TOP > 国内特許検索 > サイトカインストーム抑制剤 > 明細書

明細書 :サイトカインストーム抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年10月26日(2017.10.26)
発明の名称または考案の名称 サイトカインストーム抑制剤
国際特許分類 A61K  38/16        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI A61K 38/16
A61P 29/00
C07K 14/47 ZNA
国際予備審査の請求
全頁数 17
出願番号 特願2016-566354 (P2016-566354)
国際出願番号 PCT/JP2015/085693
国際公開番号 WO2016/104436
国際出願日 平成27年12月21日(2015.12.21)
国際公開日 平成28年6月30日(2016.6.30)
優先権出願番号 2014258546
2015154972
優先日 平成26年12月22日(2014.12.22)
平成27年8月5日(2015.8.5)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】西堀 正洋
【氏名】森 秀治
【氏名】和氣 秀徳
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4H045
Fターム 4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZB111
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
要約 新規なサイトカインストーム抑制剤を提供することを課題とする。HRGが複数種のサイトカインの抑制作用を有することを見出したことに基づく、HRGを有効成分とするサイトカインストーム抑制剤による。また、HRGは炎症性サイトカインおよび抗炎症サイトカインに対する抑制作用を有する。さらには、本発明のHRGを有効成分とするサイトカインストーム抑制剤を含む、全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防又は治療薬による。発明のサイトカインストーム抑制剤によれば、血液中や肺組織中の複数種のサイトカイン、例えばIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)から選択される2種以上のサイトカイン濃度の上昇を抑制することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒスチジンリッチ糖タンパク質を有効成分として含有する、サイトカインストーム抑制剤。
【請求項2】
サイトカインストーム抑制剤により、血中及び/又は肺組織中のIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)から選択される2種以上のサイトカインが抑制される、請求項1に記載のサイトカインストーム抑制剤。
【請求項3】
ヒスチジンリッチ糖タンパク質が、ヒト血液成分又は遺伝子組換えの手法により動物細胞により産生された粗ヒスチジンリッチ糖タンパク質を、アフィニティーゲルクロマトグラフィーを用いて精製して得たタンパク質である、請求項1又は2に記載のサイトカインストーム抑制剤。
【請求項4】
ヒスチジンリッチ糖タンパク質が、遺伝子組換えの手法により作製されたヒスチジンリッチ糖タンパク質である、請求項3に記載のサイトカインストーム抑制剤。
【請求項5】
ヒスチジンリッチ糖タンパク質を有効成分として含有するサイトカインストーム抑制剤の作製方法として、ヒト血液成分又は動物細胞により産生された粗ヒスチジンリッチ糖タンパク質を、アフィニティーゲルクロマトグラフィーを用いて精製し、有効成分としてのヒスチジンリッチ糖タンパク質を調製する工程を含むことを特徴とする、サイトカインストーム抑制剤の作製方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1に記載のサイトカインストーム抑制剤を含む、全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防剤又は治療剤。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1に記載のサイトカインストーム抑制剤を用いることを特徴とする、血中及び/又は肺組織中のIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)から選択される2種以上のサイトカインを抑制するサイトカインストーム抑制方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1に記載のサイトカインストーム抑制剤を用いることを特徴とする、全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防又は治療方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスチジンリッチ糖タンパク質(Histidine-rich glycoprotein:以下、単に「HRG」という場合がある。)を有効成分とするサイトカインストーム抑制剤に関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2014-258546号及び2015-154972号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
サイトカインは、炎症反応と免疫応答に関与するタンパク性因子の総称であり、数百種類以上の因子が含まれる。サイトカインは、個々に非常に多彩な活性プロフィールを有し、それらがバランス良く協調的に相互作用することで生体機能を維持・調節している。またサイトカインは、特に炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患の病態形成においてメディエーター物質として重要な役割を果たすことが知られている。
【0004】
血液中のサイトカイン濃度が異常上昇した状態を、サイトカインストーム(cytokine storm)又は、高サイトカイン血症と呼ぶ。例えば感染症や薬剤投与などの原因により、血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こる。例えば、エボラ出血熱・高度の手術侵襲の後・薬剤投与後などの全身性炎症症候群(systemic inflammatory response syndrome:以下、単に「SIRS」という場合がある。)等の疾患の前段階に観察される症状である。SIRSは、呼吸数の増加、肝臓の急性期タンパクの産生亢進などを呈することが知られている。SIRS病態についてモデル実験動物を用いて解析した結果、炎症を惹起する活性を有する炎症性サイトカイン(起炎性サイトカイン)が血液中に著増することが確認されている。さらにSIRSの重篤な病態では、炎症性サイトカイン濃度の上昇のみならず、炎症・免疫応答を抑制する抗炎症サイトカイン濃度も上昇し、免疫応答不全を生じていると考えられている。サイトカインストームは、SIRSから播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全にに至る段階にも確認されている。
【0005】
近年、TNF-αやインターロイキン-6(IL-6)を分子標的とする抗体医薬の成功が報告されており、抗サイトカイン治療の新しい時代が切り開かれつつある。抗体医薬は、標的となるサイトカインの活性又はその受容体を特異的に遮断することを特徴とする。しかしながら、SIRS等の炎症性サイトカインと抗炎症サイトカインが同時に複雑に反応する病態に対しては、上記抗体医薬による制御が困難であり、複数種のサイトカインを制御し得る医薬の開発が必要である。細胞表面分子のサブユニットであるCD61タンパク質に結合する抗体が、複数種のサイトカインを制御し得ることが報告されているものの(特許文献1)、複数種のサイトカインを制御しうる医薬は未だ実用化されていない。
【0006】
HRG(Histidine-rich glycoprotein)は、1972年にHeimburger et al (1972)によって同定された分子量約80kDaの血漿タンパク質である。合計507個のアミノ酸より構成され、そのうちヒスチジンが66存在する高ヒスチジン含有タンパク質であり、主として肝臓で合成され、約100~150μg/mlという非常に高いと考えられる濃度でヒト血漿中に存在する。HRGは、凝固線溶系の調節や血管新生の制御に関与していることが知られている(非特許文献1)。さらに、HRGポリペプチドを投与することによる血管形成を阻害する方法、HRGポリペプチド、HRGポリペプチドに結合する抗体及び受容体、HRG欠乏性血漿及びポリヌクレオチド、HRGポリペプチドをコードするベクター及び宿主細胞を含む、製薬的組成物及び製品が開示されている(特許文献2)。また、血管新生の分野に関し、HRGの中央領域に由来するサブフラグメントを含む抗血管新生活性のある実質的に純粋な連続ポリペプチドの使用に関する開示がある(特許文献3)。また、HRGによる好中球活性化の制御機能についての報告がある(特許文献4)。
【0007】
しかしながら、HRGによる複数種のサイトカイン制御については、報告はされていない。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Blood, Vol.117, No.7, 2093-2101 (2011)
【0009】

