TOP > 国内特許検索 > 水晶振動子の製造方法及び水晶振動子 > 明細書

明細書 :水晶振動子の製造方法及び水晶振動子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-147653 (P2017-147653A)
公開日 平成29年8月24日(2017.8.24)
発明の名称または考案の名称 水晶振動子の製造方法及び水晶振動子
国際特許分類 H03H   3/02        (2006.01)
H03H   9/19        (2006.01)
FI H03H 3/02 B
H03H 9/19 C
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-029070 (P2016-029070)
出願日 平成28年2月18日(2016.2.18)
発明者または考案者 【氏名】伊藤 健
【氏名】新宮原 正三
【氏名】清水 智弘
【氏名】浅井 直人
出願人 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
【識別番号】100138416、【弁理士】、【氏名又は名称】北田 明
審査請求 未請求
テーマコード 5J108
Fターム 5J108AA09
5J108BB02
5J108CC02
5J108DD02
5J108FF03
5J108FF05
5J108KK02
5J108MM14
5J108NA01
要約 【課題】多様な構造及び元素組成からなる電極を有する水晶振動子を形成できる、水晶振動子の製造方法及び水晶振動子を提供する。
【解決手段】水晶からなる基板1の表面に、金属からなる電極本体2を設ける工程と、前記電極本体2の表面にめっきを施すことにより、前記電極本体2を構成する金属に対して異種または同種の金属、またはそれらの金属酸化物からなり、前記電極本体2の表面に立ち並ぶ多数の柱状体5…5を形成する工程と、を含む水晶振動子の製造方法である。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
水晶からなる基板の表面に、金属からなる電極本体を設ける工程と、
前記電極本体の表面にめっきを施すことにより、前記電極本体を構成する金属に対して異種または同種の金属、またはそれらの金属酸化物からなり、前記電極本体の表面に立ち並ぶ多数の柱状体を形成する工程と、を含む水晶振動子の製造方法。
【請求項2】
前記めっきを施す前の工程として、
前記電極本体の表面にアルミニウムまたはチタンを含む金属被膜を形成する工程と、
前記金属被膜に、陽極酸化により前記電極本体の表面に達する多数の貫通孔を形成する工程と、を含む請求項1に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項3】
前記めっきを施した後の工程として、
前記陽極酸化がなされた前記金属被膜を溶解により除去する工程を含む請求項2に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項4】
水晶からなる基板の表面に位置する、金属からなる電極本体と、
前記電極本体の表面に、当該電極本体に連結された状態で立ち並び、前記電極本体を構成する金属に対して異種または同種の金属、またはそれらの金属酸化物からなる多数の柱状体と、を備える水晶振動子。
【請求項5】
各柱状体の前記電極本体の表面からの高さ寸法は、前記電極本体の厚み寸法よりも大きい請求項4に記載の水晶振動子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種センサに用いられる、水晶振動子の製造方法及び水晶振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子に関連した種々の提案がされており、一例として特許文献1に記載のQCMセンサが挙げられる。特許文献1に係る発明ではQCMセンサを、水晶振動子における電極の質量が腐食により変化するとその腐食量に応じて共振周波数が減少する性質を利用し、極めて微量な質量変化を測定できる質量センサとして利用している。
【0003】
特許文献1に記載されたQCMセンサは、水晶板と、水晶板の表面に設けられた電極とを備えており、電極の表面には複数のパターンが設けられている。前記パターンとは、電極の表面に形成された孔や溝による凹凸である。形成される凹凸の大きさに応じて電極の表面積(つまり、腐食される部分の表面積)を変えることができるため、QCMセンサの感度を調節できる。前記凹凸は、例えばドライエッチングにより、電極を構成する金属の一部を腐食させることにより形成できる。
【0004】
