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明細書 :座屈安定性に優れた積層ゴム支承

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4738846号 (P4738846)
公開番号 特開2006-241918 (P2006-241918A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年8月3日(2011.8.3)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
発明の名称または考案の名称 座屈安定性に優れた積層ゴム支承
国際特許分類 E04H   9/02        (2006.01)
E04B   1/36        (2006.01)
F16F  15/04        (2006.01)
FI E04H 9/02 331A
E04H 9/02 331B
E04B 1/36 B
F16F 15/04 P
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2005-061960 (P2005-061960)
出願日 平成17年3月7日(2005.3.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本建築学会構造系論文集 第586号(平成16年12月)社団法人日本建築学会発行 第79-86ページに発表
審査請求日 平成19年10月16日(2007.10.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
発明者または考案者 【氏名】西村 功
個別代理人の代理人 【識別番号】100070091、【弁理士】、【氏名又は名称】久門 知
【識別番号】100087491、【弁理士】、【氏名又は名称】久門 享
【識別番号】100104271、【弁理士】、【氏名又は名称】久門 保子
審査官 【審査官】田中 洋行
参考文献・文献 特開2001-040165(JP,A)
特開平10-068442(JP,A)
特開平09-072378(JP,A)
特開2003-138780(JP,A)
特開2001-206989(JP,A)
調査した分野 E04H 9/02
E04B 1/36
F16F 15/04
特許請求の範囲 【請求項1】
振動外力による構造物の揺れを抑制するための構造用積層ゴム支承において、積層ゴムの鉛直方向の荷重による微小変形時の座屈荷重NHと積層ゴムのせん断剛性KSとが、次式(1)の関係を満たし、
H≦5KS/3…(1)
かつ、前記積層ゴムの高さHと、直径あるいは幅Dとの比率が次式(3)の関係を満たすことを特徴とする積層ゴム支承。
D/H<1.6…(3)
【請求項2】
振動外力による構造物の揺れを抑制するための構造用積層ゴム支承において、積層ゴムの鉛直方向の荷重による微小変形時の座屈荷重NHと積層ゴムのせん断剛性KSとが、次式(2)の関係を満たし、
5KS/3<NH≦20KS…(2)
かつ、前記積層ゴムの高さHと、直径あるいは幅Dとの比率が次式(3)の関係を満たすことを特徴とする積層ゴム支承。
D/H<1.6…(3)
【請求項3】
請求項1または2記載の積層ゴム支承において、前記積層ゴムの高さHが10cm以上で、かつ直径あるいは幅Dが20cm以下であることを特徴とする積層ゴム支承。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の積層ゴム支承において、前記積層ゴムの水平断面が中空であることを特徴とする積層ゴム支承。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の積層ゴム支承において、鉛などの金属材料を内部に有することを特徴とする積層ゴム支承。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の積層ゴム支承を用いたことを特徴とする住宅建築物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5記載の積層ゴム支承を用いたことを特徴とする比較的軽量な建築構造物。
【請求項8】
請求項1、2、3、4または5記載の積層ゴム支承を用いたことを特徴とする建築構造物。
【請求項9】
請求項1、2、3、4または5記載の積層ゴム支承を用いたことを特徴とする橋梁や高速道路高架橋などの大型建造物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用の積層ゴム支承および該積層ゴム支承を用いた構造物に関するもので、特に変形時の座屈安定性に優れ、木造住宅など小型の構造物への適用も可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
免震構造用の積層ゴム支承は、従来、主として大型の構造物を適用対象として開発が進められ、そのようなものについては、高さが30~40cm程度で、直径が90~120cm程度の扁平な積層ゴムが用いられている。
【0003】
これは、積層ゴム支承の機能として、鉛直荷重に耐えることと、水平方向に弾性的に変形することが要求されているのに対し、地震時に30cm前後の水平変形が可能であり、かつ変形状態においても鉛直荷重を支持できるという条件で形状が決定されていることによる。
【0004】
その形状を求める条件として、従来は、限界水平変位について、図14に示すような考え方が基準となっている。すなわち、鉛直荷重を支えるための有効断面積は、水平変形が生じたときの積層ゴムの下端の水平面に対する投影部分と積層ゴムの上端の水平面に対する投影部分の重複部分の面積であるというものである。
【0005】
一方、材質的には合成ゴムの間に間隔をおいて、薄鋼板を積層させたものが一般的であるが、種々の改良がなされ、形状的にも水平断面の中央部を中空としたもの、その部分に鉛を入れたもの、ゴムに減衰性を持たせたものなど、種々の改良がなされてきた。

