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明細書 :マグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-147169 (P2017-147169A)
公開日 平成29年8月24日(2017.8.24)
発明の名称または考案の名称 マグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池
国際特許分類 H01M  10/0568      (2010.01)
H01M  10/0569      (2010.01)
H01M  10/054       (2010.01)
FI H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/054
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-029574 (P2016-029574)
出願日 平成28年2月19日(2016.2.19)
発明者または考案者 【氏名】土井 貴之
【氏名】稲葉 稔
【氏名】杉田 美樹
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5H029
Fターム 5H029AJ02
5H029AJ07
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
要約 【課題】電位窓が広く、優れた充放電特性を実現できるマグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池を提供する。
【解決手段】電解質としてテトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2)を、溶媒として環状エステルを含むことを特徴とするマグネシウム二次電池用電解液、および、前記電解液を含むマグネシウム二次電池。前記環状エステルの例として、炭酸プロピレン、炭酸エチレンおよびγ-ブチロラクトンが挙げられ、特に炭酸プロピレンが好ましい。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
電解質としてテトラフルオロホウ酸マグネシウムを、溶媒として環状エステルを含むことを特徴とする、マグネシウム二次電池用電解液。
【請求項2】
前記環状エステルが、炭酸プロピレン、炭酸エチレンおよびγ-ブチロラクトンからなる群より選択される、請求項1に記載のマグネシウム二次電池用電解液。
【請求項3】
前記環状エステルが炭酸プロピレンである、請求項1に記載のマグネシウム二次電池用電解液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電解液を含むことを特徴とする、マグネシウム二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、携帯電話、タブレット等のモバイル機器や、電気自動車等の電源として、リチウムイオン二次電池が一般に使用されているが、リチウムイオン二次電池は材料費が高く、また、リチウムが非常に高い反応性を示すため、安全性の面で問題が指摘されている。
このためリチウムイオン二次電池に代わる次世代革新型二次電池の開発が求められており、その有力候補としてマグネシウム(Mg)金属を負極に用いるマグネシウム二次電池が注目されている。
【0003】
マグネシウム二次電池は高い理論容量密度を有するため、高エネルギー密度が期待できる。また、マグネシウムは海水や鉱物中に広く存在しており資源的に豊富であるため、リチウムより安価で安定した供給が可能であり、さらにリチウムと比べて安全性が高いという利点を有する。
【0004】
しかしながら、マグネシウム二次電池を実用化するためには克服すべき課題も多い。例えば、マグネシウム二次電池の実用化のためには、マグネシウム金属の溶解・析出反応を可逆的に進行させる(すなわち、充電・放電を安定に行う)ための電解液が必要である。これに関連して、非特許文献1には、負極としてマグネシウム金属、電解液としてグリニャール試薬を含むテトラヒドロフラン溶液、陽極としてMo68を用いたマグネシウム二次電池が報告されているが、非特許文献1に記載されているサイクリックボルタモグラムから、この電解液を用いた場合、特にマグネシウムの溶解反応が遅いことが読み取れる。また、この電解液は2.5V未満(マグネシウム参照極に対する電位)で分解し始めるので、この電解液を用いて2.5V以上の実用電圧を有するマグネシウム二次電池を製造することは不可能である。
【0005】
リチウムイオン二次電池では、電位窓の広い環状エステル系電解液を使用して、約4Vの電圧および約150~200mAh/gの放電容量が実現されているため、マグネシウム二次電池でもリチウムイオン二次電池と同様に、環状エステル系電解液を提案する文献がある(例えば、特許文献1)。しかしながら、マグネシウム二次電池で環状エステル系電解液を使用すると、マグネシウム金属が容易に不動態化されるため、マグネシウム金属負極の充放電反応が全く進行しないことが報告されている。特許文献1にも、環状エステル系電解液を用いた実施例は開示されていない。
【0006】
このような問題、すなわち、マグネシウム金属はその表面にマグネシウムイオンを通さない不動態膜が形成されやすいため、マグネシウム二次電池で使用できる電解液が非常に限られていることは、様々な文献に記載されており(例えば、特許文献2や特許文献4の背景技術欄参照)、現在、マグネシウム金属負極に適合する電解液としては、主にエーテル系電解液が提案されている(特許文献2~4参照)。
しかしながら、エーテル類は耐酸化性が低く電位窓が狭いため、3V以上の二次電池の実現は難しいという問題点があった。また、エーテル系電解液を用いると、大きな過電圧が観察される場合が多いことから、マグネシウム金属はエーテル系電解液中において比較的不動態化されにくいものの、ある程度の不動態化は生じ、スムーズな充放電反応が進行しないと考えられる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2002-025555号公報
【特許文献2】特開2004-259650号公報
【特許文献3】特開2012-182124号公報
【特許文献4】特開2014-186940号公報
【0008】

