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明細書 :細胞存在下における電気化学測定用セルと細胞存在下における電気化学測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3328696号 (P3328696)
公開番号 特開2001-141687 (P2001-141687A)
登録日 平成14年7月19日(2002.7.19)
発行日 平成14年9月30日(2002.9.30)
公開日 平成13年5月25日(2001.5.25)
発明の名称または考案の名称 細胞存在下における電気化学測定用セルと細胞存在下における電気化学測定方法
国際特許分類 G01N 27/30      
C12Q  1/00      
G01N 27/28      
FI G01N 27/30 A
C12Q 1/00
G01N 27/28
請求項の数または発明の数 8
全頁数 6
出願番号 特願平11-359609 (P1999-359609)
出願日 平成11年11月12日(1999.11.12)
審査請求日 平成12年5月29日(2000.5.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】廣本 祥子
【氏名】塙 隆夫
【氏名】山本 玲子
審査官 【審査官】黒田 浩一
参考文献・文献 特開 平5-264497(JP,A)
調査した分野 G01N 27/30
C12Q 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
細胞培養液導入部(A)と、試料台部(B)を備え、細胞培養液導入部(A)は、(a)側壁と、(b)細胞培養液を固体試料に接触させるための穴部を持つ底面と、(c)蓋を有し、試料台部(B)は、試料の装脱着部を有していることを特徴とする電気化学測定用セル。

【請求項2】
細胞培養液導入部(A)において、(b)底面の穴部が固体試料の装脱着部方向に向かうにしたがって小さくなるような、すり鉢状の構造を有していることを特徴とする請求項1の電気化学測定用セル。

【請求項3】
細胞培養液導入部(A)において、(c)蓋に、対極および参照電極を差し込むための差し込み口があることを特徴とする請求項1または2記載の電気化学測定用セル。

【請求項4】
試料台部(B)において、固体試料の装脱着のための昇降機構が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの電気化学測定用セル。

【請求項5】
固体試料を装着して、高温高圧下で滅菌した後、培養液を導入して、細胞培養および電気化学測定を行なうことが可能とされていることを特徴とする1ないし4のいずれかの電気化学測定用セル。

【請求項6】
固体試料、培養液、電極を含めて恒温することが可能とされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの電気化学測定用セル。

【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの電気化学測定用セルを、高温高圧下で滅菌し、細胞培養液を導入して、試料表面域で細胞を培養し、同時に、またはその後に、電気化学測定を行うことを特徴とする、細胞存在下における電気化学測定方法。

【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかの電気化学測定用セルを、高温高圧下で滅菌し、細胞培養液を導入して、試料に荷電しながら試料表面域で細胞を培養することを特徴とする細胞存在下における電気化学測定方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、細胞存在下における電気化学測定方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、試料表面で細胞を培養することと該試料の電気化学測定を行うことを同一セル中で行うことが可能な電気化学測定用セルに関するものである。

【02】

【従来の技術とその課題】生体内の体液はNa、K、Clなどの様々なイオンやアルブミン、グロブリンなどの各種の蛋白質を含んだ一種の電解質液である。体液のpHは通常は7.35とややアルカリ側にあるが、手術後や外傷などの存在により5.3~5.6と酸性側になることもある。したがって、従来より、歯科、整形外科材料として金属が使用されているが、生体内は、金属材料にとって厳しい環境であるといえる。顎の骨などに埋植して使用する人工歯根や、骨折箇所などの固定具に使用されるボーンプレートなどのインプラント材料は、生体内特有の腐食が生じやすく、これらの材料を選定する上で、腐食機構の解明や生体内での材料の耐食性評価は重要な課題である。

【03】
このような事情から、従来より、生体用金属材料の耐食性評価が電気化学的に行われている。生体用金属材料の電気化学測定における疑似生体内環境としては、リン酸緩衝液や細胞培養液が用いられてきた。これらの溶液中では、金属材料の評価を、一般的な電気化学測定用容器を用いて行うことができ、簡便である。一方、生体に埋入して用いる材料は、実際には常に周辺組織、つまり細胞と接触しており、溶液を疑似生体内環境として用いたこれまでの方法では、正確な評価を行うことは、ほとんど不可能であった。

