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明細書 :ブタノールの濃縮脱水方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 ブタノールの濃縮脱水方法
国際特許分類 C07C  29/80        (2006.01)
C07C  31/12        (2006.01)
FI C07C 29/80
C07C 31/12
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 15
出願番号 特願2016-560308 (P2016-560308)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1) 刊行物名 分離技術会年会2014 技術・研究発表講演要旨集 発行者名 分離技術会年会2014実行委員会 公開のタイトル 「超臨界ブタン溶媒抽出によるバイオブタノール濃縮脱水研究」 発行日 平成26年5月30日 2) 集会名 分離技術会年会2014 開催日 平成26年5月30日
国際出願番号 PCT/JP2015/082741
国際公開番号 WO2016/080531
国際出願日 平成27年11月20日(2015.11.20)
国際公開日 平成28年5月26日(2016.5.26)
優先権出願番号 2014235495
優先日 平成26年11月20日(2014.11.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】堀添 浩俊
【氏名】町田 洋
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
Fターム 4H006AA02
4H006AB44
4H006AD11
4H006AD16
4H006BB11
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC11
4H006BD84
4H006FE11
要約 一局面のブタノールの濃縮脱水方法は、ブタノール水溶液と、ブタン、イソペンタン、及びノルマルペンタンから成る群から選択される1種以上である抽出溶媒とを、抽出温度T及び抽出圧力Pの条件下で接触させ、前記抽出溶媒、及び抽出されたブタノールを含む抽出物を取り出す抽出工程と、前記抽出物を、蒸留により、ブタノール、水、及び前記抽出溶媒を含む気相成分と、ブタノールを含む液相成分とに分離するとともに、前記気相成分に含まれるブタノールを液状の前記抽出溶媒により抽出し、抽出されたブタノールを前記液相成分に加え、前記液相成分を取り出す分離工程と、を備える。前記抽出温度Tは、100~250℃の範囲内であり、且つ前記抽出溶媒の臨界温度をTcとしたとき、0.95Tc以下であり、前記抽出圧力Pは、前記抽出温度Tにおける前記抽出溶媒の蒸気圧以上である。
特許請求の範囲 【請求項1】
ブタノール水溶液と、ブタン、イソペンタン、及びノルマルペンタンから成る群から選択される1種以上である抽出溶媒とを、抽出温度T及び抽出圧力Pの条件下で接触させ、前記抽出溶媒、及び抽出されたブタノールを含む抽出物を取り出す抽出工程と、
前記抽出物を、蒸留により、ブタノール、水、及び前記抽出溶媒を含む気相成分と、ブタノールを含む液相成分とに分離するとともに、前記気相成分に含まれるブタノールを液状の前記抽出溶媒により抽出し、抽出されたブタノールを前記液相成分に加え、前記液相成分を取り出す分離工程と、
を備え、
前記抽出温度Tは、100~250℃の範囲内であり、且つ前記抽出溶媒の臨界温度をTcとしたとき、前記抽出温度Tは0.95Tc以下であり、
前記抽出圧力Pは、前記抽出温度Tにおける前記抽出溶媒の蒸気圧以上であるブタノールの濃縮脱水方法。
【請求項2】
前記抽出工程では、抽出塔の上部からブタノール水溶液を供給し、前記抽出塔の下部から前記抽出溶媒を供給し、前記ブタノール水溶液及び前記抽出溶媒を向流接触させる請求項1に記載のブタノールの濃縮脱水方法。
発明の詳細な説明
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2014年11月20日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2014-235495号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2014-235495号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ブタノールの濃縮脱水方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオブタノールはバイオエタノール比べて、発熱量大、吸湿性小、ガソリン蒸気圧増加作用無、ガソリン及び軽油に添加可能であること等、自動車燃料として優れた性状を有する。また、C5糖のエタノール発酵では遺伝子組換酵母が必要であるが、ブタノール発酵では既存酵母を使用可能である等多くの長所があり、ポストエタノールとして注目されている。
しかし、サトウキビ、トウモロコシ、草、木等のバイオマスを糖化発酵して製造されるバイオブタノールの濃度は、ブタノールの強い発酵阻害のため、0.5~1.0wt%と希薄であり、残りは水分である。
【0004】
バイオブタノールは、ノルマルブタノールまたはイソブタノールを主成分とする水溶液であり、よく知られているABE発酵では、ノルマルブタノール約1.0wt%、アセトン約0.6wt%、エタノール約0.1wt%の濃度の水溶液が得られる。近年、遺伝子組み換えにより、ブタノール発酵阻害に耐性を持たせた酵母が開発され、バイオブタノールにおけるブタノール濃度を向上させることが行われており、約2.0~3.0wt%程度のブタノール発酵濃度が実現可能である。
【0005】
