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明細書 :押出成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3482458号 (P3482458)
公開番号 特開2001-150518 (P2001-150518A)
登録日 平成15年10月17日(2003.10.17)
発行日 平成15年12月22日(2003.12.22)
公開日 平成13年6月5日(2001.6.5)
発明の名称または考案の名称 押出成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法
国際特許分類 B29C 47/92      
FI B29C 47/92
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平11-337842 (P1999-337842)
出願日 平成11年11月29日(1999.11.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成11年8月26日社団法人化学工学会発行の「化学工学会第32回秋季大会(1999)研究発表講演要旨集」に発表
審査請求日 平成11年11月29日(1999.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012442
【氏名又は名称】京都大学長
発明者または考案者 【氏名】大嶋 正裕
【氏名】橋本 伊織
【氏名】谷垣 昌敬
【氏名】永田 武史
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】斎藤 克也
参考文献・文献 特開 平11-217456(JP,A)
特開 平6-345890(JP,A)
特開 平3-81346(JP,A)
特開 平8-290423(JP,A)
調査した分野 B29C 47/00 - 47/96
特許請求の範囲 【請求項1】
発泡剤としての低分子ガスを溶融高分子樹脂に溶解させて成形樹脂材料とし、該成形樹脂材料を成形機によって成形して発泡樹脂からなる樹脂成形品を成形する樹脂成形品の製造方法において、近赤外分光法によって成形機の成形出口から押出されてくる成形樹脂材料の近赤外光の吸収スペクトルを測定し、測定した吸収スペクトルから成形樹脂材料に溶解している発泡剤低分子ガスの濃度を計算し、発泡剤低分子ガスの濃度の計算値が所定の設定値に等しくなるように発泡剤低分子ガスの供給を制御することを特徴とする成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法。

【請求項2】
該成形機が押出成形機であって、樹脂成形品を押出成形することを特徴とする請求項1に記載した成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法。

【請求項3】
発泡剤としての低分子ガスが二酸化炭素であることを特徴とする請求項1または2に記載した成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】

【0001】
本発明は、押出成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法に関する。
【従来の技術】

【0002】

【発明が解決しようとする課題】

【0003】
高分子の発泡成形方法の1つに、低分子ガスからなる発泡剤(例えば、二酸化炭素)を樹脂中に溶解させ成形工程中に低分子ガスの気泡を樹脂中に形成する発泡成形法がある。この発泡成形法は、ガスを加圧下で樹脂に溶解させた後、圧力を減圧するかあるいは温度を急上昇させることにより、溶解二酸化炭素を過飽和状態に至らせ樹脂中に気泡を生成させるものである。その際、樹脂中に溶解する低分子ガスの濃度が、樹脂中に形成される気泡の直径ならびに個数を大きく左右する。したがって、高品質の発泡体を安定に作るには、樹脂中に溶解するガスの濃度を所定の値に制御することが重要になる。従来、成形・発泡装置においてオンラインで樹脂中に溶解した低分子ガス濃度を測定できるセンサーがなかった為、発泡樹脂成形体を製造するに当たって溶解ガス濃度を測定して制御する制御系が開発できなかった。

【0004】
そこで、従来では、成形・発泡装置を安定に定常状態に保つことによって発泡成形体の品質を管理していたが、熟練したオペレータの力量に依存せざるを得なかった。特に、押出発泡成形では、如何に発泡剤として用いる低分子ガスを安定に供給するかですべてが決まり、一度、製品が製造され始めたら再度成形・発泡装置を調整しなおすことは避けたいというのが現状であった。また、樹脂中に溶け込んでいる発泡剤ガスの濃度は、定常状態においてフィードしたガスの量と押出量をサンプル計測し求められてきたが、決定した発泡剤ガス濃度によって樹脂中の発泡剤ガスの濃度を常に一定に保つことは困難で、発泡剤の濃度制御については一切自動が行なわれていないのが現状であった。これも、ひとえに樹脂中に溶けこむガス濃度をオンラインで計測するセンサーの欠如に原因があった。

【0005】
本発明の目的は、従来の発泡成形体を製造する際に発泡剤ガスをオンラインで検知するセンサー利用できなかったことによる問題点を克服し、現実的な濃度制御法を提示し、発泡成形体の品質を向上させることを可能とするものである。

【0006】

【課題を解決するための手段】本発明の成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法は,発泡剤としての低分子ガスを溶融高分子樹脂に溶解させて成形樹脂材料とし、該成形樹脂材料を成形機によって成形して発泡樹脂からなる樹脂成形品を成形する樹脂成形品の製造方法において、近赤外分光法によって成形機の成形出口から押出されてくる成形樹脂材料の近赤外光の吸収スペクトルを測定し、測定した吸収スペクトルから成形樹脂材料に溶解している発泡剤低分子ガスの濃度を計算し、発泡剤低分子ガスの濃度の計算値が所定の設定値に等しくなるように発泡剤低分子ガスの供給を制御することを特徴とする。

