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明細書 :1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体及び被膜形成材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3834603号 (P3834603)
公開番号 特開2001-253882 (P2001-253882A)
登録日 平成18年8月4日(2006.8.4)
発行日 平成18年10月18日(2006.10.18)
公開日 平成13年9月18日(2001.9.18)
発明の名称または考案の名称 1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体及び被膜形成材料
国際特許分類 C07D 409/14        (2006.01)
C09D   4/00        (2006.01)
FI C07D 409/14
C09D 4/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2000-068881 (P2000-068881)
出願日 平成12年3月13日(2000.3.13)
審査請求日 平成14年9月2日(2002.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】小倉 克之
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】今村 玲英子
参考文献・文献 特開2000-256357(JP,A)
J.Org.Chem.,1999年,Vol.64,313-315
Tetrahedron Letters,1999年,Vol.40,8887-8891
Synthetic Metals,1993年,Vol.57,3374-3379
調査した分野 C07D409/14
C09D 4/00
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)
【化1】
JP0003834603B2_000010t.gif
(式中Rは水素、置換又は無置換アルキル基、置換又は無置換芳香族基である。Yは水素またはシアノ基であり、一方が水素で、他方がシアノ基の場合も含む。nは1~3の整数である。)で表される1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載の1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体からなることを特徴とする、被膜形成材料。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、π電子系有機物質に関し、特に、安定な分子集合体を形成する1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体及び被膜形成材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属色を有する被膜形成化合物は、メタリックカラー膜形成材料として広く利用されてきた。これまでは、アルミニウムなどの金属微粉体をベースに各種の着色剤で着色することにより、行われるのが一般的である。しかし、金属を使わずに、有機物質のみで金属色被膜形成することができれば、単に燃焼という手段によって廃棄できるので、環境に優しい金属色被膜材料を提供することができる。
【0003】
これまでに、ポリアセチレンやポリジアセチレンのような、π電子系が分子内で連続する高分子化合物が、金属光沢を示すことが知られている。また、ポリ窒化硫黄のようにラジカル種を連続させた化合物も金色光沢を呈する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリアセチレンやポリジアセチレンのような高分子化合物は、空気中ではドープ状態ばかりでなく、未ドープ状態でさえ不安定であり、被膜材料として実用的でない。
【0005】
また、ポリ窒化硫黄などのラジカル種を連続させた化合物はさらに空気中では不安定である。
【0006】
また、被膜材料として用いるためには、その製造過程では有機溶媒に対して溶解性を示して操作を容易にするが、被膜形成後は溶剤に溶解性が乏しくなるものが求められている。しかし、このような性質を持つ被膜材料は、これまで存在していなかった。
【0007】
そこで、本発明は、空気中で安定で、かつ金属光沢を示す有機化合物を提供することを目的とする。
【0008】
更に、本発明は、該有機化合物を含有する薄膜形成材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者らは、取り扱いが容易で、かつ安定な低分子π電子系化合物に着目し、それらを自己集合させることによって安定な集合体を形成させ、分子間でπ電子系の相互作用を実現させて金属色を形成させる課題に取り組んできた。その結果、本発明の化合物を見出すに至った。本発明の誘導体は、式(1)
【化2】
JP0003834603B2_000002t.gif(式中Rは水素、置換又は無置換アルキル基、置換又は無置換芳香族基で、Yは水素またはシアノ基であり、一方が水素で他方がシアノ基の場合も含む。nは1~3の整数である。)で表される1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体からなる、被膜形成材料であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記新規な1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体が、高い耐久性を有するため、塗装材料、有機金属メッキ剤、有機半導体、有機EL材料などに適用できることを見出した。
【0012】
式(1)に示す本発明の1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体は、結晶状態、あるいは薄膜状態において金属色を呈する化合物である。これら化合物は、例えば、アセトン、ベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエンなどの一般の有機溶媒中に溶解させた後、有機溶媒から容易に結晶を析出させることができる。前記化合物を前記有機溶媒に溶解させた溶液を放置すると、金属色の結晶を析出する。本発明の化合物は、熱に対しても安定であるので、この化合物を融点以上に加熱し、溶融させ、次いでこの溶融物を冷却することによっても、結晶を得ることができる。
