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明細書 :ドレブリンA発現抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4101467号 (P4101467)
公開番号 特開2002-300884 (P2002-300884A)
登録日 平成20年3月28日(2008.3.28)
発行日 平成20年6月18日(2008.6.18)
公開日 平成14年10月15日(2002.10.15)
発明の名称または考案の名称 ドレブリンA発現抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A61K  31/711       (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A61K 31/711
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
A61K 48/00
A61P 25/00
A61P 43/00 105
C07K 16/18
C12P 21/08
請求項の数または発明の数 8
全頁数 35
出願番号 特願2001-107694 (P2001-107694)
出願日 平成13年4月5日(2001.4.5)
審査請求日 平成17年1月14日(2005.1.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】白尾 智明
【氏名】関野 祐子
【氏名】田中 聡一
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】内藤 伸一
参考文献・文献 Developmental Brain Research (1996), 91(2), 227-36
調査した分野 C12N 15/09
C07K 16/18
C12P 21/08
A61K 31/711
A61K 39/395
A61K 48/00
CA(STN)
BIOSIS(STN)
MEDLINE(STN)
REGISTRY(STN)
WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号6に示される塩基配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号5に示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつドレブリンA発現抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドのリン酸エステル基をチオリン酸エステル基或いはメチルホスホネート基で置換したもの、及び、請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドのリボース部分の水酸基をメトキシ或いはアリロキシからなるアルコキシ基、アミノ基、又はフッ素原子で置換したもの、から選択される請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体。
【請求項4】
請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又は請求項3記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体を担持したベクター。
【請求項5】
配列番号7示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体。
【請求項6】
モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項5記載の抗体。
【請求項7】
請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又は請求項3記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体を有効成分とするドレブリンAの過剰発現・機能亢進に起因する疾病の治療薬。
【請求項8】
請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又は請求項3記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体と薬学的に許容される細胞内導入試薬とからなるドレブリンAの過剰発現・機能亢進に起因する疾病の治療薬。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドレブリンA発現抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドやその誘導体、それらを担持したベクター、ドレブリンAの過剰発現・機能亢進に起因する疾病の治療薬等に関する。
【0002】
【従来の技術】
神経細胞は、他の体細胞には見られない非常に複雑な形状を有し、核をもつ原形質部分である細胞体からは、樹状突起と軸索突起という2種類の突起が伸びている。樹枝状に伸びる樹状突起はスパイン(spine)と呼ばれる無数の棘構造を有し、他の細胞からの情報を受け取る機能をもつシナプス後部を形成している。この神経細胞特異的形態は、神経特異的なアクチン結合タンパクにより決定される。他方、本発明者らは、発生過程の神経細胞に多量発現するアクチン結合タンパクドレブリン(Drebrin)を世界に先駆けて発見し(J. Neurochem. 44, 1210-1216(1985)、J. Biochem. 117, 231-236 (1995))、このドレブリンがアクチンファイバーの性状を変えることにより神経細胞の形態形成、特に突起形成に関わっていること(J. Neurosci. Res. 38: 149-159 (1994) 、Exp. Cell Res. 215:145-153 (1994) 、J. Biol. Chem. 269:29928-29933 (1994))や、発生中で移動している神経細胞では、細胞体と突起全体に存在するが、成熟した神経細胞では棘構造中に特異的に存在すること(J. Neurosci. 