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明細書 :誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-155324 (P2017-155324A)
公開日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法
国際特許分類 C23C   8/38        (2006.01)
C21D   1/06        (2006.01)
C21D   1/09        (2006.01)
C21D   1/76        (2006.01)
H05H   1/24        (2006.01)
FI C23C 8/38
C21D 1/06 A
C21D 1/09 C
C21D 1/76 E
H05H 1/24
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-056206 (P2016-056206)
出願日 平成28年3月18日(2016.3.18)
優先権出願番号 2016035624
優先日 平成28年2月26日(2016.2.26)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】市來 龍大
【氏名】津留 卓斗
【氏名】喜多村 圭一
【氏名】赤峰 修一
【氏名】金澤 誠司
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100113918、【弁理士】、【氏名又は名称】亀松 宏
【識別番号】100187702、【弁理士】、【氏名又は名称】福地 律生
【識別番号】100140121、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 朝幸
【識別番号】100172269、【弁理士】、【氏名又は名称】▲徳▼永 英男
審査請求 未請求
テーマコード 2G084
4K028
Fターム 2G084AA07
2G084BB11
2G084BB12
2G084BB13
2G084BB14
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD15
2G084DD22
2G084FF33
4K028BA02
4K028BA12
4K028BA21
4K028BA22
要約 【課題】誘電体バリア放電技術を用いて、大気圧下で、金属表層に浸窒処理を施し、金属表層を均一に硬化する。
【解決手段】被処理金属の表層に窒化処理を施して硬化させる金属表層の硬化方法において、(i)窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスからなる雰囲気で、被処理金属を包み、(ii)大気圧下又は大気圧近傍下で、誘電体バリア放電により、窒素の電離プラズマを発生させ、被処理金属の表層又は所定領域の表層に窒化処理を施すことを特徴とする誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
被処理金属の表層に窒化処理を施して硬化させる金属表層の硬化方法において、
(i)窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスからなる雰囲気で、被処理金属を包み、
(ii)大気圧下又は大気圧近傍下で、誘電体バリア放電により、窒素の電離プラズマを発生させ、被処理金属の表層に窒化処理を施す
ことを特徴とする誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
【請求項2】
前記被処理金属表面の所定領域の表層に窒化処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
【請求項3】
前記混合ガスにおける水素ガスと窒素ガスの体積比:水素ガス/窒素ガスが0~0.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
【請求項4】
前記混合ガスを、流量0.1~100L/分で処理装置に供給し、被処理金属の温度を、室温~1000℃に保持して窒化処理を行なうことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
【請求項5】