【特許文献1】特公昭61-017984号公報
【特許文献2】特開平07-090942号公報
【特許文献3】特開平09-072378号公報
【特許文献4】特開平10-220064号公報
【特許文献5】特開平11-022246号公報
【特許文献6】特開平11-257426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、従来、大型の構造物については、扁平な大型の積層ゴムを用いることで限界水平変位における有効断面積を確保しているが、この考え方を質量の小さい住宅建築に当てはめようとすると、図15に示されるように水平変形量を確保することができず、積層ゴム支承による免震構造は困難となる。
【0007】
すなわち、図15(a)の大型構造物Bでは、扁平ではあるが径が大きな積層ゴム支承により水平変形量が確保されるのに対し、従来の限界水平変位の考え方に基づいて質量の小さい住宅建築物Aにも扁平な積層ゴム支承を使用しようとすると、図15(b)に示すように積層ゴム支承の高さが取れないため、水平変形量が確保できない。
【0008】
なお、住宅用の免震構造としては、滑り支承などを利用したものがあり、部分的に小型のゴムブロック、あるいは積層ゴムが配置されているものも見られるが、これらはダンパーやバネとして用いられているものであり、積層ゴム支承としての機能を有するものではない。
【0009】
本発明は、従来の限界水平変位の理論にとらわれることなく、積層ゴム支承の剛性と座屈荷重、さらに座屈後の変形に関する座屈安定性を総合的に検討し、実験的にも確認することで、せん断剛性が大きく微小変形時の座屈荷重が小さく、従来は構造用積層ゴム支承として機能しないと考えられていたものが、変形が大きくなる範囲では逆に座屈安定性の面で有利となり、構造用の積層ゴム支承としてより有効に機能させることができることを見出し、その知見に基づいてなされたものである。
【0010】
以上のことから、本発明の目的は、住宅建築物、その他比較的軽量な建築構造物に適した積層ゴム支承を提供すること、さらに一般の建築構造物や大型建造物については従来のものより小型で経済性に優れた積層ゴム支承を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、振動外力による構造物の揺れを抑制するための構造用積層ゴム支承において、積層ゴムの鉛直方向の荷重による微小変形時の座屈荷重NHと積層ゴムのせん断剛性KSとが、次式(1)の関係を満たし、
H≦5KS/3…(1)
かつ、前記積層ゴムの高さHと、直径あるいは幅Dとの比率が次式(3)の関係を満たすことを特徴とするものである。
D/H<1.6…(3)
【0012】
た、請求項2に係る発明は、振動外力による構造物の揺れを抑制するための構造用積層ゴム支承において、積層ゴムの鉛直方向の荷重による微小変形時の座屈荷重NHと積層ゴムのせん断剛性KSとが、次式(2)の関係を満たし、
5KS/3<NH≦20KS…(2)
かつ、前記積層ゴムの高さHと、直径あるいは幅Dとの比率が次式(3)の関係を満たすことを特徴とするものである。
D/H<1.6…(3)
【0013】
下に、上記請求項1および2における式(1)、(2)、(3)による限定理由を説明する。
【0014】
図1は、積層ゴム支承をモデル化して示した図である。
【0015】
図中の各パラメータは、次の通りである。
【0016】
H:積層ゴムの高さ
D:積層ゴムの直径
t:積層ゴム厚(一層の厚さ)
:積層鋼板厚(一層の厚さ)
図2は、積層ゴム支承の大きな変形を考慮した、すなわち幾何学的非線形を考慮した曲げせん断モデル図である。また、図3は、図2のP(x,z)の点について局部的な釣り合い状態を示したものである。
【0017】
図中の各パラメータは、次の通りである。
【0018】
s:点Pを示す弧長媒介変数(積層ゴムの中央部からの部材に沿った長さ)
θ(s):曲げモーメントによるたわみ角
γ(s):せん断力によるたわみ角
x(s):点Pのx座標
z(s):点Pのz座標
N(s):点Pの軸力
Q(s):点Pのせん断力
M(s):点Pの曲げモーメント
0:部材端軸力
0:部材端せん断力
0:部材端曲げモーメント
δH:荷重が作用した後の水平変位
L:荷重が作用した後の部材長
h:荷重が作用した後の部材高さ
前記力学モデルについては、たわみ角φ=θ(s)+γ(s)と基準部材長λ(=L(k)/2K(k))に関し、下の釣り合い方程式が得られる。
【0019】
【数1】
JP0004738846B2_000002t.gif