15: 7161-7170 (1996)、Dev. Brain Res. 29, 233-244 (1986)、Brain Res. 413, 374-378 (1987))を既に証明している。ドレブリンには、胚性型(embryonic type)のドレブリンEと成体型(adult type)のドレブリンAという2つのアイソフォームが存在しており(J. Biochem. 117, 231-236 (1995))、成熟した神経細胞のスパインに特異的に見られるドレブリンAは、神経細胞にしか発現しないという特徴を有している(Dev. Brain Res. 29, 233-244 (1986)、Brain Res. 413, 374-378 (1987))。ドレブリンAはalternative splicing機構によりドレブリンEに“ins2”と呼ばれる領域が加わった配列をしている。すなわち、5′側から956base~1093baseにgtcgtccgtactgccctttcataaaggcatcggacagtgggccttcctcctcctcctcttcctcctcttcccctccacggactccctttccctatatcacctgccaccgcaccccaaacctctcttcctccctcccat)[配列番号1]が挿入されて発現したものである(Mol. Brain Res. 19, 101-114 (1993)、Neuroreport 3, 109-112 (1992))。
【0003】
また最近、本発明者らは、ドレブリンAを初代培養神経細胞に発現させると自動的に樹状突起スパインに集まり、しかもその長さを長くしたり、ある一つのタンパク合成量を変化させることによってスパインの形態を変化させることができることを報告している(J. Neurosci. 19, 3918-3925 (1999))。その他、ドレブリンの所属するタンパクファミリーに関して、ドレブリンがADF Homology Domainをもったアクチン結合タンパクの一種に分類できる可能性が示唆されている(Mol. Biol. Cell 9, 1951-1959 (1998))。また、ドレブリンのホモローグとしてSH3P7が発見されているが、SH3P7の機能が明らかになりつつある(Mol. Cell. Biol. 19, 1539-1546 (1999) 、Nature Biotech. 14, 741-744 (1996))。
【0004】
その他、神経栄養因子BDNF(Brain-derived neurotrophic factor)を特異ノックアウトするアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製し、外来性のBDNFがスパイン密度をインビボ及びインビトロで増加させるエストラジオールの効果を遮断し、選択的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたBDNFの発現抑制がエストラジオールに似た効果をもたらし、抗BDNF抗体によりスパイン密度が増加するなど、スパイン密度の調節に関与するBDNFの役割が明らかにされている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 11412-11417, 1998)。また、脆弱X症候群(fragile X syndrome)は、X染色体にフラジャイル・サイトが存在するため起こる遺伝性の精神遅滞の原因としては最も頻度の高い病気であり、X染色体上の遺伝子FMR1の発現異常、主に発現欠損により引き起こされ、FMR1の発現異常は脳神経系の形態異常を伴うが、かかる脆弱X症候群などの脳神経疾患の治療法は、現在のところ見つかっていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、脆弱X症候群の治療薬等としての有用性が期待できる、ドレブリンAの発現を特異的に抑制することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、発生過程の神経細胞に多量発現するアクチン結合タンパクドレブリンを世界に先駆けて発見して依頼、ドレブリンに関する研究を包括的かつ多面的に行っている。最近、本発明者らはマウスドレブリンAのゲノミック遺伝子(Dbn1)を世界で初めて単離し、その配列を決定した。配列番号2で示される塩基配列からなるマウスDbn1のエクソン-イントロン構成を図1として示す。第1エクソンが6767番目から始まる全長20674bpのマウスDbn1は、図2に示される染色体地図から、染色体13番のほぼ中央に位置し、近くにインターロイキン-9(Il9)やpaired-like homeodomein transcription factor(Pitx1)が存在することがわかる。
【0007】
マウスドレブリンAのcDNA(アクセッション番号;AF187147)と、配列番号3で示されるラットドレブリンAのcDNAとの一致率は94.07%であり、マウスドレブリンAと、配列番号4で示されるラットドレブリンAとのアミノ酸レベルでの一致率は95.35%であるが、第11エクソンを構成するマウスins2配列はラットins2配列と完全(100%)に一致していた。