TOP > 国内特許検索 > アンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法 > 明細書

明細書 :アンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-018907 (P2017-018907A)
公開日 平成29年1月26日(2017.1.26)
発明の名称または考案の名称 アンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法
国際特許分類 B01J  23/63        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
C01C   1/04        (2006.01)
FI B01J 23/63 M
B01J 37/04 101
B01J 37/16
C01C 1/04 E
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-139856 (P2015-139856)
出願日 平成27年7月13日(2015.7.13)
発明者または考案者 【氏名】永岡 勝俊
【氏名】佐藤 勝俊
【氏名】今村 和也
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100093665、【弁理士】、【氏名又は名称】蛯谷 厚志
【識別番号】100102990、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良博
【識別番号】100080919、【弁理士】、【氏名又は名称】田崎 豪治
【識別番号】100128495、【弁理士】、【氏名又は名称】出野 知
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
Fターム 4G169AA02
4G169AA08
4G169BA47A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB05A
4G169BC01A
4G169BC06B
4G169BC08A
4G169BC41A
4G169BC44B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169CB82
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169FB07
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB44
要約 【課題】アンモニア合成活性がさらに向上したアンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法を提供する。
【解決手段】A.ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物、B.ランタノイドを含む化合物、ならびにC.塩基性助触媒を物理混合してなるアンモニア合成触媒用組成物。このアンモニア合成触媒用組成物を触媒として、窒素と水素を反応させてアンモニアを製造する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
A.ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物、B.ランタノイドを含む化合物、ならびにC.塩基性助触媒を物理混合してなるアンモニア合成触媒用組成物。
【請求項2】
ランタノイドを含む化合物がランタノイド酸化物である請求項1に記載のアンモニア合成触媒用組成物。
【請求項3】
塩基性助触媒が、アルカリ金属の酸化物もしくは水酸化物、またはアルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物である請求項1または2に記載のアンモニア合成触媒用組成物。
【請求項4】
物理混合が水分を含まない乾式の摩砕混合である請求項1~3のいずれか1項に記載のアンモニア合成触媒用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のアンモニア合成触媒用組成物を触媒として、窒素と水素を反応させてアンモニアを製造することを特徴とするアンモニアの合成方法。
【請求項6】
A.ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物、B.ランタノイドを含む化合物、ならびにC.塩基性助触媒を物理混合してなるアンモニア合成触媒用組成物を得ることを特徴とするアンモニア合成触媒用組成物の製造方法。
【請求項7】
