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明細書 :Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3577506号 (P3577506)
公開番号 特開2001-135165 (P2001-135165A)
登録日 平成16年7月23日(2004.7.23)
発行日 平成16年10月13日(2004.10.13)
公開日 平成13年5月18日(2001.5.18)
発明の名称または考案の名称 Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材とその製造方法
国際特許分類 H01B 12/10      
C22F  1/00      
H01B 13/00      
FI H01B 12/10 ZAA
C22F 1/00 ZAAD
H01B 13/00 565A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願平11-354906 (P1999-354906)
出願日 平成11年11月9日(1999.11.9)
審査請求日 平成12年5月29日(2000.5.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】井上 廉
【氏名】飯嶋 安男
【氏名】菊池 章弘
審査官 【審査官】青木 千歌子
参考文献・文献 特開平02-051807(JP,A)
調査した分野 H01B 12/00-13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
0.2at%を超えて10at%以下のCuが添加されているCu-Al合金がNb中にNbとの体積比がCuAl合金:Nbとして12.513.5の範囲で複合化されているマイクロ複合芯材を、マトリックス材としてのNb、Ta、Nb基合金またはTa基合金に多数本埋め込んでなる極細多芯構造を有する超伝導線材であって、前記のマイクロ複合芯材において、1700℃以上の温度に2秒以下での急加熱と室温付近への急冷によってA15相化合物構造が形成され、さらに650~900℃の温度で追加熱処理されていることを特徴とする、Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材。
【請求項2】
マイクロ複合芯材において、Nb中に複合化されているCu-Al合金は、Nbとの体積比がCuAl合金:Nbとして13である請求項1のCu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材。
【請求項3】
マイクロ複合芯材において、Nb中に複合化されているCu-Al合金は、平均径が1μm以下である、請求項1または2のCu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの超伝導線材において、最外層として安定化Cu被覆がされているCu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかの超伝導線材において、マトリックス材中には、NbまたはTaからなる拡散バリア層で囲んだ安定化Cuが配置されている、Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかの超伝導線材の製造方法であって、極細多芯構造を有する線材を、2秒以下の急加熱によって1700℃以上の温度に到達させた後に室温付近に急冷し、次いで650~900℃の温度で追加加熱処理を行なうことを特徴とする、Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材の製造方法。
【請求項7】
請求項6の製造方法において、追加熱処理の前もしくは後に、線材表面に安定化Cu被覆する、Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材の製造方法。
【請求項8】
