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明細書 :ハイブリッド太陽集熱器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3888820号 (P3888820)
公開番号 特開2001-221515 (P2001-221515A)
登録日 平成18年12月8日(2006.12.8)
発行日 平成19年3月7日(2007.3.7)
公開日 平成13年8月17日(2001.8.17)
発明の名称または考案の名称 ハイブリッド太陽集熱器
国際特許分類 F24J   2/42        (2006.01)
FI F24J 2/42 M
F24J 2/42 S
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2000-029833 (P2000-029833)
出願日 平成12年2月7日(2000.2.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成11年8月10日 社団法人空気調和・衛生工学会発行の「平成11年度 学術講演会講演論文集 ▲III▼」に発表
審査請求日 平成15年7月3日(2003.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】青木 秀敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】川端 修
参考文献・文献 登録実用新案第3051499(JP,U)
特開昭63-017355(JP,A)
特開昭61-046846(JP,A)
調査した分野 F24J 2/42
特許請求の範囲 【請求項1】
上部面によって覆われた本体の内部に、フィンがパイプの外周に多数取り付けられた液体を流すフィン付きパイプと、その周囲に位置し、前端に空気供給口を、後端に吸引ダクトおよびファンに接続された空気排出管を備えた空気流路と備えられ、太陽エネルギーをフィン付きパイプに集熱させてフィン付きパイプ内に温液体を得て、フィン付きパイプと上部面との間に発生する自然対流伝熱と輻射熱を空気流路内を流れる空気によ回収し、空気流路に暖気を得ることを特徴とするハイブリッド太陽集熱器。
【請求項2】
液体が水であることを特徴とする請求項1のハイブリッド太陽集熱器。
【請求項3】
本体の液体供給部に恒温液体槽が連通し、恒温液体槽よりフィン付きパイプに水が供給され、ファンによって空気流路に空気が流、水および空気二つの熱媒体れることを特徴とする請求項2のハイブリッド太陽集熱器。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ハイブリッド太陽集熱器に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、太陽エネルギーから温液体と暖気とを効率的に同時に得るハイブリッド太陽集熱器に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、暖房・給湯機器や、各種乾燥機器においては、その暖気または温液体の生成に石油の燃焼に頼っているのが一般的であり、その消費されるエネルギーは大量であるばかりではなく、地球温暖化の観点からも問題になっている。そこで現在では、省エネルギー機器あるいは自然エネルギー利用機器の開発の重要性が高まっている。特に、積雪寒冷地においては、そのエネルギー消費は莫大であり、その意味でも自然エネルギーを利用した機器の開発が急がれている。
【0003】
このような自然エネルギーの中でも、太陽エネルギーの利用についての検討が進められ、たとえばその利用手段の一つとして太陽エネルギーを用いて暖気または温液体を得る太陽集熱器が開発されてきている。
【0004】
従来より普及している太陽集熱器には液体式と空気式とがあり、例えば、図9に例示したように、その液体式太陽集熱器の集熱部においては、液体を流すパイプ(50)の外周に波板(51)を備え、太陽エネルギー(6)が、ガラスなどからなる上部面(52)を透過して、波板(51)を暖め、その熱はパイプ(50)内の液体に供給され、結果として、温液体(53)を得る構造となっている。しかし、この液体式太陽集熱器は、熱容量の大きい液体を用いることにより大量の熱を蓄熱できるものの、その集熱部からの放熱が多く効率が悪い。具体的には、太陽エネルギー(6)を受ける面が波板(51)であるために、高温となった波板(51)から自然対流伝熱と輻射伝熱(54)により、上部面(52)に熱が伝わり、上部面を通して外界に放射されてしまい、放熱量が大きいため、波板(51)の下を流れる液体に太陽エネルギー(6)が充分伝達できないという問題がある。
