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明細書 :トレーニングに好適なランニング強度の推定方法、およびランニング支援装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年6月29日(2017.6.29)
発明の名称または考案の名称 トレーニングに好適なランニング強度の推定方法、およびランニング支援装置
国際特許分類 A63B  71/06        (2006.01)
A63B  69/00        (2006.01)
A61B   5/0245      (2006.01)
FI A63B 71/06 J
A63B 69/00 C
A61B 5/02 710P
国際予備審査の請求
全頁数 27
出願番号 特願2016-547403 (P2016-547403)
国際出願番号 PCT/JP2015/074990
国際公開番号 WO2016/039241
国際出願日 平成27年9月2日(2015.9.2)
国際公開日 平成28年3月17日(2016.3.17)
優先権出願番号 2014183859
優先日 平成26年9月10日(2014.9.10)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】石井 好二郎
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C017
Fターム 4C017AA02
4C017AB02
4C017BB13
4C017BC11
4C017BC23
4C017EE15
要約 本発明は、採血を行うことなくトレーニングに好適なランニング強度を推定する推定方法、および採血を行うことなくトレーニングに好適なランニング強度でのランニングを支援するランニング支援装置を提供することを課題とする。
本発明に係る推定方法は、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行って測定したストライドおよび心拍数に基づいて、心拍数が最大心拍数となるときのストライドである第2最大ストライドを求め、この第2最大ストライドと予め定められた割合(一例として、第1準備ステップS1A~第5準備ステップS5Aで求めた割合)との積を乳酸性作業閾値でランニングを行った場合のストライドである推定LTストライドと推定する(第1推定ステップS1B~第4推定ステップS4B)。
特許請求の範囲 【請求項1】
ランナーの年齢の入力を受け付ける入力部と、
前記ランナーのランニング中の位置を測定する位置測定部と、
前記位置測定部によって測定された前記位置の変化に基づいて前記ランナーのストライドを求めるストライド算出部と、
前記ランナーのランニング中または直後の心拍数を測定する心拍数測定部と、
前記入力部から入力された前記年齢と、年齢と最大心拍数との関係を示す関係式と、前記ストライド算出部によって求められた前記ストライドと、前記心拍数測定部によって測定された前記心拍数と、予め定められた割合とを格納した記憶部と、
前記記憶部を参照しながら、前記ランナーの現在のストライドと前記ランナーが乳酸性作業閾値でランニングを行った場合のストライドであるLTストライドとの一致の程度を求める演算部と、
前記演算部によって求められた前記一致の程度を前記ランナーに通知する通知部と、
を備え、
前記演算部は、前記ランナーが事前準備として互いに異なるランニング速度で複数回のランニングを行ったときの前記ストライドおよび前記心拍数から回帰線を作成するとともに、前記年齢および前記関係式から求めた前記最大心拍数に対応する最大ストライドを前記回帰線に基づいて求めておき、
さらに、前記演算部は、前記ランナーがトレーニングとしてのランニングを行っているときに、事前に求めておいた前記最大ストライドと前記記憶部に格納された前記割合との積により前記LTストライドを推定し、前記LTストライドと前記現在のストライドとをリアルタイムに比較する
ことを特徴とするランニング支援装置。
【請求項2】
前記割合が、以下の第1~第5準備ステップを実行することにより実験的に求められたものであることを特徴とする請求項1に記載のランニング支援装置。
(1)被験者に、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数および乳酸値とを測定する第1準備ステップ。
(2)第1準備ステップで測定した前記心拍数および前記乳酸値に基づいて、前記被験者が前記乳酸性作業閾値でランニングを行った場合の心拍数である実LT心拍数を算出する第2準備ステップ。
(3)第1準備ステップで測定した前記ストライドおよび前記心拍数の関係を示す回帰線を作成する第3準備ステップ。
(4)前記被験者の年齢から求めた被験者最大心拍数に対応したストライドである被験者最大ストライドを第3準備ステップで作成した前記回帰線に基づいて求める第4準備ステップ。
(5)前記実LT心拍数に対応したストライドである被験者LTストライドを第3準備ステップで作成した前記回帰線に基づいて求めるとともに、前記割合を、計算式“前記被験者LTストライド/前記被験者最大ストライド”で求める第5準備ステップ。
【請求項3】
前記記憶部に格納された前記割合が、複数の被験者に対して第1~第5準備ステップを実行することにより求められた複数の割合に基づいて算出された算出値であることを特徴とする請求項2に記載のランニング支援装置。
【請求項4】
前記算出値が、前記複数の割合の全部または一部の平均値であることを特徴とする請求項3に記載のランニング支援装置。
【請求項5】
前記算出値が、75.99%~93.77%の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載のランニング支援装置。
【請求項6】
前記位置測定部が、GPS受信機であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のランニング支援装置。
【請求項7】
前記通知部が、前記一致の程度に応じて、前記ランナーが知覚し得る光、音、振動、またはこれらの2つ以上の組み合わせを変化させる装置であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のランニング支援装置。
【請求項8】
前記ランナーの体に装着可能であることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のランニング支援装置。
【請求項9】
腕時計の形状を有することを特徴とする請求項8に記載のランニング支援装置。
【請求項10】
ランナーに、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数とを測定する第1推定ステップと、
第1推定ステップで測定した前記ストライドおよび前記心拍数の関係を示す回帰線を作成する第2推定ステップと、
前記ランナーの年齢から該ランナーの最大心拍数を求めるとともに、前記最大心拍数に対応したストライドである最大ストライドを前記回帰線に基づいて求める第3推定ステップと、
第3推定ステップで求めた前記最大ストライドと予め定められた割合との積を、前記ランナーが乳酸性作業閾値でランニングを行った場合のストライドである推定LTストライドと推定する第4推定ステップと、
を含む推定ステップを実行することを特徴とする、トレーニングに好適なランニング強度の推定方法。
【請求項11】
前記割合が、以下の第1~第5準備ステップを含む準備ステップを実行することにより実験的に求められたものであることを特徴とする請求項10に記載の推定方法。