請求項6の製造方法において、急加熱の前に、NbまたはTaからなる拡散バリア層で囲んだ安定化Cuをマトリックス材中に配置する、Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、Cu添加NbAl極細多芯超伝導線材とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、26T程度以下のあらゆる磁場発生にも対応できる、Cuを添加したNbAl極細多芯超伝導線材と、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、合金系超伝導体のなかでは、4.2Kで9T(テスラ)までの低磁場用にはNb-Ti線材が、9~21Tの高磁場用にはNbSn、VGa線材が実用されている。その一方で、急熱急冷変態法で作製されたNbAl超伝導線材が、近年の研究によってその実用化が期待されている。このものは、既存の実用超伝導線材の3~5倍大きいJcを示すことから、高磁場NMRスペクトロメータ、核融合炉、超伝導粒子加速器、SMES等の超伝導応用機器の性能を大幅に向上できるため、実用超伝導材料に置き換わる可能性がある。図1には、急熱急冷変態法によるNbAl線材の作製工程を示しているが、この場合の急熱急冷変態法とは、前駆体線であるNb/Al極細複合線を急熱急冷処理し、まず、線材中にNb-Al bcc過飽和固溶体を直接生成させ、次に、800℃付近で追加熱処理を行い、生成したbcc過飽和固溶体をAl5相化合物に変態させることにより、極めて高いJc特性を持つ超伝導線材を作製する方法である(登録番号2021986)。
【0003】
また、類似の超伝導線材製法として、図2に示すように、GeまたはSiを添加したAl合金を使用して作製した前駆体複合線を急熱急冷処理し、まず、結晶の長距離秩序度の低いA15相化合物としてのNb(Al,Ge)を直接生成させ、次いで800℃付近で熱処理することで結晶の長距離秩序を回復させて、A15相化合物としてのNb(Al,Ge)超伝導線材を得る方法がこの出願の発明者らにより提案されている。この製法によるNb(Al,Ge)超伝導線材は、TcとHc(4.2K)が大幅に向上し、高磁場でのJcが高いため、23~29T級の超高磁場発生用の超伝導線材として、開発が進められている(出願番号11-059907)。しかし、この超伝導線材は低磁場でのJcがあまり高くない。したがって、経済性を考慮すると、低磁場特性の優れたほかの超伝導線材と組み合わせて使用せざるをえない。
【0004】
そこで、この出願の発明は、低磁場でのJcが低いという欠点を持たず、かつ、26T程度以下のあらゆる磁場発生にも対応できる超伝導線材とその製造方法を提供することを課題としている。また、この出願の発明は、NbAl線材よりも高磁場中でのJc特性が優れた超伝導線材を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の問題点を解消するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0006】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、0.2at%を超えて10at%以下のCuが添加されているCu-Al合金がNb中にNbとの体積比がCuAl合金:Nbとして12.513.5の範囲で複合化されているマイクロ複合芯材を、マトリックス材としてのNb、Ta、Nb基合金またはTa基合金に多数本埋め込んでなる極細多芯構造を有する超伝導線材であって、前記のマイクロ複合芯材において、1700℃以上の温度に2秒以下での急加熱と室温付近への急冷によってA15相化合物構造が形成され、さらに650~900℃の温度で追加熱処理されていることを特徴とする、Cu添加Nb3Al極細多芯超伝導線材を提供する。
【0007】
そして、第2には、マイクロ複合芯材のNb中に複合化されているCu-Al合金において、Nbとの体積比がCuAl合金:Nbとして13であることや、第3には、Cu-Al合金は、平均径が1μm以下であることなども、その態様とする上記第1の発明の超伝導線材を提供す
る。
【0008】
さらに、この出願の発明は、第4には、最外層として安定化Cu被覆がされていることや、第5には、マトリックス材中には、NbまたはTaからなる拡散バリア層で囲んだ安定化Cuが配置されていることなどを特徴とする、上記第1ないし第3のいずれかの発明の超伝導線材を提供する。
【0009】
