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明細書 :直列に配向させた繊維状カーボンナノチューブ製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-160062 (P2017-160062A)
公開日 平成29年9月14日(2017.9.14)
発明の名称または考案の名称 直列に配向させた繊維状カーボンナノチューブ製造方法
国際特許分類 C01B  32/152       (2017.01)
C01B  32/158       (2017.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C01B 31/02 101F
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2016-043335 (P2016-043335)
出願日 平成28年3月7日(2016.3.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年1月27日 公益財団法人 村田学術振興財団が刊行した「ANNUAL REPORT OF THE MURATA SCIENCE FOUNDATION No.29 2015.12」に本件発明に係る内容を発表。
発明者または考案者 【氏名】佐藤 英樹
【氏名】古松 佑介
【氏名】水嶌 悠貴
出願人 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
Fターム 4G146AA11
4G146AB06
4G146AB10
4G146AD05
4G146AD29
4G146BA04
4G146BC09
4G146BC23
4G146CB03
4G146CB16
4G146CB17
4G146CB26
4G146CB28
4G146CB40
要約 【課題】繊維状カーボンナノチューブを一定の方向に直線状に整列させる方法には、電子顕微鏡下にて手作業で操作する、或いはフォトリソグラフィーで作製した微小電極構造を用い電極間に配列させるなど、きわめて限定された実施例しかない。
【解決手段】
不活性ガスなどで圧力調整された容器内に、1対の電極を対向配置させる。少なくとも電極の一方は平板で、表面にカーボンナノチューブ薄膜が塗布され、電極間隔は数 mmオーダーの任意の間隔に設定される。電極間に直流電圧(200 V-1 kV)を印加し、放電させることで電極間を架橋して、直線状に配向したカーボンナノチューブ繊維が作成される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の電極の一方の電極面上に2本以上のカーボンナノチューブを配置し、当該電極と他方の電極間に電圧を印加して電極間に放電を発生させ、前記2本以上のカーボンナノチューブを電界方向に直列に配向・一体化させて製造することを特徴とする直列に配向させた繊維状カーボンナノチューブ製造方法。
【請求項2】
前記一対の電極を、ガスの種類と圧力を調整可能な容器内に設置し、前記ガスの種類と圧力を調整して、前記一対の電極間に直流又は交流電圧を印加して電極間に放電を発生させ、電極間を架橋するように前記カーボンナノチューブを直列に配向・一体化させて製造することを特徴とする請求項1に記載の直列に配向させた繊維状カーボンナノチューブ製造方法。
【請求項3】
前記一対の電極の電極間に電圧を印加して電極間に放電を発生させた状態で、前記電極間の間隔を逐次拡張させて、長尺の繊維状カーボンナノチューブを作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の直列に配向させた繊維状カーボンナノチューブ製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダムに配向している繊維状カーボンナノチューブを一定の方向に直線状に整列させて作成する直列に配向させた繊維状カーボンナノチューブ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維状カーボンナノチューブを微細な電気配線として利用する場合、これを任意の電極間に精密に架橋させる技術が必要になる。カーボンナノチューブの合成は一般的に、1)アーク放電法、 2)レーザー蒸発法、3)化学気相成長法(CVD法)によって行われる。これらのうち1)、2)の方法は、多量のカーボンナノチューブを同時に合成する方法である。そのため、これらの方法で合成した短繊維状のカーボンナノチューブを直線状に配列させて電極間に架橋させ、電気回路の配線に用いようとする場合、多量のカーボンナノチューブの中から適切なものを選択し、これを電極間に架橋させる方法が別途必要になる。
【0003】
多数のカーボンナノチューブの中から1本を選び、これを針先端に取り付けることも行われており、この方法を利用した走査型プローブ顕微鏡用探針も試作されている。その実施例として、例えば特許文献1が挙げられる。しかしながら、この方法では、カーボンナノチューブを扱うために特殊な電子顕微鏡が必要であり、また作業に際し熟練した技術も必要となる。さらに、この方法では、任意の電極に1本のカーボンナノチューブを取り付けることは可能であるが、電極間にカーボンナノチューブを架橋させることは困難である。
【0004】