(1)被験者に、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数および乳酸値とを測定する第1準備ステップ。
(2)第1準備ステップで測定した前記心拍数および前記乳酸値に基づいて、前記被験者が前記乳酸性作業閾値でランニングを行った場合の心拍数である実LT心拍数を算出する第2準備ステップ。
(3)第1準備ステップで測定した前記ストライドおよび前記心拍数の関係を示す回帰線を作成する第3準備ステップ。
(4)前記被験者の年齢から求めた被験者最大心拍数に対応したストライドである被験者最大ストライドを第3準備ステップで作成した前記回帰線に基づいて求める第4準備ステップ。
(5)前記実LT心拍数に対応したストライドである被験者LTストライドを第3準備ステップで作成した前記回帰線に基づいて求めるとともに、前記割合を、計算式“前記被験者LTストライド/前記被験者最大ストライド”で求める第5準備ステップ。
【請求項12】
前記推定ステップが、
第1推定ステップにおける各ランニングのランニング速度および第1推定ステップで測定した前記ストライドの関係を示す回帰線を作成する第5推定ステップと、
前記推定LTストライドに対応するランニング速度を第5推定ステップで作成した前記回帰線に基づいて求めるとともに、求めたランニング速度を推定LTランニング速度とする第6推定ステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の推定方法。
【請求項13】
第4推定ステップにおいて使用する前記割合が、複数の被験者に対して第1~第5準備ステップを実行することにより求めた複数の割合に基づいて算出された算出値であることを特徴とする請求項11に記載の推定方法。
【請求項14】
前記算出値が、前記複数の割合の全部または一部の平均値であることを特徴とする請求項13に記載の推定方法。
【請求項15】
前記算出値が、75.99%~93.77%の範囲内にあることを特徴とする請求項14に記載の推定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニングに好適なランニング強度の推定方法、およびトレーニングに好適なランニング強度でのランニングを支援するランニング支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、健康志向の高まりとともにランニング愛好者(以下、単に「ランナー」という)が年々増加している。そして、ランナーの中には、本格的にフルマラソンに挑戦する者も多々存在し、日本陸連公認のマラソン大会における完走者の数は、2004年度から2009年度までの間に約2倍になったと言われている。このランニングブームとも呼べる現象は、今後、ますます拡大していくと予想される。
【0003】
ところで、マラソンの記録(パフォーマンス)を向上させるためには、最大酸素摂取量(VO2max)を向上させればよいことが知られており、このためには、乳酸性作業閾値に等しいランニング強度、または乳酸性作業閾値を超えるランニング強度でトレーニングを行うことが効果的であるとされている(例えば、非特許文献1参照)。図18に示すように、ランニング強度を増加させていくと、乳酸の生産に対して酸化が追い付かなくなり、血液中の乳酸濃度(以下、「乳酸値」という)が急激に増加する。この急激な増加が観測されたとき、すなわち、直線C1と直線C2が交わったときのランニング強度を乳酸性作業閾値という。
【0004】
一方で、乳酸性作業閾値を超えるランニング強度でのトレーニングは、心臓に過度の負担をかけることになる。このため、マラソンの記録を向上させるためには、乳酸性作業閾値に等しいランニング強度でトレーニングを行うことが望ましい。乳酸性作業閾値に等しいランニング強度でのトレーニングには、脂質と糖質をバランスよく消費することができるという利点もある。
【0005】
なお、乳酸性作業閾値は、Lactate Thresholdの頭文字をとって「LT」と呼ばれることが多い。以下、本明細書では、乳酸性作業閾値をLTと呼ぶこととする。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】A.Weltman, R.L.Seip, D.Snead, J.Y.Weltman, E.M.Haskvitz, W.S.Evans, J.D.Veldhuis, A.D.Rogol, "Exercise Training at and above the Lactate Threshold in Previously Untrained Women", Int.J.Sports Med. 13 (1992), pp.257-263.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LTを測定するためには採血を行う必要がある。このため、多くのランナーにとって、自分自身が行っているトレーニングのランニング強度とLTとの関係を知ることは非常に困難である。
【0008】
本発明はこのような状況を鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、採血を行うことなくトレーニングに好適なランニング強度を推定する推定方法、および採血を行うことなくトレーニングに好適なランニング強度でのランニングを支援するランニング支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るランニング支援装置は、
(1)ランナーの年齢の入力を受け付ける入力部と、(2)ランナーのランニング中の位置を測定する位置測定部と、(3)位置測定部によって測定された位置の変化に基づいてランナーのストライドを求めるストライド算出部と、(4)ランナーのランニング中または直後の心拍数を測定する心拍数測定部と、(5)入力部から入力された年齢と、年齢と最大心拍数との関係を示す関係式と、ストライド算出部によって求められたストライドと、心拍数測定部によって測定された心拍数と、予め定められた割合とを格納した記憶部と、(6)記憶部を参照しながら、ランナーの現在のストライドとランナーが乳酸性作業閾値でランニングを行った場合のストライドであるLTストライドとの一致の程度を求める演算部と、(7)演算部によって求められた一致の程度をランナーに通知する通知部とを備え、
演算部は、ランナーが事前準備として互いに異なるランニング速度で複数回のランニングを行ったときのストライドおよび心拍数から回帰線(実施例の「第2回帰線」)を作成するとともに、年齢および関係式から求めた最大心拍数(実施例の「第2最大心拍数」)に対応する最大ストライド(実施例の「第2最大ストライド」)を上記回帰線に基づいて求めておき、さらに、演算部は、ランナーがトレーニングとしてのランニングを行っているときに、事前に求めておいた最大ストライドと記憶部に格納された割合との積によりLTストライドを推定し、LTストライドと現在のストライドとをリアルタイムに比較する、ことを特徴とする。
【0010】
上記ランニング支援装置の記憶部に格納された割合は、例えば、以下の第1~第5準備ステップを実行することにより実験的に求められたものとすることができる。
(1A)被験者に、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数および乳酸値とを測定する第1準備ステップ。
(2A)第1準備ステップで測定した心拍数および乳酸値に基づいて、被験者が乳酸性作業閾値でランニングを行った場合の心拍数である実LT心拍数を算出する第2準備ステップ。
(3A)第1準備ステップで測定したストライドおよび心拍数の関係を示す回帰線(実施例の「第1回帰線」)を作成する第3準備ステップ。
