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明細書 :フェムト秒レーザー照射による量子ドット素子の作成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4132750号 (P4132750)
公開番号 特開2003-057422 (P2003-057422A)
登録日 平成20年6月6日(2008.6.6)
発行日 平成20年8月13日(2008.8.13)
公開日 平成15年2月26日(2003.2.26)
発明の名称または考案の名称 フェムト秒レーザー照射による量子ドット素子の作成方法
国際特許分類 G02B   5/18        (2006.01)
C03C  23/00        (2006.01)
G02F   1/35        (2006.01)
H01S   3/00        (2006.01)
FI G02B 5/18
C03C 23/00 D
G02F 1/35
H01S 3/00 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2001-248433 (P2001-248433)
出願日 平成13年8月17日(2001.8.17)
審査請求日 平成16年11月2日(2004.11.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】河村 賢一
【氏名】平野 正浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】藤岡 善行
参考文献・文献 国際公開第01/044879(WO,A1)
特開平07-191210(JP,A)
特開平02-196425(JP,A)
特開昭63-223602(JP,A)
特開平07-176523(JP,A)
特開平06-302562(JP,A)
特開平06-275908(JP,A)
調査した分野 C03C23/00
G02B5/18
G02F1/35
H01L21/302
H01S3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
発振中心波長800nmのフェムト秒二ビームレーザー露光装置を用いて、0.1TW/cm以上の高密度エネルギーを有し、二つのビームのなす角度(θ)を90度未満として二つのビームが互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを、透明基材に照射することにより、最小平均寸法5~200nmを有する一次元周期構造を基材中に作成した後、該基材をレーザービームに対して90度回転し、前記互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを前記一次元周期構造が形成された領域に重畳して照射することによって平均寸法が5nmから200nmのドット構造の二次元周期構造を形成することを特徴とするフェムト秒レーザー照射による量子ドット素子の作成方法。
【請求項2】
発振中心波長800nmのフェムト秒二ビームレーザー露光装置を用いて、0.1TW/cm以上の高密度エネルギーを有し、二つのビームのなす角度を90度以上として二つのビームが互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを、透明基材に照射することにより、最小平均寸法5~200nmを有する一次元周期構造を基材中に作成した後、該基材をレーザービームに対して90度回転し、前記互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを前記一次元周期構造が形成された領域に重畳して照射することによって表面正方形の一辺が平均50nmから250nmの島状構造の二次元周期構造を形成することを特徴とするフェムト秒レーザー照射による量子ドット素子の作成方法。
【請求項3】
発振中心波長800nmのフェムト秒二ビームレーザー露光装置を用いて、0.1TW/cm以上の高密度エネルギーを有し、二つのビームのなす角度を90度未満として二つのビームが互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを、透明基材に照射することにより、最小平均寸法5~200nmを有する一次元周期構造を基材中に作成した後、該基材をレーザービームに対して90度回転し、前記互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを前記一次元周期構造が形成された領域に重畳して照射することによってドット構造の二次元周期構造を形成することを特徴とするフェムト秒レーザー照射による量子ドット素子作成用エピタキシャル単結晶膜を成長させるための基板の作成方法。
