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明細書 :繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-159605 (P2017-159605A)
公開日 平成29年9月14日(2017.9.14)
発明の名称または考案の名称 繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法
国際特許分類 B29C  73/04        (2006.01)
C08J   5/04        (2006.01)
FI B29C 73/04
C08J 5/04
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2016-047929 (P2016-047929)
出願日 平成28年3月11日(2016.3.11)
発明者または考案者 【氏名】藤井 透
【氏名】大窪 和也
【氏名】大谷 龍平
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4F072
4F213
Fターム 4F072AA02
4F072AA08
4F072AB03
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AD03
4F072AD04
4F072AD37
4F072AD44
4F072AG03
4F072AH23
4F072AK05
4F072AK20
4F072AL09
4F213AA11
4F213AA13
4F213AA24
4F213AA29
4F213AB18
4F213AD02
4F213AD04
4F213AD16
4F213WA94
4F213WE07
要約 【課題】補修効果の高いCFRTP等の繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法を提供することを目的としている。
【解決手段】補強長繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂材の損傷部を補修する繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法であって、熱可塑性樹脂と微細繊維を含む補修材を前記損傷部に沿わせた状態で、繊維強化熱可塑性樹脂材と、補修材を真空バッグ内に入れ、真空バッグ内を周囲の雰囲気より減圧状態にして、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させるようにした。
【選択図】 図6
特許請求の範囲 【請求項1】
補強長繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂材の損傷部を補修する繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法であって、
熱可塑性樹脂と微細繊維を含む補修材を前記損傷部に沿わせた状態で、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させる工程を備える繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法。
【請求項2】
損傷部に補修材を沿わせた状態で、繊維強化熱可塑性樹脂材と補修材を真空バッグ中に入れ、真空バッグ内を減圧状態にして前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させる請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法。
【請求項3】
損傷部に補修材を沿わせた状態で、少なくとも補修材と繊維強化熱可塑性樹脂材の補修材の周縁部を可撓性および気密性を有する被覆材で気密状態に被覆した状態で、この被覆部内を減圧状態にして前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させる請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂からなる群より選ばれる請求項1~請求項3のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂材料。
【請求項5】
微細繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維、鉱物繊維からなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1~請求項4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂材料。
【請求項6】
補強長繊維が炭素繊維、熱可塑性樹脂がポリプロピレン、微細繊維がガラス繊維である請求項1~請求項5のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量かつ高強度である炭素繊維を強化材として機能させた,炭素繊維強化熱硬化性樹脂(以下、「CFRP」と記す)は、その軽量性と優れた力学特性から、航空宇宙分野だけでなく、一般産業分野において広く使用されている。また、今後もCFRPの市場規模は拡大すると予測されている(非特許文献1,2参照)。
しかしながら,CFRPは成形に要する設備や経費がかさむこと、成形に多くの経験が必要であることなどの問題があり、構造部材として使用するには費用の面から制約を受ける。
【0003】
これを克服するために、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(以下、「CFRTP」と記す)が開発されている。すなわち、CFRTPは、安価で品質の良い部品を製造できる可能性がある(非特許文献3,4参照)。
一方、CFRTPを構造部材に適用する際に,事故等によって構造に損傷を生じた後,修理をどのように行うかが重要となる(非特許文献5,6参照)が、複合材構造の修理は金属構造の場合と比べて複雑であり、損傷の発見やその後の修理には高度な技術が要求される(非特許文献7~10参照)。
【0004】
例えば、破壊の初期段階においては熱溶融による補修、繊維に大きな損傷を有する破壊の中期後期段階においては損傷部にパッチを熱溶着させる方法が有効であることが示唆されている(非特許文献5,11,12参照)。
また、繊維強化プラスチック(FRP)は強化繊維シートの積層により成形され、層間強度は弱く、衝撃などの外力によるき裂が発生しやすい。そして、一度き裂や層間剥離が発生してしまうと、剛性や強度などの力学特性が劣化する(非特許文献13,14参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】小林 弦幸,西 義武,"炭素繊維の引張り破断応力に及ぼす透明高分子中への臨界埋め込み長さの研究",日本金属学会誌,Vol.69,No.11,pp.1021-1025 (2005)
【非特許文献2】和田原英輔,北野彰彦, "炭素繊維強化プラスチックによる自動車の軽量化",繊維学会誌,Vol.64,No.9, pp.295-301 (2008)
【非特許文献3】村上 理一,枡田 右文,野々村 俊夫," 熱可塑性CFRTPの疲労強度に及ぼす炭素繊維含有率, 試験温度および切欠半径の影響",日本機械学会論文集,58巻,545号,pp.9-14 (1992)
【非特許文献4】Hassan M. EL-Dessouky ,Carl A. Lawrence," Ultra-lightweight carbon fibre/thermoplastic composite material using spread tow technology", Composites: Part B50,pp.91-97 (2013)
【非特許文献5】German Reyes and Uday Sharma,"Modeling and damage repair of woven thermoplastic composites subjected to low velocity impact",Composite Structures,Vol.92, pp.523-531 (2010)
【非特許文献6】中村 俊一郎,松原 監壮,高雄 善裕,汪 文学,"接着修理したCFRP構造の破損モード", 日本複合材料学会誌,Vol.39,No.2,pp.65-71 (2013)
【非特許文献7】C. Soutis, and F. Z. Hu,"Design and performance of bonded patch repairs of composite structures", Proc Instn Mech Engrs,Vol.211,Part G,pp.263-271 (1997)
【非特許文献8】C. Soutis, D-M. Duan, P. Goutas," Compressive behavior of CFRP laminates repaired with adhesively bonded external patches",Composite Structures,Vol.45,pp.289-301 (1999)
