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明細書 :血液適合性に優れたセラミック及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2952351号 (P2952351)
登録日 平成11年7月16日(1999.7.16)
発行日 平成11年9月27日(1999.9.27)
発明の名称または考案の名称 血液適合性に優れたセラミック及びその製造方法
国際特許分類 B01J 20/10      
A61L 33/00      
C04B 35/10      
C04B 35/18      
FI B01J 20/10 D
A61L 33/00
C04B 35/10
C04B 35/18
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願平10-067459 (P1998-067459)
出願日 平成10年3月17日(1998.3.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1997年10月5日~9日Lariboisiere-Saint Louis Medical School University of PARIS7(Denis Diderot)において開催された第10回 International symposium on ceramics in medicineにおいて発表
審査請求日 平成10年3月17日(1998.3.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】394025980
【氏名又は名称】岡山大学長
発明者または考案者 【氏名】高島 征助
【氏名】尾坂 明義
【氏名】大槻 主税
【氏名】早川 聡
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】中村 敬子
参考文献・文献 特開 平3-16955(JP,A)
特開 平3-69550(JP,A)
特開 平1-282144(JP,A)
調査した分野 B01J 20/00 - 20/34
A61L 33/00
C04B 35/10
C04B 35/18
要約 【課題】血液適合性に優れるシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックを提供すること、及び該セラミックを製造する方法を提供すること。
【解決手段】上記課題は、血液適合性を有するシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックの製造方法であって、1)シリカゾル及び硝酸カルシウムの水溶液を調製すること、2)リン酸水素二アンモニウムの水溶液を調製すること、3)前記1及び2)で得られた各水溶液をアルカリ性にすること、4)前記1)の水溶液に、前記2)及び3)の各水溶液を同時に添加すること、5)前記4)で得られた反応混合物を熟成し、焼成することを具備する方法及びこの方法により得られるセラミックによって達成される。
特許請求の範囲 【請求項1】
血液適合性を有するシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックの製造方法において、該方法が
1)シリカゾル及び硝酸カルシウムの水溶液を調製する工程
2)リン酸水素二アンモニウムの水溶液を調製する
3)アルミナゾルを調製する工程
)前記1)及び2)の工程で得られた各水溶液をアルカリ性にする工程
5)前記4)の工程で得られたシリカゾル及び硝酸カルシウムのアルカリ性水溶液に、前記4)の工程で得られたリン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液及び前記3)の工程で得られたアルミナゾルを同時に添加する工程、並びに
)前記の工程で得られた反応混合物を熟成し、00から600℃の温度で焼成する工程
を具備し、かつ前記5)の工程で用いるシリカゾルとアルミナゾルのシリカ/アルミナ重量組成比が3/7から5/5であることを特徴とする方法。

【請求項2】
前記リン酸水素二アンモニウム及び硝酸カルシウムが、焼成後のカルシウムとリンの原子比がCa/P=1.68となるような量で使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【請求項3】
血液適合性を有するシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックにおいて、該セラミック
1)シリカゾル及び硝酸カルシウムの水溶液を調製する工程
2)リン酸水素二アンモニウムの水溶液を調製する
3)アルミナゾルを調製する工程
)前記1)及び2)の工程で得られた各水溶液をアルカリ性にする工程
5)前記4)の工程で得られたシリカゾル及び硝酸カルシウムのアルカリ性水溶液に、前記4)の工程で得られたリン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液及び前記3)の工程で得られたアルミナゾルを同時に添加する工程、並びに
)前記の工程で得られた反応混合物を熟成し、00から600℃の温度で焼成する工程
を具備する方法により製造されるものであり、かつシリカ/アルミナの重量組成比が3/7から5/5であるセラミック。

【請求項4】
カルシウムとリンの原子比が、Ca/P=1.68であることを特徴とする請求項3に記載のセラミック。

【請求項5】
焼成後のリン酸カルシウムの含有量が7から10重量%である請求項3又は4に記載のセラミック。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、血液適合性の優れたセラミック及びその製造方法に関する。特に本発明は、リン酸カルシウムを含有するシリカ-アルミナ系セラミック及びその製造方法に関する。