【0020】
この釣り合い方程式について、パラメータk=sin(φmax/2)を用いて解析結果をまとめると以下の通りである(ここで、φmaxは中央部分のたわみ角である。)。
【0021】
変形後の部材長:L(k)=2K(k)λ(k)
水平変形量:δH (k)=4kλ(k)
変形後の部材高さ:h(k)=2(2E(k)-K(k))λ(k)
図4は、上の各式で表される座屈荷重近傍における部材変形を図上に表わしたものである。
【0022】
変形後の座屈荷重Ncrと基準部材長λの関係は、次式で表される。
【0023】
【数2】
JP0004738846B2_000003t.gif

【0024】
ここで、
S:せん断剛性(材料の有効せん断弾性係数Gに断面積Aを掛けた定数)
B:曲げ剛性(材料の曲げ剛性ヤング率EBに断面2次モーメントIを掛けた定数)
また、前記の各式において、第1種の完全楕円積分K(k)と第二種の完全楕円積分E(k)は、それぞれ以下の式を満足する。
【0025】
【数3】
JP0004738846B2_000004t.gif

【0026】
【数4】
JP0004738846B2_000005t.gif

【0027】
以上の式を用いることで、変形が増大し、パラメータkがゼロから1まで変化するときの座屈荷重、変形後の部材長、部材角などの関係を計算することができる。以下に、変形状態を3つの場合に分けて説明する。
【0028】
(a) 線形状態(k=0)
微小変形の場合、すなわち水平変位がゼロに極めて近いときの座屈荷重を求めると、ハリンクス(Haringx)の座屈荷重NHと一致する。
Hは次の2次方程式を満たす正の実数解である。
【0029】
【数5】
JP0004738846B2_000006t.gif

【0030】
(b) 若干変形が進んだ状態(0<k<0.3程度)
若干、水平変形が進んだ状態で座屈荷重を解析すると、下に示す2つの場合が存在する。
【0031】
【数6】
JP0004738846B2_000007t.gif

【0032】
【数7】
JP0004738846B2_000008t.gif

【0033】
上記〔数6〕の式は、水平変形が進むと基準部材長λが減少するので、座屈荷重が増大する場合を示している。一方、〔数7〕の式は、水平変位が進むと基準部材長λが増大するので、座屈荷重が低下する場合を示している。この関係を図に表わしたのが図5である。
【0034】
従って、〔数6〕の式を満足する積層ゴム支承の場合は、変形が進んでも座屈荷重が低下することを避けることができ、大変形に対して極めて安定的に鉛直荷重を支持することが分かる。
すなわち、変形が進んだ状態で座屈荷重が安定しているための条件は、下の〔数8〕の式で与えられる。
【0035】
【数8】
JP0004738846B2_000009t.gif

【0036】
請求項1に係る発明は、積層ゴムの鉛直方向の荷重による微小変形時の座屈荷重NHと積層ゴムのせん断剛性KSとの関係を、NH=5KS/3の場合も含めて限定したものである。
【0037】
また、〔数7〕の場合についても、図5の関係からNHが5KS/3に近い値をとるのであれば、大変形時の座屈荷重の低下が相対的に小さいことが分かる。これを背景技術の項で述べた従来型の積層ゴム支承と比較すると、市販の積層ゴム支承では例えば有効せん断弾性係数G=0.60N/mm2で、座屈応力度σC =30N/mm2を超える場合があるが、このときNH/Ks (=σC/G) は50となり〔数8〕で定められる安定な範囲を大きく逸脱している。ただし、NH=20KS前後までは、座屈荷重の低下は見られるものの水平変形の増大に対して安定な領域がかなり広い。一方、NH=30KSを超えるあたりから不安定な現象が顕著となる。
【0038】
このような理由から、請求項2は5KS/3<NHの範囲について、座屈安定性の面で、従来の積層ゴム支承に対し有意な差が生じると考えられるNH≦20KSの範囲を限定したものである。
【0039】
(c)大きな変形が進んだ状態(0.5<k<0.9程度の状態)
さらに変形が進んだ状態で、次式〔数9〕により水平変位δHと部材長Lの比率を計算すると、図6を得る。
【0040】
【数9】
JP0004738846B2_000010t.gif

