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明細書 :粒子特性計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6050619号 (P6050619)
公開番号 特開2014-006173 (P2014-006173A)
登録日 平成28年12月2日(2016.12.2)
発行日 平成28年12月21日(2016.12.21)
公開日 平成26年1月16日(2014.1.16)
発明の名称または考案の名称 粒子特性計測装置
国際特許分類 G01N  15/02        (2006.01)
G01N  27/26        (2006.01)
FI G01N 15/02 A
G01N 27/26 P
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2012-142705 (P2012-142705)
出願日 平成24年6月26日(2012.6.26)
審査請求日 平成27年6月26日(2015.6.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
発明者または考案者 【氏名】須藤 誠一
【氏名】大塚 建樹
個別代理人の代理人 【識別番号】110000408、【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
審査官 【審査官】土岐 和雅
参考文献・文献 国際公開第2010/041082(WO,A1)
米国特許出願公開第2008/0221814(US,A1)
米国特許第08057655(US,B1)
特開2007-322329(JP,A)
Pam Moreton,Measureing Particle Size and Zeta Potential,International LABMATE,英国,1997年 5月,Vol.22 No.3,Page.26-28
Ali A. Garrouch et al.,Dielectric Dispersion of Dilute Suspensions of Colloid Particles: Pratical Applications,J.Phys Chem,米国,1996年,Vol.100.No.42,16996-17003
調査した分野 G01N1/00~1/42、15/00~15/14、21/00~21/61、27/26~27/49
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
光源を備え,前記光源から出力されるレーザ光を,溶媒及び前記溶媒中に分散した微粒子を含む被測定物に入射させるレーザ発振器と,
前記被測定物から前記レーザ発振器への散乱帰還光により変調されたレーザ出力光を信号に変換する光検出部と,
前記光検出部により変換された前記信号を解析する信号処理部と,を備え,
前記信号処理部は,前記信号を解析して前記変調されたレーザ出力光の強度揺らぎの周波数特性を求め,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の拡散係数を求め,前記拡散係数から前記被測定物に含まれる前記微粒子の粒子径を求めることを含み,
前記変調されたレーザ出力光の発振が次式(2)で表わされることを特徴とする粒子特性計測装置。
【数1】
JP0006050619B2_000014t.gif
但し、式(2)において、n[/m]は反転分布密度,t=τ/τ(τ[s]:時間,τ[s]:反転分布寿命),K=τ/τ(τ[s]:光子寿命),τ=τ/κ(κ:前記レーザ発振器の出力鏡の振幅透過率)であり,τ(=2L/c)は前記レーザ発振器中での前記レーザ光の往復時間であり,cは光速度(2.99×10m/s)であり,L[m]は前記レーザ発振器長であり,Eは前記散乱帰還光であり,Eは前記レーザ光であり,Kは反転分布寿命と光子寿命の比であり、f[Hz]は次式(1)で表わされるドップラー周波数偏移である。
【数2】
JP0006050619B2_000015t.gif
但し、v[m/s]は前記被測定物の移動速度,λ[m]は前記レーザ光の波長,θは前記被測定物の移動方向と前記光源の発振軸のなす角[rad]である。
【請求項2】
前記信号処理部は,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の移動速度を求め,前記移動速度から前記被測定物に含まれる前記微粒子のゼータ電位を求めることを特徴とする請求項1に記載の粒子特性計測装置。
【請求項3】
前記強度揺らぎの周波数特性をI(ω)とした場合に,次式(I)あるいは次式(I)の重ね合わせの式にカーブフィッティングさせることにより,前記被測定物の前記拡散係数及び前記移動速度を求めることを特徴とする請求項2に記載の粒子特性計測装置。
【数3】
JP0006050619B2_000016t.gif

但し,Fはフーリエ変換を表しており,jは虚数単位,tは時間,vは前記移動速度,Dは前記拡散係数,wは前記レーザ光のビーム幅,θは前記被測定物の移動方向と前記光源の発振軸のなす角度,kは波数を示す。また,波数kは次式(II)により導出される。
【数4】
JP0006050619B2_000017t.gif

但し,nは前記溶媒の屈折率,λは前記レーザ光の波長,φは散乱角を示す。
【請求項4】
前記レーザ光を周波数偏移させる光音響変調素子(AOM)をさらに備え,
前記信号処理部は,前記光音響変調素子(AOM)により周波数偏移された前記レーザ光を前記被測定物に入射させて前記被測定物からの前記散乱帰還光により変調されたレーザ出力光を変換した信号を解析して前記強度揺らぎの周波数特性を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粒子特性計測装置。
【請求項5】
