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明細書 :光パルス発生方法およびその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4044277号 (P4044277)
公開番号 特開2002-116420 (P2002-116420A)
登録日 平成19年11月22日(2007.11.22)
発行日 平成20年2月6日(2008.2.6)
公開日 平成14年4月19日(2002.4.19)
発明の名称または考案の名称 光パルス発生方法およびその装置
国際特許分類 G02F   1/061       (2006.01)
G02F   1/17        (2006.01)
FI G02F 1/061 502
G02F 1/061 501
G02F 1/17
請求項の数または発明の数 10
全頁数 7
出願番号 特願2000-306022 (P2000-306022)
出願日 平成12年10月5日(2000.10.5)
審査請求日 平成15年8月26日(2003.8.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小西 毅
【氏名】一岡 芳樹
【氏名】岩本 匡平
【氏名】長坂 由起子
個別代理人の代理人 【識別番号】100087147、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 文廣
【識別番号】100111822、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 章彦
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 特開平07-210530(JP,A)
OPTICS COMMUNICATIONS ,1996年,131,25-30
調査した分野 G02F 1/01
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
光学的特性の異なる初期状態とシフト状態を有し、特定の第1の波長の光の照射により初期状態からシフト状態へ遷移し、他の特定の第2の波長の光の照射によりシフト状態から初期状態へ遷移する再帰的なフォトクロミック過程を持つ材料の光デバイスにおいて、特定の第1の波長の連続光と特定の第2の波長の連続光を重畳させて照射し、光デバイス自己誘導的に連続的に生じる状態遷移の繰り返しに基づいて、光デバイスから出力される透過光の強度を変化させ、光パルスを連続的に発生することを特徴とする光パルス発生方法。
【請求項2】
前記初期状態とシフト状態で異なる光デバイスの光学的特性は、光吸収帯特性であることを特徴とする請求項1に記載の光パルス発生方法。
【請求項3】
前記光デバイスの光吸収帯特性は、シフト状態で生じる前記特定の第1の波長を含む第1の光吸収帯領域と、初期状態で生じる前記特定の第2の波長を含む第2の光吸収帯領域からなることを特徴とする請求項2に記載の光パルス発生方法。
【請求項4】
前記特定の第1の波長の連続光を前記特定の第2の波長の連続光よりも先に照射することを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の光パルス発生方法。
【請求項5】
光デバイスの材料は、バクテリオロドプシンであることを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の光パルス発生方法。
【請求項6】
光学的特性の異なる初期状態とシフト状態を有し、特定の第1の波長の光の照射により初期状態からシフト状態へ遷移し、他の特定の第2の波長の光の照射によりシフト状態から初期状態へ遷移する再帰的なフォトクロミック過程を持つ材料の光デバイスと、
特定の第1の波長の連続光を発生して光デバイスに照射する第1のレーザ光源と、
特定の第2の波長の連続光を発生して光デバイスに照射する第2のレーザ光源を備え、
第1のレーザ光源からの特定の第1の波長の連続光と第2のレーザ光源からの特定の第2の波長の連続光は、重畳して光デバイスに入射、光デバイスに自己誘導的に連続的に生じる状態遷移の繰り返しに基づいて、光デバイスから出力される透過光の強度を変化させ、光パルスを連続的に発生することを特徴とする光パルス発生装置。
【請求項7】
前記初期状態とシフト状態で異なる光デバイスの光学的特性は、光吸収帯特性であることを特徴とする請求項6に記載の光パルス発生装置。
【請求項8】
前記光デバイスの光吸収帯特性は、シフト状態で生じる前記特定の第1の波長を含む第1の光吸収帯領域と、初期状態で生じる前記特定の第2の波長を含む第2の光吸収帯領域からなることを特徴とする請求項7に記載の光パルス発生装置。
【請求項9】
前記第1のレーザ光源からの連続光は、前記第2のレーザ光源からの連続光よりも先に光デバイスに入射されることを特徴とする請求項6ないし請求項8に記載の光パルス発生装置。
【請求項10】
光デバイスの材料は、バクテリオロドプシンであることを特徴とする請求項6ないし請求項9に記載の光パルス発生装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信、光情報処理等の分野に利用される高速の光パルス列を連続的に発生するための光パルス発生方法および光パルス発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高速で繰り返される光パルス列を連続発生させる技術としては、半導体レーザ、ファイバレーザ、固体レーザなどを用いるものがある。これらのレーザを用いて高速の光パルス列を発生させるには、通常、共振器内を走行する光パルスの周期をロックする(引き込む)モード同期方式がとられる。モード同期方式には、共振器内に光変調器を挿入して損失変調をかける能動方式と、入射光強度に対して吸収係数が非線形に変化する過飽和吸収体を共振器内に挿入して受動的にモード同期をとる受動方式などがある。しかし、これらはいずれも機構が複雑であり、また高価であることや、面型デバイスとして使用することが難しいなどの問題がある。
【0003】
ところで近年、光を吸収すると吸収波長帯や屈折率などの光学特性を可逆的なサイクルで変化させる、いわゆる再帰的なフォトクロミック過程をもつ光材料が注目を集めている(参考文献1、2、3参照)。この光材料は有機高分子材料の一種で、ある吸収波長帯をもつ初期状態で特定の波長の光を照射されると、吸収波長帯をシフトさせたシフト状態に遷移し、シフト状態で別の特定の波長の光を照射されると、元の初期状態に復帰する性質を備えており、構造が単純で面型デバイスに適合しやすいことから、光メモリや光スイッチング素子などの各種デバイスへの応用が期待されている。しかし、光パルス発生装置への適用例はまだ見られない。
【0004】
〔参考文献〕
1. 辻岡 強,“二光子吸収による書換え型光メモリー”, O plus E ,
Vol.20 ,No.9, pp.1033-1037.
