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明細書 :繊維強化樹脂複合材料の接合構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-159547 (P2017-159547A)
公開日 平成29年9月14日(2017.9.14)
発明の名称または考案の名称 繊維強化樹脂複合材料の接合構造
国際特許分類 B29C  65/56        (2006.01)
FI B29C 65/56
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2016-045982 (P2016-045982)
出願日 平成28年3月9日(2016.3.9)
発明者または考案者 【氏名】藤井 透
【氏名】大窪 和也
【氏名】山田 雄斗
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4F211
Fターム 4F211AA11
4F211AB25
4F211AD12
4F211AD16A
4F211AD24
4F211AD35
4F211TA06
4F211TD01
4F211TH20
4F211TJ30
4F211TN76
要約 【課題】繊維強化樹脂複合材料を少ない量のボルトやリベット等で機械的接合できる繊維強化樹脂複合材料の接合構造ことを目的としている。
【解決手段】繊維強化熱可塑性樹脂材が、機械的に接合された繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造であって、貫通孔が設けられた前記繊維強化熱可塑性樹脂材と、貫通孔が設けられた他の部材が、前記貫通孔同士が連通した状態に重ね合わさるとともに、ボルト孔が設けられ、筒状の樹脂カラーが、前記連通状態の貫通孔内に挿入され、ていて、樹脂カラーの外周面と、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の貫通孔内周面が少なくとも一部で融着されており、前記繊維強化熱可塑性樹脂材と他の部材が、前記ボルト孔に挿通されたボルトによってねじ固定されていることを特徴としている。
【選択図】 図3
特許請求の範囲 【請求項1】
繊維強化熱可塑性樹脂材が、機械的に接合された繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造であって、
貫通孔が設けられた前記繊維強化熱可塑性樹脂材と、貫通孔が設けられた他の部材が、前記貫通孔同士が連通した状態に重ね合わさるとともに、
ボルト孔が設けられ、筒状の樹脂カラーが、前記連通状態の貫通孔内に挿入され、ていて、
樹脂カラーの外周面と、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の貫通孔内周面が少なくとも一部で融着されており、前記繊維強化熱可塑性樹脂材と他の部材が、前記ボルト孔に挿通されたボルトによってねじ固定されていることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造。
【請求項2】
樹脂カラーが、微細繊維を含む熱可塑性樹脂組成物で形成されている請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造。
【請求項3】
繊維強化熱可塑性樹脂材の強化繊維が炭素繊維である請求項1または請求項2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造。
【請求項4】
繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂がポリプロピレンである請求項1~請求項3のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造。
【請求項5】
樹脂カラーが、ポリプロピレンと無水マレイン酸変性ポリプロピレンからなる変性ポリプロピレンと、微細ガラス繊維を含む樹脂組成物で形成されている請求項1~請求項4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂複合材料の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂複合材料である炭素繊維強化プラスチック(以下CFRPと記す)及び炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(以下CFRTPと記す)は炭素繊維を強化材とし、樹脂をマトリックスとする繊繊維強化プラスチック(FRP)のことである。
CFRPは、高強度、高剛性また軽量性に優れた特性を有する複合材料である(非特許文献1参照)。一方、CFRTPは、成形性やリサイクル性に優れた特性を有する複合材料である。
【0003】
これらの炭素繊維樹脂強化複合材料は、近年、炭素繊維の価格が比較的安価になってきたことで広く多様な分野で使用されるようになった。
例えば、CFRPは、航空機用や自動車用材料だけでなく、一般向けの構造部材やスポーツ用具、レジャー用品などにも汎用的に使用されるようになった(非特許文献2,3参照)。
【0004】
一方で、成形時間の短縮がはかれる、また、母材として使用する熱可塑性樹脂がCFRPの母材となる樹脂に比べ低価格である等の理由から自動車の骨格に用いるCFRTPの開発が急激に進み始めており、自動車への適用が期待されている(非特許文献4参照)。
しかし、航空機や自動車を複合材料だけで一体成形するわけにはいかず、複合材料や金属材料を使い分ける必要がある。
【0005】
そこで、骨格フレームの部分等で炭素繊維強化樹脂複合材料を接合する汎用的な設計はこれからの実用利用を考えると避けては通れない(非特許文献5参照)。
一般に、金属部材を接合する際に使用されている接合方法の1つに、ボルト等を使った機械的接合がある(非特許文献6,7参照)。
【0006】
すなわち、ボルト等を使った機械的接合は、信頼性が高く、分解・再組立が可能な点から、複合材料の構造物においても有力な接合方法とされている(非特許文献8~10参照)。
一方、現在、炭素繊維強化樹脂複合材料をボルト等で機械的に接合する場合、金属部材の接合に比べ、ボルト本数を増やしたり、炭素繊維強化樹脂複合材料に設けたボルト挿通用の貫通孔部分からの材料破損を防止するために、かなり大きなサイズの座金を用いたりする対策がなされている。
【0007】
しかし、上記のようにボルト本数を増やしたり、大きなサイズの座金を用いたりすると、軽量な炭素繊維強化樹脂複合材料を用いても、十分な軽量化をはかることができないだけでなく、接合部の構造が複雑となり、製品形状の自由度をそこなったり、かえって全体の重量が増えるといった矛盾を引き起こす。
