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明細書 :超微小押し込み試験装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4008176号 (P4008176)
公開番号 特開2001-221730 (P2001-221730A)
登録日 平成19年9月7日(2007.9.7)
発行日 平成19年11月14日(2007.11.14)
公開日 平成13年8月17日(2001.8.17)
発明の名称または考案の名称 超微小押し込み試験装置
国際特許分類 G01N   3/40        (2006.01)
G01B   7/34        (2006.01)
G01B   9/04        (2006.01)
G01B  11/00        (2006.01)
FI G01N 3/40 Z
G01B 7/34 Z
G01B 9/04
G01B 11/00 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2000-034225 (P2000-034225)
出願日 平成12年2月10日(2000.2.10)
審査請求日 平成15年12月5日(2003.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】長島 伸夫
【氏名】宮原 健介
【氏名】松岡 三郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】森 竜介
参考文献・文献 実開平06-028708(JP,U)
特開平10-185802(JP,A)
特開平08-159941(JP,A)
特開平10-038547(JP,A)
特表平10-511176(JP,A)
特表平10-506457(JP,A)
特開平05-281119(JP,A)
特開平11-271202(JP,A)
特公平06-025721(JP,B2)
特開平03-259728(JP,A)
特開平02-281125(JP,A)
米国特許第04820051(US,A)
米国特許第04852397(US,A)
調査した分野 G01N 3/00-3/62
特許請求の範囲 【請求項1】
探針と圧子が配設された両持ちレバーを具備するレバー台と、レバー台を3軸方向に移動するための移動機構と、圧子を試料に押し込むための押し込み機構と、探針および圧子の変位測定用の変位計と、探針および圧子の位置決定および試料表面の観察に用いられる光学受像装置とを具備する超微小押し込み試験装置であって、圧子を試料表面に押し込み、押し込み力および押し込み深さの測定による硬度測定機能と、探針の変位量から試料表面の形状を取得する原子間力顕微鏡機能と、光学受像装置による試料表面観察を行なう光学顕微鏡機能とを複合して併せ持つことを特徴とする超微小押し込み試験装置。
【請求項2】
レバー台中央部に両持ちレバー設置用の穴が開口されている請求項1の超微小押し込み試験装置。
【請求項3】
レバー台側面に両持ちレバー設置用の溝が掘られてている請求項1または2の超微小押し込み試験装置。
【請求項4】
両持ちレバーの一部に圧子を備え、また、両持ちレバーの一部に位置合わせ用の目印が付加されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの超微小押し込み試験装置。
【請求項5】
レバー台には複数の探針が備えられている請求項1ないし4のいずれかの超微小押し込み試験装置。
【請求項6】
レバー台には複数の両持ちレバーが備えられている請求項1ないし5のいずれかの超微小押し込み試験装置。
【請求項7】
探針がシリコンもしくはシリコン類似の鋭利な形状に加工しやすい物質であって、圧子がダイヤモンドもしくはダイヤモンド類似の硬質物質である請求項1ないし6のいずれかの超微小押し込み試験装置。
【請求項8】
