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明細書 :金属部材の接合方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 金属部材の接合方法
国際特許分類 B23K  20/00        (2006.01)
B23K  20/16        (2006.01)
FI B23K 20/00 340
B23K 20/16
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 20
出願番号 特願2016-566331 (P2016-566331)
国際出願番号 PCT/JP2015/085628
国際公開番号 WO2016/104399
国際出願日 平成27年12月21日(2015.12.21)
国際公開日 平成28年6月30日(2016.6.30)
優先権出願番号 2014264109
優先日 平成26年12月26日(2014.12.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】小山 真司
【氏名】馬 小娟
【氏名】常藤 達礼
【氏名】秋山 主
【氏名】冨川 陽平
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4E167
Fターム 4E167AA06
4E167AB06
4E167AD02
4E167CB02
要約 比較的低温で接合が可能であり、接合時の変形を抑制することができる金
属部材の接合方法を提供する。金属シート(21)の表面に金属の有機酸塩
被膜が形成されたシート(21)を、接合面に介在させて、複数の金属部材
(1,2,3,4,5,6)を接合する工程を有し、金属部材(1,2,3,
4,5,6)としてアルミニウム又はアルミニウム合金を使用し、金属シー
ト(21)として、亜鉛、銅、マグネシウムのいずれかのシート(21)を
使用する。
特許請求の範囲 【請求項1】
金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜が形成されたシートを、接合面に介在させて、複数の金属部材を接合する工程を有し、
前記金属部材として、アルミニウム又はアルミニウム合金を使用し、
前記金属シートとして、亜鉛、銅、マグネシウムのいずれかのシートを使用する
金属部材の接合方法。
【請求項2】
前記金属シートを有機酸中で煮沸することにより、前記金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜を形成して、前記シートを作製する工程をさらに有する、請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項3】
前記金属シートに有機酸を噴霧又は塗布することにより、前記金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜を形成して、前記シートを作製する工程をさらに有する、請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項4】
有機酸として、ギ酸、酢酸、クエン酸、ステアリン酸のいずれかを使用する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の金属部材の接合方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属部材を接合する、金属部材の接合方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム同士は、ろう付けにより接合されていた。
ろう付けによる接合では、ろう材を溶融させて接合するため(580~620℃)、位置決め精度に問題があり、適用範囲にも制限がある。また、ろう付けには、フッ化物を含有するフラックスが用いられており、フラックス残渣による腐食の問題や、フラックスが人体に有害であるため、撤廃が望まれている。さらに、ろう材とアルミニウム母材との間で金属間化合物(脆性的な性質)が形成され、接合部が脆化する問題点もあった。
【0003】
また、金属部材の他の接合方法として、レーザ溶接、摩擦撹拌接合、スポット溶接も行われている。
これらの溶接による接合では、溶接熱により溶接部の近傍が軟化し、ミクロ割れが発生する。また、接合部のクリアランスにより、腐食が問題となっている。
さらに、アルミニウムは熱伝導率が高いため、大きな電力(入熱量)を必要とする。
【0004】
また、金属部材の他の接合方法として、固相拡散接合法が知られている。
固相拡散接合法は、母材を溶融することなく、固相状態で顕著な変形を加えずに、加熱及び加圧して接合する方法である。熱による部材へのダメージを減少させ、溶融させないことによるぬれ広がりの抑制や、精密組立接合が可能である、といった特徴を有している。
【0005】
しかし、酸化しやすい金属材料は、大気中に曝すと、接合阻害因子である強固な自然酸化皮膜を形成する。強度の高い接合部を得るには、接合圧力及び接合温度を高くして、酸化皮膜を機械的に破壊しなくてはならず、おのずと接合時の変形量が増加してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、銅の接合面を有機酸から成る酸化膜除去液で処理してから、固相接合を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、アルミニウム又はアルミニウム合金の接合面に、アルミニウムと共晶反応を起こす物質から成るシート状の材料(銅、亜鉛、銀及びそれらの合金、珪素)を介在させて、加圧接合することが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2006-334652号公報
【特許文献2】特開昭55-57388号公報
【特許文献3】国際公開第2012/029789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、アルミニウム等においては、特許文献1の銅のように表面を有機酸で処理しただけで固相接合を行うと、十分な接合強度が得られなかった。
【0010】
また、特許文献2や特許文献3に開示された、金属や合金から成るシート状の材料を介在させても、アルミニウムの接合強度が十分に得られなかった。
【0011】
上述した問題の解決のために、本発明においては、比較的低温で接合が可能であり、接合時の変形を抑制することができる金属部材の接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の金属部材の接合方法は、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜が形成されたシートを、接合面に介在させて、複数の金属部材を接合する工程を有し、金属部材として、アルミニウム又はアルミニウム合金を使用し、金属シートとして、亜鉛、銅、マグネシウムのいずれかのシートを使用するものである。
【0013】
上記本発明の金属部材の接合方法において、金属シートを有機酸中で煮沸することにより、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜を形成して、シートを作製する工程をさらに有する構成とすることができる。
上記本発明の金属部材の接合方法において、金属シートに有機酸を噴霧又は塗布することにより、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜を形成して、シートを作製する工程をさらに有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
上述の本発明によれば、従来よりも低い接合温度で、高い接合強度を得ることができる。
これにより、接合温度を低くして、加熱に必要なエネルギーを低減し、接合時の変形量を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の金属の接合方法の手順のフローチャートである。
【図2】実験1で使用したA5052アルミニウム合金の試料の斜視図である。
【図3】実験1における接合状態を示す斜視図である。
【図4】A、B ギ酸中での処理時間と引張強さの関係を示す図である。
【図5】A、B 亜鉛シートの厚さ及び処理の有無と引張強さの関係を示す図である。
【図6】実験2で使用した高シリコンアルミニウム合金の試料の斜視図である。
【図7】実験2における接合状態を示す断面図である。
【図8】A、B 亜鉛シートの処理の有無と引張強さの関係を示す図である。
【図9】実験3で使用したA6061アルミニウム合金の試料の斜視図である。
【図10】実験3における接合状態を示す断面図である。
【図11】A、B 亜鉛シートの処理の有無と引張強さの関係を示す図である。
【図12】酢酸中での処理時間と引張強さの関係を示す図である。
【図13】亜鉛シートの厚さ及び処理の有無と引張強さの関係を示す図である。
【図14】ギ酸中処理及び酢酸中処理における亜鉛シートの厚さ及び処理の有無と引張強さの関係を示す図である。
【図15】Al-Zn系の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明の概要
2.実施の形態
3.実施例

