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明細書 :コミュニケーション能力評価支援装置、コミュニケーション能力評価支援システム、コミュニケーション能力評価支援方法及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-189381 (P2017-189381A)
公開日 平成29年10月19日(2017.10.19)
発明の名称または考案の名称 コミュニケーション能力評価支援装置、コミュニケーション能力評価支援システム、コミュニケーション能力評価支援方法及びプログラム
国際特許分類 A61B  10/00        (2006.01)
G09B   5/06        (2006.01)
G09B   7/02        (2006.01)
G10L  13/00        (2006.01)
A61B   5/16        (2006.01)
FI A61B 10/00 H
G09B 5/06
G09B 7/02
G10L 13/00 100Z
A61B 5/16
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2016-080402 (P2016-080402)
出願日 平成28年4月13日(2016.4.13)
発明者または考案者 【氏名】大塚 作一
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
審査請求 未請求
テーマコード 2C028
4C038
Fターム 2C028BB04
2C028BB06
2C028BC01
4C038PR01
4C038PR04
要約 【課題】簡易な構成で適切に潜在的コミュニケーション困難性のスクリーニングを行うことができるコミュニケーション能力評価支援装置等を提供する。
【解決手段】コミュニケーション能力評価支援装置10は、潜在的コミュニケーション困難性の判定のための課題を音声情報として出力可能な音声出力部30と、課題に対する回答を受け付ける入力部33と、入力部33に入力された回答が課題に対する正答であるか否かを判定する判定部202とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
コミュニケーション能力評価のための課題を音声情報として出力可能な音声出力部と、
前記音声出力部が出力した課題に対する回答を受け付ける入力部と、
前記入力部に入力された回答が正答であるか否かを判定する判定部と、
を備えるコミュニケーション能力評価支援装置。
【請求項2】
前記課題は、
誤信念課題である、請求項1に記載のコミュニケーション能力評価支援装置。
【請求項3】
コミュニケーション能力評価のための課題を視覚情報として出力可能な表示部を備える、請求項1又は2に記載のコミュニケーション能力評価支援装置。
【請求項4】
前記音声出力部は、コミュニケーション能力改善のための訓練課題を音声情報として出力可能であり、
前記音声出力部が出力した訓練課題を視覚情報として出力可能な表示部を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコミュニケーション能力評価支援装置。
【請求項5】
前記訓練課題は、
難易度によって予め分類されている、請求項4に記載のコミュニケーション能力評価支援装置。
【請求項6】
コミュニケーション能力評価のための課題と前記課題に対する正答とを記憶するデータベースと、
課題を音声情報として出力する音声出力部は、前記データベースに保存されており前記データベースから送信された課題を出力する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコミュニケーション能力評価支援装置と、
を備えるコミュニケーション能力評価支援システム。
【請求項7】
コミュニケーション能力評価のための課題を音声情報として出力し、前記音声情報として出力された課題に対する回答の入力を受け付けて、前記回答が正答であるか否かを判定する、コミュニケーション能力評価支援方法。
【請求項8】
コンピュータを、
コミュニケーション能力評価のための課題を音声情報として出力する音声出力部、
前記音声出力部が出力した課題に対する回答を受け付ける入力部、
前記入力部に入力された回答が正答であるか否かを判定する判定部、
として機能させるプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーション能力評価支援装置、コミュニケーション能力評価支援システム、コミュニケーション能力評価支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