2. 河合 壮・入江 正浩, “フォトクロミック導電性高分子の光記憶
性”, 高分子加工 49巻1号(2000年),pp.19-24.
3. 岡田佳子,“光受容性タンパク質バクテリオロドプシンとは”,
パリテイ Vol.10 No.10 1995-10, pp.26-36.
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の再帰的なフォトクロミック過程を持つ光材料を用いた光デバイス応用装置の開発研究では、再帰的な状態遷移を生じさせるために、少なくとも2種類の波長のパルス光を交互に光デバイスに照射する機構を用いる必要があり、装置構造の簡素化を阻害する大きな要因となっていた。
【0006】
本発明の課題は、再帰的なフォトクロミック過程を持つ光材料に連続光を用いて簡単な構造で高繰り返し速度の光パルス列を発生できる技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
ある波長の光を照射すると吸収帯がシフトし、その状態でまた別の波長の光を照射すると吸収帯が元に戻る再帰的なフォトクロミック過程をもつ光材料から連続的な光パルス列を発生させるには、光材料に状態遷移を連続的に引き起こす必要がある。従来は、光材料における2つの状態を一方から他方へ連続的に遷移させるのに、2種類の波長のパルス光を、それぞれの状態に応じて交互に照射する必要があった。本発明は、これら2種類の波長のパルス光の繰り返しを極限まで高めた結果として連続光を考えるに至ったものであり、2種類の波長の連続光を光材料に同時に照射することにより、自己誘導的,自律的に連続的な状態遷移のサイクルを生じさせ、光パルス列を発生させるものである。
【0008】
図1により、本発明の原理を説明する。
【0009】
図1の(a)は、本発明の概念を模式的に示したものである。
【0010】
図中、1は再帰的なフォトクロミック過程を持つ材料の光デバイスであり、(b)に示す波長λ1 にピークのある吸収帯をもつ初期状態と、(c)に示す波長λ2 にピークのある吸収帯をもつシフト状態の二つの状態をもつ。
【0011】
2は波長λ1 の連続光であり、照射により光デバイス1を初期状態からシフト状態に遷移させる働きをもつ。
【0012】
2′は連続光2の透過光である。
【0013】
3は波長λ2 の連続光であり、光デバイス1をシフト状態から初期状態に復帰させる働きをもつ。
【0014】
3′は連続光3の透過光である。
【0015】
再帰的なフォトクロミック過程による光デバイス1の動作は、概略次のように行なわれる。
【0016】
まず光デバイス1に、(c)のシフト状態を(b)の初期状態に戻す働きのある波長λ2 の連続光3を照射して、光デバイス1をあらかじめ初期状態にセットする。このとき光デバイス1の吸収帯はλ1 の位置にあるため、波長λ2 の連続光3は吸収されず、透過光3′のレベルは高い。
【0017】
次に、(b)の初期状態を(c)のシフト状態に遷移させる働きのある波長
λ1 の連続光2を、連続光3に重畳させて照射する。このとき、光デバイス1の吸収帯はλ1 の位置にあるため連続光2は吸収され、それにより生じる光化学反応により、光デバイス1の吸収帯は(c)のλ2 の位置へシフトする。その結果、今度は波長λ2 の連続光3が光デバイス1で吸収されるようになり、透過光3′のレベルは低下する。
【0018】
光デバイス1で波長λ2 の連続光3が吸収されるようになると、それにより生じる光化学反応で、今度は光デバイス1の吸収帯が(b)の初期状態λ1 の位置にシフトしていき、元の状態へ復帰する。その結果、波長λ2 の連続光3の吸収はなくなり、透過光3′のレベルは上昇する。同様にして、透過光2′のレベルも、透過光3′のレベルと逆相の関係で変化する。
【0019】
光材料の持つ特性により、以上の動作が自己誘導的に繰り返されるため、光デバイス1に連続的な遷移サイクルが生じ、その結果、光デバイス1における2つの連続光2,3の吸収/透過が交互に周期的に変化して、透過光2′、3′に、高繰り返し速度の光パルス列が得られる。
【0020】
次に図2により、本発明による光パルス列発生過程をさらに具体的に説明する。図中、横方向に並んだ(1),(2), (3), (4)は、立ち上げ時の基本的な四つの過程を示しており、また縦方向に並んだ(a)、(b)、(c)は、各過程における照射光と透過光の状態、光デバイス1の吸収帯の状態、透過光のレベルをそれぞれ示す。以下、各過程を順にしたがって説明する。