溶媒及び前記溶媒中に分散した微粒子を含む被測定物にレーザ光を入射させて前記被測定物からレーザ発振器への散乱帰還光により変調されたレーザ出力光を変換した信号をコンピュータに解析させて前記コンピュータに前記被測定物に含まれる前記微粒子の特性を求める処理を実行させるためのプログラムであって,
前記コンピュータに,前記信号を解析して前記変調されたレーザ出力光の強度揺らぎの周波数特性を求め,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の拡散係数を求め,前記拡散係数から前記被測定物に含まれる前記微粒子の粒子径を求める処理を実行させ
前記変調されたレーザ出力光の発振が次式(2)で表わされることを特徴とするプログラム。
【数5】
JP0006050619B2_000018t.gif
但し、式(2)において、n[/m]は反転分布密度,t=τ/τ(τ[s]:時間,τ[s]:反転分布寿命),K=τ/τ(τ[s]:光子寿命),τ=τ/κ(κ:前記レーザ発振器の出力鏡の振幅透過率)であり,τ(=2L/c)は前記レーザ発振器中での前記レーザ光の往復時間であり,cは光速度(2.99×10m/s)であり,L[m]は前記レーザ発振器長であり,Eは前記散乱帰還光であり,Eは前記レーザ光であり,Kは反転分布寿命と光子寿命の比であり、f[Hz]は次式(1)で表わされるドップラー周波数偏移である。
【数6】
JP0006050619B2_000019t.gif
但し、v[m/s]は前記被測定物の移動速度,λ[m]は前記レーザ光の波長,θは前記被測定物の移動方向と前記光源の発振軸のなす角[rad]である。
【請求項6】
前記コンピュータに,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の移動速度を求め,前記移動速度から前記被測定物に含まれる前記微粒子のゼータ電位を求める処理を実行させることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記強度揺らぎの周波数特性をI(ω)とした場合に,次式(I)あるいは次式(I)の重ね合わせの式にカーブフィッティングさせることにより,前記被測定物の前記拡散係数及び前記移動速度を求めることを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【数7】
JP0006050619B2_000020t.gif

但し,Fはフーリエ変換を表しており,jは虚数単位,tは時間,vは前記移動速度,Dは前記拡散係数,wは前記レーザ光のビーム幅,θは前記被測定物の移動方向と前記光源の発振軸のなす角度,kは波数を示す。また,波数kは次式(II)により導出される。
【数8】
JP0006050619B2_000021t.gif
但し,nは前記溶媒の屈折率,λは前記レーザ光の波長,φは散乱角を示す。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,溶媒中に分散したコロイド粒子等の微粒子の粒子径とゼータ電位を測定する粒子特性計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,粉黛工業,化粧品工業,色材工業の分野では,溶媒中の微粒子の評価に,粒子径やゼータ電位の測定が広く行われてきた。溶液中に分散した微粒子の粒子径測定法として,顕微鏡による観察から粒子径を評価する方法や,粒子にレーザ光を照射してその散乱光から粒子径を測定する方法(動的光散乱法)が知られている。
【0003】
粒子のゼータ電位とは,溶液中の粒子の滑り面とバルクな溶媒との電位差である。溶媒と接する微粒子の界面は,基本的に帯電している。この帯電した微粒子の作る電場は,溶媒から逆極性の電荷のイオンを引き寄せ,粒子表面近傍に滞在させる。この溶媒に電場を作用させると,微粒子はイオンを引き連れた状態で電極に向かって電気泳動する。この移動が起こる面が滑り面であり,この滑り面と溶媒の電位差がゼータ電位と呼ばれる。ゼータ電位は,微粒子を含んだ溶液に電場を作用させたときの電気泳動移動度に基づいて評価される。この電気泳動移動度の検出には,顕微鏡での観察から電気泳動移動度を評価する方法や,レーザ光を照射し,微粒子からの散乱光の周波数がドップラー効果によって変化することを利用して電気泳動移動度を検出するレーザドップラー法が知られている。
【0004】
このような従来技術では,粒子径とゼータ電位は別々の測定法により個別に測定されており,測定装置も個別に必要になっていた。各測定装置を一つの装置に組み上げた装置も存在するが,粒子径とゼータ電位の測定は個別に行うため,粒子径とゼータ電位を一度に測定することはできなかった。また電気泳動する微粒子の像を観察して得られる移動度から,数値演算で間接的に粒子径を求めることで,粒子径とゼータ電位を測定する方法が開示されている(例えば,特許文献1参照。)。しかしこの方法では,微粒子の像を観察するため,粒子径がナノメートルの微粒子の測定は行えない。
【0005】
また,従来,光源から出射される出力光の一部を被測定物に入射させ,該被測定物からの散乱帰還光を前記光源に帰還させ,該帰還光と前記出力光との干渉により誘起される出力光の強度揺らぎの周波数を測定する技術を用いたレーザ速度計(例えば,特許文献2参照。),粒子径計測装置(例えば,非特許文献1参照。),及び流速測定装置(例えば,非特許文献2参照。)等が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-322329号公報
【特許文献2】特開2004-226093号公報
【0007】

【非特許文献1】S.Sudo, Y.Miyasaka, K.Otsuka, Y.Takahashi, T.Oishi, and J.-Y.Ko, “Quick and easy measurement of particle size of Brownian particles and planktons in water using a self-mixing laser”, OPTICS EXPRESS, 2006年2月6日, Vol.14, No.3, p.1044-1054.