社会性やコミュニケーション能力に問題が生じる例として、自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorders、以下、ASDという)などの発達障害がよく知られている(非特許文献1)。ASDは、従来型の自閉症やアスペルガー症候群等を含む広い概念をまとめたものである(精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5))。
【0003】
ASDを正確に診断することは専門家でも困難であるが、自己回答形式のアンケートによっておおよその傾向を把握する取組も広く行われており、自閉症スペクトラム指数(Autism Spectrum Quotient、以下、AQという)テストとして普及している(非特許文献2)。
【0004】
また、ASDの程度は多彩であり、近年では、個性と発達障害の間に境界は存在しないと考えられている。定型発達(Typically Developing、以下、TDという)からわずかにASD傾向を有し、症状が軽度でサブクリニカルな人々を「広い自閉症表現型(Broader Autism Phenotype、以下、BAPという)」と定義することもある(非特許文献3)。非特許文献3によれば、AQの得点が、23~28をBAP、29~34をMAP(Medium Autism Phenotype)、35以上をNAP(Narrow Autism Phenotype)として区別している。
【0005】
したがって、一般的には、上述のAQテストを実施した結果、AQの得点が正常値(22以下)でTDに属すると推測される人、もしくは、AQの得点が23~28でBAPに属すると推測される人は、コミュニケーション能力には特段の問題がなく、医学的なケアは不要な状況であると認識されている。
【0006】
しかし、発明者の調査によって、AQの得点が十分に低い正常値(一桁から10点台)であって、本人も周囲もコミュニケーション能力が通常であると認識している人であっても、コミュニケーションに問題を生じる場合があることが、明らかとなった。具体的には、静穏な環境において、2者が一対一でごく一般的な会話を行っている中で「相手の状況を的確に把握することが出来ず、意図の取り違えを起こす人」が相当数存在することが明らかとなった。この状況は、一般的にASDが不得意とされる、3者以上の多人数で複雑な会話がなされる環境でもなく、高騒音環境下でもなかった(非特許文献1参照)。
【0007】
また、上述の調査では、「相手の状況を的確に把握することが出来ず、意図の取り違えを起こす」状況は、会話の速記録としてのメモをとらずに会話を行った場合において顕著に表れることも示された。この状況は、現状のASDの判定基準では説明できない。非特許文献2に示されるAQテストが、聴覚的なコミュニケーションと視覚的なコミュニケーションとを特徴的に区別するための診断項目を多数含んでいないことからも、上記の状況を説明できないことは明らかである。
【0008】
そこで、上述の属性を「潜在的コミュニケーション困難性(Latent Difficulties in Communications、以下、LDCという)」と名付けることにする。LDCをより具体的に表せば、「会話における潜在的文脈理解困難性」と捉えることができる。
【0009】
会話に限らず「相手の状況を的確に把握することが出来ず、意図の取り違えを起こす」状況は、ASDにおいて「心の理論:他者の感情や意志、欲求などを推察すること」が狭まる状況と推定されている。これに基づくASDのスクリーニング方法として、誤信念課題(False-belief task)を用いる方法が知られている。誤信念課題とは、他者の立場で状況を理解することができるか否かを判定する課題であり、幼児向けのものとしては、「サリーとアンの課題」がよく知られている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】林 寧哲 (監修),「これでわかる 大人の発達障害」,成美堂出版,2015
【非特許文献2】若林 明雄,東條 吉邦,Simon Baron-Cohen,Sally Wheelwright,「自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版の標準化—高機能臨床群と健常成人による検討—:高機能臨床群と健常成人による検討」,心理学研究 75(1),78-84,2004
【非特許文献3】Wheelwright et al.,Defining the broader,medium and narrow autism phenotype among parents using the Autism Spectrum Quotient (AQ) Molecular Autism 2010,1:10 (doi: 10.1186/2040-2392-1-10)