【0005】
さらに、この液体式太陽集熱器は、寒冷地では冬季にその配管が凍結破損する恐れがあり、寒冷地で利用することができない。
一方、空気式太陽集熱器は、空気を用いているために、寒冷地での利用は可能であるものの、蓄熱ができないという大きな欠点があり、効率の良い太陽集熱器とは言い難い。
【0006】
このため、配管の凍結破損の心配が少なく、集熱効率の高い太陽集熱器が望まれているものの、その実現には多くの課題を残しているのが実状である。
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、配管の凍結破損の心配が少なく、集熱効率の高い太陽集熱器を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、上部面によって覆われた本体の内部に、フィンがパイプの外周に多数取り付けられた液体を流すフィン付きパイプと、その周囲に位置し、前端に空気供給口を、後端に吸引ダクトおよびファンに接続された空気排出管を備えた空気流路と備えられ、太陽エネルギーをフィン付きパイプに集熱させてフィン付きパイプ内に温液体を得て、フィン付きパイプと上部面との間に発生する自然対流伝熱と輻射熱を空気流路内を流れる空気によ回収し、空気流路に暖気を得ることを特徴とするハイブリッド太陽集熱器を提供する。
【0008】
また、この出願の発明は、第2には、液体が水であることを特徴とする前記のハイブリッド太陽集熱器を提供し、第3には、本体の液体供給部に恒温液体槽が連通し、恒温液体槽よりフィン付きパイプに水が供給され、ファンによって空気流路に空気が流、水および空気二つの熱媒体れることを特徴とする前記のハイブリッド太陽集熱器をも提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0010】
まず特徴的なことは、この出願の発明は、従来の液体式太陽集熱器と空気式太陽集熱器との欠点を補うために、フィン付きパイプを集熱面として用い、フィン付きパイプからの放熱を空気流によって回収する機構を備え、温液体と暖気とを同時に獲得することができるようにしたことである。
【0011】
この出願の発明のハイブリッド太陽集熱器は、例えば図1に示したものをひとつの実施形態として示すことができる。
この図1のハイブリッド太陽集熱器では、本体(1)、温液体槽(2)、フロータンク(3)およびファン(4)から構成することができる。恒温液体槽(2)には液体供給部(21)から液体を供給し、その恒温液体を、液体排出部(22)からフロータンク(3)の液体供給部(31)へ供給する。フロータンク(3)は液体圧を一定に保ち、その恒温液体を、フロータンク(3)の排出部(33)から、本体(1)の液体供給部(11)に供給する。フロータンク(3)は排液体部(32)を備えてもよく、不必要な恒温液体はこの排液体部(32)から排出してもよい。
【0012】
本体(1)上部は、図2にも示したように、ガラスなどの上部面(18)により覆うことができる。この上部面(18)からは太陽エネルギー(6)が供給される。
【0013】
本体(1)内部には、その下板(10)の上にフィン付きパイプ(12)を密着させて配置させ、そのフィン付きパイプ(12)は、図2に例示したように、パイプ(121)の外周にフィン(122)を配置したものである。そして、本体(1)の液体供給部(11)に供給された恒温液体は、フィン付きパイプ(12)内を通過し、液体排出部(13)から、排出される。
【0014】
さらに、本体(1)には、空気流路(14)が備えられ、その前端には空気供給口(14A)、後端には吸引ダクト(15)と空気排出管(16)を備えており、空気排出管(16)には、例えば、空気量調節弁(17)を経由し、ファン(4)に接続してもよい。
【0015】
このファン(4)から空気を吸引すると、本体(1)の空気流路(14)前端の空気供給口(14A)から、本体(1)内部に空気が吸引され、吸引ダクト(15)、および空気排出管(16)を通過し、ファン(4)から外部に排出される。
【0016】
従来までの太陽集熱器における集熱面では、黒く塗られたステンレス波板を用いることが一般的であるが、この発明においては、その代わりにフィン付きパイプ(12)を用いたところに大きな特徴がある。
【0017】