【04】
また、現在生体用に最も多く使用されているのは、ステンレス鋼(とくにSUS316、SUS316L)であり、次いでCo-Cr合金、Ti合金の順になっている。これらの材料において生体内で最も起こりやすい腐食は、すきま腐食である。すきま腐食とは、Clなどの攻撃性アニオンを含む水環境において、金属同士、または金属と非金属よりなるすきまが存在する場合に、その内部で発生する腐食である。すきまの内部では酸素が消費され、酸素不足となった領域近傍にアノード環境ができることにより、徐々にpHが低下し、腐食箇所中のCl濃度が上昇して、金属腐食箇所が拡大する。

【05】
生体内には、前述のとおり、Clを含む様々なイオンが存在しており、生体細胞と金属材料の間ですきま腐食や濃度差電池の生成による腐食が進行しやすい。また、細胞の存在により、細胞の代謝物が生体用金属材料の腐食に影響を与えることや、細胞と材料の間ですきま腐食が進行することなどがわかっている。さらに、人工関節のように、2個以上の生体用金属材料部品からなるものでは、すきま腐食が進行しやすいだけでなく、部品の原料が異種合金であれば、体液中で電池を生じ、腐食が起こることがある。このような腐食は、生体用金属材料部品の劣化とともに、周囲の細胞を損傷する恐れがあるという点で問題である。生体用金属材料を評価するためには、生体内に近い環境を再現する必要があり、そのためには、細胞の共存が必要条件の一つであるといえる。

【06】
細胞を金属材料表面に共存させた状態で金属材料の評価を行うためには、従来より動物に材料を埋め込む試験が行われているが、手間、時間、コストがかかる上、再現性の確認が難しいという問題があった。また、ガラス電極上で荷電しながら細胞を培養することが行われているものの、細胞存在下における金属上での電気化学的測定を行なえる細胞培養器は、これまで知られていなかった。

【07】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、生体外において、材料表面で細胞を培養し、同時に、あるいは続けて、該材料の電気化学測定を行うための電気化学測定用セルと、このセルを用いての細胞存在下での電気化学測定方法を提供することを課題としている。

【08】

【課題を解決するための手段】そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消するために、以下の通りの発明を提供する。

【09】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、細胞培養液導入部(A)と、試料台部(B)とを備え、細胞培養液導入部(A)は、(a)側壁と、(b)細胞培養液を固体試料に接触させるための穴部を持つ底面と、(c)蓋を有し、試料台部(B)は、試料の装脱着部を有している電気化学測定用セルを提供する。

【10】
また、この出願の発明は、第2には、細胞培養液導入部(A)において、底面(b)の穴部が試料の装脱着部方向に向かうにしたがって小さくなる、すり鉢状の構造を有すること、第3には、細胞培養液導入部(A)において、蓋(c)に、対極および参照電極を差し込むための差し込み口があること、第4には、試料台部(B)において、試料の装脱着のための昇降機構が設けられていることを特徴とする上記電気化学測定用セルを提供する。

【11】
さらに、この出願の発明では、第5には、固体試料を装着して、高温高圧下で滅菌した後、培養液を導入して、細胞培養および電気化学測定を行うことが可能とされている上記の電気化学測定用セルを提供し、第6には、固体試料、培養液、電極を含めて恒温することが可能とされている電気化学測定用セルを提供する。

【12】
そして、この出願の発明は、第7には、前記の電気化学測定用セルを、高温高圧下で滅菌し、細胞培養液を導入して、試料表面域で細胞を培養し、同時に、またはその後に、電気化学測定を行う、細胞存在下における電気化学測定方法を、第8には、前記の電気化学測定用セルを、高温高圧下で滅菌し、細胞培養液を導入して、試料に荷電しながら試料表面域に細胞を培養する、細胞存在下における電気化学測定方法をも提供する。

