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明細書 :表面に保護膜を有する配線構造の損傷予測方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3579332号 (P3579332)
公開番号 特開2002-043316 (P2002-043316A)
登録日 平成16年7月23日(2004.7.23)
発行日 平成16年10月20日(2004.10.20)
公開日 平成14年2月8日(2002.2.8)
発明の名称または考案の名称 表面に保護膜を有する配線構造の損傷予測方法および装置
国際特許分類 H01L 21/3205    
G01R 31/02      
H01L 21/00      
H01L 29/00      
H05K  3/00      
H05K  3/28      
FI H01L 21/88 Z
G01R 31/02
H01L 21/00
H01L 29/00
H05K 3/00 T
H05K 3/28 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2000-227023 (P2000-227023)
出願日 平成12年7月27日(2000.7.27)
審査請求日 平成15年3月4日(2003.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】笹川 和彦
審査官 【審査官】大嶋 洋一
参考文献・文献 K.Sasagawa, K.Naito,M.Saka,H.Abe ,A Method to Predict Electromigration Failure of Metal Lines,Journal of Applied Physics,米国,American Institute of Physics,1999年12月 1日,Vol.86 no.11,pp.6043-6051
調査した分野 H01L 21/00
H01L 21/3205
H01L 21/3213
H01L 21/768
H01L 21/28-H01L21/288
H01L 29/40-H01L29/51
H01L 29/00
H05K 3/00
H05K 3/28
G01R 31/02
特許請求の範囲 【請求項1】
表面に保護膜を有する金属配線の損傷予測装置において、
有限要素解析等の数値解析法により、金属配線の電流密度および温度分布を求める手段と、
求めた前記電流密度および温度分布と、原子濃度分布、さらに配線材料の物性定数と配線内部応力とにより、評価対象を分割する各要素の原子流束発散を、ボイド形成寄与分とヒロック形成寄与分に分けて求める手段と、
求めた各要素の原子流束発散により、各要素の原子濃度の変化を求める手段とを有し、各手段の動作を繰り返すことにより、短絡又は断線故障の箇所および故障までの時間を予測することを特徴とする金属配線の損傷予測装置。
【請求項2】
請求項1記載の金属配線の損傷予測装置において、前記金属配線は、多結晶配線又はバンブー配線であることを特徴とする損傷予測装置。
【請求項3】
表面に保護膜を有する金属配線の損傷予測方法において、
有限要素解析等の数値解析法により、金属配線の電流密度および温度分布を求めるステップと、
求めた前記電流密度および温度分布と、原子濃度分布、さらに配線材料の物性定数と配線内部応力により、評価対象を分割する各要素の原子流束発散を、ボイド形成寄与分とヒロック形成寄与分に分けて求めるステップと、
求めた各要素の原子流束発散により、各要素の原子濃度の変化を求めるステップと
を有し、各ステップを繰り返すことにより、短絡又は断線故障の箇所および故障までの時間を予測することを特徴とする金属配線の損傷予測方法。
【請求項4】