物理混合してなるアンモニア合成触媒用組成物を還元反応に供する請求項6に記載のアンモニア合成触媒用組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素からの水素製造技術や水素利用技術、例えば燃料電池などは盛んに研究開発されている。一方、刺激臭のある無色の気体で水によく溶け、アルカリ性を示し、圧縮により容易に液化するアンモニアは、全世界で1億6,000万トン(2010年)製造されている。その大部分は肥料や化学薬品・化学繊維、冷媒などの原料として使用されてきた。アンモニアは、水素含有量が多く;貯蔵、水素の取り出しが容易;炭素を含まないので、利用時に二酸化炭素が発生しない;ハンドリング技術、安全管理、医療法が確立され、輸送・貯蔵のプロセスが容易、といった特徴がある。旧来のアンモニア利用目的による製造設備は、老朽化して衰退の一途であるが、最近新しい水素エネルギーとしてのアンモニア活用が注目されている。すなわち、最近、特にアフリカ大陸等で、太陽エネルギーをもとにアンモニアを製造し、安全で効率的な貯蔵・輸送を経て、地域や家庭、自動車などで直接的に、あるいは改質して得られる水素を提供しようとしていること等から、今後のアンモニア合成プラントの更新に伴い収率の高いアンモニア合成触媒の開発が期待されている。
【0003】
アンモニアは、長きにわたり、鉄系触媒を用いたハーバーボッシュ法により製造されてきた。しかしながらハーバーボッシュ法では、200気圧程度の高圧下で反応を行う必要があるため、設備投資及び消費電力の増大、製造工程の煩雑化等の問題を有する。
【0004】
上記問題に対して、近年では、ルテニウム触媒を用いて10気圧程度の低圧条件下でアンモニアを製造する方法が報告されている。この触媒を用いることにより、低圧条件下でアンモニアが製造可能となるのみならず、一酸化炭素や水によるアンモニア合成阻害を低減することも可能となり、アンモニア収率が向上する。ルテニウム触媒を用いるアンモニア製造では、ルテニウム触媒を担体に担持させたる場合がある。ルテニウムを担持させる担体としては、触媒の担体として一般 的なアルミナが広く用いられている。最近では、アルミナに替えて希土類酸化物を担体として用いることにより、ルテニウムの使用量を低減でき、且つ、反応温 度を低くできることが開示されている(特許文献1)。しかしながら、上記のアンモニア製造方法では、より低圧条件下においてアンモニアを製造する場合のアンモニア収率が十分なものではなかった。
【0005】
そこで、本発明者らは、先般、低圧条件下において高収率でアンモニアを製造できる組成物、及び該組成物を用いたアンモニア製造方法を提供することを目的とし、ルテニウム;ランタノイド;ならびに塩基性助触媒および/または多孔性金属錯体を配合した組成物をアンモニア合成触媒とすることを見出した(特許文献2)。この組成物は、水溶液中での含浸法により調製されたものであるが、アンモニア合成活性は不十分であり、さらに高活性な触媒の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平6-79177号公報
【特許文献2】特開2013-111562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決し、アンモニア合成活性がさらに向上したアンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、以下の発明を提供するものである。
(1)A.ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物、B.ランタノイドを含む化合物、ならびにC.塩基性助触媒を物理混合してなるアンモニア合成触媒用組成物。
(2)ランタノイドを含む化合物がランタノイド酸化物である上記(1)に記載のアンモニア合成触媒用組成物。
(3)塩基性助触媒が、アルカリ金属の酸化物もしくは水酸化物、またはアルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物である上記(1)または(2)に記載のアンモニア合成触媒用組成物。
(4)物理混合が水分を含まない乾式の摩砕混合である上記(1)~(3)のいずれかに記載のアンモニア合成触媒用組成物。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載のアンモニア合成触媒用組成物を触媒として、窒素と水素を反応させてアンモニアを製造することを特徴とするアンモニアの合成方法。
(6)A.ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物、B.ランタノイドを含む化合物、ならびにC.塩基性助触媒を物理混合してアンモニア合成触媒用組成物を得ることを特徴とするアンモニア合成触媒用組成物の製造方法。
(7)物理混合して得られたアンモニア合成触媒用組成物を還元反応に供する上記(6)に記載のアンモニア合成触媒用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンモニア合成活性がさらに向上したアンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1、比較例1、および比較例2の各触媒用組成物のアンモニア生成活性を比較した図を示す。
【図2】実施例1~4の各触媒用組成物と比較例1のアンモニア生成活性を比較した図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、物理混合とは、いわゆる乾式摩砕混合であり、水溶液を用いないで、または水以外の乾燥有機溶媒を用いて、固体状態にある2種類またはそれ以上の異なる原料をそのまま混ぜ合わせて摩砕し均質な状態の組成を得ることを言う。この物理混合手段としては、たとえば、乳鉢、ボールミル,ビーズミル等の各種の摩砕機器による乾式摩砕混合する方法を適用することができる。

