

【0070】
そこで、本実施形態では、図1に示すように、角部が面取り加工され八角形状の超電導バルク体を組み合わせて集合体を形成した際に、面取り加工が施されることによって生じた空間(符号162)に、集合体上部補強部材および集合体下部補強部材を締結する締結部材を配置し、2枚の補強部材を締結させて、集合体を強固に固定する。その結果、バルク体補強部材が薄肉であっても超電導バルク体の破損をほぼ完全に防止することができる。尚、面取り加工を施していない矩形(四角形)の超電導バルク体を用いる場合、角部に反発力から生じる応力が集中し易くなり割れが発生し易くなる。超電導バルク体の側面に面取り加工を施すことによって、このような割れの要因も取り除くという副次的な効果も得ることができる。

【0071】
また、バルクマグネットの内部において、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とを固定する別の手段としては、例えば図4に示すように、酸化物超電導バルク体210の高さ方向に貫通する貫通孔212を形成し、集合体上部補強部材240及び集合体下部補強部材250にも貫通孔212に対応する位置に貫通孔を形成する。これにより、酸化物超電導バルク体210の貫通孔212の位置においても、酸化物超電導バルク体210と集合体上部補強部材240及び集合体下部補強部材250とをボルト等の締結部材により固定することができる。したがって、図1のように集合体側面補強部材130部分のみを介して集合体上部補強部材140と集合体下部補強部材150とを連結させて固定した場合と比較して、これらをより強固に連結して固定することができる。

【0072】
以上より、超電導体バルクマグネットの内部において、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とを固定して、集合体を強固に固定することにより、酸化物超電導バルクマグネット全体の不均一な歪を抑制し、さらに内部の酸化物超電導バルク体の割れを抑制することができる。

【0073】
本実施形態における超電導バルクマグネットを構成する酸化物超電導バルク体の形状は特に制限されず、たとえば、酸化物超電導バルク体が、平面視で三角形以上の多角形状であってもよい。

【0074】
図5は、本実施形態における超電導バルクマグネットを構成する超電導バルク体が平面視で八角形である例を示す平面図である。

【0075】
より詳細に説明すると、各超電導バルク体110は、柱状であり、図5に示すように、平面から見ると四隅が面取り加工され八角形状となっている。なお、本実施形態に係る超電導バルク体110は、矩形の四隅が面取り加工されて八角形状となっているが、本実施形態に係る超電導バルクマグネット100に用いる超電導バルク体110は、四隅が面取り加工されていない矩形状であってもよい。なお、超電導バルク体110の四隅には反発力から生じる応力が集中し易く、応力が集中した部分から割れが発生する可能性もある。超電導バルク体110の側面に面取り加工を施すことによって、このような割れの要因も取り除くという副次的な効果も得ることができる。

【0076】
また、図9は、本実施形態における超電導バルクマグネットを構成する超電導バルク体が平面視で六角形状である例を示す平面図である。

【0077】
酸化物超電導バルク体の形状を、六角柱状とすることにより、酸化物超電導バルク体を複数配置して、集合体を形成する際には、隙間なく配置させることができる。その結果、全体的な磁場強度や単位面積当たりの総磁束量を十分に高めることができる。また、四角柱状に比べ円柱に近いことから、四角柱状よりも捕捉磁場特性は良い。

【0078】
一方、四角形状に比較すると、隙間なく配置した際に、端部が揃わないという点で若干不利である。また、超電導バルク体を隙間なく配置して集合体を形成できるものの、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とをバルクマグネットの内部においても固定する場合には、隙間を形成するために、酸化物超電導バルク体に穴を形成する必要がある。

【0079】
なお、酸化物超電導バルク体は、平面視形状が、多角形の頂点が丸み加工された形状であってもよい。すなわち、多角形の角部が曲線で構成され、丸みを帯びていてもよい。

【0080】
また、酸化物超電導バルク体が、平面視で、対向する一対の平行な直線と、対向する一対の曲線と、が接続されたレーストラック型の形状を有していてもよい。

【0081】
図3Aは、本実施形態における超電導バルクマグネットを構成する超電導バルク体がレーストラック型である例を示す斜視図である。図3Bは、図3Aに示すレーストラック型超電導バルク体のサイズを説明する説明図である。図6は、レーストラック型超電導バルク体により構成される酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。一方、図4は、上述したように、貫通孔が形成されたレーストラック型超電導バルク体から構成される酸化物超電導バルクマグネットの一例を示す分解斜視図である。

【0082】
レーストラック型の酸化物超電導バルク体110は、図3Aに示すように、上面と下面と側面とを有し、当該側面が、対向する一対の平行な直線と対向する一対の曲線とが接続されたレーストラック形状に形成されている。側面には、レーストラック型のバルク体補強部材120が嵌合される。ここで、レーストラック形状に関し、上面または下面からみたときの直線方向を長手方向として、図3Bに示すように「長手方向長さ」及び「幅」を定義する。

【0083】
図6に示す酸化物超電導バルクマグネット100は、レーストラック型の酸化物超電導バルク体110とバルク体補強部材120とからなるバルク体ユニットが複数個互いに接するように配置されて形成された集合体と、その側面を囲む厚肉の集合体側面補強部材130と、集合体の上面と下面を覆う集合体上部補強部材140及び集合体下部補強部材150と、これらを締結して固定するためのスペーサー160とから構成されている。図4に示す酸化物超電導バルクマグネット200においても、酸化物超電導バルク体210に貫通孔が形成されている以外は、図6に示す酸化物超電導バルクマグネット100と同様の構成を有している。

