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明細書 :シート型メタマテリアルおよびシート型レンズ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-157975 (P2017-157975A)
公開日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 シート型メタマテリアルおよびシート型レンズ
国際特許分類 H01Q  15/10        (2006.01)
FI H01Q 15/10
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-038296 (P2016-038296)
出願日 平成28年2月29日(2016.2.29)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 健仁
出願人 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102635、【弁理士】、【氏名又は名称】浅見 保男
【識別番号】100197022、【弁理士】、【氏名又は名称】谷水 浩一
審査請求 未請求
テーマコード 5J020
Fターム 5J020AA02
5J020BA02
5J020BA03
5J020BB01
5J020BB03
要約 【課題】 金属性のカットワイヤーが誘電体基板の両面に装荷された構造とされたテラヘルツ波帯において屈折率がゼロとなるシート型メタマテリアルを提供する。
【解決手段】 フィルム状の誘電体基板12の表面に第1ワイヤーアレー10が形成され、誘電体基板12の裏面に第2ワイヤーアレー11が形成されている。第1ワイヤーアレー10は、間隔gを空けてy軸方向に、間隔sを空けてx軸方向に並べられて配列された長さlの細長い金属製の第1カットワイヤー10aにより構成され、第2ワイヤーアレー11は、第1カットワイヤー10aと重なるように同形状で対称配置されて形成された第2カットワイヤー11aにより構成されている。誘設計周波数を0.51THzとした時に、誘電体基板の厚さdが約50μm、間隔sを約361μm、間隔gを約106μm、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlを使用周波数においてほぼ共振する長さとする。これにより、屈折率がゼロとなるシート型メタマテリアルが得られる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
フィルム状の誘電体基板と、
該誘電体基板の一面に形成された第1ワイヤーアレーと、
前記誘電体基板の他面に形成された第2ワイヤーアレーとを備え、
前記第1ワイヤーアレーは、間隔gを空けて前記誘電体基板のy軸方向に、間隔sを空けてy軸と直交するx軸方向に並べられて配列された所定長lの細長い金属製の第1カットワイヤーにより構成され、前記第2ワイヤーアレーは、前記第1カットワイヤーと同形状で前記第1カットワイヤーに重なるように対称配置されて配列された金属製の第2カットワイヤーにより構成されており、
設計周波数を0.51THzとした時に、前記誘電体基板の厚さdを約50μm、前記間隔sを約361μm、前記間隔gを約106μm、前記第1カットワイヤーおよび前記第2カットワイヤーの長さlを使用周波数においてほぼ共振する長さとすることを特徴とするシート型メタマテリアル。
【請求項2】
多数の単位セルが整列してフィルム状の誘電体基板に形成されているシート型レンズであって、
前記単位セルは、該誘電体基板の一面に形成された所定長lの細長い金属製の第1カットワイヤーと、前記第1カットワイヤーと同形状で前記誘電体基板の他面に形成された金属製の第2カットワイヤーとにより構成され、
前記誘電体基板の一面には、前記単位セルの前記第1カットワイヤーがy軸方向に間隔gを空けると共に、y軸方向に直交するx軸方向に間隔sを空けて配列され、
前記誘電体基板の他面には、前記単位セルの前記第2カットワイヤーがy軸方向に間隔gを空けると共に、y軸方向に直交するx軸方向に間隔sを空けて配列され、
前記第1カットワイヤーおよび前記第2カットワイヤーの長軸がy軸方向にほぼ平行に配列されており、前記誘電体基板の領域が、中央部から外縁までのn領域に分割され、最も内側の第1領域R1の屈折率が正、最も外側の第n領域Rnの屈折率が負とされ、前記第1領域R1と前記第n領域Rnとの間の所定の領域Rkの屈折率がゼロとされて、前記第1領域R1から前記第n領域Rnに向かうに従って屈折率が次第に小さくされていることを特徴とするシート型レンズ。
【請求項3】
前記第1領域R1ないし前記領域Rkまでの領域においては、前記第1カットワイヤーと前記第2カットワイヤーとが重なるよう対称配置され、前記領域Rkの次の領域R(k+1)から前記第n領域Rnまでの領域においては、前記第1カットワイヤーと前記第2カットワイヤーとがy軸方向にずらせて重なるよう非対称配置されていることを特徴とする請求項2に記載のシート型レンズ。
【請求項4】
所定の屈折率を得るために、前記第1カットワイヤーおよび前記第2カットワイヤーにおける幅w、前記所定長l、前記間隔s、前記間隔gの寸法が、前記第1領域ないし前記第n領域において、調整されていることを特徴とする請求項2に記載のシート型レンズ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、金属性のカットワイヤーが誘電体基板の両面に装荷されたメタマテリアルとして機能するシート型メタマテリアル、および、シート型メタマテリアルを応用したシート型レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電率・透磁率がともに負の媒質に光が入射すると、負の屈折が起こることがベセラゴにより示され、透磁率および誘電率が負になる人工的な構造が提案された。この透磁率および誘電率が負になる人工的な構造は、原子より十分大きく光波長のスケールより小さい構造物の集合体からなり、メタマテリアルといわれている。負屈折媒質であるメタマテリアルを用いると、平面構造とされた完全レンズを作成することができる。完全レンズでは、回折限界を超えた微細なものまで観察することが可能であり、近接場(エバネッセント波)まで忠実に再現することができる。
【0003】
メタマテリアルは、最近注目されているテラヘルツ波用のレンズに適用することができる。テラヘルツ波は、周波数が0.1~10THz(波長が30μm~3000μm)の電磁波とされており、波長が遠赤外~ミリ波領域とほぼ一致し、「光」と「ミリ波」に挟まれた周波数領域に存在している。このため、テラヘルツ波は、光と同様に高い空間分解能でものを見分ける能力と、ミリ波と同様の物質を透過する能力を併せ持っている。テラヘルツ波帯はこれまで未開拓電磁波であったが、この周波数帯の電磁波の特徴を生かした時間領域分光、イメージング及びトモグラフィーによる材料のキャラクタリゼーションへの応用などが検討されてきている。テラヘルツ波の発生は、物質透過性と直進性を兼ね備えるためX線に替わる安全かつ革新的なイメージングや、数100Gbps級の超高速無線通信を可能とすることができる。
【0004】
特に、テラヘルツイメージングは、X線に代わる安全、安心かつ高精度な可視化技術の1つとして大きな魅力を有している。回折限界を突破した近接場によるテラヘルツナノイメージングや、1.4THzで分解能400nm(1波長/540)が得られることが報告されている。また、共鳴トンネルダイオードを用いた0.3THzでのイメージングも報告されている。メタマテリアルは負の屈折率に設計することができ、エバネッセント成分となる近接場光を離れた場所で復元し、回折限界を超えた平板完全レンズを実現できる可能性がある。
【0005】
本出願人は、特願2015-16116号の出願でテラヘルツ波帯において低損失で負の屈折率が得られるシート型メタマテリアルを提案していると共に、特願2015-154943号の出願でテラヘルツ波帯において低損失で高屈折率が得られるシート型メタマテリアルを提案している。
また、ゼロの屈折率を得られるメタマテリアルが提案されている(非特許文献1参照)。このゼロの屈折率が得られる従来のメタマテリアル100の概念図を図21に示す。図21に示すメタマテリアル100は、金属110と誘電体111とを周期的に積層した周期構造とされている。このメタマテリアルでは、特定の周波数(臨界状態)の場合には、実効屈折率がゼロになる。ゼロ屈折率の物質では、位相の前進はなくなる、つまり光は図示するように空間を進む一連の山と谷、動く波として振る舞わない。代わりにゼロ屈折率の物質は定常相、全てが山か全てが谷となり、無限に長い波長になる。その山と谷は、空間ではなく、時間の変数としてのみ振動する。この均一な位相により、光はエネルギーを失うことなく、伸びたり縮んだり、捻れたり曲がったりする。このため、図示するように光がメタマテリアル100に対して上面から進入した場合、メタマテリアル100中においては位相は変化することなく一定の位相で伝搬していく(位相速度無限大)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】国立研究開発法人 物質・材料研究機構 「光メタマテリアルが屈折率ゼロの特殊な性質を持つことを理論的に解明」[online], [平成28年 2月14日検索],インターネット<http://www.nims.go.jp/news/press/2015/12/201512160.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