【0007】
近赤外分光法は一般に近赤外域(波長800nm~2500nm)を用いた分光法で、サンプルのハンドリングの容易さや、光ファイバーを用いたリモート測定等の長所を有する。本発明は、この赤外分光法を拡張してポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の二酸化炭素等の発泡剤低分子ガスを用いる発泡押出成形プロセスにおいて樹脂内に溶解する発泡剤低分子ガス濃度をセンシングするものである。

【0008】
本発明は、成形機が押出成形機であって、樹脂成形品を押出成形することに特に適合する。

【0009】
発泡剤としての低分子ガスは、二酸化炭素とすることができる。

【0010】
本発明は、高分子発泡成形において、近赤外分光センサーを利用し二酸化炭素濃度をオンラインで測定し、二酸化炭素加圧圧力あるいは二酸化炭素注入量を操作する制御法(近赤外線の吸光度から濃度を推算し、設定値にフィードバック制御する方法)ことにより発泡体製品の品質を制御するための新たな計測ならびに制御手法であり、品質制御の可能性をより広げるものである。発泡成形加工では、高分子に溶解する低分子ガス(二酸化炭素等の濃度)が樹脂中に存在する気泡密度ならびに発泡率に大きな影響を与える。従って、発泡成形工程で製品品質を制御するには、樹脂中に溶ける低分子ガス濃度をオンラインで測定し制御することが重要となる。本発明は、近赤外分光法(Near Infrared Spectroscopy)法を利用し、オンラインで、その吸収スペクトルから二酸化炭素濃度を測定できることを見出した。

【0011】
本発明では、近赤外分光法を使い、近赤外光を光ファイバーケーブル・プローブを通して、樹脂に照射し、その吸収スペクトルから樹脂中に溶存している二酸化炭素濃度を測定できることを見出した。この特性を応用することにより、樹脂中に溶解する濃度が一定になるように、二酸化炭素加圧圧力あるいは二酸化炭素注入量を繰作する制御法(NIRの吸光度から濃度を推算し、設定値にフィードバック制御する方法)が開発できた。

【0012】
本発明で用いる発泡剤としての低分子ガスとしては、二酸化炭素ガスを挙げることができ、また、高分子樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレン等の従来の成形用高分子樹脂を用いることができる。成形方法としては、押出成形及び射出成形を採用することができ、その場合押出成形条件等は従来の条件等と特に変わりがない。

【0013】
以下に、発泡剤低分子ガス(二酸化炭素)を溶融高分子(本例の場合:ポリプロピレン・ポリエチレン)樹脂に押出機を使って溶解させ、押出器出口に設置する近赤外分光ブロープを通して吸収スペクトルをオンライン測定し、その測定値が設定値に等しくなるように、ガス供給弁を開閉する場合を例に挙げて説明する。

【0014】
(1)装置
図1に示す高分子樹脂押出・発泡装置を使う。高分子押出・成形装置は、押出成形機1のバレル中ほどより、二酸化炭素をガス状態で注入し、ホッパーHからペレットで押出成形装置に供給され溶融された溶融樹脂Rと混練する。バレル内では、二酸化炭素注入後、高温・高圧とされるため、二酸化炭素は完全に樹脂中に溶解する。

【0015】
押出機出口2には流量計3が取付けられ、流量計3には近赤外線センサーを形成する透過型近赤外分光プローブ4が取り付けられている。近赤外線光源Sからトランスセプト型光干渉計Tを介して透過型近赤外分光プローブ4によって計測した成形高分子樹脂の近赤外光の吸収スペクトル信号が光ファイバー5を介してコンピュータ6中の検出器7に送られ溶融高分子樹脂中の二酸化炭素濃度が計算され、計測信号値をもとに二酸化炭素供給ライン8の流量バルブ9を操作できるようになっている。図中、10はCOシリンダーを備えたCO重量計を示し、11は溶融樹脂流量を制御するギアポンプを示し、Hは成形樹脂材料ペレットを押出成形機に供給するホッパーを示す。

【0016】
(2)押出成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法の工程
以下に、本発明による押出成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法の工程を具体的に説明する。
1.高分子(ポリプロピレン/ポリエチレン)を押出機ホッパーHより供給する。
2.樹脂に溶解性をもつガス(二酸化炭素)を供給ラインを通して押出機バレル中ほどから注入する。
3.押出機内では、樹脂と二酸化炭素とが混錬され、二酸化炭素は高圧・高温で樹脂中に溶解する。
4.光ファイバー5により近赤外光解析装置から近赤外光を伝送し、押出機出口に設置した近赤外光プローブ4を通して流量セル3を通過する溶融樹脂に照射し、その透過光を計測して再び近赤外光解析装置に光ファイバーで伝送する。
5.近赤外光解析装置では、入射光と透過光とから吸収されたスペクトルを計算する。
6.ベースライン補正をし、特定波長の吸収スペクトルの大きさを計測し、二酸化炭素濃度に換算する。
7.測定値と設定値を比較し、その誤差(Error)に応じて、二酸化炭素の供給ラインの流量調節バルブを繰作する。制御系はリバース設定。

