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明細書 :磁石配置方法及び磁気誘導方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3430253号 (P3430253)
公開番号 特開2001-250715 (P2001-250715A)
登録日 平成15年5月23日(2003.5.23)
発行日 平成15年7月28日(2003.7.28)
公開日 平成13年9月14日(2001.9.14)
発明の名称または考案の名称 磁石配置方法及び磁気誘導方法
国際特許分類 H01F  7/02      
A61M 37/00      
B60L 13/04      
B61B 13/08      
FI H01F 7/02 Z
A61M 37/00
B60L 13/04
B61B 13/08
請求項の数または発明の数 6
全頁数 5
出願番号 特願2000-060138 (P2000-060138)
出願日 平成12年3月6日(2000.3.6)
審査請求日 平成12年3月6日(2000.3.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012224
【氏名又は名称】名古屋大学長
発明者または考案者 【氏名】小林 猛
【氏名】新海 政重
【氏名】本多 裕之
【氏名】瀧 千智
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
審査官 【審査官】山田 正文
参考文献・文献 特開 平6-290934(JP,A)
調査した分野 H01F 7/02
A61B 5
A61M 37
B60L 13
B61B 13
特許請求の範囲 【請求項1】
空間中心に対し上下対称となるようにして、同一の極性方向を有する複数の第1の磁石を配置する工程と、
前記空間中心に対し左右対称となるようにして、前記第1の磁石の極性方向と同一の極性方向を有する複数の第2の磁石を配置する工程と、
前記空間中心に対し前後対称となるようにして、前記第1の磁石及び前記第2の磁石の極性方向と反対の極性方向を有する複数の第3の磁石を配置する工程とを具え、
前記第2の磁石は、前記空間中心を通る水平線に対して上下対称となるように配置した一対の磁石から構成し、
前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石は、同一の保磁力及び同一の残留磁化を有し、
前記空間中心において磁束密度が極大となるようにしたことを特徴とする、磁石配置方法。

【請求項2】
空間中心に対し上下対称となるようにして、同一の極性方向を有する複数の第1の磁石を配置する工程と、
前記空間中心に対し左右対称となるようにして、前記第1の磁石の極性方向と同一の極性方向を有する複数の第2の磁石を配置する工程と、
前記空間中心に対し前後対称となるようにして、前記第1の磁石及び前記第2の磁石の極性方向と反対の極性方向を有する複数の第3の磁石を配置する工程とを具え、
前記第2の磁石は、前記空間中心を通る水平線に対して上下対称となるように配置した一対の磁石から構成し、
前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石は、同一の保磁力及び同一の残留磁化を有し、
前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石によって囲まれる空間内に磁気感応物質を配置し、前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石によって生成された磁気力によって、前記磁気感応物質を前記空間中心に移動させるようにすることを特徴とする、磁気誘導方法。

【請求項3】
請求項1に記載の磁石配置方法によって配置した複数の磁石を具えることを特徴とする、磁石配置構造。

【請求項4】
請求項3に記載の磁石配置構造を具えることを特徴とする、医療機器。

【請求項5】
請求項3に記載の磁石配置構造を具えることを特徴とする、磁気浮上システム。

【請求項6】
請求項2に記載の磁気誘導方法を用いることを特徴とする、薬剤標的療法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、磁石配置方法及び磁気誘導方法に関し、さらに詳しくは、医療機器、電子機器、及びリニアモーターカーなどの磁気浮上システムなどにおいて、好適に使用することのできる磁石配置方法及び磁気誘導方法に関する。

【0002】

【従来の技術】従来、医療分野においては、磁気に感応する担体に薬剤を担持させ、これを磁力によって所定の空間に非接触で誘導する薬剤標的療法が提案されている。前記磁力は、所定の医療機器に取り付けられた磁石によって生ぜしめられるものである。

【0003】
図1は、前記所定の医療機器に取り付けられた磁石の配置を示す図である。図1に示す磁石配置では、薬剤1を中心として、これを挟むようにして磁石1及び2が配置されている。磁力は磁束密度の空間変化によって発生し、その方向は磁束密度の低い方から高い方へ向かう。したがって、前記磁力は磁石の表面に向かってのみ発生する。このため、図1に示すような磁石配置においては、薬剤1は磁石2又は3に向かってのみ移動する。

【0004】
一方、近年においては、高速輸送システムの一つとしてリニアモーターカーが研究開発されている。このリニアモーターカーの磁気浮上システムには、「超伝導磁気浮上式」と「常伝導磁気浮上式」の2つが現在提案されている。「超伝導磁気浮上式」は車両下部に取り付けられた超伝導磁石が、ガイドレールに取り付けられた電磁石と反発することによって、車両を浮上させるものである。これに対し、「常伝導磁気浮上システム」は、車両下部に取り付けられた浮上用マグネットが下方からガイドレールを吸引して車両を浮上させるものである。

