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明細書 :ミッドカインの受容体およびミッドカイン依存性の細胞生存を抑制する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3694731号 (P3694731)
公開番号 特開2001-302696 (P2001-302696A)
登録日 平成17年7月8日(2005.7.8)
発行日 平成17年9月14日(2005.9.14)
公開日 平成13年10月31日(2001.10.31)
発明の名称または考案の名称 ミッドカインの受容体およびミッドカイン依存性の細胞生存を抑制する方法
国際特許分類 C07K 14/71      
C07K 14/475     
A61K 38/00      
A61K 45/00      
A61P 25/28      
C12N  5/02      
C12N 15/09      
C12P 21/02      
G01N 33/48      
FI C07K 14/71
C07K 14/475
A61K 37/02
C12N 15/00 ZNAA
A61K 45/00
A61P 25/28
C12N 5/02
C12P 21/02 C
G01N 33/48
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2000-115471 (P2000-115471)
出願日 平成12年4月17日(2000.4.17)
審査請求日 平成12年4月17日(2000.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】村松 喬
【氏名】村松 寿子
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100124280、【弁理士】、【氏名又は名称】大山 健次郎
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】光本 美奈子
参考文献・文献 EMBO J,1988年,7(13),4119-4127
Annu.Rev.Biochem.,1994年,63,601-637
Biochem Biophys Res Commun 270 p.936-941 (2000)
J Biol Chem 274(18) p.12474-12479 (1999)
調査した分野 C07K 14/71
MEDLINE(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ミッドカインと結合し得る受容体であるLDL受容体関連蛋白質を、ミッドカインと結合させる方法であって、ヒトの生体内において行う場合を除く、前記方法。
【請求項2】
ミッドカイン依存性の細胞生存を抑制するために、LDL受容体関連蛋白質との結合活性を有するヘパリン、EDTA及びRAP(受容体関連蛋白質)からなる群から選択された物質を添加することを特徴とする、ミッドカイン依存性の細胞生存を抑制する方法であって、ヒトの生体内において行う場合を除く、前記方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミッドカインと結合し得る受容体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ミッドカインは、軸索の生存を促進し、好中球と神経細胞との遊走を促進し、胎児神経細胞や表皮細胞のフィブリノーゲン分解活性を有する、ヘパリン結合性の成長因子である。
これらの活性に対応するミッドカインの信号系は、ほとんど理解されていない。二つのクラスのトランスメンブランプロテオグリカンが、ミッドカインに対して高い親和性をもって結合することが知られている。即ち、シンデカンおよび受容体チロジンフォスファターゼζである。本発明者は、以前に、受容体チロジンフォスファターゼζが、ミッドカインに媒介された神経細胞の遊走に係わっていることを示している[Maede et al. (J. Biol. Chem.) 274, 12474- 12479 (1999)] 。ヘパリン硫酸塩プロテオグリカンのヘパリン様ドメインを認識することも、ミッドカインによって促進される軸索細胞の生存と、表皮細胞中のフィブリノーゲン分解活性の促進とに対して重要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらのプロテオグリカンが、ミッドカインによって伝達される信号のトランスダクションに対して充分であるかどうかを結論できる段階ではない。プロテオグリカンは、ミッドカインからの信号の一部を受容しているらしいが、信号の他の部分は他の物質が受容しているかもしれない。
