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明細書 :工具参照面計算方法、工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び工具参照面計算装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3535442号 (P3535442)
公開番号 特開2001-242919 (P2001-242919A)
登録日 平成16年3月19日(2004.3.19)
発行日 平成16年6月7日(2004.6.7)
公開日 平成13年9月7日(2001.9.7)
発明の名称または考案の名称 工具参照面計算方法、工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び工具参照面計算装置
国際特許分類 G05B 19/4093    
B23Q 15/00      
G06F 17/50      
FI G05B 19/4093 L
B23Q 15/00
G06F 17/50
請求項の数または発明の数 12
全頁数 26
出願番号 特願2000-056843 (P2000-056843)
出願日 平成12年3月2日(2000.3.2)
審査請求日 平成14年4月16日(2002.4.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】乾 正知
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】所村 美和
参考文献・文献 特開 平6-254744(JP,A)
特開 平4-205210(JP,A)
特開 平4-133103(JP,A)
調査した分野 G05B 19/4093
B23Q 15/00 301
G06F 17/50
特許請求の範囲 【請求項1】
数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算方法であって、
加工対象物の多面体モデル及び半径rのボールエンドミルの工具形状に関する情報を入力するステップと、
座標系を用意し、多面体モデルのXY平面への投影図形を、工具半径r分膨らませた図形を覆うように、直交格子を生成するステップと、
前記入力するステップにより入力された加工対象物の多面体モデル及びボールエンドミルの工具形状に関する情報に基づいて、工具の中心を表す工具参照点を中心に工具を180度回転させて工具参照点が加工対象物の表面に沿って移動させたときの工具の掃引形状の最上面を工具参照面として生成する際、加工対象物の多面体モデル頂点部分に対応して半径rの球形状及び辺部分に対応して半径rの円筒形状及び多角形部分に対応して厚さ2rの厚板形状をそれぞれ配置するステップと、
前記配置するステップにより生成された工具参照面を形成する球形状、円筒形状及び厚板形状に基づき、(1)辺に対応する円筒形状とその辺の両側に接続された厚板形状が配置されている部分について、円筒形状から厚板形状の内部に入りこんでいる部分を除去したくさび形状を求め、(2)頂点に対応する球形状とこの頂点に接続する円筒形状が配置されている部分について、球形状から2辺に対応する円筒形状の内部に入りこんでいる部分を除去したすいか形状を求め、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去するステップと、
前記除去するステップにより得られた工具参照面を形成する各形状について、くさび形状を等しい幅の長方形を鎧状につないだものとして多面体化し、すいか形状を球面部分を複数の等幅な細片に分割し、さらに細片を等しい間隔で四辺形及び三角形に分割することを含み、工具参照面を多面体化するステップと、
前記多面体化するステップにより得られた多面体に基づき、法線方向が向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成するステップと、
前記多角形データを生成するステップにより得られた多角形データを、隠面消去のハードウェア処理を実行する3次元グラフィックス表示部のデプスバッファに与えるステップと、
3次元グラフィックス表示部のデプスバッファによるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受けるステップと、
前記受けるステップにより得られたデプス値に基づき、格子状に配置され、工具参照面を覆う点群を得るステップと、
前記点群を得るステップにより得られた点群に基づき、隣接する点を選択し点群の隙間を三角形で補間することで工具参照面を得るステップとを含む工具参照面計算方法。

【請求項2】
数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算方法であって、
加工対象物の多面体モデル及び半径rのフラットエンドミルの工具形状に関する情報を入力するステップと、
座標系を用意し、多面体モデルのXY平面への投影図形を、工具半径r分膨らませた図形を覆うように、直交格子を生成するステップと、
前記入力するステップにより入力された加工対象物の多面体モデル及びフラットエンドミルの工具形状に関する情報に基づいて、工具の中心を表す工具参照点を中心に工具を180度回転させて工具参照点が加工対象物の表面に沿って移動させたときの工具の掃引形状の最上面を工具参照面として生成する際、加工対象物の多面体モデルの辺部分に対応して水平方向に半径rの斜円筒形状及び多角形部分に対応して水平方向に厚さ2rの厚板形状をそれぞれ配置するステップと、
前記配置するステップにより生成された工具参照面を形成する円筒形状及び厚板形状に基づき、辺に対応する斜円筒形状とその辺の両側に接続された厚板形状が配置されている部分について、円筒形状から厚板形状の内部に入りこんでいる部分を除去した斜くさび形状を求め、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去するステップと、
前記除去するステップにより得られた工具参照面を形成する各形状について、斜くさび形状を等しい幅の長方形を鎧状につないだものとして多面体化することを含み、工具参照面を多面体化するステップと、
前記多面体化するステップにより得られた多面体に基づき、法線方向が向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成するステップと、
前記多角形データを生成するステップにより得られた多角形データを、隠面消去のハードウェア処理を実行する3次元グラフィックス表示部のデプスバッファに与えるステップと、
3次元グラフィックス表示部のデプスバッファによるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受けるステップと、
前記受けるステップにより得られたデプス値に基づき、格子状に配置され、工具参照面を覆う点群を得るステップと、
前記点群を得るステップにより得られた点群に基づき、隣接する点を選択し点群の隙間を三角形で補間することで工具参照面を得るステップとを含む工具参照面計算方法。

【請求項3】
加工対象製品の形状の少なくとも一部を、高精度に計算させるために、その一部の投影図形だけを覆うように直交格子を生成するステップを備えた請求項1又は2に記載の工具参照面計算方法。

【請求項4】
得られた工具参照面に基づき、工具経路を求めるステップをさらに備えた請求項1乃至3のいずれに記載の工具参照面計算方法。

【請求項5】
工具参照面及び/又は工具経路を表示するステップをさらに備えた請求項1乃至のいずれかに記載の工具参照面計算方法。

【請求項6】
前記入力するステップにおいて、ラウンドエンドミルの円環状の端部半径を有するボールエンドミルについて工具形状に関する情報として入力し、請求項1に記載の工具参照面の計算方法を実行して工具参照面を得て、
さらに、前記入力するステップにおいて、得られた前記工具参照面を多面体モデルに関する情報として入力し、前記ラウンドエンドミルの軸部の半径から前記端部半径を引いた半径を有するフラットエンドミルについて工具形状に関する情報として入力し、再び、請求項に記載の工具参照面の計算方法を実行することでラウンドエンドミルの工具参照面を得ることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の工具参照面計算方法。

