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明細書 :酸化物単結晶の製造方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3551242号 (P3551242)
公開番号 特開2000-344595 (P2000-344595A)
登録日 平成16年5月14日(2004.5.14)
発行日 平成16年8月4日(2004.8.4)
公開日 平成12年12月12日(2000.12.12)
発明の名称または考案の名称 酸化物単結晶の製造方法及び装置
国際特許分類 C30B 15/12      
C30B 29/30      
FI C30B 15/12
C30B 29/30 A
C30B 29/30 B
請求項の数または発明の数 13
全頁数 22
出願番号 特願2000-083448 (P2000-083448)
出願日 平成12年3月24日(2000.3.24)
優先権出願番号 1999084999
優先日 平成11年3月26日(1999.3.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成12年7月13日(2000.7.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】599045626
【氏名又は名称】北村 健二
【識別番号】599045637
【氏名又は名称】古川 保典
【識別番号】599045648
【氏名又は名称】竹川 俊二
【識別番号】593131080
【氏名又は名称】木村 茂行
発明者または考案者 【氏名】北村 健二
【氏名】古川 保典
【氏名】竹川 俊二
【氏名】木村 茂行
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開平10-045498(JP,A)
特開平04-300281(JP,A)
特開平09-188593(JP,A)
Yasunori FURUKAWA et al.,Stoichiometric LiTaO3 single crystal growth by double crucible Czochralski method using・・・system,Journal of Crystal Growth,1999年 3月 1日,Vol.197,pp.889-895
K. KITAMURA et al.,Stoichiometric LiNbO3 single crystal growth by double crucible Czochralski method using・・・system,Journal of Crystal Growth,1992年, Vol.116,pp.327-332
Shin-ji KAN et al.,LiNbO3 single crystal growth by the continuous charging Czochralski method with Li/Nb ratio control,Journal of Crystal Growth,1992年, Vol.119,pp.215-220
調査した分野 C30B1/00-35/00
JSTPlus(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
二重るつぼを用いた回転引き上げ式の酸化物単結晶製造方法において、前記二重るつぼは、貴金属からなる外側るつぼと、貴金属からなる内側るつぼとを有し、前記内側るつぼは、前記二重るつぼ内の融液表面をさえぎり、前記融液底部で前記融液が前記外側るつぼと前記内側るつぼとの間を連絡するように形成されており、前記外側るつぼの高さ/前記外側るつぼの直径の比が0.3以上1以下の範囲であり、前記内側るつぼの直径/前記外側るつぼの直径の比が0.55以上0、9以下の範囲であり、前記方法は、
前記内側るつぼ内の前記融液内に配置された種結晶を回転させ、かつ、引き上げながら酸化物単結晶を育成し、
前記育成と同時に、前記育成された酸化物単結晶の重量を測定し、
前記育成と同時に密封容器内に保管されている粉体原料を前記測定された重量と同じ重量だけ前記外側るつぼと前記内側るつぼとの間に給し、一定深さで、成長する結晶組成と一致する一定組成を保った融液とし
前記育成と同時に前記二重るつぼを1rpm以上20rpm以下の速度で回転させることによって結晶成長界面の形状を液面に対して強制的にフラット、若しくは凸になるように融液の対流を制御することを特徴とする酸化物単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記粉体原料の供給は、鉛直角度が76°より大きくなるように育成炉内に設置したセラミックスまたは貴金属からなる供給管を通して、50μm以上500μm以下の範囲の粒径を有する粉体原料を、毎分50cc以上500cc以下の範囲でガスを流しながら行うことを特徴とする請求項1記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記二重るつぼは、前記内側るつぼの高さが前記外側るつぼの高さと比べて同じか、それよりも高くなるように構成されており前記酸化物単結晶の育成終了後の融液冷却過程において前記融液を前記内側るつぼの壁に付着させて固化させることで、前記外側るつぼの変形を最小限に抑えることを特徴とする請求項1または2記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記粉体原料は、高温で粒成長化処理を施した後、前記範囲の粒径となるように分級されていることを特徴とする請求項1乃至3記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記分級された粉体原料は、前記粒成長化処理を施す前に、.5ton/cmより大きな圧力下でプレス成形された化学量論組成原料であることを特徴とする請求項記載の化学量論組成の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項6】
前記分級された粉体原料は、化学量論組成のLiTaOまたはLiNbO
であって、前記粒成長化処理は、Liの蒸発を押さえるために密封された容器内で行うことを特徴とする請求項4または5記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記酸化物単結晶の育成終了後、前記融液から前記酸化物単結晶を切り離す際に前記酸化物単結晶の底面に融液フラックス成分が付着しないように前記酸化物単結晶または前記二重るつぼを前記育成時の回転速度よりも高速に回転させることを特徴とする請求項1乃至6記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項8】
前記酸化物単結晶の育成時に、前記酸化物単結晶の結晶直径を一定で成長させる直胴部の育成後は、徐々に結晶直径を小さくしながら結晶を成長させ、前記直胴部の結晶直径よりも小さな結晶直径で融液からの成長結晶の切離しを行うことを特徴とする請求項1乃至7記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項9】
前記二重るつぼの回転時に、貴金属からなる攪拌治具を用いて前記内側るつぼ内の前記融液の攪拌を行うことを特徴とする請求項1乃至8記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項10】
前記酸化物単結晶の育成終了後、前記融液から引き上げた前記酸化物単結晶を単結晶育成装置内でアニーリングを行うために、前記るつぼとは独立したアフターヒータを設けたことを特徴とする請求項1乃至9記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項11】
前記酸化物単結晶は、直径2インチ以上のLiTaOまたはLiNbOである請求項1乃至10記載の酸化物単結晶の製造方法。
【請求項12】
回転引き上げ式の酸化物単結晶の製造装置であって、
回転可能な二重るつぼであって、前記二重るつぼは、貴金属からなる外側るつぼと貴金属からなる内側るつぼとを有し、前記内側るつぼは、前記二重るつぼ内の融液表面をさえぎり、前記融液底部で前記融液が前記外側るつぼと前記内側るつぼとの間を連絡するように形成されており、前記外側るつぼのさ/前記外側るつぼの直径の比が0.3以上1以下の範囲であり、前記側るつぼ直径/前記外側るつぼ直径の比が0.55以上0、9以下の範囲にあり、前記二重るつぼは1rpm以上20rpm以下の速度で回転する、二重るつぼと、
前記二重るつぼに自動的に粉体原料を供給する粉体原料供給システムであって、
前記粉体原料供給システムは、前記粉体原料を保持するための育成炉体上部に設置した密封容器と、前記粉体原料の減少量を測定する重量測定センサと、前記密封容器へガスを供給するガス供給手段とを有する、粉体原料供給システムと、