【0013】
また、前記化合物を前記有機溶媒に溶解させた溶液を適当な基材の表面に展開し、塗布し、乾燥することによって、金属光沢を有する被膜を容易に形成することができる。熱に対して極めて安定であることから、本発明の化合物は、真空蒸着法や、スピンコート法を利用して、膜の形成が可能である。
【0014】
前述の一般式(1)において、Rは、水素、置換若しくは無置換のアルキル基(シクロアルキル基を含む。)、置換若しくは無置換の芳香族基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、及びアルケニル基である。ここで、Rを構成するアルキル基としては、炭素数1-30のアルキル基が好ましく、炭素数1-18のアルキル基が特に好ましい。アルキル基の置換基としては、炭素数1-18のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ピリジル基等の芳香族基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、臭素、ヨウ素、塩素、フッ素が特に好ましい。
【0015】
芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ピリジル基等が好ましい。芳香族基の置換基としては、炭素数1-18のアルキル基、炭素数1-18のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、臭素、ヨウ素、塩素、フッ素、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、チオアルキル基であり、チオアルキル基を構成するアルキル基の炭素数は、1-18が好ましい。
【0016】
Y=CNの場合の本発明の化合物を製造するには、例えば、下記の一般式(2)
【化3】
JP0003834603B2_000003t.gif(式中Rは、置換又は無置換アルキル基、置換又は無置換芳香族基であり、nは1~3の整数である。置換又は無置換アルキル基、及び置換又は無置換芳香族基については、上述の式(1)で説明したものを適用することができる。)で表される1-置換2,5-ジチエニルピロール誘導体を、有機溶媒中で少なくとも2モル当量以上のテトラシアノエチレンと反応させることで製造することができる。
【0017】
あるいは上述の一般式(2)で表される化合物をブチルリチウムやリチウムジイソプロピルアシドなどの塩基の作用で一般式(3)
【化4】
JP0003834603B2_000004t.gif(式中Rは、置換又は無置換アルキル基、置換又は無置換芳香族基であり、nは1~3の整数である。置換又は無置換アルキル基、及び置換又は無置換芳香族基については、上述の式(1)で説明したものを適用することができる。)で表される化合物とした後、テトラシアノエチレンとを反応させることによっても容易に製造できる。
【0018】
これらによって製造された一般式(1)で表される本発明の化合物のうち、Rがアリル基である場合には、ロジウム触媒による脱アリル化によって、水素に置きかえることができる。
【0019】
Y=Hの本発明の化合物は、前述の一般式(3)で表される金属化合物をジメチルホルムアミドなどのギ酸アミドの誘導体と反応させて、一般式(4)
【化5】
JP0003834603B2_000005t.gif(式中Rは、置換又は無置換アルキル基、置換又は無置換芳香族基であり、nは1~3の整数である。置換又は無置換アルキル基、及び置換又は無置換芳香族基については、上述の式(1)で説明したものを適用することができる。)で表されるジホルミル体を得て、このジホルミル体を塩基存在下でマロノニトリルと反応させることによって容易の合成できる。
さらに、Yの一方がシアノ基で、他方が水素である本発明の化合物は、一般式(5)
【化6】
JP0003834603B2_000006t.gif(式中Rは置換又は無置換アルキル基、置換又は無置換芳香族基であり、nは1~3の整数である。置換又は無置換アルキル基、及び置換又は無置換芳香族基については、上述の式(1)で説明したものを適用することができる。)で表される一方に2,2-ジシアノエテニル基を有する化合物を溶媒中で少なくとも1モル当量以上のテトラエチレンと反応させることにより、容易に製造することができる。
【0020】
【実施例】
ここで、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0021】
実施例1
1-フェニル-2,5-ジ(2-チエニル)ピロール(215mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(10ml)に溶かし、テトラシアノエチレン(359mg:4モル当量)を加えたのち、80℃で24時間攪拌した。反応混合物を室温に戻すと1-フェニル-2,5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロールの金色~ブロンズ色結晶が析出した。この結晶を濾過により単離して、アセトンとクロロホルムで洗浄した後、乾燥して緑金属色結晶(261mg)を得た。さらに、ろ液を飽和塩化ナトリウム水を加えた後、トルエンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)で分離し、アセトンより再結晶して1-フェニル-2,5-(5-トリシアノエテニル-2-チエニル)ピロールの金色結晶(74mg)を得た。合計収量は335mgで、合計収率は94%であった。以下に物性値を示す。
融点 300℃以上
H NMR(CDCl3):δ7.09(d、J=4.5Hz、2H)、7.11(s、2H)、7.47(d、J=8.7Hz、2H)、7.71(t、J=8.0Hz、2H)、7.80(t、J=7.4H、1H)、7.82(d、J=4.5Hz、2H)赤外吸収スペクトル(KBr):2382、2218、1502、1406、1379、1358、1200、1120、778, 696cm1
紫外-可視吸収スペクトル(THF、3×105M):λmax(ε/M-1cm-1)、644(63300).
C28H11N7S2としての分析値:C、66.00;H、2.18;N、19.24%.