ところが、特許文献1には、単一の金属(例えばQCMセンサが検出対象とする腐食性ガスに対して適した金属)を加工して凹凸を形成することしか開示されていない。このため、特許文献1に記載された水晶振動子における電極の形成方法では、水晶振動子の用途に最適である、多様な構造及び元素組成からなる電極を有する水晶振動子を形成することが困難であった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2014-81297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、多様な構造及び元素組成からなる電極を有する水晶振動子を形成できる、水晶振動子の製造方法及び水晶振動子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は一例として、水晶からなる基板の表面に、金属からなる電極本体を設ける工程と、前記電極本体の表面にめっきを施すことにより、前記電極本体を構成する金属に対して異種または同種の金属、またはそれらの金属酸化物からなり、前記電極本体の表面に立ち並ぶ多数の柱状体を形成する工程と、を含む水晶振動子の製造方法である。
【0008】
このように構成された方法によれば、めっきにより電極本体の表面に多数の柱状体を形成できるため、電極本体と多数の柱状体とから構成された電極の表面積を、電極の平面積に比べて大きくした水晶振動子を容易に製造できる。また、種々の金属やそれらの酸化物からなる多数の柱状体を電極本体上に形成できるため、用途に適応した構造の電極を有する水晶振動子を製造できる。
【0009】
そして更に、前記めっきを施す前の工程として、前記電極本体の表面にアルミニウムまたはチタンを含む金属被膜を形成する工程と、前記金属被膜に、陽極酸化により前記電極本体の表面に達する多数の貫通孔を形成する工程と、を含むこともできる。
【0010】
このように構成された方法によれば、陽極酸化により、めっきの際に金属や金属酸化物が入り込むことで多数の柱状体を形成するための多数の貫通孔を容易に形成できる。
【0011】
そして更に、前記めっきを施した後の工程として、前記陽極酸化がなされた前記金属被膜を溶解により除去する工程を含むこともできる。
【0012】
このように構成された方法によれば、陽極酸化がなされた金属被膜を溶解により除去することで、めっきにより各貫通孔に入り込んだ金属や金属酸化物を電極本体の表面上に残存させて、電極本体の表面に多数の柱状体が立ち並んだ状態を容易に実現できる。
【0013】
また、本発明は一例として、水晶からなる基板の表面に位置する、金属からなる電極本体と、前記電極本体の表面に、当該電極本体に連結された状態で立ち並び、前記電極本体を構成する金属に対して異種または同種の金属、またはそれらの金属酸化物からなる多数の柱状体と、を備える水晶振動子である。
【0014】
この構成によれば、種々の金属やそれらの酸化物からなる多数の柱状体により、電極本体と多数の柱状体とから構成された電極の表面積を、電極の平面積に比べて大きくとることができる。また、電極本体に連結された多数の柱状体を備えることで、用途に適応した構造の水晶振動子とできる。
【0015】
そして更に、各柱状体の前記電極本体の表面からの高さ寸法は、前記電極本体の厚み寸法よりも大きいものとできる。
【0016】
この構成によれば、各柱状体の電極本体の表面からの高さ寸法が大きいことにより、前記高さ寸法が電極本体の厚み寸法以下の構造に対し、電極の表面積を平面積に比べて十分大きくとることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、電極の表面積を平面積に比べて大きくした水晶振動子を容易に製造できる。また、用途に適応した構造の電極を有する水晶振動子を製造できる。よって、多様な構造及び元素組成からなる電極を有する水晶振動子を形成できる、水晶振動子の製造方法及び水晶振動子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係る水晶振動子を示す概略図であり、(B)は水晶振動子に物質が吸着される様子を示す概略図である。
【図2】本実施形態における水晶振動子の作製工程を示し、(A)は電極本体が設けられた基板を示す斜視図、(B)は同基板を示す側面図であり、(C)は金属被膜形成工程後の状態を示す斜視図、(D)は同状態を示す側面図であり、(E)はパターニング工程後の状態を示す斜視図、(F)は同状態を示す側面図である。
【図3】本実施形態における水晶振動子の作製工程を示し、(A)は陽極酸化工程後の状態を示す斜視図、(B)は同状態を示す側面図であり、(C)はめっき工程後の状態を示す斜視図、(D)は同状態を示す側面図であり、(E)は金属被膜除去工程後の状態を示す斜視図、(F)は同状態を示す側面図である。
【図4】(A)は陽極酸化工程における状態推移を示す斜視図であり、(B)は金属被膜除去工程における状態推移を示す斜視図である。
【図5】本実施形態における水晶振動子の作製工程中、陽極酸化工程後の状態を示す平面視の電子顕微鏡写真である。
【図6】本実施形態における水晶振動子の作製工程中、陽極酸化工程後の状態を示す、縦断面視の電子顕微鏡写真である。
【図7】図6における囲み部分の拡大図である。
【図8】本実施形態の水晶振動子の完成状態を示す平面視の電子顕微鏡写真である。
【図9】本実施形態の水晶振動子の完成状態を示す、縦断面視の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。