【0017】
<1.本発明の概要>
まず、本発明の概要について説明する。
本発明の金属部材の接合方法は、複数の金属部材を接合する方法である。
そして、本発明では、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜が形成されたシートを、接合面に介在させて、複数の金属部材を接合する工程を有し、金属部材として、アルミニウム又はアルミニウム合金を使用し、金属シートとして、亜鉛、銅、マグネシウムのいずれかのシートを使用する。

【0018】
本発明において、さらに、金属シートを有機酸中で煮沸することにより、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜を形成して、シートを作製する工程を有する構成、或いは、金属シートに有機酸を噴霧又は塗布することにより、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜を形成して、シートを作製する工程を有する構成、とすることができる。
これらの工程により、金属シートの表面に、当該金属の有機酸塩被膜を形成することができる。

【0019】
なお、本発明では、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜が形成されたシートを使用することから、別途作製しておいたシートを使用することや、他人が製造したシートを譲り受けて使用することも可能である。それらの場合には、上述した、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜を形成してシートを作製する工程は省略される。

【0020】
接合する複数の金属部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金の範囲内であれば、同一材料であっても、異なる材料であってもよい。このうち、異なる材料の組合せとしては、例えば、純金属と合金、アルミニウム以外の構成元素が異なる合金同士、合金組成が異なる合金同士、等が挙げられる。