(4A)被験者の年齢から求めた被験者最大心拍数(実施例の「第1最大心拍数」)に対応したストライドである被験者最大ストライド(実施例の「第1最大ストライド」)を第3準備ステップで作成した回帰線に基づいて求める第4準備ステップ。
(5A)実LT心拍数に対応したストライドである被験者LTストライド(実施例の「第1LTストライド」)を第3準備ステップで作成した回帰線に基づいて求めるとともに、上記割合を、計算式“被験者LTストライド/被験者最大ストライド”で求める第5準備ステップ。
【0011】
上記ランニング支援装置の記憶部に格納された割合は、複数の被験者に対して第1~第5準備ステップを実行することにより求められた複数の割合に基づいて算出された算出値であることが好ましい。この場合は、複数の割合の全部または一部の平均値を算出値とすることができる。算出値の範囲は、例えば、75.99%~93.77%である。
【0012】
上記ランニング支援装置の位置測定部は、例えば、GPS受信機である。また、上記ランニング支援装置の通知部は、例えば、ランナーの現在のストライドとランナーが乳酸性作業閾値でランニングを行った場合のストライドであるLTストライドとの一致の程度に応じて、ランナーが知覚し得る光、音、振動、またはこれらの2つ以上の組み合わせを変化させる装置である。
【0013】
上記ランニング支援装置は、ランナーの体に装着可能な形状、例えば、腕時計の形状を有していることが好ましい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るトレーニングに好適なランニング強度の推定方法は、
(1B)ランナーに、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数とを測定する第1推定ステップと、(2B)第1推定ステップで測定したストライドおよび心拍数の関係を示す回帰線(実施例の「第2回帰線」)を作成する第2推定ステップと、(3B)ランナーの年齢から該ランナーの最大心拍数(実施例の「第2最大心拍数」)を求めるとともに、この最大心拍数に対応したストライドである最大ストライド(実施例の「第2最大ストライド」)を回帰線に基づいて求める第3推定ステップと、(4B)第3推定ステップで求めた最大ストライドと予め定められた割合との積を、ランナーが乳酸性作業閾値でランニングを行った場合のストライドである推定LTストライドと推定する第4推定ステップとを含む推定ステップを実行する、ことを特徴とする。
【0015】
上記推定方法における割合は、例えば、以下の第1~第5準備ステップを含む準備ステップを実行することにより実験的に求められたものとすることができる。
(1A)被験者に、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数および乳酸値とを測定する第1準備ステップ。
(2A)第1準備ステップで測定した心拍数および乳酸値に基づいて、被験者が乳酸性作業閾値でランニングを行った場合の心拍数である実LT心拍数を算出する第2準備ステップ。
(3A)第1準備ステップで測定したストライドおよび心拍数の関係を示す回帰線(実施例の「第1回帰線」)を作成する第3準備ステップ。
(4A)被験者の年齢から求めた被験者最大心拍数(実施例の「第1最大心拍数」)に対応したストライドである被験者最大ストライド(実施例の「第1最大ストライド」)を第3準備ステップで作成した回帰線に基づいて求める第4準備ステップ。
(5A)実LT心拍数に対応したストライドである被験者LTストライド(実施例の「第1LTストライド」)を第3準備ステップで作成した回帰線に基づいて求めるとともに、上記割合を、計算式“被験者LTストライド/被験者最大ストライド”で求める第5準備ステップ。
【0016】
上記推定方法の推定ステップは、さらに、(5B)第1推定ステップにおける各ランニングのランニング速度および第1推定ステップで測定したストライドの関係を示す回帰線(実施例の「第3回帰線」)を作成する第5推定ステップと、(6B)推定LTストライドに対応するランニング速度を第5推定ステップで作成した回帰線に基づいて求めるとともに、求めたランニング速度を推定LTランニング速度とする第6推定ステップとをさらに含んでいてもよい。
【0017】
上記推定方法の第4推定ステップにおいて使用する割合は、複数の被験者に対して第1~第5準備ステップを実行することにより求めた複数の割合に基づいて算出された算出値であることが好ましい。この場合は、複数の割合の全部または一部の平均値を算出値とすることができる。算出値の範囲は、例えば、75.99%~93.77%である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、採血を行うことなくトレーニングに好適なランニング強度を推定可能な推定方法を提供することができる。また、本発明によれば、採血を行うことなくトレーニングに好適なランニング強度でのランニングを支援可能なランニング支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る推定方法のフロー図である。
【図2】本発明の別の実施例に係る推定方法のフロー図である。
【図3】本発明のさらに別の実施例に係る推定方法のフロー図である。
【図4】本発明に係る推定方法の準備ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた表である。
【図5】本発明に係る推定方法の準備ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた、図4に続く表である。
【図6】本発明に係る推定方法の準備ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた、図5に続く表である。
【図7】本発明に係る推定方法の準備ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた、図6に続く表である。
【図8】本発明に係る推定方法の推定ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた表である。
【図9】本発明に係る推定方法の推定ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた、図8に続く表である。
【図10】本発明に係る推定方法の推定ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた、図9に続く表である。
【図11】本発明に係る推定方法の推定ステップを実行することにより得られた各種データをまとめた、図10に続く表である。
【図12】本発明に係る推定方法で作成した第1回帰線とその使い方を説明するためのグラフ(A)、第2回帰線とその使い方を説明するためのグラフ(B)、および第3回帰線とその使い方を説明するためのグラフ(C)である。
【図13】本発明に係る推定方法の推定精度を示すグラフである。
【図14】比較例に係る推定方法の推定精度を示すグラフである。
【図15】本発明に係る推定方法の推定精度を示すグラフである。
【図16】比較例に係る推定方法の推定精度を示すグラフである。
【図17】本発明の実施例に係るランニング支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【図18】乳酸性作業閾値の定義を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係るトレーニングに好適なランニング強度の推定方法、およびランニング支援装置の実施例について説明する。