【特許文献1】国際公開第WO2005/068504号
【特許文献2】特表2004-527242号公報
【特許文献3】特表2007-528710号公報
【特許文献4】国際公開第WO2013/183494号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新規なサイトカインストーム抑制剤を提供することを課題とする。又、本発明は当該サイトカインストーム抑制剤を含む全身性炎症反応症候群(SIRS)の予防剤又は治療剤を提供することを課題とする。更に本発明は、当該サイトカインストーム抑制剤の作製方法、並びに当該サイトカインストーム抑制剤によるSIRSの予防又は治療方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、HRGが複数種のサイトカインに対して抑制作用を有することを見出し、HRGを有効成分とするサイトカインストーム抑制剤に係る本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.HRGを有効成分として含有する、サイトカインストーム抑制剤。
2.サイトカインストーム抑制剤により、血中及び/又は肺組織中のIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)から選択される2種以上のサイトカインが抑制される、前項1に記載のサイトカインストーム抑制剤。
3.HRGが、ヒト血液成分又は遺伝子組換えの手法により動物細胞により産生された粗HRGを、アフィニティーゲルクロマトグラフィーを用いて精製して得たタンパク質である、前項1又は2に記載のサイトカインストーム抑制剤。
4.HRGが、遺伝子組換えの手法により作製されたHRGである、前項3に記載のサイトカインストーム抑制剤。
5.HRGを有効成分として含有するサイトカインストーム抑制剤の作製方法として、ヒト血液成分又は動物細胞により産生された粗HRGを、アフィニティーゲルクロマトグラフィーを用いて精製し、有効成分としてのHRGを調製する工程を含むことを特徴とする、サイトカインストーム抑制剤の作製方法。
6.前項1~4のいずれか1に記載のサイトカインストーム抑制剤を含む、SIRSの予防剤又は治療剤。
7.前項1~4のいずれか1に記載のサイトカインストーム抑制剤を用いることを特徴とする、血中及び/又は肺組織中のIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)から選択される2種以上のサイトカインを抑制するサイトカインストーム抑制方法。
8.前項1~4のいずれか1に記載のサイトカインストーム抑制剤を用いることを特徴とする、SIRSの予防又は治療方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサイトカインストーム抑制剤によれば、血液中や肺組織中の複数種のサイトカイン、例えばIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)から選択される2種以上のサイトカイン濃度の上昇を抑制することができ、例えばSIRSの予防剤又は治療剤として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】腸管穿孔モデルマウスにHRGを投与したときの、血清中の各種サイトカイン濃度を確認した結果図である。コントロールはヒト血清アルブミン(HSA)である。(実施例3)
【図2】腸管穿孔モデルマウスにHRGを投与したときの、肺組織中の各種サイトカインのmRNA量を確認した結果図である。コントロールはヒト血清アルブミン(HSA)である。(実施例4)
【図3】腸管穿孔モデルマウスにHRGを投与したときの、血清中の各種サイトカイン濃度を確認した結果図である。コントロールはヒト血清アルブミン(HSA)である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、サイトカインストーム(cytokine storm)とは、免疫系のバランスの乱れなどによってその制御が崩れることで、サイトカインの過剰な産生状態を引き起こされ、その作用が全身に及ぶことをいう。好中球の活性化、血液凝固機構活性化、血管拡張などを介して、ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する場合がある。

