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明細書 :ウイルスフリー植物個体の作出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 ウイルスフリー植物個体の作出方法
国際特許分類 A01H  17/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01H 17/00 ZNA
C12N 15/00 A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 16
出願番号 特願2016-561973 (P2016-561973)
国際出願番号 PCT/JP2015/083501
国際公開番号 WO2016/084965
国際出願日 平成27年11月27日(2015.11.27)
国際公開日 平成28年6月2日(2016.6.2)
優先権出願番号 2014241474
優先日 平成26年11月28日(2014.11.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】吉川 信幸
【氏名】山岸 紀子
出願人 【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査請求 未請求
テーマコード 2B030
Fターム 2B030AA03
2B030AD20
2B030CA28
要約 以下の工程:(1)rALSV感染植物個体を、その至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する工程;(2)工程(1)の後、rALSV感染植物個体をその至適温度にて育成して、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる工程;および(3)工程(2)で伸長させたrALSV非存在部位を穂木として接ぎ木して育成する工程を、含む作出方法とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
組換えALSV(rALSV)感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーである植物個体の作出方法であって、以下の工程:
(1)rALSV感染植物個体を、その至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する工程;
(2)工程(1)の後、rALSV感染植物個体をその至適温度にて育成して、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる工程;および
(3)工程(2)で伸長させたrALSV非存在部位を穂木として接ぎ木して育成する工程
を含むことを特徴とする作出方法。
【請求項2】
工程(1)の育成期間の温度は、35℃~42℃であることを特徴とする請求項1の作出方法。
【請求項3】
組換えALSV(rALSV)を感染させた植物個体から、rALSV非存在部位を伸長させるための育成方法であって、
(1)rALSV感染植物個体を、その至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する工程;
(2)rALSV感染植物個体をその至適温度にて育成して、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる工程を含むことを特徴とする育成方法。
【請求項4】
工程(1)の育成期間の温度は、35℃~42℃であることを特徴とする請求項3の方法。
【請求項5】
請求項3の育成方法によって成長させたrALSV感染植物個体であって、伸長したrALSV非存在部位を有することを特徴とするrALSV感染植物個体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えALSV(rALSV)感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーである植物個体を作出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana:At)の開花促進遺伝子FLOWERING LOCUS T(AtFT)を発現する組換えリンゴ小球形潜在ウイルス(Apple latent spherical virus:ALSV)に感染した増殖宿主(キノア)から濃縮したウイルス(ALSV-AtFT)のRNAを、発根直後のバラ科果樹実生の子葉にパーティクルガン法を用いて接種することによって、例えばリンゴの場合は発芽後6~12年を要する開花までの期間を1.5~3ヶ月へと大幅に短縮することに成功している(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
ALSVはリンゴに病気を引き起こすことなく無病徴感染し、安定して全身感染を維持するが、その種子伝染率は低率であることから、AtFT遺伝子を発現する組換えALSV(ALSV-AtFT)の濃縮RNAの感染によって開花促進がなされたバラ科果樹の次世代からはウイルスフリーの個体を選抜することが可能であり、その選抜したウイルスフリー個体は、遺伝子導入がなされていない果樹個体となんら変わることがなく、そのまま育種素材として使用することできる(特許文献1)。
【0004】
さらに、本発明者らは、AtFTを発現するとともに、バラ科の開花抑制遺伝子MdTFL1のジーンサイレンシングを誘導するrALSVを感染させた種子を育成し、開花した花に受粉して、播種から12ヵ月以内に次世代種子を含む果実を結実させることにも成功している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-183891号公報
【特許文献2】特開2014-183754号公報<nplcit num="1"> <text>Yamagishi N. et al. 2011. Promotion of flowering and reduction of a generation time in apple seedlings by ectopical expression of the Arabidopsis thaliana FT gene using the Apple latent spherical virus vector. Plant Mol. Biol. 75(1-2): 193-204.</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>Sasaki S. et al. 2011. Efficient virus-induced gene silencing in apple, pear and Japanese pear using Apple latent spherical virus vectors. Plant Methods. 7:15.</text></nplcit><nplcit num="3"> <text>NYLAND,G.,and A.C.GOHEEN (1969) :Heat therapy of virus disease of perenial plants:Ann Rev.Phythopath 331-354</text></nplcit><nplcit num="4"> <text>下村撤(1985):ウイルス病とその検定法:増補/圏芸植物の器宮と組織培養(誠文堂新光社) 76-96</text></nplcit><nplcit num="5"> <text>五十嵐亜紀(2007).