本発明者らは、ドレブリンEに存在せず、ドレブリンAに特異的に存在し、動物種を超えてその配列がよく保存されているins2領域に注目し、このins2領域に対する4種類のアンチセンス鎖を作製し、神経細胞におけるドレブリンAの発現を特異的に抑制する実験を行ったところ、ラットドレブリンAのcDNAの5′側から980b~1003bにかけたaggcatcggacagtgggccttcct[配列番号5]の領域のアンチセンス鎖である24-merのS-オリゴ(5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′)[配列番号6]がドレブリンAの発現量を顕著に低下させることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、配列番号6に示される塩基配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチド(請求項1)や、配列番号5に示される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつドレブリンA発現抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(請求項2)や、請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドのリン酸エステル基をチオリン酸エステル基或いはメチルホスホネート基で置換したもの、及び、請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドのリボース部分の水酸基をメトキシ或いはアリロキシからなるアルコキシ基、アミノ基、又はフッ素原子で置換したもの、から選択される請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体(請求項3)や、請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又は請求項3記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体を担持したベクター(請求項4)や、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体(請求項5)や、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項5記載の抗体(請求項6)や、請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又は請求項3記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体を有効成分とするドレブリンAの過剰発現・機能亢進に起因する疾病の治療薬(請求項7)や、請求項1又は2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又は請求項3記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体と薬学的に許容される細胞内導入試薬とからなるドレブリンAの過剰発現・機能亢進に起因する疾病の治療薬(請求項8)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、配列番号6に示される塩基配列(5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′)からなるDNAや、配列番号5に示される塩基配列(aggcatcggacagtgggccttcct)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつドレブリンA発現抑制作用を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(アンチセンスDNA又はアンチセンスRNA)であれば特に制限されるものではないが、生体に投与した際の安定性がより高いという理由でアンチセンスDNAの方が好ましい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはドレブリンAの発現を顕著に抑制することができる上に、その選択的ハイブリダイズ特性からしてプローブとしても使用可能であり、他の脊椎動物のcDNAライブラリーから該プローブとハイブリダイズする当該動物におけるドレブリンA遺伝子のホモログ遺伝子であるcDNAを取得することもできる。
【0010】
また、上記ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理や、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC,0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理を挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば、種々の要素を適宜組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。このようにして得られるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、12塩基以上39塩基以下、特に15塩基以上25塩基以下のアンチセンスDNA又はアンチセンスRNAが好ましい。
【0011】
本発明のアンチセンスオリゴヌクオレチドの合成方法としては、特に限定されないが、例えば、DNA合成機(Applied Biosystems Inc.社製「381A」)やDNA/RNA合成機(Applied Biosystems Inc.社製「394」)等の通常の合成機を用いるホスホロアミダイト法、ホスホロチオエート法、ホスホトリエステル法等を挙げることができる。この場合、DNA合成機等に添付されている説明書にしたがって操作を行い、得られた合成産物を逆相クロマトグラフィー等を用いたHPLC法により精製することによって、目的のアンチセンスポリヌクレオチドやその誘導体を得ることができる。
【0012】
また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの安定性や細胞に対する親和性を高めるために、その活性を著しく低下させない範囲で、リン酸エステル基又はリボース部分の水酸基を他の安定な基に置換した誘導体として用いることもできる。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体の具体例としては、リン酸エステル基をチオリン酸エステル基やメチルホスホネート基等で置換したもの、リボース部分の水酸基をメトキシやアリロキシ等のアルコキシ基、アミノ基、またはフッ素原子等で置換したもの等を挙げることができる。