【非特許文献2】S.Sudo, Y.Miyasaka, K.Nemoto, K.Kamikariya, and K.Otsuka, “Detection of small particle in fluid flow using a self-mixing laser”, OPTICS EXPRESS, 2007年6月25日, Vol.15, No.13, p.8135-8145.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,上述した従来技術では,一つの粒子特性計測装置を用いて,電気泳動するナノサイズの微粒子の粒子径とゼータ電位とを同時算出することはできなかった。
【0009】
本発明は,上記の課題に鑑みてなされたものであり,一つの粒子特性計測装置を用いて,簡易に且つ正確に,電気泳動する微粒子の粒子径を算出することのできる粒子特性計測装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに,本発明は,電気泳動する微粒子の粒子径とゼータ電位を同時算出することのできる粒子特性計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る粒子特性計測装置は,光源を備え,前記光源から出力されるレーザ光を,溶媒及び前記溶媒中に分散した微粒子を含む被測定物に入射させるレーザ発振器と,前記被測定物から前記レーザ発振器への散乱帰還光により変調されたレーザ出力光を信号に変換する光検出部と,前記光検出部により変換された前記信号を解析する信号処理部と,を備え,前記信号処理部は,前記信号を解析して前記変調されたレーザー出力光の強度揺らぎの周波数特性を求め,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の拡散係数を求め,前記拡散係数から前記被測定物に含まれる前記微粒子の粒子径を求めることを含むことをみ,前記変調されたレーザ出力光の発振が次式(2)で表わされることを特徴とする。
JP0006050619B2_000002t.gif但し、式(2)において、n[/m]は反転分布密度,t=τ/τ(τ[s]:時間,τ[s]:反転分布寿命),K=τ/τ(τ[s]:光子寿命),τ=τ/κ(κ:前記レーザ発振器の出力鏡の振幅透過率)であり,τ(=2L/c)は前記レーザ発振器中での前記レーザ光の往復時間であり,cは光速度(2.99×10m/s)であり,L[m]は前記レーザ発振器長であり,Eは前記散乱帰還光であり,Eは前記レーザ光であり,Kは反転分布寿命と光子寿命の比であり、f[Hz]は次式(1)で表わされるドップラー周波数偏移である。
JP0006050619B2_000003t.gif但し、v[m/s]は前記被測定物の移動速度,λ[m]は前記レーザ光の波長,θは前記被測定物の移動方向と前記光源の発振軸のなす角[rad]である。
【0012】
前記信号処理部は,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の移動速度を求め,前記移動速度から前記被測定物に含まれる前記微粒子のゼータ電位を求めてもよい。
【0013】
前記強度揺らぎの周波数特性,即ちパワースペクトル,をI(ω)とした場合に,次式(I)あるいは次式(I)の重ね合わせの式にカーブフィッティングさせることにより,前記被測定物の前記拡散係数及び前記移動速度を求めてもよい。
JP0006050619B2_000004t.gif
但し,Fはフーリエ変換を表しており,jは虚数単位,tは時間,vは前記移動速度,Dは前記拡散係数,wは前記レーザ光のビーム幅,θは前記被測定物の移動方向と前記光源の発振軸のなす角度,kは波数を示す。また,波数kは次式(II)により導出される。
JP0006050619B2_000005t.gif
但し,nは前記溶媒の屈折率,λは前記レーザ光の波長,φは散乱角を示す。
【0014】
前記レーザ光を周波数偏移させる光音響変調素子(AOM)をさらに備え,前記信号処理部は,前記光音響変調素子(AOM)により周波数偏移された前記レーザ光を前記被測定物に入射させて前記被測定物からの前記散乱帰還光により変調されたレーザ出力光を変換した信号を解析して前記強度揺らぎの周波数特性を求めてもよい。
【0015】