【0002】

【従来の技術】医療分野において、患者に対する診断、治療の直接的な技術に加え、これらを支えるセンシング技術、医用材料などの飛躍的進歩によって従来不治とされていた重篤な疾患の緩解、更には完治も望めるようになった。しかし、疾病によっては患者自身の臓器の機能の廃絶によって置換外科的療法しか生命の維持、機能の維持が望めない場合も多い。このような場合の最適の治療方法は、臓器移植であるが、提供される臓器の不足、更には、提供された臓器と患者との間の厳密なレベルでの組織適合性の欠損など今後解決されなければならない多くの問題がある。このような状況から、特に慢性腎不全症の患者には、血液透析療法が行われている。現在、我が国では約15万人の患者がこの治療の対象となり、治療歴20年という延命効果も珍しくない。このように血液透析療法によって延命効果が認められるものの、小分子量蛋白質の除去が困難であるという血液透析療法に使用される透析膜の性能の根本的な問題から、患者の血液中に病因物質であるこれら小分子量蛋白質が蓄積され、骨痛、皮膚の掻痒感などが起こり、これらの改善が求められている。しかし、これらの病因物質と血液の有効成分であるアルブミンは分子量が接近しているため、透析膜での分画除去は困難である。このようなことから、これら病因物質を選択的に除去する方法の早期開発が望まれてはいるが、現時点で有効な方法は見出されていない。

【0003】
更に、シリカ-アルミナはその表面にブレンステッド酸点が存在し、しかもシリカ/アルミナ組成比を任意に変更すること、更に焼成温度によってその表面の酸性度を調節できること、比表面積が大きく熱安定性もあることから工業用触媒として多用されている。本発明者の一人は、これまでにシリカ-アルミナの酸性点に着目して、その血液浄化用吸着剤としての可能性を検討し、シリカ-アルミナがin vitro試験でB型肝炎抗原除去効果(特昭61-137821、特昭61-226058、特昭62-266072、特昭63-093728)、ヒト免疫不全症候群ウイルスの除去効果(特平2-288832)を有することを確認している。

【0004】
しかし、上記特許出願で検討した一連の吸着剤は主目的の病因物質を効率的に除去しうるものの、血液適合性に難点があった。

【0005】
一方、セラミックを素材にした血液浄化用吸着剤が、ヒドロキシアパタイトを中心に検討されている。ヒドロキシアパタイトは、元来生体の骨組織の主成分であり、血液適合性を有している。ヒドロキシアパタイトがすぐれた血液適合性を有することは、血液成分に対して刺激が少ないことによるものであり、この結果、病因物質の吸着除去性能は不十分となる。

【0006】
従って、上記病因物質を選択的に除去でき、しかも血液適合性を有するセラミックの開発が望まれている。

【0007】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、血液適合性に優れたシリカ-アルミナ系セラミックを製造する方法を提供することを目的とする。

【0008】
本発明は更に、血液適合性に優れたシリカ-アルミナ系セラミックを提供することを目的とする。

【0009】

【課題を解決するための手段】上記課題は、下記(1)から()によって解決される。

【0010】
(1)血液適合性を有するシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックの製造方法において、該方法が
1)シリカゾル及び硝酸カルシウムの水溶液を調製する工程
2)リン酸水素二アンモニウムの水溶液を調製する
3)アルミナゾルを調製する工程
)前記1)及び2)の工程で得られた各水溶液をアルカリ性にする工程
5)前記4)の工程で得られたシリカゾル及び硝酸カルシウムのアルカリ性水溶液に、前記4)の工程で得られたリン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液及び前記3)の工程で得られたアルミナゾルを同時に添加する工程、並びに
)前記の工程で得られた反応混合物を熟成し、00から600℃の温度で焼成する工程
を具備し、かつ前記5)の工程で用いるシリカゾルとアルミナゾルのシリカ/アルミナ重量組成比が3/7から5/5であることを特徴とする方法。