請求項3記載の金属配線の損傷予測方法において、前記金属配線は、多結晶配線又はバンブー配線であることを特徴とする損傷予測方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の金属配線の損傷予測方法において、前記配線材料の物性定数および配線内部応力は、直線状の配線を用いて、配線の基板を一定温度とし、定電流を一定時間入力して、形成されるボイド体積を求めることにより行うことを含むことを特徴とする金属配線の損傷予測方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の金属配線の損傷予測方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体集積回路、プリント基板等の金属配線における寿命等の予測に関し、特に保護膜で被覆した配線の寿命等を予測する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路等の配線の寿命予測は、経験式を用いて行われてきた。この経験式を用いるにあたり、式中の配線形状に依存した定数を決定する必要があるために、普遍的な予測ができず煩雑であった。また、式中の定数を決定するために行う通電実験の実験条件の設定により、予測結果が異なってしまい、一般に精度が良いとは言えなかった。
最近、発明者らによって断線故障の主要因であるエレクトロ・マイグレーション損傷(EM損傷)の支配パラメータが理論的に定式化され、これを用いた高精度で普遍的な断線予測法が開発されている。しかしながら、この方法は表面に保護膜のない配線を対象としていた。
実用の配線は一般に保護膜により被覆されており、この場合EMによる配線内の原子濃度(応力)勾配が発生し、これに起因した原子拡散がEMによる原子拡散を打ち消すように作用するため、一般に配線寿命が長くなるといわれている。しかし、これらを考慮した保護膜を有する配線のためのEM損傷支配パラメータは未だ特定されておらず、これを用いた断線箇所、断線寿命に関する予測法は開発されていない。一方、EMによる応力の増大による保護膜の損傷は配線間の短絡故障を招くが、この信頼性(短絡箇所,寿命)に関する評価法はこれまで開発されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、保護膜が存在する場合にEM損傷に影響を及ぼす因子、すなわちEMに起因した配線内の原子濃度(応力)分布、保護膜により発生する配線内の熱応力、および拡散係数(活性化エネルギ)変化を考慮したEM損傷の支配パラメータを理論的に定式化し、同パラメータを用いて、必要となる物性定数および熱応力の決定法を開発することである。そして、この支配パラメータを用いた断線予測法および保護膜破損の予測法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、表面に保護膜を有する金属配線の損傷予測装置又は方法において、有限要素解析等の数値解析法により、金属配線の電流密度および温度分布を求め、求めた前記電流密度および温度分布と、原子濃度分布、さらに配線材料の物性定数と配線内部応力とにより、評価対象を分割する各要素の原子流束発散を、ボイド形成寄与分とヒロック形成寄与分に分けて求め、求めた各要素の原子流束発散により、各要素の原子濃度の変化を求めて、この動作を繰り返すことにより、短絡又は断線故障の箇所および故障までの時間を予測することを特徴とする。
これらの対象とする金属配線は、多結晶配線又はバンブー配線のどちらでも適用することが可能である。
これにより、表面に保護膜を有する金属配線の短絡および断線の損傷を正確に予測することが可能となる。
前記配線材料の物性定数および配線の熱応力は、直線状の配線を用いて、配線の基板を一定温度とし、定電流を一定時間入力して、形成されるボイド体積を求めることにより行うことを含んでいる。
このように、配線材料の物性定数および配線の熱応力も簡単に求めることができる。
金属配線の損傷予測方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納した記録媒体も本発明である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、配線の内部構造が異なる2種類の配線、すなわち配線幅方向に複数の結晶粒が存在する多結晶配線と配線幅方向に単一の結晶粒しか存在しないバンブー配線の各々について、保護膜の存在に起因した種々の効果を考慮したEM損傷支配パラメータを特定し、さらにその各々を用いて多結晶配線及びバンブー配線における断線および保護膜破損の予測法を開発したものである。