【0016】
サイトカインは、細胞間情報伝達機能を司る可溶性ポリペプチドあるいは糖タンパクであり、マクロファージ、単球、リンパ球、好中球など種々の細胞が産生し、標的細胞の受容体と細胞内活性化機構を介して生物学的作用を発揮し、標的細胞の増殖・分化・機能発現を調節して、免疫や組織修復以外にも生殖、発生、成長などに関わっている。

【0017】
炎症で見られる発熱、だるさ、食思不振や白血球増多などの生体反応は、本来は感染防御や免疫獲得に必要な宿主防御反応である。この生体反応には病原微生物由来の抗原や毒性物質に反応して宿主が産生する種々の内因性メディエーターが病原因子となっており、この中でも、サイトカインは炎症の病態の中心的な役割を演じている。例えば、病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などが挙げられる。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインが重要な役割を担っている。

【0018】
例えば、インフルエンザ等、発症初期から意識障害やけいれん、異常言動、異常行動などの神経症状のような急激な症状進行や重篤化にはインフルエンザ罹患早期のサイトカインストームの関与が示唆される。免疫系のバランス・システムに異常を生じた難治性感染症、自己炎症症候群、リウマチ性疾患で見られるマクロファージ症候群では、フィードバックなどのサイトカイン制御機構が破綻し、種々のサイトカインが循環血中に高濃度で検出されるようになる。この状態では、本来自己分泌(autocrine)、傍分泌(paracrine)であるサイトカインの作用が全身に、及び、好中球活性化、血管内皮傷害、血液凝固機構活性化、血管拡張などを介して、SIRS、ショック、DIC、多臓器不全にまで進展する。

【0019】
本発明は、HRG(Histidine-rich glycoprotein)を有効成分として含むサイトカインストーム抑制剤に関する。本明細書において、有効成分としての「HRG」は、生体成分から単離・精製する方法、遺伝子組換え技術を用いて調製する方法、あるいは合成により調製する方法を適用することができる。例えば血漿、血清等の血液、脊髄液、リンパ液等の生体成分から精製され/若しくは単離することができる。好適な生体成分は、血漿、血清等の血液成分である。生体成分から単離・精製する方法は、自体公知の方法又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。例えば、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロース樹脂を用いたアフィニティカラムに血漿、血清等の血液成分を通すことによって調製することもできる。Ni-NTAアガロース樹脂は、ニッケルイオン(Ni2+)を用いたタンパク質精製用アフィニティー樹脂である。