【0013】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドやその誘導体は、神経細胞におけるドレブリンAの発現を抑制するものであるため、神経細胞におけるドレブリンAタンパクの過剰発現および機能亢進が原因の一つと考えられている疾患、例えばフラジャイルX症候群(脆弱X症候群)等を有効に治療することができる可能性が大きい。かかるドレブリンAタンパクの過剰発現および機能亢進が原因の一つと考えられている疾患の治療に際しては、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその誘導体0.01~100μM、好ましくは0.1~10μMを投与することができ、また必要に応じて薬学的に許容される細胞内導入試薬、例えば、リポフェクチン試薬、リポフェクトアミン試薬、DOTAP試薬、Tfx試薬、人工合成脂質ベジクル、リポソーム、膜融合試薬、高分子ミセル化試薬、高分子坦体、またはその他の細胞内導入試薬とともに投与することができる。この場合、発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、単独でも投与可能であるが、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。またかかる治療剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射の型で非経口に局所に投与することができる。例えば、注射剤とする場合には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを水、生理食塩水またはブドウ糖溶液等に溶解させて調製することができ、必要に応じて緩衝剤、保存剤あるいは安定化剤等を含有させてもよい。投与量は、各疾患の症状の度合いや投与方法等に依存して変わりうるが、目安として、静脈内投与では体重当たり1mg/kgから1g/kg、好ましくは5mg/kgから500mg/kgを例示することができる。
【0014】
また、細胞への取り込みの促進や標的とする細胞への指向性を高める目的で、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド配列を発現させるようにデザインされたプラスミドやウイルスベクターを遺伝子治療用のベクターとして用いることもできる。このようなベクターとしては、ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター等のウイルスベクターを好適に挙げることができるが、これらウイルスベクターの中でもHSVベクターが好ましい。HSVベクターは、神経親和性が高く、HSVが細胞の染色体DNAに組み込まれないため安全であり、また、導入遺伝子の発現期間を調節することが可能である。また、ウイルスベクターを用いる場合、リコンビナーゼが認識する逆方向反復配列、例えば大腸菌P1ファージ由来のloxP配列又は酵母サッカロミセス・セレビッシェ由来の野生型FRT配列を利用すると、所望の時期に本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現させることができる。
【0015】
本発明の抗体は、配列番号5に示される塩基配列(aggcatcggacagtgggccttcct)を含む塩基配列(aaggcatcggacagtgggccttcctcc)(ラットドレブリンAのcDNAの5′側から979b~1005b)の翻訳ペプチドであるKASDSGPSS[配列番号7]又はこのペプチドを含む領域を特異的に認識する抗体であれば特に制限されるものではなく、かかる本発明の抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体を具体的に挙げることができ、これらは上記KASDSGPSSを抗原として用いて慣用のプロトコールに従い常法により作製することができるが、その中でもモノクローナル抗体がその特異性の点でより好ましい。かかるモノクローナル抗体等のKASDSGPSSに特異的に結合する抗体は、例えば、ドレブリンAの変異又は欠失に起因する疾病の診断をする上で、また、神経細胞におけるドレブリンAタンパクの過剰発現および機能亢進が原因の一つと考えられている疾患の治療上有用である。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1(神経細胞の培養)
妊娠20日のSprague-Dawleyラットをエーテル麻酔し、断頭後、胎仔を取り出した。大脳皮質を摘出して髄膜を剥がし、パパイン添加CGBD溶液に入れて、37℃恒温槽で15分間放置した。上清を吸引除去し、MEM培地5mlで洗浄し、再度上清を吸引除去した後、MEM培地3mlと馬血清2mlを加えてピペッティングし、神経細胞含有溶液をフィルター濾過してから遠心し、上清を捨て、5%牛血清、5%馬血清を含むMEM培地で攪拌し、直径3.5cmのディッシュ内に3.0×106/2ml(ウェスタンブロット用)、又は2.0×106/2ml(免疫染色用)の濃度で2mlずつそれぞれ注入した。これらディッシュ内の神経細胞をCO2インキュベーター内で37℃で培養した。5日目以降、AraC5μM入りグリアコンディション培地を用い、週に2回、培地を半量ずつ交換して培養を継続した。
【0017】
実施例2(アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与)
培養開始12日目に、以下の4種類のアンチセンスオリゴヌクレオチドを最終濃度が10μMになるように培地内に投与し、その2日後に神経細胞を回収し、免疫染色とウェスタンブロットを行った。
5′-TTATGAAAGGGCAGTACGGACGAC-3′[配列番号8]
5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′[配列番号6]
5′-TATAGGGAAAGGGAGTCCGTGGAG-3′[配列番号9]
5′-GGTTTGGGGTGCGGTGGCAGGTGA-3′[配列番号10]
また、ポジティブコントロールとして、上記アンチセンス鎖の配列を逆向きにした4種類のreversedアンチセンス鎖を用いた。