【請求項4】
基材として、バルク及び薄膜シリカガラス,BK7光学ガラス,多成分ガラス,MgO,SiO,LiNbO,Al,CaF,ダイヤモンド,ZnS,ZnSe,ZnO,YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、AlN,GaN,AlAs、またはGaAs及びそれらの混合物を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の作成方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高エネルギー密度を有する互いに干渉したフェムト秒レーザーパルス光により、透明基材中に、ナノスケールの二次元周期構造を有する量子ドット素子を作成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザー光の干渉を利用して、一次元の周期性を有するホログラフィック回折格子の作成法は、従来から良く知られた技術である。こうしたレーザー露光により作成された回折格子は、分光器用回折格子、分布帰還型半導体レーザー用回折格子またはファイバーグレーテング用回折格子などに使われている。
【0003】
これらの回折格子作成には、He-Cdレーザー、アルゴンレーザー、エキシマ-レーザーなど、連続光発振レーザーまたはナノ秒パルスレーザーが使われている。これらのレーザーは、光エネルギー密度が小さいので、被加工材料には感光性が必要となる。本発明者らは、フェムト秒レーザー光干渉を利用して、回折格子を作成する方法を開発した。この方法では、フェムト秒レーザー光が高エネルギー密度を有しているために、被加工材料は必ずしも感光性を必要とせず、ほとんどすべての材料に回折格子を記録できる。
【0004】
レーザー光干渉露光法で作成された回折格子のフリンジの間隔は、使用されるレーザー波長の1/2より小さくする事が出来ず、このために、800nmのレーザー光を用いた場合、フリンジの間隔の最小寸法は400nm程度で、フリンジ溝幅は200nm程度であり、量子効果が期待されるナノスケール(数10ナノメーター以下)構造の実現は難しかった。また、こうしたレーザー光干渉露光法では、一次元の周期性を実現できるが、二次元の周期性を実現する事は出来なかった。
【0005】
また、一次元または二次元の周期構造を有する量子ワイヤーまたはドットを作成するために、リソグラフィー法が試みられている。この方法では、電子ビーム露光装置またはイオンビーム露光装置により、10nm程度の微細加工が可能で、電子またはイオンビームをスキャンすることにより、一次元または二次元周期構造の作成が可能となる。また、こうして作成したフォトマスクとエキシマ-レーザーを光源としたステッパ-露光装置を用いても同様な周期微細構造を作成することが出来る。
【0006】
しかし、該作成プロセスでは、電子ビームまたはイオンビームに感光するレジストが必要となる。また、レジスト塗布、感光、現像、さらに被加工材料のエッチングプロセスが必要となり、全体として、いくつかの真空プロセスを含む複雑なプロセスである。また、最終的な微細構造の特性は、エッチングプロセスで決まるため、微細構造の最小寸法、アスペクト比(深さと幅の比)、被加工材料などに多くの制限がある。
【0007】
さらに、GaAs上にInAs微結晶を島状成長させるなどして、10nm程度の量子ドットを作成する方法が開発されているが、この方法では、周期性を実現することが困難であり、また、特殊な材料の組み合わせにおいてしか、島状成長を実現することが出来ない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の様に、リソグラフィー法による量子ワイヤーまたは量子ドットの作成法は、プロセスが複雑であり、さらに微細構造の特性がエッチングに支配されるため、微細構造の最小寸法、形状、材料の種類などに制約がある。また、結晶膜成長プロセスでの島状成長を利用した方法は、ドットの周期性の制御、材料の組み合わせに制約がある。さらに、レーザー光干渉露光法では、二次元周期構造の実現が困難であり、またナノスケール微細加工が実現されていなかった。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決しようとするもので、フェムト秒レーザー光干渉多重露光により、単純なプロセスで、必ずしも感光性を有しない、ほとんどすべての材料に二次元周期構造を形成する方法を提供するものである。本発明の方法では、高密度エネルギーフェムト秒レーザーがもたらす非線形効果および照射により生じる材料の構造変化を利用する事により、10nm程度のナノスケールの二次元周期構造を形成することが出来る。