【0012】
前記物理混合の際、水以外の乾燥有機溶媒を用いて摩砕混合する場合は、混合効率を向上させるものであり,当該乾燥有機溶媒としては、例えばトルエン,アセトン,脱水アルコールなどを適量加えてもよい。

【0013】
本発明のアンモニア合成触媒用組成物は、A.ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物、B.ランタノイドを含む化合物、ならびにC.塩基性助触媒を物理混合により配合してなる。

【0014】
触媒成分のA成分である、ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物において、これらは2種以上を組み合わせて用い得る。合金に含まれるルテニウム以外の金属元素としては、たとえば鉄、モリブデン及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アンモニア合成に工業的に用いられている点から鉄が最も好ましい。この場合、さらに炭素、ケイ素等の非金属元素を含んでいてもよい。ルテニウムを含む化合物としては、ルテニウム以外に含む配位子としては特に限定されず、中性配位子であってもイオン性配位子であってもよい。具体的には、塩化ルテニウム、ルテニウムアセチルアセトナート、ルテニウムシアン酸カリウム、ルテニウム酸ナトリウム、ルテニウム酸カリウム、酸化ルテニウム、ドデカカルボニル三ルテニウム、硝酸ルテニウム等が挙げられる。ルテニウムを含む合金またはルテニウムを含む化合物である場合、合金又は化合物中のルテニウムの含有割合は1質量%~99質量%であることが好ましく、反応性を確保しやすいことから50質量%~95質量%であることがより好ましい。組成物中のA成分の配合割合は、良好な触媒能を奏しうる割合であれば特に限定されるものではないが、0.01~15質量%であることが好ましく、0.1~13質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましい。

【0015】
また、A成分がルテニウムである場合、ルテニウムの配合割合は、0.005~15質量%であることが好ましく、0.05~13質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることがさらに好ましい。

【0016】
本発明組成物において、B成分はA成分を担持するための担体の役割を果たす。

【0017】
ランタノイドを含む化合物としては特に限定されず、15種のランタノイドのいずれを含む化合物であってもよいが、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、テルビウムのいずれかを含む化合物であることが好ましく、強塩基性であるためルテニウムへの電子供給及びアンモニア合成が良好となることから、ランタン、セリウム、プラセオジム、テルビウムがさらに好ましい。

【0018】
また、ランタノイドを含む化合物としては、ランタノイド酸化物、ランタノイド硫化物、ランタノイド水酸化物、ランタノイド硫酸塩等のランタノイドと第16族元素(カルコゲン)とを含む化合物;ランタノイド塩化物等のランタノイドと第17族元素(ハロゲン)とを含む化合物等が挙げられる。そして、A成分を良好に担持できることから、ランタン酸化物、セリウム酸化物またはプラセオジム酸化物であるランタノイド酸化物が好ましく、最も好ましくはプラセオジム酸化物である。

【0019】
ランタノイド酸化物であるB成分を製造する場合、たとえば、アルカリ溶液に市販のランタノイド化合物(ランタノイド硝酸塩、ランタノイド硝酸塩の水和物等)を分散し、沈殿法により固形物を得た後、得られた固形物を焼成することにより製造できる。このようにして得られたランタノイド酸化物は、結晶構造が安定しているため、良好にA成分を担持し得る。アルカリ溶液としては5~50質量%、より好ましくは15~35質量%のアンモニア水が好ましい。固形物は、沈殿物をろ過することにより得ることができる。焼成は、250~900℃、より好ましくは300~750℃で行うことができる。また、焼成前に、焼成より低温での仮焼成を行ってもよい。仮焼成の温度は、200~400℃(焼成より低温)が好ましい。

【0020】
組成物中のB成分の配合割合は、A成分を良好に担持しうる割合であれば特に限定されるものではないが、40~99.98質量%であることが好ましく、50~99.8質量%であることがより好ましく、70~98質量%であることがさらに好ましい。

【0021】
また、A成分とB成分との合計に対する、A成分の配合割合は、0.1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。0.1質量%以上とすることにより良好な触媒活性を得ることができ、15質量%以下とすることにより触媒活性とコストとのバランスを取ることができる。

【0022】
本発明の組成物において、C成分である塩基性助触媒は、A成分による触媒効率を向上させるために用いられるものである。本発明において塩基性助触媒とは、電子供与性を有し、かつ、A成分とB成分とともに用いることにより触媒能を促進しうるものをいう。C成分は、A成分のルテニウムに電子を供与することにより反応を促進することができる。

【0023】
塩基性助触媒としては特に限定されるものではないが、アルカリ金属を含む化合物またはアルカリ土類金属を含む化合物が好ましく、アルカリ金属の酸化物もしくは水酸化物、またはアルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物であるのがさらに好ましく、アルカリ金属酸化物または水酸化物が最も好ましい。

【0024】
アルカリ金属酸化物もしくは水酸化物、またはアルカリ土類金属酸化物もしくは酸化物の原料として用いられる前駆体としては、具体的にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられる。