【0011】
(2)前記リン酸水素二アンモニウム及び硝酸カルシウムが、焼成後のカルシウムとリンの原子比Ca/P=1.68となるような量で使用されることを特徴とする前記(1)に記載の方法。

【0012】


【0013】
)血液適合性を有するシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックにおいて、該セラミックが
1)シリカゾル及び硝酸カルシウムの水溶液を調製する工程
2)リン酸水素二アンモニウムの水溶液を調製する
3)アルミナゾルを調製する工程
)前記1)及び2)の工程で得られた各水溶液をアルカリ性にする工程
5)前記4)の工程で得られたシリカゾル及び硝酸カルシウムのアルカリ性水溶液に、前記4)の工程で得られたリン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液及び前記3)の工程で得られたアルミナゾルを同時に添加する工程、並びに
)前記の工程で得られた反応混合物を熟成し、00から600℃の温度で焼成する工程
を具備する方法により製造されるものであり、かつシリカ/アルミナの重量組成比が3/7から5/5であるセラミック。

【0014】
カルシウムとリンの原子比が、Ca/P=1.68であることを特徴とする前記(3)に記載のセラミック。

【0015】


【0016】
)焼成後のリン酸カルシウムの含有量が7から10重量%である上記(3)又は(4)に記載のセラミック。

【0017】

【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。

【0018】
本発明の第1では、血液適合性を有するシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系のセラミックの製造方法を提供する。

【0019】
本発明のセラミックは、シリカゾルと硝酸カルシウムの混合水溶液を調製し、これをアルカリ性とし、次いで、アルカリ性にしたリン酸水素二アンモニウム水溶液とアルミナゾルを同時にシリカゾルと硝酸カルシウムの混合水溶液に添加して製造することを特徴とする。得られたシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系混合物を熟成、焼成する。このような手順により製造されたシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックは、その系内で、リン酸カルシウムをミクロな状態でより均一に分散させることができる。本発明の方法で得られるセラミックは、シリカゾル及びアルミナゾルに、リン酸カルシウムを機械的に混合した場合に比べ、血液適合性に優れる。

【0020】
具体的に各工程を説明する。

【0021】
工程1)は、硝酸カルシウムの水溶液にシリカゾルを添加する。硝酸カルシウム及びシリカゾルは市販の何れのものも使用することができる。例えば、シリカゾルは、固形分20重量%のものを使用することができる。シリカゾルはまた、ケイ素化合物を水のような水系溶媒に分散させて調製することもできる。該ケイ素化合物はシリカゾルを形成できるものであれば特に限定されないが、無機ケイ素化合物(例えば、二酸化ケイ素等)又は有機ケイ素化合物(例えば、オルガノシロキサン)を挙げることができる。これらを例えば20重量%含有する溶液とすればよい。

【0022】
本工程では、例えば、硝酸カルシウムの水溶液に市販のシリカゾルを添加し、スターラーのような磁気攪拌機で攪拌する。混合は室温程度の温度で行うことができる。溶媒は水であるが、蒸留水が好ましい。なお、本工程ので使用する硝酸カルシウムの量及びシリカゾルの量は後述する工程4)で説明する。

【0023】
工程2)では、リン酸水素二アンモニウムの水溶液を調製する。リン酸水素二アンモニウムは、市販品の何れのものも使用しうる。本発明では、リン酸水素二アンモニウムを水、好ましくは蒸留水のような溶媒に溶解して使用する。なお、リン酸水素二アンモニウムの量は、後述する工程4)で説明する。

【0024】
工程3)では、前記工程1)及び2)で得られた各水溶液をアルカリ性にする。アルカリ性にするには、水酸化アンモウム水溶液のようなアルカリ水溶液を使用する。水酸化アンモニウムは、反応後金属イオンが残留しないので好ましい。本発明においては、pH9から11、好ましくはpH10のアルカリ性にする。なお、本発明においては、アルカリ性にする工程は後述するアルミナゾル及び工程2)のリン酸水素二アンモニウムを、前記工程1)で得られた水溶液に添加する前であれば何れの段階で行ってもよく、例えば前記1)及び2)の工程でそれぞれ行うことができる。