また,本発明の一実施形態に係るプログラムは,溶媒及び前記溶媒中に分散した微粒子を含む被測定物にレーザ光を入射させて前記被測定物からレーザ発振器への散乱帰還光により変調されたレーザ出力光を変換した信号をコンピュータに解析させて前記コンピュータに前記被測定物に含まれる前記微粒子の特性を求める処理を実行させるためのプログラムであって,前記コンピュータに,前記信号を解析して前記変調されたレーザ出力光の強度揺らぎの周波数特性を求め,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の拡散係数を求め,前記拡散係数から前記被測定物に含まれる前記微粒子の粒子径を求める処理を実行させ、前記変調されたレーザ出力光の発振が次式(2)で表わされることを特徴とする。
JP0006050619B2_000006t.gif但し、式(2)において、n[/m]は反転分布密度,t=τ/τ(τ[s]:時間,τ[s]:反転分布寿命),K=τ/τ(τ[s]:光子寿命),τ=τ/κ(κ:前記レーザ発振器の出力鏡の振幅透過率)であり,τ(=2L/c)は前記レーザ発振器中での前記レーザ光の往復時間であり,cは光速度(2.99×10m/s)であり,L[m]は前記レーザ発振器長であり,Eは前記散乱帰還光であり,Eは前記レーザ光であり,Kは反転分布寿命と光子寿命の比であり、f[Hz]は次式(1)で表わされるドップラー周波数偏移である。
JP0006050619B2_000007t.gif但し、v[m/s]は前記被測定物の移動速度,λ[m]は前記レーザ光の波長,θは前記被測定物の移動方向と前記光源の発振軸のなす角[rad]である。
【0016】
また,前記コンピュータに,前記強度揺らぎの周波数特性から前記被測定物に含まれる前記微粒子の移動速度を求め,前記移動速度から前記被測定物に含まれる前記微粒子のゼータ電位を求める処理を実行させてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態に係る粒子特性計測装置によれば,微粒子の像を顕微鏡等で観察することなく,一つの粒子特性計測装置を用いて,簡易に且つ正確に,電気泳動する微粒子の粒子径を算出することができる。
【0018】
さらに,本発明の一実施形態に係る粒子特性計測装置によれば,電気泳動する微粒子の粒子径とゼータ電位を同時算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の粒子特性計測装置の概略構成図である。
【図2】本発明の粒子特性計測装置による粒子特性を算出する処理を示したフロー図である。
【図3】本発明の実施例に係る粒子特性計測装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施例に係る粒子特性計測装置により測定したレーザ出力光のパワースペクトルを示すグラフである。

【0020】
以下,図面を参照しながら,本発明の粒子特性計測装置について説明する。なお,本発明の粒子特性計測装置は,以下の実施形態に限定されることはなく,種々の変形を行ない実施することが可能である。
【0021】
以下,図1を参照し,本発明に係る粒子特性計測装置1について説明する。図1は,本発明に係る粒子特性計測装置1の概略構成図である。この粒子特性計測装置1は,レーザ発振器2,ビームスプリッタ3,集光レンズ4,光検出器5,信号処理部6,被測定物7である微粒子を含む。
【0022】
レーザ発振器2は,光源を備え,光源から出力されるレーザ光が被測定物7に入射される。ビームスプリッタ3は,出力光の一部を透過させて被測定物7に入射させるとともに,残りの出力光を一定の角度に反射させ,光検出器5に入射させる。光検出器5は,入射された光を電気信号に変換し,信号処理部6は光検出器5から出力された信号を解析する。
【0023】
レーザ発振器2の光源から出射される出力光の一部(発振光)が被測定物7に入射すると,被測定物7からの散乱帰還光Eが光源の発振軸方向に帰還される。このような散乱帰還光Eによってレーザ出力光には変調が与えられるため,変調されたレーザ出力光が光検出器5によって電気信号に変換され,信号処理部6は,変換された信号を解析することにより,被測定物7の粒子特性を算出することができる。
【0024】