マイクロメータオーダー精度でのレバー台の移動をリモートコントロールする機構を有する請求項1ないし7のいずれかの超微小押し込み試験装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、超微小押し込み試験装置に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、機能材料における微細組織に関する力学特性を評価するための微小硬度測定や材料表面観察を可能とし、機能材料の評価や、その開発の指針の確立に有用である、新しい超微小押し込み試験装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、電気電子、通信などの諸産業においては、その材料の高性能化および高度化の発展には著しいものがあり、それら材料の高性能化および高度化を支える技術のひとつとして、結晶粒界や、亀裂先端近傍の微小領域、薄膜、材料表面の酸化膜、積層膜、あるいはイオン注入層などにおいて、その表面の硬さやヤング率を精度よくナノスコピックレベルで測定することが重要な課題になっている。
【0003】
従来、材料の表面硬度の測定を目的として、ビッカーズ硬さ試験機が用いられてきた。また、最近になって原子間力顕微鏡(AFM)をそのまま使用した表面硬度測定方法も提案されている。しかし、これらの従来の方法による測定で、ナノスコピックレベルの精度を得ることは難しい。
【0004】
この出願の発明者らは、上記の従来の測定方法に代わる高い精度のナノスコピックレベルの測定を可能とする新しい表面硬度測定装置を提案した(特許2725741号)。この装置は、図22に例示するように、中間部に探針(202)を配設した両持ちレバー(201)と、その両持ちレバー(201)を固定する両持ちレバー台(204)、両持ちレバー用の1軸アクチュエータ(205)、試料の位置を変化させる観察用3軸アクチュエータ(207)、並びに変位計(206)とを備えた表面硬度測定装置であって、両持ちレバー(201)に配設した探針(202)を試料(203)表面に垂直に押し込み、この時の押し込み力と押し込み深さとを測定して微小硬さ測定を行うものである。さらに、形態の一例として図23に示すように、両持ちレバー台(204)の対向するレバーアーム(214)(215)の間には、その間隔を調整して両持ちレバーに加わる張力を調整する張力調節手段が設けられている。その張力調節手段は、その一端部が一方のレバーアーム内側に当接するネジ手段(213)、および、両持ちレバー台の対向するレバーアームの各々を、切欠き部の配設によってバネ体(216)(217)とすることによってなされる。
【0005】
以上に示したこの出願の発明者らによる発明(特許2725741号)により、押し込み試験によるナノスコピックレベルでの材料硬度測定が可能となったが、一方で押し込み試験を行う探針(202)と表面を観察するための探針(202)が同一であるため(図22参照)、観察時の分解能が不十分となる場合があり、問題となっていた。これを解決するために、硬度測定と表面観察を別の試験機で行うことは、二つの試験機において試料の同一位置を再現する手段の困難さや、試験の効率化と試験機の省コスト化という観点から見て、望ましい解決手段とはいえない。
【0006】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、超微小領域における材料表面の硬度測定機能とともに高精度のAFM表面観察機能を併せ持つ試験装置を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、探針と圧子が配設された両持ちレバーを具備するレバー台と、レバー台を3軸方向に移動するための移動機構と、圧子を試料に押し込むための押し込み機構と、探針および圧子の変位測定用の変位計と、探針および圧子の位置決定および試料表面の観察に用いられる光学受像装置とを具備する超微小押し込み試験装置であって、圧子を試料表面に押し込み、押し込み力および押し込み深さの測定による硬度測定機能と、探針の変位量から試料表面の形状を取得する原子間力顕微鏡機能と、光学受像装置による試料表面観察を行なう光学顕微鏡機能とを複合して併せ持つことを特徴とする超微小押し込み試験装置を提供する。
【0008】
また、この出願の発明は、第2には、レバー台中央部に両持ちレバー設置用の穴が開口されている前記装置を、第3には、レバー台側面に両持ちレバー設置用の溝が掘られている前記装置を、第4には、両持ちレバーの一部に圧子を備え、また、両持ちレバーの一部に位置合わせ用の目印が付加されていることを特徴とする前記装置を提供する。