【0025】
工程4)では、上記工程で調製した各水溶液とアルミナゾルとを混合する。アルミナゾルは、市販品を使用することができる。例えば20重量%の固形物を含有するアルミナゾルを使用することができる。この他に、アルミナゾルは、例えば酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのような無機アルミニウム、アルミニウムアルコラートのような有機アルミニウムを水のような水系溶媒に分散させて調製することもできる。この場合、アルミナゾルは、アルミニウム化合物を、例えば20重量%含有する分散物として調製すればよい。

【0026】
本工程では、上述のように調製した硝酸カルシウムとシリカゾルのアルカリ性水溶液に、リン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液とアルミナゾルを同時に添加する。

【0027】
本発明では、シリカ及びアルミナをよりミクロな状態で均一に混合する。シリカ及びアルミナはそれぞれルイス酸型の表面物性である。これをシリカ-アルミナ特有のブレンステッド酸型にして、その酸点を病因物質の吸着サイトとして利用するには、これらの2成分を機械的に混合することだけでは達成し得ないため、これら2成分を所定の混合比で混合する必要がある。更に、シリカ-アルミナにリン酸カルシウムを混合する際にもより均一に分散・混合されるようにする必要がある。このような混合を可能にするため、本発明では、上記工程で調製した、シリカゾルと硝酸カリウムのアルカリ性水溶液に、リン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液とアルミナゾルを同時に添加する。実際には、シリカゾルと硝酸カリウムのアルカリ性水溶液をスターラーのような磁気攪拌機で攪拌し、これに、リン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液とアルミナゾルを別々の容器からチューブポンプのようなポンプにより独立且つ同時に滴下することによって添加する。添加は、各溶液が均質になり、且つ反応系内でリン酸カルシウムが均一に生成し、シリカゾル及びアルミナゾルに該リン酸カルシウムが均質に分散されるように行う。具体的には、4.5ml/分のような速度で添加を行うことが好ましい。

【0028】
リン酸水素二アンモニウムの量及び硝酸カルシウムの量は、焼成後のセラミックのリン酸カルシウムの含有量が7重量%から15重量%、好ましくは7重量%から10重量%、最も好ましくは10重量%となるように配合する。また、リン酸水素二アンモニウムと硝酸カルシウムの割合は、焼成後に、これらから生成されるリン酸カルシウムが1.68のカルシウム/リン原子比(Ca/P比)となるようにする。この比は、ヒドロキシアパタイトのカルシウム/リン原子比に相当する。

【0029】
シリカゾルとアルミナゾルの割合は、重量比で3/7から5/5、好ましくは5/5である。

【0030】
混合は、室温から100℃、好ましくは室温から80℃の温度で行う。具体的には、室温で5から6時間攪拌した後、約80℃の温度で混合物のアンモニア臭が消失し、ゲルが生じるまで攪拌する。

【0031】
図1を参照して本工程を更に説明する。

【0032】
シリカゾル及び硝酸カルシウムの水溶液(10)をスクリュー瓶のような容器(12)中で調製し、アルカリ性にする。次に、リン酸水素二アンモニウム水溶液(14)をスクリュー瓶のような容器(16)中で調製し、アルカリ性にする。更に、シリカゾル(18)をスクリュー瓶のような容器(20)に加える。前記容器16及び18からチューブポンプのようなポンプ(22)に硝酸カルシウム水溶液(14)及びアルミナゾル水溶液(18)を適切な導管を介して導入する。これらの溶液(14及び18)は、ポンプから独立且つ同時にシリカゾル及び硝酸カルシウムのアルカリ性溶液(10)に供給される。供給は、各溶液が均質になり、且つ反応系内でリン酸カルシウムが均一に生成し、シリカゾル及びアルミナゾルに該リン酸カルシウムが均一に分散されるように行う。添加の間、シリカゾル及び硝酸カルシウムのアルカリ性水溶液(10)を攪拌する。

