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明細書 :発光ダイオードおよび半導体レーザーとそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3398638号 (P3398638)
公開番号 特開2001-210864 (P2001-210864A)
登録日 平成15年2月14日(2003.2.14)
発行日 平成15年4月21日(2003.4.21)
公開日 平成13年8月3日(2001.8.3)
発明の名称または考案の名称 発光ダイオードおよび半導体レーザーとそれらの製造方法
国際特許分類 H01L 33/00      
H01L 21/363     
H01S  5/327     
FI H01L 33/00 D
H01L 21/363
H01S 5/327
請求項の数または発明の数 10
全頁数 10
出願番号 特願2000-024843 (P2000-024843)
出願日 平成12年1月28日(2000.1.28)
審査請求日 平成12年1月31日(2000.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【識別番号】500037942
【氏名又は名称】太田 裕道
【識別番号】500038215
【氏名又は名称】折田 政寛
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】太田 裕道
【氏名】折田 政寛
【氏名】河村 賢一
【氏名】猿倉 信彦
【氏名】平野 正浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】近藤 幸浩
参考文献・文献 特開2000-22205(JP,A)
特開 平8-319138(JP,A)
特開 平5-148066(JP,A)
特開 平11-297138(JP,A)
特開 平10-12060(JP,A)
Applied Physics Letters,米国,Vol.75,No.18,2851-2853
Nature,英国,Vol.389,939-942
調査した分野 H01L 33/00
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/36 - 21/368
特許請求の範囲 【請求項1】
透明基板上に積層したバンドギャップ付近の固有発光のみを示す、X線回折法においてZnOの結晶相の(0002)面のロッキングカーブにおける半値幅が1度以下のn型ZnO層上に、SrCu、CuAlO 、またはCuGaOからなるp型半導体のうちの一つを積層して形成したp-n接合からなる紫外発光ダイオードであって、該透明基板は、原子状に平坦化したイットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)(111)単結晶基板であり、該透明基板上に透明負電極層を有し、該透明負電極層上にヘテロエピタキシャル成長したキャリア濃度が1×1017~1×1020の範囲のZnO層を発光層として有し、ZnO層上にp型半導体層を正孔注入層として有し、p型半導体層側に正電極層を有することを特徴とする紫外発光ダイオード。

【請求項2】
透明負電極層として、透明基板上にヘテロエピタキシャル成長したインジウム錫酸化物(ITO)層を有することを特徴とする請求項1記載の紫外発光ダイオード。

【請求項3】
p型半導体層側電極として、p型半導体層上にNiを積層したことを特徴とする請求項1記載の紫外発光ダイオード。

【請求項4】
1価金属元素をSr位置に20原子%以下置換したSrCu薄膜を用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載の発光ダイオード。

【請求項5】
原子状に平坦化したイットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)(111) 単結晶からなる透明基板上に、基板温度200~1200℃でn型ZnOを成膜し、さらにその上に、基板温度200~800℃でSrCuからなるp型半導体層を成膜することを特徴とする請求項1記載の発光ダイオードの製造方法。

【請求項6】
原子状に平坦化したイットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)(111) 単結晶からなる透明基板上に、基板温度200~1200℃でn型ZnOを成膜し、さらにその上に、基板温度500~800℃でCuAlOまたはCuGaOからなるp型半導体層を成膜することを特徴とする請求項1記載の発光ダイオードの製造方法。

【請求項7】
原子状に平坦化したイットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)(111) 単結晶からなる透明基板上に、基板を加熱することなく、n型ZnOを成膜し、該ZnO膜表面に紫外光を照射して結晶化を進め、さらにその上に、基板を加熱することなく、SrCu、CuAlOまたはCuGaOからなるp型半導体層を成膜し、該p型半導体層に紫外光を照射して結晶化を進めることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオードの製造方法。

【請求項8】
イットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)単結晶を光学研磨し、1000~1300℃に加熱することによって原子状平坦化構造とした透明基板を用いることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の発光ダイオードの製造方法。

【請求項9】
透明基板上にインジウム錫酸化物(ITO)層をヘテロエピタキシャル成長させることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の発光ダイオードの製造方法。

【請求項10】
原子状に平坦化したイットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)(111) 単結晶からなる透明基板上に積層したバンドギャップ付近の固有発光のみを示すn型ZnO層上に、SrCu、CuAlOまたはCuGaOからなるp型半導体のうちの一つを積層して形成したp-n接合であって、n型ZnO層は単結晶基板上にヘテロエピタキシャル成長させたMg置換ZnO上にヘテロエピタキシャル成長させたものであり、キャリア濃度の低いp型半導体を正孔注入層として有し、キャリア濃度の低いp型半導体層の上にキャリア濃度の高いp型半導体層を有することを特徴とする半導体レーザー。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、電流注入により紫外線発光をさせられる紫外発光ダイオードおよび半導体レーザーに関する。

【10】

【課題を解決するための手段】本発明では、結晶性の良いn型ZnO膜を用い、これに、SrCu2 2 、CuAlO2 、またはCuGaO2 膜を積層してp-n接合を作製し、ZnO層から紫外光を発することを特徴とした、発光ダイオードに関するものである。さらに、この発光ダイオードの製造方法として、透明基板上にZnOを結晶性良く積層し、さらにSrCu2 2 、CuAlO2 、またはCuGaO2 膜を積層して、本発明の発光ダイオードを作製する製造方法を提供する。

