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明細書 :印刷回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4115781号 (P4115781)
公開番号 特開2004-103717 (P2004-103717A)
登録日 平成20年4月25日(2008.4.25)
発行日 平成20年7月9日(2008.7.9)
公開日 平成16年4月2日(2004.4.2)
発明の名称または考案の名称 印刷回路
国際特許分類 H05K   1/02        (2006.01)
FI H05K 1/02 J
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2002-261477 (P2002-261477)
出願日 平成14年9月6日(2002.9.6)
審査請求日 平成17年8月3日(2005.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
発明者または考案者 【氏名】岡野 好伸
【氏名】高橋 英司
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
審査官 【審査官】柳本 陽征
参考文献・文献 実開平04-070759(JP,U)
特開平03-244181(JP,A)
特開平11-340591(JP,A)
調査した分野 H05K 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
信号が供給される上流側伝送線路が分岐点で、前記上流側伝送線路とのなす角度が鈍角の下流側伝送線路と鋭角の下流側伝送線路とに分岐するように伝送線路が印刷された印刷回路において、
前記上流側伝送線路とのなす角度が鈍角の下流側伝送線路と鋭角の下流側伝送線路との分岐点近傍の伝送線路を切り込んで切り込み部が形成されている、
ことを特徴とする印刷回路。
【請求項2】
前記切り込み部は、前記伝送線路を、楔形と丸形と矩形とのいずれか1つの形状に切り込むことにより形成されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷回路。
【請求項3】
前記切り込み部は、前記上流側伝送線路とのなす角度が鈍角の下流側伝送線路と鋭角の下流側伝送線路とに分配される信号の強度が等しくなるように、前記分岐点近傍の下流側伝送線路を切り込んで形成されたものである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷回路。
【請求項4】
前記切り込み部は、前記上流側伝送線路によって伝送される信号を、前記上流側伝送線路とのなす角度が鋭角の下流側伝送線路の方向に反射する端面を有するように形成されたものである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷回路。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子回路機器には、印刷回路が形成されたプリント基板が多く用いられる。プリント基板には、複数の電子部品が実装される。そして、プリント基板には、実装されている電子部品間での信号の送受を行うための伝送線路が形成される。
【0003】
プリント基板に形成された伝送線路には、一般に、信号を振り分けるための分岐路が設けられる。最も、基本的は分岐路は、図9に示すように、「T」の字型の形状を有する分岐路である。図9において、伝送信号が点PSから点P1,P2へ伝送されるものとして、伝送信号が伝搬する伝送線路51psは、分岐点dで伝送線路51p1と伝送線路51p2とに分岐する。この伝送線路51psの中心線と伝送線路51p1,51p2の中心線とのなす角度θ1は、90°である。
【0004】
「T」の字型分岐路を形成するのが困難である場合には、図10に示すような「イ」の字型の分岐路も用いられる。この「イ」の字型の分岐路を有するプリント基板では、伝送線路51psの中心線と伝送線路51p1の中心線とのなす角度θ1は、鋭角(90°未満)となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような「イ」の字型の分岐路を有するプリント基板では、信号分配特性が低下する。特に、電子機器の高周波化、広帯域化に伴い、機器内部の伝送線路における電磁波信号の影響を無視できなくなる。
【0006】
図9に示す「T」の字型の分岐路を有するプリント基板において、「T」の字型の分岐路で分配された信号の周波数特性を図11に示す。尚、縦軸「Relative power」は、図9の点PSから供給された信号の強度を「1」とした場合の点P1、P2にそれぞれ伝搬する信号の強度の割合を示す。また、Sp1,Sp2は、それぞれ、点P1,P2に伝搬する信号の強度を示し、Spsは、点PSまで反射した信号の強度を示す。後述する周波数特性を示す図についても同様である。
この図11に示すように、周波数0.1~10GHzの帯域で、伝送線路P1,P2にそれぞれ伝送される信号Sp1,Sp2の強度は等しくなる。
【0007】
次に、図10に示す「イ」の字型の分岐路を有するプリント基板において、「イ」の字型の分岐路で分配される信号の周波数特性を図12に示す。図12に示すように、周波数が高くなるに従って、伝送線路P1、P2にそれぞれ伝送される信号の信号強度Sp1,Sp2は、互いに異なってくる。特に、点P1側へ伝送される信号は伝搬されにくくなり、その分、点PSまで反射する信号の強度Spsが高くなる。