屈折率が負のマテリアル中において伝搬するテラヘルツ波の位相は進行方向とは逆に進行し、上記したように屈折率がゼロのマテリアル中において伝搬するテラヘルツ波の位相は一定となり、屈折率が正のマテリアル中において伝搬するテラヘルツ波の位相は進行方向に進行する。これにより、屈折率が負、ゼロ、正のマテリアルを組み合わせることにより、自然界の材料では不可能な拡張された位相制御がテラヘルツ波において可能となる。また、屈折率が負、ゼロ、正のマテリアルを組み合わせることにより、分布屈折率のメタマテリアルレンズを実現することができる。
しかしながら、上記した従来の屈折率がゼロのメタマテリアルは金属110と誘電体111とを周期的に積層した周期構造とされていることから、周期構造内でテラヘルツ波が減衰し易く、良好な透過電力特性を得ることが困難になるという問題点があった。また、上記した従来の屈折率がゼロのメタマテリアルでは、屈折率が負および正に設定されていないことから、分布屈折率のテラヘルツ波帯のレンズを提供できないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、金属性のカットワイヤーが誘電体基板の両面に装荷された構造とされたテラヘルツ波帯において屈折率がゼロとなるシート型メタマテリアルを提供すること、および、金属性のカットワイヤーが誘電体基板の両面に装荷された構造とされたテラヘルツ波帯における分布屈折率のシート型レンズを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のシート型メタマテリアルは、フィルム状の誘電体基板と、該誘電体基板の一面に形成された第1ワイヤーアレーと、前記誘電体基板の他面に形成された第2ワイヤーアレーとを備え、前記第1ワイヤーアレーは、間隔gを空けて前記誘電体基板のy軸方向に、間隔sを空けてy軸と直交するx軸方向に並べられて配列された所定長lの細長い金属製の第1カットワイヤーにより構成され、前記第2ワイヤーアレーは、前記第1カットワイヤーと同形状で前記第1カットワイヤーに重なるように対称配置されて配列された金属製の第2カットワイヤーにより構成されており、設計周波数を0.51THzとした時に、前記誘電体基板の厚さdを約50μm、前記間隔sを約361μm、前記間隔gを約106μm、前記第1カットワイヤーおよび前記第2カットワイヤーの長さlを使用周波数においてほぼ共振する長さとすることを最も主要な特徴としている。
【0010】
また、本発明のシート型レンズは、多数の単位セルが整列してフィルム状の誘電体基板に形成されているシート型レンズであって、前記単位セルは、該誘電体基板の一面に形成された所定長lの細長い金属製の第1カットワイヤーと、前記第1カットワイヤーと同形状で前記誘電体基板の他面に形成された金属製の第2カットワイヤーとにより構成され、前記誘電体基板の一面には、前記単位セルの前記第1カットワイヤーがy軸方向に間隔gを空けると共に、y軸方向に直交するx軸方向に間隔sを空けて配列され、前記誘電体基板の他面には、前記単位セルの前記第2カットワイヤーがy軸方向に間隔gを空けると共に、y軸方向に直交するx軸方向に間隔sを空けて配列され、前記第1カットワイヤーおよび前記第2カットワイヤーの長軸がy軸方向にほぼ平行に配列されており、前記誘電体基板の領域が、中央部から外縁までのn領域に分割され、最も内側の第1領域R1の屈折率が正、最も外側の第n領域Rnの屈折率が負とされ、前記第1領域R1と前記第n領域Rnとの間の所定の領域Rkの屈折率がゼロとされて、前記第1領域R1から前記第n領域Rnに向かうに従って屈折率が次第に小さくされていることを最も主要な特徴としている。
また、本発明のシート型レンズにおいて、前記第1領域R1ないし前記領域Rkまでの領域においては、前記第1カットワイヤーと前記第2カットワイヤーとが重なるよう対称配置され、前記領域Rkの次の領域R(k+1)から前記第n領域Rnまでの領域においては、前記第1カットワイヤーと前記第2カットワイヤーとがy軸方向にずらせて重なるよう非対称配置されている。さらに、本発明のシート型レンズにおいて、所定の屈折率を得るために、前記第1カットワイヤーおよび前記第2カットワイヤーにおける幅w、前記所定長l、前記間隔s、前記間隔gの寸法が、前記第1領域ないし前記第n領域において調整されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属性のカットワイヤーが誘電体基板の両面に装荷された構造とされ、設計周波数を0.51THzとした時に、誘電体基板の厚さdを約50μm、間隔sを約361μm、間隔gを約106μm、第1カットワイヤーおよび第2カットワイヤーの長さlを使用周波数においてほぼ共振する長さとすることにより、テラヘルツ波帯において屈折率がほぼゼロとなるシート型メタマテリアルを得ることができる。また、フィルム状の誘電体基板上に最も内側の第1領域から最外側の第n領域に向かって屈折率が正からゼロ、ゼロから負になるよう単位セルを形成することにより、一枚のフィルム状とされた分布屈折率のテラヘルツ波帯のシート型レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例のシート型メタマテリアルの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例のシート型メタマテリアルの周期境界壁を示した単位セルの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例のシート型メタマテリアルにおける単位セルの寸法の一例を示す図表である。
【図4】本発明の実施例のシート型メタマテリアルにおけるFOMと屈折率の周波数特性を示すグラフである。
【図5】本発明にかかるシート型メタマテリアルにおける透過電力と反射電力の周波数特性を示すグラフである。
【図6】本発明にかかるシート型メタマテリアルにおける比インピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【図7】本発明にかかるシート型メタマテリアルにおける比誘電率の周波数特性を示すグラフである。
【図8】本発明にかかるシート型メタマテリアルにおける比透磁率の周波数特性を示すグラフである。
【図9】本発明にかかるシート型メタマテリアルの単位セルの0.5THzにおける間隔gと長さlのパラメータに対する屈折率の実部の等高線図である。
【図10】本発明にかかるシート型メタマテリアルの単位セルの0.5THzにおける間隔gと長さlのパラメータに対する屈折率の虚部の等高線図である。
【図11】本発明にかかるシート型メタマテリアルの単位セルの0.5THzにおける間隔gと長さlのパラメータに対する透過電力の等高線図である。
【図12】本発明にかかるシート型メタマテリアルの単位セルの0.5THzにおける間隔gと長さlのパラメータに対する反射電力の等高線図である。
【図13】本発明の実施例のシート型レンズの構成を示す斜視図、一部拡大図である。
【図14】本発明の実施例のシート型レンズにおける寸法の一例を示す図表である。
【図15】本本発明の実施例のシート型レンズにおける周期境界壁を示した屈折率が負の単位セルの構成を示す斜視図である。
【図16】本本発明の実施例のシート型レンズにおける屈折率が負の単位セルの構成を示す側面図、単位セルの寸法の一例を示す図表である。
【図17】本発明の実施例のシート型レンズのE面およびH面の電界強度の分布を示す図である。
【図18】本発明の実施例のシート型レンズの光軸上の電界強度を示す図である。
【図19】本発明の実施例のシート型レンズの光軸に直交する面上の電界強度の分布を示す図である。
【図20】本発明の実施例のシート型レンズの光軸に直交する面における光軸から直交する面上の距離に対する電界強度を示す図である。
【図21】従来のゼロの屈折率を得られるメタマテリアルの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例のシート型メタマテリアル1の構成を示す斜視図を図1に、本発明の実施例のシート型メタマテリアル1の1周期分の構成である周期境界壁を示した単位セル13の構成を示す斜視図を図2に示す。
これらの図に示す本発明の実施例にかかるシート型メタマテリアル1は、テラヘルツ波帯において屈折率がほぼゼロのシート型メタマテリアルとして動作する。このシート型メタマテリアル1は、図1および図2に示すようにx-y平面に置かれた柔軟なフィルムからなる矩形の誘電体基板12の表面に細長い矩形の第1カットワイヤー10aが所定間隔でy軸方向およびx軸方向に多数本並べて形成され、裏面に第1カットワイヤー10aと同形状の細長い矩形の第2カットワイヤー11aが第1カットワイヤー10aにそれぞれ重なるよう対称配置されて多数本並べて形成されている。この場合、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aは、長手方向がy軸に平行とされ、互いに平行に縦横に配列されている。