【0033】
工程5)は、上記工程4)で得られた混合物を熟成し、焼成する工程である。熟成は、室温で40から50時間行う。次に、得られたゲルを濾過し、蒸留水で洗浄した後、電気炉で焼成する。焼成は、例えば電気炉内において3時間で所定温度に昇温して、そのまま更に3時間焼成処理し、焼成後、電源をカットして、炉内で試料を自然放冷することによって行う。焼成温度は、400から700℃、好ましくは600℃である。得られた固形物をアルミナ製乳鉢で30分間粉砕し、300μmの篩を通過した成分を、後述する血液適合性試験用の試料として使用する。

【0034】
本発明の第二は、上記方法で製造される、リン酸カルシウムが均一に分散されたシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックに関する。本発明のセラミックは、シリカ-アルミナ系セラミックにリン酸カルシウムが、均一に分されていることを特徴とする。このような分散は、各成分を単純に機械的に混合することによって得られるものではなく、上記方法でリン酸カルシウムを反応系内で生成させると共に、シリカ-アルミナに合成過程で均一に分散させてはじめて得られる。このように、リン酸カルシウムを均一に分散させることで、本発明のセラミックに血液のような検体に対する適合性が付与される。

【0035】
本発明のセラミックでは、リン酸カルシウムのカルシウム/リン原子比(Ca/P比)が1.68であり、該セラミックのリン酸カルシウムの含有量が、7重量%から15重量%、好ましくは7重量%から10重量%、最も好ましくは10重量%であり、シリカゾルとアルミナゾルの割合が、重量比で3/7から5/5、好ましくは5/5である。

【0036】
次に、本発明のセラミックの血液適合性試験について説明する。

【0037】
ヒトの血液は異物と接触すると短時間で凝固することは周知の現象であるが、これは生体防御機構の重要な働きの一つである。ヒトの血液の凝固機構については既に解明されており、血清中の凝固関連物質(13成分)、補体(5経路、11成分)、血小板成分などが何らかの刺激によって短時間のうちに活性化され、相互に関連しながらカスケード形式で連鎖反応により進行して血栓を形成するとされている。セラミックなど生体材料の血液適合性を検討する際に、これらの全ての成分への影響を測定することは不可能である。通常、臨床では簡便な評価方法として、ヒト血清中の凝固関連物質のうちの3成分:フィブリノーゲン(I因子)、プロトロンビン(II因子)、トロンボプラスチン(III 因子)の変動を機器を用いて測定することが検討されている。その測定原理は血清中のこれらの個々の成分が活性化されて凝固するまでの時間を散乱光検出方式で検出・評価するものである。そこで本発明者らも、合成した試料の血液適合性をこの方法によって検討した。具体的には、まず、セラミックの血液適合性試験の実施当日、複数の健常被検者から採血し、それらの血清を混合して検体とした。また、セラミックの血液適合性の相対的評価を行うために、対照試料として現在臨床で使用されている(株)クラレ製の吸着型血液浄化器、DHP-1に充填されているポリメタクリル酸ヒドロキシエチル-コート-活性炭(PHEMA=AC)を使用した。各因子の変動を測定した結果、本発明のセラミックは、対照に近い値を示し、血液適合性に優れることが判明した。

【0038】

【実施例】比較例1
比較例では、シリカゾルとアルミナゾルから調製したシリカ-アルミナ系セラミックについて検討した。本例ではセラミックのシリカ/アルミナ比が1/9、3/7、5/5、7/3及び9/1となるように調製した。

【0039】
50mlのスクリュー瓶にシリカゾル(例えば、10ml)(日産化学社製、商品名:スノーテックス、コロイダルシリカN、固体含量20重量%)を添加した。次に所定量のシリカ/アルミナ比となるようにアルミナゾル(日産化学社製、商品名:アルミナゾル520、固体含量20重量%)を50mlのスクリュー瓶に採取した(Al/Si比により仕込量は異なるが、Al/Si=5/5の場合10ml/10ml)。次に、個々のシリカゾルとアルミナゾルを混合し、各混合液を6時間攪拌した後、約80℃の温水浴中で加熱しながら適宜蒸留水を添加した。得られた各混合物を乾燥した後、アルミナ製坩堝に移し、マッフル炉(ヤマト科学(株)製FP-32型)内において3時間で400℃まで昇温し、この温度に3時間保持して焼成した。焼成後、電源を切り、炉内で自然放冷した。得られた固形物をアルミナ製乳鉢で30分間粉砕し、300μmの篩を通過した分画成分をシリカ-アルミナ系セラミックの試料とした。また、焼成温度を600℃及び1000℃とした以外、上記と同様の操作で上記5種類のシリカ/アルミナ比のシリカ-アルミナ系セラミックを調製した。