【0084】
図4及び図6記載のスペーサー160、260は、集合体側面補強部材130、230以外に、集合体上部補強部材140、240及び集合体下部補強部材150、250を固定する箇所を設けるためのものである。図6においては、スペーサー260を、酸化物超電導バルク体210の貫通孔212にも配置してもよい。スペーサー160、260には、高さ方向に上部または下部に孔が形成されている。この孔は、上下に貫通する貫通孔であってもよい。これにより、集合体上部補強部材140、240及び集合体下部補強部材150、250をボルト等の締結部材により強固に固定でき、酸化物超電導バルクマグネット100、200を効果的に補強できる。

【0085】
なお、1個の酸化物超電導バルク体の形状をレーストラック型とすることの利点として、長手方向の磁場分布の均一性が高いことが挙げられる。複数の酸化物超電導バルク体から構成する超電導バルクマグネットは、各々の酸化物超電導バルク体の境界部での磁場は、中央部の磁場極性に対して反転し不均一になる。そのため図6及び図4で示すレーストラック型の酸化物超電導バルク体110、210からなる酸化物超電導バルクマグネット100、200では、長手方向に関しては均一性が高い磁場分布が得られる。

【0086】
また、1個の酸化物超電導バルク体の捕捉磁束分布は着磁条件によって異なる。例えば、液体窒素温度(77K)で単結晶状のREBaCu中にREBaCuOが分散した一般的な超電導バルク材料を用い、図7に示すようにレーストラック型とした場合、比較的臨界電流密度が低くなる。具体的には、5T程度の十分に高い磁場中で静磁場着磁を行った場合、磁束密度分布は図7の下側に示す分布になり、超電導電流はバルク材料全体を流れる。

【0087】
これに対し、比較的臨界電流密度が高い液体ネオン温度(27K)では、5T程度の磁場中で静磁場着磁を行った場合、バルク体周辺部で大きな電流密度の超電導電流が流れるため、中心部に超電導電流が流れない。中心部の着磁前の磁束密度を捕捉できるため磁束密度分布は図8の下側に示す分布になる。このような状況では、図8に示すようにレーストラック型の酸化物超電導バルク体210の中央部分に貫通孔212があってもそこには超電導電流が流れないため磁束密度分布に影響を及ぼすことはない。この性質を利用して、上述したように、レーストラック型の酸化物超電導バルク体210の中央部分に貫通孔212を設け、この貫通孔212にボルト等の固定手段を挿入し、集合体上部補強部材240及び集合体下部補強部材250と強固に固定することによって、酸化物超電導バルクマグネット200のひずみ応力などに対し強固な構造をとることが可能となる。なお、酸化物超電導バルク体210の中央部分に形成された貫通孔212に直接締結部材を結合させる場合、貫通孔にネジ溝を形成すると酸化物超電導バルク体210が破損する恐れがある。この場合、貫通孔212の内径を、例えばボルト等の締結部材の径より大きくするのがよい。

【0088】
また、酸化物超電導バルク体が、円柱形状を有していてもよい。

【0089】
図10は、本実施形態における超電導バルクマグネットを構成する超電導バルク体が平面視円形状である例を示す平面図である。

【0090】
酸化物超電導バルク体の形状を、円柱状とすることにより、酸化物超電導バルク体の側面に配置されるバルク体補強部材は、酸化物超電導バルク体に対し、等方的に高い圧力を加えることができ、フープ応力を低減する効果が高い。また、結晶成長させて得られる単結晶状のバルク材は円柱形状であるため、加工が容易であるとともに、酸化物超電導バルク体に加工する際のロスが少ないので、歩留まりがよい。さらに、捕捉磁場特性に優れている。

【0091】
なお、酸化物超電導バルク体を複数配置して、集合体を形成する際には、隙間がないように配置することはできない。したがって、全体的な磁場強度や単位面積当たりの総磁束量を増加させるには若干不利であるものの、当該隙間を利用して、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とをバルクマグネットの内部においても固定できるため、バルクマグネット全体を曲げようとする力や捻ろうとする力に対して十分に対抗できる。

【0092】
上述した酸化物超電導バルク体から構成される、本実施形態に係る酸化物超電導バルクマグネット100、200は、上述したように、発電機やモータ等の回転機器の磁極として優れている。図11にレーストラック型の酸化物超電導バルク体110を用いた酸化物超電導バルクマグネット100を磁極として用いた回転機器300の一構成例を示す。図11では、バルク体ユニットの集合体の上面を覆う集合体上部補強部材を外した状況を示している。回転機器300は、回転軸320を中心として回転する円板状の回転子310の外周面に、所定の間隔で酸化物超電導バルクマグネット100が磁極として設けられてなる。酸化物超電導バルクマグネット100は、ボルト等で回転子310の外周部分に強固に接続される。必要に応じて、集合体下部補強部材に酸化物超電導バルク体110を冷却するための銅やアルミ等の高熱伝導部材を用い、冷媒からの冷熱を適量伝達できるように接続するようにしてもよい。

【0093】
図11では、レーストラック型の酸化物超電導バルク体110の長手方向が回転子310の回転移動方向Aと一致している。すなわち、酸化物超電導バルク体110の長手方向が回転軸320と垂直になっている。レーストラック型の酸化物超電導バルク体110の長手方向と回転軸方向とを垂直にすることで、磁極と対向する固定子(図示せず。)は、一つの磁極が通過する間、ほぼ一定の磁束密度の磁束と鎖交することになり、回転数が一定であれば、ほぼ一定の起磁力を発生することができる。これに対し、酸化物超電導バルク体110の長手方向が回転軸方向と平行の場合は、一つの磁極が通過する間、複数の磁束密度のピークを経験することになりうる。

【0094】
磁束密度が一定であるということは、発電機であれば、高調波成分を抑制することになり、また、モータであれば、コギングトルクを抑制してなめらかな回転を可能にできる。したがって、磁束密度が一定であることは、レーストラック型の酸化物超電導バルク体110を用いた磁極の大きなメリットである。

