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明細書 :スライム抑制方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-176979 (P2017-176979A)
公開日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 スライム抑制方法
国際特許分類 C02F   1/24        (2006.01)
B01F   3/04        (2006.01)
B01F   5/06        (2006.01)
FI C02F 1/24 B
B01F 3/04 A
B01F 5/06
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-066480 (P2016-066480)
出願日 平成28年3月29日(2016.3.29)
発明者または考案者 【氏名】田中 愛里
【氏名】飯泉 太郎
【氏名】伊藤 司
出願人 【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100078732、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 保
【識別番号】100089185、【弁理士】、【氏名又は名称】片岡 誠
【識別番号】100131635、【弁理士】、【氏名又は名称】有永 俊
審査請求 未請求
テーマコード 4D037
4G035
Fターム 4D037AA08
4D037AB03
4D037BA01
4D037BB05
4G035AB08
4G035AC26
4G035AE13
要約 【課題】水系において形成されるスライムを剥離する際に使用される化学物質を用いることなく、また、微生物の細胞外多糖類の発生を抑制することにより微生物の分散状態を維持して、効果的にスライムの発生を抑制させる方法を提供する。
【解決手段】水系中の微生物に起因するスライムの発生を抑制するスライム抑制方法であって、平均径が1~100μmである微細気泡を微細気泡発生手段から前記水系に供給する微細気泡供給工程を含み、前記微細気泡発生手段が振動手段を具備し、該振動手段が、前記微細気泡が前記水系側に通過する1以上の貫通孔を有し、かつ、前記水系側に突出し前記貫通孔を含む突部を有してなり、前記振動手段を振動させながら前記貫通孔を通じて前記微細気泡を前記水系に供給する、スライム抑制方法である。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
水系中の微生物に起因するスライムの発生を抑制するスライム抑制方法であって、
平均径が1~100μmである微細気泡を微細気泡発生手段から前記水系に供給する微細気泡供給工程を含み、
前記微細気泡発生手段が振動手段を具備し、該振動手段が、前記微細気泡が前記水系側に通過する1以上の貫通孔を有し、かつ、前記水系側に突出し前記貫通孔を含む突部を有してなり、
前記振動手段を振動させながら前記貫通孔を通じて前記微細気泡を前記水系に供給する、スライム抑制方法。
【請求項2】
前記貫通孔は前記水系側に向かって径が小さくなっている、請求項1に記載のスライム抑制方法。
【請求項3】
前記貫通孔が前記突部にのみ設けられている、請求項1又は2に記載のスライム抑制方法。
【請求項4】
前記貫通孔の水系側の孔径が4~10μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のスライム抑制方法。
【請求項5】
前記微細気泡により、前記微生物を分散状態とし、材料表面へのスライム付着量を減少させる、請求項1~4のいずれか1項に記載のスライム抑制方法。
【請求項6】
前記微細気泡の総気泡密度を500個/mL以上とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のスライム抑制方法。
【請求項7】
環境中に存在する細菌種により構成されるスライムに対して適用する、請求項1~6のいずれか1項に記載のスライム抑制方法。
【請求項8】
前記スライムがシュードモナス(Pseudomonas)属により構成されるスライムに対して適用する、請求項1~6のいずれか1項に記載のスライム抑制方法。
【請求項9】
前記スライムがシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)に属する細菌により構成されるスライムに対して適用する、請求項1~6のいずれか1項に記載のスライム抑制方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はスライム抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各工場やビルの冷却水プロセス、製紙プロセス、膜処理プロセスでは、細菌等の微生物によってスライム(バイオフィルム)が系内に発生し、熱交換効率低下や水質劣化、膜の閉塞等の障害を引き起こす。このバイオフィルムは、微生物が環境ストレス等に晒された際に、これに対して抵抗性を高めるために、細胞外多糖類(細胞外マトリックスや細胞外ポリマーともいう)を分泌することで、細胞同士を接着させ集合体を形成させていると考えられている。このようなスライムによる障害を防ぐ方法として、原因となる微生物の死滅や増殖抑制を目的とした抗菌剤を添加したり、形成したスライムを剥離・洗浄したりする方法が利用されている。従来、殺菌剤としては次亜塩素酸ナトリウムや有機系抗菌剤のCl-MIT(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)やDBNPA(2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド)、剥離剤としてはヒドラジン、過酸化水素等が使用されてきた。
【0003】
近年、環境規制等の強まりや薬剤コストの低減のために、化学物質使用量の低減が求められている。薬剤使用量を低減できる新たな方法の一つとして微細気泡によるスライムコントロール技術が挙げられる。
【0004】
微細気泡(ファインバブルまたはウルトラファインバブル)を用いた技術は様々な産業分野で利用されている。ファインバブルとはおおむね100μmから1μmの径を持つ気泡を指し、ウルトラファインバブルとはおおむね1μm以下の径の気泡を指す。これらの微細気泡は、高い酸素溶解効率を示すだけでなく、気泡表面の帯電や圧壊によるフリーラジカルの発生、生物の活性化等の物理的特徴をもつことから、スライムコントロールへの利用も行われている。