【0025】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチ ウム及びバリウムが好ましく、A成分への電子供与性に優れることから、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムがより好ましく、セシウムが最も好ましい。

【0026】
組成物中のC成分の配合割合は特に限定されないが、0.01~15質量%であることが好ましく、0.1~13質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましい。また、C成分の配合割合は、A成分に対する原子比が0.01~20質量%となる量であることが好ましい。その下限値以上とすることにより触媒活性を特に 向上させることができ、上限値以下とすることにより、過度の塩基性助触媒の存在による触媒活性の低下を防ぐことができるからである。

【0027】
前記A~C成分の混合順序に特に制限はなく、これらと同時に、または逐次のいずれの添加方法でもよいが、B成分にA成分を添加して摩砕混合した後、更にC成分を加えることで逐次的に混合することが好ましい。

【0028】
また、必ずしもA、B、Cの成分を全て摩砕によって混合する必要はなく、いずれか一成分の混合にのみ摩砕混合を用いることも出来る。例えばB成分にA成分の供給源を湿式含浸、焼成によって担持した後、C成分を摩砕混合することもできる。

【0029】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、A~C成分以外の成分が配合されていてもよい。

【0030】
本発明のアンモニアの合成方法においては、上記のアンモニア合成触媒用組成物を触媒として、窒素と水素を反応させてアンモニアを製造する。アンモニアの合成方法は特に限定されないが、たとえば、アンモニア合成触媒用組成物が充填された反応容器内に、水素ガスと窒素ガスとからなる原料ガスを供給することによりアンモニアを製造することができる。反応温度は、200℃~600℃が好ましく、250℃~500℃がより好ましく、300℃~450℃がさらに好ましい。反応容器内の圧力は、低圧である1~50気圧が好ましく、1~40気圧がより好ましく、1~30気圧がさらに好ましい。

【0031】
本発明のアンモニア合成触媒用組成物によれば、アンモニア収率は、たとえばCs/Ru:1~5、390℃、9気圧で、4.5~5.5%であり、従来触媒よりも高く、安定して得られる。一般的にアンモニア合成反応は高圧であるほどアンモニア収率が増加する傾向があるので,本発明のアンモニア合成触媒用組成物を用いることで30気圧程度或いは30気圧を超える高圧条件でも高い収率が得られることが予想される。

【0032】
収率は、ある物質を得るための化学プロセスにおいて、理論上得ることが可能なその物質の最大量(理論収量)に対する実際に得られた物質の量(収量)の比率である。そのプロセスがすぐれているかどうかの指標の一つとされる。例えば水素と窒素からアンモニアを合成する反応において窒素1molと水素3molからは理論上2molのアンモニアが得られる(N+3H→2NH)。実際に窒素1molと水素3molからアンモニア合成を行なった場合に1molのアンモニアが得られたならば、収率は、アンモニアの収量(1mol)/アンモニアの理論収量(2mol)= 50 %となる。またこのように反応物が反応の化学量論比と同じ割合で供給されている場合には、理論収量(2mol) = ある反応物の供給量(H2では3mol)×生成物の化学反応式での係数(化学量論係数, 2)/ある反応物の化学量論係数(H2では3)が成り立つので、これを使って反応物の供給量と化学反応式から収率を計算することができる。この反応で窒素2molと水素3molで反応を行なったとすると理論上は窒素が1mol 余り、やはり2molのアンモニアが得られる。このように反応物が反応の化学量論比と異なる割合で供給されている場合は、反応物の供給量/反応式での反応物の係数が最も小さい反応物(限定反応物質と呼ばれる)のみが理論上完全に消費される。この例では理論上水素が完全に消費されるので水素が限定反応物質である。このような場合は限定反応物質のみに対して、理論収量 = 限定反応物質の供給量×生成物の化学量論係数/限定反応物質の化学量論係数が成り立ち、これを使って収率を計算することができる。

【0033】
本発明のアンモニア合成触媒用組成物は、上記のようにA.ルテニウムもしくはその合金、またはルテニウムを含む化合物、B.ランタノイドを含む化合物、ならびにC.塩基性助触媒を前記物理混合により配合してアンモニア合成触媒用組成物を得ることにより得られる。