【0020】
遺伝子組換え技術を用いて作製する方法も自体公知の方法又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。例えば、HRGをコードする全長cDNA、又はHRGの活性を有する部分をコードするcDNAを、発現ベクターにクローニングし、調製することもできる。例えば、GenBank Accession No.NM000412で特定されるヌクレオチドの全体又は部分から生合成されるタンパク質であっても良い。例えば、成熟HRGのアミノ酸配列(配列番号1)をコードする全長cDNA、又は部分をコードするcDNAを、発現ベクターにクローニングし、調製することもできる。本発明の有効成分としてのHRGは、HRGタンパク質の全体であっても良いし、HRG活性を有する部分タンパク質又はペプチドであっても良い。遺伝子組換え技術を用いて作製された粗HRGは、必要に応じてさらに精製してもよい。例えば組換えヒトHRGを含む培養上清を回収し、適度な孔径のフィルターでろ過した後、さらにNi-NTAアガロース樹脂を用いたアフィニティカラムに通して精製し、調製することができる。

【0021】
成熟HRGのアミノ酸配列(配列番号1)
VSPTDCSAVEPEAEKALDLINKRRRDGYLFQLLRIADAHLDRVENTTVYYLVLDVQESDCSVLSRKYWNDCEPPDSRRPSEIVIGQCKVIATRHSHESQDLRVIDFNCTTSSVSSALANTKDSPVLIDFFEDTERYRKQANKALEKYKEENDDFASFRVDRIERVARVRGGEGTGYFVDFSVRNCPRHHFPRHPNVFGFCRADLFYDVEALDLESPKNLVINCEVFDPQEHENINGVPPHLGHPFHWGGHERSSTTKPPFKPHGSRDHHHPHKPHEHGPPPPPDERDHSHGPPLPQGPPPLLPMSCSSCQHATFGTNGAQRHSHNNNSSDLHPHKHHSHEQHPHGHHPHAHHPHEHDTHRQHPHGHHPHGHHPHGHHPHGHHPHGHHPHCHDFQDYGPCDPPPHNQGHCCHGHGPPPGHLRRRGPGKGPRPFHCRQIGSVYRLPPLRKGEVLPLPEANFPSFPLPHHKHPLKPDNQPFPQSVSESCPGKFKSGFPQVSMFFTHTFPK

【0022】
成熟HRGは、シグナルペプチドからタンパク質分解酵素によって切断されたのち、シスタチン様領域1,2、His/Pro領域、C末端領域の主要な4つの領域から構成される。His/Pro領域は、プロリン残基及びヒスチジン残基に非常に富んでおり、例えばヒト型ではペンタペプチドGHHPH(配列番号2)が保存されたタンデム反復を約12回含む。別の態様では、配列番号1で特定されるアミノ酸配列の第330位~第389位に示すアミノ酸配列で特定される。

【0023】
本発明の「サイトカインストーム抑制剤」は、上記説明したHRGを有効成分として含む。本発明の「サイトカインストーム抑制剤」は、生体成分から単離・精製して得たHRG及び/又は遺伝子組換えにより得られたHRGを有効成分として含むほか、薬理学的に許容しうる担体を含むことができる。当該薬理学的に許容しうる担体としては、例えば、賦形剤、崩壊剤若しくは崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤若しくは溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を挙げることができる。本発明のサイトカインストーム抑制剤は、生体成分から単離・精製して得た粗HRGであってもよい。

【0024】
本発明のサイトカインストーム抑制剤は、血液中のサイトカイン濃度の異常上昇が起こっている状態であるサイトカインストーム(高サイトカイン血症)を、予防、治療、又は軽減化するための薬剤である。本発明のサイトカインストーム抑制剤は、少なくとも2種以上の複数種のサイトカインを抑制する作用を有する。本発明のサイトカインストーム抑制剤は、特に、血液中(血漿中又は血清中)におけるサイトカイン濃度の上昇を抑制する作用を有する。