【0006】
<EM損傷支配パラメータAFDgenの定式化>
まず、EM損傷支配パラメータAFDgenの定式化を説明する。
保護膜による影響因子すなわち、原子濃度勾配に起因した逆拡散および配線内熱応力を考慮したEM原子流束Jは次式で与えられる。
【数1】
JP0003579332B2_000002t.gifここで、N:原子濃度(密度)、D:振動数項、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、Q:活性化エネルギ、Z:有効電荷数、e:単位電荷,ρ:電気抵抗率、j:電流密度ベクトル、σ:引張りの熱応力、Ω:原子体積、N:無応力状態における原子濃度(密度)、N:σが作用したときの原子濃度(密度)、κ:体積弾性率である。
【0007】
(多結晶配線)
多結晶配線内における原子拡散径路として、結晶粒界と結晶粒内が考えられるが、結晶粒内における原子の易動度は粒界におけるそれと比較し無視できるほど小さいので、結晶粒界における発散のみを考える。多結晶配線における結晶粒界を考慮するために、結晶粒界構造を平均化したモデルを導入する。図1は多結晶配線構造のモデルの例である。図1に示すように、平均結晶粒径dの(√3)/6倍の長さを持つ三本の結晶粒界で構成される三重点を、内部に一つだけ含む単位厚さの四角形要素を仮定する。同要素の面積は(√3)d/4である。結晶粒界IIおよびIIIは結晶粒界Iに対して対称でありその狭角は120°に近いが、わずかな偏差2Δψが存在するものとする。
【0008】
電流密度ベクトルjのx方向成分およびy方向成分をj,j、原子濃度をN、原子濃度勾配のx方向成分およびy方向成分をそれぞれ∂N/∂x,∂N/∂yとし、結晶粒界Iとx軸のなす角をθとすると、結晶粒界I,IIおよびIIIの端部における電流密度、温度、原子濃度、原子濃度勾配は、図1に示すように表される。これらを式(1)に代入することにより、それぞれの粒界端における結晶粒界に沿った原子流束が得られる。ここに要素から外に出る方向を正と定義する。結晶粒界I,IIおよびIIIの端部における原子流束に粒界の幅δおよび単位厚さを乗じることにより、それぞれの粒界端における単位時間あたりの原子の移動数を得、それらを各々加える。微小項を無視し、さらに電流保存則を用いて式を簡単化した後、要素の体積(√3)d/4で除す。このようにして、結晶粒界Iとx軸のなす角がθなる場合の結晶粒界拡散における単位時間、単位体積あたりの原子の減少数、すなわち原子流束の発散AFDgbθは次のように与えられる。
【数2】
JP0003579332B2_000003t.gifここに、Cgb=NδD/kである。AFDgbθは原子濃度勾配の影響を受けたEMによる単位時間、単位体積あたりの原子の減少数すなわち原子流束の発散を表す。式(2)の右辺における<>内の第一項および第ニ項は結晶粒界三重点での原子流束の発散に関係する項、その他の項は結晶粒界自身での原子流束の発散に関係した項である。また、AFDgbθが正の値をとる場合はボイド(空隙)の形成に、負の値をとる場合はヒロック(表面の突起)の形成に寄与する。実際の配線を考えた場合、θは任意の値をとる。よってθのとり得る全ての範囲(0<θ<2π)を考慮した流束の発散を求める必要がある。ここでボイド形成のみに着目するものとして、θが0から2πまで変化する場合のAFDgbθの正値のみの期待値を求める。ここに、AFDgbθの負の値は、ボイド形成に寄与しないため、0とみなす。AFDgbθとAFDgbθの絶対値の和をとり、2で除すことによって、多結晶配線の結晶粒界におけるボイド形成に関する原子流束の発散AFDgenを次式のように導出する。
【数3】
JP0003579332B2_000004t.gif
【0009】
(バンブー配線)
一方、バンブー配線においては、結晶粒界での原子流束の発散は無視することができることから、結晶粒内での発散のみを考慮すると、単位時間、単位体積あたりの原子の減少数、すなわち原子流束の発散AFDlatは次式で表される。
【数4】