【0008】
次に、伝送線路P1、P2にそれぞれ伝送される信号Sp1,Sp2の信号強度と角度θ1との関係を図13に示す。この図13に示すように、角度θが90°の場合、点P2へ伝搬する信号の強度Sp2と、点P1へ伝搬する信号の強度Sp1とは、等しくなる。しかし、角度θ1が小さくに従って、両信号強度Sp1,Sp2に差が生じる。特に、角度θ1が45°の場合、分岐路における信号分配特性は低下する。
【0009】
このような現象は、電子機器の高速化、高周波化の障害となり、電子機器に供給される信号の信号強度が十分に得られないと、電子機器の誤動作を誘発するおそれもある。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、電子機器の誤動作を防止することを可能とする印刷回路を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る印刷回路は、
信号が供給される上流側伝送線路が分岐点で、前記上流側伝送線路とのなす角度が鈍角の下流側伝送線路と鋭角の下流側伝送線路とに分岐するように伝送線路が印刷された印刷回路において、
前記上流側伝送線路とのなす角度が鈍角の下流側伝送線路と鋭角の下流側伝送線路との分岐点近傍の伝送線路を切り込んで切り込み部が形成されているものである。
【0012】
このような構成によれば、上流側伝送線路とのなす角度が鈍角の下流側伝送線路と鋭角の下流側伝送線路との分岐点近傍に切り込み部が形成されていると、切り込み部が形成されていない場合と比較して、伝送される信号の反射方向が変化する。そして、上流側伝送線路に反射する信号の強度が小さくなれば、伝送される信号の強度は低下しなくなるので、電子機器の誤動作が防止される。
【0013】
前記切り込み部は、前記伝送線路を、楔形と丸形と矩形とのいずれか1つの形状に切り込むことにより形成されたものであってもよい。
【0014】
前記切り込み部は、前記上流側伝送線路とのなす角度が鈍角の下流側伝送線路と鋭角の下流側伝送線路とに分配される信号の強度が等しくなるように、前記分岐点近傍の下流側伝送線路を切り込んで形成されたものであってもよい。
【0015】
前記切り込み部は、前記上流側伝送線路によって伝送される信号を、前記上流側伝送線路とのなす角度が鋭角の下流側伝送線路の方向に反射する端面を有するように形成されたものであってもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る印刷回路が形成されたプリント基板を図面を参照して説明する。
本実施の形態に係るプリント基板の構成を図1と図2とに示す。尚、図1、図2は、それぞれ、本実施の形態に係るプリント基板の斜視図、平面図と側面図とを示す。
【0018】
プリント基板1は、誘電体板11と導体板12と伝送線路13と、を備えている。尚、プリント基板1の厚さは、0.5mm程度である。
誘電体板11は、導体板12と伝送線路13とを絶縁するためのものである。誘電体板11は、例えば、ガラスエポキシ樹脂によって形成される。導体板12は、薄い銅板等によって形成されたものである。
【0019】
伝送線路13は、プリント基板には、実装されている電子部品間での信号の送受を行うために形成された線路であり、銅箔等によって形成される。伝送線路13の線路幅L1は、0.8mm程度である。
【0020】
伝送線路13は、伝送線路13psと伝送線路13p1と伝送線路13p2とを有している。伝送線路13psは、点PSから信号が供給される上流側伝送路であり、伝送線路13p1と伝送線路13p2とは、下流側伝送線路である。各伝送線路13ps,13p1,13p2は、伝送線路13psの中心線と伝送線路13p1,13p2との中心線との交点としての分岐点Dで交わる。
【0021】
伝送線路13p1,13p2は、それぞれ、屈曲点P11,P12を有し、屈曲点P11,P12で屈曲して、点P1,P2へと延びる。
【0022】
伝送線路13psと伝送線路13p1と伝送線路13p2とは、伝送線路13psと伝送線路13p1とがなす角度をθとして、伝送線路13psと伝送線路13p1との角度θが90°未満(鋭角)になるように交わる。
【0023】
伝送線路13の分岐点Dの近傍には、楔形のノッチNが形成されている。このノッチNは、同じタイミングで同じ強度の信号が振り分けられるように、伝送線路を切り込んで形成された切り込み(切欠)部である。本実施の形態では、中心線Lpsと平行の方向に0.6mm程度切り込み、中心線Lpsと直角方向に0.6mm程度切り込んでノッチNを形成した。
【0024】
次に本実施の形態に係るプリント基板の特性を説明する。
点PSから伝送信号が伝搬するものとして、図3の破線で示すように、ノッチNが形成されていない場合、伝送信号は分岐点D近傍における伝送線路13p1又は伝送線路13p2の端面で反射され、反射した伝送信号は点PSへと戻ってしまう。伝送線路13p1に伝搬する信号の強度は強くなるものの、伝送線路13p1に伝搬される信号強度は弱くなる。従って、伝送線路13p1に伝搬する信号の強度と伝送線路13p1に伝搬される信号の強度とは、互いに異なってくる。
【0025】