【11】
すなわち、本発明は、透明基板上に積層したバンドギャップ付近の固有発光のみを示すn型ZnO層上に、SrCu2 2 、CuAlO2 、またはCuGaO2 からなるp型半導体のうちの一つを積層して形成したp-n接合からなることを特徴とする紫外発光ダイオードである。また、本発明は、透明基板が単結晶基板であることを特徴とする上記の発光ダイオードである。また、本発明は、 単結晶基板は、原子状に平坦化したイットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)(111)基板であることを特徴とする上記の発光ダイオーである。また、本発明は、ZnO層側電極として、透明基板とZnO層の間に透明電極を挿入したことを特徴とする上記の発光ダイオードである。また、本発明は、 p型半導体層側電極として、p型半導体層上にNiを積層したことを特徴とする上記の記載の発光ダイオードである。また、本発明は、透明基板上にヘテロエピタキシャル成長したインジウム錫酸化物(ITO)層を透明負電極層として有し、ITO層上にヘテロエピタキシャル成長したZnO層を発光層として有し、ZnO層上にp型半導体層を正孔注入層として有し、p型半導体層上にNi層を正電極層として有することを特徴とする上記の発光ダイオードである。また、本発明は、 1価金属元素をSr位置に20原子%以下置換したSrCu2 2 薄膜を用いることを特徴とする上記の発光ダイオードである。

【12】
また、本発明は、 透明基板上に、基板温度200~1200℃でn型ZnOを成膜し、さらにその上に、基板温度200~800℃でSrCu2 2 からなるp 型半導体層を成膜することを特徴とする上記の発光ダイオードの製造方法である。また、本発明は、透明基板上に、基板温度200~1200℃でn型ZnOを成膜し、さらにその上に、基板温度500~800℃でCuAlO2 またはCuGaO2 からなるp型半導体層を成膜することを特徴とする上記の発光ダイオードの製造方法である。また、本発明は、透明基板上に、基板を加熱することなく、n型ZnOを成膜し、該ZnO膜表面に紫外光を照射して結晶化を進め、さらにその上に、基板を加熱することなく、SrCu2 2 、CuAlO2 またはCuGaO2 からなるp型半導体層を成膜し、該p型半導体層に紫外光を照射して結晶化を進めることを特徴とする上記の発光ダイオードの製造方法である。また、本発明は、イットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)単結晶を光学研磨し、1000~1300℃に加熱することによって原子状平坦化構造とした透明基板を用いることを特徴とする上記の発光ダイオードの製造方法である。

【13】
また、本発明は、透明基板上に積層したバンドギャップ付近の固有発光のみを示すn型ZnO層上に、SrCu2 2 、CuAlO2 、またはCuGaO2 からなるp型半導体のうちの一つを積層して形成したp-n接合であって、n型ZnO層は単結晶基板上にヘテロエピタキシャル成長させたMg置換ZnO上にヘテロエピタキシャル成長させたものであり、キャリア濃度の低いp型半導体を正孔注入層として有し、キャリア濃度の低いp型半導体層の上にキャリア濃度の高いp型半導体層を有することを特徴とする半導体レーザーである。

【14】
ダイオード中のZnO層が良好なバンドギャップ付近の固有発光のみを示すためには、X線回折法において、ZnO結晶相の(0002)面のロッキングカーブにおける半値幅が1度以下と十分に狭いことが必要である。半値幅は、好ましくは0.5度以下であり、さらに好ましくは0.3度以下であり、この値は、ZnO層の結晶性の良さと相関している。

【15】
本発明の発光ダイオードは、380nmの紫外線を発光することに特徴があり、緑色を消して紫外線だけとする、すなわち、バンドギャップ付近の固有発光のみを示すようにするには、ZnO層の結晶性を十分に高め、ZnO格子中に存在する酸素欠損や過剰Znイオンの濃度を十分に低めなければならない。

【16】
透明基板は、室温においてZnOからの波長380nmの発光が良く透過するものであることが好ましい。380nmにおける光透過率は、好ましくは50~100%であり、より好ましくは80~100%である。

【17】
透明基板としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなどのプラスチック基板、石英ガラス、耐熱ガラスなどのガラス基板、イットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)(111) 面、サファイア(0001)面などの結晶性基板などが挙げられるが、ZnO層、SrCu2 2 層、CuAlO2 層、CuGaO2 層などの成膜プロセスに耐える化学的性質を有するものであることが必要である。ガラス基板や結晶性基板は、光透過率を高めるために、両面を光学研磨してあることが好ましい。

【18】
透明基板に結晶性基板を使用すると、基板の結晶面の秩序構造がZnO層の結晶性に反映して、ZnO層の結晶性が高まり、発光特性が改善されるので好ましい。結晶性基板には、YSZ(111) 面、サファイア(0001)面などがあるが、ZnO結晶格子との整合性の高いものが好ましい。

【19】
また、後述するように、透明基板とZnO層との間に透明負電極層を用いる場合には、透明負電極層の材料と格子整合する結晶を基板として採用することが好ましい。例えば、透明負電極材料にインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、YSZ(111) 基板が特に好適である。ITOの格子がYSZと非常に良く適合するからである。

【2】

【従来の技術】高度情報化社会の発達に伴い、記録メディアの高密度化が進んでいる。例えば、光ディスクの記録・再生はコンパクトディスクから、より高密度記録可能なデジタルビデオディスクへと変化した。光ディスクでは、記録・再生は光を使って行うため、波長の短い光を用いることができれば記録密度を増加させることができる。このため、発光ダイオード(以下LED)としては、従来、赤色を出すGaAsが主力であったが、より短波長の青色を出すGaNなどの実用化が進められている。