【0021】
<好適なランニング強度の推定方法>
図1に、本発明に係る推定方法のフロー図を示す。同図に示すように、本発明の推定方法は、第1準備ステップS1A~第5準備ステップS5Aを含む準備ステップと、第1推定ステップS1B~第4推定ステップS4Bを含む推定ステップとで構成されている。準備ステップは、推定ステップの第4推定ステップS4Bで使用する割合を求めるために実行される。準備ステップを1回実行して割合が求まれば、その後は、採血を必要としない推定ステップを実行するだけでトレーニングに好適なランニング強度、すなわち、LT時のストライドである推定LTストライドを推定することができる。

【0022】
本発明に係る推定方法は、図2に示すように、推定ステップがさらに第5推定ステップS5Bおよび第6推定ステップS6Bを含んでいてもよい。この場合は、最終的に、LT時のランニング速度である推定LTランニング速度を推定することができる。

【0023】
図1および図2は、1人の被験者に対して準備ステップを実行することにより求めた1つの割合を推定ステップで使用する場合のフロー図であるが、本発明に係る推定方法は、図3に示すように、複数の被験者に対して準備ステップを実行して複数の割合を求め、該複数の割合に基づいて算出した1つの割合を推定ステップ(第1推定ステップS1B~第6推定ステップS6B、または第1推定ステップS1B~第4推定ステップS4B)で使用してもよい。以下、図3に示す実施例における各ステップについて詳細に説明する。

【0024】
[準備ステップ]
[第1準備ステップS1A]
第1準備ステップS1Aでは、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを被験者に行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数および乳酸値を測定する。

【0025】
本実施例では、フルマラソンの完走を目標としたランニング愛好者32名(内訳は、男性17名、女性15名。年齢は45.8±9.5歳)に1,000mの漸増走を5ステージ行わせ、300m地点と700m地点のストライドを測定するとともに、各ステージのインターバル中(ランニング直後)に心拍数と乳酸値を測定した。心拍数の測定には、ポラール社製の携帯型心拍数測定装置「ポラールアキュレックスプラス」を使用し、乳酸値の測定には、アークレイ社製の簡易乳酸測定器「ラクテート・プロ」を使用した。