【0014】
y軸方向に細長い矩形状の長さlの第1カットワイヤー10aを、その中心軸が一致するようy軸方向にgの間隔を空けると共に、互いに平行になるようsの間隔を空けてx軸方向に多数本並べて、誘電体基板12の表面に配設されるように形成されている。この第1カットワイヤー10aを、縦横に上記所定間隔g,sで誘電体基板12の表面に複数本形成することにより第1ワイヤーアレー10が構成されている。また、細長い矩形状の長さlの第2カットワイヤー11aを、その中心軸が一致するようy軸方向にgの間隔を空けると共に、互いに平行になるようsの間隔を空けてx軸方向に多数本並べて、第1カットワイヤー10aに重なるよう対称配置されて誘電体基板12の裏面に形成されている。この第2カットワイヤー11aを、縦横に上記所定間隔g,sで誘電体基板12の裏面に複数本形成することにより第2ワイヤーアレー11が構成されている。このように、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長軸はy軸方向にほぼ平行に配列されている。誘電体基板12は、例えばシクロオレフィンポリマーフィルムからなり、その比誘電率は約2.34、tanδは約0.0016の低損失とされる。誘電体基板12は、他の低損失の誘電体フィルムとしても良い。

【0015】
上記した構成の本発明にかかるシート型メタマテリアル1は、図2に示す単位セル13を縦横に所定間隔で多数配列した構造と等価となる。図2に示すように、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの幅はw、長さはlとされる。また、単位セル13における矩形の誘電体基板12の横幅は、幅wに間隔sを加えた寸法とされ、その縦の長さは、長さlに間隔gを加えた寸法とされ、その厚さはdとされる。第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aは、誘電体基板12上に厚さtで形成した金属膜を、エッチング加工すること等により形成されている。