前記密封容器から排出された前記原料粉末を前記二重るつぼへ供給する供給管であって、前記供給管は鉛直角度が76°よりも大きくなるように設定されているとともに前記ガスが流れる、供給管と
を備えることを特徴とする酸化物単結晶の製造装置。
【請求項13】
高周波加熱装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の酸化物単結晶の製造装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重るつぼ構造からなる貴金属るつぼを用いた酸化物単結晶の製造方法および装置に関し、特に、回転引き上げ法により高品位で、かつ長尺の結晶を安定に成長させる酸化物単結晶の製造方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大型で良質な単結晶を育成する方法としては、従来からチョクラルスキー法が知られている。このチョクラルスキー法は、一致溶融組成の大型結晶を育成するのに適した単結晶製造方法であり、るつぼの中に充填した融液に種結晶を接触させ、この種結晶を回転させながら上方に引き上げることにより、種結晶の下方に単結晶を育成する方法である。
【0003】
この方法は、現在、酸化物単結晶、半導体単結晶を問わず、工業的に最もよく用いられている方法であるが、より大口径で、かつ長尺の単結晶を低価格で育成しようとする場合、るつぼの容量には制限があるので、単結晶を引き上げながらるつぼ内に原料を供給する連続引き上げ法が考案され、これまで種々の方法が試みられ、その一つに二重るつぼ法と称されるものがある。
【0004】
この方法は、具体的には、通常のるつぼの内側に融液の流通口を開口した内径の小さな、もう一つのるつぼまたは円筒体を設けた構造によって結晶を育成する方法であり、外側のるつぼは原料供給用で、内側のるつぼから単結晶を引き上げて成長させる単結晶の製造方法である(例えば、特開昭57-183392号公報、特開昭47-10355号公報等)。
【0005】
SiやGaAsなどの半導体結晶の育成においては、引き上げる単結晶が所定の直径(直胴部)まで成長したところで、成長量に見合った量の原料を外側るつぼ内に投入する方式が提案され、実用化も検討されているが、これらは、主として半導体単結晶の製造における単結晶の長尺化や材料特性の均質化のためのドーパントの均一添加を目的としている(例えば、特開昭63-95195号公報、特許2729243号公報等)。
【0006】
酸化物単結晶の場合にも、半導体単結晶の場合と同様の二重るつぼを用いた結晶製造方法がこれまでに提案されており、主な目的は、チョクラルスキー法では原理的に育成が困難な、融液組成と育成する結晶が同一でない組成の結晶を育成するためであり、優れた方法として期待され開発されている。
【0007】
例えば、溶液引き上げ法の一種であるTSSG法における問題点であるとされている結晶育成の進行に必要な融液の高さおよび温度の低下に伴う結晶育成条件の変動や低い育成効率を改善するために、原料ぺレットを外るつぼと内るつぼとの間に供給することで、原料融液の組成および温度を一定に保って一定速度で結晶を製造する方法が知られている(例えば、特開平4-270191号公報等)。
【0008】
図2は、原料ペレット10を外るつぼ2と内るつぼ3との間に一定の速度で供給することにより、上昇・下降ヘッド7の結晶引き上げ軸6による引き上げ速度や融液9の降下速度を一定にできることを目的として開発された原料供給型二重るつぼ法を模式的に示した断面図である。この方法では、TSSG法でのいくつかの問題を解決している。二重るつぼ1の外側にはヒータ-4が配置されており、内るつぼ3には孔12が設けられており、外るつぼ2と内るつぼ3との間の原料融液9に供給管5を通して原料ペレット10を落下させながら、種結晶8から単結晶11を育成する方法となっている。
【0009】
また、原料供給は行わないが、融液組成と育成結晶の組成が同じ、いわゆる一致溶融組成の結晶育成中の温度変動の問題を解決するために、高周波誘導加熱により発熱する容器を兼ねる貴金属るつぼを二重構造とすることにより、るつぼの高周波誘導による加熱によってもたらされる融液の温度変動を少なくし、高品質の酸化物単結晶を製造する方法が知られている(例えば、特開平4-74790号公報等)。
【0010】
図3は、その方法を模式的断面図で示したものであり、貴金属製の二重るつぼを用いている。外るつぼ13の中に酸化物の溶融物15が収納されており、この外るつぼ13の中には、この外るつぼ13の内径よりも小さい径の円筒14が配置されているが、これは融液の温度安定を目的としたものであって、長尺結晶を育成するための原料供給手段は配置されていない。また、できるだけ長尺の結晶を育成するように、外るつぼ13の形状は、高さは直径とほぼ同じか、それより高いものを使用している。
【0011】
また、通常のチョクラルスキー法では育成ができないLiO /(Nb+LiO)のモル分率が0.50である化学量論組成のLiNbO単結晶を育成するために、予め内側のるつぼ内にLiO /(Nb+LiO)のモル分率が0.58~0.60のLi成分過剰な組成の融液を準備し、ここから化学量論組成の結晶を析出させ、それと同時に析出した組成と同じ化学量論組成に調製した原料粉末を連続的に供給する装置を備えた二重るつぼ単結晶製造方法が開発され、結晶全体にわたり均質な組成で化学量論組成に近い組成のLiNbO単結晶が育成されている(例えば、K. Kitamura et al.,Journal of Crystal Growth,第116巻,1992年発行,第327~332項,または応用物理,第65巻,第9号,1996年発行,第931~935項)。
【0012】
図4および図5は、その方法を模式的断面図で示したもので、結晶重量を検知するロードセル(図4の52、図5の27)によって育成重量の単位時間当たりの変化量を測定し、これに見合った量の原料粉末を外るつぼ(図4の56、図5の19)と内るつぼ(図4の55、図5の20)との間に、鉛直角度が65~76゜となるよう設置した原料供給管(図4の53、図5の22)を通して供給している。いずれの図の装置も、原料供給は自動で行い、原料保管容器内に設置した供給用原料の供給量を、図4ではピエゾ振動子54で制御しており、図5ではスクリューで制御する方式となっている。
【0013】
また、ここで育成する結晶の大きさは約1~l.5インチ直径で、育成に用いる内るつぼと外るつぼの形状は,内るつぼ直径/外るつぼ直径の比が0.5としたものを用いている。また、図4では、るつぼの回転は行わないが、図5では、供給原料と融液の均質化を目的として、約0.1~0.3rpmの低速で結晶の回転と反対方向に非常にゆっくりとしたるつぼの回転を行いながら結晶育成を行っている。
【0014】
また、化学量論組成のLiTaOまたはLiNbO単結晶を二重るつぼ法を用いて育成する際に、供給用粉体原料は、予め1ton/cmの静水圧でラバープレス成形し、1050℃で焼結された化学量論組成原料を用いることが知られている(例えば、特許第2931960号、特開平11-35393号公報等)。
【0015】
また、貴金属るつぼを用いて酸化物単結晶を育成する際に、貴金属るつぼ自体またはるつぼの上部に連続して設置した貴金属円筒等をアフターヒータとして使用することで、冷却中の結晶の熱歪みによるクラックの発生を防ぐ方法がとられている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従来から知られている上記の酸化物単結晶製造方法において、半導体単結晶製造方法の場合と大きく異なる点は、結晶育成のために融液と反応しない貴金属るつぼを使用するということと、結晶の単位時間当たりの成長量が小さいので外るつぼに自動的に供給する原料重量のより精密な制御が必要とされるということである。
【0017】
そのため、貴金属るつぼは変形しやすく、かつ非常に高価であるために、できる限り小型のるつぼを用いて大形で長尺の結晶を育成する技術や、るつぼの耐使用回数を増やすための育成技術の開発が工業的な面で解決すべき大きな課題の一つとされている。
【0018】
従来の技術でも示したように、図3に示した方法のように原料の供給を行わないで結晶を育成する場合には、結晶の長尺化には限界がある。あえて長尺の結晶を育成しようとするならば、予め、大口径のるつぼを準備し、大量の原料を融解しておく必要があるが、予め投入した原料重量以上の結晶の長尺化は不可能であるし、貴金属製のるつぼは非常に高価であるため、結晶はかえってコスト高になり長尺化による低価格化のメリットは相殺されてしまうという問題があった。
【0019】
また、この場合、育成の進行に伴い融液面の高さが低下し、熱的な育成環境が徐々に変化するため、結晶成長界面が変化し、好ましくない結晶欠陥が導入されたり、結晶がねじれたりするという品質劣化の問題があった。このような問題は成長結晶重量に応じた原料供給を行わない場合には、たとえ、貴金属るつぼを二重構造としても解決できない問題であった。
【0020】
