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明細書 :炭化水素リフォーミング用触媒およびこれを用いた合成ガスの製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4496346号 (P4496346)
登録日 平成22年4月23日(2010.4.23)
発行日 平成22年7月7日(2010.7.7)
発明の名称または考案の名称 炭化水素リフォーミング用触媒およびこれを用いた合成ガスの製法
国際特許分類 B01J  23/86        (2006.01)
B01J  23/825       (2006.01)
B01J  23/835       (2006.01)
B01J  23/85        (2006.01)
C01B   3/40        (2006.01)
FI B01J 23/86 M
B01J 23/82 M
B01J 23/85 M
C01B 3/40
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2009-537015 (P2009-537015)
出願日 平成20年10月8日(2008.10.8)
国際出願番号 PCT/JP2008/068310
国際公開番号 WO2009/048083
国際公開日 平成21年4月16日(2009.4.16)
優先権出願番号 2007265490
優先日 平成19年10月11日(2007.10.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年8月25日(2009.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591090736
【氏名又は名称】石油資源開発株式会社
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】永岡 勝俊
【氏名】瀧田 祐作
【氏名】若月 俊也
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100129403、【弁理士】、【氏名又は名称】増井 裕士
審査官 【審査官】佐藤 健史
参考文献・文献 特開2000-288394(JP,A)
特公昭42-007252(JP,B1)
特開2004-141860(JP,A)
特開2005-103468(JP,A)
特開昭58-049602(JP,A)
特表2005-529744(JP,A)
触媒学会編,触媒講座第5巻(工学編4)触媒設計,講談社,1985年12月10日,p.100-101
日本化学会編,実験化学講座17 有機化合物の反応I(下),丸善,1963年,第2版,p.260
調査した分野 B01J 21/00-38/74
C01B 3/02- 3/58
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
水および二酸化炭素から選択される少なくとも1種からなる改質物質により、炭化水素を改質するリフォーミング用触媒であって、
下記(I)式で表される組成を有する複合酸化物からなり、Co、NiおよびMが該複合酸化物中で分散されているリフォーミング用触媒。
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO・・・・・・(I)
[式(I)中、a、b、c、d、e、fはモル分率であり、
a+b+c+d+e=1、
0.0001<a≦0.20、
0<b0.20、
0.20、
0.001<(b+c)≦0.20、
0.60≦(d+e)≦0.9989、
0<d<0.9989、
0<e<0.9989、
f=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。
また、Mは周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。]
【請求項2】
前記Mは、ガリウム、クロム、タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のリフォーミング用触媒。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載のリフォーミング用触媒を用いて、炭化水素と、水および二酸化炭素から選択される少なくとも1種からなる改質物質とから合成ガスを得る、合成ガスの製造方法。
【請求項4】
炭化水素と前記改質物質との供給比を、改質物質/炭素比=0.3~100とする、請求項3に記載の合成ガスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素(CO)と水素(H2)との混合ガスである合成ガスを、メタン等の炭化水素と水、二酸化炭素、酸素、空気等の改質物質とから得るためのリフォーミング用触媒と、該リフォーミング用触媒を用いた合成ガスの製法に関する。