【13】

【発明の実施の形態】この出願の発明は、試料表面で細胞を培養すると同時に、該試料の電気化学測定を行うことを可能とするための電気化学測定用セルを提供する。このとき、試料とは、金属材料等の固体試料を示し、アルミニウム、ニッケル、白金などの単一元素から成る金属、ステンレス(SUS)、Ti合金などの合金など、各種のものであってもよい。さらには、これまでに生体内で使用された例のある金属材料に限らず、新規な材料等であってもよい。また、細胞とは、生物の細胞であればどのようなものであってもよいが、生体用金属材料の評価においては、動物の筋細胞などを使用することが好ましい。細胞を培養するにあたっては、培養液をセル内に導入する必要があるが、この培養液は、目的の細胞を培養するために好ましい条件に調整されていればよい。

【14】
この出願の発明の細胞存在下での電気化学測定において、電気化学測定とは、細胞存在下で電池反応を起こし、確認する、電圧印加時の電流変化、あるいは電流印加時の電圧変化を測定する、荷電しながら細胞を培養させる、などの様々な方法があげられる。

【15】
そして、この出願の発明の電気化学測定用セルは、これらの様々な電気化学測定に対応できるものであり、必要に応じて、試料、細胞、溶液、参照電極、対極、試料通電用電極などを変更することが可能な構造を有している。

【16】
図1は、この出願の発明の電気化学測定用セルを例示した概略図である。また、図2は、この出願の発明の電気化学測定用セルの鳥瞰図である。この出願の発明の電気化学測定用セルは、たとえば図1および図2に示したように、少なくとも、細胞培養液導入部(A)と試料台部(B)とを備えているが、試料台部(B)の下に、細胞培養液導入部(A)を支える脚部(C)があってもよい。

【17】
細胞培養液導入部(A)は、少なくとも側壁(1)、細胞培養液を試料に接触させるための穴部(2)を有する底面(3)、および蓋(4)から構成されている。これら側壁(1)、底面(3)、および蓋(4)は、各々別の部品からなり、組み立てることによって、細胞培養液導入部(A)が得られる分離型であってもよいし、底に穴部(2)を有するフラスコのような一体型の形状や、側壁(1)と底面(3)のみが一体化した、底に穴を有するビーカーの如き形状であってもよい。好ましくは、使用前後の洗浄等、取り扱いが容易である分離型である。つまり、細胞培養液導入部分(A)の側壁(1)は、筒であり、底面(3)は、細胞培養液を固体試料に接触させるための穴部(2)の開いた板となる。また、蓋(4)は、側壁(1)の筒の断面と同じか筒の断面よりも大きな面積を有する板、あるいは縁を有する板である。また、分離型の細胞培養液導入部(A)では、側壁(1)と底面(3)の接続部分は、はめ込み式、ねじ込み式など、どのような構造であってもよいが、密閉可能な構造である。接続部には、パッキングa(5)が挿入され、液漏れを防ぐことができる。

【18】
底面(3)には、細胞培養液(6)と固体試料(7)を接触させるための穴部(2)が開いている。また、側壁(1)あるいは蓋(4)には、対極(8)および参照電極(9)を差し込むための電極差し込み口(10)が開いていることが好ましい。取り扱いの容易さから考えれば、蓋(4)に対極(8)および参照電極(9)の電極差し込み口(10)があることが特に好ましい。対極(8)および参照電極(9)を取り付ける際には、穴明き栓(11)に各電極を差し込み、これらの電極差し込み口(10)にはめ込んでもよいし、電極をそのまま差し込み口(10)に入れてもよい。もちろん、側壁(1)に電極差し込み口(10)を設けてもよいし、対極(8)および参照電極(9)を側壁(1)と蓋(4)の隙間から入れるような構造として、電極差し込み口(10)を設けなくてもよい。

【19】
側壁(1)、底面(3)、および蓋(4)の材質は、高温高圧、酸性などの環境に耐性があり、細胞培養時に妨げとならず、電気化学測定に影響を及ぼさないものであればどのようなものであってもよい。例えば、フッ素樹脂などの耐熱性、耐薬品性、強度などが高いプラスチック、フッ素樹脂などの耐熱、耐薬品性の高い樹脂で被覆されたステンレス鋼、ガラスなどが材料として例示できる。もちろん、それぞれの部品ごとに異なる材質を選択しても、すべての部品を同じ材質から成るものとしてもよい。とくに側壁(1)および蓋(4)の材質としては、透明でセル中の様子を観察しやすく、洗浄も容易であるガラスやプラスチックが好ましい。底面(3)の材質は、細胞培養後に交換したり、条件に応じて穴部(2)の形状を変更したりしやすいように、加工がしやすく、耐熱、耐薬品性等の高いフッ素樹脂が好ましい。また、側壁(1)および底面(3)を接続する際には、パッキングa(5)を挟んでおくことが好ましく、その材質は、細胞培養液(6)に耐性があり、高温高圧処理にも耐えうるものであればどのようなものであってもよい。特に耐熱性、耐薬品性の高いフッ素樹脂やフッ素ゴムが好ましい。