そこで、図4や図5に示したような、原料供給を伴う二重るつぼ法が上記の問題を解決する方法として開発されたが、ここでもいくつかの問題が見られた。例えば、るつぼを二重るつぼ構造にすることで、内るつぼ内の融液の温度変動を小さくできるため、得られる単結晶に見られる成長縞等の欠陥が低減できるという有利性がある反面、内るつぼ内の融液の径方向の温度勾配が極端に緩くなり、結晶育成界面の形状が従来の一つのるつぼを用いた場合と大きく異なり、良質な結晶を育成するために重要な結晶成長界面や結晶径の制御が難しくなるという問題も新たに生じていた。
【0021】
図5には、結晶成長界面が融液に対して凸で、結晶径制御が良好な例を示しているものの、成長界面は、育成する結晶のサイズと内るつぼのサイズの相対関係、結晶の熱伝導率、あるいはドーパントの有無などにも密接に関係するため、内るつぼ内の融液の径方向の温度勾配が極端に緩くなった場合には、結晶成長界面を融液に対して平坦か、もしくは凸になるようにその形状を制御するための何らかの工夫が必要である。しかし、従来の、融液の均質化を目的としたるつぼの回転を行っても、結晶の回転と反対方向への約0.1~0.3ppmの非常にゆっくりとした低速回転では成長界面を強制的に制御できる効果は見られなかった。
【0022】
また、これまで知られている図2および図3に示したような、二重るつぼを用いた単結晶製造方法に関する実施例の場合には、外るつぼの形状は、その直径がるつぼの高さとほぼ同じものを用い、この中に外るつぼより直径および高さの小さな形状の内るつぼとよばれる孔の開いたるつぼまたは円筒体を設置している。
【0023】
一般に、るつぼの直径に対して育成可能な良質結晶の直径の比率は約1/2程度が最適であることが知られていることから、同じ直径の結晶を育成するために必要なるつぼのサイズを単純に比較すると、一つのるつぼしか使わない場合に比べて二重るつぼを使用する場合には高価な貴金属の使用量がかえって増えることになる。さらに、加熱方式や二重るつぼの形状によっては、結晶育成後における貴金属るつぼの変形が著しいため、数回~数十回の使用毎に高価な貴金属るつぼの改鋳が必要とされることになる。したがって、よりサイズの大きな二重るつぼを用いた場合には、貴金属が原料に比べて遥かに高価であるため単結晶は逆にコスト高になってしまうという問題があった。
【0024】
さらに、従来から報告されている二重るつぼを用いた単結晶製造方法における原料の供給方法に関してもいくつかの問題点があった。図2に示したぺレット状の原料を供給する場合には、ぺレットの重量は粉末重量に比べて大きい。このため、供給管を通しての原料の供給、すなわち原料の落下は比較的スムースに行われ、供給管の途中で詰まるという問題はないものの、連続的な粉末状原料の供給に比べると断続的になるため、原料供給に伴う温度変動が大きいという問題がある。
【0025】
一方、図4と図5に示した方法で粉末原料を供給する場合には、原料供給に伴う断続的な温度変動の問題は少ないが、粉末の大きさや粒成長化状態によっては、供給の途中で原料が供給管に付着しやすくなるため原料が詰まりやすいという問題があった。供給管は育成炉内に設置され、しかも透明ではないので管内部での原料の詰まりは育成中の観察は困難であるために、育成後まで気がつかないといった問題もあった。
【0026】
さらには、一般的に、融液からの引き上げによる結晶育成が難しい結晶ほど、成長速度を遅く、結晶直径を小さくすることが必要とされ、このような単位時間当たりの結晶成長量が小さい場合には、それに見合った粒径の小さな粉末供給原料を少量で供給しなければならないが、このような場合には、粉末原料はるつぼ内に落下せずに、逆に上方に舞い上がってしまうという問題もあった。また、図2、図3および図4に示したように、るつぼの回転を行わない場合には、供給した原料が常に外るつぼと内るつぼのある一定の場所に供給された場合に、そこから結晶が析出したり、また、原料の溶解と均質化が十分に行われないため、育成結晶の品質不均一性をひき起こすという問題があった。
【0027】
また、このように融液内の温度勾配が緩く対流による融液の均質化が不十分であるような場合やフラックスを用いる融液成長で融液粘性が大きい場合には、融液内に撹拌治具を挿入するアイデアも知られている。
【0028】
回転引き上げ式の単結晶製造方法において、育成中に常に、るつぼと育成結晶の隙間に十分なスペースを確保して治具を挿入し撹拌することは困難であるため、通常は育成開始前に治具を融液内に挿入して強制的に回転させて融液を均質化することが行われている。撹拌治具を挿入する隙間は確保するために結晶直径よりもより大きな貴金属るつぼを使用すると高価な貴金属を大量に使用しなければならないという問題が生じる。
【0029】
このような問題は、従来の回転引き上げ式の単結晶製造方法において、るつぼの回転ができない装置の構造になっている場合に特に大きな問題となる。その理由は、単に治具を挿入するだけでは撹拌の効果は得られず、治具を強制的に回転させるための機構が新たに必要となるからである。
【0030】
また、貴金属二重るつぼを用いた回転引き上げ式の単結晶製造方法を用いて、育成結晶と異なる組成の融液から化学量論組成のLiTaOまたはLiNbO単結晶を育成する場合には、結晶成長後の融液からの成長結晶の切り離しに際して、結晶の底面に融液フラックス成分が付着しやすい。結晶とは異なる組成を持つ成分が付着すると冷却中に結晶に歪みをもたらすために、冷却中に結晶中に機械的な双晶が入りやすいという問題があった。
【0031】
このような双晶は、育成する結晶の直径が大きくなる程発生しやすく、いったん結晶内に導入されるとこれを除去するのは困難であった。機械的な双晶は、結晶下部の切り離し近傍付近から特定の結晶方位に伝搬し、これが結晶の上部まで到達する場合も見られた。双晶部分は他の部分と方位がずれた結晶であり、双晶が入った部分からは均質な単結晶基板を作成することができないため単結晶基板の製造歩留まりを著しく劣化させるという問題があった。
【0032】
さらに、従来から報告されている貴金属るつぼを用いた酸化物単結晶の育成において、冷却中の結晶のクラックの発生を防ぐために、貴金属るつぼ自体またはるつぼの上部に連続して設置した貴金属円筒等をアフターヒータとして使用する場合には、融液表面近傍の温度分布が結晶成長に伴い徐々に変化するため、一定の温度環境で結晶成長をすることは困難である。
【0033】
このため、育成途中で結晶が捻れが発生したりするため長尺の単結晶を高い歩留まりで製造することが出来なかった。特に、現在でも大量に生産されている一致溶融組成のLiTaO単結晶の製造において、多結晶化やクラックを発生させることなしに高品質の単結晶を育成するためには、アフターヒータを用いて予め緩い融液表面の温度勾配の環境のもとで単結晶育成を開始することが重要である。
【0034】
このため、育成途中で融液温度勾配はさらに緩くなり育成途中で温度環境が大きく変化してしまうため100mm程度の長さの結晶を成長したところで結晶育成を中断しなければならず、長尺の単結晶を安定に高い歩留まりで製造することが出来ないという問題が残されていた。
【0035】
【課題を解決するための手段】
これまで酸化物単結晶の育成において用いられてきた二重るつぼを用いた単結晶の製造方法は、原理的には、従来のチョクラルスキー法の問題を解決できるいくつかの利点を備えているにもかかわらず、成長結晶の重量に見合った重量の原料の供給手段を備えていないものであったり、あるいは、たとえ原料供給手段が備えてあっても、高品質で、かつ安定に低コストで酸化物単結晶を工業的に製造するまでの方法には至っていなかった。
【0036】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、鋭意研究の結果、二重るつぼ構成からなる貴金属るつぼを用いた回転引き上げ式の酸化物単結晶の製造方法において、原料供給管の設置方法や原料の供給方法、原料粉体の調製方法、二重るつぼの形状や内るつぼと外るつぼとの相対関係、るつぼの回転などを詳細に制御することにより、従来困難であるとされていた一致溶融組成や、それにかぎらない不定比組成の結晶に関して、高品質で、かつ大口径で長尺の結晶育成を安定なものとし、しかも低コストでの結晶育成が可能となることを初めて見い出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0037】
すなわち、本発明は、上記の課題を解決するものとして、貴金属るつぼを用いた回転引き上げ式の単結晶製造方法において、貴金属からなる外側るつぼ(以下「外るつぼ」という)内に、るつぼ内の融液表面をさえぎり、融液底部で融液が連絡するようにした円筒状の内側るつぼ(以下「内るつぼ」という)を配置した二重るつぼを用い、育成中の結晶の重量を直接計測しながら単結晶を前記内るつぼの中から引き上げ育成し、これと同時に密封容器内にガスを供給し、前記密封容器内に保管した粉体原料を結晶の成長重量と同じ重量だけ前記外るつぼと内るつぼとの間に供給管を通して供給し、前記二重るつぼを回転させながら結晶を育成することを特徴とする酸化物単結晶の製造方法を提供するものである。