この発明においては、本体(1)内部周囲には、断熱材(19)により外部と断熱することが望ましく、また、フィン(122)とパイプ(121)の材質、フィン(122)のピッチ、パイプ(121)内径、および、パイプ(121)外径などは、特に限定されるものではない。
【0018】
この発明のハイブリッド太陽集熱器は、配管の凍結の心配がある冬季には、フィン付きパイプ(12)に液体を流すことなく、空気流路(14)のみに空気を流して暖気を得て、暖房などに使用することができる。また、春季と秋季には、フィン付きパイプ(12)に液体を流し、さらに空気流路(14)に空気を流し温液体と暖気とを得て、総合集熱効率をあげることができる。さらには、暖房が不要の夏季には、フィン付きパイプ(12)に液体のみを流して、その得られた熱を蓄熱し、温液体を最大限に利用することができる。
【0019】
このように、この発明のハイブリッド太陽集熱器は、季節によって流す媒体を変えることにより、年間の稼働率を大幅に上げることができる。
また、この発明においては、図2に例示したように、集熱部と上部面(18)との間に発生する自然対流伝熱と輻射伝熱(54)を、空気流路(14)内の空気により効率よく回収し、かつ、放熱を少なくするため、従来のような波板ではなく、フィン付きパイプ(12)としたことに大きな特徴がある。
【0020】
このフィン付きパイプ(12)は熱伝達係数の小さい空気側の伝熱を促進させるため、薄い円板状の突起板(フィン)(122)を円管であるパイプ(121)の周囲に、多数取り付けて伝熱面積を大きくしたものである。
【0021】
このようなフィン(122)は、従来まで、エアコンやファンコイル等の空調機器に良く用いられているものの、太陽集熱器に利用することは、まったく考えられてはいなかった。
【0022】
さらに一般的に、集熱部と上部面間で暖まった空気(5)の熱をフィン付きパイプ(12)で効率良く温液体として回収したとしても、空気が存在する限り対流と輻射により、熱が上部面へ伝わり、大きな熱損失となってしまう。これに対し、この発明においては、暖まった空気を常に吸引することによって、損失となるべき空気を暖気として利用するようにしている。
【0023】
なお、この発明においては、流通させる液体は水をはじめとする各種の液体、液媒体であってよい。
水は温水としての利用の観点からは最も代表的なものである。
【0024】
つまり、この発明のハイブリッド太陽集熱器において、貯湯タンクの水をポンプによりフィン付きパイプに供給し、かつ、ファンによって空気流路に空気を流すことで、水・空気という二つの熱媒体を流すことを可能としているのである。
【0025】
以下実施例を示し、さらにこの発明について詳しく説明する。
【0026】
【実施例】
実施例1
この発明のハイブリッド太陽集熱器を図1および図2のように構成し、その液体路を変化させて、集熱効率に及ぼす影響を検討した。
【0027】
ハイブリッド太陽集熱器は、上部面としての3mm厚透明板ガラス、フィン付きパイプ、0.3mm厚トタン板、30mm厚断熱材および木枠から構成されており、その本体は縦0.205m、横0.62m、長さ1.31m、受光する上部面ガラスは0.98×0.6m、フィン付きパイプの総伝熱面積は6.422m2 である。
【0028】
太陽集熱器の太陽集熱面は黒色塗装したフィン付きパイプと装置底面のトタン板からなり、液体として水を用いて温水を得るようにした。
この実施例では、ソーラーシミュレーターを製作し、安定した日射条件の下で実験を行った。ソーラーシミュレーターは13個の陽光ランプからなる。ガラス表面での日射量は快晴時の約1/3であり、上部面上での日射量のばらつきは±10%以内である。実験は恒温液体槽から入口空気温度と同じ温度の水をフロータンクより装置内に流入し、空気はファンにより吸引した。
【0029】
装置内各部の温度は、装置内の29ケ所に設置された0.2mmCu-Co熱電対により一定時間毎に計測した。また、この実施例では、フィン付きパイプ部のみの集熱特性を求めるため、フィン両端の曲がり管部分を断熱した。
【0030】
フィン付きパイプの流れ経路は図に示したように、並列タイプH型と直列タイプI型の2通りを用いた。この2つのタイプにおいて、温水と空気の温度上昇の結果は、図4に示した通りであった。
【0031】
この図から、空気と水の温度上昇はI型の方が、約0.3~0.5℃大きかった。これは、流路をH型からI型にしたことにより、液体がパイプ内を流れる時間が長くなって液体温が上昇し、パイプからの放熱量も増加したものと考えられる。
実施例2