また、炭素繊維強化樹脂複合材料にボルト挿通孔となる多数の貫通孔を設けることによって、CFRP,CFRTPの特徴である十分な静的強度、疲労強度が得られなくなるといった問題点が生じる(非特許文献11)。
【0008】
現在、ボルト接合部の強度に直結する内部損傷メカニズムは諸説あり、必ずしも明確にはなっていない(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】灘部岳晃, 西川雅章, 水口周, 中村達也, Siivola, J. T., 武田展雄, ひずみ計測による CFRP ボルト接合部の損傷検出のための数値解析,日本複合材料学会誌, (2012),38, 1, pp.22-29.
【非特許文献2】Sebastian Heimbs,Sebastian Schmeer,Jorg Blaurock,Stefan Steeger,"Static and dynamic failure behaviour of bolted joints in carbon fibre composites",Composites:Part A,Vol.47(2013),pp.91-101.
【非特許文献3】P.J. Gray, R.M. O'Higgins, C.T. McCarthy, Effects of laminate thickness, tapering and missing fasteners on the mechanical behaviour of single-lap, multi-bolt, countersunk composite joints, Composites:Part A, Vol.47(2013),pp.91-101.
【非特許文献4】野田穂奈美, 林豊, 持田泰秀, 熱可塑性樹脂複合材料の基礎的研究,日本建築学会北陸支部研究報告集, (2011), pp.1-4.
【非特許文献5】守屋一政,井上寛之,加藤勝義,炭素繊維強化積層複合材と金属材の細径ピンによる接合,日本複合材料学会誌,36.5, (2010), pp.189-197.
【非特許文献6】濱田泰以, 前川善一郎, 春名一志, FRP機械的継手における圧かい強度向上に関する研究, 日本機械学会論文集 A 編, 57, 543, (1991-11), pp.2715-2721.
【非特許文献7】加地秋好, 前川善一郎, 濱田泰以, FRP ボルト継手の静的強度に及ぼす積層構成の影響, 日本機械学会論文集 A 編, (1988), pp. 444-448.
【非特許文献8】勝俣司, 水谷義弘, 轟章, 松崎亮介, AE モニタリングによる高強度 CFRP ボルト継手の破壊挙動に関する研究,日本機械学会 M&M2010 材料力学カンファレンス CD-ROM 論文集, (2010), pp.640-641.
【非特許文献9】木嶋健, 勝野壽男, 小林憲治, 日野伸一, 西崎到, 引抜成形GFRP積層材によるボルト接合の軸力リラクセーション, 日本機械学会誌, 59, 7, (2010), pp.540-545.
【非特許文献10】及能敬暁, 大河内隆雅, 東郷敬一郎, 島村佳伸, 荒木弘安, CFRP 積層板接着ボルト継手の静的破壊強度と破壊形態に関する研究,東海支部総会講演会講演論文集,(2009), pp.81-82.
【非特許文献11】勝俣司, 水谷義弘, 轟章, 松崎亮介, 軸力増加と摩擦係数増加による CFRP ボルト継手の静的強度向上に関する研究, 日本機械学会2009年度年次大会講演論文集(6), (2009), pp.369-370.
【非特許文献12】灘部岳晃, 西川雅章, 水口周, 中村達也, 武田展雄, CFRP ボルト接合部の面圧破壊に影響する繊維キンク損傷のモデリング, 日本複合材料学会誌,37, 5, (2011), pp.172-181.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、繊維強化樹脂複合材料を少ない量のボルトやリベット等で機械的接合できる繊維強化樹脂複合材料の接合構造ことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明にかかる繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造(以下、本発明の接合構造と記す)は、繊維強化熱可塑性樹脂材が、機械的に接合された繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造であって、貫通孔が設けられた前記繊維強化熱可塑性樹脂材と、貫通孔が設けられた他の部材が、前記貫通孔同士が連通した状態に重ね合わさるとともに、ボルト孔が設けられ、筒状の樹脂カラーが、前記連通状態の貫通孔内に挿入され、ていて、樹脂カラーの外周面と、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の貫通孔内周面が少なくとも一部で融着されており、前記繊維強化熱可塑性樹脂材と他の部材が、前記ボルト孔に挿通されたボルトによってねじ固定されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の接合構造において、他の部材とは、同種の繊維強化熱可塑性樹脂材、熱硬化性樹脂材、金属材、木質材、これらの複合材などが挙げられる。
また、ボルトによる接合部の締結方法としては、ボルトをナットにねじ込み、繊維強化熱可塑性樹脂材と他の部材とを、ボルトの頭部と、ナットとの間で必要に応じてワッシャを介在させた状態で挟着する方法、ボルトを他の部材に設けられたねじ穴にねじ込む方法などが挙げられる。
【0013】
本発明の接合構造は、特に限定されないが、樹脂カラーの外周面と、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の貫通孔内周面が少なくとも一部で融着されていることが好ましい。
【0014】
本発明の接合構造において、繊維強化熱可塑性樹脂材の強化繊維としては、特に限定されないが、例えば、炭素繊維(PAN系、ピッチ系など)、ガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維(ポリルーブパラフェニレンベンズオキサゾール)などが挙げられる。また、植物繊維(竹繊維、麻系繊維など)や動物繊維(ウールなど)等の天然繊維(天然由来の繊維も含む)も挙げられ、炭素繊維が好適である。
繊維強化熱可塑性樹脂材の母材樹脂としては、特に限定されないが、ポリプロピレンが一般的である。
【0015】
樹脂カラーは、微細繊維を含む熱可塑性樹脂組成物で形成されていることが好ましい。