本願は、2007年10月11日に出願された日本国特許出願2007-265490号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
メタン、天然ガス、石油ガス、ナフサ、重油、原油等の炭化水素を触媒存在下の高温域で水、空気、二酸化炭素等の改質物質と反応させるとき、反応性に富む一酸化炭素、水素の混合ガスに改質される。改質された一酸化炭素、水素の混合ガスは、メタノール、液体燃料油等の原料として使用される。最近では、燃料電池用水素ガスを混合ガスから取り出す研究・開発も進められている。一酸化炭素、水素の混合ガスの合成反応には、ニッケル/アルミナ、ニッケル/マグネシア/アルミナ等のリフォーミング用触媒が使用されている。
リフォーミング用触媒を用いた炭化水素/水蒸気の反応系では、反応副産物である炭素質粒子が触媒表面に析出しやすい。析出した炭素質粒子は触媒表面の活性点を覆い、触媒活性を低下させる。炭素質粒子の多量析出は、触媒の目詰まり、破損等の原因になることは勿論、反応域中のガスを偏流させ、結果としてリフォーミング反応に寄与する触媒の割合を低下させる。過剰量の水蒸気を送り込むことにより触媒表面における炭素質粒子の析出を防止できるが、エネルギーコストの上昇、設備の大型化等が避けられない。
過剰量の水蒸気供給を必要とせずに炭素質粒子の析出を抑制するため、触媒活性成分を高分散したリフォーミング用触媒が提案されている(特許文献1、2)。特許文献1の記載では、触媒活性成分が高分散化したリフォーミング用触媒を得る方法として、次のように記載されている。触媒粒子の各構成元素の水溶性塩の水溶液に共沈剤を添加して、水酸化物を沈殿せしめ、温度673K~873Kの範囲で一次焼成し、温度1223K~1573Kの範囲で二次焼成する方法を採用している。また、特許文献2記載のリフォーミング用触媒は、Ni、Co等の触媒活性成分およびMg、Al、Zr、Ti、Ca等の担体構成成分を含む水溶液に多孔質成形体(触媒担体)を浸漬し、触媒活性成分、担体構成成分を多孔質成形体に浸透させる。次いで、多孔質成形体を乾燥した後、700℃以上で高温焼成し、500℃以上で活性化処理すると、極微粒状の触媒粒子が多孔質成形体の表層に高分散する。触媒粒子の高分散によって、触媒表面への炭素質粒子の析出が抑えられ、長期にわたり優れた触媒活性作用が維持されることが記載されている。

【特許文献1】特開2002-126528号公報
【特許文献2】特開2004-141860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1および2で紹介されているリフォーミング用触媒は、触媒活性成分の高分散化によって炭素質粒子の析出による悪影響を抑制できるが、長時間の使用の間には、余剰の水蒸気や二酸化炭素等により触媒活性成分が酸化して、触媒活性等の性能を低下させてしまうことがある。
また、活性成分の酸化による性能低下を防ぐ方法としては、活性成分の担持量を増やすことで対応することが考えられるが、大量の活性成分が触媒表面上に存在すると、その分散性を維持することができなくなり、その結果炭素質粒子の多量析出が避けられない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、触媒活性を長期にわたって高位に維持する炭化水素リフォーミング用触媒、ならびに該触媒を用いた合成ガスの製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一酸化炭素、水素の混合ガスは、下記反応式(1)~(4)の反応に従って炭化水素原料から合成される。他方、触媒表面に炭素質粒子が析出する反応は、下記反応式(5)~(8)で表される。下記反応式(5)~(8)の反応で析出した炭素質粒子は、触媒活性成分/触媒担体間に蓄積され、活性度を低下させ最終的には触媒を破壊する。活性度低下に至らないまでも、蓄積した炭素質粒子によって反応器を流れるガスに偏流が生じ、リフォーミング反応に寄与しない触媒の割合が増加しやすい。
【0005】
【化1】
JP0004496346B2_000002t.gif

【0006】