バオブタノールの主な用途であるガソリン添加剤として使用するには、バオブタノールを濃縮・脱水して水分濃度0.1wt%以下の無水ブタノールにする必要がある。バイオブタノールはカーボンニュートラルであるため、二酸化炭素削減に寄与するが、その製造エネルギーが少ないほどその効果は大きくなる。しかし、従来の蒸留濃縮脱水法は、バイブタノール発熱量34MJ/kgと同等の大量のエネルギーが必要であり、その削減が急務の課題である。
【0006】
ブタノールの濃縮脱水方法として、以下の方法が提案されている。
(1)濃度約1.0wt%の希薄ブタノール水溶液から、ブタノール透過膜で濃度約80wt%の濃縮ブタノールを回収し、その80wt%濃縮ブタノール液から、水透過膜で水分を分離して無水ブタノールを分離回収する方法(特許文献1参照)。
【0007】
(2)ブタノールの溶解度と選択性の高い2オクタノールを常温で液体溶媒として用いる溶媒抽出法。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第5578565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記(1)の方法に要するエネルギーは約5MJ/kgと少ないが、実用化のためには、膜の透過速度向上、膜劣化や不純物による膜内部および表面への汚れ付着の課題を解決する必要があると考えられる。また、上記(2)の方法に要するエネルギーも約5MJ/kgと少ないが、2オクタノールは酵母に対する毒性が大きく、水に溶解した2オクタノールを無害な溶媒で抽出分離しなければならず、抽出塔2基と蒸留塔2基とを備えた複雑なシステムが必要となる。
【0010】
本開示の一局面は新規なブタノールの濃縮脱水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一局面のブタノールの濃縮脱水方法は、ブタノール水溶液と、ブタン、イソペンタン、及びノルマルペンタンから成る群から選択される1種以上である抽出溶媒とを、抽出温度T及び抽出圧力Pの条件下で接触させ、前記抽出溶媒、及び抽出されたブタノールを含む抽出物を取り出す抽出工程と、前記抽出物を、蒸留により、ブタノール、水、及び前記抽出溶媒を含む気相成分と、ブタノールを含む液相成分とに分離するとともに、前記気相成分に含まれるブタノールを液状の前記抽出溶媒により抽出し、抽出されたブタノールを前記液相成分に加え、前記液相成分を取り出す分離工程と、を備える。前記抽出温度Tは、100~250℃の範囲内であり、且つ前記抽出溶媒の臨界温度をTcとしたとき、前記抽出温度Tは0.95Tc以下であり、前記抽出圧力Pは、前記抽出温度Tにおける前記抽出溶媒の蒸気圧以上である。
【0012】
本開示のブタノールの濃縮脱水方法は、ブタノールの濃縮脱水に要するエネルギーを低減できる。また、本開示のブタノールの濃縮脱水方法は、必ずしも透過膜を使用しなくてもよいので、透過膜に関する問題が生じにくい。また、本開示のブタノールの濃縮脱水方法は、必ずしも2オクタノールを使用しなくてもよいので、2オクタノールを無害な溶媒で抽出分離する工程が必須ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、炭素数1から10までのパラフィン系炭化水素と炭素数6から8の環式炭化水素化合物の主要物性を表す表である。
【図2】図2は、温度とブタノール選択性との関係を表すグラフである。
【図3】図3は、温度とブタノール溶解度との関係を表すグラフである。
【図4】図4は、ブタノールの濃縮脱水方法に使用する装置の構成を表す説明図である。
【図5】図5は、ノルマルブタノール(NBA)/水系の気液平衡線図である。
【図6】図6は、ブタノールの濃縮脱水方法の実験条件と、実験結果とを表す表である。
【図7】図7は、ブタノール水溶液におけるブタノール濃度と、濃縮脱水熱エネルギーとの関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0014】
1…抽出塔、1a…気液接触部、2…蒸留塔、2a…上層気液接触部、2b…中層気液接触部、2c…下層気液接触部、2d…液中間保持部、3…水分離槽、4…圧縮機、5、6、7、8、11…熱交換器、9…中間加熱器、10…リボイラー、12、13、14…圧力制御装置、100…装置
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態を説明する。本開示で用いるブタノール水溶液は、水以外の成分としてノルマルブタノールまたはイソブタノールを主成分とする水溶液であり、ノルマルブタノールまたはイソブタノールが1~80%、水が99~20%含まれ、好ましくは、ノルマルブタノールまたはイソブタノールが1~3%、水が99~7%含まれる。通常、発酵法で得られるバイオブタノールを対象とするが、合成化学反応工程や洗浄工程等から回収されて得られるブタノール水溶液であってもよい。バイオブタノールとしては、ABE発酵(Acetone-butanol-ethanol (ABE) fermentation:デンプンからアセトン、ノルマルブタノール、エタノールを合成する。)遺伝子組み換え酵母による発酵から得られるブタノール水溶液であってもよい。また、バイオエタノールから触媒合成反応で得られるブタノール水溶液であってもよい。本開示で用いる抽出溶媒は、疎水性でブタノールの溶解度が高く、ブタノールの選択性が高く、高濃度のブタノールを抽出できるものが好ましい。更には、抽出工程の後に排出される抽出排水をバイオブタノールの発酵工程に循環使用する場合は、抽出溶媒は毒性のないものが好ましい。また、抽出溶媒の損失防止のため、抽出溶媒は抽出排水(例えば水)に溶解しないものが好ましい。更には、ブタノールと共沸を形成せず、且つブタノールより沸点の低い抽出溶媒が好ましい。共沸を形成すると、抽出溶媒にブタノールが同伴してブタノールの損失が増加する。また、ブタノールより沸点が高いと、抽出溶媒とブタノールとの分離が困難となる。

