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明細書 :親水化した酸化物固体表面の高速疎水化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3548794号 (P3548794)
公開番号 特開2001-158606 (P2001-158606A)
登録日 平成16年4月30日(2004.4.30)
発行日 平成16年7月28日(2004.7.28)
公開日 平成13年6月12日(2001.6.12)
発明の名称または考案の名称 親水化した酸化物固体表面の高速疎水化方法
国際特許分類 C01B 13/14      
C01G 23/04      
C03C 19/00      
C04B 41/80      
C30B 29/16      
FI C01B 13/14 A
C01G 23/04 C
C03C 19/00
C04B 41/80 Z
C30B 29/16
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願平11-343788 (P1999-343788)
出願日 平成11年12月2日(1999.12.2)
審査請求日 平成12年4月18日(2000.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】亀井 雅之
【氏名】三橋 武文
審査官 【審査官】平塚 政宏
参考文献・文献 特開平07-061900(JP,A)
特開平11-058831(JP,A)
特開昭50-051494(JP,A)
調査した分野 C01B 13/14
C01B 33/12
C01G 23/04
C30B 29/16
C03C 19/00
C04B 41/80
C09K 3/18
B41N 1/12
特許請求の範囲 【請求項1】
親水化した酸化物固体表面の所望の領域に加圧力や摩擦力による機械的刺激を印加することにより、当該領域を疎水性に変化させることを特徴とする酸化物固体表面の高速疎水化方法。
【請求項2】
酸化物固体表面の所望の領域に水分を補充した状態において、機械的刺激を印加することを特徴とする請求項1記載の酸化物固体表面の高速疎水化方法。
【請求項3】
酸化物がチタン原子を含む酸化物であることを特徴とする請求項1または2記載の酸化物固体表面の高速疎水化方法。
【請求項4】
チタン原子を含む酸化物がアナターゼ型またはルチル型もしくは両者の混合の結晶構造を持つ二酸化チタンであることを特徴とする請求項3記載の酸化物固体表面の高速疎水化方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷技術における画像形成や電子セラミックス分野における微細パターンの形成、各種物品表面の防曇、防汚技術に用いられる固体表面の親水化処理、疎水化処理方法に関し、特に、親水化した酸化物固体表面の全領域または任意の局所的領域を高速で疎水化する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種の物品表面に塗布した酸化チタン層などの固体表面に紫外線を照射することによって、疎水性であった酸化チタン層表面が親水化し、表面への水の接触角が5度程度以下になることは公知である。この現象を利用して、防曇、防汚の目的で各種物品の表面に酸化チタンを主成分とする被膜を形成して親水性とすることができる。一方、印刷などの画像形成システムにおいては、親水性表面を局所的に改質処理して疎水化し、親水・疎水性の画像を形成する方法(特公平5-30273号公報、特開平11-58831号公報等)や、電子セラミックスの分野で積層パターンを形成する際に部分的な疎水化処理を用いる方法(特開平5-97407号公報)なども知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、紫外線照射などで一度親水化した表面を元の疎水性能を持つ表面に戻すには、暗中保存プロセスを用いて数週間程度かかっていた。また、暗中保存法は試料表面が自発的に疎水性を回復するのを待つ手法であるため、試料表面の任意の領域だけを疎水性に変化させ、それ以外の領域を親水性に保つことが不可能であった。
【0004】
本発明は、印刷技術や防曇、防汚技術において従来は数週間程度かかっていた疎水化プロセスを実用レベルまで高速化するとともに、従来は不可能であった酸化物固体表面の全領域または任意の局所的な領域を親水性表面から疎水性表面に高速に変化させる手段を開発することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、親水化した酸化物固体表面において、疎水化をもくろむ領域に局所的に機械的刺激を印加することによって任意の領域の疎水化を高速で行うことが可能になることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、親水化した酸化物固体表面の所望の領域に加圧力や摩擦力による機械的刺激を印加することにより、当該領域を疎水性に変化させることを特徴とする酸化物固体表面の高速疎水化方法である。
また、本発明は、酸化物固体表面の所望の領域に水分を補充した状態において、機械的刺激を印加することを特徴とする上記の固体表面の高速疎水化方法である。
また、本発明は、酸化物がチタン原子を含む酸化物であることを特徴とする上記の高速疎水化方法である。
また、本発明は、チタン原子を含む酸化物がアナターゼ型またはルチル型もしくは両者の混合の結晶構造を持つ二酸化チタンであることを特徴とする上記の固体表面の高速疎水化方法である。
【0007】
酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、硫化カドミウム、酸化スズ、酸化珪素等の酸化物は、作製直後の清浄な表面、暗中保存された表面、または本発明の方法により疎水化処理を行った表面等では水の接触角が50°以上となり疎水性を示す。しかし、この疎水性表面に紫外線等を照射し、酸素欠陥を導入することにより、表面を水の接触角5°以下の親水性に変化させることができるので、これらの酸化物が親水性被膜の形成に利用されている。
【0008】
本発明において、機械的な刺激を印加する方法としては、表面を加圧手段で加圧するかワイパーや布などで摩擦すればよい。加圧力や摩擦力の程度は、酸化物表面の親水性の程度や所望の疎水性の程度に応じて実験的に定めればよいが、例えば、金属ロールなどの簡便な手法を用いる場合は、10グラム重/平方センチメートル程度かそれよりやや大きい程度の加圧力が一つの目安である。機械的な刺激を印加する際に、水分子またはその変成物(例えば、水酸基OHなど)が印加する表面に吸着、結合、または接触している状態において機械的刺激を印加することが好ましい。そのためには、親水化した酸化物表面に水分またはこれを含む液体を滴下または噴霧する、あるいは雰囲気を加湿するなどの手段を採ることが有効である。機械的刺激を与えるために用いる媒体に関しては特に制限はなく、固体の接触加圧、液体噴射、気体噴射等酸化物表面に適度の加圧力や摩擦力を与えることができれば、その手段を問わず有効である。
【0009】
印刷技術においては、前述の特開平11-58831号公報に示されるように、極性可逆層を表面に形成した支持ロールと押圧ローラを通過して描画パターンを受像体に転写した後、転写に用いられた極性可逆層の疎水化を実施するための加熱機構等により極性可逆層の疎水化が行われていた。
これに対し、本発明では、極性可逆層として酸化物固体を用いることによって、極性可逆層を表面に形成した支持ロールと押圧ローラの間を受像体が通過する時点で、極性可逆層の親水性の領域が各ローラーからの機械的刺激を受けて受像体を送り出した直後に当該層表面の疎水化が完了する。このため、疎水化処理のための加熱機構等を設置する必要がなくなり、装置の著しい簡素化、低価格化が可能になる。
【0010】
【作用】
親水性を有する酸化物固体表面に吸着、接触、または結合させた水分と固体表面に印加した機械的刺激は、親水性を有する酸化物固体表面の構造的に不安定な水酸基を除去し、その領域に酸素原子を再結合させる作用があると考えられる。その結果、酸化物固体表面は本来の疎水性を示すようになる。
【0011】
【実施例】
実施例1
アナターゼ型の結晶構造を持つ単結晶酸化チタン薄膜を、チタン酸ストロンチウム(001)単結晶基板上にエピタキシャル成長させた試料を酸化物固体表面として用いた。親水化処理は200Wのキセノンランプからの紫外線を光ファイバー経由で試料表面に20分間照射することで行った。図1に、この親水化処理した状態での試料表面における水滴の付着の様子を接触角測定装置(Tantecコンタクトアングルメーター)により基板側面方向から撮影した図面代用写真を示す。
【0012】
水滴A、Bを滴下した2ヶ所ともに接触角が5度以下の親水性であることを示している。アルカリ溶液で軽くエッチングした後、充分純水洗浄を行ったガラス棒を用いて右側の水滴Bが接触しているアナターゼ型酸化チタン単結晶表面の一部を100グラム重/平方センチメートル程度の摩擦力で数回機械的刺激の印加を行った後、水分の除去を行った。
【0013】
上記の局所的な領域の疎水化処理後に水滴A、Bの接触角を再測定した様子を図2(図1と同様な図面代用写真である)に示す。図2に示すように、左側の水滴Aは、5度以下の親水性を保持しているのに対して、局所的な領域に疎水化処理を行った右側の水滴Bの領域(図1において親水性であった領域)が疎水化し、接触角が80度程度に増大していることが分かる。この間、わずか30秒程度で親水表面から疎水表面へと変化させる制御が可能であった。また、図2に明らかなように、圧力印加の有無によって親水性・疎水性領域を局所的に作り分けることができ、親水性・疎水性の高速スイッチングが実現できた。
【0014】
実施例2
ルチル型の結晶構造を持つ単結晶試料を酸化物固体表面として用いた以外は、実施例1と同様に表面の局所的領域に圧力を印加した。図3に示したように、実施例1と同様の局所的な領域の親水性・疎水性の高速スイッチングが実現できたことが観測された。
【0015】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、疎水性を有する酸化物の表面を親水化した酸化物固体表面における親水性・疎水性のスイッチングを従来よりも1万倍以上(数週間→1分以下)高速化することができる。さらに、この高速性に加えて、従来不可能であった局所的な領域の親水性・疎水性の制御を実現し、種々の物品の表面において、任意領域の親水性・疎水性を制御したパターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】親水化処理を行ったアナターゼ型の結晶構造を持つ酸化チタン結晶表面における水滴の付着の様子を接触角測定装置により基板側面方向から撮影した図面代用写真。
【図2】実施例1により局所的領域に疎水化処理を行ったアナターゼ型の結晶構造を持つ酸化チタン結晶表面における水滴の付着の様子を接触角測定装置により基板側面方向から撮影した図面代用写真。
【図3】実施例2により局所的領域に疎水化処理を行ったルチル型の結晶構造を持つ酸化チタン結晶表面における水滴の付着の様子を接触角測定装置により基板側面方向から撮影した図面代用写真。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2