担体に担持されている触媒活性成分を非常に細かな粒子にすると、炭素質粒子の蓄積が抑制される。触媒活性成分の粒径が炭素質粒子の蓄積解消に及ぼす影響は、炭素質粒子の生成・析出反応(5)~(8)に比較して逆反応の速度が相対的に大きくなることに起因すると考えられる。触媒活性成分の粒径が細かくなるほど、すなわち触媒活性成分の分散が高くなるほど炭素質粒子の蓄積が解消される傾向が強くなる。また、担体表面に担持されているガリウム、クロム、タングステン等の耐酸化性向上成分は、水蒸気や二酸化炭素等による触媒活性成分の酸化を抑制したり、活性成分自体の酸化耐性を向上させることができることを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明のリフォーミング用触媒は、水および二酸化炭素から選択される少なくとも1種からなる改質物質により、炭化水素を改質するリフォーミング用触媒であって、下記(I)式で表される組成を有する複合酸化物からなり、Co、NiおよびMが該複合酸化物中で分散されている。
前記Mは、ガリウム、クロム、タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO・・・・・・(I)
[式(I)中、a、b、c、d、e、fはモル分率であり、a+b+c+d+e=1、0.0001<a≦0.20、0<b0.20、00.20、0.001<(b+c)≦0.20、0.60≦(d+e)≦0.9989、0<d<0.9989、0<e<0.9989、f=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、M(以下、耐酸化性向上成分ということもある)は周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。]
【0008】
本発明の合成ガスの製造方法は、前記リフォーミング用触媒を用いて、炭化水素と、水および二酸化炭素から選択される少なくとも1種からなる改質物質から合成ガスを得る。炭化水素と前記改質物質との供給比を、改質物質/炭素比=0.3~100とすることが好ましい。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、触媒活性を長期にわたって高位に維持する炭化水素リフォーミング用触媒、ならびに該触媒を用いた合成ガスの製法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の触媒の表面状態を模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0011】
1…触媒、
2…微小粒子
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のリフォーミング用触媒は、下記(I)式で表される組成を有する複合酸化物からなり、Co、NiおよびMが該複合酸化物中で分散されているものである。なお、本発明においては、下記(I)式で表される組成は、焼成後の無水物基準で表されたものである。
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO・・・・・・(I)
[式(I)中、a、b、c、d、e、fはモル分率であり、a+b+c+d+e=1、0.0001<a≦0.20、0<b≦0.20、0≦c≦0.20、0.001<(b+c)≦0.20、0.60≦(d+e)≦0.9989、0<d<0.9989、0<e<0.9989、f=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、Mは周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。]
なお、ここでの周期律表はIUPACによるものとする。
【0013】
前記(I)式中のMは、周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。中でも第3B族元素としてはガリウムが好ましく、第6A族元素としてはクロム、タングステンであることが好ましい。
また、この組成において、Mの含有量(a)が0.0001以下では、酸化抑制効果が認められず、0.20を超えるとリフォーミング反応の活性を低下させ不都合である。従って、Mの含有量(a)は、0.0001<a≦0.20であり、好ましくは0.0001<a≦0.15、さらに好ましくは0.0001<a≦0.10である。
【0014】
コバルト含有量(b)は0<b≦0.20、またニッケル含有量(c)は、0≦c≦0.20である。コバルト含有量(b)とニッケル含有量(c)との合計量(b+c)が0.001以下ではコバルトおよび/またはニッケルの含有量が少なすぎて反応活性が低く、0.20を超えると後述する高分散化が阻害され、炭素質析出防止効果が十分得られない。従って、コバルト含有量(b)とニッケル含有量(c)との合計量(b+c)は、0.001<(b+c)≦0.20であり、好ましくは、0.001<(b+c)≦0.15、さらに好ましくは0.001<(b+c)≦0.10である。
【0015】
マグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は、0.60≦(d+e)≦0.9989であり、好ましくは0.70≦(d+e)≦0.9989、さらに好ましくは0.80≦(d+e)≦0.9989である。このうち、マグネシウム含有量(d)は0<d<0.9989であり、好ましくは0.20≦d<0.9989、さらに好ましくは0.50≦d<0.9989である。カルシウム含有量(e)は0<e<0.9989、好ましくは0<e≦0.5、さらに好ましくは0<e≦0.3である。
マグネシウム含有量(d)とカルシウム含有量(e)との合計量(d+e)は、M含有量(a)、コバルト含有量(b)およびニッケル含有量(c)とのバランスで決められる。(d+e)は上記範囲内であればいかなる割合でもリフォーミング反応に優れた効果を発揮するが、カルシウム含有量(e)が多いと炭素質析出の抑制に効果があるものの、マグネシウム(d)が多い場合に比べて触媒活性が低い。よって、活性を重視するのであれば、カルシウム含有量(e)が0.5を超えると活性が低下するので好ましくない。
【0016】
本発明における複合酸化物とは、MgO、CaOが岩塩型結晶構造をとり、その格子に位置するMgまたはCa原子の一部がCo、NiおよびMに置換した一種の固溶体であって、単相をなすものであり、各元素単独の酸化物の混合物を言うものではない。そして、本発明では、コバルト、ニッケルおよびMがこの複合酸化物中に高分散状態となっている。
【0017】
本発明での分散とは、一般に触媒分野で定義されているものであって、例えば「触媒講座 第5巻 触媒設計」第141頁(触媒学会編、講談社刊)等にあるように、担持された金属の全原子数に対する触媒表面に露出している原子数の比として定められるものである。
これを、本発明について図1の模式図によって具体的に説明すると、複合酸化物からなる触媒1の表面には活性中心となる半球状等の微小粒子2が無数に存在しており、この微小粒子2は、後述する活性化(還元)処理後ではコバルト、ニッケルおよびMの金属元素またはその化合物からなっている。この微小粒子2をなすコバルト、ニッケルおよびMの金属元素またはその化合物の原子数をAとし、これらの原子のうち粒子2の表面に露出している原子の数をBとすると、B/Aが分散度となる。
【0018】
触媒反応に関与するのは、微小粒子2の表面に露出している原子であると考えれば、分散度が1に近いものは多くの原子がその表面に分布することになって、活性中心が増加し、高活性となりうると考えられる。また、微小粒子2の粒径が限りなく小さくなれば、微小粒子2をなす原子の大部分は、粒子2表面に露出することになって、分散度は1に近づく。したがって、微小粒子2の粒径が分散度を表す指標にもなりうる。
本発明の触媒は、微小粒子2の径が種々の測定法、例えばX線回析法等の測定限界である3.5nm未満である。このことから分散度が高く、高分散状態であると言うことができる。このため、反応に関与するコバルト、ニッケルおよびMの原子数が増加し、高活性となって、反応が化学量論的に進行し、炭素質(カーボン)の析出が防止される。
【0019】
次に、本発明のリフォーミング用触媒の製法について説明する。本発明の触媒の製法は、いわゆる含浸法によって担体に担持させることによって行われる。触媒活性成分を担体に担持後に、耐酸化性向上成分を担持させる。触媒活性成分および耐酸化性向上成分を担体に含浸させ、乾燥後に高温焼成することにより複合酸化物として微粒状の触媒活性成分を担体表面に分散させる。
触媒担体としては、マグネシアまたはマグネシアとカルシアの複合体から選ばれた少なくとも1種を成形、焼成することにより得られた担体が使用される。担体は、細孔が表面に開口した構造のため、比較的多くの触媒活性成分および耐酸化性向上成分を担持できる。触媒活性成分の担持量は担体の細孔容積(空隙率)に応じて増加するが、空隙率の増加は担体の強度低下を意味する。そのため、触媒活性成分の必要担持量、担体強度を勘案して担体の空隙率を適宜定める。担体は、例えば担体粉末に必要に応じてグラファイト等の滑剤、成形体強度向上に有効なセメント、バインダ等を配合した混合物を圧縮成形や押出成形することにより製造され、圧粉体密度、発泡剤添加等によって必要空隙率に調整される。
【0020】
含浸用水溶液は、触媒活性成分を水に添加溶解した触媒活性成分水溶液と、耐酸化性向上成分を水に添加溶解した耐酸化性向上成分水溶液としてそれぞれ調製される。具体的には、Coおよび/またはNiを前記(I)式で表された比率で含有される触媒活性成分水溶液と、Mが含有される耐酸化性向上成分水溶液を調製する。
本発明における触媒活性成分は、ニッケル、コバルトから選ばれた少なくとも1種である。
本発明における耐酸化性向上成分は、前記(I)式中、Mで表される元素から選ばれた少なくとも1種である。