【0021】
ここで、Al-Zn系の状態図を、図15に示す。
図15より、亜鉛Znは、400℃前後の温度において、アルミニウムAlに対して広い固溶限(最大は381℃の67原子%)を有していることがわかる。
金属シートの材料としては、アルミニウムに対して広い固溶限を有している元素であれば、亜鉛以外の元素も使用することが可能である。アルミニウムに対して広い固溶限を有している元素としては、例えば、銅、マグネシウム、カルシウム、銀等が挙げられる。これらの元素のうち、有機酸処理が有効な銅、マグネシウム等に、本発明を適用することができる。

【0022】
本発明において、有機酸としては、各種の有機酸を使用することができる。
例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、ステアリン酸から選ばれる1種以上を使用することができる。

【0023】
本発明では、複数の金属部材(アルミニウム又はアルミニウム合金)の接合面に、金属シートの表面に金属の有機酸塩被膜が形成されたシートを介在させることにより、接合強度を増大させることができる。
このようにして高い接合強度を得ることができるため、従来よりも低い温度で高い接合強度を得ることが可能になる。

【0024】
シートの表面に形成されている、金属の有機酸塩被膜(ギ酸亜鉛等の被膜)は、加熱及び加圧して金属部材を接合する工程において、熱分解反応を生じて、シートの金属及び金属部材のアルミニウムの原子面が露出するので相溶性が向上し、金属部材とシートの金属的接触領域を増加させて、高い接合強度を得ることができる。

【0025】
上述したように、本発明によれば、従来よりも低い温度で、十分に高い接合強度が得られるので、低温で固相又は部分的に液相状態での接合が可能になる。
そして、温度と同様の観点から、接合の際の圧力を低くしても、十分に高い接合強度を得ることが可能になる。
これにより、低圧力で固相又は部分的に液相状態での接合が可能になり、接合の際の変形量を低減することができるので、接合の位置精度を向上することができる。接合の位置精度が向上することにより、高い位置精度を保つことができ、溶接では困難であった複雑な形状の金属部材の接合も可能になる。
また、低温かつ低圧力で接合が可能になるため、接合装置の構成を簡略化することや、加熱に必要なエネルギーを低減して、エネルギー効率を向上することができる。例えば、消費電力や加熱用の燃料、接合に要する時間等を低減することが可能になる。

【0026】
さらに、本発明によれば、金属の有機酸塩被膜が形成されたシートを接合面に介在させるので、接合する複数の金属部材に有機酸塩被膜を形成するよりも、シートに有機酸塩被膜を容易に形成することができる。
これにより、複雑な形状を有する金属部材や大型金属部材にも、高い位置精度での接合が可能となる。

【0027】
そして、本発明によれば、従来の固相接合では困難とされていたアルミニウム同士の接合が可能になるため、高いリサイクル性を確保できる。
さらに、アルミニウムは高い熱伝導・電気伝導性と軽量であるといった利点があるにも拘わらず、強固な酸化皮膜によって接合が困難であったために、アルミニウムの使用が敬遠されていたが、本発明の接合方法により、各種構造用部材との接合が可能となる。

【0028】
<2.実施の形態>
本発明の一実施の形態の金属の接合方法の手順のフローチャートを、図1に示す。
図1に示すように、まず、ステップS11において、金属シートを、有機酸溶液中で煮沸、或いは、有機酸を含む蒸気に曝露する。
これにより、金属シートの表面に、有機酸塩被膜が形成される。

【0029】
金属シートとして、亜鉛、銅、マグネシウムのいずれかのシートを使用することができる。
有機酸としては、ギ酸、クエン酸、ステアリン酸や、その他の有機酸を使用することができる。溶媒としては、水や各種の極性溶媒を使用することが可能である。

【0030】
次に、ステップS12において、金属シートの表面に有機酸塩被膜が形成されたシートを、接合面に介在させて、2つの金属部材を、加熱及び加圧して接合する。
これにより、表面汚染層が除去、或いは、有機酸塩に置換された状態で、加熱及び加圧するので、有機酸塩は熱分解反応を生じて分解されることから、第1の金属部材の金属原子の原子面が露出し、接合強度を増大させることができる。高い接合強度が得られるので、従来よりも低い温度及び低い変形量で高い接合強度を得ることが可能になる。
即ち、金属シートを使用せずに金属部材同士を直接接合した、もしくは、表面に有機酸塩被膜が形成されていない金属シートを用いた、従来の接合方法と比較して、接合の際の加熱の温度及び加圧力を低くすることが可能になる。