JP0003579332B2_000005t.gifなお、ここでは、電流保存則を用いるとともに、微小項を無視して簡単化を行っている。仮にボイド形成に寄与するAFDlatの正値のみを抽出するとすれば、AFDgenは次式で与えられる。
【数5】
JP0003579332B2_000006t.gif
【0010】
<物性値の導出法>
(多結晶配線)
保護膜の効果を考慮した多結晶配線におけるEM損傷支配パラメーターAFDgenに含まれる薄膜の物性に関する定数は、平均結晶粒径d,結晶粒界間の相対角に関する定数Δψ,結晶粒界拡散における活性化エネルギQgb,有効電荷数Z,Cgb=NδD/kである。電流密度および温度が一定とみなせ、扱いの容易な直線状配線中央部を対象に、これらの定数の分離について以下に示す。
まず、直線状配線中央部ではN≒Nとおける。ここにCgb=NδD/kは本来Nに関する変数であるが、配線のとり得る応力値を考えると、NのNからの変動は高々数%であると考えられるので、近似的にN=N≒Nとおけば、Cgb=NδD/kとなり薄膜に関する物性値とみなせる。
また、濃度勾配∂N/∂xは配線長さに反比例するもの(Blech,I.A., J.Appl.Phys.,47-4(1976),1203参照)であり、配線形状に依存する値である。ここでは配線中央部で濃度分布を線形とみなし、κ・∂N/∂xを配線形状に依存した定数として導出する。Δψについては、同じ条件で同時に作製した表面が露出した配線より導出した値を用いることとする。なお、物性値の導出に必要な配線の電流密度、電流密度勾配、温度および温度勾配の分布を求めるために、実験に用いた配線を対象とした有限要素解析等の数値解析を実施する。
【0011】
まず、平均結晶粒径dは、集束イオンビーム(FIB)装置等により計測する。また活性化エネルギQgb[=Qgb-σΩ]は、次のように決定する。同一の入力電流密度jに対して、三種類の異なる基板温度Ts1,Ts2およびTs3の下で一定時間通電するEM加速実験を行う。ここで基板温度Ts1のときの配線中央部の温度をT,Ts2のときをTおよびTs3のときをTとし、各実験条件での配線中央部における条件を条件1:jおよびT,条件2:jおよびT,条件3:jおよびTとする。これに加え、jと異なる入力電流密度jに対して基板温度を調節することにより、配線中央部の温度をTと等しくした条件4:jおよびTでも一定時間通電するEM加速実験を行う。通電後、それぞれについて、配線中央部付近のボイド体積を計測する。温度勾配、電流密度勾配および濃度勾配の傾きに関する項を無視した直線形状配線中央部におけるAFDgenを、条件1,2および3に対して表示する。それぞれに、ボイド体積測定領域の面積、配線の厚さ、通電時間から潜伏期間を除いた正味の通電時間および原子体積を乗じる。これらと、実際に計測したボイド体積は等しいことより、例えば、条件1における配線中央部のボイド計測値をVとすると、この場合次の式が成り立つ。
【数6】
JP0003579332B2_000007t.gifここに
【数7】
JP0003579332B2_000008t.gif【数8】
JP0003579332B2_000009t.gifAはボイド体積測定領域の面積,Qgb=Qgb-σΩ,ρは温度Tにおける配線の抵抗率,tは条件1における通電時間から潜伏期間を除いた正味の通電時間,thickは配線の厚さである。式(6)と同様な方程式が条件2および3に対しても成り立つ。式(6)において両辺自然対数をとり、条件1における式から条件3における式を減じることにより、Qgbと有効電荷数Zおよび原子濃度勾配κ・∂N/∂xの関係式(9)が得られる。
【数9】
JP0003579332B2_000010t.gifここに
【数10】
JP0003579332B2_000011t.gifρは温度Tにおける配線の抵抗率,tは条件3における通電時間から潜伏期間を引いた正味の通電時間である。なおここでは、TとT間のσの変動は微小とみなして無視した。式(9)と同様な式が条件1と2および条件2と3においても成り立つ。一方、配線中央部の温度が同じで電流密度がj,jと異なる条件2と4に関して式(6)と同様な式を減じることにより、Zとκ・∂N/∂xの関係式が求まる。
【数11】