【0016】
この単位セル13はx-y平面に配置され、その周囲が図2に示すように周期境界壁14で囲われており、y軸方向に偏波されたテラヘルツ波帯の入射波Inが入射される。入射波Inにおいて反射された成分は反射波Reとなり、透過した成分は透過波Trとなる。入射波Inは、その電界成分Eがy軸方向となり、その磁界成分Hがx軸方向とされて、進行方向kはz軸方向となる。すると、鎖交する磁界により誘電体基板12の第1カットワイヤー10aと第2カットワイヤー11aとの間に逆方向に電流が流れ磁性体粒子として働くようになる。特に、第1カットワイヤー10aと第2カットワイヤー11aの長さlに基づく共振周波数の近傍では等価透磁率がほぼゼロを呈する周波数帯域が生じるようになる。また、y軸方向の電界Eにより第1カットワイヤー10aと第2カットワイヤー11a上で分極が起こり、誘電体粒子としても働くようになる。特に、第1カットワイヤー10aと第2カットワイヤー11aの長さlに基づく共振周波数の近傍では等価誘電率がほぼゼロを呈する周波数帯域が生じるようになる。
図2に示す単位セル13のように、誘電体基板12の表裏面の第1カットワイヤー10aと第2カットワイヤー11aとが重なっている構造においては、磁性を示す共振の周波数よりも誘電性を示す共振の周波数の方が高いことが知られている。しかしながら、本発明にかかるシート型メタマテリアル1では、後述するように磁性の共振周波数が上がり、誘電性の共振周波数とほぼ同じ共振周波数とすることができる。これは、誘電体基板12を介して互いに対面する第1カットワイヤー10aと第2カットワイヤー11aとの間の容量が増えるため、誘電性の共振周波数が下がることも原因の一つと考えられる。第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aを形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等の良好な導電率を示す金属が用いられる。

【0017】
設計周波数を0.51THzとした時の単位セル13の寸法の一例を図3に示す。図3に示す寸法の例では、単位セル13は、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlが約202.2μm、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aのy軸方向の間隔gが約106μm、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの幅wが約120.2μm、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aのx軸方向の間隔sが約360.7μm、誘電体基板12の厚さdが約50μm、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの厚さtが約0.5μmとされている。なお、本発明にかかるシート型メタマテリアル1においては、誘電体基板12の厚さdを含む寸法が、実用の範囲の寸法とされている。この場合、フレキシブルなシクロオレフィンポリマーフィルムとされた誘電体基板12の比誘電率は約2.34、tanδは約0.0016となっており、誘電体基板12における波長短縮率は約0.654となる。このため、設計周波数の0.51THzの周波数の1波長(λ)は約588.2μmであるが、誘電体基板12上においては約384.7μmに短縮され、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlは約λ/2の共振する長さとされていることが分かる。

【0018】
本発明にかかるシート型メタマテリアル1において、図3に示す寸法とした単位セル13の電気的特性の解析結果および実験結果を図4ないし図9に示す。図4ないし図9では、実験結果を黒丸で解析結果を実線で示している。なお、解析は高周波3次元電磁界シミュレータHFSSにより行い、解析においては第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aは完全導体で構成されているものとしている。図3に示す寸法とした単位セル13の解析では、0.51THzにおける実効屈折率neffとして0.076+j0.022のほぼゼロの屈折率が得られ、この周波数における透過電力として約97.7%の良好な透過電力特性が得られている。また、反射波Reの反射電力は約0.058%の僅かな反射電力となる。

【0019】
図4は、0.45THz~0.55THzの周波数帯域における性能指数FOM(Figure of Merit)および複素屈折率の周波数特性の解析結果および実験結果を示している。図4を参照すると、複素屈折率の実部Re(neff)の解析結果は0.475THzにおいて約-1.5となり、周波数の上昇に伴い上昇し約0.504THzにおいてほぼゼロとなる。周波数の上昇に伴いさらに上昇して0.55THzにおいて約0.75となる。複素屈折率の実部Re(neff)の実験結果はほぼ解析結果と同様となる。また、複素屈折率の虚部Im(neff)の解析結果は0.45THzにおいて約0.18となり、周波数の上昇に伴い緩やかに下降し約0.55THzにおいてほぼゼロとなる。虚部Im(neff)の実験結果は0.45THzにおいて約1.25となるが、約0.457THzにおいて約0.17に下降し周波数が上昇するにつれ約0.26まで上昇するが、約0.475THz~約0.49THzまでは解析結果とほぼ同様となる。0.5THzを超えると約0.21~約0.25の間のほぼ一定の値となる。

【0020】
図4に示す性能指数FOMの解析結果は、0.45THzにおいて約32となり、周波数の上昇に伴い下降し約0.5THzにおいてゼロを横切り、約0.504THzにおいて最小の約0.5まで小さくなる。その後、周波数が上昇すると上昇して約0.506THzでゼロを横切ってさらに上昇し、0.55THzにおいて約90となる。FOMの実験結果は、約0.49THzまでは解析結果の上下の値を取るが、0.5THzを超えると約0.3から約2.5まで上昇する解析結果より小さな値となる。
設計周波数0.51THzにおいて、解析結果では、実効屈折率neffが約0.076+j0.022でFOMが約3.42得られており、実験結果では、実効屈折率neffが約0.11+j0.26でFOMが約0.42得られている。このように、図3に示す寸法とすることにより、設計周波数0.51THzにおいてほぼゼロの屈折率を呈するシート型メタマテリアル1とすることができる。