そして、炭素繊維強化ポリプロピレン材の接合に用いる場合、例えば、ポリプロピレンと無水マレイン酸変性ポリプロピレンからなる変性ポリプロピレンと、微細ガラス繊維を含む樹脂組成物で形成したものが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接合構造は、上記のように、繊維強化熱可塑性樹脂材が、機械的に接合された繊維強化熱可塑性樹脂材の接合構造であって、貫通孔が設けられた前記繊維強化熱可塑性樹脂材と、貫通孔が設けられた他の部材が、前記貫通孔同士が連通した状態に重ね合わさるとともに、ボルト孔が設けられ、筒状の樹脂カラーが、前記連通状態の貫通孔内に挿入され、ていて、樹脂カラーの外周面と、前記繊維強化熱可塑性樹脂材の貫通孔内周面が少なくとも一部で融着されており、前記繊維強化熱可塑性樹脂材と他の部材が、前記ボルト孔に挿通されたボルトによってねじ固定されているので、樹脂カラーを用いず、繊維強化熱可塑性樹脂材に設けた貫通孔に直接ボルトを挿通して機械的に接合する接合構造に比べ、接合強度の高いものとなる。
したがって、繊維強化熱可塑性樹脂材の使用途が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に用いる樹脂カラーの1例をあらわす斜視図である。
【図2】本発明の接合構造の実施例および比較例に用いた接合構造サンプルの1例を説明する図で、同図(a)は試験片をあらわす斜視図、同図(b)はこの試験片を用いた接合構造サンプルをあらわす斜視図である。
【図3】図2の接合構造サンプルの断面図であって、同図(a)は比較例、同図(b)は実施例をあらわしている。
【図4】CFRP試験片、CFRTP試験片、および、アルミニウム試験片を用いて作製された図2(b)および図3(c)に示す接合構造サンプルのそれぞれについて、ボルトの締結トルクを変化させて、引張試験を行い、ボルトの締結トルク毎の、継手効率を対比して示したグラフである。
【図5】図4の引張試験に供したCFRP試験片の締結トルク0Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRP試験片の内部状態を、X線スキャナを用いて撮影した画像であって、同図(a)は最大荷重の65%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図6】図4の引張試験に供したCFRP試験片の締結トルク10Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRP試験片の内部状態を、X線スキャナを用いて撮影した画像であって、同図(a)は最大荷重の65%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図7】図4の引張試験に供したCFRP試験片の締結トルク0Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRP試験片の貫通孔部分の損傷状態をマイクロスコープで観察した画像であって、図(a)は最大荷重の65%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図8】図4の引張試験に供したCFRP試験片の締結トルク10Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRP試験片の貫通孔部分の損傷状態をマイクロスコープで観察した画像であって、図(a)は最大荷重の65%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図9】図4の引張試験に供したCFRTP試験片の締結トルク0Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRTP試験片の内部状態を、X線スキャナを用いて撮影した画像であって、同図(a)は最大荷重の50%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図10】図4の引張試験に供したCFRTP試験片の締結トルク10Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRTP試験片の内部状態を、X線スキャナを用いて撮影した画像であって、同図(a)は最大荷重の50%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図11】図4の引張試験に供したCFRTP試験片の締結トルク0Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRTP試験片の貫通孔部分の損傷状態をマイクロスコープで観察した画像であって、図(a)は最大荷重の50%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図12】図4の引張試験に供したCFRTP試験片の締結トルク10Nmの状態で引張試験を行ったのちのCFRTP試験片の貫通孔部分の損傷状態をマイクロスコープで観察した画像であって、図(a)は最大荷重の50%の負荷時の状態をあらわし、同図(b)は最大荷重時の状態をあらわしている。
【図13】CFRP試験片、樹脂カラーA使用CFRP試験片、樹脂カラーB使用CFRP試験片のそれぞれを用いた接合構造サンプルの、ボルトの締結トルクを変化させて引張試験を行い、ボルトの締結トルク毎の、継手効率を対比して示したグラフである。
【図14】CFRTP試験片、樹脂カラーA使用CFRTP試験片、樹脂カラーB使用CFRTP試験片のそれぞれを用いた接合構造サンプルの、ボルトの締結トルクを変化させて引張試験を行い、ボルトの締結トルク毎の、継手効率を対比して示したグラフである。
【図15】樹脂カラーA使用CFRTP試験片、樹脂カラーB使用CFRTP試験片の荷重-変位を調べた結果をあらわし、同図(a)は樹脂カラーA使用CFRTP試験片の結果をあらわすグラフ、同図(b)は樹脂カラーB使用CFRTP試験片の結果をあらわすグラフである。
【図16】樹脂カラーA使用CFRTP試験片、樹脂カラーB使用CFRTP試験片のそれぞれを用いた接合構造サンプルに、4.0kN時の引張荷重をかけたのちの、貫通孔縁のCFRTP試験片の内部状態を、X線スキャナを用いて撮影した画像であって、同図(a)が樹脂カラーA使用CFRTP試験片の画像、同図(b)が樹脂カラーB使用CFRTP試験片の画像である。
【図17】樹脂カラーB使用CFRTP試験片の貫通孔の内壁面の状態のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を、その実施例と比較例を対比させながら説明する。