【非特許文献1】D. Aurbach et al., Nature, Vol. 407, 724-727 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、電位窓が広く、優れた充放電特性を実現できるマグネシウム二次電池用電解液およびそれを用いたマグネシウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、Mg塩(電解質)としてテトラフルオロホウ酸マグネシウムを使用することにより、溶媒として環状エステルを用いても、Mg金属の溶解・析出反応が可逆的に進行することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、マグネシウム二次電池用電解液であって、電解質としてテトラフルオロホウ酸マグネシウムを、溶媒として環状エステルを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の電解液は、電位窓の広い環状エステルを溶媒として用いているため、電圧の高い(例えば、3V以上の)マグネシウム二次電池の提供が可能となり、マグネシウム二次電池の高エネルギー密度化を図ることができる。また、Mg塩として、テトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2)を使用することにより、溶媒として環状エステルを使用しているにもかかわらず、Mg金属の不動態化を防ぎ、Mg金属の溶解・析出反応を可逆的に進行させることができるため、マグネシウム二次電池の充放電特性を飛躍的に向上させることができる。
【0013】
前記環状エステルの好ましい例として、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。特に、炭酸プロピレンが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記特徴を有する電解液を含むマグネシウム二次電池に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電位窓の広い環状エステル系電解液の使用が可能となるため、高エネルギー密度のマグネシウム二次電池の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、電解質がテトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2)であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図2】図2は、電解質がMg(BF4)2であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液を使用した場合の充放電曲線である。
【図3】図3は、電解質がMg(BF4)2であり、溶媒が炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒である電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図4】図4は、電解質がMg(BF4)2であり、溶媒がγ-ブチロラクトンである電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図5】図5は、電解質がマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Mg(TFSI)2)であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液(比較例)を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図6】図6は、電解質がMg(TFSI)2であり、溶媒が炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒である電解液(比較例)を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【図7】(a)は、電解質がヘキサフルオロリン酸マグネシウム(Mg(PF6)2)であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液(比較例)を使用した場合のサイクリックボルタモグラムであり、(b)は電解質がMg(BF4)2であり、溶媒が炭酸プロピレンである電解液を使用した場合のサイクリックボルタモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
マグネシウム二次電池は、マグネシウムイオンを吸蔵・放出可能な正極と、マグネシウムイオンを析出・溶解可能な負極と、マグネシウムイオンを生じる塩(マグネシウム塩)を含有する電解液とを有する。従来のマグネシウム二次電池用電解液では、マグネシウム塩としてマグネシウムハロゲン化物やマグネシウムイミド塩が、溶媒としてエーテル系溶媒やスルホン系溶媒が提案されてきた。これに対して、本発明では、マグネシウム塩としてテトラフルオロホウ酸マグネシウムを使用し、溶媒として環状エステルを用いることを特徴とする。

【0018】
なお、テトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2)は、通常は水和物の形態(Mg(BF4)2・nH2O)で流通しているため、本発明の電解液の原料としても、テトラフルオロホウ酸マグネシウム水和物を使用することができるが、本発明の電解液は水を含まないことが好ましいため、脱水処理を行うことが好ましい。具体的には、環状エステルにテトラフルオロホウ酸マグネシウムを溶解して電解液を調製した後、水分吸着剤(モレキュラーシーブ等)を加えて数日間放置すること等により、脱水精製処理を行うことが好ましい。水分をさらに取り除きたい場合は、新しい水分吸着剤を用いて脱水精製処理を繰り返し行えばよい。

【0019】
また、電解液中のテトラフルオロホウ酸マグネシウムの濃度は、0.1~2mol/Lが好ましく、特に0.1~1mol/Lが好ましい。

【0020】
本発明の電解液では、上述の通り、溶媒として環状エステルを使用する。これまでマグネシウム二次電池用電解液の溶媒として一般に用いられてきたエーテル類は耐酸化性が低いため、電解液の酸化分解を防ぐために充電電圧を低くする必要があった。このため、たとえ高い実用電圧が可能な正極材料を開発しても、電解液がその電圧に耐えれないため、結局は実用電圧を上げることができず、高エネルギー密度化が実現できなかった。これに対して、環状エステルは、エーテル類と比べて耐酸化性が高い(酸化分解開始電圧が高い)ため、より高電圧の二次電池の設計が可能となり、マグネシウム二次電池の高エネルギー密度化に寄与できる。