JP0003579332B2_000012t.gifここでρは温度Tにおける配線の抵抗率、VおよびVはそれぞれ条件2および条件4におけるボイド体積測定値、tおよびtは条件2および条件4における通電時間から潜伏期間を引いた正味の通電時間である。式(11)を式(9)に代入すると、条件1と3におけるQgb(Qgb13と表す)とκ・∂N/∂xだけの関係式が式(12)のように得られる。なお、EM損傷のしきい電流密度が実験的に求めることが可能な場合には、条件4は必要とせず後述の式(14)と同様なZとκ・∂N/∂xの関係式を得ることができるので、式(11)のかわりに用いることができる。
【数12】
JP0003579332B2_000013t.gif式(12)と同様な式が、条件1と2および条件2と3の間においても成り立つので、Qgbとκ・∂N/∂xだけの関係式が3式得られることになる。ここでQgbは各式で同じ値をとり得るはずだから、三式間のQgbの偏差(Qgb13-Qgb23+(Qgb23-Qgb12+(Qgb12-Qgb13が最も小さくなるように、適当なκ・∂N/∂xを定めることにより、Qgbおよびκ・∂N/∂xが求まる。次いでZは得られたκ・∂N/∂xを式(11)に代入することにより求まる。さらに、定数Cgbは条件1,2および3に対して、式(6)における左辺のボイド体積測定値と、右辺のAFDgenを用いた数値計算によるボイド体積が一致するように決定する。これより条件1,2および3に対してそれぞれのCgbの値が得られるが、これらを平均したものをCgbの値とする。
また、配線内部の熱応力を見積る場合には、上記方法で得たQgb[=Qgb-σΩ]と保護膜のない配線を用いて得たQgbの値からσを見積ることができる。
以上のようにすべての物性値は直線形状の配線を用いた簡単な実験から求まる。
【0012】
(バンブー配線)
保護膜の効果を考慮したバンブー配線におけるEM損傷支配パラメータAFDgenに含まれる薄膜の物性に関する定数は、Qlat,Z,Dである。直線形状のバンブー配線においてボイド形成領域である同配線陰極部を対象としたこれらの定数の導出法について示す。
まず式(4)中において直線状配線陰極部ではN≒Nとおける。ここでも配線陰極部で濃度分布を線形とみなし、κ・∂N/∂xを配線形状に依存した定数として導出する。
活性化エネルギQlat[=Qlat-σΩ]は、次のように決定する。同一の入力電流密度jに対して三種類の異なる基板温度Ts1,Ts2およびTs3の下で一定時間通電するEM加速実験を行う。ここで基板温度Ts1のときの配線陰極部の温度をT,Ts2のときをTおよびTs3のときをTとし、各実験条件での配線陰極部における条件を条件1:jおよびT,条件2:jおよびT,条件3:jおよびTとする。通電後それぞれについて、配線陰極部のボイド体積を計測する。∂N/∂x=0と仮定した直線形状配線陰極部におけるAFDgenを、条件1,2および3に対して表示し、それぞれにボイド体積測定領域の面積、配線の厚さ、通電時間から潜伏期間を除いた正味の通電時間および原子体積を乗じる。これらと実際に計測したボイド体積を等値することより、例えば条件1における配線陰極部のボイド体積計測値をVとすれば、次式が成り立つ。
【数13】
JP0003579332B2_000014t.gifここに、Aはボイド体積測定領域の面積,ρは温度Tにおける配線の抵抗率,tは条件1における正味の通電時間,thickは配線の厚さである。式(13)と同様な方程式が条件2および3に対しても成り立つ。式(13)において両辺自然対数をとり、条件1における式から条件3における式を減じることにより、Qlat有効電荷数Zおよび原子濃度勾配κ・∂N/∂xの関係式が得られる。ところで、電流密度が小さい場合、EMによる原子流束と濃度勾配による逆拡散はちょうど釣り合い、みかけの原子流束が零となるためEM損傷が生じないが、ある電流密度を超えるとEMによる原子流束が濃度勾配による逆拡散に勝り、EM損傷が生じる。このときのしきい電流密度をjthとする。陰極部において式(6)が零となるとき、次式のようなZとκ・∂N/∂xの関係が成り立つ。
【数14】
JP0003579332B2_000015t.gifここにρはjth作用下の陰極部の温度における抵抗率であり、jthは実験的に求まる。式(14)をQlatと有効電荷数Zおよび原子濃度勾配κ・∂N/∂xの関係式に代入することにより、κ・∂N/∂xとQlatの関係を次式のように得る。