【非特許文献9】星 光,中野 啓介,岩堀 豊,石川 隆司,矢島 浩,"CFRPスカーフ接着継手の衝撃後強度特性", 日本複合材料学会誌,Vol.33,No.3,pp.104-115 (2007)
【非特許文献10】星 光,中野 啓介,岩堀 豊,石川 隆司,矢島 浩,福田 博," CFRPスカーフ継手の引張強度における衝撃損傷の影響", 日本複合材料学会誌,Vol.36,No.6,pp.237-245 (2010)
【非特許文献11】F. Z. Hu and C. Soutis,"Strength prediction of patch-repaired CFRP laminates loaded in compression",Composites Science and Technology,Vol.60,pp.1103-1114 (2000)
【非特許文献12】山本 真大,山岸 鈴,小武内 清貴,福田 忠生,尾崎 公一,"曲げ損傷を受けたCFRTPの修繕性に関する基礎的研究",日本機械学会論文集Vol.79,No.802,pp.759-763 (2013)
【非特許文献13】鮑 力民,黒田 勇貴,徐 安長,剱持潔,"FRP層間破壊靱性に充てん中空フィラーが及ぼす影響",日本複合材料学会誌,Vol.38,No.3,pp.9-14 (2012)
【非特許文献14】R. Borrelli,S. Franchitti,F. Di Caprio,U. Mercurio,A. Zallo,"A Repair for Impacted Composite Structures Based on the Prediction of the Residual Compressive Strength",Procedia Engineering,Vol.88,pp.117-124 (2014)
【非特許文献15】Daniel C. Davis, Justin W. Wilkerson, Jiang Zhu, Daniel O.O. Ayewah," Improvements in mechanical properties of a carbon fiber epoxy composite using nanotube science and technology", Composite Structures,Vol.92,pp.2653-2662 (2010)
【非特許文献16】Nguyen Tien Phong,Mohamed H. Gabr,Okubo K.,Bui Chuong,Fujii T.,"Enhancement of mechanical properties of carbon fabric/epoxy composites using micro/nano-sized bamboo fibers",Materials & Design,Vol.47,pp.624-632 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、母材に微細繊維を添加したCFRPの材料強度が向上する(非特許文献15,16参照)ことから、CFRTPにおいて、補修材に微細繊維を添加すれば、補修効果を向上するのではないかと考え、鋭意検討した結果、本発明を完成するにいたった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、補修効果の高い繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる繊維強化熱可塑性樹脂材の補修方法(以下、「本発明の補修方法」と記す)は、熱可塑性樹脂と微細繊維を含む補修材を前記損傷部に沿わせた状態で、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させる工程を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の補修方法は、特に限定されないが、プレス機や金型を使用しないことで,実際の構造物の補修が簡易的にできることが利点を有することから、例えば、損傷部に補修材を沿わせた状態で、繊維強化熱可塑性樹脂材と補修材を真空バッグ中に入れ、真空バッグ内を減圧状態にして前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させる方法や、損傷部に補修材を沿わせた状態で、少なくとも補修材と繊維強化熱可塑性樹脂材の補修材の周縁部を可撓性および気密性を有する被覆材で気密状態に被覆した状態で、この被覆部内を減圧状態にして前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させる方法を採用することが好ましい。
【0010】
すなわち、減圧によって、補修材と損傷部との間の空気が排気されるとともに、空バッグあるいは被覆材が周囲の雰囲気によって押圧されて、補修材と損傷部との密着性が上がる。そして、この状態で再溶融させることで補修部でのボイドの発生が抑えられるとともに、微細繊維が損傷部の内部にまで十分に入り込み、安定した補強効果が得られる。
また、後者の方法は、前者の方法に比べ工数が複雑となるが、補修しようとする繊維強化熱可塑性樹脂材が真空バッグに入りきらない大きさや複雑な形状の構造材の補修にも適用できるという利点がある。
【0011】
なお、真空バッグ内あるいは被覆部内を減圧する方法としては、特に限定されないが、例えば、真空バッグあるいは被覆部を形成する被覆材に接続したホースを介して真空ポンプによって減圧する方法が挙げられる。
上記ホースは、加熱時に装着されていてもよいし、減圧が完了した時点で取り外すようにしても構わない。
上記真空バッグおよび被覆材の材質は、減圧時に補修材および繊維強化熱可塑性材に密着するような可撓性を有し、加熱温度に耐えるものであれば特に限定されない。
【0012】
本発明の補修方法において、熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、これらが単独であるいは複合して用いられてもよいが、なかでも価格的に安価であるポリプロピレン樹脂が好適である。
【0013】
本発明の補修方法において、微細繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維、鉱物繊維などが挙げられ、これらが単独であるいは複合して用いられてもよいが、ガラス繊維が好ましい。
また、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を、微細繊維として微細ガラス繊維を採用したとき、微細ガラス繊維の添加量は、ポリプロピレン樹脂に対して1wt%~3wt%が好ましい。
【0014】
さらに、熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂であるとき、再溶融温度は、熱可塑性樹脂の特性を失うことなく粘度を下げることで,損傷部に充填されやすくなるように、190℃以上210℃以下が好ましく、200℃以上210℃以下がより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の補修方法は、熱可塑性樹脂と微細繊維を含む補修材を前記損傷部に沿わせた状態で、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂と、前記補修材の熱可塑性樹脂を再溶融させる工程を備えるので、繊維強化熱可塑性樹脂材の熱可塑性樹脂と、補修材の熱可塑性樹脂が境目なく一体化できるとともに、損傷した補強長繊維の断線部分の周囲に微細繊維が存在し、この微細繊維が補強効果を発揮し、損傷した繊維強化熱可塑性樹脂材を高い回復率で補修できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ガラス繊維添加改質PPペレットの造粒方法を説明する概略図である。
【図2】母材樹脂シートの作製手順を説明する概略図である。
【図3】平織CFRTP試験片の作製手順を説明する概略図である。
【図4】衝撃試験方法を説明する概略図である。
【図5】衝撃紙面後の平織CFRTP試験片の内部状態の写真写しである。
【図6】観察方法の概略図を示す
【図7】実施例1の補修シートで補修した部分のSEM(走査型電子顕微鏡)用試料作製手順を説明する概略図である。
【図8】実施例1の補修シートで補修した部分をSEMで撮影した写真写しである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を、その実施例を参照しつう詳しく説明する。
〔母材樹脂ペレットの作製〕
母材樹脂には、ポリプロピレンペレット(株式会社プライムポリマー製,J708UG、以下、「PPペレット」とのみ記す)、マレイン酸変性PPペレット(三洋化成工業株式会社,ユーメックス 1001、以下、「MAPPペレット」とのみ記す)を(PPペレットの重量):(MAPPペレットの重量)=95:5となるように図1に示す、二軸混練押出機(Coperion Corporation,ZSK 18)を用いて混練して、母材樹脂ペレットを作製した。