【請求項7】
数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
加工対象物の多面体モデル及び半径rのボールエンドミルの工具形状に関する情報を入力するステップと、
座標系を用意し、多面体モデルのXY平面への投影図形を、工具半径r分膨らませた図形を覆うように、直交格子を生成するステップと、
前記入力するステップにより入力された加工対象物の多面体モデル及びボールエンドミルの工具形状に関する情報に基づいて、工具の中心を表す工具参照点を中心に工具を180度回転させて工具参照点が加工対象物の表面に沿って移動させたときの工具の掃引形状の最上面を工具参照面として生成する際、加工対象物の多面体モデル頂点部分に対応して半径rの球形状及び辺部分に対応して半径rの円筒形状及び多角形部分に対応して厚さ2rの厚板形状をそれぞれ配置するステップと、
前記配置するステップにより生成された工具参照面を形成する球形状、円筒形状及び厚板形状に基づき、(1)辺に対応する円筒形状とその辺の両側に接続された厚板形状が配置されている部分について、円筒形状から厚板形状の内部に入りこんでいる部分を除去したくさび形状を求め、(2)頂点に対応する球形状とこの頂点に接続する円筒形状が配置されている部分について、球形状から2辺に対応する円筒形状の内部に入りこんでいる部分を除去したすいか形状を求め、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去するステップと、
前記除去するステップにより得られた工具参照面を形成する各形状について、くさび形状を等しい幅の長方形を鎧状につないだものとして多面体化し、すいか形状を球面部分を複数の等幅な細片に分割し、さらに細片を等しい間隔で四辺形及び三角形に分割することを含み、工具参照面を多面体化するステップと、
前記多面体化するステップにより得られた多面体に基づき、法線方向が向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成するステップと、
前記多角形データを生成するステップにより得られた多角形データを、隠面消去のハードウェア処理を実行する3次元グラフィックス表示部のデプスバッファに与えるステップと、
3次元グラフィックス表示部のデプスバッファによるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受けるステップと、
前記受けるステップにより得られたデプス値に基づき、格子状に配置され、工具参照面を覆う点群を得るステップと、
前記点群を得るステップにより得られた点群に基づき、隣接する点を選択し点群の隙間を三角形で補間することで工具参照面を得るステップとをコンピュ-タに実行させるための工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【請求項8】
数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
加工対象物の多面体モデル及び半径rのフラットエンドミルの工具形状に関する情報を入力するステップと、
座標系を用意し、多面体モデルのXY平面への投影図形を、工具半径r分膨らませた図形を覆うように、直交格子を生成するステップと、
前記入力するステップにより入力された加工対象物の多面体モデル及びフラットエンドミルの工具形状に関する情報に基づいて、工具の中心を表す工具参照点を中心に工具を180度回転させて工具参照点が加工対象物の表面に沿って移動させたときの工具の掃引形状の最上面を工具参照面として生成する際、加工対象物の多面体モデルの辺部分に対応して水平方向に半径rの斜円筒形状及び多角形部分に対応して水平方向に厚さ2rの厚板形状をそれぞれ配置するステップと、
前記配置するステップにより生成された工具参照面を形成する円筒形状及び厚板形状に基づき、辺に対応する斜円筒形状とその辺の両側に接続された厚板形状が配置されている部分について、円筒形状から厚板形状の内部に入りこんでいる部分を除去した斜くさび形状を求め、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去するステップと、
前記除去するステップにより得られた工具参照面を形成する各形状について、斜くさび形状を等しい幅の長方形を鎧状につないだものとして多面体化することを含み、工具参照面を多面体化するステップと、
前記多面体化するステップにより得られた多面体に基づき、法線方向が向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成するステップと、
前記多角形データを生成するステップにより得られた多角形データを、隠面消去のハードウェア処理を実行する3次元グラフィックス表示部のデプスバッファに与えるステップと、
3次元グラフィックス表示部のデプスバッファによるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受けるステップと、
前記受けるステップにより得られたデプス値に基づき、格子状に配置され、工具参照面を覆う点群を得るステップと、
前記点群を得るステップにより得られた点群に基づき、隣接する点を選択し点群の隙間を三角形で補間することで工具参照面を得るステップとをコンピュ-タに実行させるための工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【請求項9】
数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算装置であって、
加工対象物の多面体モデル及び工具形状に関する情報を入力する入力部と、
工具参照面を計算する処理部とを備え、
前記処理部は、
加工対象物の多面体モデル及び半径rのボールエンドミルの工具形状に関する情報を入力する手段と、
座標系を用意し、多面体モデルのXY平面への投影図形を、工具半径r分膨らませた図形を覆うように、直交格子を生成する手段と、
前記入力する手段により入力された加工対象物の多面体モデル及びボールエンドミルの工具形状に関する情報に基づいて、工具の中心を表す工具参照点を中心に工具を180度回転させて工具参照点が加工対象物の表面に沿って移動させたときの工具の掃引形状の最上面を工具参照面として生成する際、加工対象物の多面体モデルの頂点部分に対応して半径rの球形状及び辺部分に対応して半径rの円筒形状及び多角形部分に対応して厚さ2rの厚板形状をそれぞれ配置する手段と、
前記配置する手段により生成された工具参照面を形成する球形状、円筒形状及び厚板形状に基づき、(1)辺に対応する円筒形状とその辺の両側に接続された厚板形状が配置されている部分について、円筒形状から厚板形状の内部に入りこんでいる部分を除去したくさび形状を求め、(2)頂点に対応する球形状とこの頂点に接続する円筒形状が配置されている部分について、球形状から2辺に対応する円筒形状の内部に入りこんでいる部分を除去したすいか形状を求め、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去する手段と、
前記除去する手段により得られた工具参照面を形成する形状について、くさび形状を等しい幅の長方形を鎧状につないだものとして多面体化し、すいか形状を球面部分を複数の等幅な細片に分割し、さらに細片を等しい間隔で四辺形及び三角形に分割することを含み、工具参照面を多面体化する手段と、
前記多面体化する手段により得られた多面体に基づき、法線方向が向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成する手段と、
前記多角形データを生成する手段により得られた多角形データを、隠面消去のハードウェア処理を実行する3次元グラフィックス表示部のデプスバッファに与える手段と、
3次元グラフィックス表示部のデプスバッファによるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受ける手段と、
前記受ける手段により得られたデプス値に基づき、格子状に配置され、工具参照面を覆う点群を得る手段と、
前記点群を得る手段により得られた点群に基づき、隣接する点を選択し点群の隙間を三角形で補間することで工具参照面を得る手段とを備えた工具参照面計算装置。

【請求項10】
数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算装置であって、
加工対象物の多面体モデル及び工具形状に関する情報を入力する入力部と、
工具参照面を計算する処理部とを備え、
前記処理部は、
加工対象物の多面体モデル及び半径rのフラットエンドミルの工具形状に関する情報を入力する手段と、
座標系を用意し、多面体モデルのXY平面への投影図形を、工具半径r分膨らませた図形を覆うように、直交格子を生成する手段と、
前記入力する手段により入力された加工対象物の多面体モデル及びフラットエンドミルの工具形状に関する情報に基づいて、工具の中心を表す工具参照点を中心に工具を180度回転させて工具参照点が加工対象物の表面に沿って移動させたときの工具の掃引形状の最上面を工具参照面として生成する際、加工対象物の多面体モデルの辺部分に対応して水平方向に半径rの斜円筒形状及び多角形部分に対応して水平方向に厚さ2rの厚板形状をれぞれ配置する手段と、
前記配置する手段により生成された工具参照面を形成する円筒形状及び厚板形状に基づき、辺に対応する斜円筒形状とその辺の両側に接続された厚板形状が配置されている部分について、円筒形状から厚板形状の内部に入りこんでいる部分を除去した斜くさび形状を求め、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去する手段と、
前記除去する手段により得られた工具参照面を形成する各形状について、斜くさび形状を等しい幅の長方形を鎧状につないだものとして多面体化することを含み、工具参照面を多面体化する手段と、
前記多面体化する手段により得られた多面体に基づき、法線方向が向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成する手段と、
前記多角形データを生成する手段により得られた多角形データを、隠面消去のハードウェア処理を実行する3次元グラフィックス表示部のデプスバッファに与える手段と、
3次元グラフィックス表示部のデプスバッファによるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受ける手段と、
前記受ける手段により得られたデプス値に基づき、格子状に配置され、工具参照面を覆う点群を得る手段と、
前記点群を得る手段により得られた点群に基づき、隣接する点を選択し点群の隙間を三角形で補間することで工具参照面を得る手段とを備えた工具参照面計算装置。