リンゴ小球形潜在ウイルスベクターを利用した植物内在性遺伝子のRNAサイレンシングの誘導.岩手大学大学院農学研究科修士論文</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の通り、組み換えALSV(rALSV)の感染によって開花促進がなされたバラ科果樹の次世代からはウイルスフリーの個体を選抜することが可能であるものの、選抜したウイルスフリーの個体を果実の収穫などが可能な果樹にまで成長させるためには6~12年の期間を要する。また、リンゴやナシは他家受精植物であるため、受粉によって得られた次世代種子から発芽した植物個体の場合、当代の植物個体とは異なる形質を有している場合がある。そこで、リンゴやナシなどの果樹植物では、好ましい形質を執する個体を増殖させる手段として「接ぎ木」が用いられている。しかしながら、rALSV感染によって好ましい形質を有する個体が得られたとしても、この個体の一部を用いた接ぎ木によって増殖させた新たな植物個体は、rALSVが全身に感染しているため、たとえ安全性が確保されていても、生産者や消費者には受け入れられ難く、実際上は販売や出荷することは難しい。
【0007】
このため、好ましい形質を有するrALSV感染植物個体の少なくとも一部をウイルスフリーとすることができれば、その部分を穂木として接ぎ木することによって新品種の作出が可能となる。
【0008】
ウイルスに感染した植物をウイルスフリー化する技術としては、成長点培養や、成長点培養と高温処理を組み合わせた方法も知られている(例えば、非特許文献3、4など)。しかしながら、成長点培養の場合、ウイルスフリーの部分は非常に小さく100%ウイルスフリー株を作ることは容易ではない。さらに、成長点培養の場合、組織培養と個体再生に時間と手間がかかり、さらに果樹までの成長に6~12年の期間を要する。
【0009】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、簡便かつ短期間で、rALSV感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーの植物個体(果樹)を得ることが可能な植物個体の作出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の植物個体の作出方法は、組換えALSV(rALSV)感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーである植物個体の作出方法であって、以下の工程:
(1)rALSV感染植物個体を、その至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する工程;
(2)工程(1)の後、rALSV感染植物個体をその至適温度にて育成して、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる工程;および
(3)工程(2)で伸長させたrALSV非存在部位を穂木として接ぎ木して育成する工程
を含むことを特徴としている。
【0011】
この作出方法では、工程(1)の育成期間の温度は、35℃~42℃であることが好ましい。
【0012】
本発明の育成方法は、組換えALSV(rALSV)を感染させた植物個体から、rALSV非存在部位を伸長させるための育成方法であって、
(1)rALSV感染植物個体を、rALSV感染植物個体の至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する工程;
(2)rALSV感染植物個体をその至適温度にて生育させて、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる工程
を含むことを特徴としている。
【0013】
この育成方法では、工程(1)の育成期間の温度は、35℃~42℃であることが好ましい。
【0014】
本発明のrALSV感染植物個体は、前記育成方法によって成長させたrALSV感染植物個体であって、伸長したrALSV非存在部位を有することを特徴としている。
【0015】
なお、本発明において「植物個体」とは種子から発生した多細胞生物体であり、複数の器官(根、幹、枝、葉など)からなる植物全体を意味する。本発明における「ウイルスフリー」とは、植物個体に少なくともrALSVが存在しない状態を意味する。またrALSV感染植物個体における「rALSV非存在部位」とは、例えば、ハイブリダイゼーション法やPCR法などの分子生物学的手法によってALSVのゲノムRNAが検出されない部位である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の植物個体の作出方法によれば、簡便かつ短期間でrALSV感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーの植物個体(果樹)を得ることができる。本発明の育成方法によれば、簡便にrALSV非存在部位を伸長させることができる。本発明のrALSV感染植物個体によれば、伸長したrALSV非存在部位を有し、このrALSV非存在部位を穂木として接ぎ木に利用することで、rALSV感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーの植物個体(果樹)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】高温(37℃)処理前および処理後の感染リンゴ実生(ALSV,ACLSV)からのRT-PCRによるウイルス検定の結果を示した図である。各実生(実生番号1~9)の最上位葉(高温処理前では第7葉~第10葉、高温処理後の実生では第11葉~第14葉、さらに常温で2か月処理した実生では第16葉~第20葉)を検定した。NCは非感染葉、PCはALSV感染葉、Mは100bpラダーDNAマーカーを表している。
【図2】高温(37℃)処理後に常温(25℃)で2か月育成したリンゴ実生からのドット・ハイブリダイゼーションおよびRT-PCRによるウイルス検定の結果を示す図である。(A)は、高温(37℃)処理後に常温(25℃)で2か月育成したリンゴ実生を示した写真である。(B)は、(A)に示した各葉からRNAを抽出し、ALSV-RNA検出用のプローブを用いたドット・ハイブリダイゼーションの結果を示した図である。(C)は、ALSV、ACLSV検出用のプライマーを用いたRT-PCRによるウイルスの検定結果を示した図である。第1葉~第5葉、第8葉は、高温処理前に展開していた葉を示している。NCは非感染葉、PCは感染試料を示している。
【図3】高温(37℃)処理後に常温(25℃)で2か月育成したリンゴ実生からのリアルタイムRT-PCRによるウイルス検定の結果を示す図である。NCは非感染葉、PCは感染試料、ΔRnは、PCRにより増幅した蛍光強度、Ctはサイクル値を示している。
【図4】高温(37℃)で1~4週間処理したリンゴについて、1週間目、2週間目、3週間目および4週間目の各時点における最上葉からのRT-PCRによるALSV検定の結果を示す図である。NCは非感染葉、PCは感染試料を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、組換えALSV(rALSV)感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーである植物個体を作出するための作出方法である。