【0009】
そして、また、この出願の発明は、第5には、レバー台には複数の探針が備えられている装置を、第6には、レバー台には複数の両持ちレバーが備えられている前記装置を、第7には、探針がシリコンもしくはシリコン類似の鋭利な形状に加工しやすい物質であって、圧子がダイヤモンドもしくはダイヤモンド類似の硬質物質である前記装置を提供し、さらには、第8には、マイクロメータオーダー精度でのレバー台の移動をリモートコントロールする機構を有する前記の超微小押し込み試験装置を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0011】
この出願の発明の超微小押し込み試験装置は、硬度測定機能、原子間力顕微鏡機能、および光学顕微鏡機能とを併せ持つものであり、それぞれの機能を実現するための機構を試験装置内部に備える。
【0012】
この出願の発明の超微小押し込み試験装置は、例えば図1に示したように、シリコン探針(1)およびダイヤモンド圧子(2)を取り付けた両持ちレバー(3)を備え持つレバー台(4)と、ダイヤモンド圧子(2)を試料(5)に押し込むときの荷重を制御するためのアクチュエータ(6)と、レバー台を移動するための三軸広域サーボモータ(7)と、測定の際に試料の位置を移動させる三軸精密アクチュエータ(8)および一軸広域サーボモータ(9)と、原子間力顕微鏡測定の際にシリコン探針(1)やダイヤモンド圧子(2)の変位量を測定するための垂直変位計(10)とを備えている。
【0013】
試料の直上には、CCDカメラ等の光学受像装置(11)が備え付けられており、光学顕微鏡測定時における表面観察および原子間力顕微鏡測定時におけるシリコン探針(1)やダイヤモンド圧子(2)の位置決定の際に用いられる。前記の垂直変位計(10)より出入射されるレーザーが屈折するハーフミラー(12)が設置され、垂直変位計(10)は、光学受像装置(11)による撮像を妨げないように光学受像装置(11)の視野外に設置される。また、光学受像装置(11)および垂直変位計(10)と試料(5)の間には対物レンズ(13)が設置される。レバー台の移動機構である三軸広域サーボモータ(7)は、レバー台をマイクロメータオーダーの精度でリモートコントロールする機構を備えている。
【0014】
レバー台(4)はアクチュエータ(6)と接続され、垂直方向に移動可能である。図2に示すように、このレバー台(21)は口の字型をしており、開口した部分に、ダイヤモンド圧子(22)を具備する両持ちレバー(23)が取り付けられることになる。レバー台(21)側面には、両持ちレバー(23)を取り付ける際の補助線となる溝(24)が掘られている。また、両持ちレバー(23)の上面(光学受像装置で撮影される側)には、位置合わせのための目印がマーキングされており、ダイヤモンド圧子による押し込み試験とシリコン探針による原子間力顕微鏡測定とを定位置において複数回の繰り返すような場合には、光学受像装置で撮影される目印の位置を元にして位置合わせが行なわれる。
【0015】
また、レバー台(21)の先端には、シリコン探針(25)が備え付けられる。更に詳しくは、レバー台(21)の先端には、シリコン探針接続機構付き振動型アクチュエータ等のアダプター(26)が備え付けられており、その先端にシリコン探針(25)が接続される。アダプター(26)には傾斜が与えられており、シリコン探針(25)の先端が下方に傾斜されている。
【0016】
もちろん、この発明においては探針はシリコン探針(1)(25)に限られることはない。また圧子もダイヤモンド圧子(2)(22)に限られることはない。たとえばダイヤモンド類似の各種の硬質物質であってよい。ただ、現状においては安定性、測定の精度等の観点からシリコンおよびダイヤモンドとすることが適当である。
【0017】
次にこの出願の発明の超微小押し込み試験装置が持つ3つの機能モード(光学顕微鏡機能モード、硬度測定機能モード、原子間力顕微鏡機能モード)を実現する形態について、図3~5を用いて説明する。
【0018】
まず、光学顕微鏡機能モードにおいては、図3に示すように、ダイヤモンド圧子およびシリコン探針の備え付けられたレバー台を、光学受像装置の視野外へ固定し、三軸精密アクチュエータおよび一軸広域サーボモータにより試料の位置を移動する。