【0016】
本開示の発明者は、これらの条件に適合して水に殆ど溶解せず、酵母に対する毒性の低いパラフィン系炭化水素に注目した。従来、パラフィン系炭化水素はブタノールの溶解度が低く、抽出溶媒としては不適とされてきた。

【0017】
しかし、本開示の発明者は、ブタノールの温度を上げるとその蒸気圧が増大し、特に、ブタノールの沸点(イソブタノールの沸点:381K、ノルマルブタノールの沸点:390.9K)近傍では温度上昇ともに指数的に蒸気圧が増大して、抽出溶媒へのブタノールの溶解度が急激に増加することを見出した。

【0018】
また、ブタノールは疎水性が強いので、抽出溶媒は疎水性かつ密度が大きいほど、ブタノールとの分子間引力が大きくなり、溶解度と選択性が増加する。パラフィン系炭化水素は疎水性で、その密度は臨界温度に近づくと急激に減少するので、臨界温度がブタノールの沸点近傍である約100℃よりも大きいパラフィン系炭化水素を抽出溶媒とすることが好ましい。

【0019】
図1に炭素数1から10までのパラフィン系炭化水素と炭素数6から8の環式炭化水素化合物の主要物性を示す。このなかで、メタン、エタン、プロパンの臨界温度はブタノールの沸点より低く、抽出溶媒として好ましくない。