一方、同じく点PSから信号が伝搬するものとして、図3の実線で示すように、ノッチNが形成されている場合、点PSから伝搬する信号は、その反射方向が変わるため、伝送線路13p1に伝搬する信号の強度と伝送線路13p1に伝搬する信号の強度とはほぼ等しくなる。尚、両信号の強度の差が所定の誤差範囲内であれば、ほぼ等しいものとする。
【0026】
ノッチNが形成され、角度θが45°の場合の各伝送線路13ps,13p1,13p2に伝搬する信号の周波数特性(信号強度対周波数との関係)を図4に示す。尚、縦軸「Relative power」は、図1~図3の点PSから供給された信号の強度を「1」とした場合の点P1、P2にそれぞれ伝搬する信号の強度の割合を示す。また、Sp1,Sp2は、それぞれ、点P1,P2に伝搬する信号の強度を示し、Spsは、点PSまで反射した信号の強度を示す。
【0027】
この図4に示すように、角度θが45°の場合、ノッチNが形成されれば、周波数0.1~10GHzの間で、点P1方向へ伝搬する信号の強度Sp1と点P2方向へ伝搬する信号の強度Sp1,Sp2とは、ほぼ等しくなる。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、伝送線路13psと伝送線路13p1とがなす角度θが鋭角になった場合、各伝送線路13ps,13p1,13p2が交わる分岐点Dの近傍に伝送線路を切り込んでノッチNを形成した。従って、このノッチNにより、点P1へと伝搬する信号の強度と点P2へと伝搬する信号の強度とはほぼ等しくなり、電子部品と電子部品との間で、同じタイミング、同じ強度の信号を振り分けることができる。
【0029】
従って、電子機器の高速化、高周波化にあたって電子機器の誤動作を防止することができる。
また、ノッチNを形成するだけなので、特殊な部品の装備、プリント基板1の特殊な加工を全く必要とせず、極めて容易にプリント基板1を形成することができる。
【0030】
尚、本発明を実施するにあたっては、種々の形態が考えられ、上記実施の形態に限られるものではない。
例えば、ノッチNの形状は、図2に示すものには限られず、図5に示すように丸形のノッチであってもよい。ノッチNがこのような形状をしている場合の13ps,13p1,13p2の周波数特性対信号強度との関係を図6に示す。この図6に示すように、周波数0.1~10GHzの間で、点P1方向へ伝搬する信号の強度と点P2方向へ伝搬する信号の強度とは、ほぼ等しくなる。
【0031】
また、ノッチNは、図7に示すように矩形のノッチであってもよい。ノッチNがこのような形状を有している場合の伝送線路13ps,13p1,13p2の周波数特性を図8に示す。この図8に示すように、周波数0.1~10GHzの間で、点P1方向へ伝搬する信号の強度と点P2方向へ伝搬する信号の強度とは、ほぼ等しくなる。
【0032】
さらに、ノッチNの形状は、これに限られるものではなく、ノッチNは、複数の楔形で形成されてもよい。但し、ノッチNの形状としては、図1~図3に示すものが単純であり、特性としても最も好ましい。
【0033】
また、本実施の形態では、ノッチNを、伝送線路13p1,13p2に伝送される伝送信号の相対強度が等しくなるように形成した。しかし、これに限られるものではなく、伝送線路13p1,13p2に伝送される伝送信号の相対強度が所望の比率となるようにノッチNを形成することもできる。
【0034】
また、本実施の形態では、伝送信号の反射方向を制御するために伝送線路を切り込んでノッチNを形成した。しかし、これに限られるものではなく、例えば、分岐点D近傍の伝送線路に凸部を形成して伝送信号の反射方向を制御することもできる。さらに、伝送線路13p1又は13p2側にノッチNを形成するのではなく、伝送線路13psの方に、ノッチNを形成することもできる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電子機器の誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリント基板の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプリント基板の構造を示す平面図と側面図である。
【図3】分岐点近傍を拡大した拡大平面図である。
【図4】図1と図2に示すプリント基板の各伝送線路を伝搬する信号の周波数特性を示す説明図である。
【図5】丸形ノッチを用いた応用例を示すプリント基板の平面図である。
【図6】図5に示すプリント基板の各伝送線路を伝搬する信号の周波数特性を示す説明図である。
【図7】矩形ノッチを用いた応用例を示すプリント基板の平面図である。
【図8】図7に示すプリント基板の各伝送線路を伝搬する信号の周波数特性を示す説明図である。
【図9】従来の「T」の字型の分岐路を示す平面図である。
【図10】従来の「イ」の字型の分岐路を示す平面図である。
【図11】従来の「T」の字型の分岐路を有するプリント基板の各伝送線路を伝搬する信号の強度と周波数との関係を示す説明図である。
【図12】図10に示す従来の「イ」の字型の分岐路で分配される伝送信号の周波数特性を示す説明図である。
【図13】従来の分岐路における角度とプリント基板の各伝送線路を伝搬する信号の強度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 プリント基板
11 誘電体板
12 導体板
13 伝送線路
D 分岐点
N ノッチ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12