【0019】
原子間力顕微鏡機能モードにおいては、図4に示すように、三軸広域サーボモータによりシリコン探針の先端部を垂直変位測定点である光学受像装置の撮影画像中心に固定し、三軸精密アクチュエータにより試料を水平平面方向に走査し、原子間力顕微鏡測定を行なう。この原子間力顕微鏡機能モードにおいては、シリコン探針の代替としてダイヤモンド圧子を利用し、試料表面の形状観察を行なうことも可能である。ただし、ダイヤモンド圧子を利用した場合には、シリコン探針を用いた場合より、得られる観察像の解像度は若干低いものとなる。
【0020】
硬度測定機能モードにおいては、図5に示すように、三軸広域サーボモータによりダイヤモンド圧子の真上の位置を垂直変位測定点である光学受像装置の撮影画像中心に固定し、一軸アクチュエータにより試料にダイヤモンド圧子を押し込み、そのときの押し込み荷重と押し込み深さを測定することにより、試料表面の硬度測定を行なう。
【0021】
これらの3つの機能モードを組み合わせて実行することにより、試料を移動させことなく、試料表面の光学顕微鏡測定、押し込みによる硬度測定試験、および、圧痕の原子間力顕微鏡測定を行うことが可能となる。
【0022】
また、レバー台の移動機構である三軸広域サーボモータは、レバー台をマイクロメータオーダーの精度でリモートコントロールする機構を備えていることから、それぞれの機能モードにおけるレバー台の位置はマイクロメータオーダーの精度で決定する事が可能である。
【0023】
具体的な測定の手順としては、例えば、図6のフロー図に示すように、試料をセットし(▲1▼)、光学顕微鏡機能モードにおいて、試料表面の観察および垂直変位測定点の位置決定を行ない(▲2▼)、次いで原子間力顕微鏡機能モードにおいて、シリコン探針(AFM探針)による押し込み硬度測定試験前の高分解能原子間力顕微鏡観察を行ない(▲3▼)、そして硬度測定機能モードにおいて、ダイヤモンド圧子の押し込み硬度測定を行ない(▲4▼)、さらには原子間力顕微鏡機能モードにおいて、圧痕の高分解能原子間力顕微鏡観察を実施する(▲5▼)。また、例えば図7に示すような手順により、1体の試料に対して複数回の試験を行ない、試料表面の硬度分布測定を実施することも可能である。
【0024】
もちろん、この出願の発明の超微小押し込み試験装置による測定の手順は、以上に例示した手順に限定されるものではなく、条件に応じて最適な構成を採るものである。
【0025】
また、さらに説明すると、この発明においては、図8のように押し込み試験用圧子つきレバーとAFM観察用レバーを複数個取り付けたレバー台を構成してもよい。この場合、押し込み試験やAFM観察を行う場合に使用する圧子や探針を必要に合わせて自由に選択することが可能となる。
【0026】
図9は複数の押し込み試験用圧子つきレバーが必要となる理由を示す1つの例である。横軸は圧痕の大きさであり、縦軸は測定された硬さである。材料Aでは圧痕が小さくなるにつれて硬さが低下している。一方、材料Bでは圧痕の大きさに関わらず硬さは一定である。これは、両者の強化メカニズムが異なることを示す重要な情報である。このような硬さの圧痕依存性を取得する場合には幅広い範囲の押し込み力で試験を行うため、高荷重用や低荷重用に合わせて複数の押し込み試験用圧子つきレバーを使う必要が出てくる。
【0027】
AFM観察用レバーについても、通常のAFM観察用に加えて、探針を上下に振動させる特殊な測定用や、AFM探針は傷つきやすいことから予備として、同様に複数個をレバー台に取り付けることが場合によって必要となる。
【0028】
図8においては、一つの例示として、3個のAFM観察用レバーを、シリコン探針(25)を通常のアダプター(26A)、振動用のアダプター(26B)、予備用のアダプター(26C)の各々に装着することによって構成し、また、ダイヤモンド圧子(3)を備えた2個の両持ちレバーとして、低荷重用両持ちレバー(23A)と、高荷重用両持ちレバー(23B)とを構成している。
【0029】
この出願の発明は、たとえば以上のとおりの特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。
【0030】
【実施例】