【0095】
(変形例)
上記の実施形態では、超電導バルクマグネットは、集合体下部補強部材を有した状態で、回転機器等に磁極として取り付けられている。しかしながら、回転機器等に磁極の取り付け面として、たとえば、無酸素銅からなる冷却板が備えられている場合には、超電導バルクマグネットは集合体下部補強部材を有していなくてもよい。すなわち、集合体下部補強部材を有していない超電導バルクマグネットを、回転機器の冷却板に取り付け、一体化するように固定すれば、当該冷却板を含むことにより、上述した超電導バルクマグネットの構成が実現できる。したがって、集合体下部補強部材は、回転機器等の磁極の取り付け面等であってもよい。

【0096】
また、集合体上部補強部材は、曲面を有していてもよい。特に比較的回転子の外径が小さくなる場合、固定子側の内周曲面形状に合わせた曲率を有するものであってもよい。さらに、この様な場合、各酸化物超電導バルク体の集合体上部補強部材側の平面が、この曲線に沿うように(すなわち、中央の酸化物超電導バルク体の集合体上部補強部材側の平面が、周囲の酸化物超電導バルク体の集合体上部補強部材側の平面より、集合体上部補強部材側に出た様に)配置されていてもよい。

【0097】
また、上記の実施形態では、集合体側面補強部材の一部にしか集合体の側面が接しておらず、集合体側面補強部材の内周面と集合体の側面との間に隙間が生じている。これに対し、集合体側面補強部材の集合体側の縁部を、集合体の側面と接するように延在させてもよい。このようにすることにより、集合体の側面が、集合体側面補強部材によりさらに強固に固定されるため、集合体を構成する超電導バルク体の破損をさらに効果的に防止することができる。