前記被処理金属が鋼又は鉄合金であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧下で、誘電体バリア放電により、N原子を含むプラズマを発生させ,鋼,鉄,アルミニウム,チタン等の金属の表層に窒化処理を施す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の表層を硬化する方法のひとつに,窒素原子を鋼の表層に固溶させ、最表層に、厚さ10μm程度の窒化鉄からなる「化合物層」を形成し、その下に、深さ100μm程度まで、窒素原子が鉄の結晶に固溶して硬化した「拡散層」を形成する窒化処理がある。化合物層は、耐食性と耐焼付性を担い、拡散層は、耐摩耗性及び疲労強度を担うので、窒化処理は、自動車産業において重要な技術である。
【0003】
窒化処理は、低圧下で直流放電を用いるプラズマ窒化(イオン窒化)が普及している。プラズマ窒化によれば、高エネルギー電子の存在により、窒素原子及び他のラジカルを多量に生成して窒化処理を促進することが可能である。
【0004】
しかし、プラズマ窒化は、高価な真空容器を必要とし、また、バッジ処理であるため作業時間及び作業工程が増えるという課題を抱えている。このことを踏まえ、例えば、特許文献1には、窒素を原料ガスとして発生させた大気圧プラズマジェットを材料の表面に照射し,材料の表面を窒化する窒化処理法が提案されている。
【0005】
特許文献1の窒化処理法によれば、材料表層の硬度は向上するが、材料の靱性は低下する。通常、金属材料の表層を窒化すると、硬度は向上するが、靭性が低下し脆くなるが、特許文献2には、大気圧下でN原子を被処理物に拡散固溶させ、靭性を保ったまま硬度を向上させ,しかも、N原子の拡散処理を連続ラインで処理できる金属又は樹脂等の表層硬化方法が提案されている。
【0006】
特許文献2の表層硬化方法は、容器内に窒素ガスと水素ガスの混合ガスを供給しながら、容器内を大気圧かそのプラス近傍の陽圧状態にして、被処理物の表面にパルスアーク型プラズマジェットを照射することを特徴とするパルスアーク型プラズマジェットによる表層硬化方法であるが、被処理物の表層を均一に硬化することは難しい。
【0007】
近年、大気圧下で、誘電バリア放電を用いてプラズマを発生させて、被処理物の表層を均一に処理する方法が注目されている。
【0008】
例えば、特許文献3には、i)基板をプラズマ処理する工程と、ii)オルガノポリシロキサンポリマー、オルガノポリシロキサンオリゴマー、シロキサン樹脂及びポリシランの群から選択される1つ以上の化合物を含む液体コーティング材料をソフトリソグラフィック印刷法により基板表面に塗布して、基板表面上にパターン化皮膜を形成する工程と、iii)必要な場合は、基板表面から残留液体コーティング材料を除去する工程とを含む、基板上にパターン化薄膜を適用する方法であって、工程i)の前に、噴霧液及び/又は固体コーティング形成材料を、大気圧プラズマ放電及び/又は該大気圧プラズマ放電から生じるイオン化/励起ガス流中に供給し、大気圧条件下で、基板を噴霧コーティング形成材料に曝露する方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、誘電体バリア放電(DBD)技術を用いて無機-有機ハイブリッドポリマー材料で基材を被覆するための方法において、次の段階:a)二つの電極間の空間に試料を供給する、b)電極間の雰囲気を制御する、c)電極間にプラズマ放電を発生する、d)ゾル-ゲル工程を介して形成された、ハイブリッド有機/無機架橋プレポリマーを含むエアロゾルをプラズマ放電中に混合する、を含むことを特徴とする方法が開示されている。
【0010】
しかし、特許文献3及び特許文献4の方法は、基板(基材)の表面をポリマー材料で被覆する方法であり、浸窒処理により金属表層を硬化する方法ではない。
【0011】
また、非特許文献1には、真空反応炉にアンモニアガスを供給して、誘電体バリア放電で窒化処理を行い、金属表層を硬化する方法が開示されているが、この方法は、プラズマ化するガスとしてアンモニアガスを使用するので、コスト及び環境の点で、課題を抱えている。
【0012】
また、近年、金属表面に、図形やパターンの形で窒化処理を施す技術が開発されている(非特許文献2、参照)。この技術によれば,金型などの表面硬化において、所望の場所のみを高精度に限定して硬化させることができる。
【0013】
しかし、ミリメートル以下の精度で窒化のパターニングをするためには,金属表面に、微細加工で作製したマスクを被せ,マスキングした部分に、ガスやプラズマから窒素が拡散しないようにする必要がある。それ故、上記技術には、微細加工によるマスキングの作製に手間がかかり、さらに、マスキングが消耗するという問題がある。
【0014】
マスキングなしで窒化のパターニングを可能とするためには,対向電極通りの形状でプラズマを生成するDBDが有力な手法である.しかし、非特許文献1のDBD窒化処理では、アンモニアガスを用いるため,プラズマが発生していない部分にも、アンモニアガスから直接窒素が供給されてしまうので、結局は、金属表面全体が窒化されてしまい、パターニング窒化ができない。
【先行技術文献】
【0015】