【0019】
rALSVの感染植物は具体的に限定されないが、好ましくはバラ科果樹、特にバラ科ナシ亜科(Maloideae)に属する植物であるリンゴ、ナシなどである。

【0020】
rALSVに組み込むポリヌクレオチドは、その目的(外来遺伝子の導入や、内在遺伝子のサイレンシングの誘導など)に応じた各種の遺伝子やその断片であってよい。具体的には、本発明者らが既に提案しているように、例えば、開花促進のためのAtFT遺伝子やMdTFL1遺伝子を好ましく例示することができる。また、これ以外にも、rALSVに組み込む外来遺伝子として、例えば、非特許文献5に記載されているように、タバコ内在性遺伝子であるphytoene desaturase(PDS)遺伝子、sulfer(SU)遺伝子およびproliferating cell nuclear antigen(PCNA)遺伝子などを例示することができる。

【0021】
また、rALSVを植物個体に感染させる方法も限定されないが、例えばパーティクルガン接種(例えば、特許文献1、2、非特許文献1、2)が適している。

【0022】
本発明の作出方法では、rALSVに感染させた植物個体から、rALSV非存在部位を伸長させることが重要である。したがって、まずは、rALSVを感染させた植物個体から、rALSV非存在部位を伸長させるための育成方法について説明する。

【0023】
本発明の育成方法は、以下の工程:
(1)rALSV感染植物個体を、その至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する工程;
(2)工程(1)の後、rALSV感染植物個体をその至適温度にて生育させて、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる工程
を含む。

【0024】
以下、各工程について詳しく説明する。

【0025】
工程(1)では、rALSV感染植物個体を、その至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する(高温処理)。

【0026】
「至適温度」とは、植物個体の生育に適した通常の生育温度範囲をいう。至適温度は、植物の種類や品種などによっても異なるが、例えば、リンゴやナシでは、15℃~30℃程度の温度範囲を例示することができる。そして、rALSVが不活性化する温度は、好ましくは、35℃~42℃の範囲、より好ましくは36℃~39℃の範囲、特に好ましくは37℃程度(36.5℃~37.4℃)を例示することができる。例えば、35℃より低温の場合はrALSVが不活性化しない恐れがあり、42℃(植物種によっては37℃程度)より高温の場合は、植物の生存が難しくなる恐れがある。具体的には、例えばリンゴやナシの場合、rALSVの不活性化と植物の生存を両立するためには、高温処理の温度は37℃程度(36.5℃~37.4℃)であることが好ましい。また、このような温度でのrALSV感染植物個体の育成は、所定の温度に維持された室内で行うことができる。