【請求項11】
前記処理部の前記与える手段により得られた多角形データに基づき、隠面消去処理を実行し、デプスバッファの各要素のデプス値を更新又は記憶する、デプスバッファ処理を実行する手段と、
前記デプスバッファ処理を実行する手段により記憶されたデプスバッファに基づき、各要素に記憶された掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を得る手段と、
前記デプス値を得る手段により得られたデプス値を前記処理部へ出力する手段とを有する3次元グラフィック表示部をさらに備えた請求項9又は10に記載の工具参照面計算装置。

【請求項12】
工具参照面又は工具加工状態又は工具加工シミュレーション状態を表示する手段又は出力する手段をさらに備えた請求項9乃至11のいずれかに記載の工具参照面計算装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、工具参照面計算方法、工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び工具参照面計算装置に係り、特に、数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算方法、工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び工具参照面計算装置に関する。

【10】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、逆オフセット法による工具参照面の離散的な計算技術と、3次元グラフィックス表示装置を利用した処理技術を組み合わせて用いることで、工具参照面の安定かつ高速な計算を実現した。この手法は、ボールエンドミル、フラットエンドミル、ラウンドエンドミル工具を用いた加工のための工具参照面の計算に適用できるが、これら以外の形状の工具に対して適用可能となるように手法を拡張することは容易である。本発明では、加工対象の金型の形状が多面体表現されていることを仮定する。ただし辺の左右どちらか一方にしか多角形が接続していない、穴の開いた形状も多面体とみなす。任意の曲面形状は、希望する精度でこのような多面体として近似表現できる。

【11】
このような多面体化技術は、コンピュータグラフィックスの分野でよく研究されており、幾つかの高速なアルゴリズムが既に知られている。逆オフセット法において最も手間を要するのは、各格子から伸びる直線と掃引形状の最上面の交点を計算する処理である。この計算は、3次元グラフィックス表示装置に標準的に備えられている、隠面消去機能を用いることで高速に実行できる。ハードウェアの機能を活用するためには、掃引形状を構成する球面や円筒面を、適切に多面体近似する必要がある。隠面消去に要する時間は、多面体化された曲面の総多角形数にほぼ比例する。そこで掃引形状を構成する曲面から、工具参照面の計算に影響を与えない部分を除去し、残りの部分だけを選択的に多面体化することで、さらに高速な処理を実現した。

【12】
幾何的な処理のハードウェア化については、CGSモデルの描画処理の高速化(J.P.Menon, R.J.Marisa and J.Zagajac: More Powerful Solid Modeling through Ray Representations, IEEE Computer Graphics and Appl., 14, 3 (1994)22.)、3次元測定機のプローブの可接近範囲の解析(S.N.Spitz, A.J.Spyridiand A.A.G.Requicha: Accessibility Analysis for Planning of DimensionalInspection with Coordinate Measuring Machines, IEEE Trans. Robotics andAutomation, 15, 4 (1999) 714.)、離散的なボロノイ図の計算(K.E.Hoff III,T.Culver, J.Keyser, M.C.Lin and D.Manocha: Fast Computation of Generalized Voronoi Diagrams Using Graphics Hardware, Computer Graphics Proc.,SIGGRAPH 99 (1999) 277.)などの研究が知られている。また本発明者らは、本発明とほぼ同様の技術を利用して、切削加工のシミュレーションを高速化する手法を既に出願している(特願平11-35296)。しかし工具経路の生成に重要な役割を果たす、工具参照面の計算をハードウェアにより高速化した例は、本発明以外には全く知られていない。

【13】
本発明の第1の解決手段によると、数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算方法及び工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、加工対象物の多面体モデル及び工具形状に関する情報を入力するステップと、前記入力するステップにより入力された加工対象物の多面体モデル及び工具形状に関する情報に基づいて、頂点部分に対応する第1の形状及び辺部分に対応する第2の形状及び多角形部分に対応する第3の形状、又は、前記第2の形状及び第3の形状を配置することにより、工具の中心を表す参照点が加工対象物の表面に沿って移動するときの掃引形状を生成するステップと、前記生成するステップにより生成された形状に基づき、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去するステップと、前記除去するステップにより得られた形状の部分的な形状について、多面体化するステップと、前記多面体化するステップにより得られた多面体に基づき、法線方向が所定の向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成するステップと、前記多角形データを生成するステップにより得られた多角形データを3次元グラフィックス表示部に与えるステップと、3次元グラフィックス表示部によるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受けるステップと、前記受けるステップにより得られたデプス値に基づき、掃引形状の上面を覆う格子状の点群を得るステップと、前記点群を得るステップにより得られた点群に基づき、隣接する点を選択し多角形へ置換することで工具参照面を得るステップとを備えた工具参照面計算方法及び工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。

【14】
本発明の第2の解決手段によると、数値制御工作機械に取り付けられた工具を経路に沿って移動させて工作物を加工する際に、工具の逆形状分膨らませた工具参照面を生成する工具参照面計算装置であって、加工対象物の多面体モデル及び工具形状に関する情報を入力する入力部と、工具参照面を計算する処理部とを備え、前記処理部は、前記入力部により入力された加工対象物の多面体モデル及び工具形状に関する情報に基づいて、頂点部分に対応する第1の形状及び辺部分に対応する第2の形状及び多角形部分に対応する第3の形状、又は、前記第2の形状及び第3の形状を配置することにより、工具の中心を表す参照点が加工対象物の表面に沿って移動するときの掃引形状を生成する手段と、前記生成する手段により生成された形状に基づき、隣接した各々の形状の内部に入り込んでいる部分を除去する手段と、前記除去する手段により得られた形状の部分的な形状について、多面体化する手段と、前記多面体化する手段により得られた多面体に基づき、法線方向が所定の向きの多角形のみ選択することにより、多角形データを生成する手段と、前記多角形データを生成する手段により得られた多角形データを3次元グラフィックス表示部に与える手段と3次元グラフィックス表示部によるハードウェア処理で求められた掃引形状の最上面の高さを表すデプス値を受ける手段と、前記受ける手段により得られたデプス値に基づき、掃引形状の上面を覆う格子状の点群を得る手段と、前記点群を得る手段により得られた点群に基づき、隣接する点を選択し多角形へ置換することで工具参照面を得る手段とを備えた工具参照面計算装置を提供する。

【15】

【発明の実施の形態】1.逆オフセット法を用いた掃引形状の上面の近似的な計算手法
図1は、ボールエンドミルによる工具参照面と掃引形状を示す説明図である。図1(a)は、製品表面を滑るボールエンドミルの参照点の描く工具参照面を示した図であり、図1(b)は、工具の逆形状の参照点が製品表面を滑る時の掃引形状を示した図である。図1(a)に示すように、ボールエンドミルが、金型製品との接触を保ちつつ(内部へ削り込むことなく)製品表面を縦横に滑るとき、ボールエンドミルの工具参照点の軌跡の描く面を、工具参照面(Cutter reference surface)とする。この工具参照面が得られれば、ボールエンドミルを、その参照点が常にこの面の上側に存在するように移動させることで、削り込みを生じない工具経路を高速に計算できる。工具参照面は、以下の手順で計算できる。まず、ボールエンドミルを、工具参照点を中心に180度回転させた逆形状を得る。次に、この逆形状を、図1(b)に示すように、その参照点が常に製品の表面(Designed surface)に存在するように保ちつつ縦横に移動させ、その掃引形状を生成する。このとき掃引形状の最上面が工具参照面に対応する。