【特許文献1】特開2009-202087号公報
【特許文献2】特開2013-023769号公報
【特許文献3】特許第5090739号公報
【特許文献4】特許第5297652号公報
【0016】

【非特許文献1】Li Yan、Plasma Chemistry and Plasma Processing、Vol.25 No.5(October 2005)、「A New Approach to Metal Surface Nitriding Using Dielectric Barrier Discharge at Atmospheric Pressure」
【非特許文献2】Marcos他、Surface & Coatings Technology 205(2011)、S275-S279、「Stainless steel patterning by combination of micro-patterning and driven strain produced by plasma assisted nitriding」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来技術に鑑み、(a)誘電体バリア放電技術を用いて、大気圧下で、金属表層に浸窒処理を施し、金属表層を均一に硬化すること、及び、(b)金属表層をマスキングしなくても、金属表層をパターニング窒化することを課題とし、これら課題を解決する金属表層の硬化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。
【0019】
その結果、(i)窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスで被処理金属を包み、大気圧下又は大気圧近傍下で、誘電体バリア放電を行なえば、窒素の電離プラズマが発生し、被処理金属の表層に窒化処理を施すことができること、さらに、(ii)対向電極の平面形状を、所要の形状にパターニングすれば,被処理金属の表層をマスキングしなくても、対向電極の平面形状の形状通りの表層領域に窒素処理を施すことができることを見いだした。
【0020】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0021】
(1)被処理金属の表層に窒化処理を施して硬化させる金属表層の硬化方法において、
(i)窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスからなる雰囲気で、被処理金属を包み、
(ii)大気圧下又は大気圧近傍下で、誘電体バリア放電により、窒素の電離プラズマを発生させ、被処理金属の表層に窒化処理を施す
ことを特徴とする誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
(2)前記被処理金属の所定領域の表層に窒化処理を施すことを特徴とする前記(1)に記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
(3)前記混合ガスにおける水素ガスと窒素ガスの体積比:水素ガス/窒素ガスが0~0.5であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
(4)前記混合ガスを、流量0.1~100L/分で処理装置に供給し、被処理金属の温度を、室温~1000℃に保持して窒化処理を行なうことを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
(5)前記被処理金属が鋼又は鉄合金であることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれかに記載の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高価な真空処理装置を必要とせず、大気圧下又は大気圧近傍下で、無害な、窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスを用いて、被処理金属の表層に、短時間で均一に窒化処理を施すことができる。
【0023】
また、本発明によれば、100μm以下の精度で、被処理金属の表層を部分的に限定して窒化処理を施す、即ち、高精度のパターニング窒化を施すことができる。さらに、本発明によれば、被処理金属の表層の面積が大きい場合は、それに合せ、対向電極の面積を大きくして、被処理金属の表層に、短時間で均一に窒化処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】処理装置の一態様を示す図である。(a)は、処理装置の上面態様を示し、(b)は、処理装置のA-A断面態様を示す。
【図2】窒化処理後の鋼片断面の硬さ分布を示す図である。
【図3】金属表層の硬化部と非硬化部における、金属層ビッカース硬さ(Hv)分布例を示す図である。(a)は、実施例2の金属表層ビッカース硬さ(Hv)分布を示し、(b)は、実施例3の金属表層ビッカース硬さ(Hv)分布を示し、(c)は、実施例4の金属表層ビッカース硬さ(Hv)分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の誘電体バリア放電による金属表層の硬化方法(以下「本発明硬化方法」という。)は、被処理金属の表層に窒化処理を施して硬化させる金属表層の硬化方法において、
(i)窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスからなる雰囲気で、被処理金属を包み、
(ii)大気圧下又は大気圧近傍下で、誘電体バリア放電により、窒素の電離プラズマを発生させ、被処理金属の表層に窒化処理を施す
ことを特徴とする。

【0026】
以下、本発明硬化方法について説明する。

【0027】
被処理金属を包む雰囲気は、窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスで形成する。誘電体バリア放電で、窒素の電離プラズマを形成するので、雰囲気は、窒素ガスを主体成分として形成する。窒素ガスの体積%は、特に、特定の範囲に限定されないが、雰囲気中に混入した酸素を除去するために水素ガスを混合する場合、水素ガスと窒素ガスの体積比:水素ガス/窒素ガスが0~0.5が好ましい。

【0028】
不活性ガスは、ヘリウムガスおよびアルゴンガスが好ましい。ヘリウムガスおよびアルゴンガスは、窒素の電離プラズマ化を促進する作用をなす。

【0029】
誘電体バリア放電は、混合ガスを閉じ込めた処理装置の中で行ってもよいし、混合ガスを、処理装置に、所要の流量で供給しながら行ってもよい。混合ガスの流量は、金属表層の所望の硬化の程度に応じて設定すればよく、特に特定の流量に限定されないが、プラズマを良好な状態で維持する点で、0.1~100L/分が好ましい。処理装置において、被処理金属は、室温~1000℃の温度域に保持すればよい。

【0030】
被処理金属も、特定の金属に限定されないが、被処理金属が鋼又は鉄合金であると、本発明硬化方法の硬化が顕著に発現する。

【0031】
また、本発明硬化方法は、被処理金属の所定領域の表層に窒化処理を施すことができる。この点も、本発明の特徴である。

【0032】
DBDによる窒化は、DBOプラズマから供給される窒素で起きる。即ち、窒化ガスとしてアンモニアを使用する場合と異なり、雰囲気ガス自体から、直接、窒素は供給されない。それ故、DBD窒化時、対向電極の平面形状を、所要の形状にパターニングすれば,被処理金属の表層をマスキングしなくても、被処理金属の表層において、対向電極の平面形状の形状通りの領域範囲に窒素が供給されて、対向電極の平面形状の形状通りの表層領域に窒素処理を施すことができる。