【0018】
〔微細ガラス繊維添加改質PPペレットの作製〕
図1の二軸混練押出機を用いて、上記PPペレットの重量に対し、2.0,3.0wt%とした微細ガラス繊維添加改質PPペレットを、それぞれ以下のようにして作製した。
すなわち、図1に示すように、上記PPペレット、MAPPペレット、PP不織布(シンワ株式会社,6640-1A)を重量比で(PPペレットの重量):(MAPPペレットの重量):(PP不織布の重量)=85:5:10となるように、PPペレットおよびMAPPペレットを二軸混練押出機のメインフィーダーから、微細ガラス繊維(日本無機株式会社製,FM1700,公称繊維直径0.5μm,公称繊維長さ200~2000μm)を、上記PP不織布によって微細ガラス繊維が上記配合比率となるように包み込んで形成したストラップを二軸混練押出機のサイドフィーダーから二軸混練押出機に投入し、微細ガラス繊維添加改質PPペレットA(ガラス繊維2.0wt%添加)、微細ガラス繊維添加改質PPペレットB(ガラス繊維3.0wt%添加)をそれぞれ得た。

【0019】
〔比較PPペレットの作製〕
微細ガラス繊維を包み込んでいないPP不織布のストラップをサイドフィーダーから投入した以外は、上記微細ガラス繊維添加改質PPペレットと同様にして微細ガラス繊維無添加の比較PPペレット(ガラス繊維添加0wt%)を作製した。

【0020】
〔母材樹脂シートの作製〕
上記のようにして得た母材樹脂ペレットを、図2に示すように、ヒートプレス機(河中産業株式会社,HB200HB)を用いて,温度200℃,無圧の状態で10分間保持した後、温度200℃,圧力5MPaの状態で1分間保持することで長さ270mm,幅240mm,厚さ0.5mmの母材樹脂シートを作製した。