一方、3)の方法では、1)、2)の方法と同様に多量のカーボンナノチューブを合成することができる一方で、少数のカーボンナノチューブを限定された場所に、選択的に成長させることもできる。このような方法でカーボンナノチューブを架橋させた実施例として、非特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-227435<nplcit num="1"> <text>“Electric-field-directed growth of aligned single-walled carbon nanotubes”Yuegang Zhang, Aileen Chang, Jien Cao, Qian Wang, Woong Kim, Yiming Li, Nathan Morris, Erhan Yenilmez, Jing Kong and Hongjie DaiApplied Physics Letters 79, 3155 (2001)</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、カーボンナノチューブを任意の電極間に架橋させることは従来困難であった。この原因として、カーボンナノチューブの極めて微細なサイズが挙げられる。このような微細な材料を従来の方法でハンドリングすることには限界がある。このような扱いの難しさが、カーボンナノチューブを様々な電気電子機器に利用することを困難にしてきた側面がある。
本発明が解決しようとする課題は、繊維状のカーボンナノチューブに電界を印加して、電極間に直線状に配列させる方法により、直線状に配列させたカーボンナノチューブ繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこれまで、一対の電極の片方にカーボンナノチューブを薄膜状に塗布し、適当なガス雰囲気下でこの電極間に電圧を印加したときに発生する絶縁破壊と、その結果発生する放電の特性を調査してきた。これはカーボンナノチューブを電極上に塗布することにより、その放電特性を向上させることが目的であった。この研究を遂行する過程で、ある放電条件下において電極上に塗布したカーボンナノチューブが電極から剥離し、これが電極間を短絡する現象が確認された。この現象を利用すれば、上記に記載する課題を解決するための手段として利用可能であるとの着想を得て、本発明に到った。
【0008】
請求項1に記載の発明は、一対の電極の一方の電極面上に2本以上のカーボンナノチューブを塗布等の方法で配置し、当該電極と他方の電極間に電圧を印加する。この時、2本以上のカーボンナノチューブは電極表面から剥がれ、電界方向に直列に配向して一体化される。本発明は、電界方向に配列・一体化させて製造する直列に配向させた繊維状カーボンナノチューブの製造方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記一対の電極を、ガスの種類と圧力を調整可能な容器内に設置し、前記ガスの種類と圧力を調整して、前記一対の電極間に直流又は交流電圧を印加し、電極間を架橋するように前記カーボンナノチューブを直列に配向・一体化させて製造する直列に配向させたカーボンナノチューブの製造方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、一対の電極の電極間に電圧を印加して電極間を架橋する繊維状カーボンナノチューブを形成させ、その後、電極間に電圧を印加した状態で、電極間隔を逐次拡張させながら長尺の繊維状カーボンナノチューブを製作する方法である。直列に配向する繊維状カーボンナノチューブは電極間を架橋して形成されるので、電極間隔が拡張されると一端直列に配向した繊維状カーボンナノチューブに再配列が生じ、拡張された電極間隔に対応する新たな再架橋が生じて長尺化する。電極間隔は連続的に拡張させても、一定の休止時間を設けて断続的に拡張させてもよい。また、印加電圧は、電極間隔に対応させて設定することができる。
【0011】
本発明は、金属電極表面にカーボンナノチューブ薄膜を塗布する工程と、ガス雰囲気が制御可能な容器内に、この電極と別の電極を対向させてある一定間隔で設置する工程と、容器内を真空排気した後に容器内に放電用ガスを所望の圧力まで導入する工程と、前記工程後に容器内に設置した両電極間に電圧を印加して放電を発生させる工程と、カーボンナノチューブが架橋したことを確認後、放電を停止させる工程からなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法では、電極間にカーボンナノチューブの架橋を行うために、電極間隔を、たとえば1 mm程度の間隔にして設置すればよく、目視での作業が可能である。したがって特殊な電子顕微鏡を使用するなどの必要は無く、また作業にあたり高度な特殊技能なども必要としない。そのため本発明は従来技術と比較して容易に実施可能であり、工業的応用に際しては有利であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の方法の一例を模式的に説明する図である。
【図2】実施例1に記載のカーボンナノチューブを塗布したステンレス基板の一例を示す写真である。
【図3】実施例1の方法で得られた電極間でのカーボンナノチューブ架橋構造の一例を示す写真である。
【図4】実施例1の方法で得られた架橋構造による糸状のカーボンナノチューブ束をラマン分光分析して得られたスペクトルを示す図である。
【図5】実施例2の方法で得られた電極間に1本だけ架橋したカーボンナノチューブ束の一例を示す写真である。
【図6】実施例3の方法で得られた電極間を 1 mmから4 mmまで1 mmずつ段階的に変化させてカーボンナノチューブ架橋構造を形成した一連の例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明を実施するための装置構成例である(符号1-12)。
本発明の電極基板(符号1及び2)は、金属(ステンレス、アルミニウム、銅など)あるいは黒鉛などの導電性材料から成り、これを2個、一定間隔を空けて対向させて配置し、一対の電極を形成する。