【0034】
本発明においては、前記物理混合により配合して得られたアンモニア合成触媒用組成物を還元反応に供して、ルテニウムを金属状態まで還元することにより、触媒活性を向上させ得る。還元は、好適には水素還元によることができ、たとえば100~700℃、好ましくは300~600℃で水素含有雰囲気下で、0.5~20時間行われる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが,本発明はここに提示する実施例に限定されるものではない。表1は実施例及び比較例として記載のアンモニア合成触媒用組成物についてまとめたものである。
【実施例】
【0036】
【表1】
JP2017018907A_000003t.gif
【実施例】
【0037】
1.アンモニア合成触媒用組成物の製造
実施例1
0.25リットルの28%アンモニア水に硝酸プラセオジムの8%水溶液0.25リットルを加えた混合液を、常温で11時間撹拌した。その結果得られた水酸化プラセオジム沈殿物を分離後、常温の水で洗浄し、ろ過してから、70℃で一晩乾燥させた。
【実施例】
【0038】
乾燥した水酸化プラセオジムを、300℃で3時間、次に550℃で3時間、次に700℃で5時間の段階的焼成処理を施すことにより、酸化プラセオジムに変えた。
【実施例】
【0039】
続いて常温まで冷却した酸化プラセオジムの4gを、0.46gのルテニウムカルボニルを溶解した0.2リットルのテトラヒドロフラン溶液に加えて、一晩撹拌した。次に、蒸発により溶液からテトラヒドロフランを除去し、ヘリウムガスが流通する雰囲気中において350℃で、5時間焼成して、ルテニウムカルボニルを分解し有機配位子を除去した。これにより酸化プラセオジム(B)にルテニウム(A)が担持された組成物を調製した。このとき、ルテニウムの酸化プラセオジムに対する担持量は5質量%であった。
【実施例】
【0040】
続いて、調製した粉末状のルテニウム-酸化プラセオジム組成物をアルミナ乳鉢を用いて5分間摩砕した。摩砕したルテニウム-酸化プラセオジム組成物を2g秤量し、別のメノウ乳鉢に加えた。ここに炭酸セシウムの粉末0.17gを加え更に10分間摩砕した。得られた摩砕混合組成物を整形した後、破砕して250~500μmのペレットにした。こののち、このペレットを後述のアンモニア製造装置に充填して、500℃、1時間の水素還元を行って、炭酸セシウムを分解して、酸化セシウム-ルテニウム-酸化プラセオジムからなる触媒用組成物を得た。この触媒組成物中のセシウム/ルテニウムの比は1/1(mol/mol)であった。
実施例2~3
実施例1と同じ方法でルテニウム担持量5wt%、セシウム/ルテニウムの比が、0.1/1/~5/1(mol/mol)のセシウム-ルテニウム-酸化プラセオジム組成物を得た。
比較例1
0.25リットルの28%アンモニア水に硝酸プラセオジムの8%水溶液0.25リットルを加えた混合液を、常温で11時間撹拌した。その結果得られた水酸化プラセオジム沈殿物を分離後、常温の水で洗浄し、ろ過してから、70℃で一晩乾燥させた。
【実施例】
【0041】
乾燥した水酸化プラセオジムを、300℃で3時間、次に550℃で3時間、次に700℃で5時間の段階的焼成処理を施すことにより、酸化プラセオジムに変えた。
【実施例】
【0042】
続いて常温まで冷却した酸化プラセオジムの4gを、0.46gのルテニウムカルボニルを溶解した0.2リットルのテトラヒドロフラン溶液に加えて、一晩撹拌した。次に、蒸発により溶液からテトラヒドロフランを除去し、ヘリウムガスが流通する雰囲気中において350℃で、5時間焼成して、ルテニウムカルボニルを分解し有機配位子を除去した。これにより酸化プラセオジム(B)にルテニウム(A)が担持された組成物を調製した。この組成物は摩砕処理を行ってはおらず,ルテニウムの酸化プラセオジムに対する担持量は5質量%であった。この触媒組成物中のセシウム/ルテニウムの比は1/1(mol/mol)であった。