【0005】

【発明が解決しようとする課題】図1に示すような配置の磁石を具えた医療機器を用いる前記薬剤標的療法においては、上記のような薬剤移動を利用した治療に適用されるのみであった。具体的には、薬剤1を人体の表面に埋設して、この薬剤1を人体外部に配置した磁石2又は3から発生した磁力によって、遠隔誘導する表面療法に限定されるものであった。

【0006】
一方、疾病の種類によっては、患部が人体の深部に存在する場合もある。この場合においても、薬剤1を人体深部に埋設し、これを人体外部に配置された磁石2又は3から発生した磁力によって遠隔誘導する療法が考えられる。しかしながら、図1に示すような磁石配置においては、磁石表面からの距離が大きくなると磁力が急激に低下してしまう。このため、薬剤を人体の奥深くに埋設した場合、前記薬剤に対して人体外部に配置した磁石から十分大きな磁力を及ぼすことができなくなる。したがって、従来の薬剤標的療法は人体の表面的治療に限定されるのみで、広範な治療に対して用いることができないという問題があった。

【0007】
また、リニアモーターカーにおける「超伝導磁気浮上式」においては、浮上用の磁石を最低2つ用意する必要があり、これら磁石より発生する磁力をバランスさせたりする点などにおいて困難を伴う。また、「常伝導磁気浮上式」においては、磁石とガイドレールの間隔を測るギャップセンサーが必要となり、システムが複雑になるという問題があった。

【0008】
本発明は、人体深部の外科的治療法においても、磁気に感応する物体を非接触で所定の場所に遠隔移動することを可能にしたり、リニアモーターカーなどにおける技術において、上記「超伝導磁気浮上式」及び「常伝導磁気浮上式」に代わるような新規な磁石配置方法及びこれを用いた磁気誘導方法を提供することを目的とする。

【0009】

【課題を解決するための手段】本発明の磁石配置方法は、空間中心に対し上下対称となるようにして、同一の極性方向を有する複数の第1の磁石を配置する工程と、前記空間中心に対し左右対称となるようにして、前記第1の磁石の極性方向と同一の極性方向を有する複数の第2の磁石を配置する工程と、前記空間中心に対し前後対称となるようにして、前記第1の磁石及び前記第2の磁石の極性方向と反対の極性方向を有する複数の第3の磁石を配置する工程とを具え、前記第2の磁石は、前記空間中心を通る水平線に対して上下対称となるように配置した一対の磁石から構成し、前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石は、同一の保磁力及び同一の残留磁化を有し、前記空間中心において磁束密度が極大となるようにしたことを特徴とする。

【0010】
また、本発明の磁気誘導方法は、上記本発明の磁石配置方法を基準として、空間中心に対し上下対称となるようにして、同一の極性方向を有する複数の第1の磁石を配置する工程と、前記空間中心に対し左右対称となるようにして、前記第1の磁石の極性方向と同一の極性方向を有する複数の第2の磁石を配置する工程と、前記空間中心に対し前後対称となるようにして、前記第1の磁石及び前記第2の磁石の極性方向と反対の極性方向を有する複数の第3の磁石を配置する工程とを具え、前記第2の磁石は、前記空間中心を通る水平線に対して上下対称となるように配置した一対の磁石から構成し、前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石は、同一の保磁力及び同一の残留磁化を有し、前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石によって囲まれる空間内に磁気感応物質を配置し、前記第1の磁石、前記第2の磁石、及び前記第3の磁石によって生成された磁気力によって、前記磁気感応物質を前記空間中心に移動させるようにすることを特徴とする。

【0011】
本発明の磁石配置方法においては、上述した複数の磁石で囲まれた中心部分の磁束密度が最大となるようにしている。そして、本発明の磁気誘導方法においては、このような中心部分近傍に磁気感応物質を配置するようにしている。したがって、上記のような薬剤標的療法において、磁気に感応する担体に担持させた薬剤を人体の深部に埋設した場合においても、前記人体の周囲において前記薬剤を中心として複数の磁石を3次元的に配置することにより、前記薬剤の埋設位置近傍の磁束密度を極大にすることができる。

【0012】
このため、前記薬剤に十分な大きさの磁力を作用させることが可能となり、前記複数の磁石を所定方向に移動させることにより、この移動方向に前記薬剤を移動させることが可能となる。したがって、人体の深部に患部がある場合においても、薬剤標的療法によって治療することが可能となる。

【0013】
また、リニアモーターカーなどにおいても、磁気感応物質をガイドレールから構成し、本発明の磁石配置にしたがった所定の磁石を車両下部に取り付ける。これによって、前記ガイドレールがこれら磁石配置によって形成された空間の中心に移動するような磁力が前記車両に作用し、前記車両が浮上する。すなわち、本発明の磁石配置方法及び磁気誘導方法を用いれば、従来の「超伝導磁気浮上式」や「常伝導磁気浮上式」に代わる新規な磁気浮上システムを提供することができる。

【0014】

【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。図2~4は、本発明の磁石配置方法における好ましい磁石配置を示す図である。図2及び3は、好ましい磁石配置の正面図及び側面図であり、図4は、好ましい磁石配置の上面図である。