【0019】
〔改質ポリプロピレン(PP)ペレットの作製〕
ポリプロピレン(PP)ペレット(J708UG:株式会社プライムポリマー)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)ペレット(ユーメックス 1001:三洋化成工業株式会社)およびポリプロピレン不織布(日本バイリーン社製帯状不織布、幅100mm,比重0.91,引張強度50MPa,弾性率2GPa)を、重量比で、PPペレット:MAPPペレット:PP不織布=85:5:10の割合で、二軸押出機に投入し、混練押出したのち、ペレタイザーを用いて改質ポリプロピレン(PP)ペレットを得た。

【0020】
〔微細ガラス繊維入り改質ポリプロピレン(PP)ペレットの作製〕
繊維径0.5μm,繊維長さ200~2000μmの微細ガラス繊維(日本無機株式会社:FM1700)を、上記改質PPペレットの配合物100に対して重量比で0.5となるように、二軸押出機に上記改質PPペレットの配合物とともに投入し、混練押出したのち、ペレタイザーを用いて微細ガラス繊維入り改質ポリプロピレン(PP)ペレットを得た。

【0021】
〔樹脂カラーAの作製〕
上記改質PPペレットを円筒状の金型に入れ、ヒートプレス機(HB200HB:河中産業株式会社)を用いて温度220℃,無圧の状態で10分保持した後、温度220℃,圧力1 MPaの状態で1分間保持することで、直径8mm,長さ7mmの丸棒をプレス成形した。
成形後、室温条件下で徐冷して硬化させた後、旋盤を用いて図1に示すように外径8mm、内径6mm、高さ7mmの樹脂カラーAを得た。

【0022】
〔樹脂カラーBの作製〕
改質PPペレットに変えて上記微細ガラス繊維入り改質PPペレットを用いた以外は、上記樹脂カラーAと同様にして樹脂カラーBを得た。

【0023】
〔CFRP試験片Aの作製〕
補強繊維にPAN系平織り炭素繊維布(三菱レイヨン株式会社:TR 3110-MS),母材にエポキシ樹脂(三菱化学株式会社:グレード828)を用いてハンドレイアップ法によって、平織り炭素繊維布を8層積層したのち、積層した材料を、ヒートプレス機(河中産業株式会社:HB200HB)を用いて、5 MPaの圧力下,80℃で1時間,150℃で3時間の条件でプレス成形し、成形後、室温条件下で徐冷して、CFRP板材を得た
得られたCFRP板材の強度は、約740MPaであった。
つぎに、上記CFRP板材を、ダイヤモンドカッターとフライス盤を用いて図2 (a)に示す寸法に切り出すとともに、φ6.02mmの貫通孔を穿設してCFRP試験片Aを得た。

【0024】
〔CFRP試験片Bの作製〕
φ8.02mmの貫通孔を設けた以外は、上記CFRP試験片Aと同様にしてCFRP試験片Bを得た。

【0025】
〔CFRTP試験片Aの作製〕
汎用グレードのプリプレグ(三菱レイヨン株式会社製、母材:マレイン酸変性ポリプロピレン、補強繊維:PAN系炭素繊維)を積層構成が[(0/90)4]sとなるように、積層し、0.5MPaの圧力の下、200℃でプレスした後、80℃でプレス成形し、室温条件下で徐冷してCFRTP板材を得た。
得られたCFRTP板材の強度は、約544MPaであった。
つぎに、上記CFRTP板材を、ダイヤモンドカッターとフライス盤を用いて図2 (a)に示す寸法に切り出すとともに、φ6.02mmの貫通孔を穿設してCFRTP試験片Aを得た。