【16】
この計算法は、フラットエンドミルやラウンドエンドミルを用いた切削加工にも適用できる。図2は、フラットエンドミルによる工具参照面と掃引形状を示す説明図である。図2(a)は、フラットエンドミルを用いて製品表面を切削するときの、工具参照点の軌跡の描く面の様子を示した図であり、図2(b)は、フラットエンドミルの逆形状を考え、その参照点が製品表面を縦横に滑るときの、掃引形状の状態を示した図である。

【17】
図3は、ラウンドエンドミルによる工具参照面と掃引形状を示す説明図(1)である。図3(a)は、製品表面を滑るラウンドエンドミルの参照点の描く工具参照面を示した図であり、図3(b)は、工具の逆形状の参照点が製品表面を滑る時の掃引形状を示した図である。図4は、ラウンドエンドミルによる工具参照面と掃引形状を示す説明図(2)である。図4(a)は、半径(r)のボールエンドミルの逆形状の表面にそって、半径(R-r)のフラットエンドミルの逆形状を滑らせた様子を示した図であり、図4(b)は、半径(r)のボールエンドミルの逆形状の掃引形状を計算し、さらにその上面にそって半径(R-r)のフラットエンドミルの逆形状を滑らせた結果を示した図である。図4(a)に示すように、軸部の半径(R)、円環状の切刃の半径(r)のラウンドエンドミルの逆形状は、半径(R-r)のフラットエンドミルの逆形状を、半径(r)の細いボールエンドミルの表面にそって滑らせたときの、掃引形状と見なすことができる。したがって、図4(b)に示すように、ラウンドエンドミルの逆形状の掃引形状は、半径(r)のボールエンドミルの逆形状を、金型表面にそって滑らせ掃引形状を生成し、次に得られた形状の上面にそって、半径(R-r)のフラットエンドミルの逆形状を滑らせることで計算できる。また、ラウンドエンドミルの逆形状は、半径(r)のボールエンドミルの逆形状を、半径(R-r)のフラットエンドミルの逆形状にそって滑らせたときの掃引形状とも見なせるので、逆の手順でも、ラウンドエンドミルの逆形状の掃引形状を計算できる。

【18】
すなわち、切削加工にフラットエンドミル、ラウンドエンドミルをそれぞれ用いた場合も、工具参照面と掃引形状の上面が同一形状になっていることが分かる。したがって、工具参照面を得るためには、工具の逆形状の掃引形状を計算し、その上面を選択する処理をおこなえばよいことになる。

【19】
以下の議論では、説明の都合上、また処理速度を考慮して、加工対象の製品の形状が多面体であると仮定する。ただし、各辺の左右に1枚ずつ多角形が接続している、通常の閉じた多面体だけでなく、辺の左または右のどちらか一方にしか多角形が接続していない、「開いた」形状を許すことができる。一般に、任意の曲面形状は、希望する精度でこのような多面体として近似表現できる(後述の図16及びその説明箇所等参照)。曲面形状を多面体化する技術は、コンピュータグラフィックスの分野においてよく研究されており、幾つかの高速なアルゴリズムが既に知られている。なお、ラウンドエンドミルの逆形状の掃引形状は、上述したように、ボールエンドミルとフラットエンドミルの逆形状の掃引形状が計算できれば、それらを組み合わせることで、計算できる。このため、以下では、ボールエンドミルとフラットエンドミルの逆形状の掃引形状を計算する手法について述べる。これらを組み合わせることで、ラウンドエンドミルの逆形状の掃引形状も計算することができる。

【2】

【従来の技術】従来、プラスチックや金属のダイキャスト製品、板金製品の製造等に用いられる金型には、複雑な曲面形状を有するものが多い。このような金型の多くは、ボールエンドミル、フラットエンドミル、ラウンドエンドミルなどの工具を用いた数値制御加工(NC(Numerical Control)切削加工)等により製作される。金型加工では、工具により工作物を深く彫り込むことが多いため、剛性に優れた3軸制御の工作機械の利用が一般的である。この3軸制御の工作機械を用いた金属加工では、工具の位置を代表する点(以後この点を、参照点とよぶ)の移動経路を工作機械の制御装置へ入力することで、希望する形状を切削することが知られている。

【20】
図5は、ボールエンドミルによる掃引形状の説明図である。図5(a)は、ボールエンドミルによる切削加工での、球の掃引形状を構成する、球面の一例を示した図であり、同じく図5(b)は、円筒形の一例を示した図であり、同じく図5(c)は、厚板形状の一例を示した図である。半径(r)のボールエンドミルによる切削加工の場合では、工具参照面にあたる掃引形状の上面は、ボールエンドミルの逆形状の上端の、半球形の切刃の移動により生成される。そこで、工具の逆形状の代わりに、切刃と同一半径の球を、その中心が常に製品表面に存在するように滑らせた時の掃引形状の計算を考える。製品が多面体形状のとき、球の掃引形状は、多面体の頂点、辺、多角形を、以下の手順で球面、円筒形、厚板形状にそれぞれ置き換えた時の、これらの和形状となる。
[頂点]・・・その頂点(v)を中心とする、半径(r)の球面に置き換える(図5(a)参照)。
[辺]・・・その辺(e)を中心軸とする、半径(r)の円筒形に置き換える(図5(b)参照)。
[多角形]・・・その多角形(f)を中心とする、厚さ(2r)の厚板形状に置き換える(図5(c)参照)。

【21】
図6は、フラットエンドミルによる掃引形状の説明図である。図6(a)は、フラットエンドミルによる切削加工での、円板の掃引形状を構成する、斜円筒形の一例を示した図であり、同じく図6(b)は、厚板形状の一例を示した図である。半径(r)フラットエンドミルによる切削加工の場合では、工具参照面にあたる掃引形状の上面は、フラットエンドミルの逆形状の上端の、円板状の切刃の移動により生成される。製品が多面体形状のとき、円板の掃引形状は、多面体の辺と多角形を、以下の手順でそれぞれ斜円筒形と厚板形状に置き換えた時の、これらの和形状となる。
[辺]・・・その辺(e)の両端の頂点に与えられた、半径(r)の2枚の水平な円板を結ぶ斜円筒形に置き換える(図6(a)参照)。
[多角形]・・・多角形(f)の周囲の全頂点に、半径(r)の水平な円板を配置し、多角形を水平に移動させ、全ての円板の外周と接するように位置決めする。このような位置は二ヶ所考えられる。そこで、各場所に配置された2枚の多角形に挟まれた領域に対応する厚板形状を生成し、多角形(f)をこの厚板形状に置き換える(図6(b)参照)。

【22】
したがって、複雑な曲面形状を多面体化した場合、その多角形数はしばしば数万から数十万枚となる。辺や頂点の数も多角形数に比例するので、上述した手法による掃引形状の計算では、膨大な数の球面、円筒形、厚板形状の集合演算を繰り返すことになる。本発明では、逆オフセット法は、工具参照面として最終的に必要となるのが、掃引形状の上面だけであることに着目し、以下の手順で処理することで、工具参照面の効率的かつ安定な計算を実現する。