実施例1で用いたI型の液体路の太陽集熱器について、集熱特性に及ぼす傾斜角度、液体量および空気量の影響を検討した。まずはじめに、液体量5.5l/hr、空気量0.52m3 /hrと一定にし、ソーラーシミュレータからの光線に対して、太陽集熱器を液体平面に対して0°~30°の範囲内で5°ずつ傾斜させて、フィンの日射受熱面積を拡大させた場合に、集熱効率にどのような影響を及ぼすのかを検討した。その結果は、図5に示した通りであった。
【0032】
この図5より、傾斜をつけ、フィンの日射面積を拡大させても、空気の集熱効率の変化は見られないが、パイプ部に直接日射があたるようにさせた水の集熱効率は、高い値を示した。これは水平にすることにより、フィン部ではなく直接パイプ部に日射が当たり水温が上昇するので、温度上昇した温水からの放熱を空気が回収したためと考えられる。
【0033】
次に、液水平時における温水・暖気流量の最適値を求めるため、それぞれの流量を変化させた場合の集熱効率の値を求めた。まず各部温度変化の一例として、水量2l/hr、空気量0.5m3 /minの場合における、太陽集熱器の出入口部分の温度の経時変化は、図6に例示したとおりであった。各部入口温度と外気温がほぼ一定に保たれた条件下で、空気より水の方が温度上昇が大きいが、集熱量としては空気集熱量の方が約3.5倍大きくなっている。
【0034】
空気量を0.5m3 /minと一定にし、水量を可変にした場合の集熱効率の変化は、図7に示した通りであった。
水を流さない場合を除き、総合集熱効率の変化はあまり見られないが、水を多く流すほど空気集熱効率は下がり、温水集熱効率は反対に上昇していく。これは水を流すことでフィン付きパイプの温度が下がり、空気の熱回収率が下がったためと考えられる。このように、水を流すことにより総合集熱効率は、15%増加した。これは、熱損失35%のうち15%をが回収したといえる。
【0035】
次に水量一定、空気量可変の場合について検討した。水量を6l/hrと一定にし、空気量を可変した場合の集熱効率の変化は、図8に示した通りであった。空気を多く流すほど空気集熱効率は上昇し、温水集熱効率は反対に下がる。これは、空気を多く流すことによって、上部面とトタン板間の装置内部空間にこもっていた熱とフィン付きパイプ内に蓄熱された熱を回収した結果によるものと考えられる。そして、水量6l/hr、空気量0.4m3 /minの場合に空気集熱効率と温水集熱効率がほぼ同じ値となった。その際の総合集熱効率は82.5%と最高の値を示した。この値は透明板ガラスの日射取得率の値に近く、非常に効率のよいことを裏付けるものである。
【0036】
従来の給湯を目的とする強制循環式および自然循環式太陽集熱器の集熱効率が40~60%であることを考えると、熱損失を回収する本発明のハイブリッド太陽集熱器は、民生用の暖房・給湯機器としても適したものと言える。
【0037】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、この発明により、配管が凍結破損の心配が少なく、集熱効率の高い太陽集熱器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の構成を示した概略図である。
【図2】この発明の本体内部を示した断面図である。
【図3】この発明の実施例であって、フィン付きパイプの配管形態と水の流路を示した概念図である。
【図4】この発明の実施例であって、フィン付きパイプの形状による温度上昇を示した関係図である。
【図5】この発明の実施例であって、傾斜角度と集熱効率との関係を示した関係図である。
【図6】この発明の実施例であって、出入口部分の温度と時間との関係を示した関係図である。
【図7】この発明の実施例であって、水量と集熱効率との関係を示した関係図である。
【図8】この発明の実施例であって、空気量と集熱効率との関係を示した関係図である。
【図9】従来の太陽集熱器を示した断面図である。
【符号の説明】
1 本体
10 下板
11 液体供給部
12 フィン付きパイプ
121 パイプ
122 フィン
13 液体排出部
14 空気流路
14A 空気供給口
15 吸引ダクト
16 空気排出管
17 空気量調節弁
18 上部面
19 断熱材
2 高温液体槽
21 液体供給部
22 液体排出部
3 フロータンク
31 液体供給部
32 排液体部
33 排出部
4 ファン
5 空気
50 パイプ
51 波板
52 上部面
53 温液体
54 自然対流伝熱と輻射伝熱
6 太陽エネルギー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8