【0033】
そして、対向電極の平面形状のパターニングを高精度で行えば、被処理金属の表層において、高精度の領域範囲で窒化処理を行なうことができる。一方、被処理金属の表層の面積が大きい場合は、それに合せ、対向電極の面積を大きくすれば、被処理金属の表層に、短時間で均一に窒化処理を施すことができる。

【0034】
ここで、本発明硬化方法を実施する処理装置の一態様を、図1に示す。図1(a)に、処理装置の上面態様を示し、図1(b)に、処理装置のA-A断面態様を示す。図1に示す処理装置1は、混合ガスを所要の流量で供給しながら行う形の処理装置で、バリア放電管1aと、バリア放電管1aを包囲する外部加熱器1bから構成されている。

【0035】
外部加熱器1bには交流電源6が電気的に接続されていて、バリア放電管1aの温度を、プラズマの形成・維持に適切な温度に保持するため、バリア放電管1aを外側から加熱する。

【0036】
バリア放電管1aの中央部には、誘電体2が配置されている。誘電体2は、誘電体バリア放電を促進し得るものであればよく、特定の誘電体に限定されないが、なかでも、絶縁体のアルミナが好ましい。

【0037】
誘電体2の上部には、所要の間隔をおいて、被処理金属3が載置されている。被処理金属3は、バリア放電管1a内で誘電体バリア放電を生起する際の一方の電極として機能する。誘電体2と被処理金属3の間隔は、誘電体バリア放電が、大気圧下又は大気圧近傍下で適確に生起するように、適宜、調整して設定する。誘電体2の下面には、対向電極4の平面形状が配置されている。

【0038】
被処理金属3と対向電極4の平面形状は交流電源5に電気的に接続されていて、バリア放電管1a内で誘電体バリア放電を生起するため、被処理金属3と対向電極4の平面形状の間に、所要の電圧を、所要の周波数で印加する。

【0039】
バリア放電管1aは、耐熱性の点で石英管が好ましいが、プラズマの形成・維持に耐え得る材質のものであればよく、特定の材質のものに限定されない。バリア放電管1aの断面形状は、管状に限定されず、任意の断面形状をとり得る。例えば、断面が矩形状のバリア放電管1aでもよい。

【0040】
なお、図1には、断面が矩形状の外部加熱器1bを示したが、外部加熱器1bの断面形状は矩形に限定されない。バリア放電管1aの断面形状に合せて管状の断面形状にしてもよいし、また、他の断面形状でもよい。

【0041】
バリア放電管1aには、窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスxを供給する。誘電体2を挟む被処理金属3と対向電極4の平面形状の間に、所要の電圧を、所要の周波数で印加すると、誘電体バリア放電が生起し、被処理金属3の周囲に、電離した窒素を含むプラズマが形成される。電離した窒素が、被処理金属3の表層に侵入して窒化が進行し、被処理金属3の表層が硬化する。