【0027】
また、工程(1)におけるrALSV感染植物個体の育成期間(高温処理期間)は、2週間から6週間であり、rALSVの不活性化の進行、植物の種類、成長速度、高温処理の温度などを考慮して適宜設定することができる。育成期間(高温処理期間)が2週間より短い場合は、rALSVの不活性化が不十分になる恐れがある。また、育成期間(高温処理期間)は、最大で6週間あれば確実にrALSVが不活性化するため、これ以上の育成期間を設定することは実際的でなく、また、植物の生存が難しくなる恐れがある。より具体的には、例えばリンゴやナシなどでは、rALSVの不活性化と植物の生存を両立するために、高温処理期間は、高温処理の温度が36℃以上37℃未満である場合は4週間から6週間、高温処理の温度が37℃以上39℃以下である場合は3週間から6週間の範囲に設定することができる。特に、リンゴやナシの場合、高温処理期間は37℃程度(36.5℃~37.4℃)で4週間程度(25日~31日)であることが特に好ましい。

【0028】
rALSV感染植物個体は、至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成することで、rALSVの植物個体内での移動が停止する。このため、rALSV感染植物個体は、工程(1)の育成期間に伸長した部分には、rALSVが移動していない可能性がある。この場合は、工程(1)において、rALSV感染植物個体にrALSVが存在しない部位(rALSV非存在部位)が形成されていることになる。

【0029】
工程(2)では、rALSV感染植物個体をその至適温度にて育成して、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる。

【0030】
工程(1)を経たrALSV感染植物個体は、高温処理によって、植物個体内におけるrALSVが不活性化して移動が停止している。このような高温処理によってrALSVの移動が停止した状態は不可逆的であると考えられ、その後の工程(2)でrALSV感染植物個体をその至適温度で育成しても、一旦移動を停止したrALSVが植物個体内の移動を再開することはない。この現象は、その他のウイルスでは確認されておらず、本発明者らによって新たに見出されたALSV(rALSV)に特有の現象である。

【0031】
したがって、工程(2)でrALSV感染植物個体をその至適温度にて育成することで、この期間内にrALSV感染植物個体から伸長した部位にはrALSVが移動しない。このため、工程(2)での育成によって、rALSV感染植物個体からrALSVが存在しない部位(rALSV非存在部位)が伸長する。したがって、工程(1)(2)を経たrALSV感染植物個体は、rALSVが存在する部位(工程(1)の前に展開していた部位)と、その部位から伸長したrALSV非存在部位とが存在するという全く新しい特徴を有している。

【0032】
なお、工程(2)の育成期間は特に限定されず、例えば果実の結実や後述する穂木としてのサイズなどを考慮して適宜設定することができる。具体的には、工程(2)の育成期間は、一応の目安として3ヵ月~24ヵ月程度の期間を例示することができる。

【0033】
以上の通り、工程(1)(2)を経ることで、rALSVを感染させた植物個体から、rALSV非存在部位を伸長させることができる。このため、rALSV非存在部位を利用して、rALSV感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーである植物個体を作出することができる。

【0034】
すなわち、本発明の植物個体の作出方法は、以下の工程:
(1)rALSV感染植物個体を、その至適温度より高く、かつ、rALSVが不活性化する温度で、2週間から6週間育成する工程;
(2)工程(1)の後、rALSV感染植物個体をその至適温度にて育成して、rALSV感染植物個体からrALSV非存在部位を伸長させる工程;および
(3)工程(2)で伸長させたrALSV非存在部位を穂木として接ぎ木して育成する工程
を含む。

【0035】
工程(1)(2)については、rALSV非存在部位を伸長させる方法として上述したので説明は省略する。

【0036】
工程(3)では、工程(2)で伸長させたrALSV非存在部位を穂木として接ぎ木して育成する。

【0037】
具体的には、穂木として適当な長さに伸長したrALSV非存在部位をrALSV感染植物個体から採取し、所望の台木の切断面に接着することで1つの植物個体として育成する。この方法によれば、rALSVに感染した当代のrALSV感染植物個体のrALSV非存在部位を接ぎ木しているため、次世代種子の選抜などによらず、rALSV感染植物個体の形質を有し、かつ、rALSVに感染していないウイルスフリーな植物個体(果樹)を簡便かつ早期に得ることができる。また、成長点培養などの従来の方法と比較しても、簡便かつ格段に早くウイルスフリーな植物個体(果樹)を得ることができる。

【0038】
そして、本発明の植物個体の作出方法として、AtFT遺伝子やMdTFL1遺伝子などを組み込んだrALSVを感染させて早期開花(発芽後1.5~3ヶ月)させたrALSV感染植物個体について上記の工程(1)(2)(3)を行う場合には、早期に開花が確認されたrALSV感染植物個体から、極めて短期間にrALSVに感染していないウイルスフリーの植物個体を得ることができる。