【0015】
前記の電極の少なくとも片方(符号1)の表面には、カーボンナノチューブが塗布される。このとき、カーボンナノチューブの塗布厚は1-50μm程度で良い。カーボンナノチューブの塗布方法としては、カーボンナノチューブ分散液を電極表面にスプレー状に吹き付けてカーボンナノチューブを塗布する方法、マット状のカーボンナノチューブを電極表面に圧着させ固定する方法、化学気相成長法によりカーボンナノチューブを電極表面に直接成長させる方法、などの方法が利用できる。 図2にステンレス基板(符号13)上に塗布したカーボンナノチューブ膜(符号14)の例を示す。

【0016】
電極の形状は、典型的には平面を有するものが用いられるが、カーボンナノチューブを塗布可能であり、かつ放電を発生、維持することが可能な形状であれば、必ずしも平面を有する必要は無い。たとえば片側を平板形状、もう片側を針状の形状にするなど、両電極が非対称な形状を有していても良い。

【0017】
両電極の間隔は、0.5-1.0mm程度が適切であるが、これより狭くても架橋可能である。また、これより間隔が大きくなっても架橋させることは可能である。これらの間隔を確保するため、電極間に絶縁体のスペーサーを設置する、電極を治具により固定するなどの方法を用いることができる。電極間隔を任意に設定する必要がある場合は、直線導入機を用いれば良い(符号3)。

【0018】
電極を設置する容器(符号4)は、ステンレス製やガラス製などの真空排気可能な容器で、容器内の空気を真空排気するため真空ポンプ(符号5)と真空計(符号6)、排気バルブ(符号7)などが設置されていることが望ましい。真空排気は、少なくとも5Pa以下の真空圧力まで行うことが望ましい。そのため容器内はターボ分子ポンプや油拡散ポンプなどの高真空ポンプを備えていることが望ましいが、油回転ポンプのみによる実施も可能である。

【0019】
前記の容器には、さらに所望のガスを導入可能なガス導入機構が設置されており、これにより真空排気状態から任意の圧力までガス導入が行われる。このとき、容器内の導入ガス圧力を測定するため、容器には大気圧まで測定可能な真空計、あるいはブルドン管式圧力計など圧力計測装置が備わっていることが望ましい。ガス導入の際は、ガスボンベ(符号8)内のガスを圧力調整器により適切な圧力まで減圧する必要があるが、ガスバルブ(符号9)の開度を調整して導入可能であれば良く、流量計などによる導入流量調整は必ずしも必要ではない。
容器内に導入するガスは、化学的に不活性でかつ電圧印加により容易に放電するガスが用いられる。具体的には、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの希ガス、および窒素が使用可能である。