【20】
透明基板の上には結晶性の良いZnO層を成膜する。ZnOのキャリア濃度は1×1017~1×1020/cm3 の範囲としなくてはならない。キャリア濃度が1×1017/cm3 より低い場合には、接合部における空乏層の厚みが大きくなり過ぎて発光に適さず、1×1020/cm3 より高い場合には、空乏層の厚みが小さくなりすぎて発光に適さない。より好ましくは、1×1018~1×1019/cm3 の範囲である。

【21】
ZnO膜の上部に、SrCu2 2 膜を成膜する場合について以下に詳しく説明する。SrCu2 2 層のキャリア濃度は1×1016~1×1020/cm3 の範囲である。キャリア濃度が1×1016/cm3 より低い場合には、ZnO層に注入できる正孔が少なくなって発光に適さない。キャリア濃度が1×1020/cm3 より高い場合には、発光効率が落ちて、発光に適さない。SrCu2 2 層のキャリア濃度は、より好ましくは1×1017~1×1019/cm3 である。

【22】
本発明の発光ダイオードでは、ZnO層に負電圧を、SrCu2 2 層に正電圧を加えて発光させる。電圧を加えるための電極は、ZnO層とオーミック接続が取れる負電極材料を用い、SrCu2 2 層とオーミック接続が取れる正電極材料を用いればよい。ZnO層とオーミック接続を取るための電極材料としては、一般には、Agがよく使われている。

【23】
また、SrCu2 2 層とオーミック接続を取るための電極材料としては、Ni、Ptなどのように仕事関数の小さなものを用いる必要がある。Au、Agなどのように仕事関数の大きな電極材料を用いると、SrCu2 2 層の仕事関数が小さいために、オーミック接続が取れないからである。

【24】
これら電極材料は、各層との接続面に用いればよいので、例えば、Cu線の表面をAgで被覆したものを正電極に、Cuの線の表面をNiで被覆したものを負電極として、例えば、半田を用いて各層に取り付けても良い。このとき、正電極をZnO層に取り付けるためにはZnO層が表面に出ているように、SrCu22 層の一部が欠けている構造とすればよい。

【25】
本発明の発光ダイオードでは、負電極層を透明基板とZnO層との間に挟み込み、正電極層をSrCu2 2 層の上部に設けても良い。この様な構造を取れば、発光ダイオードに接続するリード線に適当なコーティングを行う必要がなく、例えば、Cu線を負電極層と正電極層にそれぞれ接続すればよい。負電極層には透明電極材料を用いて、ZnO層からの発光が負電極層および透明基板を通して外部に取り出せるようにしておく。

【26】
負電極層に適した透明電極材料としては、例えば、ITO、AZO(AlをドープしたZnO)、GZO(GaをドープしたZnO)、InGaO3 (ZnO)m(mは自然数)、In2 3 (ZnO)m(mは自然数)、SnO2 、Ga2 3 などを用いることができる。透明基板に単結晶基板を用いる場合には、基板材料の格子およびZnOの格子と整合する材料を用いることが好ましい。例えば、透明基板にYSZ(111) 単結晶を用いる場合には、ITO、AZO、GZO、InGaO3 (ZnO)m、In2 3 (ZnO)mが好適である。

【27】
本来なら、正電極層にも透明電極を用いることができれば、ZnO層からの発光をSrCu2 2 層および正電極層を通して外部に取り出すことができるのであるが、現在までのところ正電極層に適した透明電極材料が見いだされていないので、例えば、NiやPtなどの金属材料を用いて正電極層を形成する。正電極層の上には、さらに別の金属層を積層して、リード線等との接続性を高めても良い。

【28】
本発明の発光ダイオードでは、上述したSrCu2 2 層の代わりにCuAlO2 層、またはCuGaO2 層を用いてもよい。すなわち、ZnO層に負電圧を、CuAlO2 層、またはCuGaO2 層に正電圧を加えて発光させる。このとき、正電極材料は、CuAlO2 層、またはCuGaO2 層とオーミック接続を取れるものであればよく、Ni、Ptなどのように仕事関数の小さなものを用いる。また、正電極層をCuAlO2 層、またはCuGaO2 層の上部に設けても良く、例えば、NiやPtなどの金属材料を用いて正電極層を形成する。正電極層の上には、さらに別の金属層を積層して、リード線等の接続性を高めても良い。

【29】
本発明の半導体レーザーにおいて、Mg置換ZnO層とはZnO結晶のZnサイトをMgイオンによって置換したもので、(Zn1-xMgx)O2という化学式で記述される。xは置換率であって、0<x<0.2の範囲である。キャリア濃度の低いp型半導体層は、SrCu2 2 、CuAlO2 層、またはCuGaO2 からなるp型半導体層のうちの一つであるが、例えば、SrCu2 2 の場合、SrCu2 2 をそのまま用いるか、ドーパントとして加えるKの量を制限して、キャリア濃度を低く抑える。キャリア濃度は、例えば、1×1016/cm3~1×1019/cm3の範囲で選択する。キャリア濃度の高いp型半導体層は、SrCu2 2 、CuAlO2 層、またはCuGaO2 からなるp型半導体層のうちの一つであるが、キャリア濃度の低いp型半導体に用いた材料と同じものであることが好ましく、例えば、SrCu2 2 の場合、ドーパントとして加えるKの量を多めにして、キャリア濃度を高めにする。キャリア濃度は、キャリア濃度の低いp型半導体のキャリア濃度よりも大きい必要があり、例えば、1×1017/cm3~1×1020/cm3の範囲で選択する。