【数15】
JP0003579332B2_000016t.gifここに条件1と3で定まるQlatをQlat13とおいた。また、tは条件3における正味の通電時間である。式(15)と同様な式が、条件1と2および条件2と3の間においても成り立つので、Qlatとκ・∂N/∂xだけの関係式が3式得られることになる。ここでκ・∂N/∂xは各式で同じ値をとるはずであるから、3式間のκ・∂N/∂xの偏差(κ・∂N/∂x23-κ・∂N/∂x13+(κ・∂N/∂x23-κ・∂N/∂x12+(κ・∂N/∂x12一κ・∂N/∂x13が最も小さくなるように、適当なQlatを定めることにより、Qlatおよびκ・∂N/∂xが求まる。ここに、条件1と3で定まるκ・∂N/∂xをκ・∂N/∂x13、条件2と3で定まるκ・∂N/∂xをκ・∂N/∂x23、条件1と2で定まるκ・∂N/∂xをκ・∂N/∂x12とおいた。
次いで、Zは得られたκ・∂N/∂xを式(14)に代入することにより求まる。さらに、定数DはN=Nとし、式(13)における左辺のボイド体積計測値と、右辺のAFDgenを用いた数値計算によるボイド体積が、一致するように決定する。
また、配線内部の熱応力を見積る場合には、上記方法で得たQlat[=Qlat-σΩ]と保護膜のない配線を用いて得たQlat値からσを見積ることができる。
以上のように、すべての物性定数は直線形状の配線を用いた簡単な実験から求まる。
【0013】
<断線過程のシミュレーション>
本発明におけるシミュレーションは、予測対象の配線を要素分割し、各々の要素厚さをAFDgenに基づき減少させることにより、断線過程をシミュレーションするものである。ここで、多結晶配線の場合は、結晶粒界に沿ってスリット状に成長するというボイドの成長形態を考慮し、実験・観察より得た配線の平均結晶粒径および平均スリット幅に基づき配置した、スリット状要素のみで要素厚が減少するものとする。一方、バンブー配線の場合にはスリット状要素の設置は必要ない。図2に多結晶配線100の要素分割の一例を示す。
多結晶配線の場合を例にとって、断線過程のシミュレーション処理を図3に示すフローチャートで説明する。まず、配線の電流密度分布および温度分布を、有限要素解析等の数値解析により求める(S204)。各要素のAFDgenの値は、これらの分布と予め加速試験から決定した薄膜の物性値を用いて計算する(S206)。各要素のAFDgenにの計算に用いる原子濃度の初期値は、このルーティンの最初に与えられている(S202)。この際、ボイド形成に寄与するAFDgbθの正値に着目したAFDgen値と、ヒロック形成に寄与するAFDgbθの負値のみに着目したAFDgen値の双方について計算する。シミュレーションの1ステップにおける各要素の金属原子数の変化量は、要素の体積および1ステップの時間を各々のAFDgenに乗じることによりボイド形成寄与分とヒロック形成寄与分に分けて求める(S208)。さらに、これを用いて各要素における濃度初期値Nからの濃度の変化量をボイド及びヒロック形成寄与分に分けて求める(S210)。次に、これらを加えることにより各要素の濃度Nを求め(S214)、配線全体の濃度分布を得る。ここで、濃度の値がボイドの形成に至る臨界値Nminを下まわるか、ヒロックの形成に至る臨界値Nmaxを上まわるかの判定を行い(S216)、この範囲内の場合(S216でYes)は、EM損傷の潜伏期間として、得られた原子濃度を用いて再度AFDgen値の計算を行い、以降の計算を繰り返す。一方、シミュレーションの進行に伴い、濃度がNminからNmaxの範囲を超えた場合は(S216でNo)、EM損傷の進行期間として、ボイド形成に寄与する原子濃度変化量より算出した原子の減少量に応じ、スリット状要素の厚さを減少させる(S220)。その際、スリット状要素とその両隣の要素の濃度変化量を用いて、スリット状要素の厚さを減少させるが、バンブー配線の場合にはこの処理は必要ない。
【0014】