【0020】
設置した電極は、片側は接地され、もう片側に電源(符号10)により電圧が印加される。電圧印加側には、保護抵抗として1 MΩ程度の高抵抗を直列に接続する(符号11)。これは、電極間に放電が発生し短絡状態になったときに回路を保護するためである。電極に印加する電圧は、直流電圧および交流電圧が考えられるが、直流電圧を用い、かつカーボンナノチューブ塗布した電極側を陰極にすると、より容易に架橋を行うことができる。

【0021】
印加電圧は電極間隔や導入ガス種により依存して変化するが、200V以上の印加電圧で電極間に放電が発生することが多い。放電が発生したことの確認は、電極に直列に電流計(符号12)を設置し、電流が流れたことを確認することで行うことができるが、電極間を目視して確認することも可能である。
<実施例1>

【0022】
ステンレス製容器内に接地した電極ホルダーの片側にカーボンナノチューブ塗布済みのステンレス板を、もう片方にはこのステンレス板電極より面積の小さいステンレス製円柱電極を設置した。カーボンナノチューブ塗布方法には、化学気相成長法を用いた。この電極間隔は、直線導入機により任意の間隔に設定可能であり、ここでは1.0 mmに設定した。

【0023】
カーボンナノチューブ塗布済みの電極には1 MΩの保護抵抗を介して直流電源を接続し、負電位の電圧を印加できるようにした。またもう片方の電極は電流計を介して接地した。
容器内をロータリーポンプにて3 Paまで真空排気後、アルゴンガスを容器内に大気圧まで導入した。圧力測定はピラニー真空計およびブルドン管式連成計により行った。
陰極に直流電圧を-600Vまで印加したところ、電極間に放電が発生した。このとき、電流計により200μAの電流が流れていることが確認された。

【0024】
放電発生を確認後、直ちに電圧印加を0Vにして放電を停止させたところ、図3に示すように電極間に多数のカーボンナノチューブが繊維状に架橋していることが確認された。これらは、目視にて確認できることから、多数のカーボンナノチューブが束状に列なって電極間に架橋していると考えられる。
カーボンナノチューブの架橋構造を作製後、電極を容器外に取り出し、ラマン分光法により電極表面の糸状物質を分析したところ、図4に示すようにカーボンナノチューブの存在を示すGバンドピークが確認されたことから、電極間に形成された架橋構造はカーボンナノチューブによるものであることが確認された。
<実施例2>

【0025】
電極板へのカーボンナノチューブ塗布方法としてマット状カーボンナノチューブを金属板に圧着する方法を用い、カーボンナノチューブ塗布電極を作製した。
前記の電極を使用して実施例1と同様の実験を行ったところ、図5に示すように電極間に1本だけのカーボンナノチューブ束が架橋することが確認された。
<実施例3>

【0026】
電極間の間隔を1mmから4mmまで4段階で変化させ、電極間へのカーボンナノチューブ束の架橋を試みたところ、いずれの間隔でもカーボンナノチューブ束が繊維状に架橋することが確認された(図6)。これより、電極間隔を任意に変化させることで、架橋するカーボンナノチューブ束の長さを変化させることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、カーボンナノチューブの優れた熱伝導特性と電気伝導性を利用した圧力計、ガス検知機など各種センサーの作製方法として利用可能である。また、針状電極先端にカーボンナノチューブを接着することが可能なことから、電界放出電子源作製方法として利用可能である。更には、長尺のカーボンナノチューブ繊維束の作成にも利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 カーボンナノチューブ塗布電極
2 電極
3 直線導入機
4 真空容器
5 真空ポンプ
6 真空計
7 排気バルブ
8 ガスボンベ
9 ガスバルブ
10 電源
11 保護抵抗
12 電流計
13 ステンレス基板
14 カーボンナノチューブ膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5