【0021】
図5は、0.45THz~0.55THzの周波数帯域における透過電力Trと反射電力Reの周波数特性の解析結果および実験結果を示している。図5を参照すると、透過電力の解析結果では0.45THzにおいて約75%となり、周波数の上昇に伴い下降して約0.46THzにおいて約60%まで低下するが、その後に上昇し約0.506THzにおいて最大の約97.7%まで上昇する。その後、周波数が上昇すると緩やかに下降して0.55THzにおいてほぼ88%となる。実験結果では、約0.49THzまでは解析結果を超え約0.506THzにおいて最大の約99%の透過電力が得られており、0.5THzを超える周波数においては解析結果にほぼ一致しているが、高域においては低下しており、0.55THzにおいて約78%となる。
また、図5を参照すると、反射電力の解析結果では0.45THzにおいて約8%となり、周波数の上昇に伴い上昇して約0.46THzにおいて約31%まで上昇するが、その後に下降し約0.506THzにおいて最小の約0%まで下降する。その後、周波数が上昇すると緩やかに上昇して0.55THzにおいて約13%となる。実験結果では、0.45THzにおいて約25%となり、周波数の上昇に伴い下降して約0.48THzにおいて約0%まで低下する。0.5THzを超えると緩やかに上昇して0.55THzにおいて約22%となる。
設計周波数0.51THzにおいて、解析結果では、約97.7%の透過電力と約6.7%の反射電力が得られており、実験結果では、約100.5%の透過電力と約0.058%の反射電力が得られている。このように、図3に示す寸法とすることにより、設計周波数0.51THzにおいてほぼゼロの屈折率を呈すると共に良好な透過電力特性のシート型メタマテリアル1とすることができる。

【0022】
図6は、単位セル13の0.45THz~0.55THzの周波数帯域における複素比インピーダンスZrの周波数特性の解析結果および実験結果を示している。図6を参照すると、複素比インピーダンスZrの実部Re(Zr)の解析結果では、約0.45THzにおいて約0.51となり、周波数の上昇に伴い僅かに下降し約0.475THzにおいて約0.5となり約0.49THzまで維持される。0.5THzを超えると急激に上昇していき約0.505THzにおいて最大の約0.9となり、その後急激に下降して0.513THzにおいて約0.5になり0.55THzまで約0.5となる。実験結果では、約0.46THzにおいて約0.95となり、周波数の上昇に伴い僅かに下降し0.48THzにおいて約0.61となる。0.5THzを超えると約0.07から上昇して約0.531THzにおいて約0.39となり、0.55THzまで維持される。
また、図6を参照すると複素比インピーダンスZrの虚部Im(Zr)の解析結果では、約0.45THzにおいて約-0.04となり、周波数の上昇に伴い僅かに上昇し約0.475THzにおいてほぼゼロとなり約0.49THzまで維持される。0.5THzを超えると急激に下降して約0.504THzにおいて約-0.28となり、その後急激に上昇して0.503THzにおいて約0.04となり、周波数の上昇に伴い僅かに下降し0.513THzにおいてほぼゼロとなって、約0.55THzまで維持される。虚部Im(Zr)の実験結果では、約0.46THzにおいて約0.36となり、周波数の上昇に伴い緩やかに下降し0.48THzにおいて約0.17となる。0.5THzを超えると約0.52から下降して約0.525THzにおいて約0.24となり、0.55THzでは約0.21となる。
設計周波数0.51THzにおいて、解析結果では、0.58+j0.055の比インピーダンスZrが得られており、実験結果では、0.072+j0.51の比インピーダンスZrが得られている。

【0023】
図7は、単位セル13の0.45THz~0.55THzの周波数帯域における比誘電率εrの周波数特性の解析結果および実験結果を示している。図7を参照すると、比誘電率εrの実部Re(εr)の解析結果では、約0.47THzにおいて約-4となり、周波数の上昇に伴い上昇していき約0.49THzにおいて約-1.34となる。0.5THzを超えても上昇していき約0.506THzにおいてほぼゼロとなり、0.55THzにおいて約1.46となる。実験結果では、約0.46THzにおいて約-3.6となり、周波数の上昇に伴い上昇し0.48THzにおいて約-1.47となる。0.5THzを超えると約0.4から上昇して0.55THzにおいて約1.7となる。この実験結果は解析結果にほぼ一致している。
また、図7を参照すると比誘電率εrの虚部Im(εr)の解析結果では、約0.45THzにおいて約-0.3となり、周波数の上昇に伴い僅かに上昇し約0.46THzにおいてほぼゼロとなり約0.55THzまでほぼゼロが維持される。虚部Im(εr)の実験結果では、0.46THzにおいて約1.6となり、周波数の上昇に伴い下降し0.48THzにおいて約0.1となる。0.5THzを超えると約-0.15から若干下降して約0.55THzにおいて約-0.25となる。
設計周波数0.51THzにおいて、解析結果では、0.13-j0.026の比誘電率εrが得られており、実験結果では、0.53-j0.141の比誘電率εrが得られている。

【0024】
図8は、単位セル13の0.45THz~0.55THzの周波数帯域における比透磁率μrの周波数特性の解析結果および実験結果を示している。図8を参照すると、比透磁率μrの実部Re(μr)の解析結果では、0.45THzにおいて約-3となり、周波数の上昇に伴い上昇していき約0.5THzにおいてほぼゼロとなる。0.5THzを超えると若干上昇していき0.55THzにおいて約0.34となる。実験結果では、約0.46THzにおいて約-4となり、周波数の上昇に伴い上昇し約0.5THzにおいてほぼゼロとなる。0.5THzを超えると若干上昇して0.55THzにおいて約0.27となる。
また、図8を参照すると比透磁率μrの虚部Im(μr)の解析結果では、約0.45THzにおいて約0.27となり、周波数の上昇に伴い僅かに下降し約0.49THzにおいてほぼゼロとなり約0.55THzまで維持される。虚部Im(μr)の実験結果では、0.456THzにおいて約-4となり、周波数の上昇に伴い上昇し0.48THzにおいて約-0.1となる。0.5THzを超えると約0.1から若干上昇して約0.55THzにおいて約0.27となる。
設計周波数0.51THzにおいて、解析結果では、0.043+j0.017の比透磁率μrが得られており、実験結果では、-0.13+j0.075の比透磁率μrが得られている。
屈折率nは、√εr・μrで表され、上記したように単位セル13の比誘電率εrおよび比透磁率μrが小数点以下の小さな値となることから、設計周波数0.51THzにおいてシート型メタマテリアル1の屈折率がほぼゼロになることが分かる。