【0098】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
本実施例の超電導バルクマグネットでは、Gd-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体を用いた。まず市販されている純度99.9質量%のガドリニウム(Gd)、バリウム(Ba)、銅(Cu)のそれぞれの酸化物の粉末を、Gd:Ba:Cu=1.6:2.3:3.3のモル比で秤量し、それに白金を0.5質量%及び銀を10質量%加えた。この秤量粉を1時間かけて十分混練してから、大気中にて1173Kで8時間仮焼した。次に、金型を用いて仮焼粉を円板形状に成形した。この成形体を1423Kまで加熱して溶融状態にし、30分間保持した後、降温途中で種付けを行い、1278K~1252Kの温度領域を100時間かけて徐冷し結晶成長させ、直径70mmの単結晶状超電導バルク体を得た。この単結晶状超電導バルク体を、図5に示す形状に面取り加工を施して一辺50mm、高さ20mmの八角形状に加工し、酸素気流中において723Kで100時間熱処理した。
【実施例】
【0100】
この一辺50mm角の八角形状の超電導バルク体に対して、表2に示すように、ケース1-B~1-Eにおいては、0.5mm、1mm、2mm、2mmのステンレス鋼SUS316Lからなるバルク体補強部材をそれぞれ嵌め込んだ。その際、バルク体補強部材を含めて同じサイズ(50mm角)になるように超電導バルク体を追加工した。
【実施例】
【0101】
その後、ケース1-Aを除きバルク体補強部材が嵌め込まれた超電導バルク体を、それぞれ3個×2個の計6個を長方形状に配置して、全体を肉厚5mm、高さ20mmのステンレス鋼SUS316L製の集合体側面補強部材で囲った。このとき、超電導バルク体とバルク体補強部材及び集合体側面補強部材とが着磁実験中にずれないようにお互いにエポキシ系樹脂(商品名:スタイキャスト2850FT、日本エイブルスティック社製)で接着した。さらに、集合体の下面に、集合体下部補強部材としての無酸素銅板、上面に、集合体上部補強部材としてのステンレス鋼SUS316L板を配置し、集合体側面補強部材上、計10か所をボルト締めして、集合体側面補強部材と集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とが一体化するように固定した。ケース1-A~1-Dでは、さらに集合体内部にも2か所ボルト締めを行った。
【実施例】
【0102】
これらの超電導バルクマグネットを磁場中冷却で着磁し、30Kにて磁場分布を測定した。まず、外部磁場4Tの条件では、ケース1-A~1-Eのいずれの超電導バルクマグネットにおいても超電導バルク体の破損は見られなかった。しかし、外部磁場5Tの条件では、ケース1-B~1-Dの超電導バルクマグネットでは超電導バルク体は全く破損しなかったが、ケース1-Aの超電導バルクマグネットにおいて6個中2個の超電導バルク体が破損した。また、ケース1-Eにおいては、1個の超電導バルク体の破損が発生した。
【実施例】
【0103】
また、表2に、外部磁場4Tの着磁条件において、ケース1-B~1-Dについて、ケース1-Aの超電導バルクマグネットの総磁束量を基準とした場合の比較を示す。バルク体補強部材の肉厚が1mm以下であるケース1-B、1-Cの場合、90%以上の高い総磁束量であることが確認できた。なお、表2においては、外部磁場5Tの条件で、破損した酸化物超電導バルク体の個数を示した。本実験結果から、集合体内部において集合体上部補強部材と集合体下部補強部材とを固定した超電導バルクマグネットにおいて、超電導バルク体の破損を防止し、強磁場を発生可能であることが示された。
【実施例】
【0104】
尚、表2のケース1-A~1-Dと同様の条件で、集合体の上面及び下面に補強部材を設けず同様の実験を行った結果、ケース1-A~1-Dの全ての場合において、1個以上の酸化物超電導バルク体の破損が発生した。
【実施例】
【0105】
【表2】
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【実施例】
【0106】
(実施例2)
実施例1と同様の試験を、超電導バルク体を2個×2個の計4個組み合わせた場合について実施した。表3のケース2-A~2-Dでは、集合体側面補強部材上の、超電導バルクマグネットの平面外周8か所に加えて、内部の1箇所にボルトを通して締結した。本発明例であるケース2-Eでは、内部のボルト締めは行わなかった。表3に、外部磁場4Tの着磁条件において、ケース2-B~2-Eについて、ケース2-Aの超電導バルクマグネットの総磁束量を基準とした場合の比較を示す。
【実施例】
【0107】
本発明例であるケース2-B~2-Dでは、超電導バルク体の破損は発生しなかった。一方、個々の超電導バルク体にバルク体補強部材を嵌め込まなかった比較例であるケース2-Aでは、3個の超電導バルク体の破損が発生した。また、本発明例であるケース2-Eにおいては、1個の超電導バルク体の破損が発生した。
【実施例】
【0108】
【表3】
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【実施例】
【0109】
(実施例3)
実施例3では、図3Aに示したレーストラック型の酸化物超電導バルク体を有する超電導バルクマグネットについて検証した。本実施例の酸化物超電導バルクマグネットでは、Gd(Dy)-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体を用いた。まず市販されている純度99.9質量%の希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)のそれぞれの酸化物の粉末を、RE:Ba:Cu=1.6:2.3:3.3のモル比で秤量し、それにBaCeOを1.5質量%及び銀を20質量%加えた。この秤量粉を1時間かけて十分混練してから、大気中にて1173Kで8時間仮焼した。このとき、RE組成として(Gd:Dy)=(100:0)、(95:5)、(90:10)、(85:15)の四種類の仮焼粉を作製した。これらの仮焼粉を直径200mmの金型中に同心円状にそれぞれ直径50mmの領域に(100:0)の仮焼粉を配置し、その周り直径100mmの領域に(95:5)の仮称粉を、さらにその周囲150mmの領域に(90:10)の仮焼粉を配置し、残りを(85:15)の仮焼粉を配置し加圧成形した。
【実施例】
【0110】
この成形体を1423Kまで加熱して溶融状態にし、30分間保持した後、降温途中で種付けを行い、1278K~1252Kの温度領域を300時間かけて徐冷し結晶成長させ、直径155mmの単結晶状酸化物超電導バルク体を得た。このようにして作製した単結晶状酸化物超電導バルク体をレーストラック型(長手方向長さ120.0mm、幅60.0mm、高さ20.0mm)に加工を施し、酸素気流中において723Kで100時間熱処理した。
【実施例】
【0111】