【0031】
金属部材としては、アルミニウム、アルミニウム合金を使用することができる。
そして、2つの金属部材には、同じ材料も、アルミニウム又はアルミニウム合金のうちの互いに異なる材料も、使用することが可能である。

【0032】
本実施の形態において、ステップS11の工程では、有機酸として、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、ステアリン酸を使用することができる。
これらの有機酸を使用することにより、金属シートの表面に有機酸塩被膜を形成することができる。
また、その後、必要に応じて、金属シートを純水やアルコール等で洗浄する工程や、金属シートを乾燥する工程を行ってもよい。

【0033】
上述の本実施の形態によれば、金属シートを、有機酸溶液中で煮沸、或いは、有機酸を含む蒸気に曝露することにより、金属シートの表面に有機酸塩被膜を形成することができる。
さらに、金属シートの表面に有機酸塩被膜が形成されたシートを、接合面に介在させて、2つの金属部材を、加熱及び加圧して接合することにより、有機酸塩は熱分解反応を生じて分解されることから、金属部材の金属原子の原子面が露出し、接合強度を増大させることができる。
これにより、高い接合強度が得られるので、低い温度で高い接合強度を得ることができ、シートを使用しない場合や、有機酸による金属シートの処理工程を行わない従来の場合と比較して、接合の際の加熱の温度を低くすることが可能になる。即ち、低温で固相状態での接合が可能になる。
そして、接合の際の圧力を低くしても十分に高い接合強度を得ることができ、低圧力で固相状態での接合が可能になることから、接合の際の変形量を低減することができるので、接合の位置精度を向上することができる。接合の位置精度が向上することにより、高い位置精度を保つことができ、溶接では困難であった複雑な形状の金属部材の接合も可能になる。
また、低温かつ低圧力で接合が可能になるため、エネルギー効率を向上することができる。例えば、消費電力や加熱用の燃料、接合に要する時間等を低減することが可能になる。

【0034】
なお、別途作製しておいたシートを使用する場合や、他人が製造したシートを譲り受けて使用する場合には、図1のフローチャートのステップS11は省略される。

【0035】
<3.実施例>
次に、実際に、本発明によって金属部材の接合を行い、特性を調べた。

【0036】
(実験1)A5052アルミニウム合金の接合
接合する2つの金属部材として、図2に斜視図を示すように、それぞれ直径が10mmで高さが25mmの円柱状である、2個のA5052アルミニウム合金1,2を用意した。
そして、2個のA5052アルミニウム合金1,2の接合面を、電解研磨により仕上げを行った。
使用したA5052アルミニウム合金1,2の化学組成は、下記の表1の通りである。

【0037】
【表1】
JP2016104399A1_000003t.gif

【0038】
亜鉛シートは、縦12mm×横12mmで、0.1mm~2.0mmの範囲内の所定の厚さを有する構成とした。

【0039】
以下の作製方法により、有機酸処理あり、有機酸処理なし、シートなし、の試料をそれぞれ作製した。

【0040】
(有機酸処理あり)
亜鉛シートの有機酸処理を行った試料を作製した。
まず、亜鉛シートを、アセトン中で超音波洗浄することにより脱脂した。
次に、亜鉛シートを、98%ギ酸中で2~8分の範囲内の所定時間煮沸した。
その後、蒸留水で10秒間水洗して、亜鉛シートを有機酸処理したシートを得た。

【0041】
次に、図3に斜視図を示すように、シート21を接合面の間に介在させて、2個のA5052アルミニウム合金1,2を、加熱及び加圧することにより、接合した。
そして、接合圧力は12MPa、接合時間を15分として、窒素雰囲気中で、接合温度は400~440℃の範囲内の所定の温度で保持して接合を行い、継手を作製した。