【0025】
本発明にかかるシート型メタマテリアル1において、図3に示す寸法とした単位セル13の電気的特性の解析結果を図9ないし図12に示す。なお、解析は高周波3次元電磁界シミュレータHFSSにより行い、解析においては第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aは完全導体で構成されているものとしている。
図9は、図3に示す寸法とした単位セル13において、第1カットワイヤー10aおよ第2カットワイヤー11aのy軸方向の間隔gを100μm~150μmとし、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlを190μm~225μmの範囲とした時の0.50THzの周波数における実効屈折率neffの実部Re(neff)の等高線図である。図9を参照すると、長さlを190μmから約225μmまで長くしていくに従い屈折率が-1から0.5まで上昇する傾向を示している。長さlを約205μm、間隔gを約105μmとした時に、実効屈折率neffの実部Re(neff)はほぼゼロに近い約0.0008のほぼゼロとみなせるごく小さな屈折率が得られる。
図10は、図3に示す寸法とした単位セル13において、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aのy軸方向の間隔gを100μm~150μmとし、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlを190μm~225μmの範囲とした時の0.50THzの周波数における実効屈折率neffの虚部Im(neff)の等高線図である。図10を参照すると、長さlを200μm~約225μmの範囲において間隔gを100μmから150μmまで長くしていくに従い実効屈折率neffの虚部Im(neff)が約0.1から約1まで上昇する傾向を示している。長さlを約205μm、間隔gを約105μmとした時に、実効屈折率neffの虚部Im(neff)はほぼゼロに近い約0.06のごく小さな屈折率が得られる。

【0026】
図11は、図3に示す寸法とした単位セル13において、第1カットワイヤー10aおよ第2カットワイヤー11aのy軸方向の間隔gを100μm~150μmとし、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlを190μm~225μmの範囲とした時の0.50THzの周波数における透過電力の等高線図である。図11を参照すると、長さlを195μm~約225μmの範囲において間隔gを150μmから100μmまで短くしていくに従い約93%以上の透過電力が得られることがわかる。長さlを約205μm、間隔gを約105μmとした時に、約97.6%の良好な透過電力が得られる。
図12は、図3に示す寸法とした単位セル13において、第1カットワイヤー10aおよ第2カットワイヤー11aのy軸方向の間隔gを100μm~150μmとし、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlを190μm~225μmの範囲とした時の0.50THzの周波数における反射電力の等高線図である。図12を参照すると、間隔gが約137μm~150μmの範囲を除く長さlの全範囲において約1%以下の良好な反射電力が得られることがわかる。長さlを約205μm、間隔gを約105μmとした時に、約0.08%の良好な反射電力が得られる。
図9~図12に示すように、図3に示す寸法とすることにより、周波数0.50THzにおいてほぼゼロの屈折率を呈すると共に良好な透過電力特性のシート型メタマテリアル1とすることができる。

【0027】
次に、本発明にかかるシート型メタマテリアルを応用した本発明の実施例のシート型レンズ2の構成を示す斜視図を図13に、本発明のシート型レンズ2における寸法の一例を示す図表を図14に示す。
図13に示す本発明のシート型レンズ2は、x-y平面に置かれた柔軟なフィルムからなる矩形の誘電体基板22に半径rとされた円形を近似する多角形(以下、「ほぼ円形」という)とされたシート型メタマテリアル21が形成されて構成されている。このシート型メタマテリアル21は、ほぼ円形を同心の複数の領域に分割されて、中央部のほぼ円形の領域R1、これを囲むほぼ円形のリング状の複数の領域R2~Rnまでのn領域に分割されている。この領域のピッチ(領域の半径方向の高さ)は一部拡大図で示すようにpとされる。そして、中央の領域R1に最も大きい正の屈折率が設定され、各領域R1~Rnの屈折率は中央から外側に向かって次第に小さくなるよう設定されて、中途のk番目の領域Rk(1<k<n)の屈折率がゼロに設定される。k番目の領域Rkの外側の領域R(k+1)~Rnまでの領域の屈折率は次第に小さくなる負の屈折率に設定される。このように、本発明にかかるシート型レンズ2は、分布屈折率のシート型レンズ2とされる。

【0028】
設計周波数を1THz、焦点距離を5.0mmとした時の本発明にかかる分布屈折率のシート型レンズ2の寸法および屈折率の一例が図14に示されており、図14を参照するとシート型レンズ2の半径rが約2.41mm、各領域R1~Rnのピッチpが約20μmとされて領域数が121とされている。そして、中央の領域R1の屈折率n1が約5.00、81番目の領域R81の屈折率n81がほぼ0、最外側の領域R121の屈折率n121が約-5.92に設定されている。この場合は、領域数が121とされているが、本発明にかかるシート型レンズ2は、この領域数に限るものではない。
領域R1はほぼ円形とされ領域R2~~Rnはほぼ円形のリング状の形状とされており、各領域R1~Rnに単位セルが領域の円周方向および半径方向に多数並べられて形成されており、単位セルの屈折率がその領域に必要な屈折率に設定されている。この場合、単位セルは領域の接線方向および半径方向に所定間隔で並んで互いに平行になるよう形成されている。領域内に形成される単位セルの構造は、屈折率が正ないしゼロの領域R1~Rkと、屈折率が負の領域R(k+1)~Rnとで異なっており、屈折率が正ないしゼロの領域R1~Rkに形成される単位セルの構造は図2に示す単位セル13の構成とされ、屈折率が負の領域R(k+1)~Rnに形成される単位セルの構造は図15,図16(a)に示す単位セル33の構成とされる。