このレーストラック型の酸化物超電導バルク体にステンレス鋼SUS316L製のレーストラック型のバルク体補強部材(外周の長手方向長さ122.0mm、幅62.0mm、内周の長手方向長さ120.0mm、幅60.0mm、高さ20.0mm、肉厚1.0mm)を嵌め込み、樹脂で固定した。さらに、同様にして作製したバルク体補強部材つきのレーストラック型の酸化物超電導バルク体を2個作製し、これら3個を敷き詰め、全体を肉厚10mmの同じくステンレス鋼SUS316Lから形成した集合体側面補強部材(外周の長手方向長さ206mm、幅142mm、内周の長手方向長さ186mm、幅122mm、高さ20.0mm、肉厚10mm)で囲った。
【実施例】
【0112】
さらに、集合体側面補強部材で囲ったバルク体ユニットの上面及び下面に、ネジ止めのための穴を有するステンレス鋼SUS316Lの集合体上部補強部材及び集合体下部補強部材(外周の形状は集合体側面補強部材の外周と同じ、厚さ5.0mm)を配置し、これらをネジ止めした。ネジ止め前には、酸化物超電導バルク体とバルク体補強部材、集合体側面補強部材とが着磁実験中にずれないようにお互いに樹脂(商品名:スタイキャスト2850FT、日本エイブルスティック社製)で埋め込んだ。
【実施例】
【0113】
次に、バルク体補強部材の厚さ及び有無による効果を比較するため、バルク体補強部材の厚さがゼロ(すなわち、バルク体補強部材なし)の酸化物超電導バルクマグネット(比較例3-A)、バルク体補強部材の厚さ0.5mmの酸化物超電導バルクマグネット(実施例3-B)、厚さ1.0mmの酸化物超電導バルクマグネット(実施例3-C)、厚さ2.0mmの酸化物超電導バルクマグネット(実施例3-D)について検証した。これらは、バルク体補強部材の厚さ以外はそれぞれ同様に作製した。
【実施例】
【0114】
表4に、外部磁場5Tの着磁条件において、比較例3-Aの酸化物超電導バルクマグネットの総磁束量を基準とした場合の比較及び外部磁場5T着磁時の酸化物超電導バルク体の割れの有無を示す。表4においては、外部磁場5Tの条件で、1個以上の酸化物超電導バルク体の破損があった場合、破損が「有」とした。バルク体補強部材の肉厚が1mm以下の場合、90%以上の高い総磁束量であることが確認できた。
【実施例】
【0115】
また、酸化物超電導バルク体の割れに関して、まず、これらの酸化物超電導バルクマグネットを、冷凍機を用い約30Kにて磁場中冷却で着磁し、磁場分布を測定した。外部磁場4Tの条件では、どの酸化物超電導バルクマグネットにおいても破損は見られなかった。次に、外部磁場を5Tに変更したところ、実施例3-B~3-Dの酸化物超電導バルクマグネットの酸化物超電導バルク体は全く破損しなかったが、比較例3-Aの酸化物超電導バルクマグネットが破損した。
【実施例】
【0116】
従って、本実験結果から、本発明の構造を有するレーストラック型の超電導バルク体を複数個組み合わせてなる酸化物超電導バルクマグネットにおいては、酸化物超電導バルク体の破損を防止し、強磁場を発生することが可能な酸化物超電導バルクマグネットを提供することができる。また、バルク体補強部材の肉厚を1.0mm以下とすることで、高い総磁束量を得ることができることが示された。
【実施例】
【0117】
尚、表4の3-A~3-Dと同様の条件で、集合体上部補強部材及び集合体下部補強部材なしで同様の実験を行った結果、3-A~3-Dの全ての場合において、酸化物超電導バルク体の破損が発生した。
【実施例】
【0118】
これらの実験結果から、レーストラック型酸化物超電導バルク体の各々の外周にレーストラック型のバルク体補強部材を嵌合したバルク体ユニットを複数個組み合わせてなる酸化物超電導バルク体の集合体の側面外周部に集合体補強体を配置し、集合体の上面及び下面に補強部材を配置することで、酸化物超電導バルクマグネットが優れた磁場発生源となることが明らかになった。
【実施例】
【0119】
【表4】
JP2016076433A1_000006t.gif
【実施例】
【0120】
(実施例4)
実施例4では、図4に示す貫通孔が形成された酸化物超電導バルク体から構成される酸化物超電導バルクマグネットについて検証した。本実施例の酸化物超電導バルクマグネットでは、Gd(Dy)-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体を用いた。まず市販されている純度99.9質量%の希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)のそれぞれの酸化物の粉末を、RE:Ba:Cu=1.8:2.4:3.6のモル比で秤量し、それにBaCeOを1.5質量%及び銀を20質量%加えた。この秤量粉を1時間かけて十分混練してから、大気中にて1173Kで8時間仮焼した。この時、RE組成として(Gd:Dy)=(100:0)、(96:4)、(92:8)、(88:12)の四種類の仮焼粉を作製した。これらの仮焼粉を直径200mmの金型中に同心円状にそれぞれ直径50mmの領域に(100:0)の仮焼粉を配置し、その周り直径100mmの領域に(96:4)の仮称粉を、さらにその周囲150mmの領域に(92:8)の仮焼粉を配置し、残りを(88:12)の仮焼粉を配置し加圧成形した。
【実施例】
【0121】
この成形体を1423Kまで加熱して溶融状態にし、30分間保持した後、降温途中で種付けを行い、1278K~1252Kの温度領域を320時間かけて徐冷し結晶成長させ、直径155mmの単結晶状酸化物超電導バルク体を得た。このようにして作製した単結晶状酸化物超電導バルク体をレーストラック型(長手方向長さ110.0mm、幅70.0mm、高さ20.0mm)に加工を施し、さらに、酸化物超電導バルク体の中央部に、直径10.0mmの貫通孔を長手方向に40mmの中心間隔で2個形成した。その後、これを酸素気流中において723Kで100時間熱処理した。酸素気流中において723Kで100時間熱処理した。
【実施例】
【0122】
このレーストラック型の酸化物超電導バルク体にステンレス鋼SUS316L製のレーストラック型のバルク体補強部材(外周の長手方向長さ112.0mm、幅72.0mm、内周の長手方向長さ110.0mm、幅70.0mm、高さ20.0mm、肉厚1.0mm)を嵌め込み樹脂で固定した。さらに、同様にして作製したバルク体補強部材つきのレーストラック型の酸化物超電導バルク体を2個作製し、これら3個を敷き詰め、全体を肉厚12mmの同じくステンレス鋼SUS316Lから形成した集合体側面補強部材(外周の長手方向長さ240mm、幅136mm、内周の長手方向長さ216mm、幅112mm、高さ20.0mm、肉厚10mm)で囲った。
【実施例】
【0123】
さらに、集合体側面補強部材で囲ったバルク体ユニットの上面に、ネジ止めのための穴を有するステンレス鋼SUS316L(厚さ5.5mm)の集合体上部補強部材を配置し、ネジ止めした。また、集合体側面補強部材で囲ったバルク体ユニットの下面に、ネジ止めのための穴を有する無酸素銅(厚さ9.0mm)の集合体下部補強部材を配置し、ネジ止めした。なお、集合体上部補強部材及び集合体下部補強部材の外周の形状は、集合体側面補強部材の外周の形状と同一である。また、ネジ止め前に酸化物超電導バルク体とバルク体補強部材、集合体側面補強部材とが着磁実験中にずれないようにお互いに樹脂(商品名:スタイキャスト2850FT、日本エイブルスティック社製)で埋め込んだ。
【実施例】
【0124】