【0026】
また、本実施例では、各被験者の各ステージにおける設定タイムを表1の通りとした。一例として説明すると、フルマラソンの目標タイムが3時間半である被験者については、第1ステージの設定タイムを6分00秒、第2ステージの設定タイムを5分30秒、第3ステージの設定タイムを5分00秒、第4ステージの設定タイムを4分30秒、第5ステージの設定タイムを4分00秒とした。
【表1】
JP2016039241A1_000003t.gif

【0027】
本ステップを実行することにより得られた各被験者のデータを、図4~図7のストライド列、心拍数列および乳酸値列に示す。なお、図4は被験者1~被験者8のデータをまとめた表、図5は被験者9~被験者16のデータをまとめた表、図6は被験者17~被験者24のデータをまとめた表、図7は被験者25~被験者32のデータをまとめた表である。また、各図のストライド列に示したストライドは、300m地点のストライドと700m地点のストライドの平均値である。

【0028】
[第2準備ステップS2A]
第2準備ステップS2Aでは、第1準備ステップS1Aで測定した心拍数および乳酸値に基づいて、LT時の心拍数である実LT心拍数を算出する。

【0029】
本実施例では、アークレイ社製の乳酸管理ソフト「MEQNET LT Manager」を使用して各被験者の実LT心拍数を算出した。本ステップを実行することにより算出された各被験者の実LT心拍数を、図4~図7の実LT心拍数列に示す。なお、本発明では、横軸を心拍数、縦軸を乳酸値とした二次元座標空間上に各ステージの測定点をプロットし、第1~第3ステージの測定点から作成した回帰線と第3~第5ステージの測定点から作成した回帰線との交点における心拍数を実LT心拍数としてもよい。

【0030】
なお、本ステップは、後述する第3準備ステップS3Aまたは第4準備ステップS4Aの後(ただし、第5準備ステップS5Aの前)に実行してもよい。

【0031】
[第3準備ステップS3A]
第3準備ステップS3Aでは、第1準備ステップS1Aで測定したストライドおよび心拍数に基づいて、第1回帰線を作成する。

【0032】
一例として、被験者1の第1回帰線を図12(A)に示す。横軸を心拍数、縦軸をストライドとした二次元座標空間上に被験者1の5つの測定点をプロットして第1回帰線を作成したところ、傾きは0.00714、切片は0.22457となった。第1回帰線の傾きおよび切片は、マイクロソフト社製表計算ソフトのSLOPE関数およびINTERCEPT関数を使って求めてもよい。本ステップを実行することにより作成された各被験者についての第1回帰線の傾きおよび切片を図4~図7に示す。

【0033】
[第4準備ステップS4A]
第4準備ステップS4Aでは、第3準備ステップS3Aで作成した第1回帰線に基づいて、被験者の最大心拍数(以下、「第1最大心拍数」という)に対応したストライドである第1最大ストライドを求める。

【0034】
本実施例では、関係式“最大心拍数=220-年齢”を使って第1最大心拍数を求め、これに対応した第1最大ストライドを第1回帰線に基づいて求めた。図12(A)に示すように、被験者1(45歳)の第1最大心拍数175回/分に対応した第1最大ストライドは、1.4744mとなった。本ステップを実行することにより求められた各被験者の第1最大ストライドを、図4~図7の第1最大ストライド列に示す。

【0035】
[第5準備ステップS5A]
第5準備ステップS5Aでは、第3準備ステップS3Aで作成した第1回帰線に基づいて、第2準備ステップS2Aで求めた実LT心拍数に対応したストライドである第1LTストライドを求める。

【0036】
図12(A)に示すように、被験者1の実LT心拍数135回/分に対応した第1LTストライドは、1.1887mとなった。本ステップを実行することにより求めた各被験者の第1LTストライドを、図4~図7の第1LTストライド列に示す。

【0037】
第5準備ステップS5Aでは、さらに、第1最大ストライドに対する第1LTストライドの割合を求める。

【0038】
前述した通り、被験者1の第1最大ストライドおよび第1LTストライドは、それぞれ、1.4744m、1.1887mなので、第1最大ストライドに対する第1LTストライドの割合は80.62%となる。

【0039】
図1および図2に示した、1人の被験者に対して準備ステップを実行することにより求めた1つの割合を推定ステップで使用する場合は、この80.62%を後述する推定ステップで使用する。一方、本実施例(図3)では、32名の被験者に対して第1準備ステップS1A~第5準備ステップS5Aを実行することにより求めた32個の割合に基づいて最終的な割合を算出し、これを後述する推定ステップで使用する。

【0040】
より詳しくは、本実施例では、図4~図7の割合列に示した各被験者の割合の平均をとることにより、推定ステップで使用する最終的な割合を算出する。図4~図7に示すように、各被験者の割合には少なくないバラツキが存在する。しかしながら、平均をとることにより、あらゆるランナーの好適なランニング強度を精度良く推定するのに好適な割合を算出することができる。