以下,被測定物7からの散乱帰還光Eによって変調されたレーザ出力光に基づいて,信号処理部6において被測定物7の粒子特性を算出する方法について説明する。
【0025】
まず,被測定物7からの散乱帰還光ESは,次式の様なドップラー周波数偏移f[Hz]を受ける。
JP0006050619B2_000008t.gif
【0026】
ここでv[m/s]は被測定物の移動速度,λ[m]は発振光の波長,θは被測定物の移動方向と光源の発振軸のなす角[rad]である。従って,レーザ発振器2にはfだけ周波数が偏移した光が注入されることになる。この結果,散乱帰還光Eは発振光Eと干渉することで,これら2つの電界の差周波数,すなわちfで発振光Eが強度変調される。このとき,発振光強度(S=E)の時間変化は,次式の様に表される。
JP0006050619B2_000009t.gif
【0027】
ただし,n[/m]は反転分布密度,t=τ/τ(τ[s]:時間,τ[s]:反転分布寿命),K=τ/τ(τ[s]:光子寿命),τ=τ/κ(κ:レーザ発振器2の出力鏡の振幅透過率)である。τ(=2L/c)は光のレーザ発振器2中での往復時間であり,cは光速度(2.99×10m/s)であり,L[m]はレーザ発振器長である。Kは反転分布寿命と光子寿命の比となる。
【0028】
式(2)に示したように,発振光強度Sはfの周波数で変調を受けることになり,この場合の変調度はK(=τ/τ)に比例する。従って,散乱帰還光Eの振幅が極微弱であってもKを大きくすれば十分大きな変調度が得られることになる。Lの小さなレーザではτが短く,しかもτがτに比例するので,極めて大きなKを得ることができる。例えば,レーザ発振器2として半導体レーザで励起される結晶厚み1mm程度のLiNdP12固体レーザを用いれば,K=10~10が得られる。従って,結晶厚みの薄い固体レーザを用いるほど,高感度での計測が可能となる。
【0029】
また式(2)に示したように,レーザ出力光の強度揺らぎを表す式(2)の第2項は,散乱帰還光Eと発振光Eの比,すなわちレーザ光の帰還率に比例する。従って,レーザ光の帰還率を高くすることで,十分大きな変調度が得られることになる。
【0030】
しかし,溶媒中を電気泳動する微粒子は,一定の速度で並進移動するのではなく,溶媒分子との衝突によってゆらぎながら移動する。このとき,信号処理部6は,被測定物からの散乱帰還光によって変調されたレーザ出力光が光検出器5によって光電変換された信号に基づき,レーザ出力光の強度揺らぎの周波数特性を導出する。レーザ出力光の強度揺らぎの周波数特性(パワースペクトル)I(ω)は,次式のように表される。
JP0006050619B2_000010t.gif
【0031】
ここでFはフーリエ変換を表し,jは虚数単位,t[s]は時間,v[m/s]は被測定物の移動速度,Dは拡散係数,w[m]は微粒子に照射されたレーザ光のビーム幅,θ[rad]は被測定物の移動方向と光源の発振軸のなす角度,kは波数を示している。また,式(3)の第一項目はドップラーシフト,第二項目は微粒子の拡散,第三項目は微粒子の並進運動を表している。ここで波数kの大きさは,溶媒の屈折率nと発振光の波長λ[m]と散乱角φ[rad]を用いてk=4πn/λsin(φ/2)となる。但し,図1に示した粒子特性計測装置1においては,φ=πである。
【0032】
式(3)の拡散係数Dから,微粒子の粒子径d[m]は,次式のように求められる。
JP0006050619B2_000011t.gif
【0033】
ここでkはボルツマン定数,T[K]は溶媒の温度,η[Ps・s]は溶媒の粘度である。一方,電気泳動する微粒子の電気泳動移動度U[m/Vs]とゼータ電位ζ[V]は次式のように求めることができる。
JP0006050619B2_000012t.gifJP0006050619B2_000013t.gif
【0034】
ここでEは微粒子を含む溶媒に加えた電場の大きさ,εは溶媒の誘電率である。従って,レーザ出力光の強度揺らぎの周波数特性I(ω)を式(3)に基づいて解析(カーブフィッティング)を行うことで,微粒子の粒子径dとゼータ電位ζを求めることができる。また、複数の微粒子の粒子径d及び複数のゼータ電位ζを求める場合には、式(3)の重ね合わせの式で解析(カーブフィッティング)してもよい。
【0035】