つぎに、バルク体補強部材の有無による効果を比較するため、バルク体補強部材の厚さがゼロ(すなわち、バルク体補強部材なし)の酸化物超電導バルクマグネット(比較例4-A)と、バルク体補強部材の厚さ1.0mmの酸化物超電導バルクマグネット(実施例4-C)とについて検証した。これらは、バルク体補強部材の厚さ以外はそれぞれ同様に作製した。
【実施例】
【0125】
これらの超電導バルクマグネットを、冷凍機を用い磁場中冷却で着磁し、約30Kにて磁場分布を測定した。外部磁場4.5Tの条件では、いずれの酸化物超電導バルクマグネットにおいても破損は見られなかった。しかし、外部磁場5.5Tの条件では、実施例4-Cの酸化物超電導バルクマグネットでは酸化物超電導バルク体は全く破損しなかったが、比較例4-Aの酸化物超電導バルクマグネットが破損した。
【実施例】
【0126】
これらの実験結果から、穴開け加工部を有するレーストラック型の酸化物超電導バルク体の各々の外周にレーストラック型のバルク体補強部材を嵌合したレーストラック型のバルク体ユニットを複数個組み合わせてなる酸化物超電導バルク体の集合体の側面外周部に集合体側面補強部材を配置し、集合体の上面及び下面に集合体上部補強部材及び集合体下部補強部材を締結することで、酸化物超電導バルクマグネットが優れた磁場発生源となることが明らかになった。
【実施例】
【0127】
(実施例5)
実施例5では、図10に示す円柱形状の酸化物超電導バルク体から構成される酸化物超電導バルクマグネットについて検証した。本実施例の酸化物超電導バルクマグネットでは、Gd-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体を用いた。まず市販されている純度99.9質量%のガドリニウム(Gd)、バリウム(Ba)、銅(Cu)のそれぞれの酸化物の粉末を、Gd:Ba:Cu=1:2:3のモル比で秤量し、それにBaCeOを1.5質量%を添加し、十分に混合した後、1183Kで5時間、酸素気流中で仮焼し、更に粉砕および混練を行った後、再び1193Kで仮焼し粉砕することでGd系123相の仮焼粉を作製した。また、同様の各酸化物原料を用い、Gd:Ba:Cu=2:1:1のモル比で秤量し、それにBaCeOを1.5質量%を添加し、十分に混合した後、1183Kで5時間、酸素気流中で仮焼し、更に粉砕および混練を行った後、再び1198Kで仮焼し粉砕することでGd系211相の仮焼粉を作製した。
【実施例】
【0128】
これらの仮焼粉を123:211のモル比が3:1になるように秤量し、更に10質量%の酸化銀粉末を添加し混合粉を作製した。この混合粉を内径65mmの円筒状金型を用い成形体を作製し、この成形体を加熱して半溶融状態にしたのち、1313Kで種結晶を接触させた後、1278K~1255Kの温度領域を280時間かけて徐冷し結晶成長させ、直径約51mmの単結晶状酸化物超電導バルク体を得た。これを直径50mm、高さ17mmの円柱状に加工し、酸素気流中において703Kで100時間熱処理し、酸化物超電導バルク体を作製した。また、同様の方法により、直径約51mmの単結晶状酸化物超電導バルク体を得たのち、直径47mm、高さ17mmの酸化物超電導バルク体を作製した。またさらに、同様の方法により、直径約51mmの単結晶状酸化物超電導バルク体を得たのち、直径38mm、高さ12mmの酸化物超電導バルク体を作製した。
【実施例】
【0129】
次に同様の方法で作製した直径50mm、高さ17mmの酸化物超電導バルク体を10個使用し、図12に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材はない。集合体側面補強部材は、ネジ止めのための穴を有する肉厚12mm、高さ17mmのSUS316L製のリングを使用した。また、集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚4.5mmのSUS316L製の板を使用し、集合体下部補強部材として、ネジ止めのための穴を有する肉厚11.0mmの無酸素銅製の板を使用し、これらをネジ止めすることで、比較例の酸化物超電導バルクマグネット(5-A)を作製した。
【実施例】
【0130】
また、同様の方法で作製した直径50mm、高さ17mmの酸化物超電導バルク体を10個使用し、図13に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材はない。また、集合体側面補強部材もない。集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚7.0mmのSUS316L製の板を使用した。
【実施例】
【0131】
ただし、酸化物超電導バルク体の集合体と接する集合体上部補強部材の面には、図13に示すように、酸化物超電導バルク体の集合体が収まるくぼみ加工が施されており、このくぼみ加工部分の肉厚は、4.5mmとした。すなわち、くぼみ加工部分により集合体の側面の一部が覆われている。また、酸化物超電導バルク体の隙間にネジ穴の位置が対応するように加工した。図13にはA-A‘間の断面図およびB-B’間の断面図も示した。集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚11.0mmの無酸素銅製の板を使用し、これらをネジ止めすることで比較例の酸化物超電導バルクマグネット(5-B)を作製した。
【実施例】
【0132】
また、同様の方法で作製した直径38mm、高さ12mmの酸化物超電導バルク体を10個作製した。また、直径38mm、高さ5mmのステンレス板を作製した。そして、バルク体補強部材として内径39.0mm、外径50.0mm(肉厚5.5mm)のステンレスリングを使用し、図14に示すように、このステンレスリング中にステンレス板を酸化物超電導バルク体の下にしてこれらを樹脂接着した。このようにしてバルク体ユニットを10個作製した。集合体側面補強部材は無く、集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚9.0mmのSUS316L製の板を使用した。
【実施例】
【0133】
ただし、酸化物超電導バルク体の集合体と接する集合体上部補強部材の面には、図14に示すように、酸化物超電導バルク体の集合体が収まるくぼみ加工が施されており、このくぼみ加工部分の肉厚は、4.5mmとした。すなわち、くぼみ加工部分により集合体の側面の一部が覆われている。また、酸化物超電導バルク体の隙間にネジ穴の位置が対応するように加工した。図14にはA-A‘間の断面図およびB-B’間の断面図も示した。集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚11.0mmの無酸素銅製の板を使用し、これらをネジ止めすることで比較例の酸化物超電導バルクマグネット(5-C)を作製した。
【実施例】
【0134】
また、同様の方法で作製した直径47mm、高さ17mmの酸化物超電導バルク体を10個使用し、図15に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材には内径47.05mm、外径50.0mmの銅合金リングを使用し、半田接着した。集合体側面補強部材はネジ止めのための穴を有する肉厚12mm、高さ17mmのSUS316L製のリングを使用した。