【0010】
互いに干渉したフェムト秒レーザーを多重露光して、二次元周期構造を形成する方法は、本発明者により提案されているが、本発明は、その手法を改良して、ナノスケールの微細構造を有する量子ドット素子を形成する方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
固体レーザーからの800nm近傍の近赤外領域の発振波長で、0.1TW/cm以上の高エネルギー密度を有し、互いに干渉させたフェムト秒レーザーパルスを透明基材に照射し、5~0.4μmのフリンジ間隔を持つホログラフィック回折格子を透明基材に形成する。材料のレーザー誘起構造変化とフェムト秒レーザーの非線形性を活用すれば、フリンジの内部構造として溝が形成され、その平均幅を5nm程度に狭くする事が出来る。すなわち、ナノスケールの周期量子ワイヤー構造を形成する事が出来る。
【0012】
さらに、こうして形成した回折格子を90度回転させた後、再び、互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを照射する事により、最小平均径が5nm程度のドットから構成される二次元周期構造を作成する事ができる。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)発振中心波長800nmのフェムト秒二ビームレーザー露光装置を用いて、0.1TW/cm以上の高密度エネルギーを有し、二つのビームのなす角度(θ)を90度未満として二つのビームが互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを、透明基材に照射することにより、最小平均寸法5~200nmを有する一次元周期構造を基材中に作成した後、該基材をレーザービームに対して90度回転し、前記互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを前記一次元周期構造が形成された領域に重畳して照射することによって平均寸法が5nmから200nmのドット構造の二次元周期構造を形成することを特徴とするフェムト秒レーザー照射による量子ドット素子の作成方法、である。
【0014】
また、本発明は、(2)発振中心波長800nmのフェムト秒二ビームレーザー露光装置を用いて、0.1TW/cm以上の高密度エネルギーを有し、二つのビームのなす角度を90度以上として二つのビームが互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを、透明基材に照射することにより、最小平均寸法5~200nmを有する一次元周期構造を基材中に作成した後、該基材をレーザービームに対して90度回転し、前記互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを前記一次元周期構造が形成された領域に重畳して照射することによって表面正方形の一辺が平均50nmから250nmの島状構造の二次元周期構造を形成することを特徴とするフェムト秒レーザー照射による量子ドット素子の作成方法、である。
【0015】
また、本発明は、(3)発振中心波長800nmのフェムト秒二ビームレーザー露光装置を用いて、0.1TW/cm以上の高密度エネルギーを有し、二つのビームのなす角度を90度未満として二つのビームが互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを、透明基材に照射することにより、最小平均寸法5~200nmを有する一次元周期構造を基材中に作成した後、該基材をレーザービームに対して90度回転し、前記互いに干渉したフェムト秒レーザーパルスを前記一次元周期構造が形成された領域に重畳して照射することによってドット構造の二次元周期構造を形成することを特徴とするフェムト秒レーザー照射による量子ドット素子作成用エピタキシャル単結晶膜を成長させるための基板の作成方法、である。
【0016】
また、本発明は、(4)基材として、バルク及び薄膜シリカガラス,BK7光学ガラス,多成分ガラス,MgO,SiO,LiNbO,Al,CaF,ダイヤモンド,ZnS,ZnSe,ZnO,YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、AlN,GaN,AlAs、またはGaAs及びそれらの混合物を用いることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)のいずれかの作成方法、である。
