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明細書 :球状単結晶シリコンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3607218号 (P3607218)
公開番号 特開2002-348194 (P2002-348194A)
登録日 平成16年10月15日(2004.10.15)
発行日 平成17年1月5日(2005.1.5)
公開日 平成14年12月4日(2002.12.4)
発明の名称または考案の名称 球状単結晶シリコンの製造方法
国際特許分類 C30B 29/06      
H01L 21/208     
FI C30B 29/06 Z
H01L 21/208 Z
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2001-156689 (P2001-156689)
出願日 平成13年5月25日(2001.5.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年1月15~16日 宇宙科学研究所開催の「宇宙利用シンポジウム(第17回)」において文書をもって発表
審査請求日 平成13年5月25日(2001.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503361400
【氏名又は名称】独立行政法人 宇宙航空研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】栗林 一彦
【氏名】青山 智胤
個別代理人の代理人 【識別番号】100092392、【弁理士】、【氏名又は名称】小倉 亘
審査官 【審査官】藤原 敬士
参考文献・文献 特開平11-035400(JP,A)
特開平08-291100(JP,A)
特開昭63-050388(JP,A)
特開2001-089292(JP,A)
国際公開第99/022048(WO,A1)
調査した分野 C30B 29/06
H01L 21/208
特許請求の範囲 【請求項1】
過冷したシリコン液滴から凝固核を生成させて球状単結晶シリコンを作製する際、シリコン液滴の臨界過冷度ΔTcr及び直径dが(d=5mm,ΔTcr=100K),(d=3mm,ΔTcr=120K),(d=1mm,ΔTcr=150K)を満足するように、シリコン液滴の直径dに応じて設定された臨界過冷度ΔTcr以下にシリコン液滴を過冷することを特徴とする球状単結晶シリコンの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体デバイス等の作製に有用な球状単結晶シリコンを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の開発,普及に伴って、代表的な半導体材料であるシリコンウェーハの需要も伸びる一方である。シリコンウェーハから半導体デバイスを作製する際の生産効率を考慮すると大口径のウェーハほど望ましく、口径300mmのシリコンウェーハが提供され始めており、口径400mmのシリコンウェーハも一部で検討されている。しかし、大口径化に伴う設備費用の負担が極端に大きくなり、費用対効果の面からウェーハの大口径化が疑問視されることもある。
【0003】
そこで、大口径化とは逆の発想として、直径1mm程度の球状単結晶シリコンの表面に形成した集積回路を、低価格次世代ICとしてマイクロマシン等に応用する検討がされ始めている。球状単結晶シリコンは、高周波プラズマ法,回転ディスク法,ガスアトマイズ法,水アトマイズ法,アルゴンアーク回転電極法,プラズマアーク回転電極法等で作製される。たとえば、特開平11-12091号公報では、酸化膜で覆われた球状多結晶シリコンを部分的に加熱溶融し、溶融部分を移動させながら再結晶化することによって球状単結晶シリコンを製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