この出願の発明の超微小押し込み試験装置として図1~図7の構成のものを用いて、タングステン単結晶およびSCM440鋼の電解研磨面の硬度測定および原子間力顕微鏡測定を実施した。
【0031】
図10は、シリコン探針の位置決定の様子を光学受像装置(CCDカメラ)により撮影したものである。このとき、シリコン探針の先端部が、垂直変位測定点(図中の2重円)に一致するように、レバー台の移動機構である三軸広域サーボモータの制御がなされる。
【0032】
同様に、図11は、ダイヤモンド圧子の位置決定の様子をCCDカメラにより撮影したものである。ダイヤモンド圧子の位置決定の際、CCDカメラによって撮影されるのはダイヤモンド圧子を備えた両持ちレバーの上面であるから、あらかじめダイヤモンド圧子の位置の目印となるように、両持ちレバーの上面にマーキングを行なう。この実施例においては、2つのビッカース痕を目印として付加し、2つのビッカース痕を結ぶ線上の中点にダイヤモンド圧子が来るように設定した。
【0033】
タングステン単結晶電解研磨面に対して、押し込み硬度測定試験と原子間力顕微鏡測定を行なった。
図12は、この出願の発明の超微小押し込み試験装置の硬度測定機能モードにおいて測定されたタングステン単結晶電解研磨面の押し込み力-押し込み深さ曲線である。
【0034】
押し込み試験の後に、原子間力顕微鏡機能モードにおいて、シリコン探針とダイヤモンド圧子を用いてタングステン単結晶電解研磨面の原子間力顕微鏡像を取得した。図13にシリコン探針を用いて得られた圧痕の原子間力顕微鏡像を、図14にダイヤモンド圧子を用いて得られた圧痕の原子間力顕微鏡像をそれぞれ示す。図13と図14を比較することにより、シリコン探針による原子間力顕微鏡像の方が、圧痕の稜が鮮明に得られており、ダイヤモンド圧子による原子間力顕微鏡像と比較して水平方向の分解能が高いことがわかる。
【0035】
また、図13と図14に示した原子間力顕微鏡モードにおけるシリコン探針とダイヤモンド圧子による圧痕の断面図を比較した結果を図15に示す。シリコン探針による結果の方が圧子による結果に比べて、圧痕の最深部まで観察できていることがわかる。このことから、深さ方向に対する精度についても、シリコン探針の方が高いことがわかる。これは、シリコン探針の方がダイヤモンド圧子に比べて、先端形状が鋭いためと考えられる。
【0036】
さらに、SCM440鋼電解研磨面に対して、押し込み硬度測定試験と原子間力顕微鏡測定を行なった。
シリコン探針によって得られた押し込み硬度測定試験前における試料表面の分子間力顕微鏡像を図16に示す。試料は、JIS規格のSCM440鋼(C:0.38~0.43%、Si:0.15~0.35%、Mn:0.60~0.85%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.90~1.20%、Mo:0.15~0.30%)の電解研磨面である。この試料表面の図中における領域1~3の3箇所にダイヤモンド圧子による押し込み硬度測定試験を実施した。図17にシリコン探針を用いて得られた圧痕の原子間力顕微鏡像を、また、図18にシリコン探針を用いて得られた圧痕の原子間力顕微鏡像の拡大図を示した。図19にはダイヤモンド圧子を用いて得られた圧の原子間力顕微鏡像を、図20にはダイヤモンド圧子を用いて得られた圧痕の原子間力顕微鏡像の拡大図をそれぞれ示した。これらの図からも、前記の通り、ダイヤモンド圧子と比較して、シリコン探針によって得られる像の解像度が高いことがわかる。
【0037】
シリコン探針によれば微細な炭化物の分布形状もはっきりと識別することが可能である。図16、17、18から、領域2には炭化物が少なく、押し込みが行なわれた箇所には炭化物が存在していないことがわかる。同様に、領域3には炭化物が最も多く含まれ、押し込みが実施された箇所は炭化物の真上であることがわかる。図21に示された押し込み硬度測定試験結果からは、領域2の硬度が最も低く、領域3の硬度が最も高いことがわかり、炭化物の存在の有無が硬度に影響を与えていることが考慮される。
【0038】
このように、高分解能の原子間力顕微鏡像は、押し込み力-押し込み深さ曲線を解釈する上でも非常に有用であり、微小領域における材料力学特性の研究開発には非常に重要である。
【0039】
【発明の効果】