【0038】
前記粉体原料の供給は、鉛直角度が76゜より大きくなるよう設置したセラミックスもしくは貴金属からなる供給管を通して原料保管用密封容器から二重るつぼ内へ行い、密封容器から供給管を通して毎分50cc以上500cc以下の範囲でガスを流すことで、予め高温で粒成長化処理を施し、粗粒化した粉体で、大きさが50ミクロン以上のサイズの範囲で分級された粉体原料を用いて、詰まりのないスムースな原料供給を行うことができる。原料のスムースな供給は、原料供給管の微妙な調節角度に影響を受けやすいため、鉛直角度を76°より小さくした場合には本発明のように密閉容器にガスを供給した場合でも原料供給がスムースに行かないという欠点がある。
【0039】
前記二重るつぼは、内るつぼの高さが外るつぼと比べて同じか、それよりも高くなるように配置し、結晶引き上げ終了後の融液冷却過程において前記融液を内るつぼの壁に付着させて固化させることで、貴金属からなる外るつぼの変形を最小限に抑えることができる。
【0040】
前記二重るつぼの回転は、供給した粉体原料と融液との均質化と同時に強制的に結晶成長界面の形状を制御するよう1rpm以上20rpm以下の範囲で行うことが好ましい。
【0041】
また、前記酸化物単結晶の製造方法においては、前記粗粒化された供給用粉体原料は、高温で粒成長化する前に、予め1.5 ton/cmより大きな圧力下でプレス成形された化学量論組成原料であることが好ましい。
【0042】
また、前記粗粒化された供給用粉体原料は化学量論組成のLiTaOまたはLiNbOであって、Liの蒸発を押さえるために密封された容器内において高温下で粒成長処理をされたものであることが好ましい。
【0043】
また、前記貴金属二重るつぼを用いた回転引き上げ式による化学量論組成のLiTaOまたはLiNbO単結晶の製造方法においては、結晶成長後の融液からの成長結晶の切り離しに際して、結晶の底面に融液フラックス成分が付着しないように結晶またはるつぼを育成時よりも高速に回転させることが好ましい。
【0044】
また、前記貴金属二重るつぼを用いた回転引き上げ式による化学量論組成のLiTaOまたはLiNbO単結晶の製造方法においては、双晶発生による単結晶基板製造の歩留まり低下を防ぐために、結晶直径を一定で成長させる結晶直胴部の育成後は、徐々に結晶直径を小さくしながら結晶を成長させ、直胴部よりも小さな結晶直径で融液からの成長結晶の切り離しを行うことが好ましい。
【0045】
また、前記貴金属二重るつぼを用いた回転引き上げ式の単結晶製造方法においては、貴金属からなる撹拌治具を用いて内るつぼ内の融液の撹拌を行うことが好ましい。
【0046】
また、前記貴金属二重るつぼを用いた回転引き上げ式による酸化物単結晶の製造方法においては、融液から引き上げた単結晶を単結晶育成装置内でアニーリングを行うために、内るつぼとは独立したアフターヒータを設けることが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法は、特に、直径2インチ以上のLiTaOまたはLiNbOの酸化物単結晶の製造に適する。
【0048】
さらに、本発明は、粉体原料の連続供給を伴う貴金属るつぼを用いた回転引き上げ式の単結晶製造装置において、貴金属からなる外るつぼと、外るつぼ内の融液表面をさえぎり、融液底部で融液が連絡するようにした筒状の貴金属からなる内るつぼは、外るつぼの形状が、高さ/直径の比が0.3以上1以下の範囲であり、前記内るつぼと外るつぼの形状が、内るつぼ直径/外るつぼ直径の比が0.55以上0、9以下の範囲にあることを特徴とする酸化物単結晶の製造装置を提供する。
【0049】
さらに、本発明は、密封容器に付設した重量測定センサと密封容器へのガス供給手段を有する粉体原料供給システムを備えた上記の酸化物単結晶の製造装置を提供する。
【0050】
また、本発明の酸化物単結晶の製造装置は、原料加熱手段として高周波加熱装置を用いることが好ましい。
【0051】
本発明によって、これまで問題があった、供給する原料の状態や形状、円滑な原料供給方法、あるいは、るつぼの形状や回転方法を大幅に改善し、供給した原料と融液との均質化や育成界面を最適化することによって、従来、課題とされていた育成される結晶の高品質化や大口径化、長尺化、低コスト化を達成できた。
【0052】
【発明の実施の形態】
定比組成LN結晶を育成する二重るつぼ法の原理について、図6を用いて簡単に説明する。図6は、LNの相図を示す。相図に見られるように、LN単結晶の一致溶融組成は、LiO/(Nb+LiO)のモル分率が0.485であるため、一致溶融組成の融液から通常の引き上げ法で得られるLN単結晶は、Nb成分過剰となるが、融液の組成を著しくLi成分過剰(例えばLiO/(Nb+LiO)のモル分率が0.56~0.60)にした融液から結晶を育成すると、化学量論組成に近い(LiO/(Nb+LiO)のモル分率が0.50)、すなわち不定比欠陥濃度を極力抑えた単結晶を得ることができる。
【0053】
しかし、成長する結晶組成と融液組成とが異なると、通常の引き上げ法では育成が進むにつれ、融液と結晶の組成がより離れるため結晶育成は困難となる。そこで、不定比欠陥の密度や構造を精密に制御するために、図1に示した本発明の二重るつぼ法による単結晶育成装置が必要となる。
【0054】
本発明は、回転引き上げ式の単結晶製造方法において、貴金属からなる二重るつぼを用い、育成中の結晶重量を天秤またはロードセルにより直接計測しながら、単結晶を前記るつぼの中から引き上げ育成し、育成炉体上部に設置した重量測定センサを兼ね備えた密封容器内にガスを供給し、前記密封容器内に保管した粉体原料を結晶の成長量と同じ量だけ外るつぼと内るつぼとの間に供給管から連続的に供給する。
【0055】
粉体原料を入れた容器と粉体原料の排出用のスクリュー装置は、密封容器内に設置した重量測定センサ、例えば天秤の上に設置することにより粉体原料の減少量を測定できるようにし、コンピュータ制御される原料供給システムにより結晶の成長量と同じ量だけの粉体原料の供給を行うことができる。
【0056】
粉体原料は、炉体上部に設置した原料保管用の密封容器からスクリュー方式で排出され、鉛直角度が76゜より大きくなるように設置したセラミックスまたは貴金属からなる供給管を通して行う。密封容器に毎分50~500ccの範囲でガスを流入することで、供給管にガスが流れ、これまで解決すべき課題とされていた供給管内の粉体原料の詰まりのない連続的で円滑な原料供給を行うことがはじめて可能となった。なお、密封容器は、著しく漏れが大きくない限り必ずしも完全密封でなくてもよい。また、ガスとしては、育成雰囲気と同じ雰囲気のガスが好ましく、イリジウムるつぼの場合は、不活性ガスとして純窒素ガスが好ましく、白金るつぼの場合は、酸素と窒素の混合ガスが好ましい。
【0057】
原料粉体は、予め高温で粒成長化処理を施し、粗粒化した粉体の大きさが50ミクロン以上、好ましくは500ミクロン以下のサイズの範囲で分級することで、制御性がよく、より円滑な原料供給を行うことが実現できた。
【0058】
また、目的とする所定の口径の結晶育成には、結晶直径よりも口径の大きなるつぼが必要なことは勿論であるが、従来は、貴金属からなる外るつぼとして高さと直径がほとんど同じ形状ものを使用していたが、本発明では、貴金属外るつぼの形状が、高さ/直径の比が1より小さく0.3より大きい範囲にあっても高品質な結晶育成が可能となった。この二重るつぼは、るつぼ内に充填して溶解された融液は、外るつぼ内に設置した内るつぼによってその融液表面がさえぎられており、外るつぼの融液は上部からは内るつぼ内へは流れず、内るつぼの下部壁面に設けられた孔によって内るつぼと外るつぼの融液が連絡する構造となっている。
【0059】
さらに、内るつぼと外るつぼの形状は、従来のように、内るつぼ/外るつぼの直径比が0.5である必要はなく、むしろ、内るつぼ直径/外るつぼ直径の比を0.55以上0.9以下の範囲にすることで、高価な貴金属の使用量を少なく抑えて、かつ大口径で長尺、かつ低コストの酸化物単結晶を製造することが実現できた。ここで、貴金属からなる外るつぼの形状が、高さ/直径の比は0.5から0.7の範囲にあると融液の均質化や育成の安定化の面でより好ましく、さらに、内るつぼ直径/外るつぼ直径の比は一定である必要はなく、育成する結晶の直径に応じて0.55から0.9の範囲で変えるのが良く、育成する結晶径が大きくなればなるほど、内るつぼ/外るつぼの直径比は0.9に近付けるのが好ましい。
【0060】
この理由は、原料供給に必要な外るつぼと内るつぼとの間隔の大きさは、原料供給管が安定に設置でき、かつ原料がスムースに落下できるだけのある一定のスペースがあればよいからであって、育成する結晶径が大きくなるに従って、内るつぼ直径/外るつぼ直径の比を変えてやり、0.9に近付けることで、小さな外径の外るつぼでも大口径の結晶育成が可能となるからである。
【0061】