【0005】
例えば、特許文献1では冷却水系内に設けた担体上の微生物を微細気泡で活性化し、その有機物分解能力を高めることで系内を清澄に保つ技術が開示されている。また、特許文献2では微細気泡への吸着により微生物を除去する技術が開示されている。特許文献3では、微細気泡と殺菌剤との併用効果について検討されており、浮遊性の細菌やスライム中の細菌の殺菌に効果を示すことが開示されている。
【0006】
従来の微細気泡の発生方法は、旋回流で気体と液体を高速に混合させて発生させる方法(高速旋回流方式)や、高速回転するプロペラ等で気体をせん断して微細気泡化する方法(気液せん断方式)が主流であった。この他、微細気泡を発生させる方法には、気体を加圧して液体に溶解させた後で圧力を開放する方法(圧力開放方式)や、液体中に超音波を与えてキャビテーションにより発生させる方法(超音波方式)がある。
【0007】
また、特許文献4では、振動板を具備する微生物培養装置による微生物分散培養法や細胞外多糖類抑制方法が開示されている。当該装置によって、既述の方式よりも細菌へのストレスが少ない状態の培養が可能となり、細胞外多糖類の生成が抑制され、細菌を分散状態で培養することが可能となる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許4184390号公報
【特許文献2】特許5534414号公報
【特許文献3】特開2013-180956号公報
【特許文献4】特開2014-150784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~3では微細気泡によるスライムの抑制が開示されているが、いずれの方法も発生機構に特徴をもつものはなく、一般的な発生方式を用いている。また、既述の圧力開放方式や超音波方式も含め、これらの方法では水系に存在する微生物に損傷を与えてしまう可能性がある。また、いずれの方法も液体そのものに高流速やせん断や圧力などの負荷を与える方法である。このような気泡発生機構が原因となる細菌の損傷により、微生物の生産する細胞外多糖類の形成量は増加する(例えば、特許文献4参照)。細胞外多糖類はスライム形成に関与する重要な因子であるため、従来の気泡発生方式では細胞損傷によるスライム形成促進が起こり、スライム量の減少効果が低下することが予想される。
【0010】
特許文献4では、ストレスを与えることなく微細な気泡を発生させ続けることにより、細胞外多糖類の生成を抑制し、微生物を分散状態で維持して培養することが可能であるが、スライム発生の抑制効果について評価はされていない。
【0011】
以上から本発明は、水系において形成されるスライムを剥離するための化学物質を用いることなく、また、微生物の細胞外多糖類の発生を抑制することにより微生物の分散状態を良好に維持して、効果的にスライムを低減させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明に想到し当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0013】
[1] 水系中の微生物に起因するスライムの発生を抑制するスライム抑制方法であって、平均径が1~100μmである微細気泡を微細気泡発生手段から前記水系に供給する微細気泡供給工程を含み、前記微細気泡発生手段が振動手段を具備し、該振動手段が、前記微細気泡が前記水系側に通過する1以上の貫通孔を有し、かつ、前記水系側に突出し前記貫通孔を含む突部を有してなり、前記振動手段を振動させながら前記貫通孔を通じて前記微細気泡を前記水系に供給する、スライム抑制方法。
[2] 前記貫通孔は前記水系側に向かって径が小さくなっている、[1]に記載のスライム抑制方法。
[3] 前記貫通孔が前記突部にのみ設けられている、[1]又は[2]に記載のスライム抑制方法。
[4] 前記貫通孔の水系側の孔径が4~10μmである、[1]~[3]のいずれかに記載のスライム抑制方法。
[5] 前記微細気泡により、前記微生物を分散状態とし、材料表面へのスライム付着量を減少させる、[1]~[4]のいずれかに記載のスライム抑制方法。
[6] 前記微細気泡の総気泡密度を500個/mL以上とする、[1]~[5]のいずれかに記載のスライム抑制方法。
[7] 環境中に存在する細菌種により構成されるスライムに対して適用する、[1]~[6]のいずれかに記載のスライム抑制方法。
[8] 前記スライムがシュードモナス(Pseudomonas)属により構成されるスライムに対して適用する、[1]~[6]のいずれかに記載のスライム抑制方法。
[9] 前記スライムがシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)に属する細菌により構成されるスライムに対して適用する、[1]~[6]のいずれかに記載のスライム抑制方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水系において形成されるスライムを剥離するための化学物質を用いることなく、また、微生物の細胞外多糖類の発生を抑制することにより微生物の分散状態を良好に維持して、効果的にスライムを低減させる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る微細気泡発生装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る微細気泡発生装置における振動板の一例を示す概略構成図である。
【図3】実施例で使用した試験装置の概略構成図である。
【図4】通水日数と染色スライム抽出液の吸光度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施態様(「以下、「本実施態様」ということがある」)に係るスライム抑制方法は、水系中の微生物に起因するスライムの発生を抑制するスライム抑制方法であって、平均径が1~100μmである微細気泡を微細気泡発生手段から前記水系に供給する微細気泡供給工程を含み、前記微細気泡発生手段が振動手段を具備し、該振動手段が、前記微細気泡が前記水系側に通過する1以上の貫通孔を有し、かつ、前記水系側に突出し前記貫通孔を含む突部を有してなり、前記振動手段を振動させながら前記貫通孔を通じて前記微細気泡を前記水系に供給する、スライム抑制方法である。