【0026】
〔CFRTP試験片Bの作製〕
φ8.02mmの貫通孔を設けた以外は、上記CFRTP試験片Bと同様にしてCFRTP試験片Bを得た。

【0027】
(比較例1)
3枚のCFRP試験片Aを図2(b)および図3(a)に示すように、貫通孔を一致させるとともに、上下2枚のCFRP試験片Aの間にアルミニウム板を介在させ、ワッシャを介在させた状態でM6のボルトを貫通孔に挿通し、ボルト先端にナットを締め込んで、繊維強化樹脂複合材であるCFRPの接合サンプルA(以下、継手Aと記す)を得た。
なお、ボルトはSCM435(クロムモリブデン鋼)の市販の六角穴付きボルト、ワッシャはSPCC(冷間圧延鋼板)の平座金、ナットはSS400(一般構造用圧延鋼)の六角ナットを使用した。
また、アルミニウム板と、上下のCFRP試験片Aとは、エポキシ系接着剤(ニチバン株式会社:アラルダイトAR-1600)を用いて接着した。

【0028】
(比較例2)
CFRP試験片Aに代えて、CFRTP試験片Aを用いた以外は、比較例1と同様にして繊維強化樹脂複合材であるCFRTPの接合サンプルB(以下、継手Bと記す)を得た。

【0029】
(比較例3)
3枚のCFRP試験片Bを図2(b)および図3(b)に示すように、貫通孔を一致させるとともに、上下2枚のCFRP試験片Bの間にアルミニウム板を介在させた。
そして、3枚のCFRP試験片Bの貫通孔を貫通するように、上記樹脂カラーAを装着したのち、ワッシャを介在させた状態でM6のボルトを樹脂カラーAに挿通し、ボルト先端にナットを締め込んで、樹脂カラーA使用のCFRPの接合サンプルC(以下、継手Cと記す)を得た。
なお、ボルトはSCM435(クロムモリブデン鋼)の市販の六角穴付きボルト、ワッシャはSPCC(冷間圧延鋼板)の平座金、ナットはSS400(一般構造用圧延鋼)の六角ナットを使用した。
また、アルミニウム板と、上下のCFRP試験片Bとは、エポキシ系接着剤(ニチバン株式会社:アラルダイトAR-1600)を用いて接着した。

【0030】
(比較例4)
樹脂カラーAに代えて、樹脂カラーBを用いた以外は、上記比較例3と同様にして、樹脂カラーB使用のCFRPの接合サンプルD(以下、継手Dと記す)を得た。

【0031】
(実施例1)
3枚のCFRTP試験片Bを図2(b)および図3(b)に示すように、貫通孔を一致させるとともに、上下2枚のCFRTP試験片Bの間にアルミニウム板を介在させた。
そして、3枚のCFRTP試験片Bの貫通孔を貫通するように、上記樹脂カラーAを装着したのち、ヒートガン(石崎電機製作所:PJ-203A1)を用いてボルト締結部周辺を5分間加熱し、試験片と樹脂カラーの溶着を行った。その際には25×25 mm、厚さ約0.3 mmのPP製のシートを敷いた。
つぎに、ワッシャを介在させた状態でM6のボルトを樹脂カラーAに挿通し、ボルト先端にナットを締め込んで、樹脂カラーA使用のCFRTPの接合サンプルE(以下、継手Eと記す)を得た。
なお、ボルトはSCM435(クロムモリブデン鋼)の市販の六角穴付きボルト、ワッシャはSPCC(冷間圧延鋼板)の平座金、ナットはSS400(一般構造用圧延鋼)の六角ナットを使用した。
また、アルミニウム板と、上下のCFRTP試験片Bとは、エポキシ系接着剤(ニチバン株式会社:アラルダイトAR-1600)を用いて接着した。

【0032】
(実施例2)
樹脂カラーAに代えて、樹脂カラーBを用いた以外は、上記実施例1と同様にして、樹脂カラーA使用のCFRTPの接合サンプルF(以下、継手Fと記す)を得た。

【0033】
(比較例5)
3枚のCFRP試験片Aに代えて、3枚の貫通孔を有するアルミニウム板を用いた以外は、比較例1と同様にして、比較のための接合サンプルG(以下、継手Gと記す)を得た。