さらに、従来から用いられてきた二重るつぼでは、図2および図3に示したように、貴金属るつぼは、内るつぼの高さは外るつぼの高さよりも低い配置のものが用いられていたが、このような場合には、るつぼに近い供給管の下部が発熱部であるるつぼによって局所的に過熱されることで、供給原料粉末が供給管に付着して詰まる原因となったり、あるいは、結晶成長後の結晶冷却過程の融液の固化により、特に外るつぼが応力を受けて大きく変形してしまうため、るつぼを数十回の育成に使用することが困難であるという問題も見られた。
【0062】
これに対して、本発明は、内るつぼの高さが外るつぼと比べて同じか、それよりも高くなるように配置することで、高周波誘導加熱による内るつぼ上部の加熱温度を外るつぼより低温とし、結晶引き上げ終了後の融液冷却過程において前記融液が内るつぼの壁に付着して固化することで、貴金属外るつぼの変形を最小限に抑えることができることが明らかになり、高価な貴金属を使用する酸化物単結晶の製造において低コスト化に大きな改善が見られた。
【0063】
さらに、貴金属二重るつぼを回転させることによって、供給した粉体原料の融液との均質化と同時に、結晶成長界面の形状を液面に対して強制的にフラット、もしくは凸になるよう融液の対流を制御することにより、従来から知られている二重るつぼ法による酸化物の単結晶製造方法で育成される結晶よりも欠陥の少ない高品質の結晶を、大口径でかつ長尺で低コストで製造することを実現したものである。
【0064】
すなわち、結晶成長界面を融液に対して平坦、もしくは凸にすることが欠陥の少ない良質な結晶育成に重要であることは知られているが、二重るつぼ構造とすると、内るつぼ内の融液の径方向の温度勾配が極端に緩くなった場合に成長界面が凹になりやすいという問題があるが、るつぼの回転を行うことで成長界面を強制的に凸に制御することが可能であることを見い出した。
【0065】
成長界面は育成する結晶のサイズと内るつぼのサイズの相対関係、結晶の熱伝導率、ドーパントの有無などにも密接に関係するため、材料や育成条件によってるつぼの回転は最適化を図ることが必要である。なお、ここでのるつぼを回転させることの目的は、供給した粉体原料の融液との均質化は勿論であるが、成長界面を積極的に平坦、もしくは凸になるよう制御するという目的においては、るつぼの回転は結晶方向と同じでも、あるいは反対方向であっても、どちらでもその効果がある。
【0066】
均質化だけを目的とするならば、従来の公知例のように、結晶の回転と反対方向へ約0.1~0.3rpmで非常にゆっくりと低速回転させてやればよい。結晶とるつぼを同じ方向に同じ回転数で回転した場合には、相対的な回転数はゼロとなるので、るつぼも結晶もどちらも回転しない場合と相対的回転数は同じように見えるものの、るつぼを回転した場合にのみ融液の対流を制御する効果が得られることが確認された。
【0067】
なお、LN単結晶およびLT単結晶を育成する場合において、るつぼの回転は左右どちらの方向への回転でも良く、10rpm以上の高速で回転させてもよいが、その場合には、結晶とるつぼ、および回転軸との中心軸を高精度で合わせてやることが大切である。一般的には、るつぼの回転数はl~20rpmが好ましい。また、るつぼの回転を周期的に反転させても対流を誘起する効果は見られたが、成長界面を安定に制御する目的においては一定方向に回転させるのが望ましい。
【0068】
貴金属からなる二重るつぼを用いて高品質な酸化物単結晶を育成することは従来からいくつかのアイデアがあり、育成方法についても検討されてきた。さらに最近では原料を連続に供給する装置を備えた二重るつぼを用いた回転引き上げ法について育成条件の検討が詳細に行われてきた。しかしながら、工業的な意味で結晶を低コストで安定に供給するための製造方法の実用化検討は不十分であった。
【0069】
本発明は、原料を連続に供給する装置を備えた二重るつぼを用いた回転引き上げ法において、育成中に連続的にるつぼ内に供給する粉体原料の調製方法、結晶成長後の融液からの成長結晶の切り離し方法、るつぼ内の融液の均質化の為の撹拌方法、および、融液から引き上げた単結晶のアニーリング方法について、詳細な検討を行いより高度な単結晶製造方法を実現し、結晶組成均質性、結晶完全性に優れたクラックのない酸化物単結晶を安定に低コストで製造することができる
【0070】
【実施例】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0071】
(実施例1)
市販の高純度LiCO、Nb(それぞれ純度99.99%)の原料粉末を準備し、Li成分過剰原料としてLiCO:Nbの比が0.56~0.60:0.44~0.40の割合で混合した。また、化学量論比組成原料としてLiCO:Nb=0.50:0.50の割合で混合した。次に、1.5ton/cmの静水圧でラバープレス成形し、それぞれを約1050℃の大気中で焼結し、原料を作成した。連続供給用粉末原料として混合済みの化学量論比組成原料は、さらに約1150℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロン以下のサイズの範囲で分級した。
【0072】
次に、得られたLi成分過剰原料を内るつぼおよび外側るつぼに予め充填し、次に、るつぼを加熱してLi成分過剰な融液を作成した。この実施例の二重るつぼの構造は、回転引上げ炉体47内に設置した外るつぼ35の内部に外るつぼ35より高さが7.5mm高い円筒(内るつぼと呼ぶ)36を設置した構造となっており、内るつぼ36の底に外るつぼ35から内るつぼ36に通じる孔を設けた。この孔は、約20mm×30mmの大きさで、内るつぼ36の中心軸に対称の位置に3か所設けてある。この実施例では、内るつぼ36および外るつぼ35として白金製るつぼを用いた。
【0073】
用いた二重るつぼの形状は、外るつぼ35の高さ/直径の比を0.45としており、内るつぼ/外るつぼの直径比は0.8とした。その大きさは、外るつぼ35が直径150mm、高さ67.5mm、内るつぼ36が直径120mm、高さ75mmとした。内るつぼ36と外るつぼ35との間は、片側約15mmのスペースがあり、ここに原料がスムースに落下できるよう原料供給管37を安定に設置した。
【0074】
るつぼを高周波発信コイル43により加熱して融液41表面の様子をビデオカメラで観察した。るつぼを回転しないと融液41表面の対流はほとんど見られないが、るつぼ回転機構50によってるつぼの回転数を徐々に上げて行くと強制的な融液41の対流が強くなる様子が見られ、るつぼの回転の効果が確認された。
【0075】
次いで、LiO/(Nb+LiO)のモル分率が0.59のLi成分過剰の融液41から結晶を成長させた。融液41の温度を所定の温度に安定化した後、Z軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ70mmの単一分域状態にあるLN単結晶を種結晶40として結晶引上げ軸38に取り付けて融液41につけ、融液41の温度を制御しながら種結晶40を回転させて上方向に上昇・下降ヘッド39によって引き上げることで単結晶を成長させた。育成雰囲気は大気中とした。結晶の回転速度は2rpmで一定とし、引き上げ速度は3.0~0.5mm/hの範囲で変化させた。
【0076】
育成結晶42から2インチ径のウエハが作成できるよう結晶の直胴部の直径は約60mmになるように種付け直後から直径制御システム48を用いて自動直径制御を行った。育成結晶42の成長重量を重量センサー44としてロードセルを用いることにより測定し、結晶化した成長量に見合った量のLiO/(Nb+LiO)のモル分率が0.50の化学量論組成比の原料粉末45を外るつぼ35に供給管37を通して原料供給システム49を用いて自動的に供給した。ここでは、結晶の成長量変化がコンピュータにより求められているので、これと同量の原料の供給は、結晶が直胴部になる前(種付け後、直径制御が安定化した時点)から開始した。従って、このときの原料の供給速度は約60~2500mg/分の間で制御した。
【0077】
原料の供給は、回転引上げ炉体47の上部に設置した重量測定センサを兼ね備えた密封容器46内に保管した粉体原料45をセラミックスまたは貴金属からなる供給管37を通して行った。供給管37は鉛直角度が76゜より大きくなるよう設置した。供給管37および密封容器46に毎分50~500ccの範囲でガスを流入した。ガスの流量は供給する原料の単位時間当たりの量(約60~2500mg/分)と粒径(50~500ミクロン)によって毎分50~500ccの範囲で最適化した。2インチ径のLN単結晶の育成の場合には、粉体原料45の粒径が80~100ミクロンの範囲でできるだけ一定になるよう選定したものを使用し、ガスの流量を200cc/分とすることで、原料粉体の飛散や供給管37内での詰まりのない円滑な原料供給を行うことが実現できた。
【0078】
この方法により、るつぼ内への連続的なスムースな原料供給ができ、常に一定深さで一定組成を保った融液41から結晶を育成できるため、均質組成で直径が2インチ以上の大型単結晶育成が容易となった。
【0079】