【23】
図7は、ボールエンドミル加工用の工具参照面を得るため説明図である。図7には、ボールエンドミル加工用の工具参照面を得るために、球の掃引形状を構成する球面、円筒形、厚板形状と、格子の中心を通過するZ軸に平行な直線の交差を調べ、最も上側の交点を選択する様子を示した。同じく、図8は、フラットエンドミル加工用の工具参照面を得るため説明図である。図8には、フラットエンドミル加工用の工具参照面を得るために、円板の掃引形状を構成する斜円筒形や厚板形状と、格子の中心を通過するZ軸に平行な直線の交差を調べ、最も上側の交点を選択する様子を示した。

【24】
まず、図7及び図8に示すように、処理の基準となる直交座標系を、そのZ軸がボールエンドミル及びフラットエンドミルの回転軸の上向き方向と一致するように与える。次に、基準座標系のXY平面上に、X軸とY軸に平行かつ等間隔な直交格子を、これから計算する掃引形状の、XY平面への投影を覆うように生成する。ボールエンドミル加工の場合も、フラットエンドミル加工の場合も、掃引形状の投影図形は、製品形状の投影図形をエンドミルの半径分膨らませたものに相当するので、この膨らんだ図形を覆うように直交格子を生成すればよい。格子の間隔(W)を小さくするほど精密な計算が可能になるが、(1/W)の平方に比例して格子数が増加するため、必要な記憶容量が膨大なものになる。そこでこの値は、要求される加工精度と利用可能な記憶容量の兼ね合いで決めることになる。工具参照面を計算する場合には、一例として、格子の間隔が50~200μmになるように、また格子の総数が1000×1000個以下になるように調整する場合が多いが、これに限られず適宜の間隔・総数を用いることができる<HAN>。</HAN>

【25】
各格子について、その中心を通過するZ軸に平行な直線を考え、この直線と掃引形状を構成する全ての形状要素の交差を調べる。例えば、ボールエンドミル加工用の工具参照面を計算する場合には、図7に示すように、各格子の中心を通過する直線と、頂点に配置された球面、辺に配置された円筒形、多角形に配置された厚板形状の交差を調べる。そして、最も上側の交点、すなわち、Z座標値が最大の交点を選択する。一方、フラットエンドミル加工用の工具参照面を計算する場合も、図8に示すように、各直線と、辺に配置された斜円筒形および多角形に配置された厚板形状の交差を調べ、最も上側の交点を選択する。これらの処理を全ての格子について繰り返すと、工具参照面を覆う稠密な点群を得ることができる。これらの点群は格子状に配置されているので、隣接する点を適切に選択し多角形へ置き換えることで、工具参照面を表す多面体を計算できる。

【26】
2.3次元グラフィックス表示装置の利用
逆オフセット法では、各格子の中心を通過するZ軸に平行な直線と、掃引形状を構成する形状要素(頂点に配置された球面、辺に配置された円筒形など)の交点計算を、格子と形状要素の全ての組み合わせについて繰り返す必要がある。そのため素朴な実装法では、処理に多大な時間を要することになり、実用的とはいえない。本発明においては、3次元グラフィックス表示装置の隠面消去機能を利用することで、この処理を高速化する。

【27】
図9は、デプスバッファの利用による二つの立方体の隠面消去画像の説明図である。3次元コンピュータグラフィックスでは、他の面に隠されて観察者から見えない「隠面」を消去した画像を生成するために、デプスバッファを用いる。図示のように配置された2個の立方体201及び202を図の左側から観察した画像を、平行投影により画面へ描く場合を例に、この技術を説明する。

【28】
ここで、立方体201及び202が、図示のような位置関係にある場合、観察者の視点203からの可視画像を考える。フレームバッファ204は、その際の可視画像を投影する2次平面である。立方体201及び202を視点203から観察した画像を、平行投影によりフレームバッファ204に描く。図示してあるように、フレームバッファ204上では、立方体201の面上の点P及びP、立方体202の面上の点P及びPが、同一のピクセル205で表される。なお、図中のX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ処理の基準となる座標を表している。3次元コンピュータグラフィックスでは、立体の面のうち、他の面に隠されて観察者から見えない隠面を消去した画像を生成するために、デプスバッファ(又は、Z-バッファ)と呼ばれるデータ構造を用いる。このデプスバッファを用いることで、視点203及びフレームバッファ204に最も近い点Pが選択され、点Pに相当する色・パターン・模様等の情報がピクセル205に与えられる。例えば、相当する情報が色の場合は、フレームバッファ204は、該当する色に染められる。

【29】
次に、2個の立方体201及び202の隠面を消去した画像を、平行投影によりフレームバッファ204へ描く具体的処理技術を説明する。以下の説明では、一例として、各面に該当する色を各ピクセルに与える場合について説明する。図示のように、処理の基準となる座標系を、フレームバッファ204上の任意の位置に定め、そのZ軸の方向を、観察者の視点203方向と逆向きになるように定める。また、フレームバッファ204の各ピクセルと1対1に対応する要素からなる、デプスバッファと呼ばれる配列を用意し、ここでは、各要素に初期値として十分に小さな数値を与えておき、立方体を構成する各多角形を、平行投影により順にフレームバッファ204へ描画していく。その際に、各ピクセルへ投影される多角形(正方体)上の点のZ軸座標値を計算し、ピクセルに対応するデプスバッファ要素の値(これをデプス値とよぶ)と比較する。そして、Z軸座標値がデプス値よりも大きいときには、ピクセルを面上の点の色で染め、さらに、Z軸座標値を新しいデプス値として記録する。この一連の処理をデプスバッファ処理という。このような処理を全ての面について繰り返すと、結果として隠面を消去した画像がフレームバッファ204に描かれることになる。

【3】
図27は、金型加工で用いられるエンドミルの種類((a)ボールエンドミル、(b)フラットエンドミル、(c)ラウンドエンドミル)と、それらの工具参照点(Cutter reference point)の位置を示す図である。金型加工では、先端の切刃が半球形のボールエンドミルが用いられることが多いが、作業効率が重視される粗加工では、フラットエンドミルが用いられ、同じく、なだらかな曲面形状の加工では、フラットエンドミルの周囲に円環状の切刃が取り付けられた、ラウンドエンドミルが用いられることがある。3軸のNC加工では、これらの工具の位置を代表する点(以後、この点を工具参照点(Cutter reference point)とよぶ)の移動経路を、Gコードとよばれるプログラム形式で記述し、それを工作機械の制御装置へ入力することで、希望する形状を削り出す。ボールエンドミルでは、工具参照点として切刃の中心点を用いることが一般的である。一方、フラットエンドミルでは、工具先端の中心点を、またラウンドエンドミルでは工具先端の中心点から、円環状の切刃の半径分内側の点を、それぞれ工具参照点として用いることが多い。

【30】
ボールエンドミルの回転軸の下向き方向を観察者の視線方向に定め、画面のピクセル群をXY平面上の直交格子と対応付けると、「図7及び図8に示した、全ての格子について、その中心を通過するZ軸に平行な直線と、球や円板の掃引形状の最上面の交点を計算すること」と、「図9に示した、掃引形状を構成する全ての形状要素(球面、円筒形、厚板形状など)を平行投影した画像を、デプスバッファを用いて描くこと」とは、全く同等の処理になることがわかる。全ての形状要素を描き終えたとき、デプスバッファの各要素には、対応する直線と掃引形状の最も上側の交点のZ座標値がデプス値として格納されることになるので、工具参照面を表す点群を容易に得ることができる。

