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明細書 :高温高圧水を用いたタンパク質含有物質からのタウリンの合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3554821号 (P3554821)
公開番号 特開2002-332272 (P2002-332272A)
登録日 平成16年5月21日(2004.5.21)
発行日 平成16年8月18日(2004.8.18)
公開日 平成14年11月22日(2002.11.22)
発明の名称または考案の名称 高温高圧水を用いたタンパク質含有物質からのタウリンの合成方法
国際特許分類 C07C303/16      
C07C309/14      
FI C07C 303/16
C07C 309/14
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2001-140119 (P2001-140119)
出願日 平成13年5月10日(2001.5.10)
審査請求日 平成13年5月10日(2001.5.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012556
【氏名又は名称】豊橋技術科学大学長
発明者または考案者 【氏名】藤江 幸一
【氏名】大門 裕之
【氏名】佐藤 伸明
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100068814、【弁理士】、【氏名又は名称】坪井 淳
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
審査官 【審査官】藤森 知郎
参考文献・文献 特開平09-122629(JP,A)
特開平09-268166(JP,A)
特開平11-342379(JP,A)
調査した分野 C07C303/16、303/44
C07C309/14
特許請求の範囲 【請求項1】
ケラチン含有物質、エビ殻、およびホタテうろからなる群から選択されるシステインを含有するタンパク質を、高温高圧水の中で反応させる工程を具備したことを特徴とするタウリンの合成方法。
【請求項2】
前記ケラチン含有物質は、動物の羽、毛、表皮、および人毛から成る群から選択される、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記高温高圧水が温度100℃~400℃、圧力飽和蒸気圧~50MPaの水である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程においてさらに酸化剤を用いる、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤が、過ギ酸、過酸化水素、または有機酸である、請求項4に記載の方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物学的廃棄物の再資源化を目的として、タンパク質を含む物質からタウリンを合成する方法に関する。タウリン(2-アミノエタンスルホン酸)は、坑血栓作用およびコレステロール低下作用のような有用な薬理作用を有する物質であり、また食品添加物として、または界面活性剤の原料としても用いられている。
【0002】
【従来の技術】
難分解性有機物質の分解および/または無機化を目的とした技術として、高温高圧の水を用いた処理法が注目されている。臨界点(374℃、22MPa)以上の状態にある超臨界水は、低極性有機化合物および酸化剤となる酸素とよく混合し、しかも水自身が高い反応性を示すことから、有機化学物質の酸化および/または無機化に適している。一方、臨界点未満の状態にある亜臨界水は、イオン積が高いので水自身が酸触媒的効果を有し、または超臨界水に比べて反応性が低い特徴を有することから、亜臨界水を反応溶媒として用い、プラスチックなどの高分子系廃棄物および化学製造残渣から化学原料を回収して再資源化するための研究が盛んに行われている。
【0003】
上記のような高温高圧の水を用いた反応の応用例として、魚のあら(内臓、骨、鱗)などの廃棄物から、亜臨界水を反応場として利用することにより、乳酸のような有機酸、アミノ酸、DHAおよびEPAのような長鎖不飽和脂肪酸などの有用な物質を製造する技術が報告されている。この技術は、亜臨界水によりタンパク質が加水分解されてアミノ酸および有機酸を生成する反応、並びに、魚のあらに本来的に含まれているDHAおよびEPAなどの長鎖脂肪酸が亜臨界水によって抽出され易くなる現象を利用したものである。しかし、これを更に反応させて別の有用物質を得ることについては未だ報告がない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、タンパク質を含む生物学的廃棄物から、有用性の高いタウリンを合成できる方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本件発明者等は、魚腸骨、エビ殻、ホタテうろなどの水産加工廃棄物から、上記の高温高圧の水を用いた反応によるアミノ酸の生成反応について検討を行ったところ、アミノ酸、有機酸に加えて、タウリンが生成することを見出した。そして、他のアミノ酸の生成量と比較してタウリンの生成量が多いことから、タウリンが合成された可能性を検討した。その結果、アミノ酸を前駆体としてタウリンが合成される経路を見出し、本発明に到達したものである。
【0006】
即ち、本発明の第一は、タンパク質を含む生物学的物質を、高温高圧水の中で反応させる工程を具備したことを特徴とするタウリンの合成方法である。
また、本発明の第二は、含硫アミノ酸を、高温高圧水の中で反応させる工程を具備したことを特徴とするタウリンの合成方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において原料に用いる「タンパク質を含む生物学的物質」は、動物タンパク質および/または植物タンパク質を含む如何なる物質であってもよい。しかし、本発明の当初の目的からすれば、廃棄物として処分されるものを用いるのが好ましい。このような廃棄物の例としては、魚腸骨、エビ殻、ホタテうろなどの水産加工廃棄物、動物の羽、毛、表皮、人毛のようなケラチン含有物質が挙げられる。