【非特許文献4】Simon Baron-Cohen,Alan M.Leslie,Uta Frith,「Does the autistic child have a "theory of mind"?」,Cognition,21(1),37-46,1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の誤信念課題を使ったASD対象のスクリーニングでは、課題の内容が重視される一方、その出題の形式は重視されておらず、一般的には図や文章を用いて出題される。しかしながら、LDCでは、問題の発生が「会話の速記録としてのメモをとらずに会話を行った場合において顕著に表れる」ため、聴覚情報によらず視覚情報によって出題された場合には適切に回答できる可能性が高い。
【0012】
したがって、視覚情報のみを用いた方法では、LDCのスクリーニングを適切に行うことは難しい。
【0013】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で適切にLDCのスクリーニングを行うことができるコミュニケーション能力評価支援装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、この発明の第1の観点に係るコミュニケーション能力評価支援装置は、コミュニケーション能力評価のための課題を音声情報として出力可能な音声出力部と、前記音声出力部が出力した課題に対する回答を受け付ける入力部と、前記入力部に入力された回答が正答であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0015】
また、前記課題は、誤信念課題であってもよい。
【0016】
また、前記コミュニケーション能力評価支援装置は、コミュニケーション能力評価のための課題を視覚情報として出力可能な表示部を備えることとしてもよい。
【0017】
また、前記音声出力部は、コミュニケーション能力改善のための訓練課題を音声情報として出力可能であり、前記コミュニケーション能力評価支援装置は、前記音声出力部が出力した訓練課題を視覚情報として出力可能な表示部を備えることとしてもよい。
【0018】
また、前記訓練課題は、難易度によって分類されていてもよい。
【0019】
この発明の第2の観点に係るコミュニケーション能力評価支援システムは、コミュニケーション能力評価のための課題と前記課題に対する正答とを記憶するデータベースと、課題を音声情報として出力する音声出力部は、前記データベースに保存されており前記データベースから送信された課題を出力する、上記いずれかのコミュニケーション能力評価支援装置と、を備える。
【0020】
この発明の第3の観点に係るコミュニケーション能力評価支援方法は、コミュニケーション能力評価のための課題を音声情報として出力し、前記音声情報として出力された課題に対する回答の入力を受け付けて、前記回答が正答であるか否かを判定する。
【0021】
この発明の第4の観点に係るプログラムは、コンピュータを、コミュニケーション能力評価のための課題を音声情報として出力する音声出力部、前記音声出力部が出力した課題に対する回答を受け付ける入力部、前記入力部に入力された回答が正答であるか否かを判定する判定部、として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、音声情報として出題された課題に対する被検者の理解度を把握することができるので、簡易な構成で適切にLDCのスクリーニングを行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係るコミュニケーション能力評価支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】コミュニケーション能力評価支援装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係るスクリーニング処理のフローチャートである。
【図4】モデル化した誤信念課題を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の変形例に係るスクリーニング処理のフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係るスクリーニング処理のフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態に係るコミュニケーション能力評価支援装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第3の実施の形態に係る訓練処理のフローチャートである。
【図9】第4の実施の形態に係るコミュニケーション能力評価支援システムの構成を示すブロック図である。
【図10】第4の実施の形態に係るスクリーニング処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図を参照しつつ、本発明に係る実施の形態について説明する。