【0042】
(有機酸処理なし)
比較対照として、亜鉛シートの有機酸処理を行わない試料を作製した。
シート21として有機酸処理を行っていない亜鉛シートを使用して、図3に斜視図を示すように、シート21を接合面の間に介在させて、2個のA5052アルミニウム合金1,2を、加熱及び加圧することにより、接合した。
そして、接合圧力は12MPa、接合時間を15分として、窒素雰囲気中で、接合温度は400~440℃の範囲内の所定温度で保持して接合を行い、継手を作製した。

【0043】
(亜鉛シートなし)
比較対照として、亜鉛シートを使用せずに、金属部材同士を接合した試料を作製した。
2個のA5052アルミニウム合金1,2を直接突き合わせて、加熱及び加圧することにより、接合した。
そして、接合圧力は12MPa、接合時間を15分として、窒素雰囲気中で、接合温度は400~440℃の範囲内の所定温度で保持して接合を行い、継手を作製した。

【0044】
(引張試験)
さらに、2個の金属部材の接合により得られた継手の一方の金属部材に把持治具を取り付けて、引張試験を行った。
引張試験機は、INSTRON社製5567を使用した。なお、以下の引張試験においても、同一の引張試験機を使用した。

【0045】
(最適処理時間の検討)
まず、ギ酸処理の最適処理時間の検討を行った。
亜鉛シートの厚さを0.1mmで固定して、ギ酸処理の時間を0(処理なし)、2分、5分、8分と変えて、それぞれ接合用のシート21を作製した。
そして、シート21を接合面に介在させて、2個のA5052アルミニウム合金1,2を接合した。接合温度は400℃と440℃として、それぞれの接合温度について、ギ酸処理の時間を変えたシートで接合を行い、継手を作製した。
接合して得られた継手に対して引張試験を行い、引張強さσを測定した。
接合温度を400℃とした場合の処理時間と引張強さの関係を図4Aに示し、接合温度を440℃とした場合の処理時間と引張強さの関係を図4Bに示す。

【0046】
図4A及び図4Bより、400℃と440℃のいずれの接合温度の場合も、5分処理した試料が最も引張強さが大きくなり、処理時間が8分に増えると、引張強さが低下することがわかる。
処理時間が増えると引張強さが低下するのは、処理時間が長くなることにより有機酸塩が過剰に生成し、有機酸塩が分解してガスが発生することにより接合面に気泡が多く発生するためと推測される。
そして、処理時間を5分と最適化することにより、図4Aの接合温度400℃では無処理の場合の30倍以上の引張強さが得られ、図4Bの接合温度440℃では無処理の場合の2倍以上の引張強さが得られることがわかる。

【0047】
(シートの厚さの検討)
次に、シートの厚さはどの程度が良いか、検討を行った。
まず、厚さを0.1mm、0.4mm、0.8mm、2.0mmと変えて、それぞれ亜鉛シートを用意した。
それぞれの厚さの亜鉛シートの化学組成は、下記の表2~表5の通りである。表2は厚さ0.1mmの亜鉛シート、表3は厚さ0.4mmの亜鉛シート、表4は厚さ0.8mmの亜鉛シート、表5は厚さ2.0mmの亜鉛シートの化学組成である。

【0048】
【表2】
JP2016104399A1_000004t.gif
【表3】
JP2016104399A1_000005t.gif
【表4】
JP2016104399A1_000006t.gif
【表5】
JP2016104399A1_000007t.gif

【0049】
ギ酸処理の時間を、図4A及び図4Bで最大の引張強さが得られた5分で固定して、上述したように亜鉛シートの厚さを変えて、それぞれ接合用のシート21を作製した。
そして、シート21を接合面に介在させて、2個のA5052アルミニウム合金1,2を接合した。接合温度は400℃と440℃として、それぞれの接合温度について、亜鉛シートの厚さを変えてギ酸処理したシートで接合を行い、継手を作製した。
また、ギ酸処理を行っていない亜鉛シートについても同様に、それぞれの接合温度について、亜鉛シートの厚さを変えて接合を行い、継手を作製した。さらに、亜鉛シートを使用せずに接合を行い、継手を作製した。
接合して得られた継手に対して引張試験を行い、引張強さσを測定した。
接合温度を400℃とした場合の亜鉛シートの厚さ及び処理の有無と引張強さの関係を図5Aに示し、接合温度を440℃とした場合の亜鉛シートの厚さ及び処理の有無と引張強さの関係を図5Bに示す。