【0017】
以下では、まず、微細気泡発生手段としての微細気泡発生装置について説明し、さらにこれを用いた微細気泡供給工程について説明する。

【0018】
(1)微細気泡発生装置
本実施態様に係る微細気泡発生装置としては特許文献4に記載された装置を適用することが好ましい。

【0019】
具体的な構成を図1及び図2に示す。図1は、振動板2を水槽1内の下端に設けた例の概略図であり、当該微細気泡発生装置は、水槽1内の下端に突部を上(水槽1内部側)にして設置された、突部に1つ以上の貫通孔を有する振動板2と、振動板2の下側に接続され、水槽1にその振動板2の貫通孔を通じて所定の気体を供給するためのコンプレッサーまたはボンベ3と、振動板2に超音波振動を与えるための発振機4とを具備する。
なお、微細気泡発生装置は、水槽1でなく水系が存在する配管内に設けてもよい。この場合、微細気泡発生装置の突部を配管内部側に設置する。

【0020】
微生物培養に必要な所定の気体が、コンプレッサーまたはボンベ3から、振動板2の貫通孔を通して水槽1に供給される。このとき、所定の周波数振動が、発振機4から高周波電圧を印加された圧電振動素子5から振動板2に与えられる。

【0021】
図2(A)は、振動板2の断面図であり、ドーム状の突部8に複数の貫通孔6を有する。そして、水槽1内の下端に、突部8が上(水槽1内部)側にくるように設置される。そして図中下部はコンプレッサーまたはボンベ3に繋がっている。

【0022】
図2(B)は、振動板2を上方から見た上面図であり、当該図においてドーナツ状に見えるのは、発振機4からの高周波電圧を受けて超音波振動を振動板2に伝える圧電振動素子5であり、突部8は、ドーナツ状の中央部に位置する。このドーナツ状の圧電振動素子5が、発振機4からの高周波電圧の印加により振動すると、ドーナツ状の圧電振動素子5の中央部に位置する突部8も同様に振動する。そして、振動板2に振動を与えることにより、コンプレッサーまたはボンベ3から供給された気体は、突部8の貫通孔6を通るときに細かくちぎられ、微細気泡7となって水槽1内に放出される。

【0023】
振動板2に超音波振動を伝える圧電振動素子5としては、例えば、国際公開第2007/026872号に記載の圧電セラミックスを有する超音波振動ユニットを好適に使用できるが、発振機4からの超音波を振動板2に伝えることができるものであれば制限なく使用できる。

【0024】
本実施態様における上記微細気泡とは、平均径100μm以下のものであることが微生物の細胞外多糖類生成抑制の観点などから好ましく、平均径50μm以下であることがより好ましい。微細気泡の平均径の下限は、通常1μmである。

【0025】
微細気泡の大きさ(気泡径)は、振動板2の形状、及び振動板2が有する貫通孔の形状、孔径及びピッチ間隔等を変更することにより、調整することが可能である。振動板2は、1枚で使用しても、2枚重ねて使用してもよく、2枚の振動板2の間にスペーサーメッシュを挟んでもよい。2枚重ねの場合は、2枚とも突部を有しても、水槽1に近い側の振動板2だけが突部を有するものでもよい。

