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明細書 :硫化物スピネル系超伝導物質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3629529号 (P3629529)
公開番号 特開2000-351632 (P2000-351632A)
登録日 平成16年12月24日(2004.12.24)
発行日 平成17年3月16日(2005.3.16)
公開日 平成12年12月19日(2000.12.19)
発明の名称または考案の名称 硫化物スピネル系超伝導物質
国際特許分類 C01G 55/00      
C01G  1/00      
H01L 39/12      
FI C01G 55/00 ZAA
C01G 1/00 S
H01L 39/12 ZAAC
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2000-107000 (P2000-107000)
出願日 平成12年4月7日(2000.4.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2000年3月10日 社団法人日本物理学会発行の「日本物理学会講演概要集 第55巻第1号(2000年春の分科会)第3分冊」に発表
優先権出願番号 1999102202
優先日 平成11年4月9日(1999.4.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成13年7月10日(2001.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】鈴木 博之
【氏名】北澤 英明
【氏名】松本 武彦
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開昭63-247003(JP,A)
Hiroyuki Suzuki,Takao Furubayashi,Guanghan Cao,Hideaki Kitazawa, Akira Kamimura and Kazuto Hirata,Metal-Insulator Transition and Superconductivitiy in Spinel-Type System Cu1-xZnxIr2S4 ,日本,Journal of the Physical Society of Japan,1999年 8月 8日,vol.68 ,No8,pp.2495-2497
調査した分野 C01G 1/00ー57/00
H01L 39/12 ZAA
特許請求の範囲 【請求項1】
組成式Cu1-xZnxIr24(0.25≦x≦0.8(但し、0.25≦x<0.3、および、0.5<x≦0.8を除く))で示され、超伝導特性を有する硫化物スピネル系物質であることを特徴とする硫化物スピネル系超伝導物質。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、硫化物スピネル系超伝導物質に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、新規超伝導物質であり、超伝導マグネット、ジョセフソン素子、磁気シールド、さらには、低温スイッチ素子、低温圧力素子等の各分野への利用が期待される硫化物スピネル系超伝導物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超伝導現象は、超伝導マグネット、超伝導電力貯蔵等の強電分野から、ジョセフソン素子、SQUID等のクライオエレクトロニクス素子、さらには磁気シールド等への広範囲な分野への応用展開が期待されている。これまでにNb-Ti、NbSn、VGe等の金属系超伝導物質は、液体ヘリウムを使用した応用に利用されており、近年では、Cu-O面を持つYBaCu7+δ(Y-Ba-Cu-O系)、BiSrCaCu10+ δ(Bi系)等のセラミックス系銅酸化物超伝導物質についてもその実用化に向けての検討が進められている。特にこの銅酸化物系超伝導物質は、高温で超伝導特性を示すことに加え、元素置換等によりキャリアをドープして超伝導温度を制御できるため、精力的な研究がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、硫化物系物質については、銅酸化物系超伝導物質と同じ構造を持ち、酸素のサイトがイオウに置き換わったY-Ba-Cu-S系超伝導物質等がこれまでに報告されているが、その超伝導特性は、銅酸化物系超伝導物質と比較すると、必ずしも満足できるものではない。
【0004】
一方、スピネル系物質は、磁性体の中でも最も詳しく調べられている物質であり、非常に多くの元素組成において存在が確認されている。実用的にもスピネル構造のフェライト磁石として、MFe(Mは2価金属)等が知られている。
【0005】
しかしながら、超伝導特性を示すスピネル系物質は、LiTi、CuRh、CuRhSe等の極僅かしか知られていない。しかも、キャリア注入等により超伝導特性が現れたという例はない。
【0006】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従前の金属系及び銅酸化物系とは異なる、全く新しい硫化物スピネル系の超伝導物質を提供し、硫化物スピネル系物質のさらなる可能性を開くことを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、組成式Cu1-xZnxIr24(0.25≦x≦0.8(但し、0.25≦x<0.3、および、0.5<x≦0.8を除く))で示され、超伝導特性を有する硫化物スピネル系物質であることを特徴とする硫化物スピネル系超伝導物質を提供する。
【0009】
以下、この出願の発明の硫化物スピネル系超伝導物質についてさらに詳しく説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の硫化物スピネル系超伝導物質は、前記組成式で示される。