【31】
多くの3次元グラフィックス表示装置は、デプスバッファを用いた多面体の隠面消去処理を、ハードウェアで直接実行する機能を備えている。したがって、掃引形状を構成する球面や円筒形などを適切に多面体近似し、得られた多角形群を平行投影した画像を、3次元グラフィックス表示装置を用いて描画することで、工具参照面を高速に計算できる。3次元グラフィックス表示装置は、今後の高速化が最も期待されている半導体デバイスなので、デプスバッファを用いた多面体の隠面消去処理では、さらなる高速化が期待できる。

【32】
3.描画が不要な部分の除去
金型の多くの部分は、滑らかな曲面形状を有している。このような形状を多面体化すると、その表面を覆うほとんどの多角形は、隣接する他の多角形と、非常になだらかな状態で接続することになる。したがって、ボールエンドミル加工用の工具参照面を計算するために、多面体の頂点、辺、多角形のそれぞれに、球面、円筒形、厚板形状を配置すると、各円筒形のほとんどの部分は、その左右に配置された厚板形状の内部に入り込んでしまうため、球の掃引形状の上面にはなり得ない。同様に、多面体の頂点に配置された球面も、ほとんどの部分は、その頂点に接続する辺に配置された円筒形の内部に入り込んでしまうため、掃引形状の上面とは無関係である。

【33】
そこで、球面や円筒形を多面体化する前に、隣接する円筒形や厚板形状の内部に入り込んでいて、掃引形状の上面にはなり得ない部分を除去しておく。近似球面や近似円筒面の多角形数は、その表面積にほぼ比例するので、不要な曲面部分を除去してから多面体化することで、隠面消去処理をおこなう多角形数を大幅に削減でき、結果として工具参照面の計算をさらに高速化できる。

【34】
図10は、円筒形と厚板形状との組み合わせを示す図である。図10は、一例として、多面体のある辺に配置された円筒形Cと、その辺の左右に接続する二枚の多角形に配置された厚板形状PとPの様子を示した図である。図示のように、円筒形Cのほとんどの部分は、厚板形状PとPの内部に入り込んでいる。そこで、円筒形からこれらの部分を除去し、残りの細長いくさび形状(図中の白い部分)だけを多面体化することで、多角形数を削減する。

【35】
図11は、球面と円筒形との組み合わせを示す図である。図11(a)は、ある頂点に配置された球面Sと、この頂点に接続する3本の辺に配置された円筒形C、C、Cの様子を示した図である。円筒形の場合と同様に、球面Sのほとんどの部分は、円筒形C、C、Cの内部に入り込んでいるため、掃引形状の上面とは無関係である。そこで、球面からこれらの部分を除去した残りの形状(図中央の、太線で囲まれた三角形状の部分)だけを、多面体化すればよいことになる。

【36】
また、頂点に多数の辺が接続している場合、この残りの形状の計算はかなり面倒なものになる。そこで本発明では、図11(b)に示すように、頂点に最も滑らかに接続している2辺を選択し、球面からこれら2辺に対応する円筒形の内部に入り込んでいる部分だけを取り除くことで、計算の手間を省く。つまり、球面Sから、例えば、円筒形CとCの中に入り込んでいる部分だけを除去する。円筒形CとCの端面は、球面Sの中心を通過しているので、これらの部分を除去すると、「すいか」のような形状が残ることになる。工具参照面を計算する際には、この「すいか」形状を多面体化し描画すればよい。

【37】
一方、フラットエンドミル加工用に工具参照面を計算する場合にも、ほぼ同様の手法で多角形数を削減できる。多面体の辺と多角形のそれぞれに、斜円筒形と厚板形状を配置すると、斜円筒形のほとんどの部分は、その左右に配置された厚板形状の内部に入り込んでしまうため、掃引形状の上面にはなり得ない。図12は、斜円筒形と厚板形状との組み合わせを示す図である。図12は、多面体のある辺に配置された斜円筒形Cと、その辺の左右に接続する二枚の多角形に配置された厚板形状PとPの様子を示した図である。斜円筒形Cのほとんどの部分は、隣接する厚板形状PとPの内部に入り込んでいる。そこでこれらの部分を除去し、残りの「斜くさび形状」(図中の白い部分)だけを多面体化することで、描画する多角形数を削減する。

【38】
4.不要部を除去後の形状の多面体化
図13は、不要部を除去後の形状の多面体化手法の説明図である。図13(a)は、くさび形状の多面体化手法、図13(b)は、すいか形状の多面体化手法、図13(c)は、斜くさび形状の多面体化手法をそれぞれ示す。図示のように、不要部を除去することで得られた、くさび形状、すいか形状及び斜くさび形状を、以下の手順で多面体化する。
(1)円筒形から不要部を除去した残りのくさび形状は、等しい幅の長方形を鎧状につないだものとして多面体近似する(図13(a)参照)。
(2)球面から不要部を除去した残りのすいか形状は、球面部を幾つかの等幅な細片へ分割し、それらをさらに等しい間隔で分割することで、微小な四辺形(細片の両端のみ三角形)の集合として多面体近似する(図13(b)参照)。
(3)斜円筒形から不要部を除去した残りの斜くさび形状は、くさび形状を多面体化する場合と同様に、細長い長方形をつないだものとして多面体近似する(図13(c)参照)。

【39】
このようにして得られた多角形のうち、一例として、その法線方向が下向きのものは、掃引形状の上面にはなり得ない。そこで、これらの下向きの多角形を隠面の消去処理の対象から除外することで、処理時間をさらに短縮できる。上述の多面体化手法では、曲面の近似精度は、くさび形状を構成する長方形片の幅や、すいか形状を構成する四辺形の最大サイズ(図13中の長さd)により決まる。長さdを大きくすると近似曲面の多角形数は減少するが、形状誤差が大きくなるため、得られる工具参照面の精度が低下してしまう。ここで、多面体化に伴う誤差の許容量をεとすると、例えば、長さdは、以下の不等式を満たす必要がある(ただし、rは球面や円筒形の半径をあらわす)。
<8rε

【4】

【発明が解決しようとする課題】金型のような凹凸の多い形状の加工では、工具は、例えば、膨大な回数の微小な直線移動を繰り返しおこない、素形材から少しずつ不要部を除去していく。このような複雑な工具経路の計算には、高速な計算機を用いても長時間(例えば、数十分程度)の処理時間を要するため、その高速化が待望されている。

【40】
工具参照面の計算では、近似誤差の許容量εを0.001mm程度に抑えれば十分なので、球面や円筒形の半径rが1.0mmの場合、長さdが0.1mm以下になるように多面体化すればよい。

【41】
5.ハードウェアの構成
図14は、本発明に関するハードウェアの構成図である。このハードウェアは、中央処理装置である処理部(CPU)1と、データを入力する入力部2と、入力されたデータを記憶する記憶部3と、出力部4と、3次元グラフィックス表示部5とを有する。また、CPU1、入力部2、記憶部3、出力部4及び3次元グラフィックス表示部5は、スター又はバス等の適宜の接続手段で接続されている。

【42】
3次元グラフィックス表示部5は、上述の隠面消去の画像を、デプスバッファを用いることにより生成するハードウェアの装置である。3次元グラフィックス表示部5は、ハードウェア処理により高速にデプスバッファ処理を行うことができる。また、3次元グラフィックス表示部5は、例えば、ボード、カード又は他の装置として構成され、CPU1等と一体に構成されていても、別個の構成であってもよい。出力部4は、3次元グラフィックス表示部5で生成され、フレームバッファへ描画された隠面消去の画像をディスプレイ上に表示する又は他の装置に出力する装置である。なお、出力部4は、バスに直接接続されるように構成することもできる。