球状単結晶シリコンの作製に当っては、如何にして単結晶を安価に作るかが大きな問題であり、工業的な生産性に見合った製造方法が依然として確立されていない。たとえば、ドロップチューブを用い、或いはアトマイズ法により球状単結晶シリコンを作製する場合、再現性を含む結晶化過程に不明な点が多く、生産性に関する多くの問題が未解決のままである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、過冷液滴の凝固過程における観察結果から得られた知見をベースにし、過冷度を適正に制御することにより液滴から球状単結晶シリコンを直接製造することを目的とする。
【0006】
本発明は、その目的を達成するため、過冷したシリコン液滴から凝固核を生成させて球状単結晶シリコンを作製する際、シリコン液滴の臨界過冷度ΔTcr及び直径dが(d=5mm,ΔTcr=100K),(d=3mm,ΔTcr=120K),(d=1mm,ΔTcr=150K)を満足するように、シリコン液滴の直径dに応じて設定された臨界過冷度ΔTcr以下にシリコン液滴を過冷することを特徴とする。
【0007】
【作用】
本発明者等は、過冷したシリコン液滴から凝固核が生成する過程を調査・研究する過程で、過冷度に応じて結晶の成長形態が異なることを見出した。本発明は当該知見をベースに完成されたものであり、シリコン液滴の直径dに応じて過冷度ΔTを適正に制御するとき、高品位の球状単結晶シリコンが製造される。また、単結晶化の条件が大幅に緩和されるため、大径の球状単結晶シリコンも作製可能となる。
【0008】
【実施例】
純度99.999%の塊状多結晶シリコンを破砕することにより、溶融状態での直径が5mm以下となるサイズの小片を試料として用意した。
チャンバ内に試料をセットした後、チャンバ内をターボ分子ポンプで10-4Pa程度に排気し、O濃度を0.02ppm以下に規制したアルゴンガスでチャンバ内を置換し、同じアルゴンガスをそのまま一定流量でチャンバに流し続けた。次いで、十分な電気伝導度をもつ温度(~1500K)までCOレーザの照射で試料を予備加熱した後、200kHzの高周波を印加した。予備加熱で溶融した試料(液滴)の直径は、高周波印加によって浮遊可能な5mm以下のサイズであった。
【0009】
溶融・浮遊状態にある液滴の温度をレーザの出力及び冷却ガス(He)の流量で調節しながら冷却し、結晶成長速度及び固液界面の形状を調査した。結晶成長速度は、40500フレーム/秒のサンプリング速度をもつ高速ビデオカメラ及びフォトダイオードで測定し、画像から固液界面の形状を判定した。任意の過冷度で浮遊液滴を銅製チルプレート上に落下させ、急冷凝固させた試料についても同様に組織観察した。
【0010】
この条件下で結晶成長させたときの成長速度と過冷度との関係を調査したところ、図1の調査結果にみられるように過冷度ΔTに応じて結晶成長速度Vが異なり、固液界面の形態から過冷度が領域I~IIIに分けられることが判った。領域Iでは板状結晶,領域IIでは粗なファセットデンドライト,領域IIIでは密なファセットデンドライトが観察された。
結晶成長速度Vは、領域Iでは板状結晶の成長端,領域IIではファセットデンドライトの先端,領域IIIでは巨視的に平坦化した界面の移動速度をプロットすることにより求めた。また、LKTモデルに基づいて計算した成長速度の理論値を図1に実線で示す。
【0011】
なお、LKTモデルでは、単一相の成長に対する全過冷度ΔTは、式ΔT=ΔTt+ΔTr+ΔTc+ΔTkで示す四成分の和で表される。ここで、ΔTtは、熱的過冷却でありデンドライト先端の形状を回転放物体と仮定すると次式で示される。
JP0003607218B2_000002t.gifただし、E1は一次の指数積分関数であり、次式で表される。
JP0003607218B2_000003t.gif
【0012】
=VR/2aは熱ペクレ数であり、成長速度Vとデンドライト先端半径Rの積と、熱拡散率aの比で与えられる。IvはIvantsov関数であり、融解のエンタルピーΔHと比熱Cの比ΔThyp(=ΔH/C)は過冷却限界に対応する。ΔTはGibbs-Thomson効果による過冷却であり、ΔTr=2Γ/Rと表される。Gibbs-Thomson係数Γは界面エネルギーσと融解のエントロピーΔSの比(=σ/ΔS)で与えられる。
界面において、溶質原子,分子の再配分が生じるような合金系では次式で与えられる組成的過冷却ΔTを考慮する必要がある。
JP0003607218B2_000004t.gif
【0013】