【3】
さらに、GaNよりも短波長の発光材料としては酸化亜鉛が挙げられる。酸化亜鉛(以下、ZnO)は、高電気伝導性、可視領域での光透過性を利用して太陽電池用の透明導電膜として検討されているほか、緑色の蛍光材料としても広く応用され、例えば、低速電子線衝撃型のELデバイスとして実用化されている。ZnOは、室温でのバンドギャップが約3.38eVの直接遷移型の半導体であり、紫外光励起により紫外領域(室温では波長約380nm)の蛍光を示すことが知られているため、ZnOを使った発光ダイオードやレーザーダイオードが作製できれば、蛍光体の励起光源や超高密度記録メディアに応用できると考えられている。

【30】
本発明の発光ダイオードは、成膜方法により製造する。PLD、MBE、スパッタリング、真空蒸着、CVDなどが挙げられるが、基板を変質させることなく、かつ、充分に結晶性の良いZnO膜を形成できる方法を選ぶことが重要である。

【31】
ZnO層とSrCu2 2 層を積層する方法として、例えば、PLD法、スパッタリング法、CVD法、MBE法、真空蒸着法などを選ぶことができる。PLD法は、ZnO層とSrCu2 2 層を結晶性良く製造するのに適している一方、現在までに開発されている装置では、成膜面積が例えば、20mm径程度に限定される点で量産上の課題がある。もっとも、近年は6インチ径程度の面積に均一に成膜するPLD装置が市販され始めている。

【32】
スパッタリング法は、大面積成膜に適し、量産性の高い方法である一方、膜がプラズマに曝されるためにZnO層とSrCu2 2 層の結晶性がPLD膜ほどには高めることができない。もっとも、近年はヘリコン・スパッタ装置、イオンビーム・スパッタ装置など、膜がプラズマに曝されない方式の装置が市販されている。

【33】
CVD法は、ZnO層とSrCu2 2 層を大面積で均質性良く成膜するのに優れた方法である一方、原料ガスに含まれるC等の不純物が層中に含まれやすい。MBE法は、PLD法同様に、ZnO層とSrCu2 2 層を結晶性良く製造するのに優れている方法であるが、成膜容器中に酸素ガスを導入する必要があるので、原料に金属を用いる場合、金属の表面が酸化されてしまい、分子線を作りにくいという問題がある。

【34】
真空蒸着法は、最も簡便な方法の一つであるが、大面積成膜がしにくく、SrCu2 2 の化学組成を制御しにくいという欠点がある。各成膜法にはそれぞれ特長があるので、好ましい特長に着眼して成膜法を選べばよい。

【35】
また、成膜方法は基板材料によって制限されることがある。基板にプラスチック基板を用いる場合には、基板温度を例えば、100℃以上に上昇させると基板の変質が起こるので、変質が起こるよりも低い温度で成膜しなくてはならない。CVD法、MBE法など、原料の酸化反応を基板表面で進行させる必要のある方法は適していない。

【36】
PLD法やスパッタリング法などは、プラスチック基板上にもZnOやSrCu2 2 を成膜することができる。ただし、各層の結晶性を充分に高くすることができないので、光照射など、適当な方法によって結晶化を進行させてやることが好ましい。例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板を加熱することなく、いわゆる室温成膜条件において、ZnO層を成膜する。

【37】
ZnOは結晶化温度が低いので、室温成膜によっても結晶性のZnO層が得られる。ただし、発光効率を高め、より明るい発光ダイオードを製造するためには、ZnO層の結晶性は充分高いことが好ましいので、例えば、KrFエキシマーレーザー光などの紫外光をZnO層表面に照射し、結晶化を進めることが適当である。

【38】
この後に、再びスパッタリング法によってSrCu2 2 膜を室温成膜し、紫外光照射して結晶化を進める。プラスチック基板とZnO層の間に挟む透明負電極層も同様の方法によって形成することができる。SrCu2 2 層上に形成する金属正電極層は室温成膜だけで充分である。金属層に紫外光を照射しても反射してしまうので、改質効果を期待することはできない。

【39】
どの成膜方法においても、基板にガラス基板や単結晶基板を用いる場合には、ZnO層を積層する際に、基板温度を例えば、1000℃まで上昇させることができるので、その温度範囲内でZnO層の結晶性を充分に高めることができる。ZnO層の成膜温度としては、200℃~1200℃が好ましい。200℃以下では結晶化が充分に進行せず、1200℃以上ではZnO成分が気相中に昇華し始める。

【4】

【発明が解決しようとする課題】一般的に、発光ダイオードやレーザーダイオードを作製するには、p型半導体とn型半導体を接合する必要がある。n型のZnO薄膜は容易に作成することができるが、p型のZnO薄膜に関する技術は、1999年に大阪大学の川合らによって始めて報告された。これは、ZnOのZnの一部をGaで置換した焼結体ターゲットを用いて、PLD法によりN2 Oガス中で成膜することにより、co-dope効果によりホール濃度が増加することでp型化できると説明されている。

【40】
透明基板とZnO相との間に透明負電極層を挟む場合には、透明電極材料とZnOが界面において反応しない温度域を選んで、ZnO層を成膜しなくてはならない。例えば、透明電極としてITOを用いる場合には、ZnO層の成膜温度は、200℃~1000℃の範囲に限定される。1000℃以上ではITOとZnOとが反応して別の相を形成し始め、ITOとZnOの間に理想的な界面を形成できないからである。