【43】
6.処理アルゴリズムの流れ
図15は、本発明に関する工具参照面の計算手順についてのフローチャート(1)である。まず、工具参照面の計算を行うために必要な、加工対象物(金型製品)の多面体モデルと切削工具(例えば、ボールエンドミルもしくはフラットエンドミル)の形状データを入力する(S100)。次に、処理の基準となる直交座標系を、そのZ軸がボールエンドミルの回転軸の上向き方向と一致するように与えると共に、基準座標系のXY平面上に、X軸とY軸に平行かつ等間隔な直交格子を、製品形状のXY平面への投影図形を工具半径分膨らませた形状を覆うように生成する(S101)。もし、製品形状の一部に関する工具参照面だけを、特に高精度に計算したい場合には、直交格子を、高精度に計算したい部分のXY平面への投影図形だけを覆うように生成する(S102)(後述)。

【44】
切削工具としてボールエンドミルを用いる場合、まず、切刃と同一半径の球を、その中心(即ち、工具参照点)が常に製品表面に存在するように保ちつつ縦横に移動させたときの、掃引形状の計算を考える。この形状は、加工対象物モデルの頂点、辺、多角形を、それぞれ球面、円筒形、厚板形状に置き換えた形状の集合和となる(S103)。掃引形状を構成する球面と円筒形のほとんど部分は、隣接する円筒形や厚板形状の内部に入り込んでおり、掃引形状の上面にはなり得ない。そこで各球面や円筒形から、隣接する円筒形や厚板形状の内部に入り込んでいる部分を除去し、すいか形状とくさび形状を生成する(S104)。さらに、すいか形状、くさび形状、厚板形状を多面体化する(S105)。

【45】
一方、切削工具としてフラットエンドミルを用いる場合、切刃と同一半径の水平な円板を、その中心(即ち、工具参照点)が常に製品表面に存在するように保ちつつ縦横に移動させたときの、掃引形状の計算を考える。この形状は、加工対象物モデルの辺と多角形を、それぞれ斜円筒形と厚板形状に置き換えた形状の集合和となる(S106)。斜円筒形のほとんど部分は、隣接する厚板形状の内部に入り込んでおり、掃引形状の上面にはなり得ない。そこで各斜円筒形から、隣接する厚板形状の内部に入り込んでいる部分を除去し、斜くさび形状を生成する(S107)。さらに、斜くさび形状と厚板形状を多面体化する(S108)。なお、ボールエンドミル又はフラットエンドミルの一方のみに対応させる場合は、ステップS102の後の判断を、ステップS103~S105の処理又はステップS106~S108の処理のいずれか一方を含めばよい。

【46】
次に、得られた多面体群を覆う多角形のうち、掃引形状の上面になり得るのは、ここでは、その法線方向が上向きのものだけである。そこでこのような上向き多角形を選択し、その必要な又は全ての多角形データを3次元グラフィックス表示装置へ送る(S109)。ここから、3次元グラフィック表示装置によるハードウェア処理が開始される。すなわち、XY平面上の直交格子と1対1に対応する要素からなる、デプスバッファを用意する。選択された多角形群を、Z軸の正方向から観察した画像を、平行投影により画面へ描画する。3次元グラフィックス表示装置が、隠面消去の手順にしたがってデプスバッファの内容を更新する(S110)。次に、全ての多角形を描き終えたとき、デプスバッファの各デプス値は、対応する格子中心を通過するZ軸に平行な直線と球や水平な円板の掃引形状の、最も上側の交点のZ座標値を表している。そこで得られた必要な又は全てのデプス値を、ソフトウェア側の処理へ渡す(S111)。なお、3次元グラフィックス表示装置に備えられた表示部では、ハードウェア処理の様子を示す色、パターン、模様等の画像を表示することができる。

【47】
こうして再び、ソフトウェアによる処理が開始される。直交格子の位置情報とデプス値に基づいて、工具参照面を覆う稠密な点群を生成する(S112)。点群は格子状に配置されているので、隣接する点を適切に選択し多角形へ置き換えることで、工具参照面を表す多面体を生成する(S113)。得られた工具参照面を、工具経路生成用のCAMソフトウェアへ送る(S114)。CAMソフトウェアでは、得られた工具参照面に基づき、グラフィック表示等による表示、所望の加工シミュレーション、実際の加工等の適宜の処理を実行する。

【48】
ここで、ステップS102に関して説明する。逆オフセット法で用いる、XY平面上の直交格子の格子数は1000×1000程度である。加工対象物全体に、このような格子をあてはめて工具参照面を計算すると、加工対象物の一部に急激に変化する形状がある場合には、その部分に関して十分な精度の工具参照面が得られない場合がある。そこで高精度の計算が要求される場合には、そのような形状変化が激しい部分形状の投影図形だけを覆うように直交格子を生成し、工具参照面の計算をおこなう。ごく一部の形状に1000×1000の格子をあてはめて計算することになるので、この部分に関してより高精度の工具参照面を得ることができる。

【49】
図16(a)には、加工対象物全体に格子をあてはめて、逆オフセット法により工具参照面を計算する様子を示している。このようにすると、急激に形状が変化する部分があっても、この部分に少数の格子しかあてはめることができないため、得られる工具参照面の精度が不十分なものになってしまう。図16(b)には、この形状変化が激しい部分の投影図形だけを覆うように直交格子を生成し、工具参照面を計算する様子を示した。この部分に関して、より高精度の工具参照面が得られることが分かる。

【5】
金型のような複雑な形状を加工する場合には、簡易な工具経路の計算法では、工具が金型製品の内部へ削り込む、いわゆるガウジ(Gouge)と呼ばれる問題が発生しやすい。図28は、金型加工における削り込みの一例を示す説明図であり、金型表面の曲率半径が切削工具(例えば、ボールエンドミル)の半径よりも小さくなる部分で発生する、削り込みの一例を示している。すなわち、製品表面との接触を保ちつつ、図中の左から右へ移動するボールエンドミルは、金型表面の曲率半径が工具半径よりも小さくなる部分(図中、斜線で示したガウジング領域)において、このガウジング領域との接触を見逃すと、そのまま金型製品の内側へ削り込んでしまう。工具経路の自動生成プログラムは、その計算時間の大半を、このようなガウジの防止処理に費やしている。

【50】
ここで、切削工具としてラウンドエンドミルを用いる場合について説明する。図17は、本発明に関する工具参照面の計算手順についてのフローチャート(2)である。ここで、説明の便宜上、図4に示したように、ラウンドエンドミルの軸部の半径をR、円環状の切刃の半径をrとした。まず、ラウンドエンドミルの円環状の切刃の半径rを有するボールエンドミルについて工具形状に関する情報として入力し(S201)、上述のフローチャートのステップS101~S113に従い、工具参照面の計算方法を実行する(S203)。さらに、ステップS113で得られる工具参照面の多面体モデルを、ステップS100での加工対象物の多面体モデルに関する情報として入力し(S205)、また、ラウンドエンドミルの軸部の半径Rから、円環状の切刃の半径rを引いた、半径R-rを有するフラットエンドミルについて工具形状に関する情報として入力し(S207)、再び、上述のフローチャートのステップS101~S114に従い、工具参照面の計算方法を実行する(S209)。これにより、切削工具としてラウンドエンドミルを用いた場合の工具参照面を得ることができる。