また、第6には、この出願の発明は、上記第1ないし第3のいずれかの発明の超伝導線材の製造方法であって、極細多芯構造を有する線材を、2秒以下の急加熱によって1700℃以上の温度に到達させた後に室温付近に急冷し、次いで650~900℃の温度で追加熱処理を行うことを特徴とする、Cu添加NbAl極細多芯超伝導線材の製造方法を提供する。
【0010】
加えて、第7には、追加熱処理の前もしくは後に、線材表面に安定化Cu被覆することや、第8には、急加熱の前に、NbまたはTaからなる拡散バリア層で囲んだ安定化Cuをマトリックス材中に配置することを特徴とする、上記第6の発明の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0012】
まず、この出願の第1の発明が提供する超伝導線材は、次の要件によって特定される。
(1)0.2at%を超えて10at%以下のCuが添加されているCu-Al合金がNb中に複合化されているマイクロ複合芯材を、
(2)マトリックス材としてのNb、Ta、Nb基合金またはTa基合金に多数本埋め込んでなる極細多芯構造を有し、
(3)前記(1)のマイクロ複合芯材において、1700℃以上の温度に2秒以下での急加熱と室温付近への急冷によってA15相化合物構造が形成され、さらに650~900℃の温度で追加熱処理されている。
【0013】
そして、この出願の第2の発明では、要件(1)に係わるCu-Al合金は、その平均外径が1μm以下であることを好適としており、また第3の発明では、Cu-Al合金とNbとの体積比を、1:2.5~1:3.5の範囲を好適としている。なお、「多数本」との規定は、数十~数百万本程度を意味し、「室温付近」との規定は、約15~50℃程度の温度範囲を意味している。
【0014】
また、この出願の第4の発明では、最外層として安定化Cu被覆されているCu添加NbAl極細多芯超伝導線材であることを特徴とし、第5の発明では、マトリックス材中にNbまたはTaからなる拡散バリア層で囲んだ安定化Cuを配置することを好適としている。
【0015】
ここでCuは、超伝導状態にある線材に電流を流した状態を安定化させる役割を果たしている。つまり、一般に、超伝導状態の線材に電流を流すと、電流は線材の表面から流れはじめて均等には流れず、線材にエネルギーが貯えられた不安定な状態が発生して、線材がこすれ合ったり動いたりする事態が生じる。そのため、線材中のエネルギーが局部的に開放されてその部分の超伝導を破壊し、ジュール熱が発生されるので、線材全体にまで超伝導状態の破壊が拡大してしまう。しかし、線材に高純度のCuを被覆させると、超伝導が壊れた部分(常伝導部分)において電流は高純度Cu部分を選択的に流れるため、大きな発熱は起こらない。その間に線材は周辺から冷却されて、常伝導部分は超伝導に復帰する。このように、Cu被覆により超伝導状態は安定に保たれることになる。
【0016】
以上のようなこの出願の超伝導線材については、その製造方法としては、前記第6、第7、そして第8の発明が提供されることになる。
安定化Cu被覆したこの発明の超伝導線材においては、例えば図3の構造と製造プロセスとして例示される。製造プロセスとしては、第6の発明のように、極細多芯構造を有する線材を、2秒以下の急加熱によって1700℃以上の温度に到達させた後に、室温付近に急冷し、次いで650~900℃の温度で追加熱処理する。そして、追加熱処理の前に線材表面に安定化Cu被覆を施しておく。一方、図4は、図3の例とは異なって、追加熱処理の後に、線材表面に安定化Cu被覆を施すプロセスを例示している。
【0017】
さらに図5の例においては、前記の追加熱の前に、NbまたはTaからなる拡散バリア層で囲んだ安定化Cuをマトリックス材中に配置している。
たとえば以上の図3、図4および図5に例示したようにして、この発明においては、A15相化合物の結晶化秩序をしっかりしたものとし、優れた超伝導線材としての特性を発揮できるものとしている。
【0018】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
【実施例】