【0018】
実施例3(ウエスタンブロット分析)
アンチセンス鎖投与2日後における神経細胞内のドレブリンAタンパクの発現量を調べるために、ウエスタンブロット分析を行った。神経細胞の抽出液をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動法により分離し、分離したタンパク質をメンブレンフィルター(MILIPORE社製「Immobilon transfer membranes」)にブロッティングした。このブロッティングした膜を、5%スキムミルクを含むTBSで5倍希釈した坑ドレブリンA抗血清(Exp. Cell Res. 215, 145-153 (1994);坑ドレブリンAポリクローナル抗体)含有溶液中、室温で60分間インキュベーションした。0.05%のツイーン20を含むTBSで洗浄後、5%スキムミルクを含むTBSで希釈したHRP標識化抗ラビットIgG抗体のF(ab′)2フラグメント(カッペル社製)溶液に上記インキュベーションした膜を浸した。抗原特異的HRP反応により生じた化学ルミネッセンスをKodak Scientific Imaging Film(X-OMAT AR, Kodak)とECL detection kit(Amersham Pharmacia Biotech)により視覚化した。その結果、5′側から980base~1003base目にかけた、aggcatcggacagtgggccttcctの領域に対するアンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′投与の場合、アンチセンス鎖未投入のコントロールやreversedアンチセンス鎖投与のポジティブコントロールの場合に比べて、ドレブリンAの発現量を特異的に低下させることに有効であることがわかった(図3)が、他の3種類のアンチセンス鎖では、ドレブリンAの発現が抑制されていなかった。
【0019】
実施例4[免疫染色]
アンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′投与2日後における神経細胞を、3.5%のパラホルムアルデヒドを添加したPBSにより4℃で15分間振盪固定した後、TBS中で室温にて5分間洗浄し、3%のBSAを含むPBS中で室温にて10分間ブロッキングし、坑ドレブリンA抗血清(Exp. Cell Res. 215, 145-153 (1994);坑ドレブリンAポリクローナル抗体)を3%のBSAを含むPBSで希釈して調製した溶液を用いて、室温で60分間反応させた。これら反応させた標本をPBS中で室温にて5分間×3回振盪して洗浄した後、3%のBSAを含むPBSで100倍希釈したFITC標識化抗マウスIgG抗体(カッペル社製)を用いて室温にて30分間染色した。これら染色物を遮光したままPBS中で室温にて5分間×3回振盪して洗浄した後、パーマフロー(シャンドン社製)で封入し、蛍光顕微鏡で観察した。この結果を図4に示す。
【0020】
また、免疫染色による細胞内のドレブリンAの分布をDiI染色による神経細胞形態と比較して調べたところ、正常の発達をしている神経細胞では、樹状突起の棘構造であるスパインに局在するドレブリンAがスパインではなく樹状突起に存在し、未熟な神経細胞と同様な局在を示しており、神経系の発達の遅れが示唆された。さらに、1ニューロン当たり40~63のスパインをカウントし、各ニューロンのスパイン長を測定した。結果を図5に示す。図5から、アンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′投与群(AS)では、コントロールであるアンチセンス鎖未投入群(Cont)やポジティブコントロールであるreversedアンチセンス鎖投与群(RAS)の場合に比べて、スパイン長が統計学上有意に短くなっていた。また、1樹状突起当たりのスパイン密度についても測定した。結果を図6に示す。図6からわかるように、スパイン密度については、アンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′投与群(AS)と、コントロールであるアンチセンス鎖未投入群(Cont)やポジティブコントロールであるreversedアンチセンス鎖投与群(RAS)との間に統計学上有意な差を見い出すことができなかった。
【0021】
【発明の効果】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いると、ドレブリンAタンパク質の発現量が顕著に低下し、またかかるドレブリンAの発現量が低下した神経細胞では、神経細胞において重要な構造である樹状突起の棘構造の長さが短くなることから、神経シナプス機能の調節を行うことが可能となり、精神・神経疾患や神経損傷の治療に応用できる。
【0022】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】マウスドレブリンAのゲノミック遺伝子のエクソン-イントロン構成を示す図である。
【図2】染色体13番におけるマウスドレブリンAのゲノミック遺伝子(Dbn1)の染色体地図を示す図である。
【図3】アンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′を投与した場合のウエスタンブロットの結果を示す図である。
【図4】アンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′を投与した場合の免疫染色の結果を示す図である。
【図5】アンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′を投与した場合のスパイン長の測定結果を示す図である。
【図6】アンチセンス鎖5′-AGGAAGGCCCACTGTCCGATGCCT-3′を投与した場合のスパイン密度の測定結果を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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