【0004】
本発明の課題は、ミッドカインに対して結合し、ミッドカインからの信号を伝達する活性を有する細胞表面の分子(受容体蛋白質)を同定することである。
【0005】
また、本発明の課題は、この同定した受容体蛋白質を利用し、ミッドカインからの信号伝達を促進して、ミッドカイン依存性の細胞生存を促進する方法、およびミッドカインからの信号伝達を阻害することによって、ミッドカイン依存性の細胞生存を抑制する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ミッドカインに対して結合する細胞表面の受容体蛋白質を同定するために、レクチンアフィニティークロマトグラフィーとミッドカインアフィニティークロマトグラフィーとを組み合わせて使用してみた。なぜなら、これまでのところ同定されてきたトランスメンブレン蛋白質はプロテオグリカンに属しており、従って今回検出しようとする受容体も、幾らかはレクチンに結合するのではないかと期待したからである。
【0007】
この結果、本発明者は、ミッドカインが、約500kDaの低分子量リポ蛋白質(LDL)受容体関連蛋白質に結合することを発見した。この蛋白質は、Herz et al. (EMBO J.) 7, 4119- 4127 (1988) およびKieger et al. (Annu. Rev.Biochem. ) 63, 601-637 (1994) に記載されているものである。
【0008】
なお、LDL受容体関連蛋白質自体は、前述の論文等に記載されている固有名詞であり、一種類の蛋白質を示すものとして当業界において周知慣用であり、複数のLDL受容体関連蛋白質のうちの一つを示すものではない。LDL受容体関連蛋白質は、500kDaの細胞膜蛋白質であり、LDL受容体と類似の構造を有しており、α2-マクログロブリン結合能がある。この結合にはカルシウムイオンが必要である。
【0009】
このように、約500kDaのLDL受容体関連蛋白質がミッドカインからの信号伝達を担うことを解明したことにより、ミッドカイン依存性の細胞の生存促進の制御が可能となる。実際に、本発明者は、約500kDaのLDL受容体関連蛋白質との結合活性を有する物質、例えばRAPを使用することによって、LDL受容体関連蛋白質のミッドカインとの結合を阻害し、ミッドカイン依存性の細胞の生存を阻止できることを実証した。また、これと同じ原理に基づいて、約500kDaのLDL受容体関連蛋白質との結合活性を有する物質を系から除去することによって、ミッドカインとLDL受容体関連蛋白質との結合を促進し、これらの間の信号伝達を促進し、これによってミッドカイン依存性の細胞の生存を促進することができる。
【0010】
約500kDaのLDL受容体関連蛋白質との結合活性を有する物質としては、後述のRAP(受容体関連蛋白質)、ヘパリン、EDTAなどを例示できる。また、ミッドカインに細胞の生存を依存する細胞としては、神経細胞(ニューロン)、大腸ガン細胞、ウィルムス腫瘍細胞をはじめとする各種の上皮性腫瘍細胞(胃ガン、子宮ガン、肺ガンなどの癌細胞を含む)が挙げられる。
【0011】
【実施例】
(ミッドカイン)
組み換え体ヒトミッドカインを酵母菌(pichia pastoris GS 115)中で発現させ、精製して均一にした。製造者のインストラクションに従って、8mlのCNBr-活性化セファロース4B(ファルマシア社)へと40mgのミッドカインを結合させることによって、ミッドカイン-寒天を調製した。
【0012】
(ミッドカインおよびリチナス コミュニス アグルチニン(RCA)への結合活性を有する糖蛋白質の分離)
30匹の妊娠したマウスから得た13日齢のマウス胎児(約65g)を、1mMのフェニルメチルスルフォニル フルオリド(PMSF)とプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(50mlに1錠)とを含有するpH7.5の10mMのトリス-塩酸300ml(緩衝液A)中でホモジナイズさせた。このホモジネートを、0.5Mのショ糖、0.1mMのKCl、10mMのmgCl2および2mMのCaCl2 を含有する等量の緩衝液Aと混合した。この混合物を、800×gで10分間遠心分離し、次いで8000×gで10分間遠心分離して核蛋白質およびミトコンドリアフラクションを除去し、上澄み液を110000×gで1.5時間4℃で超遠心分離した。8mMのCHAPS、0.15MのNaClおよび0.1Mのショ糖中を含有する緩衝液A150mlによって、この錠剤を4℃で2時間抽出した。この抽出物を、再び110000×gで1時間超遠心分離した。この上澄み液を、0.2MのNaClを含有する8mMのCHAPS(緩衝液B)を含むpH7.5の10mMのトリス塩酸によって平衡状態とされたQセファロースファーストフロフーカラム(6ml)へと適用した。