【実施例】
【0135】
また、集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚4.5mmのSUS316L製の板を使用し、集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚11.0mmの無酸素銅製の板を使用し、これらをネジ止めすることで実施例の酸化物超電導バルクマグネット(5-D)を作製した。
【実施例】
【0136】
またさらに、同様の方法で作製した直径47mm、高さ17mmの酸化物超電導バルク体を10個使用し、図16に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材には内径47.05mm、外径50.0mmの銅合金リングを使用し、半田接着した。集合体側面補強部材はネジ止めのための穴を有する肉厚12mm、高さ17mmのSUS316L製のリングを使用した。
【実施例】
【0137】
また、集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚4.5mmのSUS316L製の板を使用し、集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚11.0mmの無酸素銅製の板を使用した。さらに、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材を集合体側面補強部材を介して、結合する際、バルク体補強部材付きの円柱状酸化物超電導バルク体間のスペースにスペーサーを配置し、これらの位置においても結合部材により接合することで強度を高め、実施例の酸化物超電導バルクマグネット(5-E)を作製した。
【実施例】
【0138】
なお、これらの例(5-A、5-B、5-C、5-D、5-E)において、集合体上部補強部材及び集合体下部補強部材の外周の形状は、5-Aの集合体側面補強部材の外周の形状と同一である。また、実施例5-D、実施例5-Eでは、ネジ止めに加え、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材を集合体側面補強部材に半田接続した。また、酸化物超電導バルク体、集合体側面補強部材が着磁実験中にずれないように樹脂(商品名:スタイキャスト2850FT、日本エイブルスティック社製)で埋め込んだ。
【実施例】
【0139】
次に、バルク体補強部材および集合体側面補強部材の有無による効果およびスペーサーを介しての集合体上部補強部材と集合体下部補強部材との結合の効果を比較するため、上記の(比較例5-A)、(比較例5-B)、(比較例5-C)、(実施例5-D)(実施例5-E)に関して、着磁実験を行った。
【実施例】
【0140】
表5に、各外部磁場の着磁条件において、酸化物超電導バルク体の割れの有無および割れた円柱状酸化物超電導バルク体の個数を示す。また、30K、2.5Tの条件で着磁した時の、集合体上部補強部材表面における、一つのバルク体ユニット上の磁束量を測定した時の結果を比較例5-Aを基準にとり100%とした時の値をしめす。また、30K,1.5T着磁時は、いずれも酸化物超電導バルク体の割れは無かった。
【実施例】
【0141】
外部磁場30K,3.0Tの条件では、比較例5-Bにおいて、4個の酸化物超電導バルク体の破損があったが、他の例では破損がなかった。また、外部磁場30K,4.0Tの条件では、比較例5-Aにおいて、2個の酸化物超電導バルク体の破損があったが、比較例5-C、実施例5-D、実施例5-Eでは、破損が無かった。また、外部磁場30K、6.0Tの条件では、実施例5-Dでは、1個の酸化物超電導バルク体の破損があったが、実施例5-Eでは、破損が無かった。
【実施例】
【0142】
30K、3.0T着磁では、比較例5-Bがすでに、4個のバルク体に破損がみられた。これは、比較例5-Bには、バルク体補強部材がないことに加えて、集合体の側面の一部しか覆われていないため、ネジ止めの際にネジ止めによる圧縮力が直接酸化物超電導バルク体にかかることになる。酸化物超電導バルク体は、セラミックスであるため、圧縮強度は、引っ張り強度に比べ大きいものの、基本的に単結晶材料であるため、外力に対し欠けやすく割れやすい。そのため、集合体上部補強部材を酸化物超電導バルク体が破損しない程度の力でしか固定できなかったことが原因と考えられる。
【実施例】
【0143】
また、比較例5-Cでは、磁束量が50%以下に減少しており、損傷が起きた酸化物超電導バルク体であっても70%程度の磁束量を維持していたことから、損傷と同レベルの磁束量低下があるとして、総合判定では不可(poor)とした。これらの実験結果から、本発明の構造を有する円柱状の超電導バルク体を複数個組み合わせてなる酸化物超電導バルクマグネットにおいては、酸化物超電導バルク体の破損を防止し、より強磁場を発生することが可能な酸化物超電導バルクマグネットを提供することができる事がわかった。
【実施例】
【0144】
【表5】
JP2016076433A1_000007t.gif
【実施例】
【0145】
(実施例6)
実施例6では、図9に示す六角柱形状の酸化物超電導バルク体から構成される酸化物超電導バルクマグネットについて検証した。本実施例の酸化物超電導バルクマグネットでは、Dy-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体を用いた。まず市販されている純度99.9質量%の希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)のそれぞれの酸化物の粉末を、Dy:Ba:Cu=1:2:3のモル比で秤量し、それにBaCeOを1.5質量%を添加し、十分に混合した後、1183Kで5時間、酸素気流中で仮焼し、更に粉砕および混練を行った後、再び1193Kで仮焼し粉砕することでDy系123相の仮焼粉を作製した。また、同様の各酸化物原料を用い、Dy:Ba:Cu=2:1:1のモル比で秤量し、それにBaCeOを1.5質量%を添加し、十分に混合した後、1183Kで5時間、酸素気流中で仮焼し、更に粉砕および混練を行った後、再び1198Kで仮焼し粉砕することでDy系211相の仮焼粉を作製した。
【実施例】
【0146】
これらの仮焼粉を123:211のモル比が3:1になるように秤量し、更に10質量%の酸化銀粉末を添加し混合粉を作製した。この混合粉を内径85mmの円筒状金型を用い成形体を作製し、この成形体を加熱して半溶融状態にしたのち、1313Kで種結晶を接触させた後、1263Kから1240Kの温度領域を320時間かけて徐冷し結晶成長させ、直径約65mmの単結晶状酸化物超電導バルク体を得た。これを一辺が32mm、高さ20mmの六角柱状に加工し、酸素気流中において703Kで100時間熱処理し、酸化物超電導バルク体を作製した。また、同様の方法により、直径約65mmの単結晶状酸化物超電導バルク体を得たのち、一辺が30mm、高さ20mmの酸化物超電導バルク体を作製した。
【実施例】
【0147】