【0039】
本発明の植物個体の作出方法などは、上記の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
(実施例1)
<1>材料と方法
(1)ウイルス
リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ベクターおよびリンゴクロロティックリーフスポットウイルス(ACLSV)を供試した。
【実施例】
【0041】
(2)供試植物
リンゴ種子は水で湿らせたペーパータオルに包み4℃に約3ヶ月置いて催芽し、発芽してきたものにALSVベクターの接種を行った。
【実施例】
【0042】
(3)濃縮ウイルスRNAの調製
濃縮ウイルスRNAは以下のとおり準備した。ALSVベクターをキノアに接種後7~10日に接種葉と病徴の現れた上葉をサンプリングした。この感染葉10gに対し、30mlの抽出緩衝液(0.1M Tris-HCl(pH7.8), 0.1M NaCl, 5mM MgCl, 1%メルカプトエタノール)を加えて磨砕した後、2重ガーゼでろ過し、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離した。得られた溶液に、ベントナイト溶液(30mg/ml)600μlを攪拌しながら静かに加え、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離し、清澄化した。次に、上清にポリエチレングリコール6000を8%になるように加え、氷中で1時間攪拌した。10分間(4℃)遠心分離した後、沈殿を5mlの抽出緩衝液に溶解して10分間(4℃)遠心分離した後、上清を新しいチューブに移した。続いて上清に3mlの水飽和フェノールと3mlのクロロホルムを加えて激しく攪拌した。10分間(4℃)遠心分離後、水層をエタノール沈殿し、濃縮ウイルスRNAを得た。この濃縮ウイルスRNAとリンゴクロロティックリーフスポットウイルス(ACLSV)のRNAを金粒子にコーティングし、以下の方法でリンゴ実生にパーティクルガン接種した。
【実施例】
【0043】
(4)パーティクルガン接種(Helios Gene Gun System(BIO-RAD))によるALSVベクター接種
マイクロキャリア(RNA;5μg/金粒子;0.4 mg/shot)の調製は以下の手順で行った。まず、1.5ml容チューブに金粒子(0.6μm)を8 mg量り取り、滅菌水40μlを加えボルテックスミキサーで十分に混和した。超音波洗浄機にチューブを入れ、5分間ソニケーションした。ボルテックスミキサーにチューブをセットし撹拌しながら100μlの濃縮ALSV RNA溶液(1μg/μl)と60μlの ACLSVゲノムの転写RNA溶液(1μg/μl)を静かに加えた。同様に、5M 酢酸アンモニウムを20μl、続いてイソプロパノールを440μl静かに加えた。しばらく撹拌した後、-20℃で1時間以上静置した。上清を取り除き金粒子の沈殿をボルテックスミキサーで一瞬撹拌した。金粒子の沈殿に1mlの100%エタノールを加え、沈殿を崩さないように静かに振盪し、その後上清を取り除いた。この作業を4回繰り返した後に15ml容チューブに100%エタノールを用いて金粒子を移し取り、最終的に1200μlの100%エタノールに金粒子を懸濁し、ゴールドコートチューブの調製に使用した。チュービングプレップステーション(BIO-RAD)にゴールドコートチューブ(BIO-RAD)をセットし、純窒素ガスを20分間通してゴールドコートチューブの内部を完全に乾燥させた。続いて金粒子の懸濁液を、均一になるようゴールドコートチューブ内に充填し、5分間放置して金粒子をゴールドコートチューブに沈着させた後、上清の99.5%エタノールをゴールドコートチューブ内から取り除いた。続いてチュービングプレップステーションを回転させ、金粒子をゴールドコートチューブ内部に均一に拡散させながらゴールドコートチューブ内に純チッソガスを通し、金粒子を完全に乾燥させた。続いてゴールドコートチューブを、チューブカッター(BIO-RAD)を用いて20個に裁断し、パーティクルガンを用いて植物への導入を行った。発芽直後のリンゴ種子の種皮をメスで取り除き、その子葉に接種した。接種はヘリウム圧400psiでHelios Gene Gun System(BIO-RAD)を用いて1個体あたり4shot行った。
【実施例】
【0044】
(5)接種個体の育成
接種個体は湿度を保ち、4℃暗黒下で2日置いた後、25℃(明期16時間-暗期8時間)で育成した。育苗培土(タキイ種苗)に植え替え、7-10葉期になるまで生育させた。