【0029】
領域R1~Rkに形成される単位セル13においては、使用周波数を0.3THz~0.5THzとした時に、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの幅wを約46μm~約50μm、間隔sを約160μm~約162μm、厚さdを約50μm、長さlを使用周波数においてほぼ共振する長さとすると、5以上の屈折率を得ることができる。この時、誘電体基板22の厚さdを約23μmとし他の寸法はそのままとすると、約8以上の屈折率を得ることができ、厚さdを薄くすることにより高い屈折率を得ることができる。また、使用周波数を0.6THz~0.9THzとした時に、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの幅wを約46μm、間隔sを約162μm、厚さdを約50μm、長さlを使用周波数においてほぼ共振する長さととすると、3以上の屈折率を得ることができる。この時、厚さdを約23μmとし他の寸法をそのままとすると、約6以上の屈折率を得ることができ、厚さdを薄くすることにより高い屈折率を得ることができる。
さらに、領域R1~Rkの単位セル13において、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さlを約205±10μm、幅wを約120μm、間隔gを100~150μm、間隔sを約360μmとすることにより、ほぼゼロの屈折率を得ることができる。
このように、領域R1~Rkに形成される単位セル13においては、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11aの長さl、幅wの寸法および間隔g,sの寸法を設計周波数および得ようとする屈折率に応じて調整することにより、その領域に必要な屈折率、例えば0~5.00の屈折率を得ることができる。

【0030】
図15,図16(a)に示す単位セル33の構成は、屈折率が負に設定される領域R(k+1)~Rnに形成される単位セルの構造とされる。
これらの図に示す単位セル33は、x-y平面に置かれた誘電体基板22の表面に細長い矩形の第1カットワイヤー31がy方向に形成され、裏面に細長い矩形の第2カットワイヤー32が、第1カットワイヤー31にy軸方向に約1/2だけずらせて重なるよう非対称配置されて形成されている。この場合、第1カットワイヤー31および第2カットワイヤー32はy軸(長軸)方向に間隔gを空けると共に、互いに平行になるようx軸(短軸)方向に間隔sを空けて形成されている。これにより、単位セル33が領域R(k+1)~Rnの円周方向および半径方向に多数並べられて平行に形成された際に、第1カットワイヤー31の長軸方向の間隔がgとされると共に、短軸方向の間隔がsとされる。誘電体基板22は、例えばシクロオレフィンポリマーフィルムとされ、その比誘電率は約2.34、tanδは約0.0016の低損失とされる。誘電体基板22は、他の低損失の誘電体フィルムとしても良い。第1カットワイヤー31および第2カットワイヤー32は、誘電体基板22上に厚さtで形成した金属膜をエッチング加工したり、金属インクを印刷等することにより形成されている。

【0031】
この単位セル33をx-y平面に配置して、その周囲が図15に示すように周期境界壁35で囲われており、y方向に偏波されたテラヘルツ波帯の入射波Inが入射される。入射波Inは、その電界成分Eがy方向となり、その磁界成分Hがx方向となって、進行方向kはz方向となる。すると、鎖交する磁界により誘電体基板22の第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32との間に逆方向に電流が流れ磁性体粒子として働くようになる。特に、第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32の長さlに基づく共振周波数以上では等価透磁率が負を呈する周波数帯域が生じるようになる。また、y方向の電界Eにより第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32上で分極が起こり、誘電体粒子としても働くようになる。特に、第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32の長さlに基づく共振周波数以上では等価誘電率が負を呈する周波数帯域が生じるようになる。この場合、図15に示す単位セル33では、第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32とが長さlの約1/2だけずらされて重なりが短くされていることから、磁性の共振周波数が上がるようになる。また、上下方向に配置された第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32間の容量だけでなく、誘電体基板12を介して互いに対面する第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32との間の容量が増えるため、誘電性の共振周波数が下がるようになる。これによって、誘電性の共振周波数よりも磁性の共振周波数が高くなり、誘電率が負となる帯域内で磁性の共振が起こるようになる。このため、単位セル33においては、誘電率および透磁率が共に負となる所定範囲の周波数領域が得られ、この周波数領域において負の屈折率を得ることができるようになる。第1カットワイヤー31および第2カットワイヤー32を形成する金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等を用いることができる。

【0032】
領域R(k+1)~Rnの単位セル33においては、誘電体基板22の厚さdが約50μm、間隔sが約178μm、間隔gが約10μm~約100μm、第1カットワイヤー31と第2カットワイヤー32の長さlが約90μm~約360μm、幅wが約32μmとされて、約0.3THz~約0.9THzにおいて負の屈折率を得ることができる。
このように、領域R(k+1)~Rnの単位セル33においては、第1カットワイヤー31および第2カットワイヤー32の長さl、幅wの寸法および間隔g,sの寸法を設計周波数および得ようとする屈折率に応じて調整することにより、その領域に必要な屈折率、例えば0~-5.92の負の屈折率を得ることができる。なお、単位セル13においては、第1カットワイヤー10aおよび第2カットワイヤー11a長さlを約195μm~約205μm、間隔gを約100μm~約120μmとすることにより0~-0.6程度の負の屈折率を得ることができることから、領域領域R(k+1)から所定数の領域においては、単位セル13を用いるようにしても良い。