以上、詳しく説明した通り、この出願の発明により、微小領域における機能材料の研究開発に有用な超微小押し込み試験装置が提供される。特に半導体や超鉄鋼などの先端機能材料の微細構造の力学的性質を解明し、これらの材料開発を大きく発展させるものと期待される。
【0040】
さらに、光学顕微鏡能、原子間力顕微鏡機能、および硬度測定機能を併せ持つ複合機能試験装置でありながら、従来の押し込み硬度測定装置と同等の設置スペースしか必要としない点や、また、それぞれの機能を持つ装置を製造するより遥かに低いコストで製造が実現する点を考えれば、この出願の発明の間接的な効果は非常に高いといえよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明である超微小押し込み試験装置の構成を示す概略図である。
【図2】この出願の発明である超微小押し込み試験装置のレバー台の構成を示す概略図である。
【図3】この出願の発明である超微小押し込み試験装置の光学顕微鏡機能モードにおける形態を示す概略図である。
【図4】この出願の発明である超微小押し込み試験装置の原子間力顕微鏡機能モードにおける形態を示す概略図である。
【図5】この出願の発明である超微小押し込み試験装置の硬度測定機能モードにおける形態を示す概略図である。
【図6】この出願の発明である超微小押し込み試験装置を用いた測定の手順の一例を示す流れ図である。
【図7】この出願の発明である超微小押し込み試験装置を用いた測定の手順の一例を示す流れ図である。
【図8】複数の探針と圧子を備えたレバー台の例を示した構成概略図である。
【図9】圧痕サイズと硬さとの関係を説明した概略図である。
【図10】この出願の発明の実施例におけるシリコン探針の位置決定の様子を撮影した写真である。
【図11】この出願の発明の実施例におけるダイヤモンド圧子の位置決定の様子を撮影した写真である。
【図12】この出願の発明の実施例において測定されたタングステン単結晶電解研磨面の押し込み力-押し込み深さ曲線を示すグラフである。
【図13】この出願の発明の実施例においてシリコン探針を用いて取得されたタングステン単結晶電解研磨面上の圧痕の原子間力顕微鏡像である。
【図14】この出願の発明の実施例においてダイヤモンド圧子を用いて取得されたタングステン単結晶電解研磨面上の圧痕の原子間力顕微鏡像である。
【図15】この出願の発明の実施例においてシリコン探針およびダイヤモンド圧子で測定されたタングステン単結晶電解研磨面の圧痕の断面図である。
【図16】この出願の発明の実施例においてシリコン探針を用いて取得された押し込み硬度測定試験前のSCM440鋼電解研磨面の原子間力顕微鏡像である。
【図17】この出願の発明の実施例においてシリコン探針を用いて取得された押し込み硬度測定試験後のSCM440鋼電解研磨面の原子間力顕微鏡像である。
【図18】図17で示されたSCM440鋼電解研磨面における圧痕の原子間力顕微鏡像の拡大図である。
【図19】この出願の発明の実施例においてダイヤモンド圧子を用いて取得された押し込み硬度測定試験後のSCM440鋼電解研磨面の原子間力顕微鏡像である。
【図20】図19で示されたSCM440鋼電解研磨面における圧痕の原子間力顕微鏡像の拡大図である。
【図21】この出願の発明の実施例において測定されたSCM440鋼電解研磨面の押し込み力-押し込み深さ曲線を示すグラフである。
【図22】従来の表面硬度測定装置の構成を示した概略図である。
【図23】従来の表面硬度測定装置におけるレバーおよびレバー台の構成を示した概略図である。
【符号の説明】
1 シリコン探針
2 ダイヤモンド圧子
3 両持ちレバー
4 レバー台
5 試料
6 アクチュエータ
7 三軸広域サーボモータ
8 三軸精密アクチュエータ
9 一軸広域サーボモータ
10 垂直変位計
11 光学受像装置
12 ハーフミラー
13 対物レンズ
21 レバー台
22 ダイヤモンド圧子
23 両持ちレバー
24 溝
25 シリコン探針
26 アダプター
201 両持ちレバー
202 探針
203 試料
204 レバー台
205 1軸アクチュエータ
206 変位計
207 観察用3軸アクチュエータ
213 ネジ手段
214 レバーアーム
215 レバーアーム
216 バネ体
217 バネ体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22