【0040】
<血液適合性の評価>このようにして合成した試料の血液適合性を評価した。評価には健常者の新鮮な血液が必要である。そこで11名の健常者からそぞれ27mlを採血した。抗凝固剤として3.2%クエン酸ナトリウム水溶液(3.0ml)を個々の血液に添加して50mlの遠沈管に入れてよく混合した後、3000rpm で5分間遠心分離した。遠心分離後、上清部分を採取して混合し、これをヒト新鮮血漿試料とした。

【0041】
また、上述した試料と血漿を接触させる際には、予め試料を脱泡しておく必要があり、そのためには試料を血液の抗凝固性に影響を与えない適切な溶媒に浸漬しておかなければならない。そこで本実験では生理的食塩液を調製して使用した。生理的食塩液は以下のように調製した。試薬特級の塩化ナトリウム0.142モルを約800mlの蒸留水に溶解した。これに1モルのリン酸緩衝液(pH:7.4)をスポイトで滴下してpH:7.2に調製した。この溶液を1Lのメスフラスコに入れ、標線まで蒸留水を加えて全量を1Lとした。

【0042】
次にヒト新鮮血漿と粉末状の試料との接触試験法について述べる。

【0043】
粒度が300μm以下の粉末状の試料を0.3g秤量し、10mlのガラス製試験管に採取した。これに1.0mlの生理的食塩液を添加して120℃で20分間加熱加圧脱泡した。これに2.0mlの新鮮血漿を加え、充分転倒混和した。試験管を密栓して3時間放置した後、上精液を1.0ml採取して0.45μmのセルロースアセテート膜のフィルターで濾過した。このようにして得られた濾液について血液凝固能の変化をトロンボプラスチン時間(PTT)、プロトロンビン時間(PT)、フィブリン量(Fib)をオーソ・ダイアゴノスティックス・システムズ製血液凝固測定装置:Koagu Lab MJによって測定した。対照の吸着剤には血液浄化用吸着剤(DHP-1)として現在臨床で使用されているポリメタクリル酸ヒドロキシエチル樹脂をコーティングした活性炭(PHEMA-AC、(株)クラレ製)を用いた。

【0044】
i.部分トロンボプラスチン時間(PTT)の測定法
活性トロンボファックスと0.02モルの塩化カルシウム液をそれぞれ37℃で15分間加熱した。検体の血漿(100μl)と37℃に加熱した活性トロンボファックス(100μl)を混和して37℃で3分間加温した。これに塩化カルシウム液(100μl)を添加して、その混合試料にゲルが出現するまでの時間をPTTとした。なおこの測定法において臨床では、PTTが40~80秒の場合を正常血漿、120~180秒の場合を異常血漿、180秒以上の場合を凝固不能血漿と判定する。

【0045】
ii.プロトロンビン時間(PT)の測定法
ブレーントロンボプラスチンを37℃で15分間加温した。検体の血漿(100μl)を37℃で1分間加温し、ブレーントロンボプラスチン(200μl)を添加した。この混合試料にゲルが出現するまでの時間をPTとした。正常血漿との差が1秒以内の場合を正常と判定した。

【0046】
iii .フィブリン量(Fib)の測定法
検体の血漿をオーソQFA緩衝液を用いて10倍に希釈し、そのうちの0.2mlを37℃で3分間加温し、オーソQFAトロンビン試薬(0.1ml)を添加して凝固時間を測定した。この凝固時間と予め作製しておいた検量線から、検体のフィブリン濃度を算出した。