【41】
また、SrCu2 2 層を積層する際の温度は、200℃から800℃の間で選ぶことができる。200℃より低いとSrCu2 2 相が結晶化せず、800℃より高いと下地のZnO層との反応が進行し始め、理想的なZnO/SrCu2 2 界面を形成することができない。

【42】
SrCu2 2 層の代わりにCuAlO2 層またはCuGaO2 層を形成する場合にも、SrCu2 2 層を形成する場合と同様の成膜方法を用いることができる。CuAlO2 層またはCuGaO2 層を形成する際の温度は、500℃から800℃の範囲で選ぶことができる。500℃より低いとCuAlO2 層またはCuGaO2 層が結晶化せず、800℃より高いと下地のZnO層との反応が進行し始め、理想的なZnO/CuAlO2 界面またはZnO/CuGaO2 界面を形成することができない。

【43】
特に、成膜法としてPLD法を採用し、例えば、YSZ(111) 単結晶基板上に本発明の発光ダイオードを製造する場合には、結晶性の良好なZnO層を形成し、ZnO層とSrCu2 2 層の界面を理想的に形成して、発光効率の良い発光ダイオードを製造することができる。

【44】
光源には、ZnOおよびSrCu2 2 のバンドギャップより大きな光エネルギーを持つレーザー、例えば、KrFエキシマーレーザーやArFエキシマーレーザーを用いる。バンドギャップより小さな光エネルギーをもつレーザー光は、ZnOターゲットやSrCu2 2 ターゲットに吸収されず、アブレーション現象を起こすことができない。

【45】
バンドギャップより大きな光エネルギーを持つレーザー光は、ZnOターゲットやSrCu2 2 ターゲットに吸収されてアブレーション現象を起こし、ターゲットに対抗して配置した基板上にターゲット物質を堆積させ、成膜することができる。もっとも、真空紫外光は、大気中で酸素に吸収されてしまうので、光路を真空にする必要があって装置が複雑になり、管理が面倒になり、高価になる。この点、KrFエキシマレーザー光は、大気中の酸素に吸収されることが無く、充分に強い光が得られ、レーザー装置が広く市販されているので好適である。

【46】
例えば、透明基板にYSZ(111) 基板を用いるならば、ZnO層を結晶性良く形成できるだけでなく、透明電極としてITOを選択できるので、発光効率の良い発光ダイオードを製造することができる。YSZ(111) 面はITO(111) 面と格子整合し、ITO(111) 面は、ZnO(0001)面と格子整合するからである。この様な格子整合の特長を生かすためには、YSZ(111) 面は充分に平坦化することが好ましい。

【47】
Al2 3 やSrTiO3 単結晶基板などでは、大気中または真空中、高温で処理することによって結晶のステップとテラスの構造が観察できるほどに平坦化できることが知られている。この様な構造は、一般に、原子状平坦化構造と呼ばれる。

【48】
われわれは、両面を光学研磨したYSZ単結晶を1000℃~1300℃で熱処理して、同様の原子状平坦化構造が形成されることを発見し、本発明の発光ダイオードの基板として用いると好適であることを見いだした。原子状平坦化した基板は、ターゲットに対向させ、例えば、30~70mm離して配置する。ターゲットおよび基板は自転機構により回転させることが好ましい。

【49】
真空容器は、容器内から水蒸気成分を除くため、1×10-5Pa以下の到達真空度を持たせることが適当である。水蒸気成分の除去は、SrCu2 2 相が水と化学的に反応しやすい性質を持つために、製造上の要点である。容器の真空度を充分に高めて水蒸気成分を除去した後に、乾燥した酸素を容器内に導入する。

【5】
しかし、本発明の出願時において、ZnO薄膜のp型特性を他の研究機関が確認したとの報告がない。また、そもそも、ZnOは、酸素欠陥(格子間亜鉛)によりn型になりやすく、p型半導体を安定して作製することが困難な材料であるため、p-n接合への電流注入によるLEDの作製が難しいという問題がある。n型ZnOとp型ZnOの接合によるダイオードは、これまで報告されていない。

【50】
ITO負電極層を形成する際には、1×10-4Pa~100Paの酸素ガスを容器内に導入する。1×10-4Pa以下では、基板上に金属Inが析出して好ましくない。100Pa以上では、ターゲットにレーザー光を照射した際に形成されるプルームが小さくなり、効率よく成膜ができない。

【51】
基板温度は、300℃~1200℃の範囲で選択することができる。300℃以下では、ITOの結晶化が充分に進まず、1200℃以上ではITO成分が気相中に失われ始めて、効率よい成膜ができない。基板温度は、より好ましくは500℃~900℃の範囲であり、この温度範囲でYSZ(111) 面上にヘテロエピタキシャル成長したITO膜を製造することができる。

【52】
ターゲットには、例えば、SnO2 を10wt%含むITO焼結体を使用する。ターゲットは充分に緻密であることが好ましい。ITO層の厚みは50nm~2000nmの範囲が好ましい。50nm以下ではITO層が薄すぎて抵抗が高くなり、負電極層としての機能を充分に果たさない。2000nm以上ではITO層が厚すぎて光透過率が下がり、外部に取り出せる光量が小さくなる。

【53】
レーザーの光量は、成膜速度を介してITO層の結晶性、粒構造、表面平坦性、透明導電性に影響を与えるため、適当な値に選ばなくてはならない。この光量は装置依存の数値であるが、実施例に記載したPLD装置の場合、1~10J/cm2 の範囲に選べば好適な膜が得られた。

【54】
ZnO層を形成する際には、1×10-4Pa~100Paの酸素ガスを容器内に導入する。1×10-4Pa以下では、基板上に金属Znが析出して好ましくない。100Pa以上では、ターゲットにレーザー光を照射した際に形成されるプルームが小さくなり、効率よく成膜ができない。