【0025】
(実施の形態1)
図1のブロック図に示すように、コミュニケーション能力評価支援装置10は、制御部20、音声出力部30、表示部31、記憶部32及び入力部33を備えている。

【0026】
記憶部32は、被検者に出題する課題データ51等を記憶する。課題データ51は、被検者に出題するための音声課題データQaとこれに対応する正答データAaを含む。記憶部32には、複数の課題データ51が記憶されている。

【0027】
制御部20は、コミュニケーション能力評価支援装置10の全体を制御するものであり、出題部201及び判定部202を備えている。

【0028】
出題部201は、記憶部32から読み出した課題データ51を音声出力部30又は表示部31へ出力する。判定部202は、出題された課題に対する被検者の回答とその課題の正答とを比較する。また、判定部202は、この結果を、記憶部32に送信して記憶させるとともに、表示部31に送信して表示させることができる。

【0029】
音声出力部30は、出題部201から出力される課題データを、音声情報として出力することによって、被検者に出題する。

【0030】
表示部31は、出題部201から出力される課題データを、視覚情報として出力することにより、被検者に出題する。また、判定部202から受信した判定結果を表示する。

【0031】
入力部33は、出題された課題に対する被検者の回答を受け付ける。入力部33は、入力された回答を、判定部202へと送信する。

【0032】
図1に示すコミュニケーション能力評価支援装置10は、例えば、図2に示すハードウエア構成を有する。具体的には、コミュニケーション能力評価支援装置10は、装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)61と、CPU61の作業領域等として動作する主記憶部62と、CPU61の動作プログラム等を記憶する外部記憶部63と、被検者の回答を入力する入力部64と、課題等を音声として出力する音声出力部65と、課題等を視覚情報として出力する表示部66と、外部装置と通信を行う通信部67と、これらを接続するバス68から構成される。

【0033】
主記憶部62は、RAM(Random Access Memory)等から構成されている。主記憶部62には、外部記憶部63に記憶されており、CPU61を制御部20として動作させるための動作プログラム及びデータがロードされる。また、主記憶部62は、CPU61の作業領域(データの一時記憶領域)としても用いられる。

【0034】
外部記憶部63は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリから構成される。外部記憶部63には、CPU61に実行させるための動作プログラムと、被検者に出題する課題データ51が予め記憶されている。動作プログラムは、具体的には、課題の出力を行う出題プログラム631と、被検者によって入力された回答が正答か否か判定する正誤判定プログラム632を含む。主記憶部62及び外部記憶部63は、記憶部32として機能する。

【0035】
入力部64は、キーボード及びマウス等のデバイスと、これらのデバイスをバス68に接続するインタフェース装置から構成されている。入力部64は、入力部33として機能するものであり、被検者の回答等を入力する。

【0036】
音声出力部65は、スピーカ、アンプ、D/Aコンバータ等から構成され、音声出力部30として機能する。

【0037】
表示部66は、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶モニター等の表示用デバイスから構成され、表示部31として機能する。

【0038】
次に、図1及び図3に基づいてコミュニケーション能力評価支援装置10の処理の流れについて説明する。

【0039】
処理が開始されると、出題部201は、記憶部32から課題データ51を読み出す(S11)。課題データ51は、課題を音声情報として出題するための音声課題データQaを含み、課題に対応する正答データAaとともに記憶部32に記憶されている。

【0040】
ここで、記憶部32に記憶されている課題データ51としては、LDC判定に使用される種々の課題を用いることができ、例えば、誤信念課題を用いることができる。誤信念課題とは、主として他者の心理状態を理解できるか否かの判定を行う課題である。また、子供向けの誤信念課題の代表として、サリーとアン課題、アイスクリーム課題(メアリーとジョン課題)等が知られている。

【0041】
本実施の形態では、図4のように一般化した誤信念課題モデルに基づいて、課題を作成している。誤信念課題モデルに関する詳細は、後述する。

【0042】
出題部201は、読み出した音声課題データQaを音声出力部30へ送信する。音声出力部30は、被検者に対して、音声情報として課題を出力する(S12)。

【0043】
入力部33は、音声情報として出題された課題に対する被検者の回答を受け付け(S13)、入力された回答を判定部202へ送信する。

【0044】
判定部202は、被検者の回答を受信すると、記憶部32から正答データAaを読み出し、被検者の回答と正答を比較して正誤判定を行う(S15)。判定部202は、被検者の回答が正答である場合には「問題なし」と判定し(S16)、被検者の回答が誤答である場合には「LDCの疑いあり」と判定する(S17)。また、判定部202は、判定結果を記憶部32に記憶させるとともに、表示部31へ送信する。表示部31は、受信した判定結果を表示する(S18)。なお、本処理では、判定結果を表示することとしたが、目的に応じて非表示にすることも可能である。

【0045】
次に、本実施の形態で用いる誤信念課題モデルについて説明する。図4は、2名の会話による誤信念課題モデルであり、左側に、記号を用いて一般化した誤信念課題モデルを示し、右側に、具体例を示している。