【20】
また、底面(3)の穴部(2)の形状は、細胞培養液(6)と接触する面の穴部(2)の径が大きく、試料(7)と接触する面に向かうにしたがい、厚み方向に穴部(2)の径が小さくなってゆく、すり鉢状であることが好ましい。これにより、細胞を培養する際に、細胞を試料(7)の表面に集中させ、より効率的に細胞を培養することが可能となるのである。

【21】
この出願の発明の電気化学測定用セルにおいては、試料台部(B)は、たとえば、試料(7)を載せるための試料台(12)を有し、この試料台(12)は、固体試料の装脱着が可能となる昇降構造をしているものが好ましい。固体試料(7)の装脱着が可能となる構造としては、図1に例示されるネジ(13)の他に、バネ、ジャッキなどがあげられる。さらに、試料台(12)を引き出し型としたり、細胞培養液導入部(A)の底面(3)の穴部(2)に直接試料台をねじ込む構造であってもよい。試料台(12)の構造としては、試料(7)の大きさ、厚み、形状に左右されずに、試料(7)を底面(3)の穴部(2)に密着させることができることから、ネジ(13)や、ばね、ジャッキなどが好ましく、特に部品が少なく簡便なネジ(13)が最も好ましい。また、試料(7)と細胞培養液導入部(A)の底面(3)の穴部(2)を密着させ、細胞培養液(6)の漏洩を防ぐために、パッキングb(14)を試料と底面(3)の穴部(2)の間に挟むとよい。このパッキングb(14)は、細胞培養液(6)に対して耐食性があり、高温高圧条件下でも十分に細胞培養液(6)を密閉できるものであれば、どのような材質であってもよい。好ましくは、耐熱性、耐薬品性が高く、熱による膨張が少ないフッ素ゴムやフッ素樹脂を使用するとよい。測定を行う際には、試料(7)と試料台(12)の間に、通電用の電極(15)を挟む。通電用の電極(15)は、試料(7)へ、または試料(7)から、電気を導通させるために設置するものであり、どのような形状のものであってもよく、材質は、白金、ステンレスなど、通常電極として使用される様々な材料から選択できる。もちろん、試料(7)に導線などを直接取り付け、電気化学測定装置に接続してもよく、この場合、通電用の電極(15)はなくてよい。

【22】
上記以外の試料台部(B)の各部品の材質は、高温高圧によって変形したり膨張したりせず、電気化学測定に影響を与えないものであれば、とくに限定されない。好ましくは、耐熱性、耐薬品性、強度などが高いフッ素樹脂である。

【23】
この出願の発明の電気化学測定用セルは、少なくとも上記の細胞培養液導入部(A)と試料台部(B)から構成されるものであるが、さらに、細胞培養液導入部(A)を支える脚部(C)を有することが好ましい。とくに試料台(12)の下部にネジ(13)があり、このネジ(13)で試料を上下させる場合には、ネジの移動距離分の脚(16、17)と、ネジの穴(18)を有する板(19)が必要となる。脚(16、17)、板(19)の材質は、この出願の発明の電気化学測定用セルの他の部品と同様に、高温高圧条件に耐え、細胞培養液に万一触れた場合にも劣化しないものであれば、ステンレス鋼などの金属、フッ素樹脂などのプラスチックなど、どのようなものであってもよい。組み立てや解体を容易とするためには、脚(16、17)がステンレス製ボルトやフッ素樹脂製の柱であり、板(18)がフッ素樹脂性の厚板であることが好ましい。さらに、脚部(C)の各構成部品の形状は、電気化学測定用セル本体を安定に支え、試料台の動きを妨げなければ、どのような形状、構造であってもよい。