ここで、mは液相線の勾配,coはバルク濃度,Iv(Pc)は溶質ペクレ数Pc(=VR/2D,ただしDは溶質の拡散係数)で表したIvantsov関数である。また、ΔTkは界面カイネティクスによる過冷却であり、ΔTk=V/μのカイネティクス係数μによりΔTk=V/μと表される。
ΔT=ΔTt+ΔTr+ΔTc+ΔTkの式からVとRの積がΔTの関数として求められ、両者を分離するためにはもう一つの条件が必要である。荒れた(rough)界面に対しては、LangerとMueller-Krumbhaar(J. S. Langer and H. Mueller Krumbhaar, Acta Metall. 26(1978), 1681.)によって定式化された中立安定性理論による次式のクライテリオンが使用される場合が多く、本発明においても当該クライテリオンに従った。
JP0003607218B2_000005t.gif
【0014】
本実施例では、純物質の成長プロセスのみが対象となることから組成的過冷度ΔTcはゼロである。したがって、全過冷度ΔTは、熱的過冷度ΔTt,曲率による過冷度ΔTr,カイネティクス過冷度ΔTkの和とすることができる。なお、計算では、界面付着成長カイネティクス(Interface Attachment Kinetics)の係数μをパラメータとして実測値にフィットさせた。図1にみられるように、領域I,IIでは実測値がLKTモデルに良く一致しているが、領域IIIではLKTモデルと実測値との間に明らかなズレが生じている。
【0015】
ズレの発生は、Si凝固時の界面形態と過冷度との関係が通常の稠密金属の凝固と異なり、過冷度ΔTの大きな領域IIIでは薄板上の結晶又はファセットデンドライトから連続的な界面形態に変化することによるものと推察される。薄板状結晶の板面方位は、ステップにおける原子の吸着が成長を律速する特異面{111}を強く示唆している。実際、領域Iにおいて結晶面が{111},エッジが<111>の薄板状単結晶による種付けをしたところ、液滴表面に種結晶と平行で且つ薄板上に結晶化が進行する様子が観察された(図2)。しかも、観察結果を図3に示す不連続な外周は、板状結晶が種付け位置から液滴表面ではなく内部に向かってエピタキシャル成長したことを示唆している。したがって、このエピタキシャル成長条件を維持することにより、浮遊液滴の単結晶化が可能なことが理解される。
【0016】
領域Iでは薄板状、領域IIではファセットデンドライトと凝固表面形態が大きく異なるが、成長速度の解析に同じモデルが適用できる。これは、成長端(領域Iでは板状結晶の端面、領域IIではファセットデンドライトの先端)が荒れた界面であり、LKTモデルに適合する。すなわち、板状からファセットデンドライトへの形態変化は、沿面成長から連続成長に移行する成長様式の遷移でなく、板状結晶の端面又はファセットデンドライトの先端の安定性に由来するものと考えられる。換言すると、少なくとも過冷度ΔT<300Kの過冷Si融液からの凝固は荒れた界面における付着成長であって、沿面成長→連続成長の成長様式の遷移が存在しないことを意味する。
【0017】
エピタキシャル成長条件は、領域Iにおける板状結晶の端面又は領域IIにおけるファセットデンドライト先端の安定条件そのものを示す。したがって、過冷液滴から単結晶を育成するためには、当該エピタキシャル成長条件を明らかにすることが必要である。そこで、板状結晶の生成過程及び板状結晶の端面やファセットデンドライト先端の安定条件を検討する。
【0018】
Si,Ge等の半導体では、成長中の界面がファセット面になることが多い。ファセット面は多くの低指数の特異面から構成されており、Siでは{111}が良く知られている。半導体融液がファセット的に成長する場合、特異面上のステップの運動によって成長を表すことができる。過冷度ΔTが小さい場合、法線方向の成長速度νは、ステップのカイネティック係数をβst,ステップ密度をpとするときν=βstpΔTで表される。ステップ密度pはステップの間隔に逆比例するので、界面の面方位が特異面方位からずれるに従ってステップ密度pが増加する。
【0019】