【0017】
(3)解析・評価
1.定常状態で、二酸化炭素供給量を重量計の微分値より測定する。一方で、押出量を測定しておくことにより、樹脂中に溶解する濃度を測定し、吸収スペクトルの大きさとの相関をみる。
2.制御時に、スペクトルの大きさの計時的変化から濃度の安定性を評価する。

【0018】
(1)結果
近赤外分光装置により得られた吸収スペクトルの1例を図2に示す。図3には、二酸化炭素を注入しはじめてからの吸収スペクトルの変化を重ねて描いているが、図2に対し図3は横軸の波長1850nm乃至2100nmを拡大して示すものである。図3には、9つの試験番号1,2,3,4、・・・、9の結果を示した。試験番号1,2,3,4、・・・、9の試験条件を下記表1に示す。

【0019】

【表1】
JP0003482458B2_000002t.gif【0020】図3において、スペクトル全体が、流れや温度によって全体的に上下に移動し、そのためそのベースライン処理としてその上下移動を信号処理として除去する。それぞれの試験で得たスぺクトルにおいて、1607nmと2120nmの波長で吸光度を読み取り、それらの値をy1、y2とするとベースラインは、この2点を結ぶ直線y*-y1=(y2-y1)/(x2-x1)(x-x1)となる。このy*は、波長xの関数でy*(x)と書ける。スペクトルの波長xの生の吸光度をy(x)とすると、ycorrect(x)=y(x)-y*(x)は、ベースラインを補正した波長xでの吸光度となる。

【0021】
波長2010から2020nmのところにCOによる著しい変化が見られる。1607nmと2120nmの吸収スペクトルを直線的に結んだベースラインをとり補正を施した、二酸化炭素濃度の上昇に伴ってスペクトルに変化が生じた2019nmの吸収スペクトルの大きさと定常運転時に供給ガス量と押出量から測定した溶解ガス濃度との相関を見たのが図4である。この図から、CO濃度/吸光度が一定であることを示し、即ち、本発明の成形樹脂材料中に溶解する発泡剤低分子ガス濃度の制御方法が非常に信頼性が高いことが分かる。

【0022】
このデータより得られてた濃度一吸光スペクトルの検定曲線を使って、濃度をオンライン測定し制御したのが、図5である。この図から、15分以内に設定CO濃度5.0wt%に精度良く制御できることが分かる。この実験で、吸光スペクトルと濃度の相関式(検定曲線)の相関係数は0.997と非常に高いものが得られた。熱電対で温度を測る原理は、2種の合金の起電力が温度により分かることを示し、温度によりどれだけ起電力が変わるかの関係を記述するものが検量曲線となる。本実験は、それと同じことをするものである。即ち、ベースラインで除去した吸光度のうち、最も二酸化炭素濃度の変化に敏感な波長、今回の場合2019nmのところの吸光度ycorrect(x=2019)となる。この吸光度と樹脂中に溶解する二酸化炭素の検定曲線を作ったとき、どれだけ二酸化炭素濃度の変化に比例して、ycorrect(x=2019)が変化するかを評価したのが相関係数となる。1が完全に直線関係が成り立つ時の値である。

【0023】
検定曲線を作るために、安全な状態、定常な状態で押出機に流入した二酸化炭素の流入量と樹脂の押出量とを実測して二酸化炭素の濃度を測定した。検定曲線を作成することは必要な基礎作業であり、定常状態でない場合には流入した量の二酸化炭素がダイスに至るまでに遅れが出たり、生産段階では押出量を実測することが困難であることから、生産段階で二酸化酸素の濃度を上述した方法では求められない。従って、この手法による濃度のオンライン検知が生産段階で役立つ。

【0024】
(2)実働制御
吸収スペクトルをオンライン(実験では50秒に1回の割合)で収集し、その値から検定曲線を作成し、この検定曲線を使って溶融樹脂中のCO濃度を測定する。その濃度が設定値に等しくなるまで、二酸化炭素供給ラインの流量バルブを調整して二酸化炭素の供給量を調節する。

【0025】

【発明の効果】近赤外分光法により押出機内を流れる溶融樹脂中に溶解する二酸化炭素濃度をオンラインで計測し制御することにより、外乱に対して系を安定化できるとともにスタートアップ時の操作の効率化(自動化)を図り、高分子発泡成形工程での製品品質の安定化を図る。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4