また、育成中、貴金属二重るつぼを回転させることで、供給した粉体原料45と融液41との均質化と同時に、結晶成長界面を融液面に対して強制的にフラットまたは凸になるよう融液41の対流を制御した。特に、2インチ以上の直径の結晶を育成する場合、二重るつぼ構造とすると、内るつぼ内の融液の径方向の温度勾配が極端に緩くなった場合に成長界面が凹になりやすいが、るつぼを約2~4rpmで回転させることで成長界面形状を平坦に、るつぼを約7~8rpmで回転させることで凸にすることが可能となった。
【0080】
2インチ径の良質なLN単結晶を育成する場合において、二重るつぼ全体をアルミナセラミックス耐火物の内部に設置し、これら全体を回転可能な台の上に設置し回転させた。るつぼの回転は結晶の回転方向と同じであっても、あるいは反対方向であっても融液41の対流の効果は見られ、良質な結晶を長尺で、安定に引き上げることができた。約1.5週間の育成により、直径60mm、長さ110mmで、クラックのない無色透明のLN結晶体を得た。得られたアズグロウン結晶を種々の方位に切断し、内部の分域状態を観察したところ、結晶の表面近傍のごく一部を除いて内部は均一に単一分域状態になっていることが認められた。
【0081】
さらに、内るつぼ36の高さが外るつぼ35と比べて同じか、それよりも高くなるように配置した場合、内るつぼ36上部の加熱温度が外るつぼ35に比べてより低温となり、結晶引き上げ終了後の融液41の冷却過程において、融液41の殆どが内るつぼ36の壁に固化するため、貴金属からなる外るつぼ35の壁は固化物からフリーの状態になり、これによって応力を受けてるつぼが変形するのが最小限に抑えられた。
【0082】
10回の連続育成後に、るつぼをアルミナセラミックス耐火物内から取り出し、外観を検査したところ、形状は新品の状況から殆ど変形しておらず、30回の連続育成後もほとんど外るつぼ35の変形がないことを確認した。これによって、同一るつぼの繰り返し使用回数を大きくし、高価な貴金属を使用する酸化物単結晶の製造における低コスト化に大きな改善が見られた。
【0083】
(実施例2)
市販の高純度LiCO、Ta(それぞれ純度99.99%)の原料粉末を準備し、Li成分過剰原料としてLiCO:Taの比が0.56~0.60:0.44~0.40の割合で混合し、また、化学量論組成原料としてLiCO:Ta=0.50:0.50の割合で混合した。次に、1.5ton/cmの静水圧でラバープレス成形し、それぞれを約1050℃の大気中で粒成長化し、原料棒を作成した。連続供給用粉末原料として混合済みの化学量論組成原料は、さらに約1350℃の大気中で粒成長化し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロン以下のサイズの範囲で分級した。
【0084】
次に、得られたLi成分過剰原料を内るつぼおよび外るつぼに予め充填し、るつぼを加熱してLi成分過剰な融液を作成した。ここで、化学量論組成LT結晶を育成する場合に必要とされる詳細な相図は明らかにされていないが、LN結晶とほぼ類似の相図を示すと想定し、融液の組成を著しくLi成分過剰(例えば、Li/(Ta+LiO)のモル分率が0.56~0.60)にした融液から結晶を育成すると、化学量論組成に近い(Li/(Ta+LiO)のモル分率が0.50)、すなわち不定比欠陥濃度を極力抑えた単結晶を得ることができる。成長する結晶組成と融液の組成とが異なると、通常の引き上げ法では育成が進むにつれ、融液の組成と結晶の組成とがより離れるため結晶育成は困難となるので、不定比欠陥の密度や構造を精密に制御するために図1に概観図を示した本発明の二重るつぼ法による単結晶育成装置による単結晶の製造方法を用いた。
【0085】
この実施例の二重るつぼの構造は、外るつぼ35の内部に外るつぼ35より高さが5mm高い内るつぼ36を設置した構造となっており、内るつぼ36の底に外るつぼ35から内るつぼ36に通じる孔を設けた。この孔は、約15mm×20mmの大きさで、実施例1と同じく3か所に設けてある。この実施例では、内るつぼ36および外るつぼ35としてイリジウム製るつぼを用いた。用いた二重るつぼの形状は、外るつぼ35の高さ/直径の比を0.50とし、内るつぼ/外るつぼの直径比は0.8とした。その大きさは、外るつぼ35が直径150mm、高さ75mm、内るつぼ36が直径120mm、高さ80mmとした。内るつぼ36と外るつぼ35との間は片側約15mmのスペースがあり、ここに原料がスムースに落下できるよう原料供給管37を安定に設置した。
【0086】
融液41の表面の様子をビデオカメラで観察した。るつぼを回転しないと融液41の表面に弱い対流がわずかに見られるが、るつぼの回転数を徐々に上げて行くと融液41の強制的な対流が強くなる様子が見られ、るつぼの回転の効果が確認された。
【0087】
次いで、Li/(Ta+LiO)のモル分率が0.60のLi成分過剰の融液41から結晶を成長させた。融液41の温度を所定の温度に安定化した後、Y軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ50mmのLT単結晶を種結晶40として融液41につけ、融液41の温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に引き上げることで単結晶を成長させた。るつぼに近い位置に設置した熱電対で測定した種付け温度は約1450℃近傍であった。高温からの育成であるため、Irるつぼを用いるので育成雰囲気は還元雰囲気とした。
【0088】
結晶の回転速度は2~4rpmの範囲で変化させ、引き上げ速度は3.0~0.5mm/hの範囲で変化させた。育成結晶42から2インチ径のウエハが作成できるよう結晶の直胴部の直径は約60mmになるよう種付け直後から自動直径制御を行った。育成結晶42の成長重量をロードセルにより測定し、結晶化した成長量に見合った量のLi/(Ta+LiO)のモル分率が0.50の化学量論組成比の原料を外るつぼ35に自動的に供給した。ここでは、結晶の成長量変化がコンピュータにより求められているので、これと同量の原料の供給は結晶が直胴部になる前(種付け後、直径制御が安定化した時点)から開始した。従って、このときの原料の供給速度は約120~5000mg/分の間で制御した。
【0089】
原料の供給は、回転引上げ炉体47の上部に設置した重量測定センサを兼ね備えた密封容器46内に保管した粉体原料45をセラミックスまたは貴金属からなる供給管37を通して行った。供給管37は鉛直角度が80゜以上となるよう設置した。供給管37および密封容器46に毎分50~500ccの範囲でガスを流入した。ガスの流量は粉体原料の単位時間当たりの量(約120~5000mg/分)と粒径(50~500ミクロン)によって毎分50~500ccの範囲で最適化した。
【0090】
2インチ径のLT単結晶の育成の場合には、供給原料の粒径が100~200ミクロンの範囲でできるだけ一定になるよう選定したものを使用し、ガスの流量を150cc/分とすることで、粉体原料の飛散や供給管37内での詰まりのない円滑な原料供給を行うことが実現できた。この方法により、るつぼ内への連続的なスムースな原料供給ができ、常に一定深さで一定組成を保った融液41から結晶を育成できるため、均質組成で、直径が2インチ以上の大型単結晶育成が容易となった。
【0091】
また、貴金属二重るつぼを回転させることによって、供給した粉体原料45と融液41との均質化と同時に、結晶成長界面を液面に対して強制的にフラット、もしくは凸になるよう融液41の対流を制御した。特に、2インチ以上の直径を育成する場合、二重るつぼ構造とすると、内るつぼ内の融液の径方向の温度勾配が極端に緩くなった場合に成長界面が凹になりやすいが、るつぼを約1~3rpmで回転させることで成長界面を平坦または凸にすることが可能となった。LT単結晶育成の場合には、LN単結晶育成の場合よりも、るつぼの回転数は少なくても成長界面が凸になりやすい傾向が見られた。
【0092】
2インチ径の良質なLT単結晶を育成する場合において、二重るつぼ全体をジルコニア製の耐火物の内部に設置し、これら全体を回転可能な台の上に設置し回転させた。るつぼの回転は結晶の回転方向と同じであっても、あるいは反対方向であっても融液41の対流の効果は見られ、良質な結晶を長尺で、安定に引き上げることができた。約1.5週間の育成により直径60mm、長さ90mmでクラックのない無色透明のLT結晶体を得た。
【0093】
さらに、イリジウム製の二重るつぼの形状を内るつぼ36の高さが外るつぼ35と比べて同じか、それよりも高くなるように配置した。これにより、内るつぼ36上部の加熱温度が外るつぼ35より低温となり、結晶引き上げ終了後の融液41の冷却過程において融液41が内るつぼ36の壁に固化するため、貴金属からなる外るつぼ35が固化物によって応力を受けて変形するのが最小限に抑えられ、8回の連続育成後に、るつぼをジルコニア製の耐火物内から取り出し、外観を検査したところ、形状は新品の状況から殆ど変形しておらず、20回の連続育成後もほとんど変形がないことを確認した。これによって、特に高価な貴金属を使用する酸化物単結晶の製造において、低コスト化に大きな改善が見られた。イリジウム貴金属は白金貴金属よりも変形に弱く、加工性が悪く、しかも非常に高価であるので、二重るつぼ法による変形の改善は低コスト化にとってより大きなメリットがある。