このカラムを、0.5MのNaClを含有する緩衝液B10カラム容量を用いて溶出させた。上記した手順を4回繰り返し、130匹の妊娠したマウスからの胎児から得た材料を合わせた。吸収されていないフラクションと、0.5M NaClによって溶出したフラクションとを合わせ、RCA120-寒天のカラムへと適用した(豊年株式会社、日本国、1×12.8cm)。このカラムは、0.15MのNaCl、8mMのCHAPSおよび1mMのPMSFを含有するpH7.0の20mMのリン酸ナトリウム緩衝液を用いて平衡状態にした。これと同じ緩衝液によって洗浄した後に、結合した糖蛋白質を、0.1Mのラクトースを含有する同じ緩衝液を用いて溶出させた。この溶出物を、2mlのミッドカイン-寒天と混合し、4℃で終夜回転震とうした。次いで、これをカラム内へと充填し、0.15MのNaClを含有する20カラム容量の緩衝液Bによって洗浄し、2MのNaCl、5mMのEDTAを含有する緩衝液B6カラム容量によって溶出させた。
【0013】
(部分ペプチド配列の決定)
7%ゲルを用いたSDS-PAGEによって蛋白質を分離した。クーマッシーブリリアントブルーによって軽く染色した蛋白質のバンドを切除し、ローゼンフェルド他が記載した方法と実質的に同様に、トリプシンによってゲル消化した((Rosenfeld, J. 他 (Anal. Biochem.) 203, 173 - 179, (1992)) 。得られたペプチドを逆相カラム上で分離した。逆相カラム(Moniter C18, 1×150mm)は、アセトリトリルの濃度が直線的に傾斜しており、0.1%のTFAを50μ/分の流速で流し、「MAGIC 2002」を用いた。得られたペプチドのアミノ酸配列の分析を、「494A Protein Sequencer」(アプライドバイオシステムズ社)を用いて実施した。
【0014】
(LDL受容体関連蛋白質および受容体関連蛋白質(RAP))
LDL受容体関連蛋白質を冷凍ヒト胎盤から分離した(Ashcom, J. D. 他 (J. Cell Biol. )110、1041-1048 (1990):Moestrup, S. K. 他,(J. Biol. Chem.)265, 12623-12628 (1990))。受容体関連蛋白質( RAP)/LDL受容体関連蛋白質と関連するヘパリン結合蛋白質-44を、ヘパリン-寒天カラムを通すことによって除去した。RAPのないLDL受容体関連蛋白質を、クロラミンT法によって125 I標識した。簡単に言うと、10μgの精製LDL受容体関連蛋白質を、Na125 Iによって1分間4℃でクロラミンおよびPBSの存在下にインキュベートした。次いで、重メタ炭酸ナトリウムによってこの反応を停止させ、脱塩クロマトグラフィーをPD-10カラムに基づいて実施した(ファルマシア バイオテック社)。こうして調製した特定の試料の放射線活性は1.2×108 cpm/μg)であった。
【0015】
ヒトミッドカインに対する125 I-LDL受容体関連蛋白質の結合を測定した。この測定においては、「pro-bind」アッセイプレートのウエルに50μlの5μg/mlのヒトミッドカインのpH8.0の50mMトリス塩酸溶液を4℃で終夜コートした。グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)-RAP有効蛋白質を製造し、精製する前に、マウスRAP/HBP-44の暗号領域を発現ベクター(ppm比GEX-5X1)へと挿入した。17日齢のマウス胎児の能皮質からの神経細胞のミッドカイン依存性の生存に対する、GST-RAPの作用を測定した。
【0016】
ブラッシン/メガリンを、ICRマウスの腎臓の「Triton X-100-可溶化膜フラクションから、RCA-寒天およびGST-RAP-寒天アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0017】
(結果)
ミッドカインへの結合能力を有するRCA結合糖蛋白質を、RCA-寒天およびミッドカイン-寒天についてのアフィニティークロマトグラフィーによって分離した。SDS-PAGEによると、これらの蛋白質は幾つかのバンドに分離された(図1)。各バンドの部分ペプチド配列の決定の結果、ほとんどの同定が可能になった(表1)。
【0018】
【表1】
JP0003694731B2_000002t.gif【0019】
これらの中では、LDL受容体関連蛋白質(前述のHerz他)と神経細胞接着分子(NCAM)はトランスメンブレン糖蛋白質である。エンタクチンは、細胞結合活性を有する細胞外糖蛋白質である。エンタクチン-2は関連蛋白質である。アクチン、チューブリンおよび熱衝撃蛋白質90β/HSP84は糖蛋白質ではなく、トランスメンブレン糖蛋白質の細胞質性のテイルと関連しているように見える。
【0020】