【55】
基板温度は300℃~1000℃の範囲で選択することができる。300℃以下ではZnO相が充分に結晶化せず、良好な発光特性を期待することができない。1000℃以上ではITO層とZnO層の間で反応が進行し始め、ITO層とZnO層の理想的な界面を形成することができない。基板温度は、より好ましくは500℃~800℃の範囲である。この温度範囲で、ITO(111) 面上にZnO(0001)面をヘテロエピタキシャル成長させることができる。

【56】
ターゲットにはZnO焼結体を用いる。ターゲットは充分に緻密であることが好ましい。ZnO層の厚みは20nm~2000nmの範囲が好ましい。20nm以下ではZnO層が薄すぎて発光現象が効率よく起こらなくなる。2000nm以上ではZnO膜が厚すぎて光透過率が下がり、外部に取り出せる光量が小さくなる。

【57】
レーザーの光量は、成膜速度を介してZnO層の結晶性、粒構造、表面平坦性、透明導電性に影響を与えるため、適当な値に選ばなくてはならない。この光量は装置依存の数値であるが、実施例に記載したPLD装置の場合、1~10J/cm2 の範囲に選べば好適な膜が得られた。

【58】
ZnO層とSrCu2 2 層の理想的な界面を形成するためには、SrCu22 層を形成する段階で、ZnO層の表面が充分に平坦化されていることが必要である。一般に、PLD法では、ドロップレットと呼ばれる半球状の突起が薄膜表面に形成されやすいことが知られている。この様な突起はZnO層とSrCu2 2 層の界面でpn接合を作り、ZnO層中にSrCu2 2 層中から効率よく正孔を注入して、正孔と電子の再結合をさせる上で、大変好ましくない。

【59】
そこで、真空容器中で800℃~1200℃でアニールしたり、ガスクラスタービームをZnO層表面に照射したり、真空容器外に取り出して適当な研磨材で研磨するなどの方法によりZnO層表面を平坦化することが好ましい。平坦化が不十分であると、発光効率が落ち、中には発光しないダイオードが製造されて、歩留まりを著しく低下させることがあり得る。

【6】
n型ZnOとの接合に適するp型半導体としてSrCu2 2 がある。SrCu2 2 は、室温でのバンドギャップが約3.2eVの間接遷移型半導体であり、p型伝導を示す(Kudo, Yanagi, Hosono, Kawazoe, APL, 73, 220 (1998))。Kudoらの報告によると、パルスレーザー堆積法により作製したSrCu2 2 薄膜のキャリア濃度、移動度は、それぞれ1×1017cm-3、0.5cm2 /Vsである。結晶系は、正方晶系(空間群:I41/a)、格子定数は、a=b=0.5480nm、c=0.9825nmであり、ZnOの(0001)とSrCu2 2 の(112) の格子整合性は19%であるため、ZnO上にヘテロエピタキシャル成長させることができる。また、堆積時の基板温度が200℃以上であれば単一相として形成することができる。

【60】
SrCu2 2 層を形成する際には、1×10-4Pa~100Paの酸素ガスを容器内に導入する。1×10-4Pa以下では基板上に金属SrやCuが析出して好ましくない。100Pa以上では、ターゲットにレーザー光を照射した際に形成されるプルームが小さくなり、効率よく成膜ができない。基板温度は250℃~800℃の範囲で選択することができる。250℃以下では相が充分に結晶化せず、良好な発光特性を期待することができない。800℃以上ではZnO層とSrCu2 2 層の間で反応が進行し始め、ZnO層とSrCu2 2 層の理想的な界面を形成することができない。

【61】
基板温度は、より好ましくは300℃~550℃の範囲である。この温度範囲で、ZnO(0001)面上にSrCu2 2 層を形成することができる。特に、500℃付近の温度を選ぶと、ZnO(0001)面上にSrCu2 2 層をヘテロエピタキシャル成長させることができる。ターゲットにはSrCu2 2 焼結体を用いる。ドーパントとして1価の金属をSr位置に20原子%以下置換することができる。例えば、Kを0.3~5mol%含有させると、膜中の正孔濃度を高めることができる。ターゲットの焼成は、N2 、Arなどの不活性ガス中で行う。

【62】
ターゲットは、充分に緻密であることが好ましいが、通常は、困難であるので、ホットプレス法、熱間静水圧プレス法などを適用すると好適である。SrCu2 O層の厚みは20nm~2000nmの範囲が好ましい。20nm以下ではSrCu2 O層が薄すぎてZnO層への正孔の注入が効率よく起こらなくなる。2000nm以上ではSrCu2 O膜が厚すぎて、材料が無駄である。

【63】
レーザーの光量は、成膜速度を介してSrCu2 O層の結晶性、粒構造、表面平坦性、透明導電性に影響を与えるため、適当な値に選ばなくてはならない。この光量は、装置依存の数値であるが、実施例に記載したPLD装置の場合、1~10J/cm2 の範囲に選べば好適な膜が得られた。

【64】
CuAlO2 層またはCuGaO2 層を形成する際には、1×10-4Pa~100Paの酸素ガスを容器内に導入する。1×10-4Pa以下では基板上に金属Cu、Al、Gaが析出して好ましくない。100Pa以上では、ターゲットにレーザー光を照射した際に形成されるプルームが小さくなり、効率よく成膜ができない。基板温度は500℃~800℃の範囲で選択することができる。500℃以下では相が充分に結晶化せず、良好な発光特性を期待することができない。800℃以上ではZnO層とSrCu2 O層の間で反応が進行し始め、ZnO層とSrCu2 O層の理想的な界面を形成することができない。