【0015】
図2~4に示す磁石配置においては、上下方向に第1の磁石13及び14が配置され、左右方向のそれぞれに2組の第2の磁石11及び12、並びに15及び16が配置され、前後方向に第3の磁石17及び18が配置されている。そして、これら磁石11~18は、これら磁石によって形成される空間中心Oに対して、それぞれ対称となるように形成されている。また、左右方向に配置された2組の磁石11及び12、並びに15及び16は、空間中心Oを通る水平線Hに対して対称となるように形成されている。さらに、磁石11~16は、上側がN極、下側がS極となっており、磁石17及び18は、上側がS極、下側がN極となっている。

【0016】
図5は、図2~4に示す磁石配置において、空間中心Oを通る垂直線Lに沿って磁束密度を定した際の、磁束密度分布を示す図である。図5から明らかなように、図2~4に示す磁石配置によれば、磁石13下面のL1から空間中心Oに向かうにしたがって、磁束密度は一端減少して極小を示した後再び上昇し、空間中心Oにおいて極大を示す。そして、磁石14の上面のL2に向かうにしたがって、磁束密度は減少して極小を示した後L2に向けて増大する。

【0017】
このように図2~4に示す本発明の磁石配置方法によれば、複数の磁石で囲まれた空間中心で磁束密度が極大となる。このため、これら複数の磁石で形成された空間の任意の位置に磁気感応物質を配置することにより、磁束密度が極大となる方向に向けて大きな磁力が作用する。したがって、前記空間の任意の位置に配置された磁気感応物質は常に前記空間中心に向けて移動する。

【0018】
このため、磁気に感応する担体に担持した薬剤を人体の深部に埋設した場合においても、この薬剤を図2~4に示す配置にしたがって、これら磁石で囲まれる空間内に位置するように配置することにより、前記薬剤に対し空間中心へ向かう大きな磁力を及ぼすことが可能となる。したがって、人体の深部に患部が存在する場合においても、上述した薬剤標的療法を用いることができる。同様に、図2~4に示す配置の磁石を車両下部に取り付け、磁気感応物質をガイドレールから構成することにより、リニアモーターカーにおける磁気浮上システムとしても使用することができる。

【0019】
なお、本発明の磁石配置方法においては、複数の磁石によって囲まれた部分の磁束密度が極大となるものであれば、図2~4に示す磁石配置に限定されるものではない。しかしながら、図2~4に示すように、複数の磁石を上下方向、左右方向、及び前後方向に配置し、さらに前後方向に配置した磁石17及び18に極性方向を、上下方向及び左右方向に配置した磁石11~16の極性方向と逆向きに配置することにより、図5に示すような、空間中心Oで極大となるような磁束密度分布を容易に形成することができる。また、これによって、磁気感応物質の移動を容易に行うことができる。

【0020】
さらに、図2~4に示すように、磁石11~18を空間中心Oに対して対称となるように配置することにより、図5に示すように、空間中心Oに対して対称な磁束密度分布を得ることができる。したがって、磁気感応物質の移動制御を容易に行うことができる。

【0021】
また、図2~4に示すように、空間中心Oの左右方向に配置する磁石を、2組の磁石11及び12、並びに磁石15及び16から構成することにより、空間中心における磁束密度の極大値をさらに大きくすることができる。

【0022】
さらに、図2~4に示すように、2組の磁石11及び12、並びに15及び16を、空間中心Oを通る水平線Hに対して上下対称となるように配置することにより、空間中心Oに対して対称な磁束密度分布を得ることができる。

【0023】
図2において、磁石11~18の配置間隔は、磁石を構成する磁性材料、薬剤を担持する磁気感応物質の種類、及び所望する磁束密度の大きさなどによって異なる。例えば、磁石11~18を残留磁化11kG、保磁力7kOe、直径30cm、長さ50cmの円形状Nd磁石から構成し、空間中心Oにおいて1000G程度の磁束密度を得ようとする場合は、上下方向の磁石13及び14の間隔d1を1mとし、左右方向の磁石11及び12、並びに15及び16の間隔d2を50cmとし、前後方向の磁石17及び18の間隔d3を80cmとする。さらに、左右方向において、2組の磁石11及び12と、同じく2組の磁石15及び16との間隔d4を50cmとし、これら2組みの磁石と上下方向に配置した磁石13及び14との間隔d5を10cmとする。

【0024】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。

【0025】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の磁石配置方法及び磁気誘導方法によれば、3次元的に配置した複数の磁石で形成される空間の中心部で磁束密度が最大となる。このため、この空間内の任意の位置に磁気感応物質を配置することにより、この磁気感応物質に空間中心へ向けて常に大きな磁力を作用させることが可能となる。したがって、前記磁気感応物質の遠隔的な移動操作が可能となり、人体深部に患部が存在する場合などにおいても、薬剤標的療法を用いて簡易に治療を行うことができる。また、リニアモーターカーなどにおける新規な磁気浮上システムを提供することもできる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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