過冷融液中に微細な結晶核が出現した状態では、Gibbs-Thomson効果によって結晶核の巨視的形状は球で近似される。しかし、{111}を特異面とした場合、成長と共にステップ密度pの異方性によって成長速度に差異が生じる。ステップ密度pが発散する水平方向の界面を荒れた面と仮定すると、結晶成長に従って結晶核の形状が球から扁平な楕円体に変化し,最終的には{111}を板面とする薄板状になると考えられる。したがって、結晶核の直径をdn,薄板状結晶が試料を掃過する時間t0とすると、薄板状結晶の厚さLは式(1)で表される。試料の直径をd0とすると、t0=d0/μΔTkで近似できる。
【0020】
JP0003607218B2_000006t.gif
【0021】
また、式(2)で表される螺旋転位律速成長モデルをステップ密度pとして仮定すると、式(1)は式(3)に変換される。ただし、dは試料の直径、αはステップのカイネティック係数βstと界面付着成長カイネティクスの係数μとの比(βst=αμ)であり、α<1とする。
【0022】
JP0003607218B2_000007t.gif
【0023】
種々の界面付着成長カイネティクスの係数μに対して規格化された板厚L/2Rの過冷度依存性を調査したところ、図4に示す相関性があった。ここで、Rはクライテリオンから求めた成長端半径の臨界値であり、試料の直径dは5.0mmと設定した。薄板状結晶の安定性のクライテリオンは、L/2R<1.0と考えられることからα=0.2に設定すると、領域I→IIへの遷移の臨界過冷度ΔTcrは100Kとなり、実測値に一致する。
【0024】
式(3)は領域I→IIへの遷移の臨界過冷度ΔTcrが試料の大きさに依存していることをも示し、本発明者等による研究結果から試料が大きくなるに応じて臨界過冷度ΔTcrが低下することが確認された(図5)。図5から明らかなように、領域I→IIの遷移の臨界過冷度ΔTcrは試料サイズが減少するほど増加し、試料の直径d=1.0mm(α=0.2)では150Kであった。
【0025】
以上の結果から、100K以下の過冷度ΔTで結晶核を生成させると、板面方位が{111}の薄板状結晶が成長することが確認された。この薄板状結晶を基板結晶として成長させると浮遊液滴の単結晶化が可能なことから、直径5.5mmの試料に関して単結晶化を実験した。なお、浮遊溶融試料のアスペクト比は0.95以上とした。
【0026】
過冷度ΔT~26Kで種結晶を用いて結晶核を成長させた試料の断面を組織観察した。図6の観察結果にみられるように、上部2箇所に双晶が検出され、双晶の起点に微小なクラックが生じていた。このことから、凝固膨張で発生したクラック先端の応力場を緩和するために双晶が生じたことが窺われる。双晶の面方位が全て一致しており、方位の異なるアイランド等も存在しないことから、全体としては種結晶からエピタキシャルに結晶化が進行したものといえる。
図5は、試料サイズを小さくすることにより過冷度の制御が容易になることを示す。また、凝固膨張に起因するクラックや双晶形成の頻度も小さくなるため、単結晶化の条件が大幅に緩和されることが予想される。
【0027】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、シリコン液滴の直径dに応じた臨界過冷度ΔTcrを基準とし、過冷度ΔTを適正に管理することによって凝固膨張に起因するクラックや双晶の少ない高品位の球状単結晶シリコンを得ている。この方法によるとき、高い再現性で球状単結晶シリコンが製造されるため、低価格次世代ICとして有用な半導体材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリコン液滴の過冷度ΔTが凝固核の成長速度Vに及ぼす影響を表したグラフ
【図2】板面方位{111},エッジ方向<110>の板状結晶による種付け(a)及びその模式図(b)
【図3】領域Iで板状に結晶化したシリコンを高速ビデオカメラで観察した写真
【図4】規格化された板厚L/2Rの過冷度依存性を示すグラフ
【図5】領域I→IIの遷移の臨界過冷度ΔTcrがシリコン液滴の直径dに依存していることを示すグラフ
【図6】過冷度ΔT~26K で各生成させた試料の断面組織写真
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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