【0094】
(実施例3)
次に、従来からチョクラルスキー法でも製造されている一致溶融組成の大口径LT単結晶育成に二重るつぼ法を適用して単結晶育成を試みた。市販のLiCO、Ta(それぞれ純度99.9%)の原料粉末を準備し、一致溶融組成の原料としてLiCO:TaOの比が0.485の割合で混合した。次に、1ton/cmの静水圧でラバープレス成形し、約1050℃の大気中で焼結し、原料棒を作成した。また、連続供給用粉末原料として混合済みの化学量論比組成原料を約1350℃の大気中で焼結し、粉砕し、大ききが200ミクロン以上500ミクロン以下のサイズの範囲で分級した。
【0095】
次に、準備した一致溶融組成の原料を内るつぼおよび外るつぼに予め充填し、次に、るつぼを加熱して融液を作成した。一致溶融組成の場合には、原料全体が融解する温度は約1650℃で、定比組成の結晶育成の場合よりも200℃近く高温であった。
【0096】
ここでの二重るつぼの構造は、外るつぼ35の内部に外るつぼ35より高さが6mm高い内るつぼ36を設置した構造となっており、内るつぼ36の底に外るつぼ35から内るつぼ36に通じる孔を設けた。この孔は、約15mm×30mmの大きさで、実施例1と同じく3か所に設けてある。
【0097】
この実施例では、イリジウム製るつぼを用いた。用いた二重るつぼの形状は、外るつぼ35の高さ/直径の比を0.40とし、内るつぼ/外るつぼの直径比は0.8とした。その大きさは、外るつぼ35が直径160mm、高さ64mm、内るつぼ36が直径128mm、高さ70mmとした。内るつぼ36と外るつぼ35との間は片側約16mmのスペースがあり、ここに原料がスムースに落下できるよう原料供給管37を安定に設置した。
【0098】
融液41の表面の様子をビデオカメラで観察した。るつぼを回転しないと融液41の表面に弱い対流がわずかに見られるが、るつぼの回転数を徐々に上げて行くと融液41の強制的な対流が強くなる様子が見られ、るつぼの回転の効果が確認された。
【0099】
次いで、Li/(Ta+LiO)のモル分率が0.485の一致溶融組成の融液41から結晶を成長させた。融液41の温度を所定の温度に安定化した後、Y軸方位に切り出した8mm×8mm×長さ70mmのLT単結晶を種結晶40として融液41につけ、融液41の温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に引き上げることで単結晶を成長させた。育成雰囲気は若干の酸素を含む窒素雰囲気とした。結晶の回転速度は5rpm、引き上げ速度は7~3mm/hとした。
【0100】
育成結晶42から3インチ径のウエハが作成できるよう結晶の直胴部の直径は約85mmになるように種付け直後から自動直径制御を行った。育成結晶42の成長重量をロードセルにより測定し、結晶化した成長量に見合った量の一致溶融組成比の原料を外るつぼ35内に自動的に供給した。ここでは、成長する結晶組成も融液41の組成も供給原料組成も、いずれも同じ一致溶融組成であるので、原料の供給は、直径制御が安定化した直胴部から開始した。従って、このときの原料の供給速度は約2000~5500mg/分の間で制御した。
【0101】
原料の供給は、回転引上げ炉体47の上部に設置した重量測定センサを兼ね備えた密封容器46内に保管した粉体原料45をセラミックスまたは貴金属からなる供給管37を通して行った。供給管37は鉛直角度が約78゜となるよう設置した。供給管37および密封容器46に毎分100~500ccの範囲でガスを流入して円滑な原料供給を行った。ガスの流量は粉体原料の単位時間当たりの量(約2000~550Omg/分)と粒径(200~500ミクロン)によって毎分100~200ccの範囲で最適化した。
【0102】
3インチ径のLT単結晶の育成の場合には、供給原料の粒径が200ミクロン以上と大きいものを選定しているので、ガスの流量は200cc/分程度で、粉体原料の飛散や供給管37内での詰まりのない円滑な原料供給を行うことが実現できた。この方法により、るつぼ内への連続的なスムースな原料供給ができ、常に一定深さで融液41から結晶を育成できるため、均質組成で、長尺の大型単結晶育成が容易となった。
【0103】
また、育成中、貴金属二重るつぼを回転させることで結晶成長界面を液面に対して強制的にフラット、もしくは凸になるよう融液41の対流を制御した。特に、3インチ以上の直径の結晶を育成する場合、二重るつぼ構造とすると、内るつぼ内の融液の径方向の温度勾配が極端に緩くなった場合に成長界面が凹になりやすいが、るつぼを回転させることで成長界面を平坦または凸にすることが可能となった。
【0104】
LT単結晶育成の場合には、るつぼの回転数はLN単結晶育成の場合よりも少なくても成長界面が凸になりやすい傾向が見られた。一致溶融組成結晶の場合には、成長速度が大きく、直径も大きいので、供給した粉体原料45の量が大きく、るつぼの回転による供給原料と融液41との均質化はより重要であった。約1週間の育成により直径85mm、長さ100mmでクラックのない無色透明のLT結晶体を容易に得られた。
【0105】
次いで、イリジウム製の二重るつぼの冷却時のるつぼの変形を観察した。形状を内るつぼ36の高さが外るつぼ35と比べて同じか、それよりも高くなるように配置することにより、結晶引き上げ終了後の融液41の冷却過程において、融液41が内るつぼ36の壁に付着して固化するため、貴金属からなる外るつぼ35が固化物によって応力を受けて変形するのが最小限に抑えられ、数回の連続育成後に耐火物内からるつぼを取り出し外観を検査したところ、形状は新品の状況から全く変形がないことを確認した。
【0106】
これによって、特に高価な貴金属を使用する、しかも大口径の酸化物単結晶の製造において、低コスト化に大きな改善が期待できる。イリジウム貴金属は白金貴金属よりも変形に弱く、加工性が悪く、しかも非常に高価であるので、二重るつぼ法による変形の改善は低コスト化にとって非常に大きなメリットがあると考えられる。
【0107】
(実施例4)
原料連続供給二重るつぼ法を用いた化学量論組成のLiTaOまたはLiNbO単結晶育成において、供給用の粗粒化された化学量論組成の粉体原料を作製した。LiNbO単結晶育成用供給原料は、市販の高純度LiCO、Nb(それぞれ純度99.99%)の原料粉末をLiCO:Nbの比が0.50:0.50の割合で混合し、次に1.8ton/cmの静水圧でラバープレス成形し、白金容器内に密閉し、約1080~1180℃の大気中で粒成長化することで結晶化した粗粒原料を作製し、粉砕し大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。
【0108】
供給用原料を作製するには、プレスの圧力と組成の管理が重要であった。LiNbO単結晶育成用供給原料はプレス圧力が1.0ton/cmと低い場合でも結晶粒成長が見られるが、結晶粒は成形体の一部分でしか得られなかった。また、Li成分が蒸発しやすい環境でも良好な結果は得られず、密閉容器内で処理することが重要であった。
【0109】
LiTaO単結晶育成用供給原料は、市販の高純度LiCO、Ta(それぞれ純度99.99%)の原料粉末をLiCO:Taの比が0.50:0.50の割合で混合し、次に2.5ton/cmの静水圧でラバープレス成形し、約1300~1400℃の大気中で粒成長化することで結晶化した粗粒原料を作製し、粉砕し大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。組成と粒径のそろった粉体原料が作製には、プレス圧力、粒成長温度、粒成長時間、雰囲気の条件管理が重要であった。
【0110】
LiTaO単結晶育成用供給原料はプレス圧力が1.0ton/cmと低い場合には、粒成長温度を高く、粒成長時間を長くしても結晶粒は成形体の一部分でしか得られなかった。プレスの成形圧力を1.5 ton/cmより大きくし、かつ密閉した容器内で焼結することにより、供給用原料として重要である供給時に供給管への付着や飛散がしにくく、かつ組成と粒径のそろった粉体原料が安定に作製できた。
【0111】
次に、二重るつぼ法によるLiTaOまたはLiNbO単結晶育成に際して、Li成分過剰原料を貴金属からなる内側および外側るつぼに予め充填し、るつぼを加熱してLi成分過剰な融液を作成した。用いた二重るつぼの形状は外るつぼが直径180mm高さ67.5mm、内るつぼが直径150mm高さ75mmとした。内るつぼと外るつぼの間は片側約15mmのスペースがあり、ここに原料がスムーズに落下できるよう原料供給管を安定に設置した。融液表面の様子をビデオカメラで観察した。るつぼを回転しないと融液表面の対流はほとんど見られないが、るつぼの回転数を徐々に上げて行くと強制的な融液対流が強くなる様子が見られ、るつぼの回転の効果が確認された。