【0046】
図4の例は、補助条件SCを3個用いて、飲食店を選択する会話である。Step1では、Aの発言内容として、「急いでいる」という条件C1が示される。さらに、「値段が安い」という補助条件SC1、「店が近い」という補助条件SC2、及び「店が空いている」という補助条件SC3が示される。その後、Bの発言として例えば、「中華料理屋であれば、安くて近いが、混んでいる」という補助条件の一部を満たさない提案P1を示す。

【0047】
次に、Step2では、AがBに対して他の提案を促す。Bは、これに応答して、例えば「定食屋であれば、安くて空いているが、少し遠い」という、P1とは異なる提案であって、補助条件の一部を満たさない提案P2を示す。

【0048】
そして、Step3で、Aはこれまでの条件C1を否定し「ゆっくりしよう」と発言する。これに対して、Bは例えば「天ぷら屋は、高くて、少し遠く、少し待つかもしれないが、お店の中はゆったりとしている」と提案P3を示す。被検者は、この提案P3が良い提案か悪い提案かを回答する。

【0049】
上記の誤信念課題モデルを一般的に表現すると、StepN(Nは3以上)で、Aが心変わりし、当初設定した条件C1を全面的に否定する発言を行う。ただし、個別の補助条件SCには原則として言及しない。そして、「Bの提案(Pn)は、良い提案か、悪い提案か」との設問を被検者に提示する。この設問に対し、「よい(または悪くない)提案である」との回答が正答である。

【0050】
しかしながら、被検者がLDCである場合、口頭で確認するだけでは、暗黙裡に補助条件が変更されたことに気づかず、当初の補助条件にとらわれてしまう。その結果、「悪い提案である」と回答する、または、条件を整理することができず悩んでしまう。

【0051】
以上のように、一般化した誤信念課題モデルに基づいて、課題を作成することにより、課題のバリエーションを増やすことができ、より的確な判定を行うことが可能となる。

【0052】
また、上記StepNで、Aが条件C1を全面的に否定する発言を行わないように設定してもよい。この場合、「悪い提案である」との回答が正答となるので、常に「良い提案である」との回答が正答となってしまうことを避けることができる。

【0053】
さらに、上記StepNで、補助条件に全く言及しない場合、個別の補助条件のみを変更してこれに言及する場合等、設問のレベルを調整することにより、被検者の「細部へのこだわり度合」がどの程度であるかを推定することも可能であり、また、後述の実施形態3における訓練への応用も可能である。

【0054】
また、上記では、Stepの数を3以上としたが、被検者の細部へのこだわりが極端に強い場合には、N=2としてもよい。

【0055】
また、上記では、2人による会話の課題例を示したが、会話の登場人物の数をより多くすることによって、課題の難易度を調整することも可能である。例えば、会話の登場人物を3人以上とすることで会話を複雑化し、課題の難易度を上げることができる。

【0056】
以上のように、本実施の形態では、LDCの判定に用いられる誤信念課題を、図や文章による視覚情報ではなく音声による聴覚情報として出題することとしている。これにより、従来のASDの判定基準では適切にスクリーニングすることができなかったLDCの被検者を、適切にスクリーニングすることができる。より具体的には、コミュニケーションの問題が「会話の速記録としてのメモをとらずに会話を行った場合に顕著に表れる」ため、視覚情報によって出題された場合には適切に回答できる可能性が高いLDCの被検者であっても、適切にスクリーニングすることが可能である。

【0057】
(変形例)
上記の実施の形態では、被検者に対して出題される課題は1問としたが、より適切な判定を行うためには、複数の課題を用いることが好ましい。以下、図1及び図5に基づいて、複数の課題を用いた場合の処理の流れについて説明する。

【0058】
図5のフローチャートに示すように、本変形例では、記憶部32からの音声課題データQaの読み出し(S22)、課題の出力(S23)、被検者からの回答入力の受付(S24)及び正誤判定(S25)を予め定められた回数繰り返す点で、上記の実施例と異なる。