【0034】
また、200×25mmのCFRPおよびCFRTPの平滑試験片も用意した。

【0035】
比較例1で得られた継手A、比較例2で得られた継手B、比較例5で得られた継手Gのそれぞれについて、ボルトの締結トルクを、0(いわゆる手締めの条件),5,10,20 Nmにした状態で、ボルトの締結トルクを、万能材料試験機(島津製作所:オートグラフ,定格荷重100kN)を用い,変位制御により静的引張せん断試験を以下の条件で行い、継手効率(joint efficiency)Cを求め、その結果を、図4に示した。
なお、一般に、M6のボルトを用いてSS材を締結する場合には、4.9Nm程度の締結トルクが常用される。

【0036】
〔試験条件〕
試験片の標点間距離:100 mm
クロスヘッドの速度:1 mm/min
試験環境:実験室環境下(温度23 ℃,湿度 50~65 %)

【0037】
また、継手効率Cは、以下の式により求めた。

【0038】
【数1】
JP2017159547A_000003t.gif

【0039】
図4から、CFRPを用いた継手AおよびCFRTPを用いた継手Bの継手効率は、アルミニウム板を用いた場合の継手Gの継手効率に比べてかなり小さい(約1/4程度)ことを確認できる。また、継手A,B,Gの各継手とも、ボルトの締結トルクを大きくすると継手効率が向上することがわかる。さらに、CFRPを用いた継手AおよびCFRTPを用いた継手Bの場合、ボルトの締結トルクを10 Nmより大きくすると、締結トルクの増分に伴う継手効率の向上の変化が小さくなることがわかる。

【0040】
締結トルク0Nmとした上記継手Aの、引張せん断試験に供したのちのCFRP試験片Aの損傷状態(内部状態)をX線CTスキャナ(株式会社東陽テクニカ:SkyScan1172)を用いて撮影し、締結トルクを0Nmとした際の初期の荷重低下が生じた3.5kN(最大荷重の約65%)負荷時の損傷状態を図5(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図5(b)にそれぞれ示した。
なお、CT画像は、図5に示すように、CFRP試験片Aに設けた貫通孔の中心を原点と考えた際のxy平面の観察画像とした。

【0041】
締結トルク10Nmとした上記継手Aの、引張せん断試験に供したのちのCFRP試験片Aの損傷状態を同様にしてX線CTスキャナ(株式会社東陽テクニカ:SkyScan1172)を用いて
撮影し、締結トルクを10 Nmとした際の初期の荷重低下が生じた3.5kN(最大荷重の約65%)負荷時の損傷状態を図6(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図6(b)にそれぞれ示した。

【0042】
また、上記のようにしてX線CTスキャナを用いて観察を行った後の締結トルクを0Nm および10Nm としたときの、CFRP試験片Aについて、図5(a)に記載した点線部分で切断し、観察用試験片をそれぞれ作製した。
そして、上記のようにして用意した観察用試験片をシリコンゴム製の成形型に入れて固定した後、汎用ビニルエステル(ディーエイチ・マテリアル株式会社:商品名XD-009改)、硬化剤(化薬アクゾ株式会社:商品名硬化剤328E)、促進剤(有限会社林ケミカル:商品名オクチル酸コバルト)を100:1:0.3の重量割合で混合した硬化性樹脂組成物を成形型に入れ、24時間室温条件下に保持し硬化させた。

【0043】
つぎに、観察用試験片を、マイクロスコープを用いて図5(a)に示した矢印方向から貫通孔の中心を原点と考えた際のyz平面を観察し、損傷状態(内部状態)を調べた。
そして、締結トルクを0Nmとし、引張せん断試験に供試した際に初期の荷重低下が生じた3.5kN(最大荷重の約65%)負荷時の損傷状態を図7(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図7(b)にそれぞれ示した。

【0044】
また、締結トルクを10Nmとし、引張せん断試験に供試した際に初期の荷重低下が生じた3.5kN(最大荷重の約65%)負荷時の損傷状態を図8(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図8(b)にそれぞれ示した。

【0045】
上記図5(a)および図7(a)から、ボルトの締結トルクを0Nmとした場合において、CFRP試験片Aは貫通孔に面内方向圧縮を受けることにより、比較的早期に貫通孔付近で圧壊が生じ、面外方向にふくらみが生じていることがわかる。また、圧縮を受けることにより比較的早期に炭素繊維にキンク損傷が確認されるとともに、貫通孔近傍に層間はく離が確認され、負荷荷重の増加に伴い貫通孔から離れた位置にも確認されることがわかる。
一方、上記図5(b)および図7(b)から、また、ボルトの締結トルクを0Nmとした場合において、最大荷重負荷後には、き裂が荷重負荷方向へ進展していることが確認された。

