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明細書 :水酸基イオンを包接する12CaO・7Al2O3化合物焼結体及びその作成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3560560号 (P3560560)
公開番号 特開2002-316867 (P2002-316867A)
登録日 平成16年6月4日(2004.6.4)
発行日 平成16年9月2日(2004.9.2)
公開日 平成14年10月31日(2002.10.31)
発明の名称または考案の名称 水酸基イオンを包接する12CaO・7Al2O3化合物焼結体及びその作成方法
国際特許分類 C04B 35/44      
C01F  7/18      
FI C04B 35/44
C01F 7/18
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2001-117546 (P2001-117546)
出願日 平成13年4月16日(2001.4.16)
審査請求日 平成13年4月19日(2001.4.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】平野 正浩
【氏名】林 克郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 JOURNAL OF THE CERAMIC SOCIETY OF JAPAN,1994年,102[8],pp.772-777
BRITISH CERAMIC SOCIETY,1965年,64[6],pp.323-332
調査した分野 C04B 35/44
C01F 7/16-7/18
CA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
理論密度に対する相対焼結密度が98%以上で、かつ、波長範囲400~800nmで、厚み1.5mmの焼結体に対して、透過率50%以上の透光性を有することを特徴とする12CaO・7Al23化合物焼結体。
【請求項2】
水中、または水分を含む溶媒中、もしくは水蒸気を含む気体中で水和反応させた12CaO・7Al23化合物粉体を、成形体化し、酸素分圧104Pa以上、水蒸気分圧102 Pa以下の乾燥酸化雰囲気中で、1200℃から1450℃の温度範囲で焼結することを特徴とする請求項1記載の12CaO・7Al23化合物焼結体の作成方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透光性を示す程度にまでに高緻密化された12CaO・7Al23焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルシウム・アルミニウム酸化物は、単結晶体では、遠赤外から紫外までの幅広い波長領域で光を透過する。このため、透光性を有する12CaO・7Al焼結体を得ることができれば、光源や光センサーの窓材などとしての用途が期待できる。また、ガリウムナイトライド系、酸化亜鉛系などの半導体発受光素子の基板として用いれば、発光を基板側から取り出したり、検出すべき光を基板側から入射することができる。さらに、12CaO・7Alは良好な酸素イオン導電性を示すと報告されているが(M. Lacerda, J. T. S. Irvine, F. P. Glasser, and A. R. West, Nature, 332, 525, 1988)、これを燃料電池用の固体電解質として応用するためには、ガスを透過しない緻密な焼結体を得ることが重要である。
【0003】
しかし、12CaO・7Alは難焼結性であるとされており、1364℃で16時間の焼結を行っても、理論密度の約90%の焼結密度しか得られないことが報告されている。(M. Lacerda, J. T. S. Irvine, E. e. Lachowski, F. P.Glasser and A. R. West, Br. Ceram. Trans. J. 87, 191, 1988)。
【0004】
また、OHイオンを含む化合物は数多く知られているが、これらの化合物を1300℃以上の高温に曝すとOHイオンが拡散し、お互いに反応して、HOとなり、化合物中から蒸発してしまう。このため、1300℃以上の高温で、OHイオンを保持できる化合物はこれまでに報告されていない。
【0005】
12CaO・7Al中には、陰イオンを包接することが出来るケージが存在しており、各種酸素ラジカルイオン、OHイオン、ハロゲンイオンなどが、そのケージに包接されることが知られている。例えば、通常の湿度の雰囲気で焼結した12CaO・7Alは、微量のOHイオンを含むとされている。(R.W. Nurse, J. H. Welch and A. J. Majumdar, Trans. Br. Ceram. Soc., 64, 409, 1965) また、乾燥気流中、1150℃以上の焼結により、OHイオンを含まない12CaO・7Alが生成されると報告されている。(三五弘之・宮川継男・安江任・荒井康夫, J. Ceram. Soc. Jpn., 102, 772, 1994.)