【0059】
例として、出題回数の設定値Kを3とした場合について説明する。処理が開始されると、出題数kがリセットされる(S21)。その後、出題部201は、記憶部32から1問目の課題となる音声課題データQaを読み出す(S22)。

【0060】
出題部201は、読み出した音声課題データQaを音声出力部30へ送信する。音声出力部30は、被検者に対して、音声情報として課題を出力する(S23)。

【0061】
入力部33は、音声情報として出題された課題に対する被検者の回答を受け付け(S24)、入力された回答を判定部202へ送信する。

【0062】
判定部202は、被検者の回答を受信すると、記憶部32から正答データAaを読み出し、被検者の回答と正答を比較して正誤判定を行い、判定結果を記憶部32に保存する(S25)。

【0063】
次いで、出題数kがカウントアップされてk=1となる(S26)。出題数kは設定値K=3に達していないので、処理がS22に戻される(S27;YES)。以下、出題数kが設定値Kに達するまでS22~S26の処理が繰り返される。

【0064】
出題数kが設定値K=3に達し、予め設定された数の課題が終了すると(S27;NO)、判定部202は、記憶部32から各課題の正誤判定結果を読み出して正答率を計算する(S28)。判定部202は、算出された正答率に基づいて判定(S29)を行う。例えば、3問の課題に対する正答率が3分の2以上であった場合には「問題なし」と判定し(S30)、正答率が3分の2未満である場合には「LDCの疑いあり」と判定する(S31)。また、判定部202は、判定結果を記憶部32に記憶させるとともに、表示部31へ送信する。表示部31は、受信した判定結果を表示する(S32)。

【0065】
以上のように、複数の課題を使用することで、判定の精度を向上させ、より的確な評価に寄与することができる。

【0066】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図6に基づいて説明する。本実施の形態2では、視覚情報による課題及びIQ(Intelligence Quotient)テストを使用する点で、上記実施の形態1と異なっている。

【0067】
図6に示すS41~S45の各ステップの処理は、上記実施の形態1で説明したS11~S15と同様である。また、S45において、音声情報による課題に対して被検者の回答が正答である場合、すなわち判定結果が「問題なし」の場合の処理(S46、S47)も上記実施の形態1で説明した処理(S16、S18)と同様である。

【0068】
一方、本実施の形態2では、S45において音声情報による課題についての正誤判定が誤り、すなわち「LDCの疑いあり」と認められる場合に、引き続き視覚情報による判定を行う。

【0069】
具体的には、出題部201が、記憶部32から課題データ51を読み出す(S50)。ここで読み出す課題データ51は、課題を視覚情報として出題するための文章、図等からなる視覚課題データQvを含み、課題に対応する正答データAvとともに記憶部32に記憶されている。

【0070】
課題としては、上述の一般化した誤信念課題モデル(図4)に基づいて作成した誤信念課題を用いることができる。

【0071】
出題部201は、読み出した視覚課題データQvを表示部31へ送信する。表示部31は、被験者に対して、視覚情報として課題を出力する(S51)。

【0072】
入力部33は、視覚情報として出題された課題に対する被検者の回答を受け付け(S52)、入力された回答を判定部202へ送信する。

【0073】
判定部202は、被検者の回答を受信すると、記憶部32から正答データAvを読み出し、被検者の回答と正答を比較して正誤判定を行う(S54)。

【0074】
判定部202は、課題に対する回答が、正答であった場合には「LDCの疑いあり」と判定し(S55)、判定結果を記憶部32に記憶させるとともに、表示部31へ送信する。表示部31は、受信した判定結果を表示する(S56)。

【0075】
一方、課題に対する回答が、誤答であった場合には、IQテストを行う(S60)。判定部202は、実施したIQテストの結果と予め定められた標準値とを比較し(S61)、被検者の知的レベルが標準以上である場合には、「LDCの疑いあり」と判定する(S62)。被検者の知的レベルが標準未満である場合には、「一般的な発達障害の疑いあり」と判定する(S63)。