実測値:C、65.82;H、2.06;N、19.27%
【0022】
実施例2
1-(4-メトキシフェニル)-2,5-ビス(5-ホルミル-2-チエニル)ピロール(64.5mg、0.164mmol)とマロノニトリル(35.8mg、0.381mmol)をメタノール(30ml)-クロロホルム(10ml)の混合溶媒に溶解させ、トリエチルアミンを数滴加え、室温で1時間攪拌した。水50mlを加え、クロロホルム(50ml×3)で抽出し無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)で分離して、1-(4-メトキシロフェニル)-2,5‐ビス[5-(2,2-ジシアノエテニル)-2-チエニル]ピロール(75.2mg、0.154mmol、94%)を赤褐色結晶として得た。以下に物性値を示す。
融点 276.0-276.5℃
H NMR(CDCl3 、300MHz):δ3.95(s、3H)、6.96(s、2H)、7.02(d、J=4.4Hz,2H)、7.13(d、J=8.9Hz、2H)、7.33(d、J=8.8Hz、2H)、7.50(d、J=4.3Hz、2H)、7.59(s、1H)
赤外吸収スペクトル(KBr):2220、1565、1520、1460、1415、1380、1340、1260、1090、1075cm1
【0023】
実施例3
5,5’-ビス[5-(2-チエニル)-1-(4-ドデシルフェニル)-2-ピロリル]-2,2’-ジチエニル(350mg)をN、N-ジメチルホルムアミド(50mg)に溶かし、テトラシアノエチレン(94mg:2モル当量)を加えた後、室温で24時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた後、トルエンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)で分離して、5,5’-ビス[5-(5-トリシアノエテニル-2チエニル)-1-(4-メチルフェニル)-2-ピロリル]-2,2’-ジチエニルを得た。収量は、73mgで、収率は、17%であった。以下に物性値を示す。
融点 206.0-206.5℃
1H NMR(CDCl3):δ 0.88(t-like、6H)、1.20-1.48(m、36H)、1.68-1.80(m、4H)、2.77(t-like、4H)、6.58(d、J=4.0Hz, 2H)、6.72(d、J=4.3Hz、2H)、6.76(d、J=4.0Hz、2H)、6.99(d、J=4.5Hz、2H)、7.05(d、J=4.3Hz、2H)、7.29(d、J=8.3Hz、4H)、7.41(d、J=8.3Hz、2H)、7.73(d、J=4.5Hz、2H)
赤外吸収スペクトル(KBr):2205、1510、1500、1495、1460、1450、1420、1402、1320、1105cm1
【0024】
実施例4
1-(4-メトキシフェニル)-2-[5-(2,2-ジシアノエテニル)-2-チエニル]-5-(2-チエニル)ピロール(53.7mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(10ml)に溶かし、テトラシアノエチレン(35.3mg:2.1モル当量)を加えたのち、室温で21時間、さらに80℃で18時間攪拌した。水50mlを加え、クロロホルム(50ml×3)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した。カラムグロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)で分離し、1-(メトキシフェニル)-2-[5-(2,2-ジシアノエテニル)-2-チエニル]-5-[(5トリシアノエテニル)-2-チエニル]ピロール(31.8mg、0.0618mmol、48%)を焦げ茶色結晶として得た。以下に物性値を示す。
融点 300℃以上
H NMR(CDCl3):δ7.80(d、J=4.8Hz、1H)7.61(s、1H) 7.53(d、J=9.0Hz,2H)7.34(d、J=9.0Hz、2H) 7.20(d、J=4.5Hz、1H) 7.17(d、J=4.1Hz、1H) 7.15(d、J=9.0Hz、2H) 7.09(d、J=4.6Hz、1H) 7.00(d、J=4.4Hz、1H) 3.94(s、3H)
赤外吸収スペクトル (KBr): 2220、1560、1508、1495、1420、1410、1360、1350、1320、1100cm-1
【0025】
実施例5~22
実施例1、2又は3と同様の操作にしたがって、表1及び表2に掲げた各実施例の化合物を製造した。表1及び2には、各化合物の置換基R、融点、性状を示す。表1及び表2中のR、Y、及びnは、下記式(1)中のR、Y及びnを示す。
【化7】
JP0003834603B2_000007t.gif【0026】
【表1】
JP0003834603B2_000008t.gif【0027】
【表2】
JP0003834603B2_000009t.gif【0028】
【発明の効果】
本発明の有機化合物によれば、有機溶媒に対して溶解性を示すので、容易に結晶を析出することができる。
【0029】
また、本発明の有機化合物によれば、安定な金属光沢を示す有機化合物を提供することができるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の化合物である1-フェニル-2,5-ビス[(トリシアノエテニル)-2-チエニル]ピロールの結晶を示す写真である。(A)は、DMFからの結晶、(B)は、真空乾燥させた結晶、(C)は、アセトンからの結晶をそれぞれ示す。
【図2】 実施例5の化合物である1-(4-クロロフェニル)-2,5-ビス[(トリシアノエテニル)-2-チエニル]ピロールの結晶(DMFからの再結晶)を示す写真である。
【図3】 実施例7の化合物である1-(2-ブロモフェニル)-2,5-ビス[(トリシアノエテニル)-2-チエニル]ピロールの結晶(アセトンからの再結晶)を示す写真である。
【図4】 実施例7の化合物である1-(2-ブロモフェニル)-2,5-ビス[(トリシアノエテニル)-2-チエニル]ピロールの結晶(クロロホルムからの再結晶)を示す写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3