【51】
なお、本発明の工具参照面計算方法は、工具参照面計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体又は工具参照面計算プログラム製品により提供することができる。

【52】
7.実験および比較
ここで、発明した手法の有効性を検証するために、3次元グラフィックス表示装置のデプスバッファ処理機能を利用して工具参照面を計算するプログラムを作成し、計算実験をおこなった。実験には、格子数が1000×1000個になるように調整した直交格子を用いた。利用した計算機は、PentiumIII(450MHZ)をCPUとする、主記憶486MBのワークステーションである。このワークステーションには、Cobaltと呼ばれる3次元グラフィックス表示のための専用ハードウェアが備えられている。描画する多角形の形状を、OpenGL(Open Graphics Library)とよばれるライブラリの仕様にしたがってプログラムに記述すると、デプスバッファ処理をハードウェアで実行する機械語コードを、コンパイラが自動生成する。

【53】
図18に、30,528枚の多角形からなる多面体を示す。図19に、この多角形数30,528枚の多面体を、半径5mmのボールエンドミルを用いて切削加工するために、工具参照面を計算した結果を示す。この計算に要した時間は1.84秒であった。また、図20に、工具参照面の計算結果に基づいて、多面体の表面を切刃が滑るように往復する全長約40,000mmの工具経路を生成した様子を示し、図21に、その経路に基づいて切削加工のシミュレーションをおこなった結果を示す。工具参照面の計算が終了しているため、工具経路の算出は瞬時に終わる。加工シミュレーションの結果から、削り込みの生じない適切な工具経路が生成されていることが分かる。

【54】
図22に、この多角形数30,528枚の多面体を、半径5mmのフラットエンドミルを用いて切削加工するために、工具参照面を計算した結果を示す。この計算に要した時間は1.30秒であった。図23には、工具参照面の計算結果に基づいて工具経路を生成した様子を示し、図24に、その経路に基づいて切削加工のシミュレーションをおこなった結果を示す。シミュレーション結果から、この例でも適切な経路が生成されていることが分かる。

【55】
次に、逆オフセット法による工具参照面の計算を、全てソフトウェアでおこなうプログラムと、3次元グラフィックス表示装置のデプスバッファ処理機能を用いておこなうプログラムを用意し、同一条件下で処理に要する時間を比較した。なお全てをソフトウェアで処理するプログラムも、ボックスチェックなどの方法を最大限活用し、無駄な計算を行わないように工夫してある。実験に利用した計算機の仕様は、上述したものと同じである。

【56】
図24は、ボールエンドミル加工用の工具参照面の計算に要する時間を比較した結果を示した図である。図24(a)は、多角形数1,908枚の単純な多面体を用いて計算実験を行った結果を表している。最初の列は、用いたボールエンドミルの半径を示している。2列目は、必要な計算を全てソフトウェアでおこなった場合の処理時間を示し、3列目は、同じ計算を3次元グラフィックス表示装置の機能を用いておこなった場合の処理時間を示している。また、4列目の数値は、これらの処理時間の比を表している。

【57】
図24(b)及び図24(c)に、同じ実験を、それぞれ多角形数23,184枚及び30,528枚の、比較的複雑な多面体に適用した結果を示す<HAN>。</HAN>なお、多角形数30,528枚の多面体を半径5mmの工具で切削する場合が、図18及び図19に対応している。これにより、最大で約40倍の高速化が実現できると共に、この高速化の度合いは<HAN>、</HAN>複雑な多面体に対して<HAN>、</HAN>より大きな半径の工具を適用する場合ほど顕著になることがわかる<HAN>。</HAN>

【58】
図25は、同じ比較実験を、フラットエンドミル加工用の工具参照面の計算に関しておこなった結果を示す図である。なお、多角形数30,528枚の多面体を半径5mmの工具で切削する場合が、図18及び図22に対応している。これにより、フラットエンドミル加工の場合も、ボールエンドミル加工の場合と同様に、複雑な多面体に対して、より大きな半径の工具を適用する場合ほど、高速化の度合いが顕著になることがわかる。

【59】
なお、本発明では、工具は、ボールエンドミル、フラットエンドミル及びラウンドエンドミルに限らず、切削工具、型どり用工具等の適宜の工具が使用可能であり、また、掃引形状は球面及び円筒形に限らず工具の先端形状により楕円面、多角形面、凹凸面など適宜の形状のものなどにも使用できる。また、工作物は金型に限らず、プラスチック、金属等の各材料の様々な工作物にも本発明を適用することが可能である。上述の説明では、主に、必要な又は全デプスデータ、必要な又は全多角形データを処理部と3次元グラフィックス表示部等に入力又は出力しているが、必要な又は全ての各データに限らず、一部の各データをやりとりするようにしても良い。さらには、表面の近似として多面体及び多角形として三角形を例に説明したが、これに限らず適宜の多角形を用いることができる。

【6】
このガウジを防止するためには、金型製品の形状を切削工具の逆形状分膨らませた、工具参照面とよばれる形状を生成すればよい。この工具参照面は、金型製品の表面に沿って工具の逆形状を縦横に滑らせた時の、掃引形状の上面に相当する。ここで、掃引形状の計算は、立体モデリングの分野での古典的な問題であり、既に幾つかの計算法が開発されている。例えば、境界表現法(B-reps)などの、立体の位相情報を取り扱うモデリング技術では、掃引形状や工具参照面を得る手続きは、非常に複雑なものになる。そのためNC切削加工の分野では、掃引形状の上面を稠密な点集合として近似的に計算する、「逆オフセット法」がよく用いられる。

【60】

【発明の効果】本発明によると、3次元グラフィックス表示装置を利用し、工具参照面を高速計算することができる。また、本発明によると、工具参照面の計算結果に基づいて生成した工具経路を瞬時に算出することができる。

【7】
この逆オフセット法では、まず、工具の回転軸方向をZ軸とする座標系を考え、そのXY平面上に1000×1000個程度の十分に細かい直交格子を用意する。そして、各格子の中心からZ軸に平行な直線を伸ばし、掃引形状の最上面との交点を計算することで、掃引形状の上面を覆う稠密な点群を得る。最後に、点群の隙間を多角形で補間することで、工具参照面を表す多面体を生成する。

【8】
この逆オフセット法は、処理が単純なためプログラム化が容易であり、計算も安定している。しかし、膨大な数の格子のそれぞれについて交点計算を繰り返すため、結果として多大な計算時間を要することが実用の障害になっている。Choiらは、工具の幾何的な特徴を利用して、計算の手間を数分の一に軽減する技術を開発している。しかし、このような技術を駆使しても、工具参照面の計算に数十分を要することが報告されており、処理のさらなる高速化が強く求められている。

【9】
本発明は、以上の点に鑑み、3次元グラフィックス表示装置を利用し、工具参照面を高速計算することを目的とする。本発明は、工具参照面の計算結果に基づいて生成した工具経路を瞬時に算出することを目的とする。
図面
【図3】
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【図1】
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【図10】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図27】
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【図11】
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【図5】
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【図8】
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【図12】
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【図7】
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【図9】
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【図14】
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【図13】
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【図16】
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【図20】
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【図15】
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【図17】
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【図21】
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【図18】
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【図19】
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【図24】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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