【0008】
本発明において「高温高圧水」とは、超臨界領域および亜臨界領域にある水を意味する。超臨界領域にある水(即ち、超臨界水)とは、臨界点(374℃、22MPa)以上の特定の範囲の温度及び圧力状態の水を意味する。亜臨界領域にある水(即ち、亜臨界水)とは、臨界点未満で且つ臨界点近傍の領域にある水を意味する。
【0009】
本発明において「含硫アミノ酸」とは、システインを代表とする硫黄含有アミノ酸を意味する。
本発明の方法における反応温度は、100℃~400℃、好ましくは200℃~350℃、さらに好ましくは250℃~300℃である。
本発明の方法における反応圧力は、飽和蒸気圧~50MPa、好ましくは飽和蒸気圧~40MPa、さらに好ましくは飽和蒸気圧~30MPaである。
本発明の方法における反応時間は、1分~3時間、好ましくは5分~60分、さらに好ましくは20分~40分である。
【0010】
本発明の方法における反応は、試料1gに対し、10mL~500mLの水を用いて行われ、好ましくは50mL~100mLの水を用いて行われる。
本発明の方法は、半回分式装置、回分式装置又は流通管型式反応装置を用いて行うことができる。
反応終了後、従来の方法により、アミノ酸の分離、回収、精製(例えば、イオン交換)を行うことができる。
本発明の方法に従って行った反応により得られる反応溶液は、アミノ酸自動分析装置を用いて、含有されるアミノ酸やタウリンを分析することができる。
【0011】
さらに、本発明の方法は、酸化剤として、過ギ酸、過酸化水素、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸)等を添加してもよい。
【0012】
本発明の実施例を以下に示すが、これらは特許請求の範囲を限定するもの解釈されない。
【0013】
【実施例】
実施例1:半回分装置を用いた、ホタテうろの高温高圧水反応
半回分式反応装置を用い、反応容器に試料(ホタテうろ)10gを仕込み、圧力30MPaに一定に保ち、水を40mL/分でポンプを用いて供給しながら反応容器を昇温させた。一定時間ごとに反応溶液をサンプリングした。サンプリングした反応溶液に含まれるタウリンおよびアミノ酸について、アミノ酸自動分析装置を用いて分析した。
その結果、グリシン(Gly)やアラニン(Ala)などのアミノ酸の他に、タウリン(Tau)が含まれていることがわかった。結果を図1に示す。原料のうろに含まれるタンパク質由来のグリシンおよびアラニンなどのアミノ酸についで、タウリンの生成量が比較的多い。
【0014】
実施例2:タウリン合成経路の検証
タウリンの生成量がアミノ酸と比較して多いことから、さらにタウリンの合成経路を検討した。その結果、アミノ酸を前駆体としたタウリンの合成経路を推測した。高温高圧水により、システインが酸化され、システイン酸を経由することによって、システイン酸から脱炭酸反応が起こり、タウリンが生成すると考えられる(図2)。この推測は、生体内反応が高温高圧水中でも起こる可能性があることを示している。
また、酸化反応および脱炭酸反応を促進するために、該反応に酸化剤などの添加剤を加えることで、タウリンの生成量が向上できると考えられる。
高温高圧反応は酸化反応場として適していることから、含硫アミノ酸は容易に酸化されてタウリン前駆体と考えられるシステイン酸となる。従って、本実施例では、システイン酸を原料として高温高圧水反応を行い、タウリンが生成するかどうかを調べた。
【0015】
流通管型反応装置を用いて、システイン酸水溶液(濃度1mmol/L、即ち、水1000mL中、システイン酸169mg)を温度300℃、圧力30MPaにて、5分間反応させた。なお、システイン酸はシステインを過ギ酸を用いて酸化して得た。
回収したサンプルを分析した結果、システイン酸から生成したと考えられるタウリンのピークを確認することができた(図3)。
このように含硫アミノ酸であるシステインから、図2に記載する合成経路によりタウリンの生成が可能であることを確認できた。
【0016】
実施例3:回分式反応装置を用いた、人毛の高温高圧水反応
含硫アミノ酸であるシステインからタウリンの生成が確認できたことから、システインを多く含有するケラチンからのタウリン生成について検討した。
回分式反応装置を用いて、水50mL中でケラチン含有物質(人毛)1gを温度250℃、飽和蒸気圧にて、60分間反応させた。
結果を図4に示す。反応前の人毛にはタウリンが全く含まれていないのにもかかわらず、反応後にタウリンが生成していることが確認できた。
さらに、酸化剤として過ギ酸を添加することで、タウリンの生成量を増加させることが可能であることも見出した。
【0017】
【発明の効果】
本発明の方法により、従来は埋め立て処理されるか、又は堆肥としての用途しかなかったタンパク質含有廃棄物(水産加工廃棄物、ケラチン含有廃棄物等)を高温高圧水処理することで、有用性の高いタウリンを合成することが可能となる。
本発明の方法により、廃棄物の再資源化をはかることができ、それによって新たな利益を生み出すことが可能となり、従って本発明は循環型社会構築の優れた要素技術となり得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】半回分式装置を用いて、ホタテうろを高温高圧水条件にて反応させた結果を示す図である。
【図2】アミノ酸を前駆体としたタウリンの合成経路を示す図である。
【図3】流通管型式反応装置を用いて、システイン酸水溶液を高温高圧水条件にて反応させた反応溶液のHPLCクロマトグラムを示す図である。
【図4】回分式装置を用いて、人毛を高温高圧水条件にて反応させた結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3