ここで、Nmin,Nmaxの値およびκ値は、加速試験の結果から次のようにあらかじめ決定しておく。まず、直線形状配線を用いた加速試験により、ある条件下の潜伏期間および配線中央部でのκ・∂N/∂xの値を得る。次に同様な条件下で先のシミュレーションの潜伏期間に関する部分のみ行い、加速試験で得た潜伏時間後にκ・∂N/∂xが等しくなるようにκの値を決定する。さらに、その時点での濃度Nの最大値をNmax値,最小値をNmin値とする。なお、予め数値計算や実験計測などによりκ値が既知の場合には、このκ値を用いて試験で得た潜伏期間分のシミュレーションを行い、その時点での濃度Nの最大値をNmax値,最小値をNmin値とする。逆にNmax,Nminが既知の場合には、潜伏期間のシミュレーションを行い、潜伏期間後のNmaxあるいはNminが既知の値と一致するようにκ値を決定することができる。
厚さの減少した要素においては、厚さの減少量に対応した深さのボイドが形成されたものとみなす(S220)。各要素の厚さを考慮して(S226)、再度、電流,温度の有限要素解析等の数値解析を行う。
以上の計算を繰返し、融点を超えた温度の要素または、厚さがしきい値以下の要素が配線幅にわたって繋がった状態を断線と定義し(S222)、シミュレーションを終了する(S224)
【0015】
<短絡故障のシミュレーション>
短絡故障のシミュレーションは、前に説明した図3のフローチャートの処理で潜伏期間のみの計算を行うものである。即ち、ステップS216において、濃度NがNmaxを上まわった時点で保護膜の破壊が生じたものとして計算を終了する。
max値は前節と同様な方法で与えることができるが、加速試験の保護膜と予測対象のそれが異なる場合や予測精度を上げる場合には、数値計算や実験計測などにより、κ値および保護膜の破壊強度あるいは破壊靱性を求め、そのときの応力値とκ値からNmaxの値を決定して与える。保護膜の破壊は短絡故障の以前に生じるものであり厳密には異なるが、第一近似的に保護膜の破壊時点を短絡故障の時点とした。
【0016】
本発明の保護膜を有する金属配線のEM損傷予測を行うプログラムを格納した記憶媒体から、プログラムをシステムで読み出して実行することにより、本発明の構成を実現することができる。この記録媒体には、フロッピー・ディスク、CD-ROM、磁気テープ、ROMカセット等がある。
上述した本発明の保護膜を有する金属配線のEM損傷予測を行うために用いるシステムとしては、スタンド・アローンのコンピュータ・システムばかりではなく、複数のシステムから構成される例えばクライアント・サーバ・システム等を用いてもよい。
【0017】
【実施例】
以下に、上述の物性値の導出および断線等の予測の具体的な実施例として、以下に説明する。
<多結晶配線における支配パラメータに含まれる物性値の導出>
図4は、上述の考え方で物性定数を実際に求めたAl薄膜配線100の寸法形状を示す。図4に示すように、表面に酸化膜を形成したSi基板上に、Al薄膜配線を形成後、その表面にポリイミド樹脂膜を被覆したサンプルを作製した。この配線に対して上述の物性値の導出法に従ってEM加速試験を行った。作成した配線は2種類で、SampleL:幅(W)8.6μm、長さ(L)82μmと、SampleS:幅(W)8.7μm、長さ(L)32μmである。
EM加速試験は、図5に示すような構成を有する装置300を用いて行った。活性化エネルギ導出のため、基板360の温度を、ホットステージ350を用いて、458,473,485Kの三種類の温度のいずれかに保持している。配線部100における電流密度が約5.5MA/cmになるような定電流を、定電流源310から一定時間入出力させることに加え、配線中央部の温度が基板温度473Kのときの配線中央部の温度と同じくなるように、基板温度を415Kに保持して、配線部における電流密度がSampleLで8.5MA/cm,SampleSで9.0MA/cmになるような定電流を、プローブ372および374から一定時間入出力した。いずれの条件に対しても25本の試験片を用いた。全ての通電終了後、保護膜を除去し、電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM)400により配線の中央部領域を観察した。得られたSEM像を画像解析することにより、ボイドの総面積を計測し、ボイドの面積に膜厚を乗じることにより、配線中央部におけるボイド体積を推定した。