【0025】
本発明におけるサイトカインは、炎症性サイトカインと抗炎症サイトカインの両方を含む。具体的には、例えばIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)等が例示される。本発明のサイトカイン抑制剤は、これらのサイトカインから選択される少なくとも2種以上の複数種のサイトカインを抑制する作用を有する。好ましくは、IL-6、TNF-α、IL-10から選択される少なくとも2種以上のサイトカインを抑制する作用を有する。サイトカインを抑制するとは、血液中の当該サイトカインの濃度上昇を抑制することをいう。

【0026】
サイトカインストームにおいて血液中のサイトカインの作用は全身に及ぶ。サイトカインストームの後、SIRSが発症すると考えられる。サイトカインストームは、SIRSからDIC、多臓器不全にに至る段階にも確認されている。本発明のサイトカインストーム抑制剤は、複数種のサイトカインを抑制する作用を利用して、サイトカインストームの後に生じるSIRSに対しても有効であり、SIRSの予防剤としても用いることができる。よって本発明は、サイトカインストーム抑制剤や、SIRSの予防剤又は治療剤にも及ぶ。本発明の予防剤又は治療剤は、SIRSの予防、治療、又は、症状を軽減化するために用いられるものである。SIRSには、感染症以外の多発外傷、熱傷、手術等に起因するものがある。SIRSにおいては、炎症性サイトカインの血中濃度が上昇しており、重篤な場合には炎症性サイトカインに加えて抗炎症サイトカインの血中濃度が上昇していることから、本発明の予防剤又は治療剤が有効である。

【0027】
本発明のサイトカインストーム抑制剤、あるいは、SIRSの予防剤又は治療剤の投与形態としては、局所的に投与してもよいし全身的に投与してもよい。非経口投与用の製剤は、滅菌した水性の、又は非水性の溶液、懸濁液及び乳濁液を含んでいてもよい。非水性希釈剤の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油及び有機エステル組成物、例えば、エチルオレエートであり、これらは注射用に適している。水性担体には、水、アルコール性水性溶液、乳濁液、懸濁液、食塩水及び緩衝化媒体が含まれていてもよい。非経口的担体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、リンゲル乳酸及び結合油が含まれていてもよい。静脈内担体には、例えば、液体用補充物、栄養及び電解質(例えば、リンゲルデキストロースに基づくもの)が含まれていてもよい。本発明のサイトカインストーム抑制剤、あるいは、SIRSの予防剤又は治療剤はさらに、保存剤及び他の添加剤、例えば抗微生物化合物、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなどを含むことができる。

【0028】
本発明は、HRGを有効成分として含有するサイトカインストーム抑制剤の作製方法にも及ぶ。サイトカインストーム抑制剤の作製方法として、有効成分としてのHRGを調製する工程を含む。有効成分としての「HRG」の調製は、上記説明したごとく、生体成分から単離・精製する方法、遺伝子組換え技術を用いて調製する方法、あるいは合成により調製する方法を適用することができる。上記方法により得られた粗HRGを、さらに精製してもよい。例えば、粗HRGを含む溶液を適宜適度な孔径のフィルターで濾過する工程を含んでいてもよいし、精製に適した樹脂を用いて精製する工程を含んでいてもよい。精製に適した樹脂として、Ni-NTAアガロース樹脂などが挙げられる。