【0020】
環式炭化水素はブタノールとの共沸を形成するため好ましくない。C8(炭素数8)以上のパラフィン炭化水素は沸点がブタノールより高いので好ましくない。ベンゼンは発がん性があるため、好ましくない。 C7、C8のパラフィン炭化水素はブタノールと無視できない共沸を形成するので好ましくない。ブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン又はこれらの混合物が抽出溶媒として全ての条件に適合して好ましいことを見出した。よって、抽出溶媒は、ブタン、イソペンタン、及びノルマルペンタンから成る群から選択される1種以上である。

【0021】
一方、抽出温度Tは、基本的には、高いほど好ましいが、抽出温度Tが約250℃を超えると濃縮ブタノール濃度の低下とブタノールの熱分解反応が進行するので、250℃以下にすべきである。更には、抽出溶媒の密度を高く保持する観点から、対臨界温度TR(抽出温度T/抽出溶媒の臨界温度Tc:温度は絶対温度K)を0.95以下にし、抽出圧力Pは抽出溶媒の抽出温度Tにおける蒸気圧以上にすることが望ましい。すなわち、抽出温度Tは0.95Tc以下である。抽出溶媒の蒸気圧以上では抽出溶媒の密度の圧力依存性は低く、高圧化による溶解度の増加や選択性の向上効果は小さいこと、及び抽出塔の圧力は圧力制御弁の作動により±0.1~0.2MPa程度変動することから、抽出圧力Pは抽出温度における抽出溶媒の蒸気圧の1.1倍以上1.2倍以下にして、蒸気圧以下に絶対にならないようにすることが好ましい。これ以上の高圧は装置肉厚の増大による設備コスト増加およびポンプ動力増加による運転コスト増加のデメリットが優勢となり好ましくない。

【0022】
以上のとおり、ブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン又はこれらの混合物からなる抽出溶媒を用いて、抽出温度Tは、100~250℃の範囲内であり、且つ前記抽出温度Tは0.95Tc以下であり、抽出圧力Pは抽出温度Tにおける抽出溶媒の蒸気圧以上、蒸気圧の1.2倍以下であるという条件下で、ブタノール水溶液と抽出溶媒とを接触(例えば向流接触)させることにより、ブタノールの溶解度と選択性を向上できることを見出した。

【0023】
抽出圧力Pは4MPa、抽出温度Tは40~170℃の条件下で、ノルマルブタノール濃度1.0wt%水溶液(平衡時におけるノルマルブタノール濃度が1.0wt%である水溶液)にブタン溶媒(抽出溶媒の一例)を添加して抽出工程を行い、抽出後におけるブタン溶媒中のブタノール濃度及び水分濃度を分析した。ブタノール選択性(ブタノール濃縮濃度)の測定結果を図2に示し、ブタノール溶解度の測定結果を図3に示す。なお、ブタノール選択性は、気相に含まれるブタノールと水との全量を100としたとき、気相に含まれるブタノールの量(すなわち、溶媒フリーでのブタノール濃度)である。また、ブタノール溶解度は、気相におけるブタノールの濃度である。

【0024】
図2、図3に示す結果から、ブタノール選択性とブタノール溶解度の両方を同時に大きくできる好ましい抽出温度Tは、110~130℃であることがわかる。また、ブタノール選択性とブタノール溶解度の両方を同時に大きくできる抽出溶媒の対臨界温度TRは、0.90~0.948の範囲である。

【0025】
なお、110℃での対臨界温度TRは、(110+273)/(152+273)=0.90である。また、130℃での対臨界温度TRは、(130+273)/(152+273)=0.948である。
(実施例1)
1.ブタノールの濃縮脱水方法に使用する装置100の構成、ブタノールの濃縮脱水方法に使用する装置100の構成を図4に基づき説明する。

【0026】
装置100は、抽出塔1と、蒸留塔2と、水分離槽3と、圧縮機4と、熱交換器5、6、7、8、11と、中間加熱器9と、リボイラー10と、圧力制御装置12、13、14と、を備える。また、装置100の各部位は、配管により接続されており、その配管を経由して物質の移送が可能である。図1におけるS1~S24は、配管を経由した物質の移送を表すストリーム番号である。