触媒活性成分、耐酸化性向上成分共に、1種を単独であるいは2種以上の成分を複合して使用することができ、酢酸塩、蟻酸塩等の有機酸塩あるいは硝酸塩、塩化物等の無機酸塩として配合される。耐酸化性向上成分/触媒活性成分のモル比を0.001~0.5に調整することが好ましい。
【0021】
含浸処理は、得られるリフォーミング用触媒における触媒活性成分の担持量が0.1~20モル%となるように水溶液濃度、温度、時間等の浸漬条件が定められる。触媒活性成分の担持量が、0.1モル%未満では触媒活性が低く、逆に20モル%を超える担持量では高分散化が阻害され炭素質粒子の抑制効果が十分でなくなるためである。触媒活性成分の担持量は蛍光X線分析や原子吸光分析で測定できる。
含浸用水溶液の温度は0~80℃が好ましい。0℃未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分の担持体への含浸が不充分となるおそれがある。一方、80℃を超える温度であると担体の一部が水酸化物となり、触媒の強度が低下する等の不都合が生じるおそれがあるためである。
浸漬時間は10~60分であることが好ましい。浸漬時間が10分未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分の担持体への含浸が不充分となるおそれがある。一方、60分を超えると触媒担体を構成している酸化物の水酸化物が多く発生するおそれがあるためである。
【0022】
含浸処理した触媒前駆体を加熱乾燥して水分を除去し、乾燥後の触媒前駆体を得る。乾燥温度は特に限定されるものではないが、高温乾燥ほど水分蒸発が促進されるため、乾燥温度を100℃以上に設定して乾燥時間を短縮させることが好ましい。前記触媒前駆体を十分に乾燥させることにより、結晶水の一部も除去され、次の焼成工程における触媒前駆体の体積変化も小さくなる。不十分な乾燥では、焼成工程で残留水分の突沸や、触媒前駆体の収縮が生じやすく、触媒前駆体の破壊に至る虞がある。水分の完全な除去は、乾燥前後の重量減少から判定できる。
【0023】
乾燥後の触媒前駆体を大気等の酸化性雰囲気中で焼成する。焼成温度は特に限定されないが、700~1300℃で焼成することが好ましい。700℃未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分の酸化が不充分となるおそれがあり、1300℃を超えると触媒の表面積が小さくなり、触媒活性が低くなるおそれがあるためである。
また、焼成時間は1~20時間で行うことが好ましい。1時間未満であると触媒活性成分、耐酸化性向上成分の酸化が不充分となるおそれがあり、20時間を超えると触媒活性が低下する可能性があるためである。
【0024】
本発明のリフォーミング用触媒は、含浸用水溶液から担体に移行した触媒活性成分、耐酸化性向上成分から生成するため、担体の表面層に均一に分布する。また、担体の表層に触媒粒子が均一分散されるので、触媒反応に寄与する触媒粒子の割合が格段に高く、結果として触媒使用量を低減できる。
【0025】
本発明のリフォーミング用触媒を用いた合成ガスの製法について説明する。
まず、リフォーミング用触媒の活性化処理を行う。この活性化処理は触媒を水素ガス等の還元性気体の存在下で、500~1000℃、好ましくは600~1000℃、さらに好ましくは650~1000℃の温度範囲で0.5~50時間程度加熱することによって行われる。還元性気体は窒素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。この活性化処理をリフォーミング反応を行う反応器内で行うこともできる。
この活性化処理により、図1での触媒1表面の微小粒子2が還元されてCo、NiまたはMの金属元素またはその化合物となり、触媒活性が発現する。本発明での活性化処理は、従来のCoまたはNi酸化物系触媒の活性化よりも高温で行う。従来のCoまたはNi酸化物系触媒では、通常500℃未満で行われていることから、本発明における高温での活性化処理が上述の高分散化に寄与している可能性がある。
【0026】
次に、前記活性化処理が行われたリフォーミング用触媒が充填されている反応管に、炭化水素と改質物質とからなる原料ガスを供給し、任意の反応条件で、反応を行う。具体的には、温度条件は500~1000℃、好ましくは600~1000℃、さらに好ましくは650~1000℃である。500℃未満であると炭化水素の転化率が低く実用的ではなく、1000℃超える条件では、高温耐性のある反応管が別途必要となり経済面での問題がある。圧力条件(ゲージ圧。以下同じ。)は0.1~10MPa、好ましくは0.1~5MPa、さらに好ましくは0.1~3MPaの範囲で反応を行う。0.1MPa未満であると反応管が大きくなるため投資等がかさみ、10MPaを超えると耐高圧性の反応管が必要なためである。