【0046】
他方、ボルトの締結トルクを10Nmとした場合において、図6(b)に示すように、き裂が、荷重負荷方向に対し、45°方向へ進展したことを確認された。また、図8に示すように、締結トルクを10Nmとした場合において、圧壊に伴う面外方向への大きなふくらみは確認されなかった。また、図6(a)および図8(a)に示すように、早期の損傷は確認されず、図6(b)および図8(b)に示すように、最大荷重負荷後に貫通孔近傍にキンク損傷が確認された。
上記のように。締結トルクを10Nmとした試験片の方が、特に圧壊が小さかったことから、ボルトに締結トルクを負荷させることにより締結物であるCFRP試験片A間に摩擦力が生じることで、荷重負荷開始直後にはボルトによる貫通孔側面への面内方向圧縮が大きく負荷されていなかったことが考えられる。

【0047】
締結トルクを0Nmとした上記継手Bの、引張せん断試験に供したのちのCFRTP試験片Aの損傷状態(内部状態)をX線CTスキャナ(株式会社東陽テクニカ:SkyScan1172)を用いて撮影し、締結トルクを0Nmとした際の初期の荷重低下が生じた1.5kN(最大荷重の約50%)負荷時の損傷状態を図9(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図9(b)にそれぞれ示した。
なお、CT画像は、図9に示すように、CFRTP試験片Aに設けた貫通孔の中心を原点と考えた際のxy平面の観察画像とした。

【0048】
締結トルク10Nmとした上記継手Bの、引張せん断試験に供したのちのCFRTP試験片Aの損傷状態を同様にしてX線CTスキャナ(株式会社東陽テクニカ:SkyScan1172)を用いて撮影し、締結トルクを10 Nmとした際の初期の荷重低下が生じた1.5kN(最大荷重の約50%)負荷時の損傷状態を図10(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図10(b)にそれぞれ示した。

【0049】
また、上記のようにしてX線CTスキャナを用いて観察を行った後の締結トルクを0Nm および10Nm としたときの、CFRTP試験片Aについて、図9(a)に記載した点線部分で切断し、観察用試験片をそれぞれ作製した。
そして、上記のようにして用意した観察用試験片をシリコンゴム製の成形型に入れて固定した後、汎用ビニルエステル(ディーエイチ・マテリアル株式会社:商品名XD-009改)、硬化剤(化薬アクゾ株式会社:商品名硬化剤328E)、促進剤(有限会社林ケミカル:商品名オクチル酸コバルト)を100:1:0.3の重量割合で混合した硬化性樹脂組成物を成形型に入れ、24時間室温条件下に保持し硬化させた。

【0050】
つぎに、観察用試験片を、マイクロスコープを用いて図10(a)に示した矢印方向から貫通孔の中心を原点と考えた際のyz平面を観察し、損傷状態(内部状態)を調べた。
そして、締結トルクを0Nmとし、引張せん断試験に供試した際に初期の荷重低下が生じた1.5kN(最大荷重の約50%)負荷時の損傷状態を図11(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図11(b)にそれぞれ示した。

【0051】
また、締結トルクを10Nmとし、引張せん断試験に供試した際に初期の荷重低下が生じた1.5kN(最大荷重の約50%)負荷時の損傷状態を図12(a)に、最大荷重負荷後の損傷状態を図12(b)にそれぞれ示した。

【0052】
上記図9(a)および図11(a)に示すように、ボルトの締結トルクを0 Nmとした場合において、CFRTP試験片Aは貫通孔に面内方向圧縮を受けることにより、先のCFRP試験片Aの場合と同様に、比較的早期に貫通孔付近で圧壊が見られ、CFRP試験片Aと比較して面外方向への顕著な変形が確認された。また、圧縮を受けることにより比較的早期に炭素繊維にキンク損傷が確認された。しかし、CFRTP試験片AではCFRP試験片Aに見られた層間はく離は確認されなかった。また最大荷重負荷後には図9(b)に示すように、貫通孔の両端にき裂が見られた。

【0053】
他方、ボルトの締結トルクを10Nmとした場合、図10(a)および図12(a)に示すように、荷重負荷開始直後には圧壊に伴う面外方向への大きなふくらみは確認されなかったが、図10(a)および図12(a)に示すように、最大荷重負荷時では面外方向への変形が確認され、早期に変形が生じないことが確認された。
これは先のCFRP試験片Aの場合と同様に、ボルトに締結トルクを負荷させることにより締結物であるCFRTP試験片A間に摩擦力が生じることで、荷重負荷開始直後にはボルトによる貫通孔側面への面内方向圧縮が負荷されていなかったことが考えられる。

【0054】
上記CFRP試験片Bと樹脂カラーAを用いた比較例3の継手Cおよび上記CFRP試験片Bと樹脂カラーBを用いた比較例4の継手Dについて、締結トルクを0,5,10 Nmとした場合の継手効率を上記と同様にして求め、その結果を、上記継手Aと対比させて図13に示した。
図13に示すように、カラーの使用の有無にかかわらず、ボルトの締結トルクの増加に伴い、継手効率が増加することが確認された。