【0033】
図14に示す寸法、領域数、屈折率とし、本発明にかかるシート型レンズ2に周波数が1THzのテラヘルツ波を入射した時の、E面(E-plane)およびH面(H-plane)における電界強度の分布を図17(a)(b)に示す。
図17(a)のE面(E-plane)の電界強度の分布を参照すると、シート型レンズ2(lens)からの光軸(z軸)上の位置(Position)が横軸とされ、シート型レンズ2からの位置が約4.54mm付近のE面の位置の電界強度が最大とされていることが分かる。また、図17(b)のH面(H-plane)の電界強度の分布を参照すると、シート型レンズ2(lens)からの光軸上の位置(Position)が横軸とされ、シート型レンズ2からの位置が約4.54mmのH面の位置の電界強度が最大とされていることが分かる。

【0034】
図14に示す寸法、領域数、屈折率とし、本発明にかかるシート型レンズ2に周波数が1THzのテラヘルツ波を入射した時の、本発明のシート型レンズ2の光軸(z-axis)上の電界強度を図18に示す。
図18を参照すると、シート型レンズ2(lens)からの光軸(z-axis)上の距離が横軸とされ、縦軸が電界強度とされている。シート型レンズ2からの距離が約2.6mmを超えると電界強度が急激に上昇し、約4.5mmの位置で電界強度が最大(約11[V/m])となる。距離が約4.5mmを超えると、距離に応じて電界強度が低下していくことが分かる。距離が10mmの位置では約0.9[V/m]の電界強度となる。

【0035】
図14に示す寸法、領域数、屈折率とし、本発明にかかるシート型レンズ2に周波数が1THzのテラヘルツ波を入射した時の、本発明のシート型レンズ2の光軸(z軸)を中心とする面における電界強度の分布を図19に、本発明のシート型レンズ2の光軸を中心とする面における中心からの距離に対する電界強度を図20に示す。
図19にはシート型レンズ2(lens)からの光軸(z軸)上の位置が4.54mmとされた位置において光軸を中心とする面における電界強度の分布が示されており、図19を参照すると、縦軸の垂直位置が中心位置である0mmの位置、横軸の水平位置が中心位置である0mmの位置の電界強度が最大とされていることが分かる。
また、図20には、シート型レンズ2(lens)からの光軸(z軸)上の位置が4.54mmとされた位置において光軸を中心とする面におけるE面(E-plane)およびH面(H-plane)の電界強度の分布が示されている。図20を参照すると、実線で示すE面(E-plane)の電界強度は、位置(Position)が中心位置である0mmの位置に置いて最大(約11[V/m])となり、0mmの位置から離れるにつれて電界強度は急激に低下していき、約±0.6mmの位置で約1.4[V/m]まで低下し、約±0.8mmを超える位置で1[V/m]以下に低下する。また、破線で示すH面(H-plane)の電界強度は、位置(Position)が中心位置である0mmの位置に置いて最大(約11[V/m])となり、0mmの位置から離れるにつれて電界強度は急激に低下していき、約±0.6mmの位置で約0.9[V/m]の電界強度まで低下して上下に振動を繰り返し、約±0.8mmを超える位置で1[V/m]以下の電界強度に低下する。
以上説明した本発明のシート型レンズ2では、シート型レンズ2(lens)からの光軸(z軸)上の約4.54mmの位置が焦点となり、テラヘルツ波帯において良好に機能するレンズになることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明した本発明のシート型メタマテリアルおよびシート型レンズでは、誘電体基板は低損失であれば良くシクロオレフィンポリマーフィルムに限られるものではない。誘電体基板の比誘電率が変わると、誘電体基板における波長短縮率が変わるため、第1カットワイヤーおよび第2カットワイヤーの長さlは波長短縮率に応じた長さとする。なお、誘電体基板としてシクロオレフィンポリマーフィルムを使用した場合は、比誘電率が約2.34であることから、その波長短縮率は約0.654となる。また、第1カットワイヤーおよび第2カットワイヤーを形成する金属材は、金、銀、銅、アルミニウムに限られるものではないが、抵抗損の少ない金属材が好適とされる。
本発明のシート型メタマテリアルは、所定長lの細長い金属製の第1カットワイヤーを、厚さdの誘電体基板の表面においてy軸方向に、間隔sを空けてy軸と直交するx軸方向に並べて配列し、第1カットワイヤーと同形状の第2カットワイヤーを、誘電体基板の裏面において、第1カットワイヤーに重なるように配列して対称配置されて構成されている。
また、本発明のシート型レンズは、一枚の薄い誘電体基板上にシート型メタマテリアルを形成することにより構成されており、シート型メタマテリアルは同心のほぼ円形とされた複数の領域に分割されて、中央部のほぼ円形の領域、これを囲むほぼ円形のリング状の複数の領域から構成されている。そして、中央部の領域の屈折率は正の大きな屈折率とされ、外側の領域に向かって次第に屈折率が低くされ、中途の領域においては屈折率がほぼゼロとされる。さらに、屈折率がほぼゼロの領域の外側の領域の屈折率は、次第に小さくなる負の屈折率とされる。これにより、一枚の薄い誘電体基板で、テラヘルツ波帯において良好に機能する分布屈折率のシート型レンズとすることができる。また、本発明のシート型レンズにおいては、領域数を121として、81番目の領域の屈折率をゼロとしたが、これに限ることはなく領域数はレンズとして機能する任意の数とすることができ、また、屈折率ゼロの領域は中央の領域から最外側までの領域の中の任意の領域とすることができる。さらに、本発明のシート型レンズにおいては、誘電体基板を矩形として、誘電体基板に形成されるシート型メタマテリアルを円形としたが、誘電体基板を円形あるいは多角形としてもよく、シート型メタマテリアルも円形や矩形としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 シート型メタマテリアル
2 シート型レンズ
10 第1ワイヤーアレー
10a 第1カットワイヤー
11 第2ワイヤーアレー
11a 第2カットワイヤー
12 誘電体基板
13 単位セル
14 周期境界壁
21 シート型メタマテリアル
22 誘電体基板
31 第1カットワイヤー
32 第2カットワイヤー
33 単位セル
35 周期境界壁
100 メタマテリアル
110 金属
111 誘電体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
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【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19
【図21】
20