【0076】
そして、判定部202は、判定結果を記憶部32に記憶させるとともに、表示部31へ送信する。表示部31は、受信した判定結果を表示する(S64)。

【0077】
本実施の形態では、被検者に出題する課題として音声による聴覚情報に加えて、文章等による視覚情報でも出題することとしている。さらに、視覚情報による課題と聴覚情報による課題との間に理解力の差が認められた場合に、IQテストを実施することとしている。これにより、LDCの中でもより被検者の実態に即した適切なスクリーニングを行うことが可能である。

【0078】
(実施の形態3)
次に、本発明の第3の実施の形態について、図7に基づいて説明する。本実施の形態3では、コミュニケーション能力評価支援装置11が、コミュニケーション能力向上のための訓練機能を備える点で上記実施の形態1及び2と異なる。

【0079】
図7に示すように、記憶部32は、訓練データ53を記憶している。訓練データ53は、上記モデル化された誤信念課題と同様のものであり、課題中のStep数、補助条件の数、会話に登場する人数等の条件を変えることにより、難易度の異なる複数の訓練データ53が用意されている。そして、各訓練データ53は、予め難易度によって分類(L1~Lm)されている。また、訓練データ53は、同じ内容の課題について、音声訓練データTaと視覚訓練データTvがセットとして記憶されている。

【0080】
また、本実施の形態に係る制御部21は、使用する訓練データ53の難易度を判定するレベル判定部213を備えている。その他、音声出力部30、表示部31、入力部33等の構成は、上記実施の形態1及び2と同様である。

【0081】
図8に基づいて、訓練処理の流れを説明する。訓練処理が開始されると、レベル判定部213が記憶部32に記憶されている被検者のLDC判定結果を読み出す(S71)。このLDC判定結果は、例えば、上記実施の形態2において判定された正答率データを用いることができる。

【0082】
レベル判定部213は、読み出したLDC判定結果に対応する難易度を判定し、出題部211が対応する訓練データ53を読み出すよう指示を送る。例えば、LDC判定結果として上記正答率データを用いる場合、正答率が40%未満であれば、難易度の低い訓練データ53(会話の登場人物が2人で、補助条件の数が3である課題等)を選択し、正答率が60%以上であれば、難易度の高い訓練データ53(会話の登場人物が3人で、補助条件の数が4である課題等)を選択する。出題部211は、記憶部32から訓練データ53を読み出す(S72)。

【0083】
出題部211は、読み出した訓練データ53から、音声訓練データTaを音声出力部30へ送信する。音声出力部30は、被検者に対して、音声情報として訓練データを出力する(S73)。

【0084】
被検者は、出力された音声情報を聞きながら、速記録を取り、課題の内容を把握する(S74)。被検者は、課題に対する回答を検討した後、コミュニケーション能力評価支援装置11に対して、課題の内容を表示するよう入力部33を介して要求する。

【0085】
入力部33は、被検者の要求を受け付け(S75)、出題部211に表示要求を送信する。出題部211は、表示要求に従って、先に出力した音声訓練データTaに対応する視覚訓練データTvを表示部31に送信する。表示部31は、受信した視覚訓練データTvを表示する(S76)。

【0086】
被検者は、表示された課題の内容及び正答と、自身の速記録の内容及び回答とを比較する。さらに、訓練を継続する場合(S77;YES)は、S72に戻って出題を繰り返し、継続しない場合(S77;NO)は、処理を終了する。

【0087】
以上のように、音声情報として出力される課題について、速記録としてのメモを取る訓練を繰り返し行うことにより、被検者のコミュニケーション能力を向上させることができる。

【0088】
また、上記では、被検者のLDC判定結果を記憶部32から読み出すこととしたが、このようなデータが存在しない場合には、被検者が、任意の難易度の訓練データ53を選択してもよいし、レベル判定部213が、難易度によらず訓練データ53の中から無作為に選択することとしてもよい。