【0047】
<血液適合性試験の結果>上述のように調製したシリカ-アルミナ系セラミックの血液適合性を表1に示す。

【0048】

【表1】
JP0002952351B1_000002t.gif【0049】上記表1によるとシリカ/アルミナの組成比によって、上述した3種類のパラメーターの測定値は大幅に変動することが認められた。また、焼成温度も重要なファクターであることも判明した。

【0050】
PTTについてはブランク値(ネガティブブランク(血清のみ:600))、ポジティブブランク(血清をPHEMAコーティングした活性炭と接触:52秒)とは大幅にかけ離れてほとんど測定不能(180秒以上)であった。わずかに1000℃で焼成した試料が全組成領域で180秒以下であった。

【0051】
PTについてはシリカ/アルミナ組成比が3/7~7/3の領域がもっともブランク値(ネガティブブランク;20秒:ポジティブブランク:18秒)に接近(25~40秒)しており、焼成温度も400~600℃の領域が望ましいことがわかった。

【0052】
Fibについてはシリカ/アルミナ組成比1/9~3/7、焼成温度:400℃及び600℃でブランク値(ネガティブブランク:160秒、ポジティブブランク:140秒)の領域に最も接近していた。

【0053】
このように3種類のパラメータに対してそれぞれの測定値はばらついているが、比較的有効なシリカ/アルミナ組成比は、3/7~5/5であり、焼成温度については400~600℃の領域であることが判明した。

【0054】
しかし、本比較例で調製したシリカアルミナ系セラミックでは、PPTに関する血液適合性が乏しいという結果であった。

【0055】
比較例2
比較例1に示されるように、シリカ-アルミナ系セラミックは、特にPTTに関して血液適合性に乏しいと判断される。

【0056】
一方、本発明者らはすでにヒドロキシアパタイト系吸着剤が優れた血液適合性を示すことを確認している(S. Takashima, S. Hayakawa, C. Ohtsuki, A. Osaka: Bioceramics, 9: 217-220, 1996)。そこで、本比較例では、予め調製したリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)をシリカゾル及びアルミナゾルに機械的に混合し、焼成して得られるセラミックについて検討した。なお、比較例1の結果から、適切と考えられる焼成温度(600℃)、及びシリカ/アルミナ比(5/5)を使用した。

【0057】
例えば、10mlのシリカゾル(日産化学社製、スノーテックス、コロイダルシリカN、固体含量20重量%)と10mlのアルミナゾル(日産化学社製、商品名:アルミナゾル520、固体含量20重量%)を混合し、スターラーで攪拌しながらヒドロキシアパタイト(Ca/P比=1.68)(商品名:資生堂試作品)を添加した。ヒドロキシアパタイトは、下記表2に示す含有量となるように添加した。この混合液を6時間攪拌した後、約80℃の温水浴中で加熱しながら適宜蒸留水を添加した。得られたゲル状物を室温で48時間熟成させた後、ブフナー漏斗(西川医科機器(株)製)によって濾別した。得られた残分をアルミナ製坩堝に移し、マッフル炉(ヤマト科学(株)製FP-32型)内において3時間で600℃に昇温し、その温度で3時間保持して焼成した。焼成後、電源を切り、炉内で自然放冷した。得られた固形物をアルミナ製乳鉢で30分間粉砕し、300μmの篩を通過した分画成分をシリカ-アルミナ-ヒドロキシアパタイト系セラミックの試料とした。

【0058】
得られたセラミックについて、比較例1に示した手順で血液適合性を検討した。結果を表2に示す。

【0059】

【表2】
JP0002952351B1_000003t.gif【0060】表2から明らかなように、予め合成したヒドロキシアパタイトを機械的に混合して得られたセラミックの血液適合性は、例えば、PTTが180秒以内となっており、比較例1のシリカ-アルミナ系セラミックよりも優れているが、ブランク値よりも大きくかけ離れた値となった。従って、本比較例のように、予めヒドロキシアパタイトを調製し、これをシリカゾル及びアルミナゾルに添加する方法では、シリカ-アルミナ系セラミックの血液適合性を十分に向上させることはできなかった。