本発明の粒子特性計測装置1によれば,図2にフロー図として図示したように,まず,被測定物からの散乱帰還光Eによって変調されたレーザ出力光が光電変換された信号に基づき,信号処理部6においてレーザ出力光の強度揺らぎの周波数特性I(ω)を求める(図2のS1)。次に,求めた強度揺らぎの周波数特性I(ω)を式(3)を用いてカーブフィッティングすることによって,被測定物に含まれる微粒子の拡散係数Dと被測定物の移動速度vを求める(図2のS2)。次に,求めた拡散係数Dを式(4)に代入して被測定物に含まれる微粒子の粒子径dを求めることができる(図2のS3)。また,被測定物の移動速度vを式(1)に代入することによって,ドップラー周波数偏移fを求めることができる。さらに,式(5)に基づき,被測定物の移動速度vから電気泳動移動度Uを求めることができ,式(6)に基づき,電気泳動移動度Uから,ゼータ電位ζを求めることができる(図2のS4)。このように,同じ強度揺らぎの周波数特性I(ω)から,被測定物に含まれる微粒子の拡散係数Dと被測定物の移動速度vを同時にカーブフィッティングによって求めることができ,拡散係数Dから微粒子の粒子径dを,移動速度vからゼータ電位ζをそれぞれ求めることができる。
【0036】
以上のとおり,本発明の一実施形態に係る粒子特性計測装置1によれば,簡易な構成の粒子特性計測装置1を用いて,電気泳動する微粒子の粒子径dを算出することができる。
【0037】
さらに,本発明の一実施形態に係る粒子特性計測装置1によれば,上述した式(3)~式(6)を用いて,電気泳動する微粒子の粒子径dとともに,ゼータ電位ζを同時算出することが可能となる。
【実施例】
【0038】
以下,図3及び図4を参照し,微粒子の粒子径d及びゼータ電位ζを同時に計測することが可能な本発明の実施例に係る粒子特性計測装置10について説明する。
【0039】
図3は本発明の実施例に係る粒子特性計測装置10の概略構成を図示したものである。粒子特性計測装置10は,固体レーザ11,固体レーザ励起用半導体レーザ部12,ビームスプリッタ13,集光レンズ14,光検出器15,信号処理部16,試料部17,光変調部18を含む。また,固体レーザ励起用半導体レーザ部12は,半導体レーザ22,レーザ形状成型部23,集光レンズ24を含む。固体レーザ11としては,固体レーザ励起用半導体レーザ部12で励起される結晶厚み1mm程度のLiNdP12固体レーザを用いた。Kは,10~10である。
【0040】
光変調部18は,光音響変調素子(AOM)35と変調素子ドライバ36を含み,試料部17の試料に照射するレーザ光をあらかじめ周波数偏移させるものである。固体レーザの発振光では,ペデスタルと呼ばれる低振動数成分や,固体レーザ固有の緩和振動が存在するため,出力光の強度揺らぎは低振動数成分や緩和振動に重畳されて観測される。このため,観測される変調光をスペクトル解析すると,微粒子の粒子径dやゼータ電位ζの情報を持つスペクトルに低振動周波成分や緩和振動のスペクトルが重畳されるため,抽出が困難になる。そこで,光音響変調素子35等を含む光変調部18を用いて,出力光の強度揺らぎの中心振動数(即ち,周波数偏移)をこれらの周波数から充分離れるように設定する。図3に示す実施例ではTiOで構成された光音響変調素子(AOM)35を用いた。光変調部18をレーザ光が往復することで,レーザ光にfAOMの周波数偏移が加えられる。
【0041】
ビームスプリッタ13は,入射した出力光の一部を透過させるとともに,残りの出力光を一定の角度に反射させるものであれば,特に限定されない。光検出器15は,図3に図示した実施例ではInGaAsフォトダイオードを用いたが,これに限定されるものではない。
【0042】
信号処理部16は,光検出器15から出力される信号を解析する。信号処理部16は,図3に図示した実施例では,AD変換ボードを用いて信号を取得し,コンピュータ上でフーリエ変換を行ったが,スペクトルアナライザを用いても良い。この信号には式(2)に基づくレーザの強度変調由来の信号が含まれており,フーリエ変換及びフィルタ処理により強度変調由来の信号を抽出する。また計算されたスペクトルをコンピュータ上で式(3)によるカーブフィッティングを行い,拡散係数Dと移動速度vを同時に求める。そして,拡散係数Dから微粒子の粒子径dを,移動速度vからゼータ電位ζをそれぞれ求める。
【0043】