【0017】
上記(3)の基板の作成方法によって形成された二次元周期構造を持つ基材を単結晶膜成長用の基板として用い、その上に成長した単結晶膜を用いて、量子素子を作成することできる。
【0018】
本発明者らは、先に、従来行なわれていた感光性材料を用いたレーザー光干渉露光ホログラム作成法に替えて、フェムト秒レーザーを用いた二ビームホログラム露光法を開発し、本来は光感光性を持たない有機材料、無機材料、半導体材料または、金属材料に、一つのパルスから分岐した一対のパルス光で、ホログラムを記録できる方法を実現し、特許出願した(WO01/44879A1)。
【0019】
この方法は、発振波長が800nm付近の近赤外領域で、該パルス幅が900~10フェムト秒、ピーク出力が1GW以上で、フーリェ限界またはそれと近似できる固体フェムト秒レーザーを光源とし、該レーザーからのパルスをビームスプリッターにより二つに分割し、二つのビームを、光学遅延回路を介して時間的に制御し、かつ微小回転する反射面が平面または凹面のミラーを用いて空間的に制御し、ホログラムを記録する基材表面または基材内部に、エネルギー密度100GW/cm以上で集光し、二つのビームの集光スポットを時間的および空間的に合致させることにより、高エネルギー照射によって生じる基材材料のアブレーションおよび/または基材材料の原子配列構造変化による基材表面の形状変化および/または基材材料の屈折率変化により、透明材料、半導体材料、または金属材料に不可逆的にホログラムを記録する事を特徴とする二ビームレーザー干渉露光法によるホログラムの製造方法である。
【0020】
光干渉パターンでのx方向での光強度分布F(x)は、下記の(1)式で与えられる。
【0021】
F(x)=2Favcos2(2πx/d) (1)
ここで、Favは、光の平均エネルギー、dは、フリンジの間隔で、二つのビームのなす角度をθとしたとき、下記の(2)式で与えられる。
【0022】
d= λ/2sin(θ/2) (2)
したがって、dは波長の半分より小さくする事ができない。
【0023】
800nm付近の発振波長でフェムト秒レーザーを透明基材に照射すると、多重光子吸収プロセスにより、基材は光エネルギーを吸収する。吸収されるエネルギーE(x)は、n多重吸収の時は、光強度のn乗に比例する。すなわち、下記の(3)式で与えられる。
【0024】
E(x)=[2Favcos2(2πx/d)]n (3)
【0025】
吸収されたエネルギー密度が、閾値を越えた場合に、材料のアブレーションまたは構造変化が生じるので、アブレーションまたは構造変化が生じる領域は、nが1のとき、d/2程度(λ/4程度)とする事ができ、nを大きくすれば、該領域をさらに小さくする事ができる。フェムト秒レーザーでは、熱的効果を除く事が出来るので、該領域が熱的に拡散する事を防ぐ事が出来る。すなわち、フェムト秒レーザー照射で、多重光吸収を利用して回折格子を形成した場合、光の回折限界を超えた微細構造を形成することができる。
【0026】
高強度のフェムト秒レーザーが、屈折率N0を有する透明基材中を伝播する場合、下記の(4)式に示す様に、光強度Iに比例して屈折率Nが変化する非線型効果が顕著になる。
【0027】
N=N0+α・I (4)
ここで、αは定数である。
【0028】
αが正の時は、凸レンズ効果が生じ、光の伝播と共に、光は自己収束する。すなわち、αが正の基材では、屈折率の非線形効果に基づく自己収束効果により、光集光スポットは、さらに小さくする事ができ、その結果、アブレーションまたは構造変化を生じる領域を、より小さくする事が出来る。こうした多重光吸収効果および自己収束効果を利用して、最小平均寸法5nm程度の微細構造を有する周期構造を形成することができる。
【0029】
シリカガラスに、閾値を越えるエネルギー密度を有する互いに干渉したフェムト秒パルスを照射すると、シリカガラス中に、体積の収縮を伴った周期的な構造変化が生じる。単位面積当たりのレーザーエネルギー密度を0.1TW/cm以上にすると、この構造変化領域は、多重光吸収および/または自己収束効果により、光の回折限界より小さくなり、局所的な収縮力が発生する。この結果、シリカガラスに平均幅が約5nmの溝が形成される。この溝の間隔は、回折格子のフリンジ間隔と一致している。すなわち、間隔5~0.4μmの周期量子ワイヤー構造を作成することができる。シリカガラス中に形成された約5nm平均幅の周期溝構造は、高分解能の走査型反射電子顕微鏡で観測する事ができる。
【0030】