【0026】
振動板2に存在する貫通孔は、1つだけでもよいが複数であることが好ましい。複数の場合、振動板2全体に存在しても、突部8にのみ存在してもよい。また、貫通孔の配置は、振動板2に1列に存在しても、千鳥配置であってもよいが、突部8のみに千鳥配置とするのが好ましい。

【0027】
貫通孔は、孔が振動板2を貫通していればよく、その形状に特段の制限はないが、図2(C)に示すように、図中上部の水槽1側に開口する面の径aが図中下部の気体を供給する装置であるコンプレッサーまたはボンベ3接続側の面の径bよりも小さくなっていることが好ましく、ホーン形状、円錐台形状、テーパード形状などが例示される。ただし、貫通孔の水槽1内部側に面する部分の径aと気体を供給する装置に接続する側に面する部分の径bがa<bの関係にあれば、それらをつなぐ両横(側面)はどのような形状であっても、良好な微細気泡を発生し得る。仮に、径aと径bがa>bの関係にあれば、水槽1の液体が気体を供給する装置の側に向けて噴霧され続ける場合があり、送気に支障を生ずることがある。

【0028】
微細気泡を平均径100μm以下とするには、貫通孔の水槽1内部側の孔径は4~10μmが好ましく、また、貫通孔を複数設ける場合の貫通孔の孔数は1200個までが好ましく、126~350個がより好ましい。

【0029】
発振機4、コンプレッサーまたはボンベ3等の気体を供給するための装置、及びその他の装置や部材等については、特開2009-078223号公報等に記載の既存のものを使用することができる。

【0030】
本実施態様に係る装置においては、気体を供給するための装置として、コンプレッサーの他に、空気、酸素、水素、メタン、二酸化炭素、またはこれらの混合ガスなどの気体を供給することができる、ポンプ、またはガスボンベなども利用できる。ガス供給装置からの気体の種類及び流量は、培養する微生物に合わせて適宜設定し得るが、流量は0.5~3.0ml/分が好ましい。

【0031】
また、発振機4が発する周波数は、90~130kHzにある共振周波数の±5kHzの範囲が好ましく、振動板2が共振する共振周波数がより好ましい。この周波数による振動が振動板2に伝わると、水系中において気泡径が100μm以下、好ましくは50μm以下の微細気泡が発生しやすい。

【0032】
(2)微細気泡供給工程
微細気泡供給工程では、上記の微細気泡発生装置にて微細気泡を水系に供給することによりスライムの発生を抑制する。

【0033】
当該工程では、平均径が1~100μmである微細気泡を、好ましくは総気泡数密度が500個/mL以上(より好ましくは1000個/mL以上)で供給する。微細気泡によるスライム抑制機構は一般的には明確ではないが、疎水性物質に対する微細気泡の吸着と浮上効果、あるいは圧壊時の衝撃やフリーラジカルの発生などの物理的効果が提唱されている。本実施態様では、水流によるせん断力が極めて小さい条件で微細気泡が形成されるため、細菌のストレスが緩和され、スライムの形成が抑制される。
ここで、総気泡数密度は「水系に対する微細気泡の個数」であり、その測定は、SALD-7500nano(島津製作所)を使用して行うことができる。

【0034】
微細気泡を含む水を対象系内に注入する、または被処理水に直接微細気泡を吹き込む、あるいは被処理水の一部の水を採取し微細気泡を吹き込んだ後、もとに戻すこともできる。いずれにしても、スライムに作用する際に微細気泡が存在すればよい。

【0035】
処理対象となる水系としては、スライムが発生する水系であれば特に限定されず、例えば、各種工場のプラント冷却水系、スクラバー、紙パルプ水系、廃水処理水系、排水処理水系、鉄鋼水系、切削油水系、RO膜等の分離膜を用いた膜プロセス水系などが挙げられ、これらの装置、通水配管などのスライムを抑制することができる。

【0036】
本実施態様を適用することで、環境中に存在する細菌の細胞外多糖類の形成量を減少させ、各工場のビルや冷却水プロセス、製紙プロセス、膜処理プロセスで発生するスライムを効果的に減少させることができる。