【0041】
パラメータkが0.7を超えるあたりから、〔数9〕の式の値は低下し始めることがわかる。この現象を図示すると図7のようになる。すなわち、中央部分のたわみ角φmaxが90度を超え、部材長Lが急激に増大していることを示しており危険である。
【0042】
水平変位が進んでも、中央部分のたわみ角φmaxが90度を超えない範囲を水平変位の限界値と定義すると、その限界水平変位は下式〔数10〕で与えられる。
【0043】
【数10】
JP0004738846B2_000011t.gif

【0044】
この〔数10〕の式は、変形前の部材長L0が長い方が限界水平変位δcrの大きいことを示している。
以上の解析結果からは、プロポーションが細長いために座屈荷重が比較的低く、ゴムのせん断剛性が比較的高い積層ゴム支承は、水平変形の増大によっても座屈荷重の低下が抑えられるので大変形領域での荷重支持能力が高いことが分かる。
このような、物理的な現象を応用すれば、住宅のような比較的軽量の構造物であってもプロポーションの細い積層ゴム支承を用いることによって免震構造が可能となる。
【0045】
本願の請求項1、2における式(3)は、式(1)または式(2)を満たす積層ゴム支承、すなわち水平変形が進んでも座屈荷重が低下しない、または低下が少ない積層ゴム支承について、上述のようにさらに大きな変形が進んだ状態で座屈荷重の低下が抑えられ、大変形領域での荷重支持能力が高い条件として、積層ゴムの変形前の高さHと、直径あるいは幅Dとの比率を規定したものである。
【0046】
来の積層ゴム支承では、2次形状係数(S2)といわれる数値が4よりも大きいことが、鉛直荷重を支えた状態で水平変形を確保するために必要であると考えられている。
【0047】
このため、市販されている一般的な積層ゴム支承では、S2の値は、ほぼ4以上に設定されている。また、このときの2次形状係数の値は次式で定義されている。
【0048】

S2=D/hr>4.0

ここで、hrは、各層の積層ゴムの厚さを足した総厚みである。
【0049】
積層ゴム支承の高さHに占める、積層ゴムの総厚みhrがほぼ70%であることを考えると、積層ゴム支承のプロポーション(高さHと直径Dの比率)は以下の値を満足しなければならなくなる。つまり、従来は座屈安定性確保のためには、下式が必要条件と考えられていた。
【0050】

D/H>3.0

本発明では、プロポーションの細長いことが大変形後の座屈安定性にとって重要であるという物理的な原理を用いているため、式(3)のように不等号の向きが異なる条件式となる。この理由は以下の通りである。
【0051】
〔数10〕の式から導かれる積層ゴム支承の変形前長さLoの必要最低値と必要な水平変形の値から次式が得られる。ここで、変形前の長さLoと変形前の高さHは等しいので、次式が得られる。
【0052】

δcr<1.6×Lo =1.6H

前述のように、本発明では、限界水平変位δcrが積層ゴムの直径Dより大きくなっても安定であることが理論的かつ実験的に証明されており、少なくとも次の関係式が十分に成立する。
【0053】

D=δcr<1.6H …(A)

つまり、従来は座屈荷重を高くすることが座屈安定性を高めることだと考えていたために、逆に、大変形の状態で不安定になるような条件を必要条件として設定していたことになる。このため、市販されている積層ゴム支承はほとんど全て、大変形状態で水平剛性が劣化し、極端な場合は座屈してしまうことになる。
【0054】
一方、式(A)を書き換えると次の条件式が得られる。
【0055】

D/H<1.6 …(3)