本LDL受容体関連蛋白質は、LDL受容体類に属している。この類はエンドサイトーシス受容体であるけれども、最近の研究によれば、少なくともこれらのうち幾つかは信号受容体として機能する。超低密度リポ蛋白受容体(VLDLR)およびアポリポ蛋白質E受容体2(ApoER2)は、リーリンに対する受容体であり、神経細胞の遊走を制御している。従って、我々は、本LDL受容体関連蛋白質が、ミッドカインに対する信号受容体の成分として機能している可能性を調査した。
【0021】
固相アッセイに際して、125 I-標識したLDL受容体関連蛋白質は(ヒト胎盤から分離したもの)は、ミッドカインと、3.5nMの解離定数で結合することを発見した(図2)。従って、ミッドカインの本LDL受容体関連蛋白質に対する結合は、比較的に強いものである。この結合は、ヘパリンによって完全に阻害され、EDTAによって強く阻害され、受容体関連蛋白質(RAP)によって、容量依存的に阻害される(図3)。GST(50μg/ml)は効果がなかった。RAPは、LRPの合成にく係わっており、その作用を阻害することが知られている。
【0022】
次いで、我々は、ブラッシン/メガリンがミッドカインに同様の親和性をもって結合するかどうかを調査した。これらは、LDL受容体に属する高分子量蛋白質である。ブラッシンの入手量が少量であったので、ミッドカイン-寒天に対するアフィニティークロマトグラフィーの点を調査した(図4)。このカラムからのLDL受容体関連蛋白質を完全に溶出させるのに、20mMのEDTAを含有する0.5MのNaClが必要であったけれども(レーン5、10)、20mMのEDTAを含有する0.5MのNaClまたは0.3MのNaCl(レーン4)がこのカラムからのブラッシンの完全な溶出には充分であった。従って、LDL受容体関連蛋白質は、ブラッシよりも強くミッドカインに結合している。
【0023】
ミッドカインは、抗アポトーシス機構によって胎児の神経細胞の生存を促進する。この活性は、外部からGST-RAP融合蛋白質を添加することによって阻止されるように見えたが、しかしGSTの添加によっては阻止されなかった(図5)。ミッドカインを添加しない神経細胞に対しては、GST-RAPも、GSTも、細胞死を促進しなかった。むしろ、これらは生存率を行く物高くする結果となった(図5)。この結果が示唆するところによれば、本LDL受容体関連蛋白質は、ミッドカインの信号を受容し、神経細胞の生存を促進している。
【0024】
本LDL受容体関連蛋白質は、LDL受容体複合体に密接に関連する500kdの膜蛋白質としてクローニングされており、多リガンドエンドサイトーシス受容体であることは示されている。そのリガンドには、α-マクログロブリン-プロテアーゼ複合体、アポE-含有リポ蛋白質および幾つかのクーニック型プロテアーゼインヒビタードメインを有する蛋白質が挙げられる。本LDL受容体関連蛋白質は、脳内において豊富に形質発現しており、アポE-依存軸索細胞の生存を媒体している。この機構は明らかになっていない。本LDL受容体関連蛋白質の細胞質性のテイルは、二つのNpxYモチーフを含んでおり、mDab1と相互作用する。実際、LDL受容体関連蛋白質の仲間の中で、本LDL受容体関連蛋白質はmDab1と相互作用することが最初に示された。
【0025】
我々は、ミッドカインが本LDL受容体関連蛋白質に結合し、RAPが、ミッドカインに依存する胎児神経細胞の生存を阻止することを発見した。神経細胞中の本LDL受容体関連蛋白質の豊富さのために、我々は、上記の実験においてRAPが本LDL受容体関連蛋白質の機能を阻止するものと考えている。LDL受容体関連蛋白質の変種がアルツハイマー症の発病に係わっているとの報告もあり、またミッドカインが患者の痴呆プラーク中に局在化しているとの報告もあるので、本発明はアルツハイマー症などの神経細胞の消失を伴う疾患の治療に有用であると考えられらる。特に軸索細胞の増殖,生存の確保に有効である。
【0026】
また、ミッドカインは、表皮細胞のフィブリノーゲン分解活性に係わっているので、この活性の阻止あるいは促進に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ミッドカインへの結合能力を有するRCA結合糖蛋白質の分離の結果を示す。
【図2】 本LDL受容体関連蛋白質のミッドカインとの結合活性を示すグラフである。
【図3】 本LDL受容体関連蛋白質とミッドカインとの結合の阻害の程度を示すグラフである。
【図4】ミッドカイン-寒天に対するアフィニティークロマトグラフィーの結果を示す。
【図5】 胎児の神経細胞の生存に対する各物質の添加の効果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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