<I>最初に、Cu-Al合金がNb中に複合化されているNb/Al-Cuマイクロ複合芯材を、図6に示すRod-in-tube法により作製した。その手順は次のとおりとした。まず、Cu-Al合金の作製に際して、Cu-Al合金のCu添加量は、各々の試料について、A:0.2at%、B:2at%、C:8at%、D:12at%とした。そして、それぞれの試料をタンマン溶解により作製した。これらのCu-Al合金を、外径7mmのロッド状に削り出し、Nbパイプ(外径14mm、内径7mm)に詰めた後、冷間溝ロール加工と伸線加工とを施して単芯線を作製した。しかし、ここで試料Dは異常変形による断線が発生したため伸線加工に失敗し、単芯線は得られなかった。Cuの添加量が10at%を超えると、Nbとの複合加工が困難となり、単芯線の製作が不可能となる。その他の試料A、B、CのCu-Al合金については、ここまでの加工は順調に行われ、3種の単芯線が得られた。
【0020】
<II>次に、得られた試料A、B、Cの各々の単芯線について、121×121芯複合体(1)と、330×330芯複合体(2)とをそれぞれ作製し、A1、B1、C1、A2、B2、およびC2のマイクロ複合芯材試料を作製した。これらのマイクロ複合芯材の作製においては、まず得られた各々の単芯線の一部を1.14mmφまで、残りを0.7mmφまで伸線加工し、これを適当な寸法に切断した。次に、切断した1.14mmφの単芯線を121本束ねてNbパイプ(外径20mm、内径14mm)に詰め、今度は中間焼鈍しは無しで1.14mmφまで溝ロール加工および伸線加工を施した後、再び適当な長さに切断し、さらに121本束ねてNbパイプ(外径20mm、内径14mm)に詰めた。これによって、121×121芯複合体を得た。同様にして、0.7mmφの単芯線は、330本を束ねてNbパイプ(外径25mm、内径16mm)に詰め、同様に中間焼鈍し無しで0.8mmφにまで加工した後、再び切断し、さらに330本束ねてNbパイプ(外径25mm、内径16mm)に詰めた330×330芯複合体を得た。以上のとおりの121×121芯複合体と330×330複合体とを溝ロール加工および伸線加工により、0.8mmψにまで加工し、極細多芯構造を有するA1、B1、C1、A2、B2、およびC2のNb/Al-Cuマイクロ複合芯材の試料を得た。これらの試料において、Nb:Alの体積比はおよそ3:1であった。ただし、A1、A2の試料については、121×121芯複合体であるA1の伸線加工には成功したが、330×330芯複合体であるA2では伸線加工に失敗した。このことから、0.2at%程度のCu添加では、Al合金はNbに比べて柔らかすぎるため、複合加工性が悪く、このRod-in-tube法にてマイクロ複合芯材を作製することは難しいと判断される。
【0021】
<III>得られたNb/Al-Cuマイクロ複合芯材を、図7に示すような急熱急冷装置にかけた。この装置では、Nb/Al-Cuマイクロ複合芯材を、1m/secの速度で移動させながら電極プーリーとGa浴槽との間で通電加熱することにより、室温から約2000℃に急熱させ、次いで、50℃程度に保持されたGa浴槽中を通過させることで、急冷させる。この時の急冷速度は、1×10℃/sec程度であった。ここで、Ga浴槽は電極と冷媒の役割を兼ねている。そして、巻き取られたNb/Al-Cuマイクロ複合芯材をX線回折装置で調べたところ、結晶の長距離秩序度の低いA15相化合物フィラメントが生成していた(図8)。Cuなどの添加元素を含まないNb/Al線材を急熱急冷処理した場合には、過飽和bbc固溶体が生成するのと対照的であった。ただし、A1およびA2の試料は、A15相化合物からの回折線強度が弱かったので、Cuを添加せずに純Alを使用した場合、つまりNb/Al線材を使用した場合のように、過飽和bbc固溶体がある程度生成しているものと推定される。
【0022】
<IIII>この後、650~900℃の追加熱処理を行い、この発明のCu添加NbAl極細多芯超伝導線材を作製した。試料A1およびA2の場合のTcは17.9Kであり、Hc(4.2K)やJc(4.2K)などの超伝導特性と共に、Nb/Al線材を使用した場合とほぼ同じであった。
【0023】