試料部17は,内部に一対の電極32を取り付けた石英セル31と,電極に電圧を加える直流電源33を含む。石英セル31に被測定物である微粒子を含む試料を充填し,電圧を加えることで微粒子を電気泳動させる。この石英セルに集光レンズ14で集光されたレーザ光を照射する。電極32は試料に接するため,腐食することがある。そこで図3に図示した実施形態ではステンレスを用いたが,金や白金製の電極,或いは金や白金でメッキされた金属でも良い。電極の大きさは問わないが,電極の間隔が近すぎる場合,試料に加えられる電場強度が大きくなりすぎるため,10mm以上間隔を離した方が良い。
【0044】
図4は,試料に粒子径d=200nmのポリスチレンラテックスを水に分散させた分散液を用いた場合に,本発明の実施例に係る粒子特性計測装置10により測定された変調レーザ光のパワースペクトルを図示したグラフである。実線は,これら測定されたパワースペクトルを式(3)でカーブフィッティングしたものである。
【0045】
図4を参照すると,fAOM=2.0003MHzよりも高周波側に,式(3)で記述されるパワースペクトルが観測された。式(3)を用いた解析により,粒子径d=200nm,ドップラー周波数偏移f=85.0Hzを求めることができた。また,得られたドップラー周波数偏移fから,微粒子の電気泳動移動度Uは130μm/Vs,ゼータ電位ζは16.7mVと求めることができた。
【0046】
このように,本発明の実施例に係る粒子特性計測装置10によれば,光変調部18によって周波数偏移されたレーザ光が,試料部17の試料からの散乱帰還光Eによって変調されるため,周波数特性I(ω)を精度良く求める事ができる。そして,このスペクトルを式(3)に基づき解析することにより被測定物に含まれる微粒子の拡散係数D及び移動速度vをより正確に算出することができる。従って,式(4)に基づき,拡散係数Dから被測定物に含まれる微粒子の粒子径dを正確に求めることができ(図2のS3),移動速度vからドップラー周波数偏移f,電気泳動移動度U及びゼータ電位ζをそれぞれ正確に求めることができる(図2のS4)。
【0047】
このように,本発明に係る粒子特性計測装置1,10によれば,微粒子の像を顕微鏡等で観察することなく,簡易な構成の粒子特性計測装置1,10を用いて,電気泳動する微粒子の粒子径dを検出することができる。また,光変調部18によりあらかじめレーザ光を周波数偏移させることにより,より正確に粒子特性等を算出することが可能となる。
【0048】
また,本発明の一実施形態に係る粒子特性計測装置1,10によれば,電気泳動する微粒子の粒子径dとゼータ電位ζを同時検出することが可能となる。
【0049】
上述した本発明の粒子特性計測装置1,10の信号処理部6,16はコンピュータ上で動作するコンピュータプログラムの形態で実装される。当該コンピュータプログラムは,コンピュータ読み取り可能な記録媒体(HDD等)に記録される。このコンピュータプログラムは,光ディスクの形態で提供されてもよいし,インターネット経由で接続されたサーバ装置よりダウンロード可能な形態で提供されてもよい。このコンピュータプログラムは,コンピュータの主記憶にロードされて実行される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は,セラミックナノ粒子,金属ナノ粒子,カーボン,製薬,ウィルス,塗料・顔料,化粧品,各種ポリマー,食品,CMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシャ)スラリー等の粒径及びゼータ電位の測定に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 粒子特性計測装置
2 レーザ発振器
3 ビームスプリッタ
4 集光レンズ
5 光検出器
6 信号処理部
7 被測定物
10 粒子特性計測装置
11 固体レーザ
12 固体レーザ励起用半導体レーザ部
13 ビームスプリッタ
14 集光レンズ
15 光検出器
16 信号処理部
17 試料部
18 光変調部
22 半導体レーザ
23 レーザ形状成型部
24 集光レンズ
31 石英セル
32 電極
33 直流電源
35 光音響変調素子
36 変調素子ドライバ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3