比較例2
比較例1と手順でルテニウム担持量5質量%のルテニウム-酸化プラセオジム組成物を調製した。粉砕後のルテニウム-酸化プラセオジム組成物2gをビーカー中の精製水100mLに加え、撹拌した。ここに炭酸セシウム0.17gを加え、撹拌、含浸させた後、ホットスターラを用いて蒸発乾固した。蒸発乾固後の混合組成物を摩砕することなく整形、破砕して250~500μmのペレットにした後、これを後述のアンモニア製造装置に充填して、500℃、1時間の水素還元を行うことで、酸化セシウム-ルテニウム-酸化プラセオジムからなる触媒用組成物を得た。この触媒組成物中のセシウム/ルテニウムの比は1/1(mol/mol)であった。
2.触媒用組成物のアンモニア生成活性の測定
アンモニア製造装置として、固定床流通式管型反応装置を用いた。常圧実験の際には、内径7mmの石英製のリアクターを使用した。アンモニア製造の前処理として、検討に用いる組成物(触媒)をリアクターに充填し、400℃、1時間、あるいは500℃、1時間の水素還元を行った。続けて、Arパージを行いながら反応温度である310℃まで降温させ、温度が安定したところで反応ガスの供給を開始し、350℃まで昇温した。反応ガスはN/H=1/3(SV=18000ml/(h・g))とした。反応式は下に示す通りである。
+3H→2NH
(反応条件)
組成物(触媒量):0.2g
活性化処理条件:H流通下、10mL/min、500℃、1時間
反応温度:310~430℃
反応圧:0.9MPa
反応ガス:N15mL/分、H45mL/分
空間速度:18000mLh-1-1
生成ガス分析:電気伝導度計
反応温度は310℃~430℃とし、30分間のサンプリングを行った。アンモニアのサンプリング方法の模式図を図2に示す。反応菅の出口ガス(アンモニア、水素、窒素)をアンモニアトラップとして0.001Mまたは0.01M硫酸溶液に通し、アンモニアのみを捕集した。このときの反応式は下に示す通りである。
2NH+HSO→2NH+SO2-
反応菅の出口ガス中のアンモニアとトラップの硫酸溶液から、アンモニウムイオンと硫酸イオンが生成する。この反応での電気伝導度の減少をモニターし、触媒のアンモニア合成への活性を測定した。
3.アンモニア生成活性
実施例1、比較例1、および比較例2の各触媒用組成物のアンモニア生成活性を比較した結果を図1に示す。いずれも500℃、1時間の水素還元を行った後に活性を比較した。比較例1の触媒用組成物に炭酸セシウムを添加して前記物理混合した実施例1の触媒用組成物は、350℃以上で比較例1の触媒用組成物よりも高いアンモニア生成活性を示し、特に390℃において約5.3%のアンモニア収率を示した。これに対して、Csを従来の蒸発乾固法で調製した比較例2の触媒用組成物は、比較例1の触媒用組成物よりも低いアンモニア収率を示した。このことから、本発明においてCsを添加して前記物理混合することで活性向上の効果が得られること、ならびに従来の含浸法ではむしろ触媒活性の低下が起きることが分かった。
【実施例】
【0043】
図2は実施例1~4の各触媒用組成物と比較例1のアンモニア生成活性を比較した図である。Csを添加して摩砕することによってアンモニア生成活性が向上している様子が分かる。特に、350℃までの温度域ではCsの添加量がCs/Ru=0.1/1(mol/mol)の触媒用組成物が、また350℃以上の温度域ではCsの添加量がCs/Ru=1~5(mol/mol)の触媒用組成物が高いアンモニア収率を示し、高い促進効果が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、アンモニア合成活性がさらに向上したアンモニア合成触媒用組成物およびその製造方法、ならびにアンモニアの合成方法を提供し得る。すなわち、水素貯蔵・輸送技術の水素キャリアとして必須であるアンモニアを収率高く合成するために必要な高活性化触媒とその製造方法を提供し得る。
図面
【図2】
0
【図1】
1