【0021】
また、従前の研究では、マグネシウム二次電池の電解液溶媒として、炭酸プロピレンや炭酸エチレン等の環状エステルを使用すると、負極を構成するマグネシウム金属が不動態化し、マグネシウムの溶解析出が進行しないことが報告されているため、炭酸エステル系電解液の使用は不可能と考えられていた。実際に、後述する実施例においても、環状エステルに、他のマグネシウム塩を溶解して調製した電解液では、マグネシウムの溶解・析出が起こらないことが確認されている。しかしながら、本発明者らは、電解質としてテトラフルオロホウ酸マグネシウムを使用することによって、環状エステルを溶媒として使用しても、マグネシウム金属の不動態化が生じず、マグネシウム金属の溶解析出が進行する、すなわち充放電を行うことができることを見出した。

【0022】
本発明の電解液の溶媒として使用される環状エステルは、1種であっても、2種以上であってもよい。分解開始電圧が3V(vs.Mg/Mg2+)以上の環状エステルを使用することが好ましい。好ましい環状エステルの代表例として、下記に示す炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート:PC)、炭酸エチレン(エチレンカーボネート:EC)、γ-ブチロラクトン(GBL)が挙げられるが、その他にも、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート等の炭酸エステル類、あるいは、γ-バレロラクトン、プロピオラクトン等のラクトン類が使用できる。本発明において、特に好ましい電解液は、炭酸プロピレンを溶媒とする電解液である。
【化1】
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【0023】
また、本発明の電解液は、環状エステル以外にも、他の電位窓の広い溶媒(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等)を含んでもよいが、電解液の溶媒全量に占める環状エステルの割合は50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが特に好ましい。特に好ましい電解液は、溶媒として環状エステル(特に炭酸エステル)のみを含む。

【0024】
また、本発明の電解液は、必要に応じて他の化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の量で含有することができる。このような他の化合物としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の被膜形成剤が挙げられる。電解液中におけるこれら他の化合物の含有割合は特に限定はないが、電解液全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を含有させることにより、Mg金属の溶解・析出反応の可逆性を向上させたり、安全性をより向上させたり、容量維持性能やサイクル性能を向上させたりすることができる。

【0025】
本発明のマグネシウム二次電池で使用できる負極は、負極活物質として、マグネシウム金属またはマグネシウム合金を含む。たとえば、集電体にマグネシウム金属またはマグネシウム合金を担持させて構成した負極や、箔状や板状のマグネシウム金属またはマグネシウム合金からなる負極が挙げられる。特にマグネシウム金属からなる負極が好ましい。

【0026】
本発明のマグネシウム二次電池で使用できる正極として、例えば、金属からなる集電体(例えば、アルミニウム箔やニッケル箔)と、その上に形成された正極活物質(マグネシウムイオンを可逆的に挿入・脱離可能な物質)層とを有する正極が挙げられる。
前記正極活物質として、例えば、Mo68、MoS2、MgM24(M=V,Cr,Mn,Fe,Co)、MgNiO2、Mg2/3Ni4/32、MgxySiO4(M=Mn,Fe,Co、x+y=2)、V25、MoO3、Mg0.5Ti2(PO4)3、TiS2、FeF3等が挙げられる。

【0027】
金属集電体上に前記正極活物質層を形成する方法としては、例えば、正極活物質の粉末に、導電材およびバインダーを混合してペーストを形成し、金属集電体表面に当該ペーストを塗布する方法が挙げられる。

【0028】
前記導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛等の炭素物質を用いることができ、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。

【0029】
本発明のマグネシウム二次電池は、従来のマグネシウム二次電池と同様の構成とすることができる。例えば、正極と負極とをセパレーターを介して対向させて電極体を形成し、外装ケースに収納し、正極を正極外部端子に、負極を負極外部端子にそれぞれ電気的に接続させ、電解液を注入し、外装ケースを密閉することによって製造することができる。
本発明のマグネシウム二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、積層型、コイン型等、任意の形状とすることができる。