【実施例】
【0045】
(6)ALSVベクターを感染させたALSV感染植物個体から、ALSV非存在部位を伸長させる方法
高温(37℃)処理がALSV 感染リンゴ実生植物個体におけるウイルスの増殖や分布に及ぼす影響について調べるため、ALSVとACLSVが共感染したリンゴ植物個体を次の条件で育成した。
【実施例】
【0046】
ALSVとACLSVを共感染させたリンゴ実生苗(7-10葉期)を25℃のインキュベータ(明期16時間-暗期8時間)で1週間生育させたのち、37℃のインキュベータ(明期16時間-暗期8時間)で4週間育成した。その後、25℃(至適温度の範囲内)のインキュベータ(明期16時間-暗期8時間)に移して生育させ、処理前、処理終了直後、処理後2ヵ月のそれぞれの葉についてウイルス検定を行った。
【実施例】
【0047】
(7)RT-PCRによるALSVならびにACLSV検定
リンゴのRNAの抽出は以下のように行った。-80℃で凍結させた葉(0.05g)と4.8mmサイズのステンレスビーズ(トミー精工)を2.0mlサンプルチューブ(アシスト)に入れ、Micro Smash MS-100R(トミー精工)を用いて破砕した。750μlのRNA抽出緩衝液[2% CTAB, 2% PVP K-30, 0.1M Tris-HCl(pH8.0),25mM EDTA(pH8.0),2M NaCl, 2% メルカプトエタノール]を加え、よく混和した後、65℃で20分間、ときどき混和しながら保温した。処理後、750μlのクロロホルムを加え、2分間攪拌したあと、14,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、水層を新しい1.5ml容チューブに移し、1/3容の7.5M LiClを加えて完全に混和した。-20℃に1時間静置後、14,000rpm、4℃で20分間遠心分離し、得られた沈殿に1mlの70%エタノールを加えて洗浄した。70%エタノールをほぼ完全に取り除いた後、15μlのRNase free H2Oに沈殿を溶解し、分光光度計(ND-1000 v3.1.2)で定量した。
【実施例】
【0048】
逆転写反応は以下のようにして行った。1μl のRNA溶液、0.5μl の10μM Oligo(dT)18プライマー、4μl の2.5mM dNTP mixture(TaKaRa)、2μl の5 X RT Buffer (TOYOBO)、0.5μl のReverTra Ace (TOYOBO)、2μlの滅菌水を混合して10μlとし、TaKaRa Thermal Cycler Dice(TaKaRa)を用いて42℃で60分間、99℃で5分間、最後に4℃で5分間反応させた。
【実施例】
【0049】
PCRのプライマーには、ALSVを増幅する
ALSR2 3687(+)[5'-gccacttcagtgcaactctg-3'](配列番号1)と
ALSR2 3802(-)[5'-gaaaaggactcaaagatagcag-3'](配列番号2)を用い、
ACLSVを増幅するプライマーには、
ACLSV(+)[5'-agatctgaaagcgttcctg-3'] (配列番号3)と
ACLSV(-)[5'-ctaaatgcaaagatcagttgtaac-3'] (配列番号4)の組み合わせを用いた。
【実施例】
【0050】
1μlのcDNA溶液、各4μMの合成プライマー(2μl)、2μl の10 X PCR buffer(TaKaRa)、1.6μl の2.5mM dNTP mixture(TaKaRa)、0.2μlのEx-Taq(2.5U/μl TaKaRa)、13.2μlの滅菌水を混合し、TaKaRa Thermal Cycler Dice(TaKaRa)にセットした。初め94℃で5分間熱変性し、続いて94℃で20秒、アニ-リングを55℃で10秒、DNA相補鎖の伸長を72℃で1分という過程を1サイクルとして、30サイクル行い、その後72℃で7分間処理した。PCR終了後、10μlの反応液と1μlの10Xloading Buffer(1%SDS,50%グリセロ-ル,0.05%ブロモフェノールブルー)を混合し、2.5%アガロ-スゲルで電気泳動(100V)してPCR産物の有無を確認した。
【実施例】
【0051】
(8)ドットブロットハイブリダイゼーション法によるALSVの検出