【0018】
保護膜の効果を考慮したEM損傷支配パラメータAFDgenを表面に保護膜を有する配線に適用し、SampleLおよびSampleSのそれぞれに対してAFDgenに含まれる物性値導出を行った。得られた物性値Qgb,Z,Cgbならびにκ・∂N/∂xの値を表1にまとめて示す。
【表1】
表1 AFDgenに含まれる物性値
JP0003579332B2_000017t.gif表1から分かるように、SampleLとSampleSの形状の違いによらず、Qgb,Z,Cgbの各値はほぼ同様であった。つまり、いずれも形状によらない物性値として機能しているといえる。また、配線内の応力(濃度)勾配は配線長さに反比例すると言われているが、表1において、κ・∂N/∂xの値は反比例はしていないものの、配線長さが短い方が1.2倍程度大きくなっている。QgbおよびZについて得られた値は、Al薄膜におけるこれまで報告されている値の間にあり妥当であるといえる。
以上から、表面に保護膜を有する配線にAFDgenを適用した場合、保護膜の効果を的確に捉え、配線形状に依存しない物性値および形状に依存する濃度勾配を的確に導出することができた。
【0019】
一方、AFDgenを保護膜を有する配線と同形状の、表面に保護膜が無い配線に適用した場合、得られた活性化エネルギQgb(=Qgb)はSampleLと同形状の配線(以下SampleLlと示す)で0.547ev、SampleSと同形状の配線(以下SampleSlと示す)で0.549evであった。保護膜を有する配線の活性化エネルギと保護膜がない配線の活性化エネルギを比較すると、保護膜を有する配線のほうがSampleL,SampleS共に小さくなっている。もし、界面拡散の影響が大きいとすると、活性化エネルギは大きくなるはずであるが、活性化エネルギは保護膜を有する配線で小さくなっているので、保護膜被覆に伴う界面拡散のEM損傷への影響は小さいと考えられる。
また、Qgb=Qgb-σΩより、SampleLおよびSampleSのそれぞれで熱応力を見積ったところ、それぞれから得た熱応力は、SampleLで29MPaであり、SampleSで415MPaであった。
【0020】
(断線予測)
図4に示す直線形状のAl配線を断線予測の対象として想定する。試験片の物性値は、作製した試験片を用いた加速試験により得られた、表1の値を用いた。ただし、ここではκは一般的に知られている値を用いた。
断線予測においては、図4に示す、SampleLの値を持つ配線形状で、入力電流密度:5.5MA/cm、基板温度:473Kの動作条件で使用した場合を想定した。図6に断線予測の結果を図示する。図6に示すように、陰極側に損傷が起こることを示している。本シミュレーションによる予測では、配線陰極部付近における35415secでの断線を予測した。
以上のように、保護膜を有する配線の寿命、および断線箇所についても予測が可能であった。
【0021】
【発明の効果】
上述した本発明により、実際の配線構造により即した、保護膜を有する配線を対象とした高精度な断線(断線箇所,寿命)予測および配線を被覆する保護膜の破損(短絡箇所,寿命)予測が可能となる。また、保護膜を有する配線のためのEM損傷支配パラメータに含まれる物性定数の決定法を用いることにより、配線内部の熱応力の評価および保護膜と配線の相互作用による拡散係数(活性化エネルギ)の評価が可能となり、集積回路を設計する上での保護膜及び配線材料の選択や強度評価の指標を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多結晶配線構造のモデルの例を示す図である。
【図2】多結晶配線の要素分割の例を示す図である。
【図3】多結晶配線の場合の断線過程のシミュレーション処理を示すフローチャートである。
【図4】物性定数を求めた寸法形状を示す図である。
【図5】EM加速試験を行う装置構成を示す図である。
【図6】断線予測の結果を図示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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