一方、試料B1およびB2の場合は、Nb/Al-Cuマイクロ複合芯材の追加熱処理の前と後とで、Tc、Hc(4.2K)、Jc(4.2K)などの超伝導特性が変化していた。Tcについては、処理前は13.0Kであったが、750℃の追加熱処理により結晶の長距離秩序度が回復し、18.2Kにまで向上した。Nb/Al線材を使用した場合の最も高いTcとしては、17.9Kが得られているので、0.3K向上したこととなる。また、Hc(4.2K)については、追加熱処理前は18T程度であったが、700~900℃の熱処理により、27~28.5Tにまで向上した。Nb/Al線材を使用した場合のHc(4.2K)は25~26Tであるので、Cuの添加により、2T程度も改善された。図9には、3通りの追加熱処理温度で作製したNb/Al-2at%CuのHc(4.2K)特性について例示したが、どの場合についてもHc(4.2K)は改善されていた。さらに、Jc-B特性については注目すべきであった。Cuの添加により、TcおよびHc(4.2K)はある程度改善されたが、Jc(4.2K)については、現在の実用超伝導線材よりはるかに大きな値が得られた。図10には、試料B1、B2および実用超伝導線材4種のJc-B特性を示した。これを詳細に見ると、18T以下の低磁場では、B1およびB2よりも、Nb/Al前駆体複合線(Nb箔とAl箔とを巻き重ねた複合体を芯線加工するジェリーロール法により作製)を使用した急熱急冷変態法のNbAl線材の方が高いJcを示した。しかし、現在の超伝導応用技術ではこのような高いJcを利用する技術は確立されておらず、低磁場でのJcとしては、実用上、この実施例にあるB1およびB2程度のJcで充分といえる。一方、高磁場でのJcは、明らかにCuの添加により改善されている。金属系超伝導線材の高磁場でのJcは、どうしても低くなりすぎる傾向があるので、若干でも改善されることは実用上大きな意味を持つ。
【0024】
また、試料C1およびC2については、Tcが18.1Kで、Hc(4.2K)が28.1Tを示し、Nb/Al線材を使用した場合よりも向上しており、Jc特性も、B1およびB2とほぼ同じの高い値を示した。
【0025】
そして、いずれの線材においても、マイクロ複合芯材が121×121芯(芯径1.5μm)の場合よりも、330×330芯(芯径0.6μm)の場合の方が、Jc-B特性は大幅に向上していた。TcおよびHc(4.2K)は芯径が細かくなっても0.2~0.5%程しか向上しないが、Jc-B特性については大幅に向上することが示された。また、これに関連して、マイクロ複合芯材中のAl合金の厚さが厚い場合、Jc(4.2K)が小さくなってしまい、実用上都合が悪い結果となった。
【0026】
<V>以上のことより、Cu添加量が0.2at%以下であると、過飽和bcc固溶体が優先して生成するので、その場合は、急熱急冷変態法と同じ製法となってしまう。また、Cu添加量が0.2at%以下であったり、10at%を超えると、Nbとの複合加工が困難となり、前駆体の複合線作製が不可能となることがわかった。しかしこの範囲内でのCuの添加は、伸線加工性を大幅に改善し、マイクロ複合芯材の製造歩留まりを向上させるので、線材製造コストが削減できる。
【0027】
また、マイクロ複合芯材中のAl合金の厚さが厚い場合、Jc(4.2K)が小さくなってしまい、実用上都合が悪くなることがわかった。
<VI>なお、以上の実施例では、NbパイプにCu-Al合金芯を挿入して伸線加工と複合を繰り返すことで、Nb/Al-Cuマイクロ複合芯材を作製したが、この製法以外にも、Nb粉末とAl合金粉末を混ぜ合わせた混合物を伸線加工するPowder-in-tube法(図11)や、NbシートとAl合金シートを重ねあわせてロール状に巻き込んだ複合体を伸線加工するJelly-roll法(図12)、さらに、Al合金シートをNbシートに重ねた状態で軽度の加工を加え、次いで、適当な長方形チップ状に切って、押し出し加工によりマイクロ複合芯材を作製するClad-Chip-押し出し法(図13)などの方法も、原理的にその特性は変化しないと考えられる。
【0028】
さらに、上記の実施例ではマイクロ複合芯材のNb/Al合金比を3:1に固定して行ったが、実用的にはこの組成からある程度、例えば2.5:1~3.5:1程度ずれていても問題はない。ただし、大きくずれると他の非超伝導化合物や非超伝導合金の構成割合が大きくなるので好ましくない。
【0029】