【0027】
抽出塔1は、縦型円筒容器であり、その内部に気液接触部1aを備える。気液接触部1aとしては、気液の接触効率を増大させるために一般に使用される棚段、不規則充填物、規則充填物等を用いることができる。

【0028】
蒸留塔2は、縦型円筒容器であり、その内部に上層気液接触部2a、中層気液接触部2b、及び下層気液接触部2cを備える。上層気液接触部2a、中層気液接触部2b、及び下層気液接触部2cの構成は、それぞれ、気液接触部1aと同様である。

【0029】
蒸留塔2の内部のうち、中層気液接触部2bと下層気液接触部2cとの間に、液中間保持部2dが存在する。液中間保持部2dは、上方から流下した液体を一定量まで保持する。液中間保持部2dに保持された液量が一定量を超えると、液体はオーバーフローし、液中間保持部2dよりも下方に流下する。

【0030】
抽出塔1及び蒸留塔2内の温度は、図示しない温調機構により制御される。また、抽出塔1、蒸留塔2、及び水分離槽3内の圧力は、圧力制御装置12、14、13によりそれぞれ制御される。

【0031】
2.ブタノールの濃縮脱水方法
(2-1)抽出工程
バイオブタノール水溶液(濃度:約0.5~2.0wt%)を熱交換器5、6で予熱後に、S3から抽出塔1の上部に供給する。また、抽出溶媒を、熱交換器8、7で予熱後に、S4から抽出塔1の下部に供給する。

【0032】
このとき、抽出塔1内の温度(以下、抽出温度Tとする)と、抽出塔1内の圧力(以下、抽出圧力Pとする)は、以下の条件を満たすものとする。
抽出温度T:100~250℃の範囲内であり、且つ0.95Tc以下である。ここで、Tcは、抽出溶媒の臨界温度である。

【0033】
抽出圧力P:抽出温度Tにおける抽出溶媒の蒸気圧以上であること。
抽出塔1の上部から流下するバイオブタノール水溶液と、抽出塔1の下部から上昇する抽出溶媒とは向流接触し、バイオブタノール水溶液中のブタノールは、抽出溶媒中に抽出される。抽出塔1の上部からS6に、抽出されたブタノールと抽出溶媒とを含む抽出物を取り出す。また、抽出塔1の底部からS5に、水を取り出す。この水にはブタノールと抽出溶媒とは実質的に含まれない。

【0034】
(2-2)分離工程
抽出塔1の上部から取り出した抽出物を、熱交換器8、11を経由してS9から蒸留塔2に供給する。抽出物は、蒸留塔2内で、ブタノール、水、及び抽出溶媒を含む気相成分と、ブタノールを含む液相成分とに分離する。ブタノールを含む液相成分は蒸留塔2の下方に流下し、蒸留塔2の底部からS16に取り出される。

【0035】
また、S10から液状の抽出溶媒を蒸留塔2に供給する。液状の抽出溶媒は上層気液接触部2aで気相中のブタノールを吸収しながら流下し、中層気液接触部2bではS9から供給された抽出物中のブタノールを選択的に抽出しながら流下して液中間保持部2dに至る。液状の抽出溶媒と抽出されたブタノールのうち、液状の抽出溶媒は下層気液接触部2cにおいて気化し、蒸留塔2の上方に移動する。残ったブタノールは、蒸留塔2の下方に流下し、上述した液相成分に加わり、蒸留塔2の底部からS16に取り出される。

【0036】
以上のようにして、蒸留塔2の底部からS16に、実質的に抽出溶媒と水分とを含まないブタノールを取り出すことができる。
なお、図5に示すように、ブタノール/水系の気液平衡は、液相ブタノール濃度が80wt%以上で液相にブタノールが濃縮され無水化できることを示しており、抽出溶媒のブタノール抽出特性と気液平衡特性との相乗効果により容易に無水化できる。