【0030】
前記セパレーターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の合成樹脂膜が挙げられる。

【0031】
以下、本発明の電解液を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
露点-75℃以下のAr雰囲気グローブボックス内で、炭酸プロピレン等の溶媒に、所定量のテトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF4)2・6H2O)等の電解質を加えて溶解し、表1に示す組成の電解液を調製した。これに4Aのモレキュラーシーブスを加えて3日間放置して脱水処理を行った。
調製した電解液を用いて、マグネシウムの電気化学的析出溶解反応を、サイクリックボルタンメトリーおよび定電流充放電試験により三極式セルを用いて調べた。作用極はCu板またはNi板、対極はAr下で研磨したMgワイヤ、参照極はMg金属またはAg/Ag+電極とした。サイクリックボルタンメトリーは、所定の電位範囲を1.0mV/sで掃引して測定した。充放電試験は、所定の電位範囲で0.1mA/cm2の定電流で行った。電気化学測定は全て30℃で行った。
【実施例】
【0033】
【表1】
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【実施例】
【0034】
図1に、No.1の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。No.1の電解液は、リチウムイオン二次電池でよく使用されている溶媒の1種である炭酸プロピレンを溶媒とする電解液である。図1から分かるように、電解質にMg(BF4)2を、溶媒に炭酸プロピレンを用いた電解液では、還元電流(Mgの析出に起因する下向きのピーク)と酸化電流(Mgの溶解に起因する上向きのピーク)が観察され、Mgの析出・溶解が生じていることが確認できる。また、還元電流と酸化電流がいずれも0V付近(vs.Mg/Mg2+)で立ち上がることから、過電圧が小さく、析出反応と溶解反応の双方が速やかに進行することが分かる。また、3V(vs.Mg/Mg2+)付近まで掃引しても、電解液の酸化分解を示す明確なピークは観察されなかった。
図2に、No.1の電解液を用いた場合の充放電曲線を示す(充電15,000秒:3rd)。このグラフからも、No.1の電解液を用いた場合に、充放電が可能であることが確認できる。
【実施例】
【0035】
図3に、No.2の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。No.2の電解液は、リチウムイオン二次電池でよく使用されている溶媒の1種である炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒(体積比1:1)を溶媒とする電解液である。
また、図4に、No.3の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。No.3の電解液は、γ-ブチロラクトンを溶媒とする電解液である。
図3および図4から分かるように、これらの電解液を用いた場合も、還元電流と酸化電流が観察され、Mgの析出・溶解が生じていることが確認された。また、電解液の酸化分解を示すピークは観察されなかった。
【実施例】
【0036】
図5にNo.4の電解液のサイクリックボルタモグラムを、図6にNo.5の電解液のサイクリックボルタモグラムを示す。No.4およびNo.5の電解液は、溶媒はNo.1およびNo.2と同じものを用いているが、電解質として、Mg(BF4)2の代わりにMg(TFSI)2を用いた比較例である。図5および図6に示す通り、電解質として、Mg(TFSI)2を用いた場合、Mgの析出・溶解は確認できなかった。これは、従前の研究において報告されているように、マグネシウムの不動態化が生じたためと考えられる。
【実施例】
【0037】
図7(a)にNo.6の電解液のサイクリックボルタグラムを示す。No.6の電解液は、リチウムイオン二次電池の電解質として一般的に用いられているヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)のLiをMgに置き換えた塩を電解質とする比較例である。図7(b)は、電解液No.1のサイクリックボルタモグラムである。図7(a)から分かるように、溶媒として炭酸プロピレンを用いた場合、Mg(PF6)2を溶解した電解液では、Mgの析出溶解は生じなかった。それに対して、炭酸プロピレンを溶媒に用いた場合でも、Mg塩としてMg(BF4)2を用いた場合は、図7(b)に示すように、5サイクル目も酸化還元電流が観察された。
【実施例】
【0038】
上記実験から、本発明の電解液は、環状エステル系溶媒の欠点(Mgの不動態化を引き起こすため、Mgの溶解・析出が生じない)を解消できる一方、電位窓が広いという環状エステル系溶媒の利点は損なわないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の電解液は、電位窓が広い環状エステル系溶媒を用いて、マグネシウム金属の溶解・析出反応を可逆的に進行させることができるため、マグネシウム二次電池の高電圧化・高エネルギー密度化に寄与できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6