【0041】
本実施例では、各被験者の割合の平均値が84.88%となった。前述の通り、本実施例では、年齢、性別およびマラソンの記録(パフォーマンス)が異なる様々な被験者から得られたデータに基づいて割合を求めた。このため、上記84.88%は、多くのランナーの好適なランニング強度を推定するために使用できる汎用性の高い値であると考えられる。その一方で、被験者を別人とすれば、上記の平均値は変動すると考えられる。この場合、変動の範囲は、各被験者の割合の標準偏差が8.89%であったことから、75.99%~93.77%と予想される。

【0042】
他の好適な算出値としては、例えば中央値がある。平均値や中央値を算出する際は、各被験者の割合の最大値および最小値を除外する等の、ノイズ除去のための公知の手法を用いてもよい。

【0043】
ここまでが、本発明に係る推定方法の準備ステップである。続いて、本発明に係る推定方法の推定ステップについて説明する。

【0044】
[推定ステップ]
[第1推定ステップS1B]
第1推定ステップS1Bでは、トレーニングに好適なランニング強度が知りたいランナーに、互いにランニング速度の異なる複数回のランニングを行わせ、各ランニング中のストライドと各ランニング中または直後の心拍数を測定する。第1準備ステップS1Aとは異なり、本ステップでは乳酸値を測定する必要はない。

【0045】
本実施例では、準備ステップにおける被験者1と同一のランナー1に第1準備ステップS1Aと同様の1,000mの漸増走を5ステージ行わせ、300m地点と700m地点のストライドを測定するとともに、各ステージのインターバル中(ランニング直後)に心拍数を測定した。第1準備ステップS1Aと同様、心拍数の測定には、ポラール社製の携帯型心拍数測定装置「ポラールアキュレックスプラス」を使用した。本ステップを実行することにより得られたランナー1のデータを、図8のストライド列および心拍数列に示す。

【0046】
[第2推定ステップS2B]
第2推定ステップS2Bでは、第1推定ステップS1Bで測定したストライドおよび心拍数に基づいて、第2回帰線を作成する。

【0047】
ランナー1の第2回帰線を図12(B)に示す。横軸を心拍数、縦軸をストライドとした二次元座標空間上にランナー1の5つの測定点をプロットして第2回帰線を作成したところ、傾きは0.00714、切片は0.22457となった。第2回帰線の傾きおよび切片は、マイクロソフト社製表計算ソフトのSLOPE関数およびINTERCEPT関数を使って求めてもよい。本ステップを実行することにより作成されたランナー1についての第2回帰線の傾きおよび切片を図8に示す。

【0048】
[第3推定ステップS3B]
第3推定ステップS3Bでは、第2推定ステップS2Bで作成した第2回帰線に基づいて、ランナーの最大心拍数(以下、「第2最大心拍数」という)に対応したストライドである第2最大ストライドを求める。

【0049】
本実施例では、関係式“最大心拍数=220-年齢”を使って第2最大心拍数を求め、これに対応した第2最大ストライドを第2回帰線に基づいて求めた。図12(B)に示すように、ランナー1(45歳)の第2最大心拍数175回/分に対応した第2最大ストライドは、1.4744mとなった。本ステップを実行することにより求められたランナー1の第2最大ストライドを、図8の第2最大ストライド列に示す。

【0050】
[第4推定ステップS4B]
第4推定ステップS4Bでは、第3推定ステップS3Bで求めた第2最大ストライドと第5準備ステップS5Aで求めた最終的な割合(平均値)の積をLT時のストライドと推定する。以下、このストライドを「推定LTストライド」と呼ぶ。

【0051】
前述の通り、第2最大ストライドは1.4744mである。また、図4~図7の割合列に示した各被験者の割合の平均値は、図8の割合平均値列に示した通り、84.88%である。したがって、本実施例では、1.4744m×0.8488=1.2514mを推定LTストライドと推定する。本ステップを実行することにより求められたランナー1の推定LTストライドを、図8の推定LTストライド列に示す。

【0052】
後述する第5推定ステップS5Bおよび第6推定ステップS6Bを実行しない場合は、本ステップで推定した推定LTストライドがランナー1にとっての好適なランニング強度となる。この場合、ランナー1は、ストライドが推定LTストライドに一致するようにランニングを行うことで、LTに近似した強度でのトレーニングを行うことができる。

【0053】
[第5推定ステップS5B]
第5推定ステップS5Bでは、第1推定ステップS1Bの各ランニングにおけるランニング速度および第1推定ステップS1Bで測定したストライドの関係を示す第3回帰線を作成する。

【0054】
ランナー1の第1~第5ステージの設定タイムは、6分00秒、5分30秒、5分00秒、4分30秒、4分00秒(表1参照)なので、ランナー1の各ステージのランニング速度は、166.7m/分、181.8m/分、200.0m/分、222.2m/分、250.0m/分である。また、ランナー1の各ステージにおけるストライドは、図8のストライド列に示した通りである。

【0055】
横軸をストライド、縦軸をランニング速度とした二次元座標空間上にランナー1の5つの測定点をプロットして第3回帰線を作成したところ、図12(C)に示すように、傾きは194.029、切片は-31.994となった。第3回帰線の傾きおよび切片は、マイクロソフト社製表計算ソフトのSLOPE関数およびINTERCEPT関数を使って求めてもよい。本ステップを実行することにより作成されたランナー1についての第3回帰線の傾きおよび切片を図8に示す。