上記の条件が請求項3の式となり、従来、必要条件とされてきた式と不等号の向きが全く逆になっている。
【0056】
以上から、請求項1では式(1)と式(3)を限定要件とし、請求項2では式(2)と式(3)を限定要件としたものである。
【0057】
請求項は、請求項1または請求項2に係る積層ゴム支承において、前記積層ゴムの高さHが10cm以上で、かつ直径あるいは幅Dが20cm以下であることを特徴とするものである。
【0058】
前述したように、本発明によれば、従来、免震構造への適用が困難と考えられていた住宅のような比較的軽量の構造物への適用が、細い積層ゴム支承を用いることによって可能となり、請求項はそのプロポーションを規定したものである。ただし、本発明の効果を得る条件として、請求項1または2の要件も必須としている。
【0059】
請求項は、請求項1、2または3に係る積層ゴム支承において、前記積層ゴムの水平断面が中空であることを特徴とするものである。
中空積層ゴムは中空部分の存在によって曲げ剛性としてのヤング率が低下するため、座屈荷重は比較的低くなる。このため、同じプロポーションの円形断面積層ゴムに比較して、水平変形の増大に伴う座屈荷重の低下現象を抑えることができる。
【0060】
請求項は、請求項1、2、3または4に係る積層ゴム支承において、鉛などの金属材料を内部に有することを特徴とするものである。これらの金属材料は、主として積層ゴム支承に減衰機能を付加する目的で設けられる。
【0061】
請求項に係る住宅建築物は、請求項1、2、3、4または5に係る積層ゴム支承を用いたことを特徴とするものである。
【0062】
また、請求項に係る比較的軽量な建築構造物は、請求項1、2、3、4または5に係る積層ゴム支承を用いたことを特徴とするものである。
請求項に係る住宅建築物と請求項に係る比較的軽量な建築構造物の適用範囲は明確に区別する必要はないが、本発明によれば、これらの比較的軽量の構造物であってもプロポーションの細い積層ゴム支承を用いることによって免震構造が可能となる。
【0063】
請求項に係る建築構造物は、請求項1、2、3、4または5記載の積層ゴム支承を用いたことを特徴とするものである。
【0064】
また、請求項に係る橋梁や高速道路高架橋などの大型建造物は、請求項1、2、3、4または5記載の積層ゴム支承を用いたことを特徴とするものである。
【0065】
請求項に係る比較的軽量な建築構造物と請求項に係る建築構造物、また請求項に係る建築構造物と請求項に係る大型建造物の適用範囲も明確に区別する必要はないが、本発明によれば、重量構造物の積層ゴム支承においても、従来の積層ゴム支承では水平変形能力に限りがあり、大変形が生ずるにつれて座屈荷重が低下するのに対し、本発明によれば積層ゴムのせん断剛性KSを従来と異なる範囲で適切に設定することで、優れた座屈安定性が得られる。また、中空積層ゴムを用いれば、長周期成分を含むとされるプレート境界で発生する巨大地震に対する免震構造の安全性をさらに引き上げることが可能となる。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、従来、積層ゴム支承としては適用できないと考えられていた、細長いプロポーションの積層ゴム支承が実現でき、かつ細長いために座屈荷重が比較的低く、ゴムのせん断剛性が比較的高い積層ゴム支承は、水平変形の増大によっても座屈荷重の低下が抑えられるので大変形領域での荷重支持能力が高く、座屈安定性に優れるというメリットがある。
【0067】
特に、本発明における物理的な現象を利用することで、住宅のような比較的軽量の構造物であっても、プロポーションの細い積層ゴム支承を用いることによって免震構造が可能となる。また、軽量の構造物の場合に限らず、重量構造物の場合でも同様の原理により、座屈安定性に優れた積層ゴム支承が得られる。
【0068】
このように、住宅建築物、その他比較的軽量な建築構造物に適した積層ゴム支承が可能となり、さらに一般の建築構造物の他、橋梁や高速道路高架橋などの大型建造物に用いられる積層ゴム支承としても積層ゴム支承の小型化が可能となる。
【0069】
また、中空積層ゴム支承の場合は、中空部分の存在によって曲げ剛性としてのヤング率が低下するため、座屈荷重は比較的低くなる。このため、同じプロポーションの円形断面積層ゴムに比較して、水平変形の増大に伴う座屈荷重の低下現象を抑えることができる。
【0070】
さらに、重量構造物の積層ゴム支承においても、従来の扁平な形状を持った積層ゴム支承では水平変形能力に限りがあるが、中空積層ゴム支承を用いることで長周期成分を含む巨大地震に対しても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
図8は、本発明による細長いプロポーションの積層ゴム支承を住宅建築物Aに適用する場合を概念的に示したものである。
【0072】
積層ゴム支承1を構成する積層ゴムが図8(b)の状態から図8(c)の状態まで大きく変形したとき、上端面と下端面で平面的に重なり合う面積が0となり、従来の限界水平変位の考え方では、住宅建築物Aの荷重を支えないとして設計できないことになる。しかしながら、本発明により、微小変形時の座屈荷重と積層ゴムのせん断剛性との関係を適切な範囲に設定することで、積層ゴムが座屈することなく、上載荷重を支持することができる。
【0073】
図9に示す積層ゴム支承1は木造家屋の免震構造用積層ゴムとしての具体的な実施形態を示したものである。部材構成としては従来の積層ゴム支承と同様に、合成ゴム内に複数の鋼板2が挟み込まれ、ゴム層3と鋼板の層が互層をなす積層ゴムの上下に、構造物に据え付けるための端板4を一体化した構成となっている。
【0074】
この例は、積層ゴム部分について、直径D=120mm、高さH=300mmという従来になく径が小さく、かつ非常に細長いプロポーションの積層ゴム支承を示したものであり、後に説明する試算結果からも、大変形後の座屈荷重の変動が少ないこと、すなわち、大変形後も水平剛性の変化が少なく安定していることが分かる。
【0075】
図10は、家屋に取り付けた状態の詳細を示したものである。図10示す基礎コンクリート11と木造家屋の土台12(床梁)の間に積層ゴム支承1を配置するものであり、施工も簡便である。
【0076】
図11は、本発明の積層ゴム支承1を高速道路橋脚Cなどに適用する場合の実施形態を示したものである。従来の積層ゴム支承と比較して変形の許容量が大きいため、長周期地震などの際に安全余裕度が2倍から3倍に拡大されることが予想される。
【0077】
以下に、座屈荷重の試算について説明する。
【0078】
上述の図9の実施形態に相当する積層ゴムAタイプと比較計算用Bタイプ、およびCタイプを図12に示す。Aタイプは高さH=300mmであり、BタイプはH=120mmであり、CタイプはH=60mmである。また、Aタイプの有効せん断弾性係数G=20kg/cm2であり、BタイプはG=10kg/cm2、CタイプはG=5kg/cm2である。各タイプの形状ならびに材料特性などの諸元を表1に示す。
【0079】
【表1】
JP0004738846B2_000012t.gif