【0037】
蒸留塔2の塔頂からS11に、実質的にブタノールを含まない抽出溶媒と水の混合蒸気を取り出し、圧縮機4で圧縮し、S18を介して中間加熱器9に供給し、その凝縮潜熱で中間保持液を加熱することにより、蒸気の潜熱を回収する。ここで、中間保持液とは、液中間保持部2dに溜まった液を、S12に取り出したものである。液中間保持部2dの温度が、蒸留塔2の塔頂の温度より3~20℃、好ましくは5~10℃の範囲で高くなるように、
中間保持液を加熱する中間加熱器9での加熱量を調整する。このことにより、圧縮機4の動力とリボイラー10の熱負荷を最少にできる。

【0038】
上記のように中間加熱器9に供給された蒸気は、中間加熱器9において凝縮液化し、S19を介して水分離槽3に供給される。水分離槽3に供給される液体のうち、抽出溶媒の比重は約0.6~0.8と水より軽いので、重力沈降分離により水と抽出溶媒とに容易に分離される。分離された水は、水分離槽3の下部からS20に取り出され、抽出溶媒は水分離槽3の上部からS21に取り出される。取り出された水の一部は、S25から蒸留塔2の塔頂に還流する。このことにより、蒸留精製効果を高めることができる。また、水分離槽3の上部からS21に取り出された抽出溶媒は、S10及びS4に供給され、再利用される。

【0039】
3.実験
上述したブタノールの濃縮脱水方法を、図6に示す条件で行った。そして、抽出塔1の上部から取り出した抽出物について、抽出溶媒中のブタノール溶解度と、抽出溶媒中のブタノール濃度とを測定した。その結果を図6に示す。

【0040】
また、図6に示す各条件について、バイオブタノール水溶液から、実質的に抽出溶媒と水分とを含まないブタノールを得るために必要なエネルギーである、濃縮脱水熱エネルギーをシミュレーションにより算出した。その結果を図6及び図7に示す。

【0041】
本開示によれば、低い濃縮脱水熱エネルギーで、実質的に抽出溶媒と水分とを含まないブタノールを得ることができる。特に、バイオブタノール水溶液におけるブタノール濃度が高い場合、濃縮脱水熱エネルギーが一層低くなる。

【0042】
これは、本開示の濃縮脱水方法では、バイオブタノール水溶液におけるブタノール濃度が高くなっても、溶媒へのブタノール溶解度はブタノール濃度にほぼ比例して増加し、濃縮脱水熱エネルギーは増加しないので、バイオブタノール水溶液におけるブタノール濃度が高くなるほど、ブタノールの単位重量当りの濃縮脱水熱エネルギーは低くなるためである。

【0043】
一方、従来の膜分離法では、その原理上、バイオブタノール水溶液におけるブタノール濃度によらず、ブタノールの単位重量当たりのエネルギーは殆ど変化しない。そのため、バイオブタノール水溶液におけるブタノール濃度が高い場合は、本開示の方法に比べ、ブタノールの単位重量当たりのエネルギーが高くなる。

【0044】
4.効果
本開示のブタノールの濃縮脱水方法によれば、実質的に抽出溶媒と水分とを含まないブタノールを得るために要するエネルギーを低減することができる。

【0045】
また、本開示のブタノールの濃縮脱水方法は、必ずしも透過膜を使用しなくてもよいので、透過膜に関する問題が生じにくい。また、本開示のブタノールの濃縮脱水方法は、必ずしも2オクタノールを使用しなくてもよいので、2オクタノールを無害な溶媒で抽出分離する工程が必須ではない。

【0046】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
例えば、ブタノール水溶液は、発酵ブタノール(バイオブタノール)水溶液であってもよい。また、ブタノール水溶液は、アセトン、エタノール、又はその両方を含んでいてもよい。また、本開示により得られる精製物は、ブタノールと他の成分(例えば、アセトン、エタノール、又はその両方等)とを含む混合液であってもよい。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6