【0056】
[第6推定ステップS6B]
第6推定ステップS6Bでは、第3回帰線に基づいて求めた、推定LTストライドに対応するランニング速度を推定LTランニング速度とする。

【0057】
図12(C)に示すように、ランナー1の推定LTストライド1.2514mに対応した推定LTランニング速度は、210.82m/分となった。本ステップを実行することにより求めたランナー1の推定LTランニング速度を、図8の推定LT速度列に示す。

【0058】
本実施例では、第6推定ステップS6Bで求めた推定LTランニング速度がランナー1にとっての好適なランニング強度となる。したがって、ランナー1は、ランニング速度が推定LTランニング速度に一致するようにランニングを行うことで、LTに近似した強度でのトレーニングを行うことができる。

【0059】
被験者2~被験者32と同一のランナー2~ランナー32に対して推定ステップを実行することにより得られた推定LTランニング速度を図8~図11の推定LT速度列に示す。なお、図8はランナー1~ランナー8のデータをまとめた表、図9はランナー9~ランナー16のデータをまとめた表、図10はランナー17~ランナー24のデータをまとめた表、図11はランナー25~ランナー32のデータをまとめた表である。また、図8~図11の推定誤差列に示した値は、計算式“推定誤差=(推定LTランニング速度-実LTランニング速度)/実LTランニング速度×100”で求められた推定誤差である。ランナー1~ランナー32(=被験者1~被験者32)の実LTランニング速度は、図4~図7の実LT速度列に記載されている。

【0060】
続いて、本発明に係る推定方法の推定精度を評価した結果について説明する。

【0061】
図13は、横軸をLT時のランニング速度である実LTランニング速度と本発明に係る推定方法で推定した推定LTランニング速度の平均値、縦軸を推定誤差とした二次元座標空間上に、ランナー1~ランナー32の推定結果をプロットしたグラフである。同図に示すように、推定誤差の平均値は-0.6%となり、95%信頼区間は±23.4%となった。これは、本発明に係る推定方法が、95%のランナーに対して-24.0%~+22.8%の精度でLT時のランニング速度を推定可能であることを示している。

【0062】
比較例として、図14に、心拍数が最大心拍数(=220-年齢)の75%、80%、または85%であるときのランニング速度をLTランニング速度と推定した場合のグラフを示す。同図(C)に示すように、85%最大心拍数時のランニング速度を推定LTランニング速度とすると、推定誤差の平均値が-4.7%、95%信頼区間が±21.8%となった。

【0063】
図15は、横軸を本発明に係る推定方法で推定した推定LTランニング速度、縦軸を実LTランニング速度とした二次元座標空間上に、ランナー1~ランナー32の推定結果をプロットしたグラフである。この結果は、推定LTランニング速度と実LTランニング速度の間に有意な相関関係があることを示している。

【0064】
比較例として、図16に、心拍数が最大心拍数(=220-年齢)の75%、80%、または85%であるときのランニング速度をLTランニング速度と推定した場合のグラフを示す。同図(C)に示すように、85%最大心拍数時のランニング速度を推定LTランニング速度とすると、本発明に係る推定方法と同様に、推定LTランニング速度と実LTランニング速度の間に有意な相関関係が認められた。

【0065】
このように、本発明に係る推定方法によれば、実LTランニング速度との間に有意な相関関係があり、かつ、95%のランナーの実LTランニング速度に対して-24.0%~+22.8%の精度を有する推定LTランニング速度を得ることができた。

【0066】
ここで、本発明に係る推定方法による結果は、図14(C)および図16(C)に示した比較例による結果と差異がないようにも思える。しかしながら、最大心拍数には個人差があるため、関係式“最大心拍数=220-年齢”で求められる最大心拍数は、実際の最大心拍数から大きくずれる可能性がある。このため、85%最大心拍数時のランニング速度を推定LTランニング速度とする比較例による推定では、図14(C)および図16(C)のような高い推定精度が得られない可能性がある。一方、本発明に係る推定方法では、割合を求める際に使用する最大心拍数(第1最大心拍数)が実際の最大心拍数から大きくずれたものであったとしても、第4推定ステップS4Bにおいて、第2最大ストライドに第5準備ステップS5Aで求めた割合を掛ける際にずれがキャンセルされる傾向にあるので、最大心拍数のずれの影響をあまり受けない。

【0067】
<ランニング支援装置>
次に、本発明に係るランニング支援装置について説明する。

【0068】
図17に、本発明に係るランニング支援装置10のブロック図を示す。ランニング支援装置10は、腕時計等の、ランニング中のランナー(以下、「使用者」という)の体に装着可能な形状を有している。同図に示すように、ランニング支援装置10は、入力部11、位置測定部12、ストライド算出部13、心拍数測定部14、記憶部15、演算部16および通知部17を備えている。

【0069】
入力部11は、タッチパネルまたは複数の物理ボタンからなる。使用者は、入力部11を介して自分の年齢等の数値を入力することができる。

【0070】
位置測定部12は、例えばGPS衛星からの信号を受信可能なGPS受信機からなる。位置測定部12は、該ランニング支援装置10を装着した使用者の位置に関する信号をリアルタイムに出力する。なお、本明細書における「リアルタイム」は、厳密に同時であることのみを意味するのではなく、後段において支障が生じない程度に時間的にずれていることも含むものとする。