二次元周期構造を形成するには多重露光法を用いる。すなわち、まず、フェムト秒レーザー二ビームホログラム露光装置を用い、一発の干渉レーザーパルス照射により透明基材表面または内部にホログラム回折格子を記録する。次に、回折格子を記録した透明基材を90度回転させ、記録された回折格子に位置的に重ねて、互いに干渉したフェムト秒パルスを重畳して照射する。その結果、回折格子とパルスビームが重なった領域に、最小平均寸法約5nmの微細構造を有する二次元周期構造を形成する事ができる。
【0031】
二つのレーザーパルスのビームのなす角度が90度未満のときは、二次元周期構造はドット構造になり、該角度が90度以上のときは、表面が正方形の島状構造になる。また、照射レーザーエネルギーを変化させる事により、ドットの平均寸法を5nmから200nmの範囲で、島状構造の表面正方形の一辺を平均50~250nmで変化させることができる。
【0032】
基材中に記録された周期構造の溝幅、ドットの直径などの寸法は、走査型反射電子顕微鏡の白黒コントラストから求められる。しかし、一般的に、走査型反射電子顕微鏡では、溝、ドットなどの深さを直接測定することができず、走査型電子顕微鏡の白黒コントラストは、溝の幅、ドットの寸法(直径)などの深さ方向の重み平均であると考えられる。したがって、本件明細書中の「平均幅」、「平均寸法」は走査型反射電子顕微鏡の白黒コントラストから求めた値で、深さ方向に重み付けされた平均の溝幅およびドットの寸法である。
【0033】
こうして形成された二次元周期を有する微細構造は、二次元回折格子または二次元ホトニック結晶とみなすことができ、高角度光回折素子として用いることができる。また、該微細構造の上に、単結晶膜をホモエピタキシャル成長させる、あるいは、半導体単結晶膜をヘテロエピタキシャル成長させ、得られたエピタキシャル単結晶膜を用いて、周期量子ドット素子を作成することができる。すなわち、該微細構造を記録した基材を周期量子ドット素子作成のための基板として用いることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の方法に用いるフェムト秒レーザー光干渉露光装置のシステム概念図である。このシステムにおいては、フェムト秒レーザー光源、該レーザーからのパルスビームをビームB1とビームB2の二つに分割するためのビームスプリッター(ハーフミラーHF1)、パルスの光の集光合致位置を時間的に制御するための光学遅延回路および空間的に制御するための平面鏡M2と凹面鏡M3,M6と該凹面鏡M3,M6を微回転するための機構からなる光学系を有する。光学遅延回路を構成する平面鏡M4,M5の位置を、入射ビームに対して平行方向に微移動させる事により、光学路長を変化させ、光学遅延回路とする事ができる。基材S1に入射する二ビームの集光の合致位置および集光スポットのサイズを光学遅延回路およびミラーにより制御できる。
【0035】
フェムト秒二ビームレーザー露光装置は、ミクロンスケールで、位置が制御できる光学系が必要であり、それに対応できる高精度の位置制御性をもつ装置として、精細な制御が可能な光学遅延回路、微回転できる凹面鏡、および二ビームの集合合致の有無を検出できる機能を併せ持つ光学系により、二つのビームを基材上または基材内部に集光して、時間的および空間的に、二つの集光スポットを合致させる事を可能としたものである。
【0036】
また、基材の指定位置に、二つのビームを集光させる事を可能とするために、基材は、ミクロンオーダーで微移動および、分のオーダーで微回転する基材回転ステージ上に置かれている。さらに、基材中の特定の位置を検出するために、基材回転ステージ上の基材を実体顕微鏡で観測する事ができる。
【0037】
図1に示すシステムにおいて、チタンサファイヤモードロックレーザーのフェムト秒パルスレーザーを最大エネルギー約1mJ,時間幅約100フェムト秒に再生増幅し、得られたフェムト秒レーザー光を透明基材S1の表面に約100μm径に集光する(このレーザー光のエネルギー密度は、約100TW/cmである。)。フェムト秒パルスの発振器として、近赤外光で発振するファイバーレーザー及び固体レーザーを用いることもできる。
【0038】
図2に、多重露光により二次元周期構造を作成する手順を示す。それぞれ100μJ/パルスの二つのビームを時間的および空間的に一致させ、基材の表面に集光させる。その結果、二つのビームが互いに干渉し、生じた干渉パターンの明部領域のみのガラス表面が アブレーションされ、その結果、干渉パターンが基材に転写される。同時に、干渉パターンの明部領域の基材内部に、高密度エネルギーレーザー照射により、基材の収縮が起こる。
【0039】
この収縮により、基材表面に、平均幅5nm程度の極微小幅を有する亀裂が生じる。該亀裂の間隔は、干渉パターンのフリンジ間隔に一致している。すなわち、二つのビームのなす角度、すなわち、交差角をθとしたとき、該間隔dは、レーザー波長をλとして、d=λ/2sin(θ/2)で与えられる。該方法により、基材表面に、一次元周期量子ワイヤー構造を形成する事ができる(図2の1回目の書込み)。