【24】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。

【25】

【実施例】実施例1
<I> 電気化学測定用セルの組み立て
図1に示した概略図に基づき、電気化学測定用セルを組み立てた。

【26】
細胞培養液導入部(A)の側壁(1)は直径10cmのガラス製の円筒、底面(3)は細胞培養液(6)接触面の直径が4.8cm、試料(7)面の直径が1cmのすり鉢状の穴部(2)を中央に有する厚さ1.5cmのPTFE製板とし、側壁(1)と底面(3)の接触部にはフッ素ゴム製のOリングをパッキング(5)として挟んだ。また、蓋(4)は、対極(8)および参照電極(9)を差し込むための差し込み口(10a、10b)を有するプラスチック製とした。

【27】
試料台部(B)は、試料台(12)そのものをPTFE製のネジ(13)とした。さらに、脚部(C)では、試料(7)の細胞培養液導入部(A)底面(3)への密着性向上のために、ステンレス製ボルトを脚(16)とし、PTFE製の板(19)に固定した。試料台(12)の支えもこの板(19)とし、板(19)に試料台(12)がねじ込まれるようにした。さらに板(19)にも脚(17)を付け、これはPTFE製とした。
<II> 細胞の培養
組み立てた電気化学測定用セルを120℃、飽和蒸気圧下で滅菌し、細胞培養液導入部(A)にマウス線維芽細胞(L929)を播種し、7.5mlのE-MEM+10%FBS(血清)培養液を入れた。試料は純チタン板(99.5%)とし、37℃、5%COのインキュベーター内で1週間培養した。試料の通電用の電極としてはステンレス板を用いた。
<III> 細胞存在下での電気化学測定
<II>で細胞を培養した電気化学測定用セルを保温箱に入れ、37℃に恒温して対極(Pt)、参照電極(飽和カロメル電極:SCE)を設置し、各電極を電気化学測定装置に接続して、10~10-3Hzの周波数範囲におけるチタンの交流インピーダンス測定を行なった。
比較例1
実施例1と同様に組み立てた電気化学測定用セルを滅菌し、純チタン板を試料として、細胞培養を行なわずに7.5mlの培養液のみを細胞培養液導入部(A)に入れた。この電気化学測定用セルを37℃のインキュベーター内に1週間放置した。実施例1と同じ電極を用いて、チタンの交流インピーダンス測定を行なった。

【28】
図3に自然電位における交流インピーダンス測定の結果を示した。ここでZはインピーダンスを、Aは試料面積を、fは周波数を表わす。したがって、|Z|/Aは、単位面積当たりのインピーダンスの絶対値である。

【29】
細胞の存在、不在に関わらず周波数が10~10Hzの領域では、インピーダンスはほぼ一定であった。10~10-1Hzではインピーダンスは細胞存在下、不在下で、ともに直線的に増加し、10-1~10-2Hzでは再びほぼ一定となった。さらに10-2以下では、測定限界である10-3Hz以下の領域でも、直線的な増加を見せた。

【30】
これらの結果から、10~10Hzの周波数領域では、溶液抵抗が現れており、10-1~10-2Hzの範囲では、チタン上に電気容量を有する層が形成されたことが分かる。また、測定限界である10-3Hz以下でも直線的なインピーダンスの増加が見られることから、純チタン側に非常に電気抵抗の高い層が形成された可能性を示している。つまり純チタン上には、少なくとも2つの層が形成されていると考えられる。

【31】
純チタン全体の耐食性は、細胞の存在、非存在にほとんど依存しないと考えられる。しかし、細胞存在下(実施例1)でのインピーダンス値が10-1~10-2Hzの領域で細胞非存在(比較例1)の値よりも高いことから、細胞が純チタンの外側の層の電気化学的性質に影響を及ぼしていると考えられる。

【32】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によって、試料材料を導入した状態での高温高圧での滅菌が可能であり、該試料材料の表面で細胞を培養し、同時に、あるいは続けて電気化学測定を行うことのできる電気化学測定用セルが提供される。したがって、生体用金属材料の耐食性評価を、これまでの緩衝液のみからなる疑似生体内環境よりも実際の生体内環境に近い細胞存在下において行うことが可能となった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2