【65】
基板温度は、より好ましくは650℃~750℃の範囲である。この温度範囲で、ZnO(0001)面上にSrCu2 O層を形成することができる。特に、700℃付近の温度を選ぶと、ZnO(0001)面上にSrCu2 O層をヘテロエピタキシャル成長させることができる。

【66】
ターゲットには、CuAlO2 焼結体またはCuGaO2 焼結体を用いる。ドーパントとして一価の金属、例えば、Kを0.3~5mol%含有させると、膜中の正孔濃度を高めることができる。ターゲットの焼成は、N2 、Arなどの不活性ガス中で行う。ターゲットは、充分に緻密であることが好ましいが、通常は困難であるので、ホットプレス法、熱間静水圧プレス法などを適用すると好適である。CuAlO2 層またはCuGaO2 層の厚みは20nm~2000nmの範囲が好ましい。20nm以下ではCuAlO2 層またはCuGaO2 層が薄すぎてZnO層への正孔の注入が効率よく起こらなくなる。2000nm以上ではCuAlO2 層またはCuGaO2 層が厚すぎて、材料が無駄である。

【67】
レーザーの光量は、成膜速度を介してSrCu2 O層の結晶性、粒構造、表面平坦性、透明導電性に影響を与えるため、適当な値に選ばなくてはならない。この光量は、装置依存の数値であるが、実施例に記載したPLD装置の場合、1~10J/cm2 の範囲に選べば好適な膜が得られた。

【68】
正電極層としてはNi層が特に好適である。Ni層はどの様な成膜法を用いて製造しても良いが、Niターゲットを用いるとPLD法でも成膜することができ、この場合、Ni層成膜用の新たな設備を必要としない。ただし、Niターゲットはレーザー光を反射するので、成膜効率はかなり低い。成膜効率の点から見れば、スパッタリング法、蒸着法などが、好ましい方法である。さらに、Ni層の上には適当な金属層を形成して、例えば、Cuのリード線との接続性を高めることができる。

【69】
なお、Niはエッチング速度が非常に低い材料であるため、SrCu2 O層とオーミック接合が取れて、かつエッチング性の良好な電極材料があれば、これを正電極層材料として用いることがより好ましい。SrCu2 O層の代わりにCuAlO2 層またはCuGaO2 層を用いる場合にも同様である。

【7】
Kudoらは、SrCu2 2 膜上にn型ZnOを成膜してダイオード特性が発現することを確認した(Kudo, Yanagi, Hosono, Kawazoe, Yano, APL, 75, 2851)。しかし、Kudoらの作製プロセスでは、基板上にSrCu2 2 膜を作製した後にZnO膜を作製するので、結晶性の良いZnO膜を作製することができなかった。結晶性の良いZnO膜を作製するためには、基板温度を例えば、500℃以上にすることが必要であり、SrCu2 2 膜が分解したり、ZnO膜と反応したりして、ダイオード特性が失われるからである。このため、Kudoらは、ダイオードからの発光を確認できていなかった。

【70】

【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。

【71】
実施例1
積層膜の作製
SnO2 を10wt%含有したIn2 3 (以下ITO)焼結体、ZnO焼結体、Sr1-x x Cu2 2 (xは、Srサイトに置換したKイオンの置換率であり、x≦0.2である)焼結体、金属Niをターゲットとして用いた。これらの焼結体ターゲットをPLDチャンバー内に導入し、チャンバー内を1×10-6Paの真空状態にした。

【72】
次に、表面荒さ1nm以下に研磨されたYSZ(111) 基板をターゲットに対向した30mm上方にセットした。雰囲気ガスとして酸素ガスを2×10-3Pa導入した。基板を900℃に加熱した後、石英ガラス窓を通してKrF(248nm) エキシマレーザーパルスをITOターゲット表面に1パルスのエネルギー密度が6J/cm2 となるように照射して成膜を行った。

【73】
ITO薄膜の膜厚が800nmとなったところでレーザーを止め、基板温度を800℃に設定した。次に、ZnO薄膜を1パルスのエネルギー密度が5J/cm2 となるようにして成膜を行った。ZnO薄膜の膜厚が400nmとなったところでレーザー照射を中断し、基板温度を350℃に設定した。

【74】
次に、SrCu2 O薄膜を1パルスのエネルギー密度が2J/cm2 となるようにして成膜を行った。SrCu2 O薄膜の膜厚が200nmとなったところでレーザー照射を中断し、基板温度を25℃に設定し、Niターゲットにレーザー光を照射し、Ni薄膜を成膜した。Ni薄膜の厚みが20nmとなったところでレーザー照射を中断し、積層膜を大気中に取り出した。さらに電流注入用のリード線として、Auを被覆したW針を用いるために、積層膜のNi表面にスパッタリング法によりAuコーティングを行った。Au薄膜の厚みは100nmである。

【75】
メサ型構造の作製
上記の積層膜の表面に市販のフォトレジスト(AZ製 P4620 )を厚みが5μmとなるようにスピンコーティング(2000r.p.m. 、20s)し、90℃で30分乾燥させた。次に、直径500μmの円型のフォトマスクを通して紫外光を照射(20mW、10s )し、市販の現像液(AZ製 デベロッパー)に浸してパターンを形成した。この状態では、パターンの密着性、エッチング耐性が不十分であるため大気中で110℃、30分、次いで、200℃、1hの加熱処理を行った。