【0021】
〔補修材シートの作製〕
上記微細ガラス繊維添加改質PPペレットA、Bおよび、比較ペレットをそれぞれ、上記母材樹脂シートと同様の手法を用いて長さ270mm,幅240mm,厚さ0.5mmのシート状に成形し、補修材シートA(ガラス繊維2.0wt%添加)、補修材シートB(ガラス繊維3.0wt%添加)、補修材シートC(ガラス繊維0wt%添加)を得た。

【0022】
〔平織CFRTP試験片の作製〕
図3(a)に示すように、2枚のAN系平織炭素繊維布(三菱レイヨン株式会社,TR3110-MS)で、1枚の上記のようにして得た母材樹脂シートを挟み、ヒートプレス機を用いて温度200℃,圧力10MPaの状態で5分間保持し、CF/PPから成る予備シートを作製した。
図3(b)に示すように、上記のようにして得られた予備シートを4枚積層したのち、図3(c)に示すように、フッ素樹脂フィルム(淀川ヒューテック株式会社,ヨドフロンPTFEフィルム)で作製した真空バッグに入れ、真空吸引を行いながら、ヒートプレス機を用いて温度200℃,圧力10MPaの状態で10分間保持し、長さ270mm,幅240mm,厚さ2mmの平織CFRTP積層板を作製した。
この積層板を,炭素繊維の配向方向が試験片の長手方向に対して直交するようにダイヤモンドカッターを用いて切り出しし、図3に示す長さ200mm,幅25mm,厚さ2mmの短冊状とした平織CFRTP試験片(炭素繊維体積含有率:43vol%)を得た。

【0023】
〔衝撃負荷試験〕
図4に示すように、自作の振り子型衝撃試験機に、上記のようにして得た平織CFRTP試験片を、治具を用いて一端部から中央部まで固定した状態にセットし、振り子の振り下ろし角度45°(振り子の高さ約146mm)で、片持ち式衝撃試験を行ったところ、CFRTPの衝撃吸収エネルギーが1.0Jを超えると,繊維破断が生じることがわかった。
そして、衝撃試験後の平織CFRTP試験片内部の状態を図5に示す方向から走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、図5に示すように、繊維破断は衝撃曲げ損傷部の圧縮側に発生することもわかった。

【0024】
(実施例1)
上記のようにして得た補修材シートAを長さ10mm,幅25mmに切り出した。そして、この切出し片を、図6に示すように、上記衝撃負荷試験に使用した平織CFRTP試験片中央の衝撃曲げ損傷部圧縮側に当て、ヒートプレス機を用いて、温度200℃,大気圧下で10分間保持することで損傷部周辺の母材と補修材とを一体化させて、平織CFRTP試験片中央の衝撃曲げ損傷部を補修した。なお、補修する際,試験片を真空バッグに入れ、図示していないホースを介して真空ポンブによって真空バッグ内をほぼ真空状態まで減圧したのち、試験片全体を200℃に加熱した。

【0025】
(実施例2)
補修材シートAに代えて、補修材シートBを用いた以外は、実施例1と同様にして平織CFRTP試験片中央の衝撃曲げ損傷部を補修した。

【0026】
(比較例1)
補修材シートAに代えて、補修材シートCを用いた以外は、実施例1と同様にして平織CFRTP試験片中央の衝撃曲げ損傷部を補修した。

【0027】
ダイヤモンドカッターを用いて,図7の示すように、上記実施例2において補修した平織CFRTP試験片の損傷部付近を長さ10mm,幅5mmに切り出した。その後,SEMを用いて、補修された損傷部を観察したところ、図8に示すように、補修材を貼付した面の反対側まで微細ガラス繊維が到達していることがわかった。このことから、損傷部表面に貼付した補修材中の微細ガラス繊維が、破断した炭素繊維周辺の母材に充填されることがわかった。

【0028】
〔平織CFRTP試験片衝撃曲げ試験〕
上記実施例1,2および比較例1で補修した補修済み平織CFRTP試験片と、平織CFRTP試験片(衝撃損傷を付与する前)を、上記衝撃負荷試験と同様にして衝撃試験を行い、平織CFRTP試験片の衝撃曲げ強度と補修済み平織CFRTP試験片の衝撃曲げ強度を測定(N数:5)し、平織CFRTP試験片(衝撃損傷を付与する前)の衝撃曲げ強度を100%として、実施例1,2および比較例1で補修した補修済み平織CFRTP試験片のそれぞれについて強度回復率を算出した。
その結果を、表1に示す。

【0029】
【表1】
JP2017159605A_000003t.gif

【0030】
表1から、本発明のような補修方法によれば、損傷部を損傷前の強度まで補修が可能であることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7