【0040】
前述の手法により、一次元周期量子ワイヤーを形成した基材を、基材回転ステージを回転させることにより、レーザー入射ビームに対して90度回転させる。次に、一次元周期量子ワイヤー構造が形成された領域に、集光レーザービームが照射されるように基材回転ステージを平行に移動させる。最後に、互いに干渉したレーザーパルスを照射し、2回目の書込みを、量子ワイヤー形成領域に重ねて行う。
【0041】
二回の照射ビーム位置が一致した領域に、1回目のレーザー照射によって形成された回折格子と2回目に照射されたレーザービームとの相互作用により、二次元周期ドット構造が形成される。シリカガラスでは、周期性量子ワイヤー構造と周期性量子ドット構造が重なって形成される。該ドットの平均寸法は、5~100nmであり、二次元周期量子ドット構造とみなすことができる。これらの構造は、AFMではプローブ針先端寸法の制限で観測することが難しいが、それに替わって、高分解能走査型反射電子顕微鏡で実測することができる。
【0042】
基材として、バルク及び薄膜シリカガラスの他、BK7光学ガラス,多成分ガラス,MgO,SiO,LiNbO,Al,CaF,ダイヤモンド,ZnS,ZnSe,ZnO,YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、AlN,GaN,AlAs、またはGaAs及びそれらの混合物を使うことができる。シリカガラス以外の基材では、一次元周期構造では、ワイヤーの幅は約50nm以上であるが、その場合でも、ドットの平均寸法を5~200nmにすることができる。
【0043】
量子ドットが、形成される機構は明確ではないが、一回目の照射により形成された回折格子表面が、2回目に照射されたレーザービームに対して、レンズ作用を持ち微細ビームスポットが形成され、そのスポットが基材に転写される機構、あるいは、最初に形成された回折格子により、2回目に照射されたレーザービームが回折され、その回折光と入射レーザービーム光が互いに干渉し、微細ビームスポットが形成され、そのスポットが基材に転写される機構が考えられる。いずれの機構においても、基材に転写される際に、多重光子吸収過程及び自己収束過程により、ビームスポットより微細な形状変化を基材表面または内部に形成することができる。
【0044】
【実施例】
[参考例1]
図1に示すフェムト秒二ビームレーザー干渉露光装置を用いた。すなわち、レーザーは、再生チタンサファイヤレーザーで、発振中心波長は800nm、パルス幅約100フェムト秒、パルスエネルギーは、それぞれのビームに対して、100μJ/パルスで、ピーク出力は約1GWと求められる。
【0045】
レーザービームは、ハーフミラーHF1で、二つに分けられ、レンズL1及びレンズL2により、シリカガラス表面に集光される。ビームB1あるいはビームB2に対する光学路内に、光学遅延回路及び光学路位置あわせ回路を設置し、二つのビームの集光スポットを時間的および空間的に合致させた。合致の有無の検出には、空気による三倍高調波の発生強度を用いた。
【0046】
集光スポットの大きさは、約100μmで、ピーク出力密度は約10TW/cmと計算される。ビームB1とビームB2のシリカガラスへの入射角度は、24度とした。レーザー照射後のシリカガラス表面をAFMおよび高分解能走査型反射電子顕微鏡で観測した。図3は、得られた表面レリーフ型ホログラム回折格子のAMF写真と距離および溝の深さの関係を示すグラフである。図3に示すように、約1μmの格子間隔を持つ表面レリーフ型ホログラム回折格子を得た。AFMの測定から、ホログラムフリンジの形状は、かまぼこ型であった。
【0047】
また、図4は、得られた表面レリーフ型ホログラム回折格子の高分解能走査型反射電子顕微鏡写真である。図4に示すように、それぞれのフリンジに、平均幅15nmの微細溝が付属しているのがわかる。すなわち、フェムト秒レーザーを用いた2ビームレーザー干渉露光により、シリカガラス表面に、一次元周期構造(一次元周期量子ワイヤー構造)が形成されていることが確認できた。
【0048】
[実施例1]
図1に示したフェムト秒二ビームレーザー干渉露光装置を用いて、シリカガラスに表面レリーフ型ホログラム回折格子を形成した。レーザービームのエネルギー密度は100μJ/パルスで、二つのビームのなす角度は24度とした。該ホログラムを記録した後、試料ステージを90度回転して、該シリカガラス試料を、ビームに対して、90度回転した。
【0049】