【0029】
本発明は、上記サイトカインストーム抑制剤を用いることを特徴とする、血中及び/又は肺組織中のIL-6、TNF-α、IL-10、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)から選択される2種以上のサイトカインを抑制するサイトカインストーム抑制方法に及ぶ。さらには、上記サイトカインストーム抑制剤を用いることを特徴とする、SIRSの予防又は治療方法にも及ぶ。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)サイトカインストーム抑制剤の調製1
本実施例では、ヒト血漿から精製したHRGを有効成分とするサイトカインストーム抑制剤の調製について説明する。
特許文献4に記載の手法に従って、本実施例では、ヒト血漿(240ml)を出発原料とし、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アフィニティクロマトグラフィ及び高性能液体クロマトグラフィ(陰イオン交換カラム(単分散系親水性ポリマービーズ:Mono Q))により、HRGタンパク質を精製した。これにより、分子量約80kDa画分に得られたHRG精製試料が得られた。精製試料はPBSで透析し、HRGを500~1000μg/ml(5ml)含む調製物を本発明のサイトカインストーム抑制剤とし、保存した。
【実施例】
【0032】
(実施例2)サイトカインストーム抑制剤の調製2
本実施例では、遺伝子組換えヒトHRGを有効成分とするサイトカインストーム抑制剤の調製について説明する。
特許文献4に記載の手法に従って、遺伝子組換えヒトHRGは、以下のように作製した。ヒトHRGコーディング領域をコードするDNA(GenBank Accession No.NM000412で特定される塩基配列からなるDNA)を、CMVプロモーターを持つプラスミドベクターにライゲーションし、遺伝子組換え体ヒトHRG作製用ベクターを調製した。HEK293細胞(ヒト胎児腎細胞由来、アデノウイルス5型による形質転換株)を3.5×106cells/10cm 径の細胞培養用ディシュに播種し培養した。培養したHEK293細胞をスクレーパーではがし、浮遊化させたのち、上記遺伝子組換えヒトHRG作製用ベクターを25μg/OPTI-MEM 500μl+FuGENE-HD 50μl/OPTI-MEM 500μl 混合したものを添加し、室温で15分間反応させることでトランスフェクションを行なった。その後、HEK293細胞を37℃で5%CO2下、48時間培養し、遺伝子組換えヒトHRGを作製した。
【実施例】
【0033】
遺伝子組換えヒトHRGを含む培養上清を回収し、孔径0.22μmのフィルターでろ過した。1×PBS(-) 30mlで予め洗浄したQIAGEN(R) Ni-NTAアガロースゲル(Sepharose CL-6B支持体にNi-NTAを結合したゲル)を前記ろ過した培養上清に加え、4℃で回転インキュベーションを1時間行ない、遺伝子組換えヒトHRGをQIAGEN(R) Ni-NTAアガロースゲルに結合させた。QIAGEN(R) Ni-NTAアガロースゲルを精製用カラムに移した後、洗浄液1(30mM Imidazoleを含むPBS (pH7.4)、洗浄液2(1M NaCl +10mM PBS (pH7.4))、洗浄液3(1×PBS (pH7.4))で順次カラムを洗浄した。遺伝子組換えヒトHRG は、500mM Imidazoleを含むPBS (pH7.4)で、4℃で1時間反応させ溶出を行なった。精製品は、ウエスタンブロットとSDS-PAGE 後のタンパク染色でHRGを確認した。得られた遺伝子組換えヒトHRG精製品をHBSS置換してタンパク濃度を調整し、本発明のサイトカインストーム抑制剤とし、保存した。Ni-NTAアガロースゲルは、ニッケルイオン(Ni2+)を用いたタンパク質精製用アフィニティーゲルである。
【実施例】
【0034】
(実施例3)腸管穿孔モデルマウスでの各種サイトカインの血中レベルの変化
本実験例では、腸管穿孔モデル(cecal ligation and puncture: CLP)マウスに、実施例1で調製したサイトカインストーム抑制剤を投与したときの各種サイトカインの血清中レベルを確認した。
まず、単開腹(sham)マウスを対照とした。マウスの腹腔内より盲腸を取り出して、盲腸根部を縫合糸により結紮し、18ゲージ注射針を用いて盲腸壁層に穿刺して腸管穿孔モデルマウスを作製した。腸管穿孔モデルマウスに、術後約5分後に、実施例1にて調製したサイトカインストーム抑制剤(HRG:20 mg/kg)を尾静脈内投与した(n=5)。陰性コントロールとして、HSA(ヒト血清アルブミン)(20 mg/kg)を用いた(n=5)。buffer controlとして、PBSを200μl投与した(n=5)。