次に同様の方法で作製した一辺が32mmの六角柱状の酸化物超電導バルク体を10個使用し、図17に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材はない。集合体側面補強部材はネジ止めのための穴を有する肉厚14mm、高さ20mmのSUS314製のリングを使用した。
【実施例】
【0148】
また、集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚5.5mmのSUS314製の板を使用し、集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚12.0mmの無酸素銅製の板を使用し、これらをネジ止めすることによって、比較例の酸化物超電導バルクマグネット(6-A)を作製した。
【実施例】
【0149】
また、同様の方法で作製した一辺が30mm、高さ20mmの六角柱状の酸化物超電導バルク体を10個使用し、図18に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材には内周の一辺が30.05mm、外周の一辺が32.0mmの六角柱状のアルミ合金リングを使用し、半田接着した。集合体側面補強部材はネジ止めのための穴を有する肉厚14mm、高さ20mmのSUS314製のリングを使用した。また、集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚5.5mmのSUS314製の板を使用し、集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚12.0mmの無酸素銅製の板を使用し、これらをネジ止めすることによって実施例の酸化物超電導バルクマグネット(6-B)を作製した。
【実施例】
【0150】
またさらに、同様の方法で作製した一辺が30mm、高さ20mmの六角柱状の酸化物超電導バルク体を10個使用し、このうち2個は中心部に直径12mmの穴あけ加工を施したものを使用し、図19に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材には内周の一辺が30.05mm、外周の一辺が32.0mmの六角柱状のアルミ合金リングを使用し、半田接着した。集合体側面補強部材は肉厚14mm、高さ20mmのSUS314製のリングを使用した。
【実施例】
【0151】
また、集合体上部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚5.5mmのSUS314製の板を使用し、集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚15.0mmの無酸素銅製の板を使用し、さらに、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材を集合体側面補強部材を介して、結合する際、バルク体補強部材付きの六角柱状酸化物超電導バルク体間のスペースにスペーサーを配置した。加えて、穴開け加工した六角柱状の酸化物超電導バルク体の穴にもスペーサーを配置しスペーサーを介して集合体上部補強部材と集合体下部補強部材を固定した。これらの位置においても結合部材により接合することで強度を高め、実施例の酸化物超電導バルクマグネット(6-C)を作製した。
【実施例】
【0152】
またさらに、同様の方法で作製した一辺が30mm、高さ20mmの六角柱状の酸化物超電導バルク体を10個使用し、このうち2個は中心部に直径12mmの穴あけ加工を施したものを使用し、図20に示すように配置した。このとき、バルク体補強部材には内周の一辺が30.05mm、外周の一辺が32.0mmの六角柱状のアルミ合金リングを使用し、半田接着した。集合体側面補強部材は肉厚14mm、高さ20mmのSUS314製のリングを使用した。
【実施例】
【0153】
また、集合体上部補強部材として図20に示すように、ネジ止めのための穴を有し、酸化物超電導バルク体の集合体(バルク体ユニット)の端部の形状に対応するように加工した無酸素銅製のリングを使用した。すなわち、集合体側面補強部材の集合体側の縁部を、集合体の側面と接するように延在させた。
【実施例】
【0154】
集合体下部補強部材としてネジ止めのための穴を有する肉厚15.0mmの無酸素銅製の板を使用し、さらに、集合体上部補強部材と集合体下部補強部材を集合体側面補強部材を介して、結合する際、穴開け加工した六角柱状の2個の酸化物超電導バルク体の穴にもスペーサーを配置しスペーサーを介して集合体上部補強部材と集合体下部補強部材を固定した。これらの位置においても結合部材により接合することで強度を高め、実施例の酸化物超電導バルクマグネット(6-D)を作製した。
【実施例】
【0155】
なお、これらの例(6-A、6-B、6-C、6-D)において、集合体上部補強部材及び集合体下部補強部材の外周の形状は、集合体側面補強部材の外周の形状と同一である。また、ネジ止め前に酸化物超電導バルク体とバルク体補強部材、集合体側面補強部材とが着磁実験中にずれないように樹脂(商品名:スタイキャスト2850FT、日本エイブルスティック社製)で埋め込んだ。
【実施例】
【0156】
次に、バルク体補強部材の有無による効果およびスペーサーを介しての集合体上部補強部材と集合体下部補強部材との結合の効果を比較するため、上記の(比較例6-A)、(実施例6-B)、(実施例6-C)、(実施例6-D)に関して、着磁実験を行った。
【実施例】
【0157】
表6に、各外部磁場の着磁条件において、酸化物超電導バルク体の割れの有無および割れた六角柱状の酸化物超電導バルク体の個数を示す。表6においては、外部磁場40K、4.0Tの条件では、比較例6-Aにおいて、2個の酸化物超電導バルク体の破損があったが、実施例6-B、実施例6-C、実施例6-Dでは、破損が無かった。また、外部磁場40K、6.0Tの条件では、実施例6-Bでは、2個の酸化物超電導バルク体の破損があったが、実施例6-C、実施例6-Dでは、破損が無かった。
【実施例】
【0158】
これらの実験結果から、本発明の構造を有する六角柱状の超電導バルク体を複数個組み合わせてなる酸化物超電導バルクマグネットにおいては、酸化物超電導バルク体の破損を防止し、より強磁場を発生することが可能な酸化物超電導バルクマグネットを提供することができる事がわかった。
【実施例】
【0159】
【表6】
JP2016076433A1_000008t.gif
【符号の説明】
【0160】
100 酸化物超電導バルクマグネット
110、210 酸化物超電導バルク体
120、210 バルク体補強部材
130、230 集合体側面補強部材
132 締結孔(貫通孔)
140、240 集合体上部補強部材
142 締結孔(貫通孔)
150、250 集合体下部補強部材
152 締結孔(貫通孔)
160、260 スペーサー
162 空間
212 貫通孔
300 回転機器
310 回転子
320 回転軸
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図3A】
3
【図3B】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図13】
14
【図14】
15
【図15】
16
【図16】
17
【図17】
18
【図18】
19
【図19】
20
【図20】
21