【0055】
また、継手Aとガラス繊維を添加していない樹脂カラーAを用いた継手Cについては、いずれもボルトの締結トルクを0 Nmとした際の継手効率は約13 %、5Nmとした際の継手効率は約18 %であった。
同様に、微細ガラス繊維を添加していない樹脂カラーAを用いた継手Cと、微細ガラス繊維を添加した樹脂カラーBを用いた継手Dの継手効率を比較してもその差はないことがわかる。
すなわち、CFRPの接合においては、樹脂カラーを併用しても、継手の機械的特性への影響が認められないとともに、微細ガラス繊維添加の影響は確認されなかった。

【0056】
上記CFRTP試験片Bと樹脂カラーAを用いた実施例1の継手Eおよび上記CFRTP試験片Bと樹脂カラーBを用いた実施例2の継手Fについて、締結トルクを0,5,10 Nmとした場合の継手効率を上記と同様にして求め、その結果を、上記継手Bと対比させて図14に示した。
図14に示すように、ボルトの締結トルクを5Nmとするまでは、CFRP試験片の場合と同様にカラーの使用の有無にかかわらず、ボルトの締結トルクの増加に伴い、継手効率が増加することが確認された。

【0057】
すなわち、微細ガラス繊維が添加されていない樹脂カラーAを用いた継手Eでは、ボルトの締結トルクを0Nmとした場合、継手Bに比べ、継手効率が相対的に約35 %向上し、ボルトの締結トルクを5Nmとした場合、継手効率が相対的に約22%向上している。
また、微細ガラス繊維を添加した樹脂カラーBを用いた継手Fでは、ボルトの締結トルクを0Nmとした場合、継手効率が継手Bに比べ、約58%向上し、ボルトの締結トルクを5 Nmとした場合、約12%向上している。

【0058】
一方、ボルトの締め付け締結トルクを10Nmとした場合、継手Eおよび継手Fのいずれも、継手Aに比べて、継手効率が低下している。
これらのことから、CFRTPの接合において、樹脂カラーを用いるとともに、樹脂カラーの外周面と、CFRTPの貫通孔の内周面を溶着するようにすれば、接合強度が上がることがわかる。

【0059】
また、微細繊維を添加した樹脂カラーを用いるようにすれば、特に、ボルト締結トルクが緩慢条件の際の継手効率の低下を抑制するために有効であると考えられる。

【0060】
上記継手Eの荷重-変位線図を図15(a) に、継手Fの荷重-変位線図を図15(b) にそれぞれ示した。なお、差異を明確化するために、この時の締結トルクを0Nmとした。
2つの荷重-変位線図を比較すると、どちらの試験片を用いた場合でも最初の荷重低下は約2.5 kNで生じていることがわかる。これはボルト接触部において圧縮破壊が生じたことによるものであると考えられる。

【0061】
また、継手Eの場合、図15(a) に示すように、Knee-point荷重が若干低く、また最大荷重後の損傷進展が見られた。
一方、継手Fの場合、図15(b) に示すように、比較的高荷重負荷時まで損傷が生じていないことが確認された。
このことから微細ガラス繊維が添加された樹脂カラーを併用することにより、約4kN時(継手Eの破壊荷重の約95%)に生じる損傷が抑制されたと考えられる。

【0062】
上記継手Eおよび継手Fをそれぞれ引張荷重4.0 kNで引張せん断試験に供したのち、それぞれのCFRTP試験片Bについて、貫通孔周辺の損傷状態をX線CTスキャナ(株式会社東陽テクニカ:SkyScan1172)を用いて撮影し、その結果を、継手Eについては図16(a)に、継手Fについては図16(b)に示した。
図16(a)と、図16(b)を比較すると、微細ガラス繊維を添加した樹脂カラーを用いた継手Fの貫通孔の左右両端部の損傷が小さいことがわかる。

【0063】
このことから、微細ガラス繊維が、高荷重負荷時に生じる損傷を抑制したことで継手効率が向上したと考えられる。
したがって、微細繊維を添加した樹脂カラーを併用することで、CFRTPに設けた貫通孔縁の切断面に露出した炭素繊維の損傷が抑制され、継手効率が向上すると考えられる。

【0064】
図17に、継手Fの破壊後のCFRTP試験片Bの貫通孔縁のSEM画像を示す。
図17に示すように、継手Fの破壊後のCFRTP試験片Bの貫通孔縁には、ガラス繊維が確認された。
一方、図示していないが、継手Eの破壊後のCFRTP試験片Bの貫通孔縁には、このような状態は確認されなかった。

【0065】
すなわち、CFRTP試験片Bをボルト締結する際に、微細ガラス繊維が添加された樹脂カラーBを併用することで、樹脂カラーBに添加した微細繊維によりCFRTP試験片Bに設けた貫通孔側面にひっかき効果が生じ、局所的な損傷が抑制されると思われる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16