【0042】
バリア放電管1aに、窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスxを連続的に供給し、他端から、余剰の混合ガスyを排出することにより、被処理金属3の表層の窒化が表層全体において均一に進行し、被処理金属3の表層が均一に硬化する。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
表面が15mm×15mm、厚さ4mmの鋼片(被処理金属)を、図1に示す処理装置において、誘電体(アルミナ)の上部に、約1mmの間隔をおいて配置した。
【実施例】
【0045】
ガスa(窒素:45体積%、水素:5体積%、残部:アルゴンの混合ガス)、ガスb(窒素:90体積%、水素:10体積%の混合ガス)、ガスc(窒素:100体積%)をバリア放電管に送給し、上記鋼(被処理金属)と電極の間に、5.7kVの電圧を、周波数12.8kHzで印加し、処理温度を530℃に保持して、誘電体バリア放電を、大気圧下で生起して、2時間継続し、上記鋼片の表層に窒化処理を施した。
【実施例】
【0046】
窒化処理後、上記鋼片を中央部で分割し、鋼片断面の硬さをビッカース硬さ試験(荷重10g)で測定した。図2に、窒化処理後の鋼片断面の硬さ分布を示す。鋼片の表面から深さ約70μmまで、硬化していることが解る。
【実施例】
【0047】
(実施例2)
実施例1と同様に、図1に示す処理装置の誘電体(アルミナ)の上部に、約1mmの間隔をおいて被処理金属とにより表面が15mm×15mm、厚さ4mmの鋼片(被処理金属)を配置した。
【実施例】
【0048】
被処理金属を包む雰囲気ガスは、窒素:45体積%、水素:5体積%、残部:アルゴンの混合ガスである。この混合ガスをバリア放電管に送給し、被処理金属と電極の間に、5.7kVの電圧を、周波数12.8kHzで印加し、処理温度を530℃に保持して、誘電体バリア放電を、大気圧下で生起して、2時間継続し、上記鋼片の表層の所定領域にパターニング窒化処理を施した。
【実施例】
【0049】
図3(a)に、金属表面の硬化部と非硬化部における金属表面ビッカース硬さ(Hv)分布を示す。金属表面において硬化部と非硬化部を明瞭に区分でき、金属表層にパターニング窒化処理がなされていることが解る。
【実施例】
【0050】
(実施例3)
実施例1と同様に、図1に示す処理装置の誘電体(アルミナ)の上部に、約1mmの間隔をおいて被処理金属とにより表面が15mm×15mm、厚さ4mmの鋼片(被処理金属)を配置した。
【実施例】
【0051】
被処理金属を包む雰囲気ガスは、窒素:95体積%、水素:5体積%の混合ガスである。この混合ガスをバリア放電管に送給し、被処理金属と電極の間に、5.7kVの電圧を、周波数12.8kHzで印加し、処理温度を530℃に保持して、誘電体バリア放電を、大気圧下で生起して、2時間継続し、上記鋼片の表層の所定領域にパターニング窒化処理を施した。
【実施例】
【0052】
図3(b)に、金属試料表面の硬化部と非硬化部における金属試料表面ビッカース硬さ(Hv)分布を示す。金属表面において硬化部と非硬化部を明瞭に区分でき、金属表層にパターニング窒化処理がなされていることが解る。
【実施例】
【0053】
(実施例4)
実施例1と同様に、図1に示す処理装置の誘電体(アルミナ)の上部に、約1mmの間隔をおいて被処理金属とにより表面が15mm×15mm、厚さ4mmの鋼片(被処理金属)を配置した。
前記被処理金属を包む雰囲気ガスは、窒素:100体積%の単体ガスである。この単体ガスをバリア放電管に送給し、被処理金属と電極の間に、5.7kVの電圧を、周波数12.8kHzで印加し、処理温度を530℃に保持して、誘電体バリア放電を、大気圧下で生起して、2時間継続し、上記鋼片の表面の所定領域表層にパターニング窒化処理を施した。
【実施例】
【0054】
図3(c)に、金属試料表面の硬化部と非硬化部における金属試料表面ビッカース硬さ(Hv)分布を示す。金属表面において硬化部と非硬化部を明瞭に区分でき、金属表層にパターニング窒化処理がなされていることが解る。
【実施例】
【0055】
実施例2~4の金属表面の硬化部と非硬化部のビッカース硬さ(Hv)分布によれば、該分布は、雰囲気ガスの種類に大きく影響されず、また、硬化部と非硬化部の境界は、100μm程度、又は、100μm以下の精度で区分できることが解る。したがって、本発明硬化方法においては、被処理金属の所定領域の表層に、対向電極の平面形状の形状の通りの正確で高精度のパターニング窒化処理を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
前述したように、本発明によれば、高価な真空処理装置を必要とせず、大気圧下又は大気圧近傍下で、無害な、窒素ガス、必要に応じ、水素ガスや希ガス等の不活性ガスを含む混合ガスを用いて、被処理金属の表層に、短時間で均一に窒化処理を施すことができる。
【0057】
また、本発明によれば、100μm以下の精度で、被処理金属の表層を部分的に限定して窒化処理を施す、即ち、高精度のパターニング窒化を施すことができる。さらに、本発明によれば、被処理金属の表層の面積が大きい場合は、それに合せ、対向電極の面積を大きくして、被処理金属の表層に、短時間で均一に窒化処理を施すことができる。
【0058】
よって、本発明は、機械部品製造産業、金型製造産業、医療機器製造産業などにおいて利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0059】
1 処理装置
1a バリア放電管
1b 外部加熱器
2 誘電体
3 被処理金属
4 電極
5、6 交流電源
x、y 混合ガス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2