【0006】
しかし、12CaO・7Al化合物中のOHイオンの包接量を定量的に測定する方法は、確立されていなかったし、12CaO・7Al中に、高濃度のOHイオンを包接させる方法はこれまで報告されていない。さらに、12CaO・7Alに包接されるイオンの種類および含有量と焼結体の緻密さの関係は明らかにされていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透光性を有する程度にまで高緻密化された12CaO・7Al23焼結体とそれらの作方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
12CaO・7Al化合物中に包接されるOHイオンは、その包接過程および放出過程で、該化合物の焼成を促進すると考えられる。 従って、OHイオンを多量に包接する合成条件で12CaO・7Al化合物を作製し、得られた化合物を、制御した雰囲気下で焼成することにより、焼結密度の高い焼結体を得ることが出来る。最適な焼結雰囲気条件で作製した焼結体は、透光性を有しており、1300℃以上の高温でも、1019cm-3以上の高濃度にOHイオンを保持している。
【0011】
すなわち、本発明は、理論密度(2.67g/cm3)に対する相対焼結密度が98%以上で、かつ、波長範囲400~800nmで、厚み1.5mm以上の焼結体に対して、透過率50%以上の透光性を有することを特徴とする、12CaO・7Al23化合物焼結体である。
【0012】
この化合物焼結体は、水中、または水分を含む溶媒中、もしくは水蒸気を含む気体中で、水和反応させた、12CaO・7Al化合物粉体を、成形体化し、酸素分圧10Pa以上、水蒸気分圧10Pa以下の乾燥酸化雰囲気中で、1200℃から1450℃の温度範囲で焼結することによって作成できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
焼結に用いる原材料は、水和反応を経て、合成された12CaO・7Al化合物粉体である。12CaO・7Al化合物粉体の合成法は、固相反応、水熱合成、溶液からの共沈法のいずれでも良い。Ca原料としては、CaCO、CaO、またはCaの酢酸化合物、Al原料として、α-Al、γ-Al、δ-Al、Al(OH)、またはAlの酢酸化合物を用いることが出来る。水和反応により、 HOと12CaO・7Alが反応し、12CaO・7Al化合物中にOHイオンが導入される。
【0015】
例えば、 0.2%の水分を含むエタノール中に12CaO・7Al化合物粉体を投入することで水和反応を行うことができる。水和反応は、エタノール溶液の代わりに純水を用いても良い。あるいは、水蒸気を用いて気相で水和反応させることもできる。水和反応の結果、12CaO・7Al化合物は、塊になり易いので、ボールミル等の粉砕を行いながらの反応が好ましい。
【0016】
水和反応させた12CaO・7Al化合物粉体を、50MPa以上、好ましくは200MPa以上の静水圧下で成形し、1200℃以上好ましくは1350℃で、酸素分圧10Pa以上の雰囲気中で焼結を行った場合、OHイオンはほとんど放出されず、1019cm-3以上の高濃度にOHイオンを保持する12CaO・7Ala化合物焼結体を得ることができる。
【0017】
酸素分圧10Pa以上、好ましくは酸素分圧10Pa以上、水蒸気分圧10Pa以下の雰囲気で焼結した場合、OHイオンの拡散が起こり、その結果、焼結度が向上し、透光性を有する12CaO・7Al化合物焼結体を得ることが出来る。酸素分圧が10Pa以下では12CaO・7Al化合物が他の結晶相に変化しやすい。また、1450℃以上では、12CaO・7Al化合物は溶融する。
【0018】
この12CaO・7Al化合物中に含有されるOHイオンは3560cm-1近傍の赤外吸収強度を利用することによって定量分析することができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を示す。
実施例1
12:7の化合物比のCaCOとγ-Alの混合粉末を、酸素分圧2×10Pa, 水蒸気圧8×10Paの雰囲気下、温度1300℃で固相反応させ、得られた12CaO・7Al化合物を、水分を0.2%含有するエタノール中でボールミル粉砕しながら水和反応させた。得られた粉末を200MPaの圧力で静水圧プレスすることよって成形体化して圧粉体を得た。酸素分圧1×10Pa、水蒸気分圧6Paの乾燥酸化雰囲気下で1300 ℃で12時間から48時間焼結した。
【0020】
3550cm-1付近の吸収強度から、OHイオンのモル吸光係数εをε=90mol-1dmcm-1として、OHイオンの濃度を定量した。この吸収スペクトルの例を図1に示す。また、図2に、室温で包接されるOHイオン濃度の温度1300℃における焼結時間依存性を示す。1300℃で12時間の焼結後で1×1020 cm-3の濃度のOHイオンが包接されていることが分かった。焼結時間とOHイオン濃度の依存性から1300℃で1000時間保持しても、3×1019cm-3のOHイオンを包接しつづけることが可能であることが示された。
【0021】
また、焼結体の表面を鏡面研磨した後、赤外吸収スペクトル光度計を用いて赤外吸収スペクトル測定を行った。透過率(%)は、入射光強度Iに対する透過光強度Iの比I/I×100によって定義される。その透過スペクトルを図3に示す。48時間の焼結時間によって、1.5mm厚の焼結体にて可視領域で50%以上の透過率を得た。
【0022】
比較例1
実施例1と同じ条件で作製した圧粉体を、酸素分圧2×104 Pa、水蒸気分圧8×102 Paの雰囲気下で1300℃で12時間焼結した。得られた焼結体は、ほとんど透光しない(1.5mm厚みにて透過率4×10-5%)。相対焼結密度は98%以上であった。赤外吸収測定によって、室温で2×1020cm-3のOH-イオンが包接されていることが分かった。
【0023】
【発明の効果】
本発明の12CaO・7Al化合物焼結体は、緻密で気体の気密性が良好であるため、酸化物固体燃料電池や触媒反応セル等の固体電解質材料として好適に使用することができる。また、高温でOHイオンの化学反応を利用する電気化学セルへの応用が期待できる。
【0024】
本発明の透光性を有する12CaO・7Al化合物焼結体は、遠赤外から紫外までの幅広い波長領域で光を透過するし、また、単結晶体に比べて、大型の試料を得やすいため、光源や光センサーの窓材、半導体発光、受光素子の基板などとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1においてOHイオンの濃度定量に用いられた、3560cm-1近傍の赤外
吸収スペクトルの例を示す図である。
【図2】実施例1で得られた12CaO・7Al化合物中に包接されるOHイオンの濃度の温度1300℃における焼結時間による変化を示す図である。
【図3】実施例1で得られた透光性12CaO・7Al化合物焼結体の透過スペクトルを示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2