【0037】
特に、各工場のビルや冷却水プロセス、製紙プロセス、膜処理プロセスで発生するスライムに対する処理の観点から、(1)環境中に存在する細菌種により構成されるスライム、(2)シュードモナス(Pseudomonas)属により構成されるスライム、および(3)シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)に属する細菌により構成されるスライムに関連する環境に対して適用することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
[実施例1、比較例1]
<実験条件>
図3に示す試験装置を用いてPseudomonas putida由来スライムに対する抑制効果を評価する実験を行った。
【実施例】
【0040】
Pseudomonas putidaは、紙パルプ水系より単離され、16S rDNAの配列より同定された細菌を使用した。
【実施例】
【0041】
当該試験装置は、保有水量1.5Lの水槽24と培地を供給するための配管25が設けられており、不図示のポンプにより配管26、シリコンチューブ27、配管28を通じて処理水を循環させる循環システムを備えている。水槽24には、東京理化器械製微生物用ファーメンターMBF-250MEを使用した。さらに、微細気泡または粗大気泡を水槽の保有水に供給するための振動板29を有する(微細)気泡発生手段30を備えている。また、攪拌翼23も備えている。また、水量を一定量に保つための排水配管20と不図示のポンプを備えている。なお、図中の矢印は気体や流体の流れ方向を示すものである。
【実施例】
【0042】
実験はまず、グルコース45mg/L、ポリペプトン9.2mg/L、酵母エキス34.6mg/L、KHPO0.6mg/L、NaHPO0.9mg/L、残部脱塩素水道水からなる培地を30℃の温度条件下で、配管25を通じて水槽24内に供給した。この際1/10PY培地にて前培養したPseudomonas putida溶液を水槽24に対して1mL添加し、1日間の順化培養を行った。その後に配管26を通じて、内径3mmのシリコンチューブ27内に0.2m/秒の線速度で14日間通水し、スライムを形成させた。このとき、水槽24内では攪拌翼23で攪拌(回転数:75rpm)しながら、微細気泡または粗大気泡による通気を行った。
【実施例】
【0043】
微細気泡(実施例1)は特許文献4に記載された微細気泡発生装置を用いて供給した。当該気泡発生装置(気泡発生手段30)における振動板29は、水槽24側に突出する突部を有し、その振動板29が有する孔は、突部にのみ開いており、図2(C)のようなホーン形状であって、孔径aは10μm、孔数が350個、ピッチ間隔は150μmであるものを使用した。振動板29に超音波振動を伝えるものとしては、圧電セラミックスを有する国際公開第2007/026872号に記載の超音波振動ユニットを使用した。通気には7mの空気ボンベ(伊藤忠工業ガス)、発振機はTEXIO製のFG-274を使用した。また、当該装置は2台使用し、発振器が発する周波数は105~112kHz、気体(ガス種:空気)の流量は1mL/minであった。
この装置は気泡径が平均50μmの気泡(ただし、気泡径は1~100μmで、総気泡密度は2000個/mL)を発生させる。
【実施例】
【0044】
また、粗大気泡の供給(比較例1)には、気泡発生手段30として東京理化器械製微生物用ファーメンターMBF-250MEの付属品であるリングスパージャーを使用し、直径約10mmの気泡を0.2L/minで供給した。
【実施例】
【0045】
スライム量の測定は、下記の手順により実施した。シリコンチューブ27の一部を採取し、15cmずつ切り取り、脱塩素水道水で洗浄した後、0.1%クリスタルバイオレット水溶液で20分間染色した。染色後、再び脱塩素水道水で洗浄し、スライムに付着したクリスタルバイオレットを、4mLのエタノールで抽出し590nmの吸光度を測定した。
【実施例】
【0046】
また、培養液の一部を採取し、0.45μmフィルターでろ過後、DOC-Labor製LC-OCD(Liquid Chromatography-Organic Carbon)により測定を行うことで、溶解性有機物分子量分布を測定し、分子量約10万の有機物濃度(高分子溶解性有機物の濃度)を算出した。
【実施例】
【0047】
<結果・考察>
スライム量の結果を図4に示す。実施例1では微細気泡、比較例1では粗大気泡の供給を行った。14日間の通水の間、比較例1と比較して実施例1は約3割程度のスライム量減少がみられた。
【実施例】
【0048】
また、高分子溶解性有機物の濃度の測定結果を表1に示した。通水日数2~14日の間、実施例1は比較例1に対して2~3割の有機物量であった。
【実施例】
【0049】
【表1】
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【実施例】
【0050】
以上の結果より、実施例1は、比較例1である粗大気泡の通気と比較して、スライム付着量を減少させる効果があることが分かった。微細気泡により細菌の高分子有機物の形成量が減少したことで、材料表面または細菌同士の結合能が低下し、スライム量が減少したことが推察される。
【符号の説明】
【0051】
1 水槽
2 振動板
3 コンプレッサーまたはボンベ
4 発振機
5 圧電振動素子
6 貫通孔
7 微細気泡
8 突部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3