原料ガスの空間速度(GHSV:原料ガスの供給速度を体積換算の触媒量で除した値)は、500~200000h-1、好ましくは1000~100000h-1、さらに好ましくは1000~75000h-1の範囲とすることが望ましい。また、触媒床の形態は、固定床、移動床、流動床等の周知の形態を任意に選択できる。
【0027】
合成ガスの原料となる炭化水素としては、天然ガス、石油ガス、ナフサ、重油、原油等や石炭、コールサンド等から得られた炭化水素等が用いられ、その一部にメタン等の炭化水素が含有されていれば、特に限定されることはない。これらは2種以上が混合されていてもよい。
改質物質としては、水(水蒸気)、二酸化炭素、酸素、空気等が用いられ、2種以上が混合されていてもよい。好ましい改質物質としては、水または二酸化炭素もしくは水と二酸化炭素との混合物である。
【0028】
反応に際しての炭化水素と改質物質との供給割合は、炭化水素中の炭素原子の数を基準とするモル比で表して、改質物質/炭素比=0.3~100、好ましくは0.3~10、さらに好ましくは0.5~3である。改質物質/炭素比が0.3未満であると炭素質の析出が激しくなり、100を超えると反応管が大きくなるため投資等がかさむためである。
炭化水素と改質物質との混合気体には、希釈剤として窒素等の不活性ガスを共存させてもよい。
【0029】
本発明のリフォーミング用触媒は、CoO、NiOあるいはMOxをMgOまたはMgO/CaOとの複合酸化物とし、コバルト、ニッケルおよびMを分散したもので、高活性となる。そして、メタン等の炭化水素と、水蒸気等の改質物質とを同化学当量もしくはそれに近い量で反応させても、炭素質(カーボン)の析出が抑制され、効率よく合成ガスを製造できる。このため、水蒸気等の改質物質を大過剰に供給する必要がなく、改質物質の無駄がなくなり、低コストで合成ガスを生産できる。また、触媒が炭素質で汚染されることがないので、触媒活性の経時的な低下が抑制され、触媒の寿命が長くなる。さらに、酸化による触媒性能の低下を抑制し、触媒活性を長期にわたって高位に維持することが可能となる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
カルシウムを0.1質量%含有するマグネシア粉末を外径3mm、高さ3mmの円柱状に成形し、1100℃で焼成することにより担体を得た。含浸用水溶液には、Co(NO・6HO:397.32gを水に溶解して1リットルの触媒活性成分水溶液を調製した。また、Cr(NO・9HO:184.54gを水に溶解し、1リットルの耐酸化性向上成分水溶液を調製した。常温に維持した前記触媒活性成分水溶液に前記担体を30分間浸漬した後、該水溶液から引き上げた触媒前駆体を大気中120℃で12時間乾燥させた。Co(触媒活性成分)の担持量が5モル%になるまで、浸漬、乾燥を3回繰り返した。乾燥後、常温に維持した耐酸化性向上成分水溶液に前記触媒前駆体を30分間浸漬し、120℃で12時間乾燥させた。乾燥後、Co、Crの硝酸塩が浸透した触媒前駆体を大気雰囲気中1250℃で5時間加熱焼成することにより、触媒Aを得た。
得られた触媒Aについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0031】
(実施例2)
実施例1のCo(NO・6HO:397.32gを396.72gとし、またCr(NO・9HO:184.54gをGa(NO・nHO:137.69gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Bを得た。得られた触媒Bについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例1のCo(NO・6HO:397.32gを395.63gとし、またCr(NO・9HO:184.54gを(NH101241・5HO:34.13gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Cを得た。得られた触媒Cについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例1のCo(NO・6HO:397.32gを、Co(NO・6HO:297.99gと、Ni(NO・6HO:99.25gとした以外は実施例1と同様にして、触媒Dを得た。得られた触媒Dについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0034】
(実施例5)
実施例2のCo(NO・6HO:396.72gを、Co(NO・6HO:297.54gと、Ni(NO・6HO:99.10gとした以外は実施例2と同様にして、触媒Eを得た。得られた触媒Eについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0035】