【76】
反応性イオンエッチング
CF4 ガスおよびArガスを用いて反応性イオンエッチング法によりメサ型構造の素子を作製した。まず、Au層およびNi層をCF4 ガスを用いて、ガス圧4.5Pa、RF出力250Wでエッチングした。引き続き、SrCu2 O層、ZnO層、ITO層をArガスを用いて、ガス圧4.5Pa、RF出力250Wでエッチングした。この時、ITO層は200nmエッチングした。

【77】
電気特性および発光特性
上記のメサ型構造デバイスのITO部分およびAu上にW製の探針を接触させ、ITO側を負極、Au側を正極につないで電流を流したところ、印加電圧0.3V以上で急激に電流値が増加した。また、負の電圧を印加した場合には電流が流れなかった。これはp-n接合ダイオードの特性である。発光は0.3V以上で急激に増加した。発光波長は約380nmであった。

【78】
実施例2
実施例1におけるSrCu2 O膜の代わりにCuAlO2 膜を形成した他は、実施例1と同様のプロセスで積層膜を作製した。CuGaO2 膜を形成する段階では、基板温度を700℃に設定し、1.3Paの酸素を導入、1パルスのエネルギー密度が5J/cm2 となるようにレーザー光をCuAlO2 ターゲットに照射して成膜を行った。作製した積層膜をメサ型加工し、電流電圧特性を測定したところ、pn接合を反映した非線形性が現れ、波長380nmの発光が認められた。

【79】
実施例3
実施例1におけるSrCu2 O膜の代わりにCuGaO2 膜を形成した他は、実施例1と同様のプロセスで積層膜を作製した。CuGaO2 膜を形成する段階では、基板温度を700℃に設定し、9Paの酸素を導入、1パルスのエネルギー密度が6J/cm2 となるようにレーザー光をCuGaO2 ターゲットに照射して成膜を行った。作製した積層膜をメサ型加工し、電流電圧特性を測定したところ、pn接合を反映した非線形性が現れ、波長380nmの発光が認められた。

【8】
また、n型ZnOとの接合に適するp型半導体として、CuAlO2 およびCuGaO2 がある。CuAlO2 は、デラフォサイト型と言われる構造を持つ結晶で、p型伝導を示す半導体であり、H.Kawazoeらにより発見され、報告された(Nature, vol.389、p.939 (1997)) 。バンドギャップは3.1eV以上であり、1Ωcm程度の抵抗率を持つ薄膜が得られている。

【80】
比較例
積層膜の作製
実施例とは成膜順序を逆にし、基板上にSrCu2 Oを先に成膜し、その上にZnOを成膜した。なお、この場合、高導電性を示すp型透明電極材料が存在しないために、電極としてNiを被覆したガラス基板を用いた。

【81】
まず、SnO2 を10wt%含有したIn2 3 (以下ITO)焼結体、ZnO焼結体、Sr1-x x Cu2 2 焼結体、金属Niをターゲットとして用いた。これらの焼結体ターゲットをPLDチャンバー内に導入し、チャンバー内を1×10-6Paの真空状態にした。次に、Niを蒸着したSiO2 ガラス基板をターゲットに対向した30mm上方にセットし、雰囲気ガスとして酸素ガスを2×10-3Pa導入した。基板を350℃に加熱した後、石英ガラス窓を通してKrF(248nm)エキシマレーザーパルスをSrCu2 Oターゲット表面に1パルスのエネルギー密度が2J/cm2 となるように照射して成膜を行った。

【82】
SrCu2 O薄膜の膜厚が200nmとなったところでレーザーを止め、次に、ZnO薄膜を1パルスのエネルギー密度が5J/cm2 となるようにして成膜を行った。ZnO薄膜の膜厚が400nmとなったところでレーザー照射を中断した。次に、ITO薄膜を1パルスのエネルギー密度が6J/cm2 となるようにして成膜を行った。ITO薄膜の膜厚が800nmとなったところでレーザー照射を中断し、積層膜を大気中に取り出した。作製した積層膜をメサ型加工し、電流-電圧特性を測定したところ、pn接合を反映した非線形特性が得られた。しかし、発光を認めることはできなかった。

【83】

【発明の効果】結晶性の良好なZnO層の上にSrCu2 O、CuAlO2 、CuGaO2 を積層して形成したp-n接合を持つことを特徴とする本発明の発光ダイオードにより、室温で波長380nmの紫外光が容易に得られるようになった。

【84】
本発明の発光ダイオードは、微細加工により非常に小型化できるので、光記録メディアとして好適であり、従来の発光ダイオードより波長が短いので、より記録密度の高い光記録メディアが実現可能となった。

【85】
また、本発明の発光ダイオードは紫外光を発するので、あらゆる可視蛍光体用励起光源として適しており、超小型もしくは超大型で薄板型の光源が実現可能となり、照明やディスプレイへ応用が可能になった。

【86】
また、本発明の発光ダイオードは紫外光を発するので、近年開発が進んでいる水素発生用光触媒の励起光源として適しており、例えば、自動車エンジン用水素源システムへの応用が可能となった。本発明の発光ダイオードは、省資源、低環境負荷であるので、社会の永続的発展に寄与するものである。

【9】
また、CuGaO2 は、デラフォサイト型と言われる構造を持つ結晶で、p型伝導を示す半導体である。これらのp型透明半導体は、ダイオードなどの作製に有望であることが容易に考えられるが、現実にダイオードが作製された例はこれまでのところ存在しておらず、発光ダイオードの作製例も存在しない。