【0020】
水晶振動子とは、高周波の交流電圧を印加することにより振動する電子デバイスであって、水晶の結晶から切り出された薄板状体の表面(主面)に電圧印加のための電極が設けられている。水晶振動子に生じる振動は、前記薄板状体の平面方向にずれが生じる厚みすべり振動である。水晶振動子の振動特性は、水晶の結晶を切り出す際の角度によって異なる。水晶振動子は共振周波数が非常に安定しており、例えば、時計、携帯電話、GPS装置、RFIDタグ、QCMに用いられている。

【0021】
「QCM」とは、「Quartz Crystal Microbalance」の略であり、図1(B)に示すように、電極(2)の表面に物質Mが付着(吸着)した場合に水晶振動子QCの共振周波数が変化する現象である。QCMの理論式であるSauerbrey式を用いると、物質付着時における共振周波数の変化(ΔF)は以下の式で表すことができる。

ΔF=-2NF/√(ρμ)×Δm/S
(ΔF:共振周波数の変化、N:次数、F:物質付着前の共振周波数、ρ:水晶の密度、μ:せん断応力、Δm:電極の質量変化、S:電極の面積(平面積))

例えば、物質付着前の共振周波数が30MHzの場合、共振周波数が1Hz変化する質量は0.035ngである。

【0022】
この現象を利用し、媒体(気体または液体)中の物質を、質量変化を通じて高感度で計測できる。このQCMは、ガスセンサ、バイオセンサ、環境分析、食品分析、医療分析等に用いることができる。質量による計測を行うことができるので、高精度のセンサ等が安価に製造できるため、センサ等の大量生産が可能である。また、リアルタイム計測が可能である。その反面、質量による計測であることから、分子量の小さな物質や媒体中の物質濃度が低い場合は、前記式においてΔmが小さいことでΔFも小さくなるため、高感度な測定が困難という欠点がある。

【0023】
この問題に対しては、前記式においてΔFを大きくできれば高感度化が可能である。高感度化のためには二つの対応案が考えられる。一つ目の対応案は、共振周波数(F)を大きくすることである。しかし、共振周波数を大きくするためには、水晶の薄板状体を薄くする必要があって、そうすると水晶振動子が破損しやすくなる。このため、この対応案は好ましくない。

【0024】
二つ目の対応案は、電極の質量変化(Δm)を大きくすることである。このためには、電極の平面積を一定とする場合、電極表面の改質により物質を吸着しやすくするか、または、電極の物理的表面積を拡大させることが考えられる。後者に関しては、電極を立体的な形状とすることで、物質が吸着される電極の表面積を平面積に比べて大きくすることで実現できる。

【0025】
本実施形態の水晶振動子QCは、この二つ目の対応案のうち後者によるものであり、陽極酸化アルミナ(AAO)を用い、めっきによりナノ構造を備えた電極を形成している。このナノ構造は概略的には、図1(A)に示すように、電極本体2の表面(本実施形態では上面)21に立ち並ぶ、多数の微細な(ナノサイズの)柱状体5…5による構造である。

【0026】
このナノ構造が、例えば、電極本体2の表面1μm2当たりの形成密度が400本で、各柱状体5が直径50(0.05μm)nm、長さ2000nm(2μm)の略円柱状体からなるものとする。この場合、略円柱状体の側面面積の合計分である、

π×0.05×2×400=125(μm2

が電極本体2の表面1μm2当たりで増加する面積となる。つまり、電極の表面積を平面積(すなわち、電極本体2の表面積)に比べて125倍大きくできる。この増加した面積分、物質を多く吸着できることになるので、高感度の水晶振動子QCを実現できる。

【0027】
本実施形態の水晶振動子QCを作製するために用いられる陽極酸化アルミナ(AAO:Anodic Aluminum Oxide)は、アルミニウムを陽極酸化すること(アルマイト処理)で得られる、厚み方向に延びる貫通孔が平面上に規則配列した多孔質被膜であり、陽極酸化の条件設定により、細長い形状である各貫通孔の孔径を数nm~数百nmで制御可能である。また、貫通孔の長さも被膜の厚さに応じて数百nm~数μmに制御できるため、高アスペクト比を持つナノ構造(ナノサイズの孔が集合したもので「ナノポア」と呼ばれる)を形成できる。

【0028】
なお、陽極酸化により多孔質被膜を形成できる金属は、前記アルミニウム以外にチタンが挙げられる。本発明は、チタンを陽極酸化することで得られるチタニアによることも可能である。

【0029】
この多孔質被膜構造では、貫通孔の内面を用いて吸着表面積を増加させることが可能であるが、吸着面の材質が陽極酸化アルミナ(またはチタニア)に限定されてしまうため、吸着させる物質に選択性を持たせる工夫が必要である。このため本実施形態では、吸着させる物質に適した特定物質でナノポアを埋め、その後、ナノポアを形成していた陽極酸化アルミナを除去することで、前記特定物質からなる多数の微細な柱状体から構成された「ナノロッド構造」を形成している。