このほか、上記実施例の急熱急冷処理では、線材の移動速度は1m/secを標準に行い、この場合の加熱時間は0.1秒であった。しかし、その他に線材移動速度を0.5m/sec、0.2m/secと遅くした場合でも、得られた超伝導特性はほとんど変わらなかった。ただし、線材移動速度を0.05m/sec以下にすると、Ga浴槽中に溶け出すNb量が増えるので、長尺線の急熱急冷処理には適さないことが判明した。よって、急加熱は2秒以下で行うことが好ましい。もちろん、急加熱、急冷の手順は、図7のようなGa浴槽を使用する方法に限られることはなく、様々な形態であってよい。
【0030】
また上記実施例では、マトリックス材として純Nbを使用した。これはマトリックス材として、1700℃以上の温度に耐えることができ、かつ良好な冷間加工性を持つことが重要であり、加えてNbAlとの拡散反応性に乏しいことも望まれるからである。このような要件を備えたマトリックス材としては、Nbの他に、Ta、Nb基合金およびTa基合金が考えられる。Nb基合金とTa基合金とでは、塑性加工性が類似している。価格はTa合金の方が圧倒的に高価であるが、Ta基合金の方が融点が高いため、急熱急冷処理時に機械的強度が増すことからマトリックス材の量を減らすことが可能となる。マイクロ複合芯材に対するマトリックス材の量比をゼロにすると極細多芯構造が保てなくなり、超伝導状態が不安定になるため、超伝導特性の点からはマトリックス材の量比をゼロにすることはできないが、0.2程度にまで小さくすることが望ましい。Nb基合金を用いた場合には、マトリックス材の量比を0.4まで小さくした線材の作製に成功しているが、Ta基合金をすれば、量比を0.2にまで小さくすることが可能であると考えられる。この場合、フィラメント部の超伝導特性が変わらなければ、超伝導電流容量の密度は、(1+0.4)/(1+0.2)だけ改善できることになる。Nb基合金およびTa基合金を具体的に例示すると、マトリックス材としては、Nb-V、Nb-Cr、Nb-Mo、Nb-Mn、Nb-Ta、Nb-Ti、Nb-Zr、Ta-V、Ta-Cr、Ta-Mo、Ta-Mn、Ta-Nb、Ta-TiおよびTa-Zrなどが有望である。それぞれの基合金において、母相に対する添加元素の割合は、冷間加工性を損なわないという点から10at%以下が好ましい。
【0031】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な形態が可能であることは言うまでもない。
【0032】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、飛躍的に高磁場特性の優れたNbAl極細多芯超伝導線材の製造法が提供される。また、この発明の製造法によると、低磁場でのJcが低いという欠点を持たず、かつ26T以下のあらゆる磁場発生に対応できるため、設計が簡単で、経済的な超高磁場超伝導線材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】急熱急冷変態法によるNbAl線材の作製を例示した工程図である。
【図2】急熱急冷法によるNb(Al,Ge)線材の作製を例示した工程図である。
【図3】追加熱処理の前に安定化Cuを被覆するこの発明の製造法を例示した工程図である。
【図4】追加熱処理の後に安定化Cuを被覆するこの発明の製造法を例示した工程図である。
【図5】急加熱の前に安定化Cuをマトリックス材中に配置するこの発明の製造法を例示した工程図である。
【図6】Nb/Alマイクロ複合芯材の加工法-1(Rod-in-tube法)を例示した図である。
【図7】急熱急冷装置の原理図である。
【図8】Nb/Al-2at%Cuマイクロ複合芯材を急熱急冷処理した線材のX線回折パターン図である。
【図9】高磁場Jc(4.2K)のクレーマープロットにより外挿で求めたHc(4.2K)を例示した図である。
【図10】Nb/Al-2at%Cu超伝導線材および実用超伝導線材のJc-B特性を例示した図である。
【図11】Nb/Alマイクロ複合芯材の加工法-2(Powder-in-tube法)を例示した図である。
【図12】Nb/Alマイクロ複合芯材の加工法-3(Jelly-roll法)を例示した図である。
【図13】Nb/Alマイクロ複合芯材の加工法-4(Clad-Chip-押し出し法)を例示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
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