さらに、レーザービームが回折格子形成領域を照射する様、試料ステージを平行に微動させ、2回目のレーザービームを照射した。2回目の照射において、二つのビームのエネルギー密度は、それぞれ100μJとし、二つのビームのなす角度は24度とした。図5に、二回の照射ビームの重なった領域の高分解能走査型反射電子顕微鏡写真(a)と該写真の模式図(b)を示す。図5から、縦横約1μm間隔の二次元周期性をもつドット構造が形成されていることが確認できた。ドットの深さは、300nm程度と推定され、ドットの直径の平均寸法は20~200nmであった。
【0050】
[実施例2]
図1に示したフェムト秒二ビームレーザー干渉露光装置を用いて、シリカガラスに表面レリーフ型ホログラム回折格子を形成した。レーザービームのエネルギー密度は50μJ/パルスで、二つのビームのなす角度は24度とした。該ホログラムを記録した後、試料ステージを90度回転して、該シリカガラスを、ビームに対して、90度回転した。
【0051】
さらに、レーザービームが回折格子形成領域に照射する様、基材回転ステージを平行に微動させ、2回目のレーザービームを重畳して照射した。2回目の照射において、二つのビームのエネルギー密度は、それぞれ30μJとし、二つのビームのなす角度は24度とした。縦横約1μm間隔の周期をもつ二次元ドット構造が形成されていることが確認できた。ドットの深さは、100nm程度と推定され、ドットの直径の平均寸法は5~40nmであった。すなわち、照射レーザーエネルギーを、30μJ程度に低減する事により、二次元周期構造を有する最小平均寸法5nmの微細構造(二次元周期量子ドット構造)を形成できた。
【0052】
[実施例3]
図1に示した2ビームレーザー干渉露光装置を用いて、シリカガラスに表面レリーフ型ホログラム回折格子を形成した。レーザービームのエネルギー密度は100μJ/パルスで、二つのビームのなす角度は90度とした。該ホログラムを記録した後、基材回転ステージを90度回転して、該シリカガラスを、ビームに対して、90度回転した。
【0053】
さらに、レーザービームが回折格子形成領域を照射する様、基材回転ステージを平行に微動させ、2回目のレーザービームを重畳して照射した。2回目の照射において、二つのビームのエネルギー密度は、それぞれ100μJとし、二つのビームのなす角度は90度とした。図6に、二回の照射ビームの重なった領域の高分解能走査型反射電子顕微鏡写真(a)と該写真の模式図(b)を示す。図6から、縦横約0.6μm間隔の島状の二次元周期構造が形成されていることが確認できた。島は、表面が正方形の直方垂体と推定され、正方形の一辺は、平均寸法50~150nmであった。
【0054】
[実施例4]
図1に示した2ビームレーザー干渉露光装置を用いて、シリカガラスに表面レリーフ型ホログラム回折格子を形成した。レーザービームのエネルギー密度は40μJ/パルスで、二つのビームのなす角度は90度とした。該ホログラムを記録した後、基材回転ステージを90度回転して、該シリカガラス試料を、ビームに対して、90度回転した。
【0055】
さらに、レーザービームが回折格子形成領域を照射する様、基材回転ステージを平衡に微動させ、2回目のレーザービームを重畳して照射した。2回目の照射において、二つのビームのエネルギー密度は、それぞれ40μJとし、二つのビームのなす角度は90度とした。縦横約0.6μm間隔の島状の二次元周期構造が形成されていることが確認できた。島は、表面が正方形の直方垂体と推定され、正方形の一辺は、平均寸法150~250nmであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法に用いるフェムト秒レーザー干渉露光装置のシステム概念図である。
【図2】図2は、多重露光により二次元周期構造を作成する手順を示す概念図である。
【図3】図3は、実施例1により得られた1μmの格子間隔を持つ表面レリーフ型ホログラム回折格子の図面代用AMF写真と距離および溝の深さの関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1により得られた1μmの格子間隔を持つ表面レリーフ型ホログラム回折格子の図面代用高分解能走査型反射電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例2において、二回の照射ビームの重なった領域の図面代用高分解能走査型反射電子顕微鏡写真(a)と該写真の模式図(b)である。
【図6】図6は、実施例4において、二回の照射ビームの重なった領域の図面代用高分解能走査型反射電子顕微鏡写真(a)と該写真の模式図(b)である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5