術後24時間後にマウスから全血を採血し、血清中のサイトカイン濃度を、Cytometric Bead Array(CBA)キット(BD Biosciences社製)を用いて測定した。
【実施例】
【0035】
その結果、実施例1のサイトカインストーム抑制剤投与群において、IL-6、TNF-α、IL-10の血中レベルの低下が確認された(図1)。
【実施例】
【0036】
(実施例4)腸管穿孔モデルマウスでの各種サイトカインのmRNAレベルの変化
本実験例では、腸管穿孔モデル(CLP)マウスに、実施例1で調製したサイトカインストーム抑制剤を投与したときの各種サイトカインの肺組織でのmRNAレベルを確認した。
まず、単開腹(sham)マウスを対照とした。マウスの腹腔内より盲腸を取り出して、盲腸根部を縫合糸により結紮し、18ゲージ注射針を用いて盲腸壁層に穿刺して腸管穿孔モデルマウスを作製した。腸管穿孔モデルマウスに、術後約5分後に、実施例1にて調製したサイトカインストーム抑制剤(HRG:20 mg/kg)を尾静脈内投与した(n=5)。陰性コントロールとして、HSA(ヒト血清アルブミン)(20 mg/kg)を用いた(n=5)。buffer controlとして、PBSを200μl投与した(n=5)。
術後24時間後にマウスを安楽死させた後、生理食塩水により全身灌流を行い、肺組織を採取し、肺のmRNAレベルをReal time PCR法を用いて測定した。
【実施例】
【0037】
その結果、実施例1のサイトカインストーム抑制剤投与群において、TNF-α、IL-6、iNOS、PAI-1及び好中球エラスターゼの肺組織でのmRNAレベルの低下が確認された(図2)。
【実施例】
【0038】
(実施例5)腸管穿孔モデルマウスでの各種サイトカインの血中レベルの変化
本実験例では、腸管穿孔モデル(CLP)マウスに、実施例1で調製したサイトカインストーム抑制剤を投与したときの各種サイトカインの血清中レベルを確認した。
まず、単開腹(sham)マウスを対照とした。マウスの腹腔内より盲腸を取り出して、盲腸根部を縫合糸により結紮し、18ゲージ注射針を用いて盲腸壁層に穿刺して腸管穿孔モデルマウスを作製した。腸管穿孔モデルマウスに、術後約5分後に、実施例1にて調製したサイトカインストーム抑制剤(HRG:20 mg/kg)を尾静脈内投与した(n=5)。陰性コントロールとして、HSA(ヒト血清アルブミン)(20 mg/kg)を用いた(n=5)。buffer controlとして、PBSを200μl投与した(n=5)。
術後24時間後にマウスから全血を採血し、血清中のサイトカイン濃度を、BDTM Cytometric Bead Array(CBA)法(BD Biosciences社)を用いて測定した。
【実施例】
【0039】
その結果、実施例1のサイトカインストーム抑制剤投与群において、KC(CXCL1)、MCP-1(CCL2)、MIG(CXCL9)及びMIP-1 alpha(CCL3)の血中レベルの低下が確認された(図3)。
【実施例】
【0040】
(実施例6)ヒト血管内皮細胞株におけるHRG刺激抑制性サイトカイン・ケモカイン遺伝子の確認
本実験例では、ヒト血管内皮細胞株(EA.hy926細胞)におけるHRG刺激抑制性サイトカイン・ケモカイン遺伝子の確認を行った。EA.hy926細胞を無血清培地(DMEF)を用いて培養した。無血清培地(DMEF)に実施例1にて調製したサイトカインストーム抑制剤(HRG)1μMを含む系で12時間培養したものをHRG群として確認した。対照として無血清培地(DMEF)のみで12時間培養したものをIntact群、無血清培地(DMEF)に1μMのヒト血清アルブミン(HSA)を含む系で12時間培養したものをHSA群とし、各々について各種サイトカイン・ケモカイン遺伝子の発現を確認した。遺伝子の確認は、34,878個のプローブセット(human gene 2.0ST)が配置されたGeneChip Gene ST Array(Affymetric社)を用いた遺伝子発現産物の解析により行った。
【実施例】
【0041】
その結果を表1に示した。HRG群はIntact群に対して、CCL8、IL-33、インターフェロンイプシロン(IFNイプシロン、IFNE)、IFNアルファ5(IFNA5)、IFNアルファ4(IFNA4)、IFNアルファ13(IFNA13)、CCL3、CXCL5で発現抑制が認められた。また、HRG群はHSA群に対して、特にIL33、CCL4及びCXCL5で発現抑制が認められた。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP2016104436A1_000003t.gif

【産業上の利用可能性】
【0043】
以上詳述したように、本発明のサイトカインストーム抑制剤によれば、血液中の複数種のサイトカイン濃度の上昇を抑制することができ、例えばSIRSの予防剤又は治療剤として利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2