【0061】
実施例
比較例1で調製したシリカ-アルミナ系セラミック、及び比較例2で調製したシリカ-アルミナ-ヒドロキシアパタイト系セラミックでは、PTTに関する血液適合性が十分でないと判断される。そこで、本発明者らは、リン酸カルシウムのシリカ-アルミナ中への分散状態を向上させることによって、このような吸着剤の血液適合性が飛躍的に向上されると考え、以下のようにシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックを調製した。なお、比較例1の結果から、最も適切と考えられる焼成温度(600℃)、及びシリカ/アルミナ比(5/5)を使用した。

【0062】
下記表3に示すような、セラミック試料内のリン酸カルシウム含有量となるように、リン酸水素二アンモニウム[(NH4 2 HPO4 ](ナカライテスク製)及び硝酸カルシウム[Ca(NO3 2 ・4H2 O](ナカライテスク製)を用いた。なお、カルシウムとリンの比はCa/P=1.68(ヒドロキシアパタイトの原子比)となるように硝酸カルシウム及びリン酸水素二アンモニウムをそれぞれ使用した。

【0063】

【表3】
JP0002952351B1_000004t.gif【0064】表3に示す所定量の硝酸カルシウム(ナカライテスク製)を50mlのスクリュウー瓶に充填し、適当量の蒸留水を添加した。更に、この溶液に所定量のシリカゾル(日産化学社製、商品名:スノーテックス、コロイダルシリカN、固体含量20重量%)を添加した。次に所定量のリン酸水素二アンモニウム(ナカライテスク製)を50mlのスクリュウー瓶に採取して、適当量の蒸留水を添加した。両者の溶液には28%水酸化アンモニウム水溶液(和光純薬製)をスポイトで2滴添加してアルカリ性溶液(それぞれpH10)とした。所定量のアルミナゾル(日産化学社製、商品名:アルミナゾル520、固体含量20重量%)を50mlのスクリュー瓶に採取した。シリカゾルを含有する硝酸カルシウムのアルカリ性水溶液をスターラーで攪拌し、この溶液に、リン酸水素二アンモニウムのアルカリ性水溶液及びアルミナゾルをスクリューポンプを介して、独立且つ同時に、4.5ml/分の速度で滴下した。この混合液を6時間攪拌した後、約80℃の温水浴中で加熱しながら適宜蒸留水を添加した。この操作をアンモニア臭が消失し、白色のゲル状物が得られるまで繰り返した。得られたゲル状物を室温で48時間熟成させた後、ブフナー漏斗(西川医科機器(株)製)によって濾別した。残分を蒸留水で洗浄し、硝酸アンモニウムを除去した。洗浄した残分をアルミナ製坩堝に移し、マッフル炉(ヤマト科学(株)製FP-32型)内において3時間で600℃に昇温し、その温度で3時間保持して焼成した。焼成後、電源を切り、炉内で自然放冷した。得られた固形物をアルミナ製乳鉢で30分間粉砕し、300μmの篩を通過した分画成分をシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックの試料とした。

【0065】
上記のように調製したセラミックの血液適合性を表4に示す。試験方法は比較例1で説明したとおりである。

【0066】

【表4】
JP0002952351B1_000005t.gif【0067】表4から明らかなようにシリカ-アルミナにリン酸カルシウムを均一に混合することによって、表1及び表2に示したシリカ-アルミナ系セラミック及びシリカ-アルミナ-ヒドロキシアパタイト系セラミックの場合と比較して3種類のパラメーターのそれぞれが顕著にブランク値に接近することが認められた。特にリン酸カルシウム濃度が5~10%の領域においてその効果が顕著であった。

【0068】

【発明の効果】以上のように、本発明は、血液適合性に優れたシリカ-アルミナ-リン酸カルシウム系セラミックを提供することができ、該セラミックは、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス等の病因物質を、血液凝固を起こさせることなく吸着することができる。

【0069】
更に、本発明のセラミックの製造方法は、市販品を使用し、水のような容易に入手可能な溶媒を使用するので、上記の優れたセラミックを、不純物を含有することなく、効率よく製造することができる。
図面
【図1】
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