【0089】
(実施の形態4)
次に、本発明の第4の実施の形態について、図9及び図10に基づいて説明する。本実施の形態4では、コミュニケーション能力評価支援装置12が通信部34を備え、課題データ51及び判定結果データ52を記憶する評価情報データベース41とネットワークを介して接続されている点で上記各実施の形態と異なる。その他、音声出力部30、表示部31、記憶部32、入力部33等の構成は、他の実施の形態と同様である。

【0090】
図9に示すように、通信部34は、ネットワーク上の評価情報データベース41とデータの送受信を行う。図2に示すハードウエア構成の通信部67が、通信部34として機能する。通信方式としては、例えばイーサネット(登録商標)等を用いたLAN(Local Area Network)接続であり、ルーターを介して外部ネットワーク上の評価情報データベース41と通信可能に接続される。

【0091】
評価情報データベース41には、予め用意された複数の課題とこれら課題に対する正答が記憶されている。

【0092】
以下、図10に基づいて本実施の形態3の処理の流れについて説明する。

【0093】
コミュニケーション能力評価支援装置12で処理が開始されると、出題部221は通信部34を介して、ネットワーク上の評価情報データベース41に対して課題データ51の送信を要求する(S81)。

【0094】
評価情報データベース41は、コミュニケーション能力評価支援装置12からの要求(S81)を受けて、評価情報データベース41内に記憶されている課題データ51をコミュニケーション能力評価支援装置12へ送信する(S82)。この課題データ51は、音声課題データQaとこれに対応する正答データAaとを含む。通信部34は、受信した音声課題データQaを出題部221へ送信し、受信した正答データAaを判定部222へ送信する。

【0095】
出題部221は、音声課題データQaを音声出力部30へ送信する。音声出力部30は、被検者に対して、音声情報として課題を出力する(S83)。

【0096】
入力部33は、音声情報として出題された課題に対する被検者の回答を受け付け(S84)、入力された回答を判定部222へ送信する。

【0097】
判定部222は、被検者の回答を受信すると、先に評価情報データベース41から受信した正答データAaと被検者の回答を比較して正誤判定を行う(S85)。判定部222は、通信部34を介して、判定結果を評価情報データベース41に送信する(S86)とともに、表示部31へ送信する。表示部31は、受信した判定結果を表示する(S87)。評価情報データベース41は、受信した判定結果を判定結果データ52として保存する(S88)。

【0098】
本実施の形態では、課題をコミュニケーション能力評価支援装置12の記憶部32ではなく、ネットワーク上の評価情報データベース41に記憶させることとしているので、コミュニケーション能力評価支援装置12の構成を簡素化することが可能である。また、評価情報データベース41の課題データ51を更新することにより、容易に課題データ51の追加や更新を行うことができる。さらに、判定結果データ52を評価情報データベース41に保存することとしているので、複数の被検者の判定結果を一括して管理し、分析することが可能である。

【0099】
本発明の実施の形態に係るコミュニケーション能力評価支援装置10~12のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更及び修正が可能である。制御部20、音声出力部30、表示部31、記憶部32及び入力部33などから構成されるコミュニケーション能力評価支援装置10~12は、専用の装置によらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、上記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上記の処理を実行するコミュニケーション能力評価支援装置10~12を構成することができる。

【0100】
また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することでコミュニケーション能力評価支援装置10~12を構成してもよい。これにより、遠隔地に居住する複数の被検者に対して容易に評価サービスを提供することが可能となる。

【0101】
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される種々の変更によって得られる実施の形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
10、11、12 コミュニケーション能力評価支援装置
20、21、22 制御部
30 音声出力部
31 表示部
32 記憶部
33 入力部
34 通信部
41 評価情報データベース
51 課題データ
52 判定結果データ
53 訓練データ
61 CPU
62 主記憶部
63 外部記憶部
64 入力部
65 音声出力部
66 表示部
67 通信部
68 バス
201、211、221 出題部
202、222 判定部
213 レベル判定部
631 出題プログラム
632 正誤判定プログラム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9