【0112】
ここでは、さらに、原料の均質化を行うために、るつぼと同じ貴金属材質の撹拌治具を融液内に挿入した。るつぼの中心から見て撹拌治具の挿入位置は、育成しようとする単結晶の半径より外側でかつ内るつぼの半径より内側とした。ここでは撹拌治具として、貴金属からなる幅15mm、厚み2mm、長さ80mmの板、または太さ10mm長さ80mmの貴金属丸棒に縦20mm横25mmの大きさの羽を3枚溶接して作成したプロペラを用いた。二重るつぼ自体を回転して育成を行うため、撹拌治具自体は必ずしも回転させなくても十分な融液の撹拌ができた。
【0113】
次いで、Li成分過剰の内側るつぼの融液から定比組成のLiTaOまたはLiNbO単結晶を成長させた。融液の温度を所定の温度に安定化した後、Y軸およびZ軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ50mmのLiTaOまたはLiNbO単結晶を種結晶として融液に付け、融液温度を制御しながら結晶を回転させて上方向に引き上げることで単結晶を成長させた。結晶の回転速度は2~4rpmの範囲で変化させ、引き上げ速度は3.0~0.5mm/hの範囲で変化させた。育成した結晶から2インチ径のウエハが作成できるよう結晶の直胴部の直径は約60mmになるよう種付け直後から自動直径制御を行った。
【0114】
育成結晶成長重量をロードセルにより測定し、結晶と同組成で結晶化した成長量に見合った量の化学量論組成比の原料を外側るつぼに自動的に供給した。ここでは結晶の成長量変化がコンピュータにより求められているので、これと同量の原料の供給は結晶が直胴部になる前(種付け後、直径制御が安定化した時点)から開始した。
【0115】
原料の供給は、予め育成炉体上部に設置した重量測定センサを兼ね備えた密封容器内に保管した粉体原料をセラミックスあるいは貴金属からなる供給管を通じて行った。供給管は鉛直角度が80°以上となるよう設置した。供給管及び保管容器に毎分50~500ccの範囲でガスを流入することで、より円滑な原料供給ができた。この方法により、るつぼ内への原料供給ができ結晶を常に一定深さで一定組成を保った融液から育成できるため、均質組成で直径が2インチ以上の大型単結晶育成が容易となった。
【0116】
特筆すべきことは、本単結晶製造方法では一定の温度環境で結晶成長が行われるために、結晶直胴部の育成において、通常の自動直径制御による融液の温度制御を行わなくても、融液の温度をほぼ一定に保ったままで一定の直径の長尺結晶が育成できたことである。
【0117】
すなわち、従来の単結晶育成においては、育成に従い融液の量あるいは融液表面近傍の温度環境が徐々に変化するので、育成する結晶の直径を一定にコントロールするためには直径自動制御による融液温度制御を用いて少しずつ温度を下げてやることが必要であったが、本方法ではこれを必要とせず、融液の温度を結晶成長にあわせて変化させてやる必要がない。このため、育成した結晶はより均一な温度環境下で育成されることにより、従来結晶で見られたストリエーションやボイドなどマクロな結晶欠陥がまったくない高品質な結晶育成が可能となった。
【0118】
さらに化学量論組成のLiTaOまたはLiNbO単結晶の製造方法においては、従来の一致溶融組成の結晶育成とは異なる方法で、結晶成長後の融液からの成長結晶の切離しを行った。育成される化学量論組成結晶は融液組成とは異なるため、結晶切離し時に結晶の底面に融液フラックス成分が付着したり、あるいは急激な融液からの結晶の切離しを行うと結晶内に機械的双晶やクラックが入りやすい。
【0119】
そこで、結晶の切離し時に結晶の回転数を2rpmから10rpmへと高速に回転させることで、融液フラックス成分が結晶下部に付着するのを除くことができた。また、結晶の切離し時にるつぼの回転数を7rpmから20rpmへと高速に回転させることで、融液フラックス成分が結晶下部に付着するのを除くこともできた。特に、るつぼを高速回転させると予め設置した撹拌治具によって融液の均質化による融液粘性の低下が促進されるため、フラックスの除去にはより大きな効果が見られた。
【0120】
さらに、結晶の切り離し時の熱的なストレスによる結晶下部における双晶発生による歩留まり低下を防ぐために、結晶直径が一定の直胴部の成長後は、徐々に結晶直径を小さくしながら結晶を成長させ、融液からの成長結晶の切り離しを行った。直径60mmで直胴部を1 ̄0.5mm/hの低速で成長させた後、徐々に融液温度および結晶引き上げ速度を上げていき、結晶直径を30mm以下まで絞った形の結晶を成長させた後、毎分1mm程度の高速引き上げで結晶を融液から切り離した。これによって、切り離し時による結晶下部における双晶の発生の問題を解決することができた。
【0121】
育成した結晶を注意深く観察すると、育成する結晶の方位を変えると機械的双晶の分布は異なり、機械的双晶は必ず結晶の結晶の特定方向に入ることが分かった。このため、Z軸方位に単結晶を育成した場合には、結晶のZ軸から37.8°と57°ずれた2つの方向に双晶が発生し伝搬した。従って、Z軸方位に育成した場合には結晶下部の結晶形状(すなわち結晶の絞り角度)をZ軸から57°よりきつい角度で成長させることで、結晶下部から発生した機械的双晶は上部に伝搬するが結晶の直胴部に達しないうちに結晶の外側に逃がしてやることができることが分かった。このような方法で機械的双晶の問題を解決することも可能であるが、前述したように結晶の切り離し時による熱的なストレスを低減することでも問題は解決できた。
【0122】
また、貴金属二重るつぼを用いた回転引き上げ式による酸化物単結晶の製造方法において、融液から引き上げた単結晶を単結晶育成装置内でアニーリングを行うために、るつぼの上方に直径150mm内るつぼとは独立した内径1400mm長さ140mmのアフターヒータを設けた。育成する結晶の直径と長さに応じてアフターヒータ加熱方法を高周波加熱および抵抗加熱を用いた。アフターヒータとしてるつぼと同材質の貴金属を用いた場合には、高周波誘導によって十分な加熱が行えるようにワークコイルの長さを従来よりも70mm長くした。
【0123】
ここでは、アフターヒータはるつぼの上方にるつぼとは独立に設けてあるため、従来のように貴金属るつぼ自体またはるつぼの上部に連続して設置した貴金属円筒等をアフターヒータとして使用する場合で見られた、融液表面近傍の温度分布が結晶成長に伴い徐々に変化するため、一定の温度環境で結晶成長をすることは困難で、育成途中で結晶が捻れるという問題は見られなかった。
【0124】
また、抵抗加熱を用いた場合には、抵抗加熱装置を新たに設けた。抵抗加熱はより均質な温度勾配下でのアフターヒータの効果が得られることと、るつぼへの高周波加熱とは全く独立に温度勾配や温度を設定できるため自由度が高く、かつ、融液表面の温度環境への影響が殆どないため、一定の温度環境で結晶成長をするができた。このため、育成途中で結晶が捻れることなく、高品質で長尺の単結晶を高い歩留まりで製造することが出来た。
【0125】
この発明は、以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0126】
【発明の効果】
以上、詳しく述べたように、本発明によれば、高周波誘導加熱を用いた単結晶育成において、貴金属るつぼを二重るつぼとし、その形状を最適化し、回転を行い、さらに原料供給装置を付加し、その供給方法を改善することで、従来困難であるとされていた化学量論組成や、それに限らない組成の結晶に関して高品質で、かつ大口径で、長尺の結晶育成を安定なものとし、しかも、育成によるるつぼの変形の問題を解決することができ、低コストでの結晶育成が可能な酸化物単結晶の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸化物単結晶製造装置を示す模式的断面図である。
【図2】従来方法において使用する原料ペレットを供給する二重るつぼによる単結晶育成装置を示す模式的断面図である。
【図3】従来方法において使用する二重るつぼ構造による単結晶育成装置を示す模式的断面図である。
【図4】従来方法において使用する自動原料粉末供給手段を備えた二重るつぼによる単結晶育成装置を示す模式的断面図である。
【図5】従来方法において使用する自動原料粉末供給手段および単結晶の回転方向と反対方向への低速るつぼ回転機構を備えた二重るつぼによる単結晶育成装置を示す模式的断面図である。
【図6】LN単結晶の相図を表す図である。
【符号の説明】
33 ガス流入管
34 二重るつぼ
35 外るつぼ
36 内るつぼ
37 原料供給管
38 結晶引き上げ軸
39 上昇・下降ヘッド
40 種結晶
41 融液
42 育成結晶
43 高周波発信コイル
45 粉体原料
46 原料供給用密封容器
47 回転引上げ炉体
48 直径制御システム
49 原料供給システム
50 るつぼ回転機構
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5