【0011】
CuIrは、金属-絶縁体転移を示す硫化物スピネル系物質である。この出願の発明の発明者らは、その金属-絶縁体転移という特性に注目し、元素置換によりキャリア数の制御を行い、物性の変化を調べている過程においてこの出願の発明の硫化物スピネル系超伝導物質を見出した。
【0012】
すなわち、CuIrは、 230K付近で金属-絶縁体転移を示し、高温側が金属で、低温側が絶縁体である。また、低温側の絶縁体相では、Cuは1価である。この1価のCuサイトを2価のZnで置換した時に得られる組成式Cu1-x ZnIr( 0.25 ≦x≦0.8 )で示される硫化物スピネル系物質は、超伝導転移を起こし、超伝導転移温度Tcにおいてマイスナー効果を示す超伝導特性を有するのである。
【0013】
このように、この出願の発明の硫化物スピネル系超伝導物質は、元素置換によりキャリアをドープすることにより超伝導特性を発現する。従って、精力的に研究が行われている銅酸化物系超伝導物質にも共通する特性を有している。
【0014】
また、この出願の発明の硫化物スピネル系超伝導物質は、約5桁近い比較的大きな抵抗値から超伝導状態に変化し、しかも超伝導状態は、例えば100bar程度以下の微小な圧力変化によって壊れ、抵抗値が、約7桁までの半導体的な値にまで変化する。従って、この出願の発明の硫化物スピネル系超伝導物質は、低温におけるスイッチ素子、圧力センサ等への適用の可能性を有する。
【0015】
なお、これまでの研究によれば、この出願の発明の硫化物スピネル系超伝導物質の超伝導特性は、低温側の絶縁体相において出現していると考えられ、金属-絶縁体転移に関与している可能性があると推測される。
【0016】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。
【0017】
【実施例】
<実施例1>
Cu、Zn、Ir、及びSの粉末を出発原料にし、Cuの30%をZnで置換したCu0.7 Zn0.3 Irの化学量論組成が得られるように、それぞれの粉末を秤量した。これら粉末を石英管内部に真空封入した。石英管については、出発原料並びに生成物との反応を防止する目的で、その内部を弗酸処理した後に約1000Kで空焼きをし、不純物の除去を行った。
【0018】
そして、石英管を約2日間かけて 850Kまで加熱し、原料どうしを反応させた。
【0019】
得られた粉末試料は、図1に示したX線粉末回折の結果からスピネル系物質の単相であると確認される。この粉末試料からプレス機を用いてペレットを作製し、 850Kで2日間の熱処理を行った焼結体の電気抵抗、並びに粉末試料の帯磁率の温度依存性を調べた。その結果を示したのが、図2及び図3である。図3図中において、F.C.は、field cooling の略で、磁場をかけながら温度を降下して測定した結果を示し、一方、Z.F.C.は、zero field coolingの略であり、磁場をかけずに最低温度まで下げた後に磁場をかけて測定した結果を示している。
【0020】
図2に示した電気抵抗曲線より超伝導転移温度Tcは約 3.0Kであり、また、図3の帯磁率曲線から、超伝導転移温度Tc(= 3.0K)においてマイスナー効果が磁化率の測定で観測される。このことから、組成式Cu0.7 Zn0.3 Irで示される硫化物スピネル系物質は超伝導物質であると認められる。
【0021】
また、図2の電気抵抗曲線から確認されるように、約5桁近い比較的大きな抵抗値から超伝導状態に変化している。しかも超伝導状態は、100bar程度の微小な圧力を加えることにより壊れ、抵抗値が、約7桁までの半導体的な値にまで変化する。
<実施例2>
ZnによるCuの置換割合を代え、上記と同様にして試料を作製し、超伝導転移温度Tc並びに金属-絶縁体転移温度TM-I のZn濃度依存性について調べた。その結果を示したのが図4である。組成式Cu1-x ZnIrにおいて 0.25 ≦x≦0.8 の範囲で超伝導物質が得られることが確認された。
【0022】
図5および図6は、xが0.6 ~0.9 について温度-抵抗の関係の変化を示したものであるが、x=0.85、x=0.9 では超伝導特性は得られず、x=0.8 まで超伝導特性が得られることが示されている。
【0023】
もちろんこの出願の発明は、以上の実施例によって限定されるものではない。ZnによるCuの置換割合、超伝導物質の作製方法等の細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0024】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、硫化物スピネル系の新規超伝導物質が提供される。この硫化物スピネル系伝導物質は、元素置換によりキャリアをドープすることにより超伝導特性を発現するため、銅酸化物系超伝導物質にも共通する特性を有しており、超伝導マグネット、ジョセフソン素子、磁気シールド、さらには、低温スイッチ素子、低温圧力素子等の各分野への利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】組成式Cu0.7 Zn0.3 Irで示される硫化物スピネル系物質のX線粉末回線図である。
【図2】組成式Cu0.7 Zn0.3 Irで示される硫化物スピネル系物質の電気抵抗の温度依存性を示した図である。
【図3】組成式Cu0.7 Zn0.3 Irで示される硫化物スピネル系物質の帯磁率の温度依存性を示した図である。
【図4】組成式Cu1-x ZnIrで示される硫化物スピネル系物質の超伝導転移温度Tc並びに金属-絶縁体転移温度TM-I のZn濃度依存性を示す相関図である。
【図5】組成式Cu1-x nx Ir(X=0.6~0.85)の硫化物スピネル系物質の電気抵抗の温度依存性を示した図である。
【図6】組成式Cu1-x nx Ir(X=0.6~0.9)の硫化物スピネル系物質の電気抵抗の温度依存性を示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5