【0050】
図5A及び図5Bより、ギ酸中による処理の有無に関わらず、亜鉛シートの厚さの増加に伴い引張強さが増加することがわかった。ただし、亜鉛シートの厚さが0.8mmを超えると、引張強さの増加が鈍化することがわかった。
また、図5Aより、接合温度が400℃の場合、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合の5倍の引張強さを有する継手が得られることがわかった。図5Bより、接合温度が440℃の場合、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合の3倍の引張強さを有する継手が得られることがわかった。
なお、亜鉛シートを使用せずに接合した継手の引張強さは、接合温度400℃の場合は0.06MPa、接合温度440℃の場合は2.01MPaであった。

【0051】
亜鉛シートの膜厚の増加に伴い引張強さが増加するのは、溶融した亜鉛が接合面から外側に押し出されるのに伴い、膜厚が大きいほど接合する金属部材の表面の酸化皮膜の多くが溶融した亜鉛と共に外側に排出されるためと考えられる。

【0052】
図5Aと図5Bを比較すると、接合温度400℃よりも接合温度440℃の方が高い引張強度が得られることがわかる。
そして、亜鉛シートをギ酸処理した場合には、接合温度400℃であっても亜鉛シート無処理の接合温度440℃の場合よりも高い引張強度が得られている。このことから、亜鉛シートをギ酸処理することにより、接合温度を400℃に下げても十分な強度を得ることが可能になり、接合温度を下げて接合工程のコストを低減できる。

【0053】
(実験2)高シリコンアルミニウム合金の接合
接合する2つの金属部材として、図6に斜視図を示すように、下部の直径が20mmで高さが10mm、上部の直径が10mmで高さが10mmである、2個の高シリコンアルミニウム合金3,4を用意した。
そして、2個の高シリコンアルミニウム合金3,4の接合面を、電解研磨により仕上げを行った。
使用した高シリコンアルミニウム合金3,4の化学組成は、下記の表6の通りである。

【0054】
【表6】
JP2016104399A1_000008t.gif

【0055】
亜鉛シートは、縦12mm×横12mmで、厚さ0.8mmの構成とした。また、亜鉛シートのギ酸処理の時間は5分とした。
そして、金属部材を高シリコンアルミニウム合金3,4に変えて、図7に断面図を示すように、高シリコンアルミニウム合金3,4の上部の細い径の側を、シート21を介して接合した。接合温度は、430℃と490℃とした。その他は、実験1と同様の作製方法により、有機酸処理あり、有機酸処理なし、シートなし、の継手の試料を作製した。
それぞれの継手の各高シリコンアルミニウム合金3,4の太い径の側に引張試験用の治具を引っ掛けて、引張試験を行い、引張強さσを測定した。
接合温度を430℃とした場合の処理の有無と引張強さの関係を図8Aに示し、接合温度を490℃とした場合の処理の有無と引張強さの関係を図8Bに示す。

【0056】
図8A及び図8Bより、いずれの接合温度においても、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合よりも引張強さが増加することがわかる。
また、図8Aより、接合温度が430℃の場合、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合の約1.3倍の引張強さを有する継手が得られることがわかった。図8Bより、接合温度が490℃の場合、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合よりも約20MPa高い引張強さを有する継手が得られることがわかった。

【0057】
図8Aと図8Bを比較すると、接合温度490℃よりも接合温度430℃の方が高い引張強度が得られることがわかる。そして、接合温度430℃の方が、亜鉛シートをギ酸処理した効果が大きくなっている。

【0058】
(実験3)A6061アルミニウム合金の接合
接合する2つの金属部材として、図9に斜視図を示すように、下部の直径が20mmで高さが10mm、上部の直径が10mmで高さが10mmである、2個のA6061アルミニウム合金5,6を用意した。
そして、2個のA6061アルミニウム合金5,6の接合面を、電解研磨により仕上げを行った。
使用したA6061アルミニウム合金5,6の化学組成は、下記の表7の通りである。