【0030】
次に、本実施形態における水晶振動子QCの具体的な作製工程について説明する。なお、図2及び図3はあくまでも作製工程を説明するための模式図であって、実物を正確に図示したものではない。また、上下方向については誇張して図示している。

【0031】
まず、水晶からなる基板1の表面に、金属からなる電極本体2を設け、図2(A)(B)に示す状態とする。本実施形態における電極本体2は金からなっており、図2(B)における上面及び下面に設けられている(以下、「上面」「下面」はこの方向による面とする)。なお、図2(A)に示した円状部分が電極本体2であり、電極本体2から径外方向に飛び出た細い部分は、電源Pに接続するための接続部2aである(図1(A)参照)。

【0032】
次に、スパッタリングなどの物理的蒸着法により、基板1及び電極本体2の上面21を覆うように金属被膜3を形成し、図2(C)(D)に示す状態とする。本実施形態においては金属被膜3としてアルミニウム膜が形成される。電極本体2の上面21上における膜厚は2μm(2000nm)とされる。金属被膜3はスパッタリングなどの物理的蒸着法の他、例えば金属箔を電極本体2の上面21に貼り付けることで形成することもできる。

【0033】
次に、フォトリソグラフィによりパターニングを行い、図2(E)(F)に示す状態とする。これにより、金属被膜3のうち後工程でなされる貫通孔(ナノホール)4の形成に不要な部分が除去され、電極本体2の上面21だけが金属被膜3で覆われた状態となる。

【0034】
次に、前記パターニングがなされた金属被膜3(図4(A)の左部参照)に、陽極酸化により多数の貫通孔4…4を形成し(図4(A)の右部参照)、図3(A)(B)に示す状態とする。なお、図4(A)(B)に示した層Xは発明者が実験の際に形成したチタンの層であり、本実施形態においては必須でない。

【0035】
図5~図7に、発明者が実際に「ナノロッド構造」を作製する実験を行った際の電子顕微鏡写真を示す。ただしこの実験では、水晶の代わりにガラス(SiO2)板上にチタン(Ti)を被覆した板を用いている。また、これら電子顕微鏡写真において符号の記載は省略している。図5に示すように、陽極酸化アルミナ(AAO)の層に、寸法が数十nmである各貫通孔(4)が形成されていることがわかる。また、図6、及び、図6の金(Au)の層付近を拡大した図7に、上下方向に延びる帯状の領域として写っているように、陽極酸化アルミナ(AAO)からなる金属被膜(3)に形成された各貫通孔(4)は電極本体(2)の表面(21)に達していることがわかる。

【0036】
陽極酸化により、後工程であるめっき工程で多数の柱状体5…5を形成するための多数の貫通孔4…4が形成されるが、これは自己組織化による形成であるため、多数の貫通孔4…4を形成することが容易である。そして、多数の貫通孔4…4を高密度化させること(つまり、多数の柱状体5…5を高密度化させること)が容易にできる。また、形成される各貫通孔4の大きさは、陽極酸化を行う際の溶液の種類、溶液濃度及び電圧を調整することにより容易にコントロール可能である。

【0037】
次に、電極本体2の表面21に対してめっきを施す。これにより、前記陽極酸化により形成された多数の貫通孔4…4の有する空間にめっきに係る金属(または金属酸化物)が入り込んで多数の柱状体5…5が形成され、図3(C)(D)に示す状態となる。金属被膜3に形成された各貫通孔4は電極本体2の表面21に達しているため、めっきに係る金属(または金属酸化物)が各貫通孔4に入り込むことにより、形成された各柱状体5を構成する金属は電極本体2に連結されて一体化される。

【0038】
本実施形態におけるめっきに係る金属は金であって、電極本体2を構成する金属に対して同種の金属である。しかし、金属の種類は同種に限定されず、電極本体2を構成する金属に対して異種の金属であってもよい。更に、めっきに係る物質は、純金属に限らず、金属酸化物などの金属化合物であってもよい。このめっき工程により、電極本体2を構成する金属に限定されず種々の金属や金属酸化物からなる多数の柱状体5…5を電極本体2上に形成できるため、用途に応じた多様な構造の水晶振動子QCを製造できるメリットがある。