【0080】
表2~4には、各タイプの水平変形の増大と座屈荷重の低下についての計算結果を示す。表2~4の値を図13に示す。
【0081】
【表2】
JP0004738846B2_000013t.gif

【0082】
【表3】
JP0004738846B2_000014t.gif

【0083】
【表4】
JP0004738846B2_000015t.gif

【0084】
図13を見ると分かるように、ハリンクスの座屈荷重NHの値とせん断剛性KSの値との比、すなわちNH/KSの値が20を超えると(タイプCの場合)、水平変形の増大に対する座屈荷重の低下が顕著となることが分かる。タイプCは、表1の数値(NH=12.3、KS=0.565)からNH=21.7KSと計算され、請求項2式(2)におけるNHの上限である20KSをわずかに超えたものであるが、前述のように請求項2の式(2)自体が従来の積層ゴム支承からはかけはなれた有意な差が生じる範囲となっている。
【0085】
また、タイプAは、表1の数値(NH=4.02、KS=2.26)からNH=1.78KSと計算され、請求項2の式(2)の範囲であるが、請求項1の式(1)との境界にあたるNH=1.67KSをわずかに超えたところにあり、水平変形の増大に対する座屈荷重の低下はほとんど見られない。
【0086】
この図からも、タイプAの積層ゴム支承は、木造家屋などの免震構造用積層ゴム支承として極めて良好な性状を示していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】積層ゴム支承のモデル図である。
【図2】積層ゴム支承の大変形(幾何学的非線形)を考慮した曲げせん断モデル図である。
【図3】局部的な釣り合い状態を示す図である。
【図4】積層ゴムの座屈荷重近傍における部材変形の解析結果を示す図である。
【図5】積層ゴムの変形が増大した時の座屈荷重の変化を示すグラフである。
【図6】積層ゴムの変形がさらに進んだ状態での水平変位と部材長の比率の計算結果を示すグラフである。
【図7】積層ゴム中央部分のたわみ角による限界水平変位の考え方の説明図である。
【図8】本発明の積層ゴム支承を住宅建築物に適用する場合を概念的に示した図である。
【図9】本発明を木造家屋の免震構造用積層ゴム支承として適用する場合の具体的な実施形態を示したもので、(a)は平面図、(b)は鉛直断面図である。
【図10】図9の免震構造用積層ゴム支承を、実際の家屋に取り付ける場合の詳細を示す鉛直断面図である。
【図11】本発明の積層ゴム支承を高速道路橋脚などに適用する場合の一実施形態を示す鉛直断面図である。
【図12】座屈荷重の試算に用いたモデルを示す図である。
【図13】図12の各モデルについての試算結果をまとめたグラフである。
【図14】従来の積層ゴム支承における限界水平変位の考え方を示す説明図である。
【図15】積層ゴム支承を大型の構造物に適用する場合と住宅建築に適用する場合の比較と課題に関する説明図である。
【符号の説明】
【0088】
A…住宅建築物、B…大型構造物、C…道路橋脚、
1…積層ゴム支承、2…鋼板、3…ゴム、4…端板、11…基礎コンクリート、12…土台
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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