高温処理後2ヵ月が経過した26葉期のリンゴの各葉位から上記の方法でRNAを抽出した。270ngのRNAを含む3μlのRNA溶液に、RNA変性バッファー(10xSSC、50%ホルムアルデヒド液)を加えて混合し、65℃で20分間変性処理のあと、氷水中にて急冷し、ドットブロットハイブリダイゼーションに供するサンプルとした。ナイロンメンブランHybond-N+(GEヘルスケア)に変性RNA溶液をドットブロットし、ドットブロットが終了したメンブランを20xSSCで処理したのち紫外線照射することによってRNAをメンブランに固定した。メンブランはハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5xSSC、0.1%N-ラウロイルサルコシンナトリウム、0.02%SDS、2%Blocking reagent(Roche))に浸し、68℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後、ALSVゲノム上のVp20領域に相補配列を持つジゴキシゲニン(DIG)標識RNAプローブであるVp20(-)プローブを用いて68℃で18時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション終了後、メンブランは洗浄液1(2xSSC、0.1%SDS)で5分間(室温)2回洗浄した後、さらに洗浄液2(0.1xSSC、0.1%SDS)で15分間(68℃)2回洗浄した。次にメンブランをバッファー1(0.1Mマレイン酸、0.15MNaCl、pH7.5)で5分間(室温)処理した後、ブロッキングバッファー(10%Blocking reagent:バッファー1=1:9)で1時間(室温)処理し、メンブランのブロッキングを行った。ブロッキング終了後、メンブランはAnti-Digoxigenin.AP.Fab fragments(Roche)をブロッキングバッファーで1/10000に希釈した抗体液中で30分間(室温)反応させた。抗体反応終了後、メンブランを洗浄液3(0.45%Tween20を含むバッファー1)で20分間(室温)2回洗浄し、さらにバッファー4(0.1MTris-HCl、0.1MNaCl、50mMMgCl2、pH9.5)中で3分間(室温)2回静かに振盪した。続いてCDP-Star Detection Reagent(GEヘルスケア)をメンブラン上で5分間反応させ、メンブランをに包み、ImageQuantLAS4000(GEヘルスケア)によりシグナルを検出した。
【実施例】
【0052】
(9)リアルタイムRT-PCRによるALSVの検出
高温(37℃)処理終了直後11-14葉期のリンゴの最上葉から抽出したRNAを用いて以下の方法でリアルタイムRT-PCRを行った。検定試料からのRNA溶液を1μl(100ng)、10μM Oligo(dT)18 0.5μl、2.5mM dNTP mixture(TaKaRa) 4μl、5×RT Buffer(TOYOBO) 2μl、ReverTra Ace(TOYOBO) 0.5μl、滅菌水2μlを混合して10μlとし、TaKaRa Thermal Cycler Dice VersionIII(TaKaRa)を用いて42℃で60分間、99℃で5分間、最後に4℃で5分間反応させ、次のqPCR法に用いるcDNA溶液とした。SYBR法による増幅には、ALSV-RNA1の6150~6279間の配列を増幅する事ができる
primer4F 6150(+)[5'‐cgatgaatctccctgataga‐3'](配列番号5)と、
primer4R 6279(-)[5'‐ agagtagtggtctccagcaa‐3'] (配列番号6)をそれぞれプラス鎖プライマーおよびマイナス鎖プライマーとして用いた。逆転写反応により得られたcDNA溶液10μlのうち1μlに、15μMプラス鎖プライマーと15μMマイナス鎖プライマーをそれぞれ0.2μl、滅菌水を8.6μl、SYBR(R) Premix Ex TaqTM(TaKaRa)を10μl混合し、ECO TM Real-Time PCR System(Illmina)を用いて95℃で30秒間処理した後、[95℃,5秒→60℃,30秒]の反応を35サイクル行い、続いて[95℃,15秒→55℃,15秒→95℃,15秒]を1サイクルで処理し、qPCRを終了した。
<2>結果
(1)高温処理前、処理直後、処理後2ヵ月のウイルス感染リンゴ実生苗からのALSVおよびACLSVの検出
ALSVおよびACLSVを混合接種したリンゴ実生苗(個体番号1~9)の最上位葉(第7葉~第10葉)をRT-PCR検定したところ、全ての実生苗からALSVとACLSVが検出され(図1)、両ウイルスがリンゴ実生苗に全身感染していることが明らかになった。これらの苗を高温処理(37℃、4週間)後に、最上位葉(第11葉~第14葉)をRT-PCR検定すると、ALSVおよびACLSV共に全く検出されなかった(図1)。これは高温処理により両ウイルスの複製が阻害されたためと考えられた。これらを常温(25℃)に移して生育させ、2ヵ月経過したところで、最上位葉をRT-PCR検定したところ、ACLSVは全個体から検出されたが、ALSVはどの個体からも全く検出されなかった(図1)。