【0039】
次に、電極本体2の上面21を覆っている金属被膜3(図4(B)の左部参照)を除去する(図4(B)の右部参照)。本実施形態では溶解により除去する。具体的には、リン酸や水酸化ナトリウムなどを用いて、陽極酸化アルミナ(AAO)からなる金属被膜3を溶解させる。これにより、電極本体2の表面21に、電極本体2に連結された状態で立ち並ぶ多数の柱状体(ナノワイヤ)5…5が現れ、図3(E)(F)、及び、発明者による実験時の電子顕微鏡写真である図8、図9に示す状態となる(なお、図8に示された面状の領域は、実験において柱状体(5…5)が剥がれてしまった領域である)。これにより、水晶振動子QCの少なくとも一方の表面(本実施形態では上面)21側に位置する電極は、電極本体2と多数の柱状体5…5とから構成されることになる。

【0040】
陽極酸化がなされた金属被膜3を溶解により除去することで、前記めっきにより各貫通孔4に入り込んだ金属を電極本体2の表面21上に残存させて、電極本体2の表面21に多数の柱状体5…5が立ち並んだ状態を容易に実現できる。これら一連の工程を経て水晶振動子QCが完成する。

【0041】
完成した水晶振動子QCにつき、各柱状体5の電極本体2の表面(上面)21からの高さ寸法(本実施形態では2000nm)は、電極本体2の厚み寸法(本実施形態では約100nm)よりも大きい。各柱状体5の電極本体2の表面(上面)21からの高さ寸法が大きいことにより、前記高さ寸法が電極本体2の厚み寸法以下の構造に対し、電極の表面積を平面積に比べて十分大きくとることができる。

【0042】
前記一連の工程を含む水晶振動子QCの製造方法によれば、めっきにより電極本体2の表面(上面)21に、多数の柱状体5…5を形成できるため、電極本体2と多数の柱状体5…5とから構成された電極の表面積を電極の平面積に比べて大きくした水晶振動子QCを容易に製造できる。また、電極本体2を構成する金属に限定されずに、種々の金属や金属酸化物からなる多数の柱状体5…5を電極本体2上に形成できるため、用途に適応した構造の電極を有する水晶振動子QCを製造できる。

【0043】
また、本実施形態の製造方法は、公知の技術である陽極酸化技術とめっき技術を用い、電極本体2の表面21に多数の柱状体5…5を形成する「ボトムアップ」形の製造方法である。よって、例えばドライエッチング技術や、電子ビームまたはX線を用いたリソグラフィ技術を用いて電極構造を形成する「トップダウン」形の製造方法に比べると、製造コスト(特に装置コスト)を低減でき、製造の際に必要なエネルギーも低減できる。また、大面積にも容易に施工可能であるため、加工の自由度が高いメリットがある。

【0044】
この製造方法により製造された水晶振動子QCは様々な用途に用いることができる。例えば、ガスセンサ(飲酒運転のアルコール検出、においセンサ、工場でのプロセス管理など)、バイオセンサ(抗原抗体反応(癌等の各種マーカー検出)、タンパク質間相互作用解析、DNA分析、細胞分析など)、環境センサ(ホルムアルデヒド分析、環境ホルモンの分析など)、食品センサ(アレルゲン分析、食中毒検査、味分析など)が挙げられる。また、センサに限定されず種々のデバイスに用いることができる。また、水晶振動子QCの用途により、電極本体2及び各柱状体5の表面には、検出対象物質に対して反応する物質(例えば、抗原抗体反応で用いる場合は抗体)を塗布することができる。

【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

【0046】
例えば、前記実施形態の水晶振動子QCは、物質の吸着による質量変化を計測するものであったが、特許文献1に記載された発明のように、腐食による質量変化を計測することもできる。

【0047】
また、水晶振動子QCの平面形状は、前記実施形態では円形であったが、これに限定されず、用途に適した種々の平面形状とできる。

【0048】
また、金属被膜3を構成する金属は、純アルミニウムまたは純チタンに限定されず、アルミニウムまたはチタンを含む金属であってよい。また、金属酸化物であってもよい。

【0049】
また、前記実施形態では、金属被膜3の形成後にパターニングを行っていたが、金属被膜3を電極本体2上にのみ形成し、パターニング工程を省略することもできる。

【0050】
また、前記実施形態において、溶解により電極本体2の上面21から除去された金属被膜3を構成していた金属を、精製の上、再度金属被膜3を形成するために用いることもできる。

【0051】
また、多数の柱状体5…5からなるナノ構造では毛細管力が強くなることから、菌がトラップされて動けなくなると推測されている。このため、前記水晶振動子QCの技術を応用して抗菌素材を作製することもできる。ただし、このように抗菌素材を作製する場合、基板1の素材は水晶に限定されず種々の素材を用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 基板
2 電極本体
21 電極本体の表面(上面)
3 金属被膜
4 貫通孔
5 柱状体
QC 水晶振動子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8