(1)光デバイス1に、波長λ2 の連続光3のみを照射して、光デバイス1を初期状態にセットし、吸収帯を波長λ1 の位置でスタートさせる。このとき、波長λ2 の連続光3は吸収されないので、透過光3′のレベルは高く、透過光2′は存在しない。
(2)初期状態で波長λ1 の連続光2を連続光3に重畳させて照射する。光デバイス1の吸収帯は、はじめ波長λ1 の位置にあるので、連続光2を吸収し、連続光3を透過させる。光デバイス1は、連続光2を吸収するにつれ、吸収帯を自動的に波長λ2 の位置にシフトしていく。これにより、透過光3′のレベルは高いが少しずつ低下し、透過光2′のレベルは低いが少しずつ上昇する。
(3)吸収帯が波長λ2 の位置に完全にシフトして、連続光2の吸収は無くなり、代わりに波長λ2 の連続光3が吸収されるようになる。このため、透過光2′のレベルは高くなり、透過光3′のレベルは低くなる。
(4)光デバイス1は、波長λ2の連続光3を吸収し、吸収帯を自動的に波長λ1の吸収帯に戻す。吸収帯が完全に元に戻ると、連続光2が吸収され、透過光2′のレベルは低くなり、透過光3′のレベルは高くなって、(2)の過程と同じになり、以後、(2),(3),(4)の過程がサイクリックに繰り返される。
【0021】
このようにして、透過光2′、3′は交互にかつ連続的にスイッチングされ、高繰り返し速度の光パルス列が生成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による好適な実施の形態について、図2および図3を用いて説明する。
【0023】
図3に、本発明による光パルス発生装置の1実施例を示す。
【0024】
フォトクロミック材料の光デバイス11には、高速な光変調素子として有望な、バクテリアから抽出されるタンパク質バクテリオロドプシンのフィルムを用いた。バクテリオロドプシンは、波長577nmの光を吸収して全トランス型の基底状態から13-シスの中間体に変化し、さらにその状態で波長412nmの光を吸収すると元の基底状態に戻る。各々の状態で光吸収帯が異なる。
【0025】
バクテリオロドプシンフィルムの光デバイス11に連続光12,13を照射するために、それぞれ連続発振レーザ光源14,15が設けられる。連続発振レーザ光源14は、波長532nmの緑色光のGaAsレーザであり、連続発振レーザ光源15は、波長442nmの青色光のHe-Cdレーザである。
【0026】
連続発振レーザ光源14,15に起動信号を与えることにより連続光12,13の照射が開始され、光デバイス11の連続的な状態遷移サイクルが自己誘導的に引き起こされる。本実施例では、入射光として、緑色光と青色光をそれぞれ適切な強度レベルで入射したとき、透過光12′,13′により、図2(c)に示される波形の、50μs周期の出力光パルス列が得られた。ここで、光デバイス11の状態遷移サイクルを確実に立ち上げるには、はじめに光デバイス11が初期状態にセットされる必要があり、このため、連続発振レーザ光源14への起動信号のみを遅延回路16により遅延させて、連続光12の照射開始が連続光13の照射開始よりも僅かに遅れるようにしている。
【0027】
なお本実施例では、光デバイス11のフォトクロミック材料としてバクテリオロドプシンが用いられたが、本発明はこれに限定されるものではなく、再帰的なフォトクロミック過程を示す任意の材料に適用することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、再帰的なフォトクロミック過程をもつ光デバイスに対して、自己誘導的に光の透過/吸収がスイッチングされる構成を採用したことにより、従来の方法のような複雑な技術を利用することなく、高繰り返し光パルス列を簡単に発生することができる。また面型デバイスの形状をとり、電気的なインタフェースも不要であるため、集積構造に適し、容易に二次元の光パルス発生源を作成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理説明図である。
【図2】 本発明による光パルス列発生過程の説明図である。
【図3】 本発明による光パルス発生装置の1実施例の説明図である。
【符号の説明】
1:光デバイス
2:連続光(λ1
2′:透過光(λ1
3:連続光(λ2
3′:透過光(λ2
11:光デバイス
12,13:連続光
12′,13′:透過光
14,15:連続発振レーザ光源
16:遅延回路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2