(2)高温処理後常温で2ヶ月育成したリンゴ実生苗でのALSVおよびACLSVの分布
高温処理後常温で2ヵ月育成した実生苗でのウイルスの分布を調べるために、図2Aに示したように、第1葉から最上位葉までをサンプリングし、ドットブロットハイブリダイゼーション法とRT-PCRでウイルス検定した。その結果、図2Bで示したように、ドット・ハイブリダイゼーション法では第1葉から第5葉でALSV感染を示すシグナルが検出されたが、第10葉以上の葉からはALSVは検出されなかった。RT-PCRによる検定では、ACLSVが第1葉から第10葉および第15葉以上の葉全てから強く検出されたのに対して、ALSVは第1葉から第8葉で弱く(薄く)検出されたが、第10葉より上位の葉では全く検出されなかった(図2C)。以上から、高温処理前に展開していた第1葉から第8葉には低濃度のALSVが存在しているが、高温処理後に展開した上位の葉にはALSVは存在していないことが明らかになった。
(3)高温処理後常温で2ヶ月育成したリンゴ実生苗からのリアルタイムRT-PCRによるALSVの検出
RT-PCRによる検定結果をさらに確認するために、RT-PCRより1000倍程度検出感度の高いリアルタイムRT-PCRによりリンゴ実生苗のALSV検定を行った。その結果、図3に示したように、感染リンゴ試料が10サイクルから蛍光シグナルが増加し始めるのに対して、高温処理後常温で2ヵ月育成した実生苗では蛍光シグナルの増加は認められず、ALSVが感染していないことが証明された。
<3>結論
ALSVベクタ—に感染したリンゴ苗を高温処理(37℃)すると、処理後に成長した枝・葉にはALSVは認められず、ALSVが存在しない部位(ALSV非存在部位)を有する個体を作出することができる。したがって、組換えALSV(rALSV)感染植物個体を利用して伸長させたALSV非存在部位を穂木として接ぎ木することで、組換えALSV(rALSV)感染植物個体の形質を有し、かつ、ウイルスフリーである植物個体を容易に増殖することが可能である。
【実施例】
【0053】
(実施例2)
高温処理は植物にとっても大きなストレスとなるため、高温処理によってウイルスフリーの植物組織を得るためには、ウイルスの増殖停止と、植物が生存可能な温度とが両立する高温処理期間を設定する必要がある。そこで、ALSVが存在しない部位(ALSV非存在部位)を形成させるために必要な高温処理期間についての検討を行った。
具体的には、リンゴの場合、37℃では、4週間以上生育させると枯死する個体が出るため、高温処理期間は4週間に設定した。37℃はリンゴやナシなどの生存にとって限界付近の温度で、これ以上の温度では枯死してしまう恐れがある。
続いて、37℃条件下での処理期間とALSVの消長について調査した(図4)。具体的には、高温処理1週間毎にそのときの最上葉を各個体からそれぞれサンプリングし、RT-PCRによりALSV検定を行ったところ、高温処理1週間および2週間後のサンプルでは全てからALSVが検出された。これは、高温処理前にALSVが侵入した葉原基が、高温処理中に葉として展開した結果であると考えられる。
さらに高温処理を続けると、3週間目には7個体中4個体から、4週間目には7個体中5個体からALSVが検出されなくなった。これは、高温処理によりALSVが茎頂分裂組織から除去され、葉原基に侵入できなくなったからと考えられる。また、これら個体を37℃4週間処理後に、25℃に移して2カ月間生育させ、展開してきた最上葉を検定したところ、高温処理4週間目でALSVが検出された2個体を含め、全ての個体でALSVは検出されなかった。このことは、高温処理を4週間行うことにより、ALSVがリンゴの茎頂分裂組織から除去され、結果としてその後に展開してくる組織にはALSVが存在しないことを意味している。
【実施例】
【0054】
なお、上記実施例1、2では、リンゴに対して37℃での高温処理を行っているが、この温度に限定されることはなく、植物の種類などによっては、35℃~42℃(好ましくは36℃~39℃)の範囲においてもALSVが存在しない部位(ALSV非存在部位)を有する個体を作出することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3