【0059】
【表7】
JP2016104399A1_000009t.gif

【0060】
金属部材をA6061アルミニウム合金5,6に変えて、図10に断面図を示すように、A6061アルミニウム合金5,6の上部の細い径の側を、シート21を介して接合した。接合温度は、430℃と440℃とした。その他は、実験2と同様の作製方法により、有機酸処理あり、有機酸処理なし、シートなし、の継手の試料を作製した。
それぞれの継手の各A6061アルミニウム合金5,6の太い径の側に引張試験用の治具を引っ掛けて、引張試験を行い、引張強さσを測定した。
接合温度を430℃とした場合の処理の有無と引張強さの関係を図11Aに示し、接合温度を440℃とした場合の処理の有無と引張強さの関係を図11Bに示す。

【0061】
図11A及び図11Bより、いずれの接合温度においても、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合よりも引張強さが増加することがわかる。
また、図11Aより、接合温度が430℃の場合、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合の約1.3倍の引張強さを有する継手が得られることがわかった。図11Bより、接合温度が440℃の場合、ギ酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合よりも約15MPa高い引張強さを有する継手が得られることがわかった。

【0062】
図11Aと図11Bを比較すると、接合温度430℃の方が、亜鉛シートをギ酸処理した効果が大きくなっている。

【0063】
(実験4)酢酸処理
亜鉛シートの処理を行う有機酸を、ギ酸から酢酸に変えて、ギ酸処理の場合と同様に、引張強さの測定を行った。
金属部材は、実験1と同じA5052アルミニウム合金1,2を使用した。

【0064】
(最適処理時間の検討)
まず、酢酸処理の最適処理時間の検討を行った。
亜鉛シートの厚さを0.1mmで固定して、酢酸処理の時間を0(処理なし)、2分、8分、12分、18分と変えて、それぞれ接合用のシート21を作製した。
そして、シート21を接合面に介在させて、2個のA5052アルミニウム合金1,2を接合した。接合温度は440℃として、酢酸処理の時間を変えたシートで接合を行い、継手を作製した。
接合して得られた継手に対して、実験1と同様にして引張試験を行い、引張強さσを測定した。
処理時間と引張強さの関係を図12に示す。

【0065】
図12より、8分処理した試料が最も引張強さが大きくなり、処理時間が12分に増えると、引張強さが低下することがわかる。そして、最適処理時間が8分であり、ギ酸処理の5分よりも長くなっている。

【0066】
(シートの厚さの検討)
次に、シートの厚さはどの程度が良いか、検討を行った。
まず、厚さを0.1mm、0.8mm、2.0mmと変えて、それぞれ亜鉛シートを用意した。
酢酸処理の時間を、図12で最大の引張強さが得られた8分で固定して、上述したように亜鉛シートの厚さを変えて、それぞれ接合用のシート21を作製した。
そして、シート21を接合面に介在させて、2個のA5052アルミニウム合金1,2を接合した。接合温度は440℃として、亜鉛シートの厚さを変えて酢酸処理したシートで接合を行い、継手を作製した。
接合して得られた継手に対して引張試験を行い、引張強さσを測定した。
亜鉛シートの厚さ及び処理の有無と引張強さの関係を図13に示す。なお、図13において、シートの処理なし及び厚さ0(シートなし)の各データは、図5Bと同一のデータを使用しており、シートを使用していない場合の引張強さは2.01MPaである。

【0067】
図13より、酢酸で処理した場合も、亜鉛シートの厚さの増加に伴い引張強さが増加し、亜鉛シートの厚さが0.8mmを超えると、引張強さの増加が鈍化することがわかった。
また、図13より、接合温度が440℃の場合、酢酸中で亜鉛シートの煮沸を行うことで、無処理の亜鉛シートを使用した場合の約4倍の引張強さを有する継手が得られることがわかった。

【0068】
さらに、図5Bのギ酸処理の結果と、図13Bの酢酸処理の結果を、まとめて図14に示す。
図14より、酢酸で処理した場合、ギ酸で処理した場合よりも高い強度が達成できることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1,2 A5052アルミニウム合金、3,4 高シリコンアルミニウム合金、5,6 A6061アルミニウム合金、21 シート
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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