(実施例6)
実施例3のCo(NO・6HO:395.63gを、Co(NO・6HO:296.72gと、Ni(NO・6HO:98.83gとした以外は実施例3と同様にして、触媒Fを得た。得られた触媒Fについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0036】
(比較例1)
実施例1のCr(NO・9HO:184.54gを除いた他は、実施例1と同様にして触媒Gを得た。得られた触媒Gについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。

【0037】
(比較例2)
比較例1のCo(NO・6HO:397.32gをNi(NO・6HO:397.00gとした以外は比較例1と同様にして触媒Hを得た。得られた触媒Hについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0038】
(比較例3)
比較例1のCo(NO・6HO:397.32gをCo(NO・6HO:297.99g、Ni(NO・6HO:99.25gとした以外は比較例1と同様にして触媒Iを得た。得られた触媒Iについて、後述する反応例1~3を行った。反応例1~3の結果は表1に示す。
【0039】
(反応例1)
触媒A~Iについて、各々20mLの触媒を内径16mmの流通式反応管に充填し、水素ガスを送り込みながら触媒層を850℃以上に加熱保持する活性化処理を施した。
次いで、触媒層の出口温度を850℃、雰囲気圧を2.0MPaに維持し、反応ガスであるメタン/二酸化炭素/水蒸気を2/1/2の割合で、ガス空間速度(GHSV):3000h-1の条件で流通式反応管に送り込んだ。反応時間20時間後の時点のメタン転化率、および触媒に析出した炭素量を表1に示す。
【0040】
(反応例2)
反応1の反応ガスの二酸化炭素を省き、メタン/水蒸気を2/3の割合で、GHSV:3000h-1の条件で流通式反応管に送り込んだ。反応時間20時間後の時点のメタン転化率を表1に示す。
【0041】
(反応例3)
反応1の反応ガスの二酸化炭素を省き、メタン/水蒸気を2/3の割合で、触媒層出口温度:580℃、GHSV:72000h-1の条件で流通式反応管に送り込んだ。反応時間5時間後の時点のメタン転化率を表1に示す。
【0042】
(メタン転化率)
反応ガス中のメタン濃度(原料ガスメタン濃度)、および触媒層出口でのメタン濃度(反応後メタン濃度)をガスクロマトグラフィで測定し、メタン転化率を下記式(II)により求めた。
【0043】
【数1】
JP0004496346B2_000003t.gif

【0044】
(炭素析出量)
反応例1の反応を終えた後、反応管から触媒を取り出し、触媒表面に析出している炭素量を熱重量分析法および昇温酸化法により測定した。
【0045】
【表1】
JP0004496346B2_000004t.gif

【0046】
表1は、実施例1~6および比較例1~3の反応例1~3の結果である。
実施例1~6は、反応例1および2のいずれにおいても、20時間後にも高いメタン転化率を維持していた。加えて、反応例1における炭素析出量が少なく抑えられることがわかった。一方、比較例1は反応例2においては20時間後にメタン転化率が著しく低下していた。比較例2では反応例1において、反応開始5時間後に触媒層が閉塞して反応を中止した。この時点の炭素析出量は45質量%となり、5時間を超えた反応では更なる炭素析出量の増加が予測された。
反応例3の結果では、実施例1~6では原料ガスの空間速度を著しく大きくしても、触媒の失活や閉塞は見られなかった。これに対し、比較例1では反応開始1時間後に触媒は失活し、比較例3においても反応開始5時間後にはメタン転化率は著しく低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、下記(I)式で表される組成を有する複合酸化物からなり、Co、NiおよびMが該複合酸化物中で分散されているリフォーミング用触媒に関する。
aM・bCo・cNi・dMg・eCa・fO・・・・・・(I)
ただし、式(I)中、a、b、c、d、e、fはモル分率であり、
a+b+c+d+e=1、
0. 0001<a≦0.20、
0<b≦0.20、
0≦c≦0.20、
0.001<(b+c)≦0.20、
0.60≦(d+e)≦0.9989、
0<d<0.9989、
0<e<0.9989、
f=元素が酸素と電荷均衡を保つのに必要な数である。また、Mは周期律表第3B族元素、第6A族元素の少なくとも1種類の元素である。
本発明によれば、触媒活性を長期にわたって高位に維持することができる。
図面
【図1】
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