【0071】
ストライド算出部13は、演算機能を有するマイコン等からなる。ストライド算出部13は、位置測定部12から出力された位置に関する信号の変化に基づき、使用者のストライドをリアルタイムに求めるとともに、求めたストライドに関する信号を出力する。

【0072】
心拍数測定部14は、所定期間内における、拍動による動脈の内圧の変化に基づいて心拍数を測定する。心拍数測定部14は、測定した心拍数に関する信号を出力する。

【0073】
記憶部15は、データの書き換えが可能なメモリ装置からなる。記憶部15は、入力部11から入力された使用者の年齢と、ストライド算出部13によって求められた使用者のストライドと、心拍数測定部14によって測定された使用者の心拍数と、年齢と最大心拍数との関係を示す関係式(本実施例では、“最大心拍数=220-年齢”)と、予め定められた割合とを格納する。本実施例では、割合として、複数の被験者に対して準備ステップを実行(図3参照)することにより求めた84.88%が格納されているが、これは単なる一例である。前述の通り、割合は、1人の被験者に対して準備ステップを実行(図1および図2参照)することにより求めたものであってよい。また、割合は、他の手法によって求めたものであってもよい。

【0074】
演算部16は、演算機能を有するマイコン等からなる。演算部16を構成するマイコンは、ストライド算出部13を構成するマイコンと同一であってもよい。演算部16は、セットアップ前のランニング支援装置10を装着した使用者がセットアップ(事前準備)としてのランニングを行っているときと、セットアップ済みのランニング支援装置10を装着した使用者がトレーニングとしてのランニングを行っているときとで、異なった動作をする。

【0075】
具体的には、演算部16は、使用者がセットアップとして互いに異なるランニング速度で複数回のランニングを行うと、記憶部15に格納されたランニング中のストライドおよびランニング中または直後の心拍数から第2回帰線を作成する。そして、演算部16は、記憶部15に格納された使用者の年齢および関係式から該使用者の第2最大心拍数を求め、さらに、第2最大心拍数に対応する第2最大ストライドを第2回帰線に基づいて求める。この動作は、本発明に係る推定方法の第1推定ステップS1B~第3推定ステップS3Bに相当する。求められた第2最大ストライドは、記憶部15に格納される。

【0076】
一方、演算部16は、使用者がトレーニングとしてのランニングを行っているときに、記憶部15に格納された第2最大ストライドと予め定められた割合との積により使用者のLTストライドを推定する(第4推定ステップS4B)。そして、演算部16は、推定により求めたLTストライドと、位置測定部12およびストライド算出部13によって測定された使用者の現在のストライドとをリアルタイムに比較し、両者の一致の程度に関する信号を出力する。

【0077】
通知部17は、使用者が知覚し得る光、音、振動、またはこれらの2つ以上の組み合わせを変化させる装置とからなる。通知部17は、演算部16から出力された信号に応じて光、音、振動、またはこれらの2つ以上の組み合わせをリアルタイムに変化させる。これにより、使用者に、現在のストライドがトレーニングに好適かどうかがリアルタイムに通知される。

【0078】
使用者は、通知部17が発する光等が、現在のストライドがLTストライドよりも短いことを示している場合、ストライドを増加させることによりLTに近似した強度でのランニングを行うことができる。一方、使用者は、通知部17が発する光等が、現在のストライドがLTストライドよりも長いことを示している場合、ストライドを減少させることによりLTに近似した強度でのランニングを行うことができる。

【0079】
以上、本発明に係るトレーニングに好適なランニング強度の推定方法およびランニング支援装置の実施例について説明してきたが、本発明の構成は上記の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変形が可能であることは言うまでもない。

【0080】
例えば、第4準備ステップS4Aおよび第3推定ステップS3Bにおいて使用される最大心拍数に関する関係式、および記憶部15に格納された最大心拍数に関する関係式は、“最大心拍数=206.9-0.67×年齢”等であってもよい。

【0081】
また、第1準備ステップS1Aおよび第1推定ステップS1Bにおけるランニングの回数は、2回以上であればよい。ただし、推定精度の観点から、ランニングの回数は、実施例のように5回以上であることが好ましい。

【0082】
また、ランニング支援装置の形状は、腕時計の形状に限定されず、例えば、ランニングシューズに装着可能な形状や、ランナーの上腕、腰等に装着可能な形状であってもよい。

【0083】
また、ランニング支援装置を構成する個々の要素の具体的構成は、同等の機能を実現し得る他の構成に適宜置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
LTに近似した強度(ストライドまたは速度)でランニングすることは、マラソンレースにおいて優れた記録を出すために極めて有効な手段である。したがって、本発明に係るトレーニングに好適なランニング強度の推定方法およびランニング支援装置は、トレーニングだけでなく、マラソンレースにおいても利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 ランニング支援装置
11 入力部
12 位置測定